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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121196
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】改質触媒ユニット
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
C01B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024390
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光生
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB03
4G140EB24
4G140EB46
(57)【要約】
【課題】本開示は、予め改質触媒が充填された改質触媒ユニットの改質触媒充填部の外径より水トラップ部が大きい場合でも、水トラップ部と改質触媒上外筒が干渉することなく改質触媒ユニットを水素生成装置の蒸発部に取り付けることができる改質触媒ユニットを提供する。
【解決手段】本開示における改質触媒ユニットは、蒸発外筒の下側に改質触媒上外筒を介して溶接で取り付けられる改質触媒外筒が、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部を備え、改質触媒上外筒の側面部の下端部が、改質触媒外筒の折り返し筒部における外周面に溶接で取り付け可能に構成され、折り返し筒部の径と改質触媒上外筒の側面部の径が、水トラップ部の円筒状の壁の径よりも大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒内筒の外周面と改質触媒外筒の内周面と改質下棚板の上面と改質上棚板の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒が充填されており、前記改質触媒内筒が、水トラップ部よりも下側で鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発内筒の下端部に溶接で取り付けられ、前記改質触媒外筒が、鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発外筒の下側に改質触媒上外筒を介して溶接で取り付けられ、原料ガスと水蒸気との混合ガスが供給される改質触媒ユニットであって、
前記蒸発内筒と前記蒸発外筒は、水素生成装置の蒸発部を構成し、前記蒸発内筒の外周面と前記蒸発外筒の内周面との間に、外部から供給される前記原料ガスと水とを、前記蒸発内筒から伝わる熱で加熱しながら螺旋状に重力に逆らうことなく流すための流路が形成され、
前記蒸発外筒の下端部は、前記蒸発内筒側に曲げられて、前記蒸発内筒の下端よりも高い位置で、前記蒸発内筒の外周面に接合され、
前記蒸発外筒の下端近傍には、前記混合ガスを半径方向外向きに排出するための排出孔が形成され、
前記改質触媒内筒は、鉛直方向に中心軸を有し、下端開口部が塞がれた有底円筒形状であり、
前記改質触媒内筒は、前記蒸発内筒を下方に延長するような形で、前記改質触媒内筒の上端部が前記蒸発内筒の外周面における下端部に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成され、
前記改質触媒外筒は、鉛直方向に中心軸を有し、前記改質触媒内筒を囲むように配置され、
前記改質触媒外筒の上端は、前記改質触媒内筒の上端よりも低い位置にあり、前記改質触媒外筒の下端は、前記改質触媒内筒の下端よりも高い位置にあり、
前記改質触媒外筒は、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部を備え、
前記改質触媒上外筒は、鉛直方向に中心軸を有し、前記蒸発外筒および前記折り返し筒部よりも径が大きい円筒形の側面部と、外周端が前記側面部の上端部に接続され内周端が前記蒸発外筒の外周面における下部で前記蒸発外筒の前記排出孔よりも上方に溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の上面部と、を有し、
前記改質触媒上外筒の前記側面部の下端部が、前記改質触媒外筒の前記折り返し筒部における外周面に溶接で取り付け可能に構成され、
前記水トラップ部は、鉛直方向に中心軸を有し、径が前記蒸発外筒よりも大きくて前記改質触媒上外筒の前記側面部よりも小さく前記蒸発外筒の前記排出孔から半径方向外向きに排出される前記混合ガスが前記改質触媒上外筒の前記側面部にまで到達するのを遮る円筒状の壁と、外周端が前記壁の下端部に接続され内周端が前記蒸発内筒の外周面における下部で前記蒸発外筒よりも下方に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の底面部と、を有し、
前記水トラップ部の前記壁の上端と前記改質触媒上外筒の前記上面部との間と、前記水トラップ部の前記壁と前記蒸発外筒との間と、前記水トラップ部の前記壁と前記改質触媒上外筒の前記側面部との間には、それぞれ前記混合ガスが通流可能な隙間があり、
前記改質触媒は、前記混合ガスから水蒸気改質反応によりCOを含んだ一次水素含有ガスを生成するように構成された粒状の触媒であって、前記改質触媒内筒と前記改質触媒外筒との間の所定高さ範囲に充填され、
前記改質下棚板は、前記改質触媒を下から支えるドーナツ盤形状の通気性の棚板であって、前記改質触媒が所定高さ範囲から下方に出ないように前記改質触媒内筒と前記改質触媒外筒との間に配置され、
前記改質上棚板は、前記改質触媒の充填部の上面を覆うドーナツ盤形状の通気性の棚板であって、前記改質上棚板の外周面が、前記改質触媒外筒の前記筒部本体の内周面におけ
る上端部と対向する位置で、前記改質触媒が所定高さ範囲から上方に出ないように前記改質触媒内筒と前記改質触媒外筒との間に配置された、改質触媒ユニット。
【請求項2】
前記改質上棚板、および前記改質下棚板は、いずれか一方が前記改質触媒の充填前に前記改質触媒内筒と前記改質触媒外筒とに接合され、前記改質触媒充填後に他方が前記改質触媒内筒と、前記改質触媒外筒の両方または、いずれか一方と接合される、請求項1に記載の改質触媒ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成装置用の改質触媒ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、改質部、水蒸発部、一酸化炭素低減部の各々を加熱部の周りに同心円筒状に配設する水素生成装置において、水蒸発部に水トラップ部を設けて、水が改質部へ浸入することによる改質触媒の劣化防止を図る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-19159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、改質触媒内筒の外周面と改質触媒外筒の内周面と改質下棚板の上面と改質上棚板の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒が充填されており、水トラップ部の下方に位置するように、水素生成装置の蒸発部に取り付けられる改質触媒ユニットであって、水トラップ部の外径が改質触媒充填部の外径よりも大きい場合でも、水素生成装置の蒸発部に取り付けることができる改質触媒ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における改質触媒ユニットは、改質触媒内筒の外周面と改質触媒外筒の内周面と改質下棚板の上面と改質上棚板の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒が充填されており、改質触媒内筒が、水トラップ部よりも下側で鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発内筒の下端部に溶接で取り付けられ、改質触媒外筒が、鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発外筒の下側に改質触媒上外筒を介して溶接で取り付けられ、原料ガスと水蒸気との混合ガスが供給されるユニットである。
