(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121214
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】クラフト紙
(51)【国際特許分類】
D21H 11/04 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
D21H11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024414
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神前 央歩
(72)【発明者】
【氏名】山崎 守
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AC06
4L055AG08
4L055AG48
4L055AG50
4L055AG63
4L055AG71
4L055AG72
4L055AG89
4L055AH09
4L055AH11
4L055AH13
4L055AH16
4L055AH18
4L055BE08
4L055EA07
4L055EA14
4L055EA27
4L055FA22
4L055GA05
4L055GA06
(57)【要約】
【課題】包装用紙に使用できるクラフト紙であって、製袋作業性、糊付け適性及び製袋適性を有するクラフト紙を提供する。
【解決手段】目的は、針葉樹未晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、並びに硫酸アルミニウムを少なくとも含有するクラフト紙であって、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下であるクラフト紙によって達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹未晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、並びに硫酸アルミニウムを少なくとも含有するクラフト紙であって、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下であるクラフト紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装、封筒及び紙袋の材料に使用できるクラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト紙は、クラフト法によって製造されたパルプを原料とした、強度に優れる紙である。クラフト紙は、例えば、包装用紙、封筒、紙袋、段ボール材料及び粘着テープなどに使用される。主原料としてパルプと填料とからなるJIS P3401に準拠したクラフト紙であって、前記パルプ中に中性サイズ剤が含有され、古紙パルプの割合が40質量%以上であり、JIS P8133に準拠して測定した熱水抽出pHが5.5~8.0であり、JIS P8147に準拠して測定した表面の流れ方向(縦方向/MD)の静摩擦係数が0.25以上であり、かつ点滴吸水時間が120秒以上である、古紙パルプ配合クラフト紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。前記古紙パルプ配合クラフト紙は、インクジェット印刷適性に優れると同時に紙質強度が高く、製袋適性に優れ、しかも経時劣化が少なく、例えば封筒や保存袋とした際に内封物を長期間良好な状態で保存可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラフト紙は、包装、封筒及び紙袋の材料として、よく使用される。包装、封筒及び紙袋に使用するクラフト紙は、これら用途に応じた強度を有することが当然であり、さらに製造面で、より具体的な品質が求められる。すなわち、きれいに折り曲げることができる折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性、及び製袋機に対する製袋適性である。
以上から、本発明の目的は、上記のようなより具体的な品質を有するクラフト紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、下記のクラフト紙によって達成できる。
[1]針葉樹未晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、並びに硫酸アルミニウムを少なくとも含有するクラフト紙であって、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下であるクラフト紙。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクラフト紙は、折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性、及び製袋機に対する製袋適性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のクラフト紙について詳細に説明する。
【0008】
クラフト紙は、クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、並びに硫酸アルミニウムを少なくとも含有する。サイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウムは、クラフト紙の強度を得るために含有する。
さらに、クラフト紙は、前記以外であって製紙分野で従来公知の添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、填料、定着剤、歩留り剤、耐水化剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、及び防バイ剤を挙げることができる。
【0009】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、実質的に填料を含有しない。一般に填料は、紙の強度を低下させる作用効果を有する。ここで、「実質的に」とは、紙の強度を低下させる程の量で填料を含有しない意味を指す。紙の強度を低下させない程度の少量であれば、クラフト紙は、填料を含有して良い。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、填料を含有しない。
【0010】
填料は、製紙分野で従来公知の白色無機顔料である。填料の例としては、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム及びアルミナなどを挙げることができる。
【0011】
クラフト紙中の填料の含有量は、灰分で見積もることができる。灰分は、クラフト紙が含有する填料と硫酸アルミニウムなどの無機塩類の金属成分との含有量に依存する。
