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特開2023-121247紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121247
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20230824BHJP
   H01J 61/16 20060101ALI20230824BHJP
   H01J 9/395 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01J65/00 B
H01J61/16 N
H01J9/395 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024480
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
(72)【発明者】
【氏名】久野 彰裕
【テーマコード(参考)】
5C015
【Fターム(参考)】
5C015PP04
5C015PP06
(57)【要約】
【課題】点灯時間の経過とともに照度が低下することを抑制できる紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線照射装置は、希ガスとハロゲンガスが封入された放電容器と、放電容器の延伸方向に離間して配置され、放電容器の外面に接触する第一電極および第二電極と、を備え、放電容器は、内部に、第一電極と対向する第一領域と、第二電極と対向する第二領域と、第一領域と第二領域の間の第三領域とからなる放電許容領域を有し、第一電極と第二電極の間に印加された電圧により形成された放電容器内の放電領域は、放電許容領域の延伸方向の両端よりも中央側に位置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希ガスとハロゲンガスが封入された放電容器と、
前記放電容器の延伸方向に離間して配置され、前記放電容器の外面に接触する第一電極および第二電極と、を備え、
前記放電容器は、内部に、前記第一電極と対向する第一領域と、前記第二電極と対向する第二領域と、前記第一領域と前記第二領域の間の第三領域とからなる放電許容領域を有し、
前記第一電極と前記第二電極の間に印加された電圧により形成された前記放電容器内の放電領域は、前記放電許容領域の前記延伸方向の両端よりも中央側に位置する、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記放電領域は、前記第一領域および前記第二領域の一部に重なるように形成されており、
前記放電領域の前記延伸方向の長さは、前記放電許容領域の前記延伸方向の長さの95%以下である、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記希ガスはクリプトンであり、前記ハロゲンガスは塩素である、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
希ガスとハロゲンガスが封入された放電容器と、前記放電容器の延伸方向に離間して配置され、前記放電容器の外面に接触する第一電極および第二電極と、を備える紫外線照射装置の製造方法であって、
前記放電容器は、内部に、前記第一電極と対向する第一領域と、前記第二電極と対向する第二領域と、前記第一領域と前記第二領域の間の第三領域とからなる放電許容領域を有しており、
前記第一電極と前記第二電極の間に印加された電圧により形成される前記放電容器内の放電領域が、前記放電許容領域の前記延伸方向の両端よりも中央側に位置するように、前記ハロゲンガスの封入圧を調整する、紫外線照射装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプをより小型化し、身近な場面で活用されることが望まれている。例えば、下記特許文献1には、発光ガスとして希ガスとハロゲンガスが封入されたエキシマランプを備え、当該エキシマランプの長手方向に離間して配置され、エキシマランプの外面に接触する一対の電極を設けることで、エキシマランプを点灯させる小型化に適した紫外線照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エキシマランプは、点灯時間が長くなるにつれて、照度が低下していくことが知られている。照度低下の原因は様々であるが、例えば、発光ガス成分が消費されることで放電が困難になる場合、エキシマランプの放電容器に紫外線歪が蓄積される場合、放電容器にガス成分が付着することで紫外線透過率を低下させる場合等が考えられる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、点灯時間の経過とともに照度が低下することを抑制できる紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紫外線照射装置は、希ガスとハロゲンガスが封入された放電容器と、
前記放電容器の延伸方向に離間して配置され、前記放電容器の外面に接触する第一電極および第二電極と、を備え、
前記放電容器は、内部に、前記第一電極と対向する第一領域と、前記第二電極と対向する第二領域と、前記第一領域と前記第二領域の間の第三領域とからなる放電許容領域を有し、
前記第一電極と前記第二電極の間に印加された電圧により形成された前記放電容器内の放電領域は、前記放電許容領域の前記延伸方向の両端よりも中央側に位置する物である。
【0007】
この構成による紫外線照射装置において、放電領域の延伸方向の長さは、放電許容領域の延伸方向の長さよりも短いが、点灯時間が長くなるにつれてハロゲンガスが消費されていき、同じ点灯条件下であっても放電領域の延伸方向の長さは徐々に長くなる。放電領域の延伸方向の長さが長くなるほど、高い照度が得られやすくなるため、点灯時間の経過とともに照度が低下することを抑制できる。
【0008】