【0006】
蒸発内筒と蒸発外筒は、水素生成装置の蒸発部を構成する。蒸発内筒の外周面と蒸発外筒の内周面との間には、外部から供給される原料ガスと水とを、蒸発内筒から伝わる熱で加熱しながら螺旋状に重力に逆らうことなく流すための流路が形成されている。
【0007】
蒸発外筒の下端部は、蒸発内筒側に曲げられて、蒸発内筒の下端よりも高い位置で、蒸発内筒の外周面に接合されている。蒸発外筒の下端近傍には、混合ガスを半径方向外向きに排出するための排出孔が形成されている。
【0008】
改質触媒内筒は、鉛直方向に中心軸を有する有底円筒形状で、下端開口部が塞がれている。改質触媒内筒は、蒸発内筒を下方に延長するような形で、改質触媒内筒の上端部が蒸発内筒の外周面における下端部に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されている。
【0009】
改質触媒外筒は、鉛直方向に中心軸を有する形状で、改質触媒内筒を囲むように配置されている。改質触媒外筒の上端は、改質触媒内筒の上端よりも低い位置にあり、改質触媒外筒の下端は、改質触媒内筒の下端よりも高い位置にある。改質触媒外筒は、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部を備えている。
【0010】
改質触媒上外筒は、鉛直方向に中心軸を有し、蒸発外筒および折り返し筒部よりも径が大きい円筒形の側面部と、外周端が側面部の上端部に接続され内周端が蒸発外筒の外周面
における下部で蒸発外筒の排出孔よりも上方に溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の上面部と、を有している。改質触媒上外筒の側面部の下端部が、改質触媒外筒の折り返し筒部における外周面に溶接で取り付け可能に構成されている。
【0011】
水トラップ部は、鉛直方向に中心軸を有し、径が蒸発外筒よりも大きくて改質触媒上外筒の側面部よりも小さく蒸発外筒の排出孔から半径方向外向きに排出される混合ガスが改質触媒上外筒の側面部にまで到達するのを遮る円筒状の壁と、外周端が壁の下端部に接続され内周端が蒸発内筒の外周面における下部で蒸発外筒よりも下方に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の底面部と、を有している。
【0012】
水トラップ部の壁の上端と改質触媒上外筒の上面部との間と、水トラップ部の壁と蒸発外筒との間と、水トラップ部の壁と改質触媒上外筒の側面部との間には、それぞれ混合ガスが通流可能な隙間がある。
【0013】
改質触媒は、混合ガスから水蒸気改質反応によりCOを含んだ一次水素含有ガスを生成するように構成された粒状の触媒であって、改質触媒内筒と改質触媒外筒との間の所定高さ範囲に充填されている。
【0014】
改質下棚板は、改質触媒を下から支えるドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質下棚板は、改質触媒が所定高さ範囲から下方に出ないように改質触媒内筒と改質触媒外筒との間に配置されている。
【0015】
改質上棚板は、改質触媒の充填部の上面を覆うドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質上棚板は、改質上棚板の外周面が、改質触媒外筒の筒部本体の内周面における上端部と対向する位置で、改質触媒が所定高さ範囲から上方に出ないように改質触媒内筒と改質触媒外筒との間に配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本開示における改質触媒ユニットは、蒸発外筒の下側に改質触媒上外筒を介して溶接で取り付けられる改質触媒外筒が、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部を備えおり、改質触媒上外筒の側面部の下端部が、改質触媒外筒の折り返し筒部における外周面に溶接で取り付け可能に構成されており、折り返し筒部の径と改質触媒上外筒の側面部の径が、水トラップ部の円筒状の壁の径よりも大きい。
【0017】
上記構成により、水トラップ部よりも先に、改質触媒上外筒を下方から蒸発外筒に組み込んだ後に、蒸発内筒と水トラップ部との溶接の邪魔にならない位置まで改質触媒上外筒を上方にずらして、蒸発内筒と水トラップ部との溶接と、蒸発内筒と改質触媒内筒との溶接を、この順位に行い、それから、改質触媒上外筒を所定の位置まで下げて、改質触媒上外筒の上部を蒸発外筒に溶接する作業と、改質触媒上外筒の側面部の下端部を改質触媒外筒の折り返し筒部における外周面に溶接する作業とを、行うことができる。
【0018】
そのため、改質触媒充填部の外径より水トラップ部の外径が大きい場合でも、改質触媒ユニットを、予め改質触媒が充填された自立可能なサブユニットとして製造し、改質触媒ユニットを水素生成装置の蒸発部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1における改質触媒ユニットの概略構成を示す縦断面図
図2】実施の形態1における改質触媒ユニットが取り付けられる前の蒸発部CO低減除去部ユニットの概略構成を示す縦断面図
図3】実施の形態1における水素生成装置を各ユニットに分解した状態を示す分解縦断面図
図4】実施の形態1における改質触媒ユニットを蒸発部CO低減除去部ユニットの蒸発部に取り付けた状態を示す縦断面図
図5】実施の形態1における改質触媒ユニットを用いた水素生成装置の概略構成を示す縦断面図
図6】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質触媒内筒と改質触媒外筒とに改質上棚板を溶接で取り付けている状態を示す縦断面図
図7】実施の形態1の改質触媒ユニットに改質触媒を充填する前に、改質触媒内筒と改質触媒外筒との間に改質上棚板を取り付けた改質触媒ユニットを上下反転した状態を示す縦断面図
図8】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質触媒を充填した状態を示す縦断面図
図9】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質触媒を充填して改質下棚板をセットした状態を示す縦断面図
図10】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質下棚板を溶接で改質触媒外筒に取り付けている状態を示す縦断面図
図11】実施の形態1における蒸発部CO低減除去部ユニットの蒸発外筒に改質触媒上外筒を、下方から組み込み、改質触媒上外筒の取り付け位置よりも上方にずらした状態を示す縦断面図
図12】実施の形態1における蒸発部CO低減除去部ユニットの蒸発内筒に水トラップ部を溶接で取り付けている状態を示す縦断面図
図13】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質触媒内筒を蒸発部CO低減除去部ユニットの蒸発内筒に溶接で取り付けている状態を示す縦断面図
図14】実施の形態1における改質触媒上外筒を所定の位置まで下げた状態を示す縦断面図
図15】実施の形態1における改質触媒上外筒を蒸発外筒に溶接で取り付けている状態を示す縦断面図
図16】実施の形態1の改質触媒ユニットにおける改質触媒外筒と改質触媒上外筒とを全周溶接している状態を示す縦断面図
図17】実施の形態1における蒸発部CO低減除去部ユニットの第1隔壁に第2隔壁を溶接で取り付けている状態を示す縦断面図
図18】実施の形態1における蒸発部CO低減除去部ユニットの燃焼筒にバーナユニットを取り付けた状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、都市ガス等の炭化水素系の原料ガスから、水蒸気改質反応によって水素を生成し、さらに副生した一酸化炭素(CO)などの不純物を除去することによって、燃料電池発電装置の燃料ガス等に適用可能な水素リッチな水素含有ガスを生成する技術が、水素生成装置によって実現されていた。