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps-Determination of residue(ash) on ignition at 525 degrees C」に準拠して求められる灰分が2質量%以下である。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、硫酸アルミニウムに依存して、灰分が0.3質量%以上2質量%以下である。
【0012】
クラフト紙は、クラフトパルプを水に分散したスラリーに、サイズ剤、紙力剤及び硫酸アルミニウム、並びに必要に応じてその他の添加剤を混合した紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機及びツインワイヤー抄紙機など従来公知の抄紙機を用いて抄造し、得られた抄造紙に対して必要に応じて、澱粉類、ポリビニルアルコール、スチレンアクリル系樹脂若しくはオレフィンマレイン酸系樹脂などの表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレス処理、及び/又はマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー若しくはマルチニップカレンダーなどによりカレンダー処理して、得ることができる。
【0013】
サイズプレス処理は、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置を用いて行う。サイズプレス装置の例としては、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー、フィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを挙げることができる。さらに、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、カレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0014】
クラフトパルプは、製紙分野で従来公知のクラフト法によって製造された化学パルプの一種である。晒クラフトパルプは、漂白工程により漂白されたクラフトパルプである。未晒クラフトパルプは、前記漂白工程を受けていないクラフトパルプである。
パルプの原料としては従来公知の木材又は非木材であって、例えば、針葉樹及び広葉樹の木材、麻、リンター、わら、竹、サトウキビ、ヨシ、果実、コウゾ、ミツマタ及びガンピなどの非木材を挙げることができる。晒クラフトパルプでは、例えば、パルプの原料が針葉樹であれば針葉樹晒クラフトパルプと称し、未晒クラフトパルプでは、例えば、パルプ原料が針葉樹であれば針葉樹未晒クラフトパルプと称する。
【0015】
クラフト紙は、クラフトパルプとして針葉樹未晒クラフトパルプを含有する。
クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ以外に従来公知の各種パルプを含有することができる。針葉樹未晒クラフトパルプ以外に従来公知の各種パルプは、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹半晒クラフトパルプ、広葉樹半晒クラフトパルプ、機械パルプ及び脱墨古紙パルプなど挙げることができる。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、クラフト紙が含有する全パルプにおいて針葉樹未晒クラフトパルプの含有量が65質量%以上である。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、クラフト紙が含有する全パルプにおいて針葉樹未晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上である。これらの理由は、クラフト紙の強度にとって優位だからである。
【0016】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプと共に針葉樹晒クラフトパルプを含有する。また、いくつかの実施態様において、クラフト紙は、クラフト紙が含有する全パルプにおいて針葉樹晒クラフトパルプの含有量が0質量%超35質量%以下である。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、クラフト紙が含有する全パルプにおいて針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上35質量%以下である。これらの理由は、クラフト紙の強度を得ながら上記折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性及び/又は製袋機に対する製袋適性が良化するからである。
【0017】
クラフト紙は、縦方向の比引裂強度が8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下であり、及び縦方向の動摩擦係数が0.30以上0.50以下である。クラフト紙は、これら数値を満足することによって、折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性及び製袋機に対する製袋適性を有することができる。クラフト紙は、これら数値を満足しない場合、折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性、及び製袋機に対する製袋適性に関して少なくとも一つを有することができない。
【0018】
比引裂強度は、下記式で算出される値である。
比引裂強度(mN・m2/g)=引裂強度(mN)÷坪量(g/m2)
比引裂強度は、ISO1974:1990「Paper-Determination of tearing resistance (Elmendorf method)に準じて求められる値である。測定には、測定装置を用いる。測定装置の例としては、熊谷理機工業社のエルメンドルフ引裂度試験機などを挙げることができる。
動摩擦係数は、ISO15359:1999「Paper and board - Determination of static and kinetic coefficients of friction - Horizontal plane method」に準じて求められる値である。測定には、測定装置を用いる。測定装置の例としては、テスター産業社の摩擦係数試験機などを挙げることができる。
【0019】
比引裂強度は、製紙分野で従来公知であって、例えば、原紙の灰分量、密度、紙力、パルプ種類及び濾水度、並びに抄造におけるパルプ噴出速度/長網ワイヤー速度(J/W比)、噴出するパルプ濃度及びワイヤーパートの脱水速度などを制御することで調整することができる。紙力を増す制御が比引裂強度を上げる傾向にある。また、縦方向のパルプ繊維配向度が増す制御が縦方向の比引裂強度を下げる傾向にある。
動摩擦係数は、製紙分野で従来公知であって、例えば、原紙の灰分量、密度、パルプ種類及び濾水度、並びに抄造におけるパルプ噴出速度/長網ワイヤー速度(J/W比)、噴出するパルプ濃度及びプレスパート条件、並びにカレンダー処理条件などを制御することで調整することができる。平滑性を増す制御が動摩擦係数を下げる傾向にある。
