(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121209
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】クラフト紙
(51)【国際特許分類】
D21H 11/04 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
D21H11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024409
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神前 央歩
(72)【発明者】
【氏名】山崎 守
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG08
4L055AG48
4L055AG50
4L055AG63
4L055AG71
4L055AG72
4L055AG89
4L055AH01
4L055AH09
4L055AH11
4L055AH13
4L055AH16
4L055AH18
4L055BE08
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA14
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】包装紙として取り扱い性に優れる及びラミネート加工において樹脂との接着性に優れるクラフト紙を提供する。
【解決手段】目的は、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウムを含有し、填料を実質的に含有せず、前記針葉樹未晒クラフトパルプ及び前記針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量がパルプに対して90質量%以上であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプと前記針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10であるクラフト紙によって達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウムを含有し、填料を実質的に含有せず、前記針葉樹未晒クラフトパルプ及び前記針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量がパルプに対して90質量%以上であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプと前記針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10であるクラフト紙。
【請求項2】
前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び前記針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下である請求項1に記載のクラフト紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフトパルプを含有するクラフト紙に関する。特に、ワンプ用途に有用なクラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト紙は、クラフト法によって製造されたパルプを原料とした、強度に優れる紙である。クラフト紙は、例えば、包装紙、紙袋、封筒、段ボール材料及び粘着テープ等に使用される。包装紙及び紙袋では、強度付与及びバリア性付与の為に、樹脂によってラミネート加工を施したワンプ及び手提げ袋等が存在する(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、粉体製品を効率よく充填可能な重袋などに好ましく用いることができるクラフト紙であって、広葉樹クラフトパルプを含有し、JIS P8113に準拠して測定した横方向の破断伸びが7.0%以上、縦方向の破断伸びが5.0%以上であり、JIS P8117に準拠して測定した透気度が5~60秒であるクラフト紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6935002号明細書
【特許文献2】特開2017-214104号公報
【特許文献3】特開2015-124464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、包装作業では、クラフト紙等の包装紙を収納物の形状に合わせて包み込むように折り曲げる場合がある。このような包装作業で、クラフト紙が破れないよう引裂き強度を有することは当然として、さらに収納物に対してフィットし易いという取り扱い性が求められる。また例えば、紙を包装するためのクラフト紙では、湿気等から紙を保護するためにクラフト紙に対してラミネート加工を施す。
【0005】
以上から本発明の目的は、包装紙として取り扱い性に優れる及びラミネート加工において樹脂との接着性に優れるクラフト紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記のクラフト紙によって達成できる。
[1]針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウムを含有し、填料を実質的に含有せず、前記針葉樹未晒クラフトパルプ及び前記針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量がパルプに対して90質量%以上であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプと前記針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10であるクラフト紙。
【0007】
[2]上記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び上記針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下である上記[1]に記載のクラフト紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、包装紙として取り扱い性に優れる及びラミネート加工において樹脂との接着性に優れるクラフト紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウムを少なくとも含有する。
さらに、クラフト紙は、前記以外であって製紙分野で従来公知の添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、填料、定着剤、歩留り剤、耐水化剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、及び防バイ剤を挙げることができる。
【0011】
クラフト紙は、実質的に填料を含有しない。一般に填料は、紙の強度を低下させる作用効果を有する。ここで、「実質的に」とは、紙の強度を低下させる程の量で填料を含有しない意味を指す。紙の強度を低下させない程度の少量であれば、クラフト紙は、填料を含有して良い。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、填料を含有しない。
【0012】
填料は、製紙分野で従来公知の白色無機顔料である。填料の例としては、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム及びアルミナなどを挙げることができる。
【0013】
クラフト紙中の填料の含有量は、灰分で見積もることができる。灰分は、クラフト紙が含有する填料と硫酸アルミニウムなどの無機塩類の金属成分との含有量に依存する。
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps-Determination of residue(ash) on ignition at 525 degrees C」に準拠して求められる灰分が2質量%以下である。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、硫酸アルミニウムに依存して、灰分が0.3質量%以上2質量%以下である。
【0014】
