(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121237
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】多重立体トラスシステム
(51)【国際特許分類】
E04B 1/19 20060101AFI20230824BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E04B1/19 A
E04B1/58 M
E04B1/19 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024463
(22)【出願日】2022-02-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】522067994
【氏名又は名称】細川 進
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】細川 進
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125BB09
2E125BC09
2E125BE08
2E125CA03
2E125CA14
2E125CA91
(57)【要約】
【課題】より多くの接合面を有する多重立体トラスシステムを提供する。
【解決手段】多重立体トラスシステムSは、複数のノード10、・・・と、複数のノード10、10間を連結する複数のビーム20、・・・と、を備え、複数のノード10、・・・は、外形が菱形立方八面体に形成されており、立方体に由来する6つの接合面であるF面10fと、菱形十二面体に由来する12の接合面であるE面10eと、正八面体に由来する8つの接合面であるV面10vと、から構成され、複数のビーム20、・・・は、F面10f、10f間を連結するFビーム20fと、E面10e、10e間を連結するEビーム20eと、V面10v、10v間を連結するVビーム20vと、から構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードと、
複数の前記ノード間を連結する複数のビームと、を備え、
複数の前記ノードは、外形が菱形立方八面体に形成されており、立方体に由来する6つの接合面であるF面と、菱形十二面体に由来する12の接合面であるE面と、正八面体に由来する8つの接合面であるV面と、から構成され、
複数の前記ビームは、前記F面間を連結するFビームと、前記E面間を連結するEビームと、前記V面間を連結するVビームと、から構成される、多重立体トラスシステム。
【請求項2】
複数の前記ビームの長さは、
前記Fビーム:前記Eビーム:前記Vビーム=1:√2:√3
となるように規制される、請求項1に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項3】
前記F面を接地させ、かつ、前記Fビームを垂直軸とさせる、Fモードとして構築される、請求項2に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項4】
前記E面を接地させ、かつ、前記Eビームを垂直軸とさせる、Eモードとして構築される、請求項2に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項5】
前記V面を接地させ、かつ、前記Vビームを垂直軸とさせる、Vモードとして構築される、請求項2に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項6】
前記ビームは、棒状に形成されるビーム本体部と、前記ビーム本体部の両端に設置される一対のインターフェースと、から構成される、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項7】
前記ビーム本体部の両端には、前記インターフェースに対して前記ビーム本体部の軸線に直交する向きから嵌め込み可能な嵌込仕口が形成されている、請求項6に記載された、多重立体トラスシステム。
【請求項8】
前記インターフェースは、前記E接合面及び前記F接合面に共通して取付可能なEFインターフェースと、前記V接合面に取付可能なVインターフェースと、から構成される、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載された、多重立体トラスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型架梁などに使用される多重立体トラスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体トラスは接合部のノード(結び目)と弦材(ビーム)とから構成されており、主として大型架梁に活用されている。具体的に言うと、水平弦材と斜弦材が12方向の接合面を持つノードに連結されて、全体として立体構造を呈するようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドーム状トラス骨組屋根体20の最下段に位置する節点部材51を、筒状壁体10のコンクリート躯体部11に接合した単層ラチスドーム構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来型の立体トラスは、部材構成こそは立体的であるものの、その役割は屋根・天井という面的部分を担うに留まっている。そこで、本発明は、より多くの接合面を有する多重立体トラスシステムを提供することを目的としている。
