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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121222
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】配送管理装置及び配送管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230824BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024428
(22)【出願日】2022-02-21
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尹 聖在
(72)【発明者】
【氏名】村上 英治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大志
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガス使用量の変化に応じたガスボンベの配送管理を行う配送管理装置及び配送管理方法を提供する。
【解決手段】データベース、配送管理装置によって管理される複数の建築物、配送管理装置及び複数の配送員が夫々所有する端末が、ネットワークによって互いに接続されている配送管理システムにおいて、配送管理装置200は、建築物に設けられたガスボンベからのガス使用量に関する情報を取得するガス使用量取得部204と、建築物が設けられている場所の気象に関する情報を取得する気象情報取得部205と、ガス使用量取得部が取得したガス使用量に関する情報及び気象情報取得部が取得した気象に関する情報に基づいて、建築物におけるガス使用量を予測するガス使用量予測部206と、ガス使用量予測部による予測に基づいて、建築物への新たなガスボンベの配送を管理するための配送管理情報を生成する情報生成部207と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に設けられたガスボンベからのガス使用量に関する情報を取得するガス使用量取得部と、
前記建築物が設けられている場所の気象に関する情報を取得する気象情報取得部と、
前記ガス使用量取得部が取得したガス使用量に関する情報及び前記気象情報取得部が取得した気象に関する情報に基づいて、前記建築物におけるガス使用量を予測するガス使用量予測部と、
前記ガス使用量予測部による予測に基づいて、前記建築物への新たなガスボンベの配送を管理するための配送管理情報を生成する情報生成部と、を備えた
ことを特徴とする配送管理装置。
【請求項2】
前記気象情報取得部は、前記建築物が設けられている場所の気温に関する情報を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の配送管理装置。
【請求項3】
前記情報生成部は、前記建築物を含む複数の建築物の位置に関する位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて、前記複数の建築物を複数のグループに分類する情報を含む配送管理情報を生成する
ことを特徴とする請求項1記載の配送管理装置。
【請求項4】
前記情報生成部は、前記位置情報に基づいて、前記複数のグループ毎に、ガスボンベの配送を行う建築物を経由するガスボンベの配送ルートを示す情報を含む配送管理情報を生成する
ことを特徴とする請求項3記載の配送管理装置。
【請求項5】
前記ガス使用量取得部は、前記建築物の単位期間におけるガス使用量を取得し、
前記気象情報取得部は、前記建築物が設けられている場所の単位期間における気温を取得し、
前記ガス使用量予測部は、前記気象情報取得部が取得した単位期間における気温を説明変数とし、前記ガス使用量取得部が取得した当該単位期間におけるガス使用量である単位ガス使用量を目的変数とし、複数の単位期間において取得された気温及び単位ガス使用量の単回帰分析によって算出される回帰式の傾きに基づいて、前記建築物におけるガス使用量を予測する
ことを特徴とする請求項4記載の配送管理装置。
【請求項6】
前記ガス使用量予測部は、前記単回帰分析を行う分析期間における平均気温である総平均気温と、前記分析期間における複数の単位ガス使用量の平均値である総平均ガス使用量と、前記回帰式の傾きと、に基づいて、前記建築物におけるガス使用量を予測する
ことを特徴とする請求項5記載の配送管理装置。
【請求項7】
前記情報生成部は、前記配送ルートに沿ってガスボンベを配送する際に掛かる配送時間を予測し、前記配送時間に基づいて、前記複数の建築物を前記複数のグループに分類する情報を生成する
ことを特徴とする請求項3記載の配送管理装置。
【請求項8】
前記情報生成部は、前記複数の建築物が複数の基準グループに分類された情報を含む分類情報を取得し、前記複数の基準グループ間における前記配送時間の差が小さくなるように、前記複数の建築物を前記複数のグループに分類する
