(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121217
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024419
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG45
2C057AG84
2C057AG91
2C057AG92
2C057AG93
2C057AG99
2C057AK07
2C057AL40
2C057AQ03
2C057AQ06
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】複数のアクチュエーターに共通の電位を与える共通配線の抵抗を測定することのできる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、複数のアクチュエーター、複数の個別配線、共通配線、およびモニター端子を備える。複数のアクチュエーターは、基板に配列する。複数の個別配線は、前記各アクチュエーターの一方の端子と夫々接続し、前記基板の辺縁の端子部まで形成する。共通配線は、前記基板の他方の辺縁側に前記アクチュエーターの配列方向に形成し、さらに前記アクチュエーターの配列方向の両側から引き出した一対の端子を前記基板の一方の辺縁側まで形成した第1配線部と、前記第1配線部から夫々分岐して前記アクチュエーターの他方の端子と接続する複数の第2配線部を備える。モニター端子は、前記基板の一方の辺縁側における前記第1配線部の前記一対の端子の中間に配置し、前記第1配線部に接続している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配列した複数のアクチュエーターと、
前記各アクチュエーターの一方の端子と夫々接続し、前記基板の一方の辺縁側の端子部まで形成した複数の個別配線と、
前記基板の他方の辺縁側に前記アクチュエーターの配列方向に形成し、さらに前記アクチュエーターの配列方向の両側から引き出した一対の端子を前記基板の一方の辺縁側まで形成した第1配線部と、前記第1配線部から夫々分岐して前記アクチュエーターの他方の端子と接続する複数の第2配線部を備える共通配線と、
前記基板の一方の辺縁側における前記第1配線部の前記一対の端子の中間に配置し、前記第1配線部に接続したモニター端子と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記モニター端子は、いずれかの前記第2配線部を介して前記第1配線部に接続していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記モニター端子は、前記複数のアクチュエーターの配列を横切って、さらに隣り合う2本の前記個別配線の間を通って前記端子部まで形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記モニター端子は、前記第1配線部の長さ方向の中央に接続していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記モニター端子は、前記第1配線部の抵抗の測定に使用することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、及び圧力室の容積を変えるアクチュエーターを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、アクチュエーターに駆動信号を与えて駆動させる。アクチュエーターを駆動すると、液体で満たされている圧力室の容積が変わり、ノズルから液体を吐出する。
【0004】
アクチュエーターの一方の端子は、駆動電圧を印加する個別配線に接続する。アクチュエーターの他方の端子は、各アクチュエーターに共通電位を与える共通配線に接続する。この共通電位は一定であることが望ましい。しかしながら現実には、共通配線の抵抗によって共通電位が一定でない場合がある。共通電位がばらつくと、液体の吐出特性に影響を及ぼすおそれがある。従って、共通配線の抵抗を低い値で管理できるように、共通配線の抵抗を測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-87599号公報
【特許文献2】特開2012-139918号公報
【特許文献3】特開2001-179995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数のアクチュエーターに共通の電位を与える共通配線の抵抗を測定することのできる液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、複数のアクチュエーター、複数の個別配線、共通配線、およびモニター端子を備える。複数のアクチュエーターは、基板に配列する。複数の個別配線は、前記各アクチュエーターの一方の端子と夫々接続し、前記基板の辺縁の端子部まで形成する。共通配線は、前記基板の他方の辺縁側に前記アクチュエーターの配列方向に形成し、さらに前記アクチュエーターの配列方向の両側から引き出した一対の端子を前記基板の一方の辺縁側まで形成した第1配線部と、前記第1配線部から夫々分岐して前記アクチュエーターの他方の端子と接続する複数の第2配線部を備える。モニター端子は、前記基板の一方の辺縁側における前記第1配線部の前記一対の端子の中間に配置し、前記第1配線部に接続している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
