(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121242
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】回収ボイラー
(51)【国際特許分類】
D21C 11/12 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
D21C11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024473
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎実
(72)【発明者】
【氏名】都築 晃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千秋
(72)【発明者】
【氏名】上月 崇功
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055BC01
4L055CC05
4L055CC06
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】安定した形状のチャーベットを形成することにより、黒液を安定して燃焼させることが可能な回収ボイラーを提供する。
【解決手段】この回収ボイラー100は、ボイラー本体10と、ボイラー本体10内に黒液を噴霧する黒液投入部30と、黒液投入部30を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するロボット本体20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラー本体と、
前記ボイラー本体内に黒液を投入する黒液投入部と、
前記黒液投入部を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するロボット本体と、を備える、回収ボイラー。
【請求項2】
前記ボイラー本体の外壁部には、前記黒液投入部が挿入される開口部が設けられ、
前記ロボット本体は、前記黒液投入部を前記開口部を介して前記ボイラー本体内に挿入した状態で、前記黒液投入部を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている、請求項1に記載の回収ボイラー。
【請求項3】
前記ロボット本体は、前記黒液投入部の先端部を前記開口部内またはボイラー本体内に位置させた状態で、前記黒液投入部の先端部の位置または開口部近傍の位置を制御点として、前記黒液投入部を移動させるように構成されている、請求項2に記載の回収ボイラー。
【請求項4】
前記ロボット本体は、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットを含む、請求項3に記載の回収ボイラー。
【請求項5】
前記ボイラー本体の外壁部には、前記開口部を有する挿入部が設けられており、
前記黒液投入部は、前記挿入部内に配置され、
前記ロボット本体は、前記挿入部の外側に配置されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の回収ボイラー。
【請求項6】
前記ロボット本体は、前記ボイラー本体内の底面に形成されるチャーベットが所望の形状となるように、前記黒液投入部による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の回収ボイラー。
【請求項7】
前記ボイラー本体内を撮像する撮像部をさらに備え、
前記ロボット本体は、前記撮像部による前記ボイラー本体内の撮像結果に基づいて、前記黒液投入部による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の回収ボイラー。
【請求項8】
前記黒液投入部および前記黒液投入部を移動させる前記ロボット本体は、複数設けられており、
複数の前記黒液投入部および複数の前記ロボット本体は、所定の間隔を隔てて、前記ボイラー本体の側面部に設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の回収ボイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回収ボイラーに関し、特に、黒液を投入する黒液投入部を備える回収ボイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、黒液を投入する黒液投入部を備える回収ボイラーが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ボイラー本体と、ボイラー本体内に黒液を噴射(投入)する黒液噴射ノズル(黒液投入部)とを備える回収ボイラーが開示されている。この特許文献1の回収ボイラーは、黒液噴射ノズルを回動軸周りに一定の周期で回動させて、黒液の噴射方向を変化させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の回収ボイラーは、黒液噴射ノズルを回動軸周りに一定の周期で回動させて、黒液の噴射方向を変化させるように構成されている。このため、周期的に黒液の噴射方向を変化させることができるものの、所望の位置を狙って黒液を噴射させることが困難であるという不都合がある。