【0021】
改質部、蒸発部、CO低減部の各々を、加熱部の周りに同心円筒状に配設する水素生成装置において、蒸発部の下方で改質部の上方に水トラップ部を設けて、水が改質部へ浸入することによる改質触媒の劣化防止を図る構成が一般的であった。
【0022】
しかしながら、従来の水素生成装置においては、内筒の外周面と外筒の内周面との間における上部に、弦巻ばねのように螺旋状に曲げた丸棒を配置して蒸発部を構成し、内筒の外周面と外筒の内周面との間における下部に、改質触媒を充填して改質部を構成し、蒸発部の下方で改質部の上方となる位置で水トラップ部を内筒の外周面に取り付け、外筒の外周面と第1隔壁のとの間における上部(蒸発部の外周側)に、CO低減用の触媒を充填し
てCO低減部を構成しているため、部品の取り付けや、触媒の充填や、溶接の作業性が悪く、水素生成装置の製造組立が容易でなく製造コストの低減が難しい、という課題があった。
【0023】
そうした状況下において、発明者らは、改質触媒内筒の外周面と改質触媒外筒の内周面と改質下棚板の上面と改質上棚板の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒を充填したものを、予め組み立てを済ませ自立可能なサブユニット(改質触媒ユニット)として製造し、サブユニット化した改質触媒ユニットを、蒸発内筒の外周面と蒸発外筒の内周面との間に螺旋状の流路を形成した蒸発部に、取り付けるようにすれば、水素生成装置の製造組立が容易になり、水素生成装置の製造コストを低減できるのではないか、と着想した。
【0024】
ここで自立可能な状態とは、改質触媒ユニットを製造する際に、改質触媒内筒と改質触媒外筒のずれが生じることで触媒の脱落を起こすことなく、容易に組み立てることができる状態である。改質触媒ユニットは、他のユニットの製造ラインとは別のサブラインで組み立てたり、メインラインから独立した離れ小島の作業場で組み立てたりできる。
【0025】
また、蒸発部で蒸発しなかった水が、改質部へ浸入するリスクをさらに低減するには、水トラップ部の外径を大きくする必要があり、内筒に近いため加熱され易い内周側の改質触媒と内筒から離れた外周側の改質触媒の温度差を小さくし、ルテニウム等の高価な改質触媒の使用量を減らすには、改質触媒が充填される部分の半径方向の幅を小さくする必要があった。
【0026】
そして、水トラップ部の外径が改質触媒充填部の外径よりが大きくなると、水トラップ部の大きさが障害(邪魔)になって、改質触媒外筒を蒸発外筒に、接続することが困難であるという課題があることを発見し、その課題を解決するために本開示の主題を構成するに至った。
【0027】
そこで、本開示は、改質触媒内筒の外周面と改質触媒外筒の内周面と改質下棚板の上面と改質上棚板の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒が充填されており、水トラップ部の下方に位置するように、水素生成装置の蒸発部に取り付けられる改質触媒ユニットであって、水トラップ部の外径が改質触媒充填部の外径よりも大きい場合でも、水素生成装置の蒸発部に取り付けることができる改質触媒ユニットを提供する。
【0028】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0029】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0030】
(実施の形態1)
以下、図1図18を用いて、実施の形態1を説明する。
【0031】
[1-1.構成]
(水素生成装置の構成)
図1図4図5に示すように、改質触媒ユニット100は、蒸発部CO低減除去部ユ
ニット200の蒸発部121の下端部に、水トラップ部138を間に挟んで、改質触媒上外筒133を介して、溶接で取り付けられるユニットであって、改質触媒内筒1と、改質触媒外筒2と、改質触媒50と、改質上棚板3と、改質下棚板4と、を備えている。
【0032】
改質触媒ユニット100は、改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面と改質下棚板4の上面と改質上棚板3の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒50が充填されている。
【0033】
改質触媒ユニット100は、改質触媒内筒1が、水トラップ部138よりも下側で鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発内筒131の下端部に溶接で取り付けられ、改質触媒外筒2が、鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発外筒132の下側に改質触媒上外筒133を介して溶接で取り付けられ、原料ガスと水蒸気との混合ガスが供給されるユニットである。
【0034】
蒸発内筒131の外周面と蒸発外筒132の内周面との間には、外部から供給される原料ガスと水とを、蒸発内筒131から伝わる熱で加熱しながら螺旋状に重力に逆らうことなく流すための流路が形成されている。
【0035】
蒸発外筒132の下端部は、蒸発内筒131側に曲げられて、蒸発内筒131の下端よりも高い位置で、蒸発内筒131の外周面に接合されている。
【0036】
蒸発外筒132の下端部における蒸発内筒131の外周面に接合される部分は、蒸発内筒131に対する溶接代を確保するために、蒸発内筒131の外周面との接触面(蒸発内筒131の外周面と近接し対向する面)の鉛直方向(軸心方向)の幅が蒸発外筒132の厚みよりも広くなるように、フランジが下向きに延設されている。
【0037】
蒸発外筒132の下端近傍には、混合ガスを半径方向外向きに排出するための排出孔137が形成されている。
【0038】
改質触媒内筒1は、鉛直方向に中心軸を有する有底円筒形状で、下端開口部が塞がれている。改質触媒内筒1は、蒸発内筒131を下方に延長するような形で、改質触媒内筒1の上端部が蒸発内筒131の外周面における下端部に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されている。
【0039】
改質触媒外筒2は、鉛直方向に中心軸を有する形状で、改質触媒内筒1を囲むように配置されている。改質触媒外筒2の上端は、改質触媒内筒1の上端よりも低い位置にあり、改質触媒外筒2の下端は、改質触媒内筒1の下端よりも高い位置にある。改質触媒外筒2は、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部6を備えている。
【0040】
改質触媒上外筒133は、鉛直方向に中心軸を有し、蒸発外筒132および折り返し筒部6よりも径が大きい円筒形の側面部と、外周端が側面部の上端部に接続され内周端が蒸発外筒132の外周面における下部で蒸発外筒132の排出孔137よりも上方に溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の上面部と、を有している。
【0041】
改質触媒上外筒133は、蒸発外筒132に対する同軸度と溶接代を確保するために、蒸発外筒132の外周面との接触面(蒸発外筒132の外周面と近接し対向する面)の鉛直方向(軸心方向)の幅が改質触媒上外筒133の厚みよりも広くなるように、ドーナツ盤形状の上面部の内周縁部分に、フランジが上向きに延設されている。このフランジは、改質触媒上外筒133のドーナツ盤形状の上面部の内周の縁が上方に折り曲げられたもの
である。
【0042】
改質触媒上外筒133は、改質触媒上外筒133のフランジ部を蒸発外筒132に下方から取り付け後で、改質触媒上外筒133のフランジ部を蒸発外筒132に溶接で固定する前の状態では、改質触媒上外筒133を軸心方向(鉛直方向)の上下にスライド移動可能であるとともに、改質触媒上外筒133の自重で蒸発外筒132における取り付け位置から滑り落ちないように、フランジ部の寸法が設定されている。