クラフト紙は、クラフトパルプを水に分散したスラリーに、サイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウム、並びに必要に応じてその他の添加剤を混合した紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機及びツインワイヤー抄紙機など従来公知の抄紙機を用いて抄造し、得られた抄造紙に対して必要に応じて、澱粉類、ポリビニルアルコール、スチレンアクリル系樹脂若しくはオレフィンマレイン酸系樹脂などの表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレス処理、及び/又はマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー若しくはマルチニップカレンダーなどによりカレンダー処理して、得ることができる。
【0015】
サイズプレス処理は、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置を用いて行う。サイズプレス装置の例としては、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー、フィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを挙げることができる。さらに、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、カレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0016】
クラフトパルプは、製紙分野で従来公知のクラフト法によって製造された化学パルプの一種である。晒クラフトパルプは、漂白工程により漂白されたクラフトパルプである。未晒クラフトパルプは、前記漂白工程を受けていないクラフトパルプである。
パルプの原料としては従来公知の木材又は非木材であって、例えば、針葉樹及び広葉樹の木材、麻、リンター、わら、竹、サトウキビ、ヨシ、果実、コウゾ、ミツマタ及びガンピなどの非木材を挙げることができる。晒クラフトパルプでは、例えば、パルプの原料が針葉樹であれば針葉樹晒クラフトパルプと称し、未晒クラフトパルプでは、例えば、パルプ原料が針葉樹であれば針葉樹未晒クラフトパルプと称する。
【0017】
クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ以外に広葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹半晒クラフトパルプ、広葉樹半晒クラフトパルプ、機械パルプ及び脱墨古紙パルプなど従来公知のパルプを含有することができる。
クラフト紙は、クラフト紙中のパルプに対して、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量が90質量%以上である。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、クラフト紙中のパルプに対して、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量が100質量%である。この理由は、包装紙として取り扱い性及びラミネート加工において樹脂との接着性が良化するからである。
さらに、クラフト紙は、クラフト紙中のパルプにおいて、針葉樹未晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10である。針葉樹晒クラフトパルプが前記範囲よりも減少すると包装紙として取り扱い性及びラミネート加工において樹脂との接着性が悪化する傾向を示す。針葉樹晒クラフトパルプが前記範囲よりも増すと引裂きに関する紙の強度が低下する傾向を示す。
一般的なクラフト紙では、紙の強度を得るために未晒クラフトパルプを採用なおかつクラフト紙中のパルプに対して未晒クラフトパルプが100質量%である。さらに、未晒クラフトパルプには、繊維長が長い理由から針葉樹未晒クラフトパルプを用いる。しかしながら、未晒クラフトパルプが100質量%であるクラフト紙では、包装紙として取り扱い性及びラミネート加工において樹脂との接着性について困難さを有する。本発明者らは、晒クラフトパルプを適度に配合することでこれらの問題を解決できることを見出した。
【0018】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、含有する針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下である。この理由は、引裂き強度、包装紙として取り扱い性及びラミネート加工において樹脂との接着性が良化するからである。
濾水度は、ISO5267-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part2 : Canadian Standard Freeness method」に準拠して求められる値である。濾水度は、パルプの叩解及び/又はリファイニングによって調整できる。パルプの叩解及び/又はリファイニングを進めると、濾水度の値は小さくなる。濾水度が500mlcsf以上の範囲である針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度の上限は、叩解及び/又はリファイニングを施さないパルプの濾水度になる。一般的な針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度の上限は、680mlcsfから740mlcsfの範囲である。
【0019】
サイズ剤は、サイズ性を付与するために抄紙工程で使用される内添サイズ剤である。サイズ剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。サイズ剤の例としては、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、脂肪酸系サイズ剤、及びカチオン性スチレンアクリル樹脂系サイズ剤などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、サイズ剤は、ロジン系サイズ剤である。この理由は、実質的に填料を含有しない紙料を抄造して成るクラフト紙のサイズ性を安定的に発現できるからである。
クラフト紙中のサイズ剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。サイズ剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
【0020】
紙力剤は、紙力増強剤とも呼ばれ、紙の強度を付与するために抄紙工程で使用される内添紙力剤である。紙力剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。紙力剤の例としては、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉、グァーガム、ローカストビーンガム及びトラガントガムなどの植物性ガム類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース類、並びにポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂などの合成高分子を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、紙力剤は、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉である。少なくとも一つの実施態様において、紙力剤はカチオン化澱粉である。これらの理由は、クラフト紙に印刷を施す場合において印刷適性が良化する傾向を示すからである。
クラフト紙中の紙力剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。紙力剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して5質量部以上30質量部以下である。
【0021】
硫酸アルミニウムは、サイズ剤の紙中への定着に作用効果を有する。特に、サイズ剤が上記ロジン系サイズ剤の場合に有効である。硫酸アルミニウムのアルミニウムイオンはパルプの繊維と結合でき、結果、紙の強度を増すことができる。ただし、硫酸アルミニウムを含有すると紙が酸性化して劣化し易くなる。このために、硫酸アルミニウムの含有量が制限される。