その結果、ボイラー内に安定した形状のチャーベットを形成することが困難であるため、黒液を安定して燃焼させることが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、安定した形状のチャーベットを形成することにより、黒液を安定して燃焼させることが可能な回収ボイラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による回収ボイラーは、ボイラー本体と、ボイラー本体内に黒液を投入する黒液投入部と、黒液投入部を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するロボット本体と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による回収ボイラーでは、上記のように、黒液投入部を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するロボット本体を設ける。これにより、ロボット本体により、黒液投入部の黒液の投入位置を所望の位置にすることができ、投入角度を所望の角度にすることができ、投入方向を所望の方向にすることができるので、所望の位置を狙って黒液を投入することができる。これにより、ボイラー本体内に安定した形状のチャーベットを形成することができるので、黒液を安定して燃焼させることができる。
【0009】
上記一の局面による回収ボイラーにおいて、好ましくは、ボイラー本体の外壁部には、黒液投入部が挿入される開口部が設けられ、ロボット本体は、黒液投入部を開口部を介してボイラー本体内に挿入した状態で、黒液投入部を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。このように構成すれば、ボイラー本体の外壁部に設けられた開口部を介して挿入された黒液投入部をロボット本体により移動させることにより、ボイラー本体内の所望の位置に容易に黒液を投入することができる。その結果、より安定した形状のチャーベットを形成することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、ロボット本体は、黒液投入部の先端部を開口部内またはボイラー本体内に位置させた状態で、黒液投入部の先端部の位置または開口部近傍の位置を制御点として、黒液投入部を移動させるように構成されている。このように構成すれば、黒液投入部から黒液が投入される先端部の位置または開口部近傍の黒液投入部の位置を制御点として黒液投入部の姿勢および位置を変更させることができるので、黒液を所望の位置に精度よく投入することができる。また、黒液投入部の先端部の位置または開口部近傍の位置を制御点とするので、ボイラー本体の外壁部に設けられた開口部を大きくしなくても、黒液投入部がボイラー本体の壁面に干渉することがない。これにより、開口部の開口長さが大きくなるのを抑制することができるので、黒液投入部から投入した黒液や燃焼による熱が開口部から流出するのを抑制することができる。
【0011】
上記黒液投入部の先端部の位置または開口部近傍の位置を制御点として、黒液投入部を移動させる構成において、好ましくは、ロボット本体は、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットを含む。このように構成すれば、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットにより、黒液投入部の先端部の位置または開口部近傍の位置を制御点として、黒液投入部の姿勢および位置を広範囲の自由度で変更させることができる。
【0012】
上記黒液投入部を開口部を介してボイラー本体内に挿入した状態で黒液投入部を移動させる構成において、好ましくは、ボイラー本体の外壁部には、開口部を有する挿入部が設けられており、黒液投入部は、挿入部内に配置され、ロボット本体は、挿入部の外側に配置されている。このように構成すれば、挿入部内に配置された黒液投入部の姿勢および位置を挿入部の外側に配置されたロボット本体により容易に変更することができる。
【0013】
上記一の局面による回収ボイラーにおいて、好ましくは、ロボット本体は、ボイラー本体内の底面に形成されるチャーベットが所望の形状となるように、黒液投入部による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。このように構成すれば、所望の位置に黒液を投入して、チャーベットの形状を、上面が平坦状、台形、山形、または、二つの山形などの所望の形状にすることができるので、黒液を効果的に安定して燃焼させることができる。
【0014】
上記一の局面による回収ボイラーにおいて、好ましくは、ボイラー本体内を撮像する撮像部をさらに備え、ロボット本体は、撮像部によるボイラー本体内の撮像結果に基づいて、黒液投入部による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。このように構成すれば、ボイラー本体内のチャーベットの状態を判断して、必要な位置に黒液を投入することができるので、ボイラー本体内により安定した形状のチャーベットを形成することができる。
【0015】
上記一の局面による回収ボイラーにおいて、好ましくは、黒液投入部および黒液投入部を移動させるロボット本体は、複数設けられており、複数の黒液投入部および複数のロボット本体は、所定の間隔を隔てて、ボイラー本体の側面部に設けられている。