【0043】
改質触媒上外筒133の側面部の下端部は、改質触媒外筒2の折り返し筒部6における外周面に溶接で取り付け可能に構成されている。
【0044】
水トラップ部138は、鉛直方向に中心軸を有し、径が蒸発外筒132よりも大きくて改質触媒上外筒133の側面部よりも小さく蒸発外筒132の排出孔137から半径方向外向きに排出される混合ガスが改質触媒上外筒133の側面部にまで到達するのを遮る円筒状の壁と、外周端が壁の下端部に接続され内周端が蒸発内筒131の外周面における下部で蒸発外筒132よりも下方に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の底面部と、を有している。
【0045】
水トラップ部138は、蒸発内筒131に対する同軸度と溶接代を確保するために、蒸発内筒131の外周面との接触面(蒸発内筒131の外周面と近接し対向する面)の鉛直方向(軸心方向)幅が水トラップ部138の厚みよりも広くなるように、ドーナツ盤形状の底面部の内周縁部分に、フランジが下向きに延設されている。このフランジは、水トラップ部138のドーナツ盤形状の底面部の内周の縁が下方に折り曲げられたものである。
【0046】
水トラップ部138は、水トラップ部138のフランジ部を蒸発内筒131に下方から取り付け後で、水トラップ部138のフランジ部を蒸発内筒131に溶接で固定する前の状態では、水トラップ部138の自重で蒸発内筒131における取り付け位置から滑り落ちないように、フランジ部の寸法が設定されている。
【0047】
水トラップ部138の壁の上端と改質触媒上外筒133の上面部との間と、水トラップ部138の壁と蒸発外筒132との間と、水トラップ部138の壁と改質触媒上外筒133の側面部との間には、それぞれ混合ガスが通流可能な隙間がある。
【0048】
改質触媒50は、混合ガスから水蒸気改質反応によりCOを含んだ一次水素含有ガスを生成するように構成された粒状の触媒であって、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間の所定高さ範囲に充填されている。
【0049】
本実施の形態では、改質触媒50として、直径が2~3mmの粒状の白金系の触媒を用いる。改質触媒50は、白金系の触媒に限らず、白金系の触媒の代わりに、ロジウム系、ルテニウム系、ニッケル系の触媒を用いてもよい。
【0050】
改質下棚板4は、外周の縁が下方に折り曲げられたドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質下棚板4は、改質触媒50を下から支える棚板であって、改質触媒50が所定高さ範囲から下方に出ない(改質触媒50が重力で落下しない)ように改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間に配置されて、外周の縁の下端と改質触媒外筒2の下端とが溶接で固定されている(外周の縁が改質触媒外筒2の内周面に固定されている)。
【0051】
改質下棚板4は、改質下棚板4の変形の抑制と改質触媒外筒2に対する同軸度と溶接代を確保するために、改質触媒外筒2の内周面との接触面(改質触媒外筒2の内周面と近接し対向する面)の鉛直方向(軸心方向)幅が改質下棚板4の厚みよりも広くなるように、
改質下棚板4の外周縁部分に、フランジが下向きに延設されている。このフランジは、改質下棚板4の外周の縁が、下方に折り曲げられたものである。
【0052】
改質下棚板4には、改質触媒50の粒子径より小さい直径が1mmの通気口が形成されている。改質下棚板4は、改質下棚板4の外周の縁と改質触媒外筒2の内周面との間に、改質触媒50の粒子径より小さい隙間であって、改質下棚板4を改質触媒外筒2と改質触媒内筒1との間に改質触媒内筒1の底面側から挿入して、改質下棚板4の外周の縁を改質触媒外筒2の内周面に溶接で固定するのに適した隙間を設けている。
【0053】
改質下棚板4は、水素生成装置500の運転時に加熱器120による熱の影響で改質触媒外筒2に比べて軸方向と半径方向の寸法が変化し易い改質触媒内筒1の影響を受けないようにするため、改質下棚板4の内周縁と改質触媒内筒1の外周面との間に、改質触媒50の粒子径よりも小さくて、改質下棚板4の外周の縁と改質触媒外筒2の内周面との隙間よりも大きい隙間を設けている。
【0054】
改質上棚板3は、改質触媒50の充填部の上面を覆うドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質上棚板3は、改質上棚板3の外周面が、改質触媒外筒2の筒部本体の内周面における上端部と対向する位置で、改質触媒50が所定高さ範囲から上方に出ない(改質触媒ユニット100を上下反転した場合に改質触媒50が重力で落下しない)ように改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間に配置されている。
【0055】
改質上棚板3は、改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面とに溶接で固定されている。改質上棚板3には、改質触媒50の粒子径より小さい直径が1mmの通気口が形成されている。
【0056】
改質上棚板3の内周側の縁と改質触媒内筒1の外周面との間と、改質上棚板3の外周側の縁と改質触媒外筒2の内周面との間には、改質触媒50の粒子径より小さい隙間であって、改質上棚板3を改質触媒外筒2と改質触媒内筒1との間に上方から挿入して、改質上棚板3の内周側の縁を改質触媒内筒1の外周面に、改質上棚板3の外周側の縁を改質触媒外筒2の内周面に、それぞれ溶接で固定するのに適した隙間を設けている。
【0057】
図2図5に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発部121は、鉛直方向に中心軸を有する蒸発内筒131と、鉛直方向に中心軸を有し蒸発内筒131よりも鉛直方向の長さが短く蒸発内筒131を囲むように配置された蒸発外筒132との間に、外部から供給される改質水が蒸発内筒131から伝わるバーナユニット300の燃焼による熱(燃焼排ガスの熱を含む)で加熱されながら螺旋状に流れる螺旋状流路139が形成され、外部から供給される炭化水素系の原料ガスと水蒸気との混合ガスを改質触媒ユニット100に供給するように構成されている。
【0058】
蒸発内筒131と蒸発外筒132を水平な面で切断した場合の断面は、それぞれ円形である。
【0059】
螺旋状流路139を形成するために、蒸発内筒131と蒸発外筒132との間には、弦巻ばねのように螺旋状に曲げた棒材が配置されており、その棒材の外周面は蒸発内筒131の外周面と蒸発外筒132の内周面とに接触している。
【0060】
蒸発外筒132の上端は、蒸発内筒131側に曲げられて、蒸発内筒131の上端よりも低い位置で、蒸発内筒131の外周面に接合されており(図示せず)、蒸発外筒132の下端は、蒸発内筒131側に曲げられて、蒸発内筒131の下端よりも高い位置で、蒸発内筒131の外周面に接合されている。
【0061】
蒸発外筒132の上端に近い部分には、外部から供給される改質水を蒸発部121内に供給する改質水供給管(図示せず)と、外部から供給される炭化水素系の原料ガスを蒸発部121内に供給する原料ガス供給管142とが形成されている。原料ガスには、都市ガスやLPガスを用いることができる。
【0062】
蒸発外筒132の下端に近い部分には、改質水が螺旋状流路139を流れるときに加熱されて気化した水蒸気と原料ガスとの混合ガスを、蒸発部121内から排出するための排出孔137が形成されている。
【0063】
CO低減除去器123は、鉛直方向に中心軸を有し蒸発外筒132を囲む第1隔壁134と蒸発外筒132との間に、CO低減除去触媒を充填して形成される。CO低減除去器123に充填されるCO低減除去触媒は、直径が2~3mmの粒状のCu-Zn系の触媒である。CO低減除去触媒は、Cu-Zn系の触媒に限らず、Cu-Zn系の触媒の代わりにRu系の触媒を用いてもよい。
【0064】