【
図3】上記インクジェットヘッドのアクチュエーターの断面図である。
【
図4】上記インクジェットヘッドのアクチュエーター基板、フレキシブルプリント配線板及びプリント基板の平面図である。
【
図5】上記アクチュエーター基板の部分拡大図である。
【
図6】上記アクチュエーター基板、フレキシブルプリント配線板及びプリント基板を接続した状態を示す平面図である。
【
図7】上記アクチュエーター基板、フレキシブルプリント配線板及びプリント基板を接続した状態を示す側面図である。
【
図8】上記アクチュエーター基板の共通配線の抵抗を測定する回路図である。
【
図9】上記アクチュエーター基板とフレキシブルプリント配線板の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0010】
実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。
図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0011】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0012】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0013】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0014】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0015】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル25(
図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0016】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0017】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、
図2~
図7を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0018】
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、ノズルプレート21、アクチュエーター基板22、及び液体供給部の一例であるインク供給部23を備えている。インク供給部23は、
図1のインク供給圧力調整装置321とインク流路311を介して接続する。ヘッド部2のアクチュエーター基板22は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板3と接続する。さらにフレキシブルプリント配線板3は、中継基板としてのプリント基板4と接続する。
【0019】
フレキシブルプリント配線板3は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)31を搭載している(以下、駆動ICと称す)。駆動IC31は、フレキシブルプリント配線板3とは別の基板に搭載し、その別の基板からフレキシブルプリント配線板3に接続されるようにしてもよい。制御部としての駆動IC31は、プリント基板4を介して送られてくるインクジェットプリンタ10の制御基板17からのプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するように駆動信号を各チャネルに与える。
【0020】
ノズル部の一例であるノズルプレート21は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。インクを吐出する各チャネルのノズル25は、ノズルプレート22の長手方向(X方向)に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。
【0021】
アクチュエーター基板22は、例えば絶縁性のセラミックスで形成した矩形状の基板である。
図3に示すように、圧力室51と空気室52は、アクチュエーター基板22に、第1の方向例えばX方向に沿って交互に複数形成する。圧力室51は、ノズル25と連通する。圧力室51は、例えばアクチュエーター基板22に形成した共通インク室(不図示)を介してインク供給部23と連通する。一方、圧力室51に隣接して配置した空気室52は、ノズル25及び共通インク室(不図示)とは連通しない例えば閉鎖空間とする。圧力室51と空気室52は、アクチュエーター基板22に、例えば分極方向が相反する方向(一例として対向方向)に積層した2枚の圧電部材26を、第2の方向例えばZ方向に例えば矩形の溝状に切り欠くことによって形成する。すなわち、圧力室51と空気室52の間は、第3の方向例えばY方向に積層した2枚の圧電部材26を側壁にして仕切っている。
【0022】