このように構成すれば、複数の黒液投入部の各々による黒液の投入位置、投入角度および投入方向をロボット本体により自由に設定して、複数の黒液投入部から黒液を投入することができるので、ボイラー本体内により安定した形状のチャーベットを形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、安定した形状のチャーベットを形成することにより、黒液を安定して燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による回収ボイラーの構成を示した側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による回収ボイラーの構成を示した平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による回収ボイラーの制御的な構成を示したブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による回収ボイラーのロボット本体を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による回収ボイラーの開口部を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による回収ボイラーの黒液投入部の回動を説明するための第1の平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による回収ボイラーの黒液投入部の回動を説明するための側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による回収ボイラーの黒液投入部の回動を説明するための第2の平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による回収ボイラーのチャーベットの形状の例を示した第1の側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による回収ボイラーのチャーベットの形状の例を示した第2の側面図である。
【
図11】比較例による黒液投入部の回動を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態による回収ボイラー100の構成について説明する。
【0020】
(回収ボイラーの構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態による回収ボイラー100は、パルプの製造において発生する黒液を燃焼させるように構成されている。また、回収ボイラー100は、黒液に含まれるソーダ(ナトリウム)などの薬品が下部から回収されるように構成されている。また、回収ボイラー100において黒液を燃焼させて得られるエネルギーは、発電に利用される。また、回収ボイラー100において黒液を燃焼させて得られる熱は、パルプの製造において利用される。
【0021】
回収ボイラー100は、ボイラー本体10と、ロボット本体20と、黒液投入部30とを備えている。また、回収ボイラー100により発生するエネルギーを電力に変換するための発電部40が設けられている。また、回収ボイラー100には、空気供給部50が設けられている。また、回収ボイラー100には、撮像部60が設けられている。また、
図3に示すように、回収ボイラー100は、制御部70を備えている。
【0022】
ボイラー本体10は、内部に黒液が投入(噴射)され、黒液を燃焼させるように構成されている。また、ボイラー本体10は、
図1に示すように、側面を覆う外壁部11と、底面12と、回収口13とを含んでいる。
【0023】
外壁部11は、
図2に示すように、平面視において、矩形状に形成されている。また、外壁部11は、耐熱性を有する材料により形成されている。また、外壁部11には、開口部11a(
図4参照)を有する挿入部111が設けられている。開口部11aは、黒液投入部30が挿入されるように構成されている。また、開口部11aは、
図5に示すように、矩形形状を有している。なお、
図5は、X1方向側の外壁部11に設けられた開口部11aを外側から見た図である。
【0024】
図1および
図2に示すように、ボイラー本体10の底面12には、黒液が噴射されてチャーベットCが形成される。
【0025】
回収口13は、外壁部11の下方(底面12の近傍)に設けられている。回収口13からは、黒液が燃焼されたスメルトが排出される。
【0026】
ロボット本体20は、
図2および
図3に示すように、複数(4つ)設けられている。具体的には、黒液投入部30および黒液投入部30を移動させるロボット本体20は、複数(4つ)設けられている。また、複数の黒液投入部30および複数のロボット本体20は、所定の間隔を隔てて、ボイラー本体10の側面部に設けられている。ロボット本体20は、外壁部11の4つの辺(X1側の辺、X2側の辺、Y1側の辺およびY2側の辺)の各々に設けられている。ロボット本体20は、黒液投入部30を保持している。また、ロボット本体20は、黒液投入部30を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。
【0027】
ロボット本体20は、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットを含んでいる。具体的には、ロボット本体20は、
図4に示すように、6つの関節を有している。ロボット本体20は、6つの回転軸線A1、A2、A3、A4、A5およびA6周りに各々の関節を回転可能に構成されている。ロボット本体20は、ベース21と、各関節を接続するリンク22、23、24、25および26と、リンク26に接続された取付部27とを含んでいる。また、6つの関節の各々には、サーボモータとエンコーダとが設けられている。6つの関節は、サーボモータの駆動により回転するように構成されている。
【0028】
リンク22は、ベース21に対して、回転軸線A1周りに回転されるように構成されている。回転軸線A1は、上下方向(Z方向)に沿って延びるように配置されている。リンク23は、リンク22に対して、回転軸線A2周りに回転されるように構成されている。回転軸線A2は、水平方向に沿って延びるように配置されている。
【0029】
リンク24は、リンク23に対して、回転軸線A3周りに回転されるように構成されている。回転軸線A3は、回転軸線A2と平行な水平方向に沿って延びるように配置されている。リンク25は、リンク24に対して、回転軸線A4周りに回転されるように構成されている。回転軸線A4は、回転軸線A3に対して直交する方向に沿って延びるように配置されている。
