(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121216
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】混合液吐出装置のノズル体
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024418
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】390026228
【氏名又は名称】宮崎 三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 三郎
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA36
4F041BA42
4F041BA53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】混合液吐出装置のノズル体からの混合液の吐出作業が終了した後、このノズル体からの液だれを効果的に防止可能とする。
【解決手段】第一液と第二液とを混合した混合液をワーク5に吐出する混合液吐出装置2に備えたノズル体1において、筒状のケーシング6と当該ケーシング内で摺動可能な摺動軸7とを備え、このケーシングの先端には、当該ケーシングの先端を被覆する先端壁12が備えられ、この先端壁12には上記混合液を外方に吐出するための吐出開口3が備えられるとともに、当該先端壁12の内面には、上記摺動軸7の先端部分に液密的に当接して上記吐出開口を閉止可能とする当接面が備えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一液と第二液とを混合した混合液をワークに吐出する混合液吐出装置に備えたノズル体において、筒状のケーシングと当該ケーシング内で摺動可能な摺動軸とを備え、このケーシングの先端には、当該ケーシングの先端を被覆する先端壁が備えられ、この先端壁には上記混合液を外方に吐出するための吐出開口が備えられるとともに、当該先端壁の内面には、上記摺動軸の先端部分に液密的に当接して上記吐出開口を閉止可能とする当接面が備えられたことを特徴とする混合液吐出装置のノズル体。
【請求項2】
上記先端壁の外面には、上記吐出開口の開口縁に、外方に突出した突出鍔が周方向に設けられたことを特徴とする請求項1の混合液吐出装置のノズル体。
【請求項3】
上記摺動軸の外周には、上記ケーシングの内周面に当接可能な外周突部が備えられるとともに、当該外周突部には、上記ケーシングの内周面との間で混合液を連通可能とする連通凹部が備えられたことを特徴とする請求項1、または2の混合液吐出装置のノズル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一液と第二液とを混合した混合液をワークに吐出する混合液吐出装置に備えたノズル体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す如く、第一液と第二液とを混合することにより得られた接着剤、塗料、半導体封止剤等の比較的粘性の高い混合液を、ワークに充填するための混合液吐出装置が既に知られている。この混合液吐出装置にはノズル体(51)が備えられており、
図6に示す如く細長いノズル体(51)の先端部(52)が鉛直下方に向けた状態で備えられている。そしてこのノズル体(51)の先端部(52)をワークに臨ませて配置することにより、このワークにノズル体(51)の先端から混合液を吐出するものである。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような先端部(52)が細いノズル体(51)を用いた場合には、ワークへの混合液の吐出が終了した後、当該ノズル体(51)の先端部(52)に混合液が残留するものとなる。そして、このノズル体(51)の先端部(52)に残留した混合液は、当該ノズル体(51)を次の吐出のために移動させた際や、真空室内にて吐出作業を行う場合に当該真空室内を減圧した際に、液だれが生じやすいものであった。
【0005】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、混合液吐出装置のノズル体からの混合液の吐出作業が終了した後、このノズル体からの液だれを効果的に防止可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、第一液と第二液とを混合した混合液をワークに吐出する混合液吐出装置に備えたノズル体において、筒状のケーシングと当該ケーシング内で摺動可能な摺動軸とを備え、このケーシングの先端には、当該ケーシングの先端を被覆する先端壁が備えられ、この先端壁には上記混合液を外方に吐出するための吐出開口が備えられるとともに、当該先端壁の内面には、上記摺動軸の先端部分に液密的に当接して上記吐出開口を閉止可能とする当接面が備えられたものである。