【0022】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、製紙分野で従来公知の歩留り剤を含有する。歩留り剤は、例えば、カチオン性樹脂又はアニオン性樹脂である。歩留り剤となるカチオン性樹脂は、プロトンが配位し易く及び水に溶解したとき離解してカチオン性を呈する1級~3級アミン又は4級アンモニウム塩を含有する樹脂である。カチオン性樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド-ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル-ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物及びこれらの塩、さらにジアリルアミンアクリルアミド共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムクロリド)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとメタクリルアミドの共重合体、ジアリルジエチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルジエチルアンモニウムクロリドとメタクリルアミドの共重合体、ジメチルアミンアンモニアエピクロロヒドリン共重合体、ジエチルアミンエピクロロヒドリンアンモニア共重合体等を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、歩留り剤は、樹脂を構成する単量体としてアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含有するアクリルアミド系樹脂である。この理由は、包装紙として取り扱い性が良化するからである。
【0023】
クラフト紙中の歩留り剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。歩留り剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である。
【0024】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及びアクリルアミド系樹脂を含有し、填料を実質的に含有せず、前記針葉樹未晒クラフトパルプ及び前記針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量がパルプに対して90質量%以上であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプと前記針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10である。
少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプ、並びにサイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及びアクリルアミド系樹脂を含有し、填料を実質的に含有せず、前記針葉樹未晒クラフトパルプ及び前記針葉樹晒クラフトパルプの合計含有量がパルプに対して90質量%以上であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプと前記針葉樹晒クラフトパルプとの含有質量比が針葉樹未晒クラフトパルプ:針葉樹晒クラフトパルプ=65:35~90:10であり、前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び前記針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下である。
【実施例0025】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量%及び質量部は、乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。表面サイズ剤の付与量は、乾燥固形分の値を示す。
【0026】
<クラフト紙>
合計で1000質量部になる所定の質量部で、所定の濾水度に調整した未晒クラフトパルプ及び/又は晒クラフトパルプを水に分散したスラリーに、ロジンサイズ剤(星光PMC社、CC-1404)を4質量部、紙力剤としてカチオン化澱粉(Grain Processing Corporation社、CHARGEMASTER R462)を15質量部、硫酸アルミニウムを10質量部、及び歩留り剤としてアクリルアミド系樹脂(ハイモ社、ハイモロック(登録商標)ND300)を0.1質量部を混合して、紙料を調成した。前記紙料を長網抄紙機を用いて抄造して、坪量64g/m2の抄造紙を得た。前記抄造紙の両面に対して、表面サイズ剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ社、王子エースA)及びスチレンアクリル系樹脂(荒川化学工業社、ポリマロン(登録商標)1308S)を含むサイズプレス液でサイズプレス処理を施した。表面サイズ剤の付与量は、片面あたり酸化澱粉が0.3g/m2及びスチレンアクリル系樹脂が0.07g/m2とした。灰分は1.5質量%であった。
【0027】
未晒クラフトパルプ及び晒クラフトパルプの質量部並びに濾水度(mlcsf)を表1に記載する。
表1中の記載について、針葉樹未晒クラフトパルプはNUKP、針葉樹晒クラフトパルプはNBKP、広葉樹未晒クラフトパルプはLUKP、及び広葉樹晒クラフトパルプはLBKPと記す。
【0028】
【0029】
<クラフト紙の強度(表1中の「紙の強度」)>
クラフト紙の強度は、ISO1974:1990「Paper-Determination of tearing resistance (Elmendorf method)」に準じて測定される引裂き強度の値を用いて評価を行った。クラフト紙の強度の評価は、坪量の影響を除くために、下記式で算出される比引裂き強度によって行った。測定は、クラフト紙のMD方向に対して行った。
比引裂き強度(mN・m2/g)=[引裂き強度(mN)/坪量(g/m2)]
評価は、下記の基準によって行った。本発明において、クラフト紙は、評価A又は評価Bであれば強度を有するものとする。
A:比引裂き強度が9mN・m2/g以上
B:比引裂き強度が7mN・m2/g以上9mN・m2/g未満
C:比引裂き強度が7mN・m2/g未満
【0030】
<包装紙として取り扱い性(表1中の「取扱性」)>
クラフト紙で包装する対象物として、コクヨ社の図面丸筒紙管タイプ(A2、内径60mm)を準備した。被験者は5人とし、被験者は、各々前記丸筒に対して筒包み方法で包装作業を行った。各被験者は、包装対象物の形状に対するフィット性並びにクラフト紙の曲げ及び折に関する作業性の観点から包装の取り扱い性を下記5段階で官能評価した。最終の評価結果は、被験者5人の平均値を算出し、小数点以下を四捨五入した。本発明において、クラフト紙は、評価3点以上であれば包装紙として取り扱い性に優れるものとする。
5点:極めて良好。
4点:良好。
3点:概ね良好。
2点:普通。
1点:劣る。
【0031】
<ラミネート加工において樹脂との接着性(表1中の「接着性」)>
クラフト紙の片面に対して低密度ポリエチレンを溶融押し出しダイを用いて厚さ15μmになるようにラミネート加工を施した。クラフト紙を50mm巾にカットし、クラフト紙とラミネート層との界面に対してT字型剥離となるようにして、東洋精機社テンシロンを用いて引張り速度30cm/minでクラフト紙とラミネート層との界面に対する剥離強度を測定した。測定結果から下記の基準で接着性を評価した。本発明において、クラフト紙は、評価A又は評価Bであればラミネート加工において樹脂との接着性に優れるものとする。
A:0.6N/50mm以上
B:0.3N/50mm以上0.6N/50mm未満
C:0.3N/50mm未満
【0032】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0033】
表1から、本発明の構成を満たす実施例1~13は、引裂き強度を有しつつ、包装紙として取り扱い性に優れ、及びラミネート加工において樹脂との接着性に優れることが分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~5は、前記効果のいずれかを得ることができないと分かる。
主に、実施例4~12との間の対比から、針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び前記針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下であると、引裂き強度、包装紙として取り扱い性及びラミネート加工において樹脂との接着性が良化すると分かる。