CO低減除去器底板160は、内径が蒸発外筒132の外径よりも大きく、外径が第1隔壁134の内径よりも小さく、CO低減除去触媒がCO低減除去器123から落下しないようにCO低減除去触媒を下から支持する通気構造のドーナツ盤形状の部材である。CO低減除去器底板160には、CO低減除去触媒の粒子径より小さい直径が1mmの通気口が形成されている。
【0065】
CO低減除去器仕切り板161は、内径が蒸発外筒132の外径よりも大きく、外径が第1隔壁134の内径よりも小さく、CO低減除去触媒がCO低減除去器123から流出しないように、CO低減除去触媒を上から押さえる通気構造のドーナツ盤形状の部材である。CO低減除去器仕切り板161には、CO低減除去触媒の粒子径より小さい直径が1mmの通気口が形成されている。
【0066】
水素含有ガス排出管136は、第1隔壁134に設けられ、二次水素含有ガスを外部へ排出するように構成されている。
【0067】
第1隔壁134は、鉛直方向に中心軸を有し、蒸発外筒132よりも鉛直方向の長さが短い。そして、第1隔壁134の上端部は、蒸発外筒132の上端部よりも低い位置にあり、第1隔壁134の下端部は、蒸発外筒132の下端部よりも高い位置にある。第1隔壁134を水平な面で切断した場合の断面は、円形である。
【0068】
図3図4図5に示すように水素生成装置500は、改質触媒ユニット100と、蒸発部CO低減除去部ユニット200と、バーナユニット300と、改質触媒上外筒133と、水トラップ部138と、第2隔壁135と、を組み合わせて構成される。
【0069】
リターン流路141は、改質触媒50から下方に排出された一次水素含有ガスの流れを上向きに変えてCO低減除去器123(CO低減除去触媒)に導く流路である。
【0070】
リターン流路141は、蒸発外筒132の下部と、第1隔壁134の下部と、CO低減除去器底板160と、改質触媒外筒2と、改質触媒上外筒133と、鉛直方向に中心軸を有し下端開口部が塞がれた有底円筒形状を有する第2隔壁135に囲まれた流路である。
【0071】
第2隔壁135と、改質触媒外筒2および改質触媒上外筒133との間には一次水素含有ガスが流れるように隙間が設けられている。
【0072】
第2隔壁135の内径は、第1隔壁134の外径と略同じ寸法で、第1隔壁134を下方に延長するような形で第1隔壁134の下側に接合されている。
【0073】
第2隔壁135の底部は、改質触媒内筒1の底部よりも大きく、改質触媒内筒1の底部よりも下方に位置するように構成されている。
【0074】
バーナユニット300は、加熱器120と、鉛直方向に中心軸を有し加熱器120を囲む燃焼筒130と、を備え、蒸発部121(蒸発内筒1)の内周側に配置される。
【0075】
バーナユニット300は、燃焼用空気が混合された可燃性ガスを燃焼して燃焼排ガスを排出するバーナを備えた加熱器120と、加熱器120に可燃性ガスを供給するガス供給管(図示せず)と、加熱器120に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給管(図示せず)と、を備えている。
【0076】
可燃性ガスには、原料ガス(都市ガスやLPガス)を用いることができ、水素生成装置500が燃料電池に水素含有ガスを燃料ガスとして供給する場合は、燃料電池で利用されずに燃料電池から排出される燃料ガス(アノードオフガス)を用いることができる。
【0077】
加熱器120は、下向きの炎を形成するように構成されている。燃焼筒130は、燃焼筒130の内側を、燃焼排ガスが下方に流れ、燃焼筒130の外周面と蒸発内筒131の内周面との隙間と燃焼筒130の外周面と改質触媒内筒1の内周面との隙間とを、燃焼排ガスが上方に流れるように構成されている。
【0078】
蒸発内筒131の下側には、燃焼排ガスが上方に流れる流路が、蒸発内筒131よりも下側に延長されるように、改質触媒内筒1が接続される。燃焼筒130の下端は、改質触媒内筒1の底部よりも高い位置で、改質触媒内筒1の底部に近接している。
【0079】
蒸発部121とバーナユニット300と改質触媒ユニット100と燃焼筒130は、加熱器120のバーナの燃焼で発生した燃焼排ガスが、燃焼筒130の内周面に沿って燃焼筒130の内周側を下方に流れた後に、改質触媒内筒1の底部と燃焼筒130の下端との隙間を通って燃焼筒130の外側に出て上方に折り返して、燃焼筒130の外周面と改質触媒内筒1の内周面との隙間、燃焼筒130の外周面と蒸発内筒131の内周面との隙間を、この順に通流して、蒸発内筒131における上部に設けられた燃焼排ガス出口から水素生成装置500の外部に排出されるように構成されている。
【0080】
水素生成装置500は、加熱器120のバーナの燃焼で発生した熱(燃焼排ガスの熱を含む)が、改質触媒内筒1を介して改質触媒50に伝わって改質触媒50を改質反応に適した温度に加熱すると共に、蒸発内筒131を介して蒸発部121内を螺旋状に流れる改質水に伝わって改質水を蒸発させるように構成されている。なお、図1図4図10において、符号の5は、溶接部である。
【0081】
[1-2.動作]
以上のように構成された改質触媒ユニット100及び水素生成装置500について、以下その動作、作用を説明する。
【0082】
水素生成装置500において、必要な水素量を得るために、原料ガスと改質水が、適正な比率で改質水供給管(図示せず)と原料ガス供給管(図示せず)から蒸発部121に供給される。
【0083】
蒸発部121に供給された改質水は、蒸発部121の螺旋状流路139に沿って流れな
がら蒸発内筒131を介して伝わる加熱器120の熱(燃焼排ガスの熱を含む)によって水蒸気となり、原料ガスと混合される。
【0084】
原料ガスと水蒸気の混合ガスは、改質触媒ユニット100へ供給され、改質触媒内筒1を介して伝わる加熱器120の熱(燃焼排ガスの熱を含む)によって改質反応に適した温度に加熱された改質触媒50により水蒸気改質反応が行われて一次水素含有ガスとなる。
【0085】
改質触媒ユニット100から排出された一次水素含有ガスは、リターン流路141を通流して、CO低減除去器123のCO低減除去触媒に下方から供給され、CO低減除去触媒の化学反応により、一次水素含有ガス中のCO濃度が0.1~0.2%程度まで低減されて二次水素含有ガスとなる。
【0086】
このとき、CO低減除去触媒は、改質触媒ユニット100(改質触媒50)から排出されてCO低減除去触媒に流入する一次水素含有ガスの熱と、蒸発部121からCO低減除去触媒に伝わる熱とによって、化学反応に適した温度に加熱されている。
【0087】
CO低減除去触媒から排出された二次水素含有ガスは、水素含有ガス排出管136から水素生成装置500の外に出ていき、燃料電池などの水素利用機器に供給される。
【0088】
加熱器120のバーナの燃焼で発生した燃焼排ガスは、燃焼筒130の内周面に沿って燃焼筒130の内周側を下方に流れた後に、改質触媒内筒1の底部と燃焼筒130の下端との隙間を通って燃焼筒130の外側に出て上方に折り返して、燃焼筒130の外周面と改質触媒内筒1の内周面との隙間、燃焼筒130の外周面と蒸発内筒131の内周面との隙間を、この順に放熱しながら通流して、蒸発内筒131における上部に設けられた燃焼排ガス排出管143から水素生成装置500の外部に排出される。
【0089】
(改質触媒ユニットの組立手順)
次に、予め組み立てて自立可能なサブユニットとしての改質触媒ユニット100の組立手順について説明する。
【0090】
図6に示すように、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2とを、それぞれの中心軸が重なって改質触媒外筒2が改質触媒内筒1に対して所定高さになるように配置してから、改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面との間に、改質触媒外筒2の上端と改質上棚板3の上面とが同じ高さになる(改質触媒外筒2の上端面と改質上棚板3の上面とが同一平面上に位置する)ように、改質上棚板3を配置する。
【0091】