【0030】
リンク26は、リンク25に対して、回転軸線A5周りに回転されるように構成されている。回転軸線A5は、回転軸線A4に対して直交する方向に沿って延びるように配置されている。また、取付部27は、リンク26に対して、回転軸線A6周りに回転されるように構成されている。回転軸線A6は、回転軸線A5に対して直交する方向に沿って延びるように配置されている。
【0031】
取付部27は、リンク26と黒液投入部30とを接続するように構成されている。つまり、取付部27は、リンク26の先端に接続されているとともに、黒液投入部30を保持している。これにより、黒液投入部30は、ロボット本体20により位置および姿勢が変更される。
【0032】
また、ロボット本体20には、耐熱カバー(図示せず)が被せられている。
【0033】
黒液投入部30は、
図1および
図2に示すように、ボイラー本体10内に黒液を投入するように構成されている。黒液投入部30は、たとえば、黒液を噴射するノズルを含んでいる。黒液投入部30は、管31が接続されており、管31から黒液が供給される。また、黒液投入部30は、管31から供給された黒液を、管31が接続されている側とは反対側の先端から噴射する。
【0034】
黒液投入部30は、ロボット本体20により、上下方向および左右方向に向きが変更されて、黒液の噴射方向が変更される。また、黒液投入部30は、ロボット本体20により、ノズルの軸線回りに回動されて、黒液の噴射方向が変更される。
【0035】
発電部40は、ボイラー本体10において黒液が燃焼された熱を利用して発電するように構成されている。具体的には、ボイラー本体10から発生する熱により水を高温高圧の蒸気にする。そして、発電部40は、高温高圧の蒸気によりタービンが回転されることにより、発電するように構成されている。発電部40により発電された電気は、パルプの生成のために利用されたり、外部に売電されたりする。つまり、ボイラー本体10内の黒液の燃焼状態を安定させることにより、発電部40による発電を安定して行うことができるため、発電した電気を安定して利用することが可能である。
【0036】
空気供給部50は、ボイラー本体10内に燃焼のための空気を供給するように構成されている。空気供給部50は、上下方向(Z方向)に沿って複数設けられている。また、空気供給部50は、外壁部11の4つの辺(X1側の辺、X2側の辺、Y1側の辺およびY2側の辺)の各々に設けられている。
【0037】
撮像部60は、ボイラー本体10内を撮像するように構成されている。具体的には、撮像部60 は、ボイラー本体10の外壁部11の内側に設けられている。撮像部60は、ボイラー本体10内のチャーベットCを撮像するように構成されている。撮像部60に撮像された画像は制御部70に送信される。
【0038】
制御部70は、
図3に示すように、ロボット本体20の動作を制御するように構成されている。具体的には、制御部70は、複数のロボット本体20の各々に対して、動作指令を送信するように構成されている。動作指令を受信したロボット本体20は、動作指令に基づいて、各関節を駆動させて動作するように構成されている。複数のロボット本体20の各々は、制御部70の動作指令に基づいて、ロボット本体20の動作を制御するロボット制御部を含んでいる。
【0039】
制御部70は、撮像部60により撮像された画像に基づいて、チャーベットCの状態を取得し、取得したチャーベットCの状態に基づいて、黒液を投入(噴射)する方向を制御するように構成されている。
【0040】
ここで、本実施形態では、ロボット本体20は、黒液投入部30を開口部11aを介してボイラー本体10内に挿入した状態で、黒液投入部30を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。具体的には、
図4に示すように、ロボット本体20は、黒液投入部30の先端部をボイラー本体10内に位置させた状態で、黒液投入部30の先端部を制御点Pとして、黒液投入部30を移動させるように構成されている。
【0041】
具体的には、
図4に示すように、ロボット本体20は、黒液投入部30の先端部の位置に設定された制御点Pを中心に、上下方向(垂直方向)に黒液投入部30を回動させる。また、
図6に示すように、ロボット本体20は、黒液投入部30の先端部の位置に設定された制御点Pを中心に、左右方向(水平方向)に黒液投入部30を回動させる。なお、
図6は、X1方向側の外壁部11に設けられた開口部11aを上側から見た図である。
【0042】
また、
図7に示すように、ロボット本体20は、開口部11a近傍の黒液投入部30の位置に設定された制御点Pを中心に、上下方向(垂直方向)に黒液投入部30を回動させてもよい。また、
図8に示すように、ロボット本体20は、開口部11a近傍の黒液投入部30の位置に設定された制御点Pを中心に、左右方向(水平方向)に黒液投入部30を回動させてもよい。
【0043】
また、ロボット本体20は、黒液投入部30の先端部の位置または開口部11a近傍の位置に設定された制御点Pを中心に、ノズルの軸線方向周りに黒液投入部30を回動させる。
【0044】
図4に示すように、黒液投入部30を移動させる際のロボット本体20の制御点P(黒液投入部30の回動中心)を、ボイラー本体10内とすることにより、開口部11aの長さL1を小さくすることができる。一方、
図11に示す比較例のように、ロボットを用いずに回動機構80により、黒液投入部30を回動させる場合、黒液投入部の回動中心Paがボイラー本体の外に位置するので、開口部11bの長さL3を大きくする必要がある。つまり、同じ回動角度の場合、L1はL3よりも小さくすることが可能である。また、
図7に示すように、黒液投入部30を移動させる際のロボット本体20の制御点P(黒液投入部30の回動中心)を、開口部11a近傍にすることにより、開口部11aの長さL2をより小さくすることが可能である。