ことを特徴とする請求項7記載の配送管理装置。
【請求項9】
前記配送ルートを含む配送管理情報を、前記複数のグループ毎に対応付けられた複数の端末へ出力する出力部を備えた
ことを特徴とする請求項3記載の配送管理装置。
【請求項10】
ガス使用量取得部と、気象情報取得部と、ガス使用量予測部と、情報生成部と、を備えた装置が行う配送管理方法であって、
前記ガス使用量取得部が、前記建築物に設けられたガスボンベからのガス使用量に関する情報を取得するステップと、
前記気象情報取得部が、前記建築物が設けられている場所の気象に関する情報を取得するステップと、
前記ガス使用量予測部が、前記ガス使用量取得部が取得したガス使用量に関する情報及び前記気象情報取得部が取得した気象に関する情報に基づいて、前記建築物におけるガス使用量を予測するステップと、
前記情報生成部が、前記ガス使用量予測部による予測に基づいて、前記建築物への新たなガスボンベの配送を管理するための配送管理情報を生成するステップと、を備えた
ことを特徴とする配送管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配送管理装置及び配送管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷主からの荷物の配送依頼に応じて、配送を行う際のルート等の配送計画を作成するダイナミック型物流自動ナビゲーション装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-290193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物に設置されてLPG(Liquefied Petroleum Gas)等のガス燃料を収納するガスボンベは、内部のガス燃料が使用されて交換が必要となった際、配送員によって新しいガスボンベが当該建築物へ配送されて、古いガスボンベとの交換が行われる。一般に、このようなガスボンベのガス使用量は一定ではなく、ガス使用量の変化に応じたガスボンベの配送管理を行うことが難しかった。
【0005】
本開示は、ガス使用量の変化に応じたガスボンベの配送管理を行うことができる配送管理装置及び配送管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配送管理装置は、建築物に設けられたガスボンベからのガス使用量に関する情報を取得するガス使用量取得部と、建築物が設けられている場所の気象に関する情報を取得する気象情報取得部と、ガス使用量取得部が取得したガス使用量に関する情報及び気象情報取得部が取得した気象に関する情報に基づいて、建築物におけるガス使用量を予測するガス使用量予測部と、ガス使用量予測部による予測に基づいて、建築物への新たなガスボンベの配送を管理するための配送管理情報を生成する情報生成部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、気象に関する情報に基づいて建築物におけるガス使用量を予測し、ガス使用量の予測に基づいてガスボンベの配送を管理するための配送管理情報を生成するので、建築物におけるガス使用量の変化に応じたガスボンベの配送管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る配送管理システムの構成の一部を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る建築物の構成の一部を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る配送管理装置の構成の一部を示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係る配送管理装置及び端末のハードウェア構成の一例を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る配送管理装置及び端末のハードウェア構成の一例を示す構成図である。
図6】実施の形態1に係る配送管理装置が行う配送管理処理を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1において回帰式の傾きを横軸に総平均ガス使用量を縦軸にした場合の建築物の分布を示す分布図である。
図8】実施の形態1に係る建築物が分類された基準グループを示す模式図である。
図9】実施の形態1に係る建築物が再分類されたグループを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
先ず、図1を参照して、実施の形態1に係る配送管理システム100の構成について説明する。図1は、配送管理システム100の構成の一部を示す構成図である。実施の形態1に係る配送管理システム100は、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、LNG(Liquefied Natural Gas)等の燃料として使用されるガス燃料を収納するガスボンベ301が設置された建築物300に対し、ガスボンベ301を交換するためのガスボンベ301の配送管理を行うためのシステムである。