次に、改質上棚板3の内周の縁と改質触媒内筒1の外周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱して改質上棚板3の内周の縁を改質触媒内筒1の外周面に溶接で固定するとともに、改質上棚板3の外周の縁と改質触媒外筒2の内周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱して改質上棚板3の外周の縁を改質触媒外筒2の内周面に溶接で固定する。
【0092】
改質上棚板3の内周側と外周側の隙間における上部を溶接トーチで加熱して、改質上棚板3を改質触媒内筒1と改質触媒外筒2とに溶接で固定するときには、改質触媒50が溶接個所の近くに存在しないので、改質上棚板3を改質触媒内筒1と改質触媒外筒2とに溶接で固定するときの熱で、改質触媒50が加熱されて劣化することは無い。
【0093】
この状態で、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との高さ方向の相対位置関係が定まるとともに、改質触媒50が収納される空間の内筒と外筒と底板部分が構成される。これにより、改質触媒ユニット100は、改質下棚板4を付ける前に自立可能となる。
【0094】
次に、図7に示すように、改質上棚板3が重力方向(鉛直方向)下になる(改質上棚板3が改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面との間の空間の底面になる)ように、改質触媒ユニット100の未完成品を上下反転する。
【0095】
この状態で、改質上棚板3が改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面との間の空間の底面になる。これにより、改質触媒50が収納される空間の重力方向の上が開放される。
【0096】
次に、図8に示すように、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間で改質上棚板3の上に改質触媒50を所定量充填し、振動等を付与して最密充填させる。
【0097】
これにより、改質触媒50が、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2と改質上棚板3とに囲まれた部分に最密充填され、改質触媒50の充填部の上に改質下棚板4を配置する空間ができる。
【0098】
次に、図9に示すように、改質触媒50の充填部の上に、改質下棚板4を、改質下棚板4のフランジが上向きに延び、改質下棚板4のフランジの先端部と、改質下棚板4のフランジに近接する改質触媒外筒2の端部とが同じ高さで揃うように配置する。
【0099】
これにより、改質下棚板4の外周の縁が上方(図9の状態での上方)に折り曲げられた外周部(改質下棚板4のフランジ部)が改質触媒外筒2と溶接可能な位置に配置される。
【0100】
次に、図10に示すように、改質触媒外筒2の内周面と改質下棚板4の外周の縁が上方(図10の状態での上方)に折り曲げられた外周部(フランジ部)との隙間における上部(上下反転した状態での上部)を全周にわたって溶接トーチで加熱して改質下棚板4の外周の縁が上方(図10の状態での上方)に折り曲げられた外周部(フランジ部)を改質触媒外筒2の内周面に溶接で固定する。
【0101】
これにより、改質触媒ユニット100は、改質触媒50を充填した状態で自立でき、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2のずれが生じることで触媒の脱落を起こすことなく、容易に組み立てることができる状態となり改質触媒ユニット100の組立が完了する。
【0102】
さらに、改質下棚板4を改質触媒外筒2の内周面に溶接で固定するときに溶接トーチで加熱される部分が、改質下棚板4のフランジ部の高さ(改質下棚板4のフランジ部の鉛直方向の長さ)だけ、改質触媒50の充填部から離れているので、溶接の熱による改質触媒50の劣化が抑制される。
【0103】
改質下棚板4のフランジ部の高さ(改質下棚板4のフランジ部の鉛直方向の長さ)は、フランジ部の先端の外周側の隙間(改質触媒外筒2の内周面と改質下棚板4のフランジ部との隙間における上部)を溶接トーチで加熱するときの熱が、改質触媒50に伝わって改質触媒50が劣化しないように、改質下棚板4と改質触媒外筒2の材料(熱伝導率)と厚みを考慮して、適切に設定している。
【0104】
(改質触媒ユニットの水素生成装置への取り付け)
図11に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発外筒132の外周面に沿うように、改質触媒上外筒133の内径が小さい側(改質触媒上外筒133の上面部のフランジ部)を、蒸発部CO低減除去部ユニット200の下方からCO低減除去器底板160に接するところまで、改質触媒上外筒133を溶接で固定する位置よりも上方にずらして配置する。
【0105】
このとき、上方にずらして配置した改質触媒上外筒133の側面部の下端の鉛直方向の高さが、後に、蒸発内筒131における、水トラップ部138の蒸発内筒131への溶接固定のために、溶接トーチで水トラップ部138のフランジ部とともに加熱する箇所よりも鉛直方向の上側になるようにする。
【0106】
ここで、改質触媒上外筒133の径が大きい側の内径(改質触媒上外筒133の側面部の内径)が水トラップ部138の外径よりも大きい。
【0107】
これにより、改質触媒上外筒133の次に、水トラップ部138を、蒸発部CO低減除去部ユニット200の下方から蒸発内筒131の所定高さ位置に取り付けて溶接で固定する作業をするときに、水トラップ部138と改質触媒上外筒133は干渉しない(改質触媒上外筒133の存在が、その作業の邪魔にならない)。
【0108】
次に、図12に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発内筒131の外周面に沿うように、水トラップ部138の内径が小さい方(水トラップ部138の底面部とフランジ部)を下にして、所定の位置に配置する。
【0109】
ここで、改質触媒上外筒133は、内径が小さい側をCO低減除去器底板160に接する(改質触媒上外筒133の側面部の下端の鉛直方向の高さが、水トラップ部138の底面部から下方に延設されたフランジ部の下端よりも鉛直方向の上側になる)ところまでずらして配置されている。
【0110】
これにより、溶接トーチと改質触媒上外筒133が干渉する(改質触媒上外筒133の存在が、水トラップ部138のフランジ部の内周面と蒸発内筒131の外周面との隙間における下部を全周にわたって溶接トーチで加熱する作業の邪魔になる)ことなく全周溶接にて蒸発内筒131と水トラップ部138とを固定できる。
【0111】
次に、図13に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発内筒131の内周面に沿うように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の下方から改質触媒ユニット100の改質触媒内筒1を所定の位置(改質触媒内筒1の上端が蒸発内筒131の下端よりも鉛直方向の上側に位置して、改質触媒内筒1の上端が水トラップ部138のフランジ部の下端よりも鉛直方向の下側に位置して、改質触媒上外筒133の側面部の下端と改質触媒上外筒133の上端との間に溶接トーチを挿入でき、改質触媒内筒1の内周面と蒸発内筒131の外周面との間に鉛直方向の溶接代を確保できる位置)に配置する。
【0112】
ここで、改質触媒内筒1の上端は、改質触媒外筒2の上端よりも高い位置にあり、改質触媒上外筒133は、内径が小さい側をCO低減除去器底板160に接する(改質触媒上外筒133の側面部の下端の鉛直方向の高さが、水トラップ部138の底面部から下方に延設されたフランジ部の下端よりも鉛直方向の上側になる)ところまでずらして配置されている。
【0113】
これにより、溶接トーチが、改質触媒上外筒133と改質触媒外筒2と水トラップ部138のいずれとも干渉する(改質触媒上外筒133と改質触媒外筒2と水トラップ部138の存在が、改質触媒内筒1の内周面と蒸発内筒131の外周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱する作業の邪魔になる)ことなく全周溶接にて蒸発内筒131と改質触媒ユニット100の改質触媒内筒1とを固定できる。
