(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121211
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】両面印刷用塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/82 20060101AFI20230824BHJP
D21H 19/84 20060101ALI20230824BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/84
D21H19/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024411
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 巨訓
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG08
4L055AG11
4L055AG12
4L055AG26
4L055AG27
4L055AG34
4L055AG40
4L055AG47
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG72
4L055AG75
4L055AG89
4L055AH02
4L055AH09
4L055AH10
4L055AH18
4L055AH37
4L055AJ01
4L055AJ04
4L055BE08
4L055BE09
4L055CD01
4L055FA15
4L055GA15
(57)【要約】
【課題】オフセット輪転印刷機に対する耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を有する両面印刷用塗工紙を提供することである。
【解決手段】木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、前記第一塗工層に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み並びにバインダが澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み並びにバインダがポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含む両面印刷用塗工紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み並びにバインダが澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み並びにバインダがポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含む両面印刷用塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基紙の両面に各々2層以上の塗工層を有する両面印刷用塗工紙に関する。特に、輪転印刷機に好適な基紙の両面に各々2層以上の塗工層を有する両面印刷用塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機、特にオフセット印刷機には、枚葉印刷機と輪転印刷機とがある。輪転印刷機はロール状の用紙を用いた高速大量印刷に特徴を有する。輪転印刷機に使用する用紙には、ブリスターの発生を防止する耐ブリスター性、デラミネーションを防止する耐デラミネーション性及びシワの発生を防止する耐シワ性が要求される。ブリスターとは、ヒートセットインキを使用する輪転印刷機において、印刷時に用紙内部で気化した水分が逃げ切れず、結果として用紙に膨れを生じる現象である。ブリスターは、塗工層を有する塗工紙では通気性が悪化するために、より発生し易い。デラミネーションとは、オフセット印刷機のブランケット胴から用紙の剥離位置が一定せずに移り動く現象である。デラミネーション発生前の初期段階であれば色ムラとなり、デラミネーションの発生では、印刷物のインキ汚れ及び画像のインキ抜けなどの印刷不良を引き起こす。塗工層を有する両面印刷用塗工紙のデラミネーションは、塗工層の粘着性に起因してより発生し易い。シワとは、印刷直後の両面印刷用塗工紙は、インキ成分及び給湿液によって幾分伸び縮みするためにオフセット輪転印刷機のように両面印刷用塗工紙を巻き取る際にシワが入る現象である。また、ブリスター、デラミネーション及びシワは、重色画像及び色濃度が高い画像の印刷を実施する場合に発生し易い。
【0003】
高速オフセット輪転印刷機でブリスターの発生を抑制した印刷用塗工紙は既に存在する。例えば、基紙、及び前記基紙上に顔料と接着剤とを含有する塗工層を二層以上有する塗工紙において、前記塗工層のうち、前記基紙に接する下塗り塗工層の接着剤としてゲル含有量70~90質量%のラテックス、及びヒドロキシエチル澱粉を含有することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。また、基紙と、前記基紙上に顔料と接着剤とを含有する塗工層を少なくとも2層有する塗工紙であって、前記基紙に接する下塗り塗工層の顔料がクレー及び/又は炭酸カルシウムを含有し、前記下塗り塗工層の顔料が0.1μmごとに集計した面積粒子径の分布において、0.8μm以上1.3μm未満及び1.3μm以上2.2μm未満のそれぞれの範囲に極大値を有する粒子径分布を持つことを特徴とする塗工紙が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
オフセット輪転印刷機でデラミネーションに起因する印刷不良を防止したオフセット輪転印刷用塗工紙は既に存在する。例えば、原紙の片面または両面に塗工層を設けたオフセット輪転印刷用塗工紙において、該塗工層中に粒子径1μm以上の中空顔料を全顔料の5~20質量%、及びゲル含有量65%以下で、平均粒子径100~250nmであるラテックスバインダを該顔料に対して3~30質量%含有し、かつ空気マイクロメーター型平滑度試験器スムースターによる透気度が1.0kPa以上であることを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-150683号公報