【0010】
配送管理システム100は、気象に関する統計情報を記憶するデータベースDBと、ガスボンベ301が設置されている複数の建築物300と、ガスボンベ301の配送管理を行う配送管理装置200と、ガスボンベ301を各建築物300へ配送する複数の配送員がそれぞれ所有する端末M1,M2,M3,M4と、を備えており、これらデータベースDB、配送管理装置200によって管理される複数の建築物300、配送管理装置200及び複数の端末M1~M4は、ネットワークNによって互いに接続されている。
【0011】
データベースDBは、例えば、行政機関、NGO、民間企業等の団体によって測定または情報の収集が行われた、気象に関する統計情報及び将来の気象の予測に関する情報を記憶する。データベースDBは、例えば、建築物300が設けられている場所の、気温、降雨量、積雪量、日照時間等、気象に関する統計情報を測定日時と紐づけて取得し、取得した情報をネットワークNを介して外部に提供する。端末M1~M4は、それぞれ情報を表示する表示装置Maを有している。表示装置Maは、例えば、情報を画像として表示可能な液晶ディスプレイ等である。端末M1~M4は、ネットワークNを介して取得した情報を、表示装置Maに表示させる。
【0012】
次に、図2を参照して、実施の形態1に係る建築物300の構成について説明する。図2は、建築物300の構成の一部を示すブロック図である。建築物300は、ガスボンベ301と、ガス使用量測定装置302と、ガス燃料を使用する不図示のガス設備と、を有している。ガスボンベ301は、内部に収納したガス燃料を、所定の圧力に減圧させる圧力調節器(不図示)等を介して、建築物300に設けられた暖房設備、給湯設備、ガス調理機等のガス設備(不図示)に供給する。
【0013】
ガス使用量測定装置302は、流量測定部302aと、計時部302cと、記憶部302bと、出力部302dと、を有している。流量測定部302aは、ガスボンベ301からガス設備へ供給されたガス燃料の流量を測定する。計時部302cは、流量測定部302aによって測定されたガス燃料の流量の、測定日時を計時する。記憶部302bは、流量測定部302aによって測定されたガス燃料の流量の測定結果及び測定日時に関する情報を記憶する。
【0014】
出力部302dは、ガスボンベ301からガス設備へ供給されたガス燃料の流量に関する情報をネットワークNを介して出力する。例えば、出力部302dは、記憶部302bに記憶されている情報を参照し、流量測定部302aによるガス燃料の流量の測定結果及び測定日時に関する情報を、ネットワークNを介して出力する。また、例えば、出力部302dは、所定の単位期間におけるガス使用量の合計を、当該単位期間毎にネットワークNを介して出力する。単位期間は、例えば、1日、1週間または1月等、である。
【0015】
このように構成されて、ガス使用量測定装置302は、ガスボンベ301によって建築物300のガス設備に供給されたガスの量、即ち建築物300のガス使用量に関する情報を取得して、取得した情報をネットワークを介して出力する。
【0016】
次に、図3を参照して、実施の形態1に係る配送管理装置200の構成について説明する。図3は、配送管理装置200の構成の一部を示すブロック図である。配送管理装置200は、入力部201と、出力部202と、ガス使用量取得部204と、気象情報取得部205と、ガス使用量予測部206と、情報生成部207と、記憶部203と、を有している。
【0017】
入力部201は、ネットワークN、及びキーボードまたはマウス等の入力デバイスに接続されて、各種情報が入力される。出力部202は、ネットワークN、及び液晶ディスプレイ等の出力デバイスに接続されて、各種情報を出力する。ガス使用量取得部204は、入力部201及びネットワークNを介して各建築物300のガス使用量測定装置302からガス使用量に関する情報を取得する。例えば、ガス使用量取得部204は、各建築物300の単位期間における合計のガス使用量を、単位期間よりも十分に大きい所定の調査期間(分析期間)において複数回取得する。具体的には、ガス使用量取得部204は、調査期間である10箇月の開始日から終了日までの、各建築物300の1週間毎のガス使用量を取得する。
【0018】
気象情報取得部205は、ガス使用量取得部204がガス使用量に関する情報を取得した建築物300が設けられている場所の気象に関する統計情報を、入力部201及びネットワークNを介して、データベースDBから取得する。例えば、気象情報取得部205は、ガス使用量取得部204がガス使用量に関する情報を取得した建築物300が設けられている地域の代表点における気温に関する統計情報を取得する。具体的には、気象情報取得部205は、ガス使用量取得部204が所定の建築物300の単位期間におけるガス使用量を所定の調査期間において複数回取得した場合、当該建築物300が設けられている行政区の代表点において、当該調査期間にガス使用量取得部204がガス使用量を取得した単位期間と同じ単位期間の平均気温を取得する。なお、ガス使用量及び気象に関する統計情報を取得する単位期間は、前後の単位期間と隣接していることが望ましい。このように複数の単位期間が設けられた場合、全ての単位期間の合計の長さは、調査期間の長さに等しくなる。