【0007】
また上記先端壁の外面には、上記吐出開口の開口縁に、外方に突出した突出鍔が周方向に設けられたものであってもよい。このように突出鍔を設けることにより、混合液の吐出を停止した際に、当該吐出開口に付着した混合液は、自身の表面張力により残留することなく吐出鍔を通じてワークに滴下するものとなる。そのため、混合液の液だれを更に効果的に抑制することが可能となる。
【0008】
また、上記摺動軸の外周には、上記ケーシングの内周面に当接可能な外周突部が備えられるとともに、当該外周突部には、上記ケーシングの内周面との間で混合液を連通可能とする連通凹部が備えられたものであってもよい。
【0009】
このように摺動軸に外周突部を備えることにより、当該外周突部がケーシングの内周面に当接しながら上記摺動軸が当該ケーシング内を摺動するものとなる。そのため、ケーシング内での摺動軸の摺動時に、当該摺動軸が半径方向に傾斜して摺動がぶれるという事態が生じにくいものとなる。よって、当該摺動軸を上記ケーシング内にて軸方向に円滑に摺動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は上述の如く、当該先端壁の内面に、上記摺動軸の先端部分に液密的に当接して上記吐出開口を閉止可能とする当接面が備えられたものであるから、ノズル体から混合液を吐出した後に上記摺動軸を上記当接面に当接させることにより、吐出開口を確実に閉止することができる。
【0011】
よって、上記の如く上記吐出開口の外方にノズルが形成されていないことから、上記吐出開口を閉止した際には当該吐出開口の外方に混合液が残留しにくいものとなる。よって、混合液の吐出作業が終了した後に上記ノズル体を移動させた場合でも、当該吐出開口からの混合液の液だれを効果的に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図1のノズル体の先端を示す部分拡大断面図。
【
図5】実施例1の先端外周面と当接面との非当接状態を示す部分拡大断面図。
【実施例0013】
以下、本願発明の一実施例を図面において以下に説明する。まず
図1に示す如く、(1)はノズル体であって、混合液吐出装置(2)に固定配置している。このノズル体(1)は、
図2に示す如く吐出開口(3)を鉛直下方に配置したものであって、第一液と第二液とを混合する二液混合装置(4)から当該混合液吐出装置(2)に移送された混合液を、上記吐出開口(3)を通じてワーク(5)に吐出可能とするものである。
【0014】
このノズル体(1)は、
図1に示す如く筒状のケーシング(6)と当該ケーシング(6)内で摺動可能な摺動軸(7)とを備えている。そしてこの摺動軸(7)は、
図1に示す混合液吐出装置(2)に形成されたエアー流通口(28)を通じてエアーをノズル体(1)に流出入する駆動機構(30)が作動することにより、上記ケーシング(6)に対して軸方向に摺動可能なものとしている。
【0015】
そして、このケーシング(6)の基端(8)側を混合液吐出装置(2)に備えたシリンダー(10)に固定配置するとともに、当該ケーシング(6)の先端には、
図1、3に示す如く断面コ字型の先端部材(11)を固定配置している。そしてこの先端部材(11)の底壁に相当する先端壁(12)によって上記ケーシング(6)の先端開口部(13)を閉止するとともに、当該先端部材(11)の外周壁(14)によって、ケーシング(6)の先端外周(15)を被覆している。
【0016】
また
図3に示す如く、上記先端壁(12)の中央部に吐出開口(3)を貫通形成するとともに、当該先端壁(12)の内面には、当該吐出開口(3)の開口縁からテーパ形状に拡径した当接面(16)を備えている。また上記摺動軸(7)の先端には、上記当接面(16)に対応させたテーパ形状の先端外周面(17)を備えている。
【0017】
上記の如く当接面(16)及び先端外周面(17)を形成することにより、
図3に示す如く当該摺動軸(7)の先端外周面(17)が上記先端壁(12)の当接面(16)に面接触可能となる。そのため、先端壁(12)の当接面(16)と摺動軸(7)の先端外周面(17)とを面接触させることにより、当該当接面(16)と先端外周面(17)との間を液密的に密閉することが可能となるため、当該先端壁(12)の吐出開口(3)を確実に閉止することができる。
【0018】
また上記先端壁(12)の外面には、
図3に示す如く当該吐出開口(3)の開口縁が外方に突出した突出鍔(20)を周方向に突設している。この突出鍔(20)は、吐出開口(3)から突出方向に向かって先細り形状となるよう設けられている。上記の如き突出鍔(20)を設けることにより、混合液の吐出を停止した際に、当該吐出開口(3)に付着した混合液は、自身の表面張力により残留するという事態が生じることなく、吐出鍔(20)を通じてワーク(5)に滴下するものとなる。そのため、吐出開口(3)に混合液が残留することなく、混合液の液だれを更に効果的に抑制することが可能となる。