【0020】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上である。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプと共に針葉樹晒クラフトパルプを含有し、針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上及び針葉樹晒クラフトパルプの濾水度が400mlcsf以上500mlcsf以下である。これらの理由は、折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性が良化するからである。
濾水度は、ISO5267-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part2 : Canadian Standard Freeness method」に準拠して求められる値である。濾水度は、パルプの叩解及び/又はリファイニングによって調整できる。パルプの叩解及び/又はリファイニングを進めると、濾水度の値は小さくなる。濾水度が500mlcsf以上の範囲である針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度の上限は、叩解及び/又はリファイニングを施さないパルプの濾水度になる。一般的な針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度の上限は、680mlcsfから740mlcsfの範囲である。
【0021】
サイズ剤は、サイズ性を付与するために抄紙工程で使用される内添サイズ剤である。サイズ剤の作用機構から、サイズ剤は、紙の強度にも良い影響がある。サイズ剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。サイズ剤の例としては、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、脂肪酸系サイズ剤、及びカチオン性スチレンアクリル樹脂系サイズ剤などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、サイズ剤は、ロジン系サイズ剤である。この理由は、実質的に填料を含有しない紙料を抄造して成るクラフト紙のサイズ性が安定的に発現できるからである。
クラフト紙中のサイズ剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。サイズ剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
【0022】
紙力剤は、紙力増強剤とも呼ばれ、紙の強度を付与するために抄紙工程で使用される内添紙力剤である。紙力剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。紙力剤の例としては、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉、グァーガム、ローカストビーンガム及びトラガントガムなどの植物性ガム類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース類、並びにポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂などの合成高分子を挙げることができる。いくつかの実施態様において、紙力剤は、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉である。この理由は、クラフト紙を食品の包装に使用する場合の安全性のためである。
クラフト紙中の紙力剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。紙力剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して5質量部以上30質量部以下である。
【0023】
硫酸アルミニウムは、サイズ剤の紙中への定着に作用効果を有する。特に、サイズ剤が後記のロジン系サイズ剤の場合に有効である。硫酸アルミニウムのアルミニウムイオンはパルプの繊維と結合でき、結果、クラフト紙の引裂強度を増すことができる。ただし、硫酸アルミニウムを含有すると紙が酸性化して劣化し易くなる。このために、硫酸アルミニウムの含有量が制限される。
【0024】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、製紙分野で従来公知の歩留り剤を含有する。この理由は、原理機構が不明であるものの結果として、折り曲げ易さに代表される製袋作業性を歩留り剤が良化するからである。
歩留り剤は、例えば、カチオン性樹脂又はアニオン性樹脂である。歩留り剤となるカチオン性樹脂は、プロトンが配位し易く及び水に溶解したとき離解してカチオン性を呈する1級~3級アミン又は4級アンモニウム塩を含有する樹脂である。カチオン性樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド-ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル-ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物及びこれらの塩、さらにジアリルアミンアクリルアミド共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムクロリド)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとメタクリルアミドの共重合体、ジアリルジエチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルジエチルアンモニウムクロリドとメタクリルアミドの共重合体、ジメチルアミンアンモニアエピクロロヒドリン共重合体、ジエチルアミンエピクロロヒドリンアンモニア共重合体等を挙げることができる。
クラフト紙中の歩留り剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。歩留り剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である。
【0025】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、及び硫酸アルミニウムを少なくとも含有するクラフト紙であって、前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上であり、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下である。