【0019】
ガス使用量予測部206は、ガス使用量取得部204が取得した各建築物300のガス使用量に関する情報と、気象情報取得部205が取得したこれら建築物300が設けられている場所の気象に関する統計情報と、に基づいて、各建築物300の将来の所定期間である予測期間におけるガス使用量を予測する。ガス使用量予測部206の詳細については、後述する。
【0020】
情報生成部207は、ガス使用量予測部による予測及び記憶部203に記憶されている情報に基づいて、建築物300への新たなガスボンベ301の配送を管理するための配送管理情報を生成する。情報生成部207の詳細については、後述する。
【0021】
記憶部203は、入力部201から入力された情報、配送管理装置200の各部が算出した情報、その他の情報を記憶する。記憶部203は、建築物情報記憶部203aと、気象情報記憶部203bと、配送情報記憶部203cと、を有している。建築物情報記憶部203aは、入力部201から入力された各建築物300に関する情報を記憶する。例えば、建築物情報記憶部203aは、ガス使用量取得部204が取得した各建築物300のガス使用量に関する情報、各建築物300の住所等、各建築物300の位置を特定するための位置情報、建築物300を使用している需要家を識別するための情報、建築物300の特性に関する情報等を記憶する。建築物300の特性は、例えば、建築物300毎のガス消費量に対する気温弾力性である。ガス消費量に対する気温弾力性の詳細については、後述する。
【0022】
気象情報記憶部203bは、気象情報取得部205が取得した各建築物300が設けられている場所の気象に関する統計情報を記憶する。例えば、気象情報記憶部203bは、気象情報取得部205が取得した各建築物300が設けられている地域の気温に関する情報を記憶する。配送情報記憶部203cは、情報生成部207が生成した配送管理情報、過去に行ったガスボンベ301の配送に関する情報等、ガスボンベ301の配送を管理するための情報を記憶する。
【0023】
次に、図4及び図5を参照して、配送管理装置200、ガス使用量測定装置302及び端末M1~M4のハードウェア構成について説明する。図4及び図5は、配送管理装置200、ガス使用量測定装置302及び端末M1~M4のハードウェア構成の一部の一例を示す図である。
例えば、図4に示すように、配送管理装置200は、専用のハードウェアである処理回路を有している。処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせによって構成される。また、例えば、図5に示すように、配送管理装置200は、メモリとプロセッサとを有し、メモリに格納されるプログラムをプロセッサが読み出して実行するように構成される。このように、配送管理装置200の各機能は、専用のハードウェアである処理回路またはプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0024】
同様に、ガス使用量測定装置302及び端末M1~M4は、専用のハードウェアである処理回路またはプロセッサを有しており、ガス使用量測定装置302及び端末M1~M4の各機能は、専用のハードウェアである処理回路またはプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0025】
次に、図1図3図6乃至図9を参照して、配送管理装置200が行う配送管理処理について説明する。図6は、実施の形態1に係る配送管理装置200が行う配送管理処理を示すフローチャートである。配送管理処理は、ガスボンベ301の配送を管理するための配送管理情報を生成し、各配送員が所有する端末へ配送管理情報を送信することで、配送員によるガスボンベ301の配送作業を支援するための処理である。
【0026】
まず、配送管理装置200は、配送管理処理を開始すると、管理対象である各建築物300について、異なる複数の単位期間におけるガス使用量に関する情報としての単位ガス使用量、及び気象に関する統計情報としての当該単位期間における各建築物300が設けられている場所の気温に関する情報を、ガス使用量取得部204及び気象情報取得部205によって取得したか否かを判定する(ステップST1)。
【0027】
単位ガス使用量は、管理対象である各建築物300の、調査期間における単位期間のガス使用量である。例えば、調査期間の開始日から単位期間毎に区切った期間を単位期間p1,p2,・・・pnとすると、配送管理装置200は、それぞれの単位期間p1,p2,・・・pnにおける各建築物300のガス使用量である、複数の単位ガス使用量u1,u2,・・・unを建築物300毎に取得する。また、この処理において、配送管理装置200は、気温に関する情報として、例えば、調査期間の開始日から終了日までの、各建築物300が設けられている地域の日別の平均気温を取得する。