【0019】
また、上記先端壁(12)の表面には、
図3、5に示す如く上記突出鍔(20)よりも突出高さの高い突出壁(31)を、上記吐出開口(3)とは一定間隔を介した外周に環状に突設している。このように突出壁(31)を設けることにより、上記突出鍔(20)がワーク(5)や周辺機器に当接して潰れる等の事態を防止することが可能となり、突出鍔(20)の突出状態を良好に保持することが可能となる。
【0020】
また
図1に示す如く、上記ケーシング(6)の混合液吐出装置(2)の接続側には、二液混合装置(4)から移送された混合液をノズル本体内に流入可能とする流通開口(21)を設けている。また当該流通開口(21)に連続して、上記ケーシング(6)の内周面と上記摺動軸(7)の外周面との間に混合液を流通可能とする流通路(22)を設けている。
【0021】
また、上記摺動軸(7)の先端側の外周には、
図3、4に示す如く断面台形の外周突部(24)を、円周方向に等間隔で3か所設けている。この外周突部(24)は、
図3に示す如く上記ケーシング(6)の内周面に当接可能、且つ当該ケーシング(6)内で摺動可能な寸法にて形成されている。
【0022】
上記の如く外周突部(24)を3か所形成することにより、当該外周突部(24)の形成間隔には、
図4に示す如く連通凹部(25)が3か所形成されるものとなる。このように連通凹部(25)を形成することにより、当該連通凹部(25)と上記ケーシング(6)の内周面との間に連通間隔(26)が形成されるものとなる。そのため、この連通間隔(26)を通じてケーシング(6)の混合液吐出装置(2)側の流通路(22)と先端部材(11)側の流通路(22)とが連通可能となる。
【0023】
上記の如く摺動軸(7)に外周突部(24)を備えることにより、当該外周突部(24)がケーシング(6)の内周面に当接しながら上記摺動軸(7)が当該ケーシング(6)内を摺動するものとなる。そのため、ケーシング(6)内において摺動軸(7)が軸方向から半径方向に傾斜して摺動がぶれるという事態が生じにくいものとなる。そのため、当該摺動軸(7)をケーシング(6)内にて軸方向に円滑に摺動させることが可能となる。
【0024】
上記の如く構成したノズル体(1)を用いて混合液を吐出する方法について、以下に説明する。まず、
図3に示す如く摺動軸(7)を予め先端壁(12)側に摺動させて、当該摺動軸(7)の外周面を先端壁(12)の当接面(16)に当接することにより、当該先端壁(12)の吐出開口(3)を閉止状態とする。そして、
図2に示す二液混合装置(4)から吐出装置本体に混合液を移送し、当該混合液をケーシング(6)の流通開口(21)を通じて流通路(22)に流入させる。
【0025】
これにより、当該混合液は上記流通開口(21)から連通凹部(25)を通じて先端壁(12)とケーシング(6)とで囲まれた領域に滞留するものとなる。このような状態で、上記摺動軸(7)を駆動機構(30)によってケーシング(6)の基端(8)側に摺動させることにより、
図5に示す如く当該摺動軸(7)の先端外周面(17)と当接面(16)との間に連通間隔(26)が形成されるものとなる。これにより、流通路(22)の先端壁(12)側に滞留していた混合液が、当該連通間隔(26)を通じて吐出開口(3)からワーク(5)に向けて吐出されるものとなる。
【0026】
そして、当該ワーク(5)への混合液の吐出を一定時間行った後、駆動機構(30)が作動して摺動軸(7)を先端壁(12)側に摺動させることにより、
図3に示す如く当該摺動軸(7)の先端外周面(17)が当接面(16)に当接し、吐出開口(3)が閉止される。これにより、ワーク(5)への混合液の吐出が終了する。
【0027】
本実施例は上記の如く、ノズル体(1)から混合液を吐出した後に上記摺動軸(7)を上記当接面(16)に当接させることにより吐出開口(3)を閉止した際には、当該吐出開口(3)の外方にはノズルが形成されていないため混合液が残留しにくいものとなる。
【0028】
よって、上記の如く吐出開口(3)を閉止してノズル体(1)からの混合液の吐出を終了した後に当該ノズル体(1)を移動させた場合でも、当該ノズル体(1)からの混合液の液だれを効果的に防ぐことが可能となる。また本実施例では上記先端壁(12)の外面に、当該吐出開口(3)の開口縁から外方に突出した突出鍔(20)を突設している。
【0029】
そのため、上記吐出開口(3)を閉止して混合液の吐出を停止した際に、当該吐出開口(3)に付着した混合液は、自身の表面張力により残留することなく、吐出鍔(20)を通じてワーク(5)に滴下し吐出し切るものとなる。そのため、上記吐出開口(3)からの混合液の液だれを更に効果的に抑制することが可能となる。