【0045】
また、
図4に示すように、黒液投入部30は、挿入部111内に配置され、ロボット本体20は、挿入部111の外側に配置されている。つまり、ロボット本体20は、ボイラー本体10内に入ることがない。
【0046】
ロボット本体20は、ボイラー本体10内の底面12に形成されるチャーベットCを所望の形状となるように、黒液投入部30による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。具体的には、ロボット本体20は、チャーベットの形状を、上面が平坦状(
図1参照)、台形(
図1参照)、山形(
図9参照)、または、複数(たとえば、2つ)の山形(
図10参照)などの所望の形状となるように、黒液投入部30を移動させる。また、ロボット本体20は、撮像部60によるボイラー本体10内の撮像結果に基づいて、黒液投入部30による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。つまり、ロボット本体20は、チャーベットCの他の部分に比べて凹んでいる部分に向けて黒液を投入(噴射)するように、黒液投入部30を移動させる。また、複数のロボット本体20は、連携して、黒液を噴射する方向を変更させるようにしてもよい。
【0047】
たとえば、制御部70は、撮像部60によるボイラー本体10内の撮像結果に基づいて、複数のロボット本体20により、チャーベットCの形状を所望の形状になるように(黒液が不足している個所を重点的に補正するように)1つ以上の黒液投入部30の噴射方向を調整する。
【0048】
また、制御部70は、撮像部60によるボイラー本体10内の撮像結果に基づいて、複数のロボット本体20により、他の場所に比べて凹んでいる部分に向けて他所に比べて長時間黒液を噴射するように黒液投入部30の移動を制御して、チャーベットCの形状が所望の形状となるようにしてもよい。
【0049】
また、制御部70は、撮像部60によるボイラー本体10内の撮像結果に基づいて、複数のロボット本体20により、チャーベットCの形状が他の場所に比べて凸となっている部分を避けるように1つ以上の黒液投入部30の噴射方向を調整する。
【0050】
また、制御部70は、複数のロボット本体20により、チャーベットCへの黒液の到達時間を調整するために、黒液の滞留時間を変化させるために、黒液投入部30の噴射角度を変更させるようにしてもよい。
【0051】
また、制御部70は、複数のロボット本体20により、1つ以上の黒液投入部30が停止した際には、連携して、チャーベットCの形状を保つように黒液を噴射する方向を変更させるようにしてもよい。
【0052】
また、単一の制御部70により集中制御を行い、複数のロボット本体20により、連動して、撮影映像に基づかずに一定の動作を繰り返してもよい。
【0053】
また、制御部70は、撮像部60によるチャーベットの温度分布結果に基づいて、複数のロボット本体20により、チャーベットの温度分布を均一にするように黒液の噴射方向を調整してもよい。
【0054】
また、複数のロボット本体20は噴霧圧力または黒液噴霧温度から噴霧する黒液が適切な粒径となる様にノズルを自動交換する。ノズルを交換する場合は1つのロボット本体20のみとし、その他のロボット本体20については連携してチャーベットの形状を保つように黒液噴射方向を調整する。
【0055】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、黒液投入部30を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するロボット本体20を設ける。これにより、ロボット本体20により、黒液投入部30の黒液の投入位置を所望の位置にすることができ、投入角度を所望の角度にすることができ、投入方向を所望の方向にすることができるので、所望の位置を狙って黒液を投入することができる。これにより、ボイラー本体10内に安定した形状のチャーベットCを形成することができるので、黒液を安定して燃焼させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、ボイラー本体10の外壁部11には、黒液投入部30が挿入される開口部11aが設けられている。また、ロボット本体20は、黒液投入部30を開口部11aを介してボイラー本体10内に挿入した状態で、黒液投入部30を移動させて、黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。これにより、ボイラー本体10の外壁部11に設けられた開口部11aを介して挿入された黒液投入部30をロボット本体20により移動させることにより、ボイラー本体10内の所望の位置に容易に黒液を投入することができる。その結果、より安定した形状のチャーベットCを形成することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット本体20は、黒液投入部30の先端部をボイラー本体10内に位置させた状態で、黒液投入部30の先端部の位置または開口部11a近傍の位置を制御点Pとして、黒液投入部30を移動させるように構成されている。これにより、黒液投入部30から黒液が投入される先端部の位置または開口部11a近傍の黒液投入部30の位置を制御点Pとして黒液投入部30の姿勢および位置を変更させることができるので、黒液を所望の位置に精度よく投入することができる。また、黒液投入部30の先端部の位置または開口部11aの位置を制御点Pとするので、ボイラー本体10の外壁部11に設けられた開口部11aを大きくしなくても、黒液投入部30がボイラー本体10の壁面に干渉することがない。