【特許文献2】特開2010-133050号公報
【特許文献3】特開2002-371492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブリスターの発生を抑制した印刷用塗工紙は存在し、別にデラミネーションの発生を防止した印刷用塗工紙は存在する。しかしながら、ブリスター、デラミネーション及びシワの発生を共に抑制することが可能な両面印刷用塗工紙は、実際的に未だ存在しない。
また、通常、オフセット輪転印刷は、高速印刷することが特徴であるために印刷後にインキを乾燥する乾燥機を備える。そして、オフセット輪転印刷に用いる両面印刷用塗工紙には、インキ成分の浸透性が要求される。両面印刷用塗工紙は、インキ成分の浸透性に欠くと、オフセット輪転機に乾燥機を備えたとしても、乾燥不良を発生する場合がある。両面印刷用塗工紙の場合は、塗工層にインキ成分が浸透するものの、重色画像及び色濃度が高い画像の印刷を実施する場合にインキ成分が多くなり、基紙までインキ成分を浸透する必要がある。両面印刷用塗工紙は、浸透性が悪化すると、塗工層による第一次浸透後の基紙による第二次浸透が達成できずにインキ成分を十分に浸透できず、結果としてインキが定着できない状態が続くことになる。すなわち、両面印刷用塗工紙は、インキが定着できないために乾燥不良が発生する。乾燥不良を発生すると、インキ成分、特にインキ成分中の色材は、印刷用紙からの剥離又は擦れ汚れを生じる。
上記を鑑み、本発明の目的は、耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を有する両面印刷用塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、両面印刷用塗工紙について塗工層の主成分である白色顔料及びバインダに関し鋭意検討を重ねた。結果、本発明者らは、塗工層を少なくとも2層とし、それぞれの層が特定の白色顔料及びバインダを組み合わせて含有することによって耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を発現することを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の課題は、以下によって解決される。
木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み並びにバインダが澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み並びにバインダがポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含む両面印刷用塗工紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、両面印刷用塗工紙は、耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
両面印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の両面外側に対して第二塗工層とを有する。すなわち、両面印刷用塗工紙は、基紙の両面に対して、第一塗工層及び第二塗工層の順に有する。いくつかの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、印刷適性及び層間強度を向上するなどの目的で必要に応じて、基紙と第一塗工層との間及び/又は第一塗工層と第二塗工層との間に、白色顔料及びバインダを含有する又は樹脂を含有する中間層を有する。少なくとも一つの実施態様において、中間層を有しない。この理由は、製造コストに優れるからである。
【0011】
上記木材パルプは、製紙分野で従来公知のパルプである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)及びCMP(ChemiMechanical Pulp)などの機械パルプ、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などのセミケミカルパルプ、DIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプ(Waste Paper Pulp)、並びに製紙工場で発生する損紙(Spoilage)を離解して成るパルプなどを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、基紙は、上記木材パルプ以外に製紙分野で従来公知の非木材パルプを含有する。この理由は、植物資源の有効利用になるからである。非木材パルプの原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
いくつかの実施態様において、基紙は、基紙のパルプに対して木材パルプが90質量%以上である。少なくとも一つの実施態様において、基紙は、非木材パルプを含有しない。これらの理由は、製造コストに優れるからである。
【0012】
木材パルプの濾水度は特に限定しない。濾水度は、ISO5627-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part 2 Canadian Standard freeness method」に準じて求められるCSF濾水度である。いくつかの実施態様において、木材パルプの濾水度は380mlcsf以上530mlcsf以下である。この理由は、得られる基紙の強度及び平滑性と寸法安定性とが上手く両立できるからである。
【0013】
上記填料は、製紙分野で従来公知の白色顔料である。填料の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、活性白土、珪藻土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料を、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの各種樹脂からなる中密、中空、お椀型及び金平糖型などの各種形状の有機顔料を挙げることができる。また、有機顔料としてはマイクロカプセルなどを挙げることができる。填料は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0014】