【0028】
ステップST1の処理において、異なる複数の単位期間における単位ガス使用量及び気温に関する情報を入手した場合(ステップST1のYES)、配送管理装置200は、取得した気温に関する情報に基づき、ガス使用量予測部206によって単位気温を算出する(ステップST2)。単位気温は、各建築物300が設けられている場所の単位期間における気温であり、取得した単位ガス使用量の単位期間に対応する単位期間の気温である。例えば、配送管理装置200は、単位ガス使用量を取得したそれぞれの単位期間p1,p2,・・・pnにおける各建築物300が設けられている場所の平均気温である単位気温t1,t2,・・・tnを取得する。
【0029】
ステップST2の処理を行うと、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、単位気温t1,t2,・・・tnを説明変数とし、単位ガス使用量を目的変数として、複数の単位期間p1,p2,・・・pnにおいて取得された単位気温及び単位ガス使用量の単回帰分析を建築物300毎に行う(ステップST3)。この処理において、配送管理装置200は、単位気温及び単位ガス使用量の単回帰分析の結果である、ガス消費量をu、気温をtとする以下の回帰式を得る。
u=m*t+k (1)
【0030】
なお、単回帰分析の信頼性を確保するためには十分な数の単位気温及び単位ガス使用量が必要であるため、調査期間は、単位期間よりも十分に大きい期間であることが望ましい。しかしながら、調査期間が長すぎると、需要家の家族構成の変化や建築物300のガス設備変化等によって管理対象である建築物300の特性が変化する可能性がある。このため、調査期間は、半年以上3年以内であることが望ましい。また、調査期間は、四季がある地域においては概ね3季節以上の期間、例えば、9箇月以上の期間であることが望ましい。より望ましくは、調査期間は、夏と冬がある地域においては夏と冬を含む9箇月以上1年以内である。
【0031】
ステップST3の処理を行うと、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、調査期間における総平均ガス使用量U、総平均気温を算出する(ステップST4)。総平均ガス使用量Uは、調査期間における単位ガス使用量の平均値である。総平均ガス使用量Uは、単位期間p1,p2,・・・pnにおいて取得した単位ガス使用量u1,u2,・・・unとサンプル数nとによって、以下のように表される。
U=(u1+u2+・・・+un)/n (2)
【0032】
総平均気温は、調査期間における単位気温の平均値である。総平均気温Tは、上記複数の単位期間p1,p2,・・・pnにおいて算出された単位気温t1,t2,・・・tnとサンプル数nとによって、以下のように表される。
T=(t1+t2+・・・tn)/n (3)
なお、総平均気温は、気象情報取得部205がデータベースDBから直接取得してもよいし、気象情報取得部205がデータベースDBから取得した調査期間における各日の気温と調査期間の日数とに基づいてガス使用量予測部206が算出してもよい。また、単位気温が単位期間における平均気温である場合、かつ全ての単位期間の合計の長さが調査期間の長さに等しい場合、総平均気温は、調査期間における平均気温となる。
【0033】
ステップST4の処理を行うと、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、調査期間における総平均ガス使用量と、総平均気温と、回帰式の傾きと、に基づき、管理対象である建築物300の特性値εを建築物300毎に算出する(ステップST5)。特性値εは、管理対象である建築物300が設けられている場所の気温の変化率に対する当該建築物300のガス消費量変化率の比であり、言い換えると、特性値εは、当該建築物300のガス消費量に対する気温弾力性である。特性値εは、調査期間における総平均ガス使用量Uと、総平均気温Tと、回帰式の傾きmと、によって、以下のように表される。
ε=(dU/U)/(dT/T)=(T/U)*(dU/dT)=(T/U)m
(4)
なお、dT/Tは、気温の変化率であり、dU/Uは、ガス消費量の変化率である。
【0034】
例えば、特性値εが、ε<0である建築物300は、気温が低下するとガス消費量が増加する傾向があり、0<εである建築物300は、気温が低下するとガス消費量が減少する傾向がある。また、例えば、特性値εが、|ε|<1である建築物300は、気温の変化に対するガス消費量の変化率が小さく、特性値εが、1<|ε|である建築物300は、気温の変化に対するガス消費量の変化率が大きい。言い換えると、特性値εが、|ε|<1である建築物300は、ガス消費量の気温弾力性が低く、特性値εが、1<|ε|である建築物300は、ガス消費量の気温弾力性が高い。言い換えると、特性値εが、|ε|<1である建築物300は、気温に対してガス消費量が非弾力的であり、1<|ε|である建築物300は、気温に対してガス消費量が弾力的である。