また、いくつかの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び歩留り剤を少なくとも含有するクラフト紙であって、前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上であり、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下である。
【0026】
少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、及び硫酸アルミニウムを少なくとも含有するクラフト紙であって、前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上であり、針葉樹未晒クラフトパルプの含有量が全パルプに対して65質量%以上90質量%以下かつ針葉樹晒クラフトパルプの含有量が全パルプに対して10質量%以上35質量%以下であり、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下である。
また、少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び歩留り剤を少なくとも含有するクラフト紙であって、前記針葉樹未晒クラフトパルプの濾水度が500mlcsf以上であり、針葉樹未晒クラフトパルプの含有量が全パルプに対して65質量%以上90質量%以下かつ針葉樹晒クラフトパルプの含有量が全パルプに対して10質量%以上35質量%以下であり、前記クラフト紙が、縦方向の比引裂強度8.50mN・m2/g以上15.50mN・m2/g以下及び縦方向の動摩擦係数0.30以上0.50以下である。
【実施例0027】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量%及び質量部は、乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。表面サイズ剤の付与量は、乾燥固形分の値を示す。
【0028】
<クラフト紙>
合計で1000質量部になる所定の質量部で、所定の濾水度に調整した未晒クラフトパルプ及び/又は晒クラフトパルプを水に分散したスラリーに、ロジンサイズ剤(星光PMC社、CC-1404)を4質量部、紙力剤としてカチオン化澱粉(Grain Processing Corporation社、CHARGEMASTER R462)を15質量部、及び硫酸アルミニウムを10質量部、並びに実施例7のみに歩留り剤としてアクリルアミド系樹脂(ハイモ社、ハイモロック(登録商標)ND300)を0.1質量部混合して、紙料を調成した。
前記紙料を長網抄紙機を用いてパルプ濃度、プレスパート条件及びJ/W、並びにカレンダー処理条件を制御しながら抄造して抄造紙を得た。
前記抄造紙の両面に対して、表面サイズ剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ社、王子エースA)及びスチレンアクリル系樹脂(荒川化学工業社、ポリマロン(登録商標)1308S)を含むサイズプレス液でサイズプレス処理、及びカレンダー処理を施して表1に記載の縦方向の比引裂強度及び縦方向の動摩擦係数を有する坪量70g/m2のクラフト紙を得た。なお、表面サイズ剤の付与量は、片面あたり酸化澱粉が0.3g/m2及びスチレンアクリル系樹脂が0.07g/m2とした。灰分は1.5質量%であった。
【0029】
未晒クラフトパルプ及び晒クラフトパルプの質量部並びに濾水度(mlcsf)を表1に記載する。
表1中の記載について、針葉樹未晒クラフトパルプはNUKP、針葉樹晒クラフトパルプはNBKPと記す。
【0030】
【0031】
各クラフト紙について下記の品質に関する評価を行った。各クラフト紙の評価結果を表1に示した。
【0032】
<製袋作業性>
製袋作業性の評価は、封筒の作製装置を用いて行った。
評価には、封筒の作製装置(富士製袋機工業社、FF221-2)を用いた。作製装置にクラフト紙をセットして連続して150枚/分の生産速度で300枚の長形4号(90mm×205mm)封筒を作製した。糊には澱粉糊を用いた。出来上がった封筒を目視で観察し、折り曲げ部の歪み及び不揃いから判断する折り曲げ易さの観点から、下記の基準で製袋作業性を評価した。本発明において、クラフト紙は、評価A、B及びCであれば製袋作業性を有するものとする。
A:折り曲げ部の歪み及び折り返し幅に不揃いがほぼ認められず、極めて良好。
B:上記Aより劣るものの、2部以下で折り曲げ部の歪み及び折り返し幅に
不揃いが僅かに認められる程度で、良好。
C:上記Bより劣るものの、4部以下で折り曲げ部の歪み及び折り返し幅に
不揃いが僅かに認められる程度で、概ね良好。
D:上記Cより劣り、5部以上で折り曲げ部の歪み及び折り返し幅に不揃いが
僅かに認められる程度、又は1部以上で折り曲げ部の歪み及び折り返し幅に
不揃いが認められる程度で、不良。
【0033】
<糊付け適性>
製袋作業性の評価は、封筒の作製装置を用いて行った。
評価には、封筒の作製装置(富士製袋機工業社、FF221-2)を用いた。作製装置にクラフト紙をセットして連続して150枚/分の生産速度で300枚の長形4号(90mm×205mm)封筒を作製した。糊には澱粉糊を用いた。出来上がった封筒を目視で観察し、糊付け接着部の出来具合の観点から糊付け適性を下記の基準で評価した。本発明において、クラフト紙は、評価A、B及びCであれば糊付け適性を有するものとする。
A:接着部の状態が全体的にほぼ均一で、
接着部にシワ又は波打ちが認められず、極めて良好。
B:上記Aより劣るものの、接着部の状態が全体的にほぼ均一で、
接着部にシワ又は波打ちが1~2部に僅かに認められる程度で、良好。
C:上記Bより劣るものの、接着部の状態が全体的にほぼ均一で、
接着部にシワ又は波打ちが3~4部に僅かに認められる程度で、概ね良好。
D:上記Cより劣り、接着部の状態が均一性に幾分欠く、
又は接着部にシワ若しくは波打ちが1部以上に認められる程度で、不良。
【0034】
<製袋適性>
製袋作業性の評価は、封筒の作製装置を用いて行った。
評価には、封筒の作製装置(富士製袋機工業社、FF221-2)を用いた。作製装置にクラフト紙をセットして連続して300枚/分の生産速度で300枚の長形4号(90mm×205mm)封筒を作製した。糊には澱粉糊を用いた。
封筒の製作装置において、クラフト紙の搬送性及び紙折れ等の不具合の発生を目視で観察して製袋適性を下記の基準で評価した。本発明において、クラフト紙は、評価A、B及びCであれば製袋適性を有するものとする。
A:不具合なく、極めて良好。
B:1回の不具合が認められたものの、良好。
C:2回の不具合が認められたものの、概ね良好。
D:3回以上の不具合が認められ、不良。
【0035】
表1から、本発明の構成を満たす実施例1~13は、折り曲げ易さに代表される製袋作業性、封筒及び袋を作製する際の糊付け適性、及び製袋機に対する製袋適性を有することが分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~4は、前記効果のいずれかを得ることができないと分かる。