電極53は、溝状の圧力室51の底面及び両側面に一体的に形成する。圧力室51の電極53は、配線電極である個別配線54と接続する。電極55は、溝状の空気室52の底面及び両側面に一体的に形成する。空気室52の電極55は、配線電極である共通配線56と接続する。すなわち、圧力室51の電極53と個別配線54の接続点がアクチュエーター5の一方の端子である。空気室52の電極55と共通配線56の接続点がアクチュエーター5の他方の端子である。個別配線54は、駆動IC31の駆動ドライバD(すなわち、駆動回路)に接続する。各チャネルの駆動ドライバDは、各チャネルのアクチュエーター5に対し、駆動信号として駆動電圧V1を夫々与え、独立駆動させる。共通配線56は、例えばグランド(GND)に接続する。この構成により、駆動電圧V1を与えたアクチュエーター5は、圧電部材26の分極軸と交差(望ましくは、直交)する方向に電界が印加され、圧力室51のX方向の側壁となっている圧電部材26がシアモードでX方向に対称に変形する。
【0023】
すなわち、インクの圧力室51は、圧電部材26を用いた柱状の一対のアクチュエーター5に挟まれて形成している。その柱状のアクチュエーター5の両壁、すなわち圧力室51の内側の壁と外側の壁に電位差を与え、アクチュエーター5を充電することによってアクチュエーター5を変形させる。これにより圧力室51の容積が変化し、その結果、圧力室51内のインク圧が変化する。この変化の大きさとタイミングを調整することによって、ノズル25からインクを吐出する。
【0024】
図4は、アクチュエーター基板22、フレキシブルプリント配線板3、及びプリント基板4を互いに接続する前の平面図である。
図5は、アクチュエーター基板22の部分拡大図である。
図6は、各基板22,3,4を互いに接続した状態を示す平面図である。
図7は、各基板22,3,4を互いに接続した状態を示す側面図である。
【0025】
アクチュエーター基板22とフレキシブルプリント配線板3は、互いの端子部20,30同士を重ねて接続する。フレキシブルプリント配線板3とプリント基板4は、互いの端子部32,40同士を重ねて接続する。
【0026】
既述のように、アクチュエーター5は、一方の端子に個別配線54を接続する。各アクチュエーター5から引き出した複数の個別配線54は、アクチュエーター基板22の一方の辺縁の端子部20までそれぞれ形成する。アクチュエーター基板22の一方の辺縁とは、フレキシブルプリント配線板3を接続する側の基板の辺縁である。端子部20において、個別配線54は、例えば等間隔で並列に形成する。
【0027】
共通配線56は、第1配線部57と第2配線部58を含む。第1配線部57と第2配線部58は、アクチュエーター5からみて端子部20とは反対側に配置して、個別配線54と交差しないようにする。第1配線部57は、アクチュエーター基板22の他方の辺縁側にアクチュエーター5の配列方向に沿って形成し、さらにアクチュエーター5の配列方向の両側例えば両端部をアクチュエーター5の配列方向と交差する方向に折り返して端子部20まで形成する。従って、端子部20には、第1配線部57の両端部から引き出した一対の端子が、基板両側に対称に位置している。アクチュエーター5の配列方向と交差する方向とは、例えば直交する方向である。第1配線部57から分岐する複数の第2配線部58は、アクチュエーター5の配列方向と交差する方向に沿って形成し、アクチュエーター5の他方の端子とそれぞれ接続する。
【0028】
モニター端子59は、フレキシブルプリント配線板3を接続する側に配置する。モニター端子59は、共通配線56の第1配線部57と接続し、詳しくは後述するように第1配線部57の抵抗を測定する際に使用する。モニター端子59は、一例として、隣り合う個別配線54の間を通る配線状に形成し、さらに隣り合うアクチュエーター5の間を通って第1配線部57に接続する。図の例では、モニター端子59の一部を、空気室51の電極55(
図3参照)と第2配線部58で形成している。すなわち、モニター端子59は、空気室51にある電極55を利用して引き出すことによって個別配線54や別のチャネルの第2配線部58など他の配線と交差することなく、アクチュエーター5の配列を横切って第1配線部57に接続している。なお、空気室51を設けないヘッド構造の場合などでは、モニター端子59を独立した配線にして第1配線部57に接続してもよい。
【0029】
モニター端子59は、アクチュエーター5の配列方向に沿って延びる第1共通電極57の長さ方向の中央にあたる位置に形成する。好ましくは、第1共通電極57を対称に2分割する位置である。モニター端子59は必ずしも中央に一つである必要はなく、モニター端子59は複数の空気室にある電極を利用して複数設けてもよい。モニター端子59の数を増すことによって、電極抵抗をより細かく管理することができる。また、好ましい一例として、モニター端子59と隣接する個別配線54の間隔、及び、隣接する個別配線54同士の間隔を調整して、端子部20における各端子のピッチPが揃うようにする(
図5参照)。このように配置すれば、モニター端子59と後述する静電容量測定の端子が等間隔になるので、一括プロービングが容易になる利点がある。
【0030】