【0114】
改質触媒内筒1の上端部を蒸発内筒131の下端部の外周面に溶接で固定するときに溶接トーチで加熱される部分が、改質触媒内筒1の上端と改質上棚板3の下面との鉛直方向
の間隔だけ、改質触媒50の充填部から離れているので、溶接の熱による改質触媒50の劣化が抑制される。
【0115】
改質触媒内筒1の上端と、改質触媒外筒2の上端または改質上棚板3の上面との鉛直方向の間隔は、改質触媒内筒1の上端の内周側の隙間(改質触媒内筒1の内周面と蒸発内筒131の外周面との隙間における上部)を溶接トーチで加熱するときの熱が、改質触媒50に伝わって改質触媒50が劣化しないように、改質触媒内筒1の材料(熱伝導率)と厚みを考慮して、適切に設定している。
【0116】
次に、図14に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発外筒132の外周面に沿うように改質触媒上外筒133の内径が小さい側をCO低減除去器底板160に接するところまでずらして配置していた改質触媒上外筒133を所定の位置(改質触媒上外筒133の側面部の下端の鉛直方向の高さが、改質触媒外筒2の上端よりも低く且つ改質触媒外筒2の折り返し筒部6の下端よりも高く、水トラップ部138の円筒状の壁の上端と改質触媒上外筒133の上面部の下面との間に隙間があり、改質触媒上外筒133の内周面と折り返し筒部6の外周面との間に鉛直方向の溶接代を確保できる位置)まで下げる。
【0117】
ここで、改質触媒外筒2の折り返し筒部6の外周面は、改質触媒上外筒133の径が大きい側の内周部(改質触媒上外筒133の側面部の内周面)と溶接可能となるよう構成されている。これにより、改質触媒上外筒133が、水トラップ部138や改質触媒外筒2の折り返し筒部6と干渉しない。
【0118】
次に、図15に示すように、蒸発部CO低減除去部ユニット200の蒸発外筒132の外周面に沿うように改質触媒上外筒133を、所定の位置(改質触媒上外筒133の側面部の下端の鉛直方向の高さが、改質触媒外筒2の上端よりも低く且つ改質触媒外筒2の折り返し筒部6の下端よりも高く、水トラップ部138の円筒状の壁の上端と改質触媒上外筒133の上面部の下面との間に隙間があり、改質触媒上外筒133の側面部の内周面と折り返し筒部6の外周面との間に鉛直方向の溶接代を確保できる位置)で、改質触媒上外筒133のフランジ部の内周面と蒸発外筒132の外周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱することにより、全周溶接固定する。
【0119】
ここで、蒸発部CO低減除去部ユニット200は、改質触媒上外筒133を蒸発外筒132の外周面に溶接で固定するときに、第1隔壁134の下端の鉛直方向の高さ位置が、第1隔壁134の下端と改質触媒上外筒133の上面部との間に、溶接トーチを挿入可能な隙間ができる位置になるように構成されている。
【0120】
第1隔壁134の下端部の外周面は、第2隔壁135の上端部の内周面と後に接合するように構成されているが、改質触媒上外筒133を蒸発外筒132の外周面に溶接で固定するときは、第1隔壁134と第2隔壁135とは接合前なので、溶接トーチが、第1隔壁134と改質触媒上外筒133と第2隔壁135のいずれとも干渉する(第1隔壁134と改質触媒上外筒133と第2隔壁135の存在が、改質触媒上外筒133のフランジ部の内周面と蒸発外筒132の外周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱する作業の邪魔になる)ことなく全周溶接にて蒸発外筒132と改質触媒上外筒133とを固定できる。
【0121】
次に、図16に示すように、改質触媒ユニット100の改質触媒外筒2の折り返し筒部6の外周面と、改質触媒上外筒133の径が大きい側の内周面(改質触媒上外筒133の側面部の内周面)を、改質触媒上外筒133の側面部の内周面と折り返し筒部6の外周面との隙間における下部を全周にわたって溶接トーチで加熱することにより、全周溶接固定
する。
【0122】
この状態では、改質触媒ユニット100の改質触媒外筒2の折り返し筒部6の外周面と改質触媒上外筒133の径が大きい側の内周面との溶接にあたって、溶接トーチと干渉するものがない。
【0123】
これにより、溶接トーチが、第1隔壁134と改質触媒上外筒133と第2隔壁135のいずれとも干渉する(第1隔壁134と改質触媒上外筒133と第2隔壁135の存在が、改質触媒上外筒133の側面部の内周面と折り返し筒部6の外周面との隙間における下部を全周にわたって溶接トーチで加熱する作業の邪魔になる)ことなく全周溶接にて改質触媒上外筒133の側面部が改質触媒外筒2の折り返し筒部6の外周面に固定され、水素生成装置への改質触媒ユニット100の取り付けは完了する。
【0124】
改質触媒上外筒133の下端部を改質触媒外筒2の折り返し筒部6の外周面に溶接で固定するときに溶接トーチで加熱される部分が、改質触媒外筒2の筒部本体と折り返し筒部6との間隔と改質触媒外筒2の厚みとを合計した分だけ、改質触媒50の充填部から離れており、改質触媒外筒2の筒部本体と折り返し筒部6との間には空間があり、熱が改質触媒外筒2を介して改質触媒50に伝わるには、改質触媒外筒2において折り返し筒部6を形成するのに必要な寸法と略同じ分だけ伝わる必要があるので、溶接の熱による改質触媒50の劣化が抑制される。
【0125】
改質触媒外筒2の筒部本体と折り返し筒部6との間隔と、折り返し筒部6の鉛直方向の長さと、改質触媒上外筒133の下端と折り返し筒部6の下端との鉛直方向の間隔とは、改質触媒上外筒133の側面部の内周面と折り返し筒部6の外周面との隙間における下部(改質触媒上外筒133の下端)を溶接トーチで加熱するときの熱が、改質触媒50に伝わって改質触媒50が劣化しないように、改質触媒外筒2の材料(熱伝導率)と厚みを考慮して、適切に設定している。
【0126】
さらに、図17図18に示すように、第2隔壁135の上面開口部に内に第1隔壁134の下端部を所定の位置(改質触媒内筒1の底面部と第2隔壁135の底面部との間に隙間ができ、第1隔壁134の下端部の外周面と第2隔壁135の上端部の内周面との間に鉛直方向の溶接代を確保できる位置)まで挿入し、第1隔壁134の下端部の外周面と第2隔壁135の上端部の内周面との隙間における上部を全周にわたって溶接トーチで加熱することにより、第1隔壁134の下端部の外周面に第2隔壁135の上端部を全周溶接固定する。
【0127】
次に、バーナユニット300を、蒸発部CO低減除去部ユニット200の上方から、燃焼筒130と加熱器120の中心軸が、蒸発内筒131および改質触媒内筒1の中心軸と重なり、蒸発内筒131および改質触媒内筒1と燃焼筒130との間に燃焼排ガス流路140が形成されるように、所定の高さ位置まで挿入して、バーナユニット300を蒸発部CO低減除去部ユニット200に固定することで水素生成装置500が完成する。
【0128】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、改質触媒ユニット100は、改質触媒内筒1の外周面と改質触媒外筒2の内周面と改質下棚板4の上面と改質上棚板3の下面とに囲まれた鉛直方向に中心軸を有する環状の空間に、改質触媒50が充填されており、改質触媒内筒1が、水トラップ部138よりも下側で鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発内筒131の下端部に溶接で取り付けられ、改質触媒外筒2が、鉛直方向に中心軸を有する円筒形状の蒸発外筒132の下側に改質触媒上外筒133を介して溶接で取り付けられ、原料ガスと水蒸気との混合ガスが供給されるユニットである。
【0129】
蒸発内筒131と蒸発外筒132は、水素生成装置500の蒸発部121を構成する。蒸発内筒131の外周面と蒸発外筒132の内周面との間には、外部から供給される原料ガスと水とを、蒸発内筒131から伝わる熱で加熱しながら螺旋状に重力に逆らうことなく流すための流路が形成されている。