いくつかの実施態様において、基紙は、填料としてタルク及び軽質炭酸カルシウムを含有する。少なくとも一つの実施態様において、基紙は、填料としてタルク及び軽質炭酸カルシウムを含有し、なおかつ基紙中の填料に対して、タルク及び軽質炭酸カルシウムの合計含有量が80質量%以上である。これらの理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性及び/又は耐シワ性が良化する傾向を示すからである。
【0015】
タルクは、製紙分野で従来公知のものである。
タルクは、天然由来物と合成物とが存在し、基本構造としてSi-O四面体が二次元に連続した四面体シートとMg-(OH)八面体が二次元に連続した八面体シートがサンドイッチ状に2:1で重なった、化学式Mg3Si4O10(OH)2で表される層状の粘土鉱物である。また、タルクは、2:1サンドイッチ状の層単位間結合が弱いためにへき開性、並びに柔らかさ(モース硬度1)及び滑り性という特徴を有する。また、タルクを含め粘土鉱物は、一般に、八面体シートのMg2+が一部価数の違う別の金属イオンに置換することで電荷を帯びる。タルクでは、四面体シートでSi4+がAl3+に又は八面体シートでMg2+がFe3+、Fe2+若しくはAl3+に置換できる。しかしながら、タルクでは、置換が極めて少量であるために電気的に中性に近く、その結果、疎水的挙動を有する。
【0016】
軽質炭酸カルシウムは、製紙分野で従来公知のものである。
軽質炭酸カルシウムは、石灰石を原料に化学的に製造された合成炭酸カルシウムで、形状が比較的均一で粒度分布も比較的広がりが小さい。また、軽質炭酸カルシウムは、結晶構造を有して特定の屈折率を有する。また、軽質炭酸カルシウムは、下記する重質炭酸カルシウムに比べて見かけ比重及び比表面積が大きい。
【0017】
いくつかの実施態様において、基紙は、基紙中のパルプ1000質量部に対して填料の含有量が100質量部以上200質量部以下である。また、いくつかの実施態様において、基紙は、基紙中のタルクと軽質炭酸カルシウムとの含有質量比が、タルク:軽質炭酸カルシウム=6:4~4:6である。これらの理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性及び/又は耐シワ性が良化する傾向を示すからである。
【0018】
基紙は、パルプ及び填料以外に更に必要に応じて、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、カチオン化剤、紙力剤、嵩高剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、並びに乾燥紙力増強剤などの各種添加剤を含有することができる。
【0019】
基紙は、パルプ、填料及び必要に応じて各種添加剤を配合した紙料を、従来公知の抄紙機を用いて抄造して得ることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機及びヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
【0020】
基紙は、表面サイズ剤を含むサイズ液によりサイズプレス処理を受けることができる。
表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤の例としては、各種澱粉及びポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
サイズプレス処理は、製紙分野で従来公知のサイズプレスによって達成できる。サイズプレスは、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスではシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスではゲートロールコーターを挙げることができる。その他にも、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、カレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0021】
基紙は、カレンダー処理を受けることができる。
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー処理に用いる装置は、製紙分野で従来公知の装置であって、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー及びマルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【0022】
基紙に対して第一塗工層及び第二塗工層を設ける方法は、特に限定しない。方法は、例えば、それぞれの塗工層塗工液を塗工紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置は、例えば、コンマコーター(登録商標)、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、及びサイズプレスなどを挙げることができる。乾燥装置は、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、及びマイクロ波などを利用した乾燥機などを挙げることができる。
【0023】
基紙に対して第一塗工層及び/又は第一塗工層に対して第二塗工層を設けた各段階で、両面印刷用塗工紙は、カレンダー処理を受けることができる。カレンダー処理に用いる装置は上記と同じである。
【0024】
いくつかの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、第一塗工層の塗工量が乾燥固形分で5g/m2以上10g/m2以下である。いくつかの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、第二塗工層の塗工量が乾燥固形分で4g/m2以上9g/m2以下である。