個別配線54、第1配線部57、第2配線部58、及びモニター端子59は、例えば、ニッケル、アルミ、金またはこれらの合金などで薄膜状に形成する。個別配線54、第2配線部58、及びモニター端子59の配線幅は、例えば10μm~30μmの範囲内から選択する。第1配線部57は、全てのアクチュエーター5に充放電電流を供給する必要があるため、第2配線部58よりも配線幅を大きくしている。配線幅は、例えば0.8mmである。個別配線54、第1配線部57、第2配線部58、及びモニター端子59の厚みは、例えば0.4μmとする。絶縁性確保のため、例えば端子部20を除いた領域に絶縁層や絶縁部材などを設けてもよい。
【0031】
フレキシブルプリント配線板3は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。駆動IC31は、例えばシリコン半導体基板上に形成したドライバチップである。フレキシブルプリント配線板3には、出力配線33、入力配線34、電圧V1の電源配線35、グランド配線36、及び共通通過配線37を形成する。これらの配線33~37及び駆動IC31は、フレキシブルプリント配線板3の片面に形成するのが好ましい。フレキシブルプリント配線板3の一例は、COF(Chip on Film)である。駆動IC31から引き出した出力配線33は、端子部30まで形成する。出力配線33は、フレキシブルプリント配線板3に形成した個別配線である。出力配線33の本数は、アクチュエーター基板22側の個別配線54の本数と例えば同じにする。
【0032】
共通通過配線37は、アクチュエーター基板22を接続する側の端子部30からプリント基板4を接続する側の端子部32まで形成する。共通通過配線37は、基板両側に一対に形成し、アクチュエーター基板22の端子部20に一対に形成した第1配線部57の端子とそれぞれ接続して、駆動時第一配線部57に生じる電圧降下を緩和する。
【0033】
駆動IC31から引き出した入力配線34は、プリント基板4を接続する側の端子部32にまで形成する。なお、駆動IC31はシリアル通信によって制御できるので、入力配線34の本数は、出力配線33の数よりも少なくすることができる。
【0034】
電源配線35及びグランド配線36は、夫々駆動IC31に接続する。電源配線35及びグランド配線36は、プリント基板4を接続する側の端子部32まで夫々形成する。出力配線33、入力配線34、電源配線35、グランド配線36、及び共通通過配線37は、例えば銅で薄膜状に形成する。
【0035】
プリント基板4は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。端子部40には、出力配線41、電源配線42、及びグランド配線43を夫々形成する。出力配線41は、フレキシブルプリント配線板3の入力配線34と接続する。電源配線42は、フレキシブルプリント配線板3の電源配線35と接続する。グランド配線43は、フレキシブルプリント配線板3のグランド配線36及び共通通過配線37と接続する。出力配線41には、インクジェットプリンタ10の制御基板17から送られてくる各アクチュエーター5を選択的に駆動させる信号を与える。電源配線42には、駆動電圧V1を与える。グランド配線43は、例えばインクジェットプリンタ10の制御基板17でグランド(GND)に接続する。
【0036】
特に
図7に示すように、アクチュエーター基板22の端子部20とフレキシブルプリント配線板3の端子部30は、異方性導電フィルム(ACF、Anisotropic Conductive Film)6を介して接続する。すなわち、アクチュエーター基板22の端子部20とフレキシブルプリント配線板3の端子部30を互いに対向するように配置し、その間にACF6を介在させ、例えば熱圧着ツールを用いて熱圧着させることにより、端子部20,30の配線を一括接続する。これにより、個別配線54と出力配線33、共通配線56と共通連絡配線37の各々を電気的に接続できる。フレキシブルプリント配線板3とプリント基板4の接続も同様である。
【0037】
図8は、共通配線56の第1配線部57の抵抗を測定する抵抗測定回路7の構成図である。抵抗の測定は、例えばインクジェットヘッド100の製造プロセスの中で、フレキシブルプリント配線板3を接続する前のアクチュエーター基板22に対して行う。
図8に示すように、第1配線部57の抵抗の測定には、プローブ71を使用する。複数のプローブ71は、端子部20に配列した各配線54,57,59を測定可能になっている。
【0038】
第1配線部57の抵抗の測定は、4端子法で測定する。抵抗測定回路7は、第1配線部57の端子1と端子2としての両端に、電流源72とつなげたプローブ71をそれぞれ接続する。電圧検出回路73は、第1配線部57の一方の端子1とモニター端子59に接続する。電圧検出回路74は、第1配線部57の他方の端子2とモニター端子59に接続する。なお、
図7では、電流源72とつなげたプローブ71は、2本一組にして所定の電流が流せるようにしている。
【0039】
第1配線部57の抵抗の測定は、電流源72により第1配線部57の一方の端子2から他方の端子1へ所定の電流を流し、この電流を測定しておく。第1配線部57の両端から端子1~2を引き出しているのは、印刷時に多くのアクチュエーター5を同時駆動させた際の、電流集中に因る電圧降下を防ぐためであるが、この構成を抵抗の測定にも活用する。
【0040】