【0006】
すなわち、本システムにおいても、部材構成は主にノードとビームによって成り立つが、決定的に異なるポイントが、ノードにおける新たな相を接合面として持つことであり、これが本システムの多重たる所以ともなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の多重立体トラスシステムは、複数のノードと、複数の前記ノード間を連結する複数のビームと、を備え、複数の前記ノードは、外形が菱形立方八面体に形成されており、立方体に由来する6つの接合面であるF面と、菱形十二面体に由来する12の接合面であるE面と、正八面体に由来する8つの接合面であるV面と、から構成され、複数の前記ビームは、前記F面間を連結するFビームと、前記E面間を連結するEビームと、前記V面間を連結するVビームと、から構成される。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の多重立体トラスシステムは、複数のノードと、複数のノード間を連結する複数のビームと、を備え、複数のノードは、外形が菱形立方八面体に形成されており、立方体に由来する6つの接合面であるF面と、菱形十二面体に由来する12の接合面であるE面と、正八面体に由来する8つの接合面であるV面と、から構成され、複数のビームは、F面間を連結するFビームと、E面間を連結するEビームと、V面間を連結するVビームと、から構成される。このような構成であれば、6個のF面、12個のE面、及び、8個のV面、の合計26面となり、より多くの接合面を有する多重立体トラスシステムとなる。
【0009】
さらに、このような構成を有する本システムを活用すれば、既存立体トラスの面的な展開から自立する真の立体造形へと昇華し、システム内で空間構成を完結することが可能となる。つまり、本システムに期待される役割とは単に構造のみならず、空間意匠への大いなる貢献を果たすことである。さらに、建築空間にとどまらず、家具・照明器具・遊具など単体の構成も可能であり原理応用の可能性は広がる。ここでの目的は、具体的な製品開発を示すものではなく、あくまでも造形理論の展開であり多分野での応用の一助となるところにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】多重立体トラスシステムの全体構成を説明する斜視図である。
【
図2】菱形立方八面体の概念について説明する説明図である。
【
図3】菱形立方八面体のノードに外接する仮想立方体の斜視図である。
【
図4】ビームの長さについて説明する説明図である。
【
図5】Fモードで構築された多重立体トラスシステムの斜視図である。
【
図6】Fモードで構築された多重立体トラスシステムの説明図である。(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【
図7】Eモードで構築された多重立体トラスシステムの斜視図である。
【
図8】Eモードで構築された多重立体トラスシステムの説明図である。(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【
図9】Vモードで構築された多重立体トラスシステムの斜視図である。
【
図10】Vモードで構築された多重立体トラスシステムの説明図である。(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【
図12】設計手法の説明図である。(a)はノードの階層の説明図であり、(b)はノードの空間配置の説明図であり、(c)はビームの架橋の説明図である。
【
図13】ビームの構成について説明する斜視図である。
【
図14】ノードとビームの接合(連結)の手順の説明図である。(a)はノードにインターフェースを連結した状態であり、(b)はインターフェースに側方からビーム本体部を挿し込む状態であり、(c)は接合(連結)が完了した状態である。
【
図15】E面(F面)とEビーム(Fビーム)の接合について説明する斜視図である。
【
図16】EF係合部とEFインターフェースの構成の説明図である。(a)はEF係合部であり、(b)はEFインターフェースである。
【
図17】V面とVビームの接合について説明する斜視図である。
【
図18】V係合部とVインターフェースの構成の説明図である。(a)はV係合部であり、(b)はVインターフェースである。
【
図19】多重立体トラスシステムの具体例である。(a)はFモードであり、(b)はEモード(その1)であり、(c)はEモード(その2)であり、(d)はVモード(その1)であり、(e)はVモード(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の実施の形態において、まず実施例1で多重立体トラスシステムの基本概念について説明し、次に実施例2で多重立体トラスシステムの具体化における工夫点について説明する。