また、いくつかの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、第一塗工層の塗工量は乾燥固形分で5g/m2以上10g/m2以下及び第二塗工層の塗工量は乾燥固形分で4g/m2以上9g/m2以下である。また、少なくとも一つの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、第一塗工層の塗工量は乾燥固形分で5g/m2以上10g/m2以下及び第二塗工層の塗工量は乾燥固形分で4g/m2以上9g/m2以下であり、第二塗工層の塗工量が第一塗工層の塗工量よりも少ない。
これらの理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び/又は耐乾燥不良性が良化する傾向を示すからである。
【0025】
第一塗工層及び第二塗工層は、白色顔料及びバインダを含有する。
白色顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。白色顔料の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、活性白土、珪藻土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどの無機顔料、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの各種樹脂からなる中密、中空、お椀型及び金平糖型などの各種形状の有機顔料を挙げることができる。また、有機顔料としてはマイクロカプセルなどを挙げることができる。
【0026】
第一塗工層中の白色顔料は、重質炭酸カルシウム及びカオリンを含む。また、第二塗工層中の白色顔料は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含む。両面印刷用塗工紙は、第一塗工層が白色顔料として重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み、並びに第二塗工層が白色顔料として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含むという構成によって、耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を得ることができる。この理由は不明であるものの、発明者らは、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の属性と下記するバインダとによる相乗効果と考える。
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム及びカオリンの合計含有量が90質量%以上であり、なおかつ第二塗工層は、第二塗工層中の白色顔料に対して軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の合計含有量が90質量%以上である。この理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び/又は耐乾燥不良性が良化するからである。
【0027】
軽質炭酸カルシウムは、上記で説明したものと同じであって、ここでは説明を割愛する。
重質炭酸カルシウムは、製紙分野で従来公知のものである。
重質炭酸カルシウムは、主成分である石灰石を直接粉砕した天然由来の炭酸カルシウムで、形状が不均一で通常であれば粒度分布範囲も比較的広がりが大きい。また、重質炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムに比べて見かけ比重及び比表面積が小さい。
【0028】
カオリンは、製紙分野で従来公知のものである。
カオリンは、ケイ素-酸素の層とアルミニウム-ヒドロキシルの層が交互に重なった構造を有する、一般的にAl2O3・2SiO2・2H2Oを主成分とする粘土鉱物である。また、カオリンは、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の天然に産出されたカオリン原鉱を工業的に精製及び加工したものであって、例えば、粉砕、洗浄、除鉄及び分級等の工程を経て製造されるものである。また、カオリンには、アスペクト比を向上させるためにせん断力をかけて薄板状としたデラミネーティッドカオリン、粒度分布がシャープになるよう調整したエンジニアードカオリン、凝集性を高めた焼成カオリンのような加工性の高いものも含まれる。また、カオリンは、平板状の粒子であって、通常、粒子の平面部分がマイナスにエッジ部分がプラスに帯電する。
【0029】
有機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。
有機顔料は、有機化合物の樹脂から構成される白色顔料で各種形状がある。いくつかの実施態様において、有機顔料は、中空有機顔料である。この理由は、耐デラミネーション性が良化するからである。中空有機顔料は、粒子内部に1個または複数個の空隙(中空)部を有する有機顔料である。
【0030】
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の重質炭酸カルシウム及びカオリンの含有量が、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム65質量部以上85質量部以下及びカオリン15質量部以上35質量部以下である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層は、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有量が、第二塗工層中の白色顔料に対して軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下である。これらの理由は、耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び/又は耐乾燥不良性が良化する傾向を示すからである。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の重質炭酸カルシウム及びカオリンの含有量が、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム65質量部以上85質量部以下及びカオリン15質量部以上35質量部以下であり、なおかつ第二塗工層は、第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有質量比が軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下、及び有機顔料4質量部以上16質量部以下である。