【0130】
蒸発外筒132の下端部は、蒸発内筒131側に曲げられて、蒸発内筒131の下端よりも高い位置で、蒸発内筒131の外周面に接合されている。蒸発外筒132の下端近傍には、混合ガスを半径方向外向きに排出するための排出孔137が形成されている。
【0131】
改質触媒内筒1は、鉛直方向に中心軸を有する有底円筒形状で、下端開口部が塞がれている。改質触媒内筒1は、蒸発内筒131を下方に延長するような形で、改質触媒内筒1の上端部が蒸発内筒131の外周面における下端部に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されている。
【0132】
改質触媒外筒2は、鉛直方向に中心軸を有する形状で、改質触媒内筒1を囲むように配置されている。改質触媒外筒2の上端は、改質触媒内筒1の上端よりも低い位置にあり、改質触媒外筒2の下端は、改質触媒内筒1の下端よりも高い位置にある。改質触媒外筒2は、筒の上端部を外側に折り返した略円筒形で、筒部本体よりも径が大きい折り返し筒部6を備えている。
【0133】
改質触媒上外筒133は、鉛直方向に中心軸を有し、蒸発外筒132および折り返し筒部6よりも径が大きい円筒形の側面部と、外周端が側面部の上端部に接続され内周端が蒸発外筒132の外周面における下部で蒸発外筒132の排出孔137よりも上方に溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の上面部と、を有している。改質触媒上外筒133の側面部の下端部が、改質触媒外筒2の折り返し筒部6における外周面に溶接で取り付け可能に構成されている。
【0134】
水トラップ部138は、鉛直方向に中心軸を有し、径が蒸発外筒132よりも大きくて改質触媒上外筒133の側面部よりも小さく蒸発外筒132の排出孔137から半径方向外向きに排出される混合ガスが改質触媒上外筒133の側面部にまで到達するのを遮る円筒状の壁と、外周端が壁の下端部に接続され内周端が蒸発内筒131の外周面における下部で蒸発外筒132よりも下方に全周にわたって溶接で取り付け可能に構成されたドーナツ盤形状の底面部と、を有している。
【0135】
水トラップ部138の壁の上端と改質触媒上外筒133の上面部との間と、水トラップ部138の壁と蒸発外筒132との間と、水トラップ部138の壁と改質触媒上外筒133の側面部との間には、それぞれ混合ガスが通流可能な隙間がある。
【0136】
改質触媒50は、混合ガスから水蒸気改質反応によりCOを含んだ一次水素含有ガスを生成するように構成された粒状の触媒であって、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間の所定高さ範囲に充填されている。
【0137】
改質下棚板4は、改質触媒50を下から支えるドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質下棚板4は、改質触媒50が所定高さ範囲から下方に出ないように改質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間に配置されている。
【0138】
改質上棚板3は、改質触媒50の充填部の上面を覆うドーナツ盤形状の通気性の棚板である。改質上棚板3は、改質上棚板3の外周面が、改質触媒外筒2の筒部本体の内周面における上端部と対向する位置で、改質触媒50が所定高さ範囲から上方に出ないように改
質触媒内筒1と改質触媒外筒2との間に配置されている。
【0139】
上記構成により、水トラップ部138よりも先に、改質触媒上外筒133を下方から蒸発外筒132に組み込んだ後に、蒸発内筒131と水トラップ部138との溶接の邪魔にならない位置まで改質触媒上外筒133を上方にずらして、蒸発内筒131と水トラップ部138との溶接と、蒸発内筒131と改質触媒内筒1との溶接を、この順位に行い、それから、改質触媒上外筒133を所定の位置まで下げて、改質触媒上外筒133の上部を蒸発外筒132に溶接する作業と、改質触媒上外筒133の側面部の下端部を改質触媒外筒2の折り返し筒部6における外周面に溶接する作業と、を行うことができる。
【0140】
そのため、改質触媒50の充填部の外径より水トラップ部138の外径が大きい場合でも、改質触媒ユニット100を、予め改質触媒50が充填された自立可能なサブユニットとして製造し、改質触媒ユニット100を水素生成装置500の蒸発部121に取り付けることができる。
【0141】
本実施の形態のように、改質上棚板3は、改質触媒50の充填前に、改質触媒内筒1と改質触媒外筒2の両方に溶接で接合してもよい。
【0142】
これにより、上下反転状態で、改質触媒50を改質上棚板3の上に充填したときに、改質触媒50の重みで、改質上棚板3が脱落することを抑制でき、改質上棚板3を溶接で接合するときの熱が、改質触媒50に伝わって改質触媒50を劣化させることはない。
【0143】
本実施の形態のように、改質下棚板4は、改質下棚板4の外周縁部分に下向きに延設されたフランジを備え、改質触媒50の充填後に、改質触媒外筒2のみに溶接で接合してもよい。
【0144】
このフランジを備えることにより、改質下棚板4の変形の抑制と、改質触媒外筒2に対する同軸度(垂直度)と溶接代を確保することができ、フランジの部分で改質触媒外筒2に溶接で接合することができ、改質下棚板4の上に充填された改質触媒50の重みで、改質下棚板4が脱落することを抑制でき、改質下棚板4をフランジの部分で溶接で接合するときの熱が、改質触媒50に伝わり難くなって改質触媒50を劣化させることを抑制することができる。
【0145】
また、改質触媒内筒1の底部近傍は、加熱器120のバーナの燃焼で発生した熱(燃焼排ガスの熱を含む)で加熱され易く、改質触媒外筒2に比べて膨張し易いが、改質下棚板4を改質触媒内筒1に接合しないので、改質下棚板4が、改質触媒内筒1の熱と熱膨張の影響を受け難い。
【0146】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において様々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0147】
例えば、CO低減除去器123は、変成反応により、一次水素含有ガス中のCO濃度を0.1~0.2%程度まで低減するCO低減触媒が充填されたCO低減器と、CO低減器から排出された二次水素含有ガスと水素生成装置の外部から供給された空気を混合する空気混合筒と、選択酸化反応により、空気混合筒から排出された二次水素含有ガスと空気との混合ガス中のCO濃度を数ppm程度にまで低減するCO除去触媒が充填されたCO除去器と、に置き換えても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本開示は、多重筒構成で、筒間のスキマ部に触媒を充填する必要がある容器に適用可能であり、予め触媒が充填されたユニットを用いるため、触媒充填工程を本体の溶接組み立て製造ラインに組み込むことなく自動化することも可能である。具体的には、水素生成装置などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 改質触媒内筒
2 改質触媒外筒
3 改質上棚板
4 改質下棚板
5 溶接部
6 折り返し筒部
50 改質触媒
100 改質触媒ユニット
120 加熱器
121 蒸発部
123 CO低減除去器
130 燃焼筒
131 蒸発内筒
132 蒸発外筒
133 改質触媒上外筒
134 第1隔壁
135 第2隔壁
136 水素含有ガス排出管
137 排出孔
138 水トラップ部
139 螺旋状流路
140 燃焼排ガス流路
141 リターン流路
142 原料ガス供給管
143 燃焼排ガス排出管
160 CO低減除去器底板
161 CO低減除去器仕切り板
200 蒸発部CO低減除去部ユニット
300 バーナユニット
500 水素生成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18