【0035】
ステップST5の処理を行うと、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、特性値εと、総平均ガス使用量Uと、回帰式の傾きmと、に基づいて、管理対象である複数の建築物300から、特定の建築物300である特定建築物を抽出する(ステップST6)。
図7は、管理対象である建築物300を、特性値ε、総平均ガス使用量U、及び回帰式の傾きmに基づいて視覚的に分析可能にするため、統計上の総平均気温Tが同じである地域内において、回帰式の傾きmを横軸に、総平均ガス使用量Uを縦軸にした場合の建築物300の分布を示す分布図である。図7において、線L1は、特性値εがε=-1となる直線を示し、線L0は、特性値εがε=0となる直線を示し、線L2は、特性値εがε=1となる直線を示す。
【0036】
このため、線L1よりも下方(左方)の領域である領域Aに位置する建築物300は、特性値εがε<-1となる建築物300であり、線L1と線L0との間の領域である領域Bに位置する建築物300は、特性値εが0<ε<-1となる建築物300であり、線L0と線L2との間の領域である領域Cに位置する建築物300は、特性値εが0<ε<1となる建築物300であり、線L2よりも下方(右方)の領域である領域Dに位置する建築物300は、特性値εが1<εとなる建築物300である。例えば、ステップST6の処理において、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、特性値εが、ε<-1、ε=-1、-1<ε<0、ε=0、0<ε<1、1=ε、1<εのいずれであるか、総平均ガス使用量Uが相対的に高いか低いか、回帰式の傾きmの絶対値|m|が相対的に大きいか小さいかに基づいて、建築物300を分類することができる。なお、総平均ガス使用量U及び回帰式の傾きmの絶対値|m|が相対的に大きいか小さいかの判断は、領域A~領域Dの各領域における総平均ガス使用量U及び回帰式の傾きmの絶対値|m|の平均値を基準に行ってもよいし、中央値を基準に行ってもよいし、他の基準に基づいて行ってもよい。
【0037】
また、図7において、線L3は、総平均ガス使用量Uが予め設定されている所定の第1閾値U1となる直線を示し、線L4は、回帰式の傾きmが予め設定されている所定の第2閾値m1となる直線を示す。ステップST6の処理において、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、領域Aのうち、線L3よりも上方の領域である領域A1に位置する建築物300と、領域Bのうち、線L4よりも左方の領域である領域B1に位置する建築物300と、を特定建築物として抽出する。領域A1に位置する建築物300は、特性値εが比較的大きくかつ総平均ガス使用量Uが比較的大きい建築物300であり、領域B1に位置する建築物300は、特性値εは比較的小さいが、回帰式の傾きmの絶対値|m|が比較的大きくかつ総平均ガス使用量Uが比較的大きい建築物300である。
【0038】
一般に、気温が下がるとガス消費量が増大する。領域A1に位置する建築物300及び領域B1に位置する建築物300である特定建築物は、気温の低下に伴いガス消費量が大きく増加する可能性があり、ガスボンベ301の配送を行う際の配送員の作業量に与える影響が大きい建築物300である。このため、ガスボンベ301の配送の管理においては、特定建築物の管理が重要となる。なお、図7において、線L3と線L1との交点は、線L4と線L1との交点に一致するように記載されているが、第1閾値U1及び第2閾値m1は、これらの交点が一致しないように設定されていてもよい。配送管理装置200は、特定建築物の抽出を行うと、各建築物300の特性値ε、回帰式の傾きm及び特定建築物であるか否かに関する情報を、建築物300毎に建築物情報記憶部203aに記憶させる。
【0039】
ステップST6の処理を行うと、配送管理装置200は、気象情報取得部205によって、所定の予測期間における気温に関する情報である気温情報を取得する(ステップST7のYES)。予測期間は、例えば、翌週の1週間、翌月の1箇月間、次の4半期、翌年の冬季の所定期間等である。気象情報取得部205は、例えば、データベースDBから予測期間における気温の予測値である気温情報を取得してもよいし、データベースDBから取得した過去の気象に関する情報に基づいて、ガス使用量予測部206が予測期間における気温を予測することによって気温情報を取得してもよい。
【0040】
ステップST7の処理を行うと、配送管理装置200は、ガス使用量予測部206によって、予測期間における各特定建築物のガス使用量を予測する(ステップST8)。この処理において、ガス使用量予測部206は、ガス使用量取得部204が取得したガス使用量に関する情報及び気象情報取得部205が取得した気象に関する情報に基づいて、予測期間における各特定建築物のガス使用量を予測する。例えば、ガス使用量予測部206は、各特定建築物の特性値ε、回帰式の傾きm及び予測期間における気温情報に基づいて、各特定建築物のガス使用量を予測する。