【0031】
バインダは、塗工紙分野で従来公知の水分散性バインダ又は水溶性バインダである。水分散性バインダの例としては、スチレンブタジエン系共重合樹脂などのスチレン系樹脂、(メタ)アクリロニトリルブタジエン系共重合樹脂などの共役ジエン系共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステルブタジエン系共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステルスチレン系共重合樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系重合樹脂などのアクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系共重合樹脂及び塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂などのビニル系共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、並びにこれらの各種単量体を用いた変性樹脂、さらに尿素系樹脂及びメラミン系樹脂などの熱硬化合成樹脂を挙げることができる。水溶性バインダの例としては、澱粉類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(未変性のポリビニルアルコール又はシラノール変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコールを含む総称を指す。)、カゼインやゼラチン又はそれらの変性物、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミンなどの天然高分子樹脂又はこれらの誘導体、アルギン酸ソーダ、マレイン酸系樹脂などを挙げることができる。
【0032】
第一塗工層中のバインダは、澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含む。さらに、第二塗工層中のバインダは、ポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含む。両面印刷用塗工紙は、第一塗工層がバインダとして澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、並びに第二塗工層がバインダとしてポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含むという構成によって、耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を得ることができる。この理由は不明であるものの、発明者らは、上記した白色顔料と特定のバインダの属性とによる相乗効果と考える。バインダの属性は、例えば、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、白色顔料に対する結合性に優れる、澱粉類は、ゲル化性及び紙へのこわさ付与性を有する、ポリビニルアルコールは、結晶化性及び被膜性に優れるなどである。
【0033】
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、澱粉類:スチレンブタジエン系共重合樹脂=0.5:9.5~4:6である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層は、第二塗工層中のポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、ポリビニルアルコール:スチレンブタジエン系共重合樹脂=1:9~3:7である。これらの理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び/又は耐乾燥不良性が良化するからである。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層中の澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、澱粉類:スチレンブタジエン系共重合樹脂=0.5:9.5~4:6であり、なおかつ第二塗工層は、第二塗工層中のポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、ポリビニルアルコール:スチレンブタジエン系共重合樹脂=1:9~3:7である。
【0034】
いくつかの実施態様において、第一塗工層中のバインダの含有量は、第一塗工層中の白色顔料100質量部に対して5質量部以上15質量部以下である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層中のバインダの含有量は、第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して8質量部以上28質量部以下である。これらの理由は、両面印刷用塗工紙の耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び/又は耐乾燥不良性が良化するからである。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層中のバインダの含有量が第一塗工層中の白色顔料100質量部に対して5質量部以上15質量部以下であり、並びに第二塗工層中のバインダの含有量が第二塗工層中の白色顔料100質量部に対して8質量部以上28質量部以下である。