これにより、開口部11aの開口長さが大きくなるのを抑制することができるので、黒液投入部30から投入した黒液や燃焼による熱が開口部11aから流出するのを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット本体20は、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットを含む。これにより、4つ以上の関節を有する垂直多関節ロボットにより、黒液投入部30の先端部の位置または開口部11a近傍の位置を制御点Pとして、黒液投入部30の姿勢および位置を広範囲の自由度で変更させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、ボイラー本体10の外壁部11には、開口部11aを有する挿入部111が設けられており、黒液投入部30は、挿入部111内に配置され、ロボット本体20は、挿入部111の外側に配置されている。これにより、挿入部111内に配置された黒液投入部30の姿勢および位置を挿入部111の外側に配置されたロボット本体20により容易に変更することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、ロボット本体20は、ボイラー本体10内の底面12に形成されるチャーベットCが所望の形状となるように、黒液投入部30による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。これにより、所望の位置に黒液を投入して、チャーベットCの形状を、上面が平坦状、台形、山形、または、二つの山形などの所望の形状にすることができるので、黒液を効果的に安定して燃焼させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、ボイラー本体10内を撮像する撮像部60を備える。ロボット本体20は、撮像部60によるボイラー本体10内の撮像結果に基づいて、黒液投入部30による黒液の投入位置、投入角度および投入方向を調整するように構成されている。これにより、ボイラー本体10内のチャーベットCの状態を判断して、必要な位置に黒液を投入することができるので、ボイラー本体10内により安定した形状のチャーベットCを形成することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、黒液投入部30および黒液投入部30を移動させるロボット本体20は、複数設けられており、複数の黒液投入部30および複数のロボット本体20は、所定の間隔を隔てて、ボイラー本体10の側面部に設けられている。これにより、複数の黒液投入部30の各々による黒液の投入位置、投入角度および投入方向をロボット本体20により自由に設定して、複数の黒液投入部30から黒液を投入することができるので、ボイラー本体10内により安定した形状のチャーベットCを形成することができる。
【0064】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0065】
たとえば、上記実施形態では、複数(4つ)の黒液投入部の各々をロボット本体により移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の黒液投入部のうち一部の黒液投入部をロボット本体により移動させてもよい。また、黒液投入部は、1、2、3または5以上設けられていてもよい。
【0066】
この場合、ロボット本体により移動させない黒液投入部は、一定の動作を行うか、または、固定されており、ロボット本体により移動させる一部の黒液投入部が噴射角度を自由に設定することで所望の形状のチャーベットを形成するようにしてもよい。
【0067】
また、この場合、ロボット本体により移動させない黒液投入部は、一定の動作を行うか、または、固定されており、1つ以上のロボット本体により、移動させない黒液投入部の噴射角度を調整してもよい。
【0068】
また、複数のロボット本体は、1つ以上の黒液投入部を、ボイラー本体から取外しまたは取付けを行ってもよい。
【0069】
また、複数のロボット本体は、黒液投入部を直接移動させてもよいし、黒液投入部と接続されたリンク機構を操作してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ロボット本体が6つの関節を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロボット本体が6つ以外の関節を有する構成でもよい。なお、ロボット本体が4つ以上の関節を有していることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、黒液投入部の先端部に設定された制御点をボイラー本体内に位置する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御点を開口部内に配置してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、1つの撮像部を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、撮像部を複数設けてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、黒液投入部から黒液を噴射する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、黒液投入部から黒液を噴射以外の方法により投入してもよい。たとえば、黒液投入部から黒液をストレート状に投入してもよいし、シャワーのように投入してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 ボイラー本体
11 外壁部
11a 開口部
12 底面
20 ロボット本体
30 黒液投入部
60 撮像部
C チャーベット
P 制御点
100 回収ボイラー