【実施例0012】
(基本的な原理)
本実施例の多重立体トラスシステムSは、
図1に示すように、菱形立方八面体(又は「斜方立方八面体」)を原型とする複数のノード10、・・・と、複数のノード10、・・・の間を接続(連結)する複数のビーム20、・・・と、から構成されている。すなわち、この多重立体トラスシステムSは、既存の立体トラス(菱形十二面体の接合面を有している)の12方向に加えて、8方向+6方向の接合面を備えた菱形立方八面体をノード10の原型としている。
【0013】
つまり、ノード10は、
図2に示すように、菱形十二面体の12面と、正八面体の8面と、立方体の6面と、を組み合わせた形状となっている。すなわち、各面は前述した立体の合計26面の向きに方向付けられている。
【0014】
ここで、
図3を用いて、菱形立方八面体のノード10に外接する仮想立方体を考える。菱形立方八面体を構成する立方体の面は仮想立方体の面F(Face)と同じ相を成し、菱形立方八面体を構成する菱形十二面体の面は仮想立方体の辺E(Edge)と同じ相を成し、菱形立方八面体を構成する正八面体の面は仮想立方体の頂点V(Vertex)と同じ相を成す。さらに、角度(向き)や位置もそれぞれ対応している。
【0015】
そして、以下では、立方体に由来する6面をF面(10f)と呼び、菱形十二面体に由来する12面をE面(10e)と呼び、正八面体に由来する8面をV面(10v)と呼ぶこととする。
【0016】
次に、
図4を用いて、接合面の種類に対応するビーム20の長さについて説明する。以下では、F面10fに繋がるビーム20をFビーム20fと呼び、E面10eに繋がるビーム20をEビーム20eと呼び、V面10vに繋がるビーム20をVビーム20vと呼ぶこととする。また、Fビーム20fが構成する角度・方向をF相と呼び、Eビーム20eが構成する角度・方向をE相と呼び、Vビーム20vが構成する角度・方向をV相と呼ぶこととする。
【0017】
そして、ノード連結時の各相のノード芯々距離の比率に規制を設けることで、3相のビームは必ずノード10で出会うことになる。すなわち、
図4に示すように、
20f:20e:20v=1:√2:√3
の比率でビーム20の長さを決めることによって、3相のビーム20f、20e、20vは、必ず立方体の頂点に配置されたノード10の対応面(F面、E面、V面)に接合されるように規制することができる。このときの距離を、それぞれF長、E長、V長と呼ぶことにする。
【0018】
(システムのモード)
本実施例では、多重立体トラスシステムSが備える3種類の多面体の性格に基づいて、3種類のモードを選択することができる。
【0019】
まず、
図5、
図6(a)~(c)を用いて、「Fモード」について説明する。このFモードは、
図5に示すように、多重立体トラスシステムSの立方体的な性質を用いた使用法であり、必ずF面10fが接地し、Fビーム20fが垂直軸となる。
【0020】
そして、
図6(a)に示す平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は1X1のグリッド交点上に分布する。
図6(b)、(c)に示す立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは1の整数倍のグリッド交点上に位置する。
【0021】
次に、
図7、
図8(a)~(c)を用いて、「Eモード」について説明する。このEモードは、多重立体トラスシステムSの菱形十二面体的な性質を用いた使用法であり、
図7(a)に示すように、必ずE面10eが接地し、Eビーム20eが垂直軸となる。さらに、
図7(b)に示すように、ノードの方位(向き)は必ず一定になる。
【0022】
そして、
図8(a)に示す平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は√2/2X1のグリッド交点上に分布する。
図8(b)、(c)に示す立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは√2/2の整数倍のグリッド交点上に位置する。
【0023】
次に、
図9、
図10(a)~(c)を用いて、「Vモード」について説明する。このVモードは、多重立体トラスシステムSの正八面体的な性質を用いた使用法であり、
図9(a)に示すように、必ずV面10vが接地し、Vビーム20vが垂直軸となる。さらに、
図9(b)に示すように、ノードの方位(向き)は必ず一定になる。
【0024】
そして、
図10(a)に示す平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は1辺が√2/√3の正三角形グリッド交点上に分布する。
図10(b)、(c)に示す立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは√3/3の整数倍のグリッド交点上に位置する。
【0025】
(作用・効果)