【0035】
第一塗工層は白色顔料及びバインダ以外に並びに第二塗工層は白色顔料及びバインダ以外に必要に応じて塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、発泡剤、滑剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、印刷適性向上剤などを挙げることができる。
【0036】
いくつかの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み並びにバインダが澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み並びにバインダがポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、第一塗工層中の重質炭酸カルシウム及びカオリンの含有量が、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム65質量部以上85質量部以下及びカオリン15質量部以上35質量部以下であり、なおかつ第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有質量比が軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下及び有機顔料4質量部以上16質量部以下である。
【0037】
少なくとも一つの実施態様において、両面印刷用塗工紙は、木材パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に対して白色顔料及びバインダを含有する第一塗工層と、基紙を基準に前記第一塗工層の外側に対して白色顔料及びバインダを含有する第二塗工層とを有し、前記第一塗工層の白色顔料が重質炭酸カルシウム及びカオリンを含み並びにバインダが澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、前記第二塗工層の白色顔料が軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料を含み並びにバインダがポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂を含み、第一塗工層中の重質炭酸カルシウム及びカオリンの含有量が、第一塗工層中の白色顔料に対して重質炭酸カルシウム65質量部以上85質量部以下及びカオリン15質量部以上35質量部以下であり、なおかつ第二塗工層中の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン及び有機顔料の含有質量比が軽質炭酸カルシウム35質量部以上55質量部以下、重質炭酸カルシウム18質量部以上38質量部以下、カオリン10質量部以上30質量部以下及び有機顔料4質量部以上16質量部以下であり、第一塗工層中の澱粉類及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、澱粉類:スチレンブタジエン系共重合樹脂=0.5:9.5~4:6であり、なおかつ第二塗工層中のポリビニルアルコール及びスチレンブタジエン系共重合樹脂の含有質量比が、ポリビニルアルコール:スチレンブタジエン系共重合樹脂=1:9~3:7である。
【実施例0038】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工量は乾燥固形分量を示す。
【0039】
実施例及び比較例の両面印刷用塗工紙を、以下の手順によって作製した。
【0040】
<基紙>
紙料は下記の内容により調製した。
LBKP(濾水度430mlcsf) 750質量部
NBKP(濾水度480mlcsf) 250質量部
タルク 70質量部
軽質炭酸カルシウム 70質量部
硫酸アルミニウム 10質量部
アルキルケテンダイマーサイズ剤 0.7質量部
カチオン化澱粉 9質量部
ポリアクリルアミド系歩留り剤 0.1質量部
【0041】
上記紙料を長網抄紙機で抄造し、表面サイズ剤に澱粉を用いてサイズプレスにより両面に塗工した。塗工量は1g/m2に成るように調整した。サイズプレスに続いて、カレンダー処理を施して坪量43g/m2の基紙を得た。
【0042】
<第一塗工層の塗工層塗工液>
塗工層塗工液は下記の内容により調製した。
白色顔料 種類及び部数は表1~3に記載
バインダ 種類及び部数は表1~3に記載
滑剤(ステアリン酸カルシウム) 0.4質量部
ポリアミド系印刷適性向上剤 0.5質量部
上記の内容で配合し、水で混合分散して、濃度60質量%に調整した。
【0043】
<第二塗工層の塗工層塗工液>
塗工層塗工液は下記の内容により調製した。
白色顔料 種類及び部数は表1~3に記載
バインダ 種類及び部数は表1~3に記載
蛍光増白剤(スチルベン系化合物) 0.3質量部
滑剤(ステアリン酸カルシウム) 0.4質量部
ポリアミド系印刷適性向上剤 0.5質量部
上記の内容で配合し、水で混合分散して、濃度46質量%に調整した。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
用いた材料は下記の通りである。
タルクには兵庫クレー社タルクを用いた。軽質炭酸カルシウムには奥多摩工業社タマパール(登録商標)TP-123を用いた。重質炭酸カルシウムには兵庫クレー社WH90を用いた。カオリンには日成共益社ハイドラファイン90を用いた。シリカには水澤化学工業社ミズカシル(登録商標)P-73を用いた。有機顔料1には中空型白色有機顔料のJSR社AE850を用いた。有機顔料2には中密有機顔料の旭化成社L8801を用いた。PVA(ポリビニルアルコール)には日本酢ビ・ポバール社JF-04を用いた。澱粉類には王子コーンスターチ社P140を用いた。SBR(スチレンブタジエン系共重合樹脂)には旭化成社E1585を用いた。
【0048】
<両面印刷用塗工紙>
基紙の両面に対して、第一塗工層の塗工層塗工液を塗工装置にブレードコーターを用いて塗工及び熱風乾燥機を用いて乾燥した。続けて第一塗工層の両面に対して、第二塗工層の塗工層塗工液を塗工装置にエアナイフコーターを用いて塗工及び熱風乾燥機を用いて乾燥し、両面印刷用塗工紙を得た。第一塗工層の塗工量は8g/m2と成るように及び第二塗工層の塗工量は7g/m2と成るように塗工条件を調整した。