【0041】
ステップST8の処理を行うと、配送管理装置200は、情報生成部207によって、配送管理情報を生成する(ステップST9)。この処理において、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測に基づいて配送管理情報を生成する。例えば、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測に基づいて、予測期間に必要な各建築物300のガスボンベ301の交換回数に関する情報を含む配送管理情報を生成する。また、例えば、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測に基づいて、予測期間に必要な各建築物300のガスボンベ301の交換本数に関する情報を含む配送管理情報を生成する。また、例えば、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測に基づいて、予測期間の各配送日において配送員がガスボンベ301を配送する配送ルートに関する情報を含む配送管理情報を生成する。
【0042】
また、例えば、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測、及び建築物情報記憶部203aから取得した各建築物300の位置情報に基づいて、複数の建築物300を複数のグループに分類する情報を含む配送管理情報を生成する。具体的には、情報生成部207は、ガス使用量予測部206による予測、及び建築物情報記憶部203aから取得した各建築物300の位置情報に基づいて、複数の建築物300をガスボンベ301を配送する各配送員毎に対応付けられた複数のグループに分類する情報を含む配送管理情報を生成する。
【0043】
図8は、管理対象である複数の建築物J10~J49が、各配送員毎に対応付けられて分類されているグループを示す模式図である。例えば、配送情報記憶部203cには、予め建築物J10~J49が図8に示す複数の基準グループとしてのグループR1,R2,R3,R4に分類された情報(分類情報)が記憶されている。例えば、建築物J10~J19は、グループR1に分類されており、建築物J20~J29は、グループR2に分類されており、建築物J30~J39は、グループR3に分類されており、建築物J40~J49は、グループR4に分類されている。各グループR1~R4には、それぞれ配送員が対応付けられており、1つのグループに分類されている建築物は、同一の配送員によってガスボンベ301の配送が行われる。グループR1~R4は、境界BNによって区切られている。境界BNは、例えば、道路W1,W2,W3,W4,W5,W6,W7、河川K、線路(不図示)、行政区分の境界(不図示)等に基づいて設定されている。
【0044】
配送情報記憶部203cに記憶されている基準グループとしてのグループR1~R4は、例えば、予め入力部201から入力された情報であってもよいし、前回の予測期間等、過去に各配送員がガスボンベ301の配送を行った際のグループであってもよい。
【0045】
例えば、情報生成部207は、ステップST9の処理において、配送情報記憶部203cに記憶されている基準グループの情報を参照し、各グループにおいて予測期間にガスボンベ301を配送する際に掛かる配送時間をグループ毎に予測する。例えば、情報生成部207は、各グループ毎に、ガスボンベ301の配送を行う建築物を経由するガスボンベ301の配送ルートを示す情報を含む配送管理情報を生成し、配送ルートに沿ってガスボンベ301の配送を行った際に掛かる配送時間を予測する。また、例えば、情報生成部207は、生成した配送ルートの長さ、生成した配送ルートが経由する建築物の数、生成した配送ルートに沿って配送を行った際に交換するガスボンベ301の本数、配送ルートに沿って配送用のガスボンベ301の輸送車等、及び所定の移動手段によって移動する際の移動予測時間のいずれか1つまたはこれらのうち複数の組合せによって、ガスボンベ301の配送を行った際に掛かる配送時間を予測する。
【0046】
配送時間の予測を行うと、情報生成部207は、予測した配送時間を各グループ間で比較し、各グループ間における配送時間の差が小さくなるように、建築物J10~J49を新たなグループに再分類する。
【0047】