次に、本実施例で説明した多重立体トラスシステムSの基本的な原理が奏する作用・効果を列挙して説明する。
【0026】
(1)上述してきたように、多重立体トラスシステムSは、複数のノード10、・・・と、複数のノード10、10間を連結する複数のビーム20、・・・と、を備え、複数のノード10、・・・は、外形が菱形立方八面体に形成されており、立方体に由来する6つの接合面であるF面10fと、菱形十二面体に由来する12の接合面であるE面10eと、正八面体に由来する8つの接合面であるV面10vと、から構成され、複数のビーム20、・・・は、F面10f、10f間を連結するFビーム20fと、E面10e、10e間を連結するEビーム20eと、V面10v、10v間を連結するVビーム20vと、から構成されている。このような構成であれば、6個のF面10f、・・・、12個のE面10e、・・・、及び、8個のV面10v、・・・、の合計26面となり、より多くの接合面を有する多重立体トラスシステムSとなる。
【0027】
(2)そして、複数のビーム20、・・・の長さは、
Fビーム20f:Eビーム20e:Vビーム20v=1:√2:√3
となるように規制されることが好ましい。このように構成すれば、3種類のビーム20f、20e、20vは必ずノード10の対応面に接合(連結)され、互いに他のブレースとして機能し、強固な構造として成立する。
【0028】
(3)さらに、F面10fを接地させ、かつ、Fビーム20fを垂直軸とさせる、Fモードとして構築されることが可能である。Fモードとして構築すれば、平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は1X1のグリッド交点上に分布し、立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは1の整数倍のグリッド交点上に位置する。
【0029】
(4)さらに、E面10eを接地させ、かつ、Eビーム20eを垂直軸とさせる、Eモードとして構築されることが可能である。Eモードとして構築すれば、平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は√2/2X1のグリッド交点上に分布し、立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは√2/2の整数倍のグリッド交点上に位置する。
【0030】
(5)さらに、V面10vを接地させ、かつ、Vビーム20vを垂直軸とさせる、Vモードとして構築されることが可能である。Vモードとして構築すれば、平面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯は1辺が√2/√3の正三角形グリッド交点上に分布し、立面グリッド上では、F長を1としたときには、全てのノード芯高さは√3/3の整数倍のグリッド交点上に位置する。
すなわち、本実施例の多重立体トラスシステムSのビーム20は、別体として独立したノード接合用パーツであるインターフェース21と、荷重の伝達を担う所定の長さの棒状のビーム本体部22と、を備える。このうち、ビーム本体部22は、インターフェース21との接合仕口23を有している。
接合仕口23は、インターフェース21に対してビーム本体部22の軸線に直交する向きから嵌め込み可能な形状になっている。例えば、インターフェース21は直方体形状(雄形)に形成され、接合仕口23は直方体形状のインターフェース21に嵌合する箱形状(雌形)に形成される。
実際の設計・施工の流れでは、CAD上で、全ノードを接触しているインターフェース21を含む形で抽出して、それぞれグループ化する。これを前項で割り振られたノードの住所ごとに行う。
具現化に際して、多重立体トラスシステムSのインターフェース21は、ビーム20を誤って取り付けないように、E接合面10e及びF接合面10fに共通して取付可能なEFインターフェース21efと、V接合面10vに取付可能なVインターフェース21vと、に種類を分けられている。
(1)上述してきたように、具体化された多重立体トラスシステムSにおいて、ビーム20は、棒状に形成されるビーム本体部22と、ビーム本体部22の両端に設置される一対のインターフェース21、21と、から構成されることが好ましい。このように構成すれば、ノード10に先行してインターフェース21を取り付けることができ、後の工程でのビーム20の取り違えを防止しやすい。
(2)また、ビーム本体部22の両端には、インターフェース21、21に対してビーム本体部22の軸線に直交する向きから嵌め込み可能な嵌込仕口23、23が形成されていることが好ましい。このように構成すれば、ノード10、10間の限られた距離(スペース)において、インターフェース21、21を先行して設置して、後からビーム20を取り付けることができる。
(3)さらに、インターフェース21は、E接合面10e及びF接合面10fに共通して取付可能なEFインターフェース21efと、V接合面10vに取付可能なVインターフェース21vと、から構成されることが好ましい。このように構成すれば、ビーム20をノード10のどの接合面(10e、10f、10v)に接合すべきかを間違えることなく、正確に取り付けることができる。