【0049】
得られた両面印刷用塗工紙について、下記の項目を評価した。
【0050】
<耐ブリスター性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工社、リソピア(登録商標)BT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を両面印刷用塗工紙の両面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの両面印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像、人物写真画像、夜景写真などで重色画像及び色濃度が高い画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。
耐ブリスター性は、得られた印刷物におけるブリスターの発生状況を目視で観察し、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、両面印刷用塗工紙は、A又はBの評価であれば耐ブリスター性を有するものとする。
A:ブリスターが概ね認められない。
B:ブリスターではないものの、僅かに膨らみ感の存在が認められる。
C:上記Bより劣り、ブリスターの存在が僅かに認められる。
D:上記Cより劣り、ブリスターの存在が認められる。
【0051】
<耐シワ性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピアBT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を両面印刷用塗工紙の両面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの両面印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像、人物写真画像、夜景写真などで重色画像及び色濃度が高い画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。
耐シワ性は、得られた印刷物におけるシワの発生状況を目視で観察し、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、両面印刷用塗工紙は、A又はBの評価であれば耐シワ性を有するものとする。
A:シワが概ね認められない。
B:シワではないものの、微かにヨレ感の存在が認められる。
C:上記Bより劣り、シワの存在が極僅かに認められる。
D:上記Cより劣り、シワの存在が認められる。
【0052】
<耐デラミネーション性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピアBT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を両面印刷用塗工紙の両面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの両面印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像、人物写真画像、夜景写真などで重色画像及び色濃度が高い画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。
耐デラミネーション性は、得られた印刷物におけるデラミネーションによる印刷不良の発生状況を目視で観察し、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、両面印刷用塗工紙は、A又はBの評価であれば耐デラミネーション性を有するものとする。
A:デラミネーションによる印刷不良が概ね認められない。
B:デラミネーションによる印刷不良ではないものの、
僅かに色ムラ感の存在が認められる。
C:上記Bより劣り、デラミネーションによる印刷不良の存在が僅かに認められる。
D:上記Cより劣り、デラミネーションによる印刷不良の存在が認められる。
【0053】
<耐乾燥不良性>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業社、リソピアBT-2-600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業社、ウェブワールドテラスN)を使用して4色(CMYK)印刷を両面印刷用塗工紙の両面に行った。また、印刷は、印刷速度300m/分及び乾燥機出口の紙面温度120℃とし、観察は、印刷が安定したところの両面印刷用塗工紙1000mを対象とした。印刷には、CMYK及び赤、青、緑の各色ベタ画像、人物写真画像、夜景写真などで重色画像及び色濃度が高い画像、並びに文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。
耐乾燥不良性は、得られた印刷物におけるベタ画像を指で擦ってインキ成分の剥離及び擦れ汚れの状況を目視で観察し、下記の基準で官能的に評価した。本発明において、両面印刷用塗工紙は、A又はBの評価であれば耐乾燥不良性を有するものとする。
A:インキ成分の剥離及び/又は擦れ汚れが概ね認められない。
B:インキ成分の剥離及び/又は擦れ汚れではないものの、
極僅かに指にインキ成分の付着が認められる。
C:上記Bより劣り、インキ成分の剥離及び/又は擦れ汚れが僅かに認められる。
D:上記Cより劣り、インキ成分の剥離及び/又は擦れ汚れが認められる。
【0054】
評価結果を表1~3に示す。
【0055】
表1~3から、本発明に該当する実施例1~29は、オフセット輪転印刷機に対する耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性を有する両面印刷用塗工紙であると分かる。また、表1~3から、本発明の構成を満足しない比較例1~13は、オフセット輪転印刷機に対する耐ブリスター性、耐デラミネーション性、耐シワ性及び耐乾燥不良性のいずれかを満足できないと分かる。