同時に、第1配線部57の端子1とモニター端子59の間の電圧、すなわち検出電圧1を測定する。同時に、モニター端子59と第1配線部57の端子2との間の電圧、すなわち検出電圧2を測定する。オームの法則に従い、検出電圧1を電流で除した値が第1配線部57の半分(図の紙面左側)の抵抗値、検出電圧2を電流で除した値が第1配線部57の半分(図の紙面右側)の抵抗値、検出電圧1と検出電圧2の和を電流で除した値が第1配線部57の全体の抵抗値である。モニター端子59の数を増やせば配線抵抗の分布をさらに詳細に管理できる。これらの抵抗値が所定の範囲となるように製造プロセスの配線形成工程を管理するのがよい。
【0041】
すなわち、
図3を参照して説明したように、各アクチュエーター5の一方の端子は、個別配線54に接続し、駆動IC31の各駆動ドライバDによって独立駆動される。各アクチュエーター5の他方の端子は、共通配線56(57,58)を介して共通電位に接続している。この共通電位が一定であれば、各アクチュエーター5に印加される正味電圧は、個別配線54に接続した各駆動ドライバDの出力波形によって、各チャネルで個別に制御される。
【0042】
しかし、現実には共通配線56(57,58)は抵抗を持っているので、各アクチュエーター5を駆動する際に共通配線56(57,58)に電流が流れる。特に第1配線部57の抵抗は、各アクチュエーター5からの充放電電流が集中したときに電圧降下を生じさせる。その電圧降下はどのチャネルを駆動するかによって変化するので、インクジェットヘッド100としては印字パターンによって各チャネルの吐出特性が変わってしまうクロストークと呼ばれる現象が発生し、印字品質が悪化する。これを防ぐためには特に第1配線部57の抵抗を低い値に管理しなくてはならない。管理のためには抵抗を測定する必要がある。
【0043】
また、第1配線部57の抵抗は一様に形成されているとは限らない。共通配線56(57,58)を湿式の化学メッキによって形成する場合、メッキ相の状態によってメッキが厚く抵抗が低い場所とメッキが薄く抵抗が高い場所が生じる場合がある。よって第1配線部57の抵抗の測定と同時にその分布を把握することが望ましい。
【0044】
そこで、上述のように抵抗を測定可能な構成にすれば、例えば駆動中にモニター端子59の電圧波形を測定することによって、第1配線部57の抵抗による電圧降下がアクチュエーター5に与える正味波形にどの程度の影響を与えるかを確認することが可能となる。また、
図9に示すようにフレキシブルプリント配線板3上にモニター端子38とモニターパッド39を設け、アクチュエーター基板22のモニター端子59とモニター端子38をACF6によって接続するようにしてもおいてもよい。フレキシブルプリント配線板3上にモニターパッド38があれば正味波形確認のためのプロービングが容易になるからである。そのモニターパッド38は通常状態でのショートを防ぐために、通常はフレキシブルプリント配線板3上のレジストに覆われるようにしておいてもよい。その場合は正味波形の確認時にレジストを剥いでコンタクトを取ればよい。また、インクジェットヘッド100の製造プロセスの工程管理をすることができる。
【0045】
さらに、
図8の測定回路は、各アクチュエーター5が正常か否などを測定する。静電容量測定回路75は、各プローブ71を介して所定の電圧波形を与えときにプローブ71を流れる電流の波形を測定することによって、各アクチュエーター5の静電容量を測定する。そして、測定した静電容量を基に、各アクチュエーター5が正常か否か、各個別配線54の配線パターンが正常か否かを判断する。プローブ71のコンタクトピンを、第1配線部57の端子1、端子2、モニター端子59と個別配線54の各々に設け、これらを一括してプロービングするようにしておけば、一回のプロービング・位置決めで回路のみ切り換えることによって第1配線部57の抵抗測定とアクチュエーター5の静電容量測定の両方を行うことができ、検査時間を短縮できる。その場合、第1配線部57の抵抗測定には第1配線部57の端子1、端子2、モニター端子59を用い、アクチュエーター5の静電容量測定は第1配線部57の端子1、端子2、モニター端子59うち少なくともいずれか一つと各個別配線54との間で行う。第1配線部57の抵抗測定とアクチュエーター5の静電容量測定は同時に行えば測定時間はさらに短縮できるが、回路を切り換えて別々に実行する方が静電容量測定の測定結果は正確になる。
【0046】
上述の実施形態によれば、アクチュエーター基板22にモニター端子59を設けたことにより、複数のアクチュエーター5に共通の電位を与える第1配線部57の抵抗を測定することが可能となる。
【0047】
なお、インクジェットヘッド100は、圧力室51と空気室52を交互に配置したシアモード型のアクチュエーター5に限らない。例えばノズル25とアクチュエーター5の両方をノズルプレート21の面上に複数配置した構成としてもよい。その他のドロップオンデマンド・ピエゾ方式のアクチュエーター5であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0049】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
22 アクチュエーター基板
25 ノズル
5 アクチュエーター
54 個別配線
56 共通配線
57 第1配線部
58 第2配線部
59 モニター端子
D 駆動ドライバ(駆動回路)