図9は、情報生成部207が、建築物J10~J49が再分類されたグループを示す模式図である。例えば、情報生成部207は、予測期間においてグループR2の建築物にガスボンベ301を配送する際の配送時間が、予測期間においてグループR1の建築物にガスボンベ301を配送する際の配送時間よりも大きいと判定した場合、境界BNを変更して新たな境界BN’を設定し、建築物J10~J49を新たなグループであるグループR1’,R2’,R3,R4に再分類する。例えば、情報生成部207は、グループR1に含まれる建築物J10~J19にグループR2に含まれる建築物J28及びJ29を加えて新たなグループR1’とし、グループR2に含まれる建築物J28及びJ29をグループR2から除外して新たなグループR2’とする。これにより、各グループR1’,R2’,R3,R4の配送を行う配送員間の作業量を平準化するように、ガスボンベ301の配送管理を行うことができる。
【0048】
情報生成部207は、建築物J10~J49を新たなグループに分類すると、新たに分類されたグループ毎にガスボンベ301の配送ルートを示す情報を含む配送管理情報を生成する。
【0049】
なお、ステップST1の処理において各情報を取得しなかった場合(ステップST1のNO)、及びステップST7の処理において気温情報を取得しなかった場合(ステップST7のNO)、配送管理装置200は、情報生成部207によってガス使用量の予測及び建築物の新たなグループへの分類を行わずに、配送管理情報を生成する(ステップST9)。例えば、情報生成部207は、この処理において、基準グループであるグループR1~R4に基づいて、ガス消費量の予測によらない配送ルートの情報を含む配送管理情報を生成する。
【0050】
ステップST9の処理において、情報生成部207が配送管理情報の生成を行うと、配送管理装置200は、配送管理情報を出力部202から出力(送信)する(ステップST10)。例えば、配送管理装置200は、建築物が新たなグループに分類されたことを示す情報及び各グループの配送ルートを示す情報を含む配送管理情報を、端末M1~M4のうち各グループに対応する配送員の端末に送信する。端末M1~M4は、配送管理情報を受信すると、受信した配送管理情報を表示装置Maに表示させる。例えば、端末M1~M4は、端末を使用する配送員に対応するグループのガスボンベ301の配送ルートを表示装置Maに表示させる。
【0051】
このように、実施の形態1に係る配送管理装置200は、気温に関する情報に基づいて建築物300におけるガス使用量を予測し、ガス使用量の予測に基づいてガスボンベ301の配送を管理するための配送管理情報を生成するので、建築物300におけるガス使用量の変化に応じたガスボンベ301の配送管理を行うことができる。
【0052】
また、実施の形態1に係る配送管理装置200は、ガス使用量の予測に基づいて複数の建築物300を複数のグループに分類するので、ガス使用量の予測に基づいてガス使用量に応じたグループ毎の配送の管理を行うことができる。
【0053】
また、実施の形態1に係る配送管理装置200は、各グループのガスボンベ301の配送時間を予測し、複数のグループ間における配送時間の差が小さくなるように、複数の建築物を新たな複数のグループに分類するので、ガス使用量の変化に応じて変化する配送員の作業量を配送員間で平準化することができる。
【0054】
なお、実施の形態1に係る配送管理装置200は、気温に関する情報に基づいて建築物300におけるガス使用量を予測するが、これに限定されない。配送管理装置は、ガス使用量との相関がある気象に関する情報に基づいて建築物におけるガス使用量を予測するものであればよく、例えば、配送管理装置は、降雨量、積雪量、日照時間等の気象に関する情報に基づいてガス使用量を予測するものであってもよい。
【0055】
また、実施の形態1に係る配送管理装置200は、予測した配送時間を各グループ間で比較し、各グループ間における配送時間の差が小さくなるように、建築物J10~J49を新たなグループに再分類するが、これに限定されない。配送管理装置は、各グループ間における配送作業の作業量の差が小さくなるように、建築物を複数のグループに分類するものであればよく、例えば、各グループのガスボンベの配送ルートの情報を生成して、各グループ間における配送ルートの長さの差が小さくなるように建築物を複数のグループに分類するものであってもよいし、各グループ間における配送ルートを所定の移動手段によって移動する移動時間の長さの差が小さくなるように建築物を複数のグループに分類するものであってもよいし、各グループ間における配送ルートが経由する建築物の数の差が小さくなるように建築物を複数のグループに分類するものであってもよいし、各グループ間における配送ルートに沿って配送を行った際に交換するガスボンベの本数の差が小さくなるように建築物を複数のグループに分類するものであってもよい。
【0056】
なお、本開示は、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0057】
200 配送管理装置
202 出力部
204 ガス使用量取得部
205 気象情報取得部
206 ガス使用量予測部
207 情報生成部
300 建築物
301 ガスボンベ
m 回帰式の傾き
M1~M4 端末
T 総平均気温
U 総平均ガス使用量
ε 特性値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9