本発明に係る紫外線照射装置において、前記放電領域は、前記第一領域および前記第二領域の一部に重なるように形成されており、
前記放電領域の前記延伸方向の長さは、前記放電許容領域の前記延伸方向の長さの95%以下である、という構成でもよい。
【0009】
この構成によれば、放電領域の延伸方向の長さが放電許容領域の延伸方向の長さの5%以上伸びて、点灯時間の経過につれて約5%以上照度を上げることができるため、経時的な照度低下を効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明に係る紫外線照射装置において、前記希ガスはクリプトンであり、前記ハロゲンガスは塩素である、という構成でもよい。
【0011】
放電容器にクリプトン及び塩素の混合ガスである放電用ガスが封入されている場合、放電容器から出射される紫外線の主たる発光波長は222nm近傍である。これらの波長帯の紫外線は、高い殺菌性能が示されるため、特に殺菌用途に適した紫外線照射装置が実現される。
【0012】
本発明に係る紫外線照射装置の製造方法は、希ガスとハロゲンガスが封入された放電容器と、前記放電容器の延伸方向に離間して配置され、前記放電容器の外面に接触する第一電極および第二電極と、を備える紫外線照射装置の製造方法であって、
前記放電容器は、内部に、前記第一電極と対向する第一領域と、前記第二電極と対向する第二領域と、前記第一領域と前記第二領域の間の第三領域とからなる放電許容領域を有しており、
前記第一電極と前記第二電極の間に印加された電圧により形成される前記放電容器内の放電領域が、前記放電許容領域の前記延伸方向の両端よりも中央側に位置するように、前記ハロゲンガスの封入圧を調整するものである。
【0013】
この製造方法で製造された紫外線照射装置による作用効果は上記の通りであり、この紫外線照射装置は、点灯時間の経過とともに照度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の紫外線照射装置の一利用態様を模式的に示す図面である。
図2】紫外線照射装置の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図2から、ケーシングの本体部と蓋部とを分解して表示した斜視図である。
図4図3から複数のエキシマランプ及び電極を抽出して図示した模式的な斜視図である。
図5】エキシマランプと電極の位置関係を説明するための模式的な図面であり、エキシマランプを+Z方向に見たときの模式的な平面図である。
図6】放電状態にあるエキシマランプ及び電極の断面図である。
図7A】点灯初期の放電領域の様子を模式的に示した図である。
図7B】点灯中期の放電領域の様子を模式的に示した図である。
図7C】点灯後期の放電領域の様子を模式的に示した図である。
図8】エキシマランプの放電許容領域の強度比を示すグラフである。
図9】紫外線カメラによるエキシマランプの放電許容領域の撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る紫外線照射装置および紫外線照射装置の製造方法の各実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本発明に係る紫外線照射装置の一利用態様を模式的に示す図面である。図1では、紫外線照射装置1が筐体100に搭載されており、紫外線照射装置1の光取り出し面30から、照射対象領域40に対して紫外線L1が照射される様子が模式的に図示されている。
【0017】
図2は、紫外線照射装置1の外観の一例を模式的に示す斜視図である。図3は、図2から、紫外線照射装置1のケーシング2の本体部2aと蓋部2bとを分解した斜視図である。
【0018】
以下の各図では、紫外線L1の取り出し方向をX方向とし、X方向に直交する平面をYZ平面とした、X-Y-Z座標系を参照して説明される。より詳細には、図2以下の図面を参照して後述されるように、エキシマランプ10の延伸方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0019】
以下の説明では、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0020】
図2及び図3に示すように、紫外線照射装置1は、一方の面に光取り出し面30が形成されたケーシング2を備える。ケーシング2は、本体部2aと蓋部2bとを備え、本体部2a内には、複数のエキシマランプ10と電極21,22とが収容されている。本実施形態の例では、ケーシング2内に4本のエキシマランプ10が収容されている。なお、電極21,22は、エキシマランプ10への通電が可能な形態が採用でき、例えば、エキシマランプ10の放電容器11に接触するようブロック体、板状体、網状体等の形態を用いることができる。
【0021】
図4は、図3から複数のエキシマランプ10及び電極21,22を抽出して図示した斜視図である。また、図5は、エキシマランプ10と電極21,22の位置関係を模式的に示す断面図である。
【0022】
図4に示すように、本実施形態の紫外線照射装置1は、Z方向に離間して配置された4本のエキシマランプ10を備える。また、それぞれのエキシマランプ10の外表面の一部箇所に接触するように、2つの電極21,22が配置されている。以下、電極21を第一電極21、電極22を第二電極22と称することもある。
【0023】
各エキシマランプ10は、Y方向を延伸方向とした放電容器11を有し、Y方向に離間した位置において、エキシマランプ10の放電容器11の外表面の一部が各電極21,22に対して接触している。つまり、各電極21,22は、いずれも各エキシマランプ10の放電容器11の外表面に接触しつつ、Z方向に関して各エキシマランプ10に跨るように配置されている。
ここで、放電容器11内で発生した光を放電容器11の外へ取り出すことが想定される外表面を「光放射面」としたとき、放電容器11の光放射面は、各電極21,22が接触していない外表面の一部に存在する。
【0024】
本実施形態における紫外線照射装置1は、上述したように、一対の電極21,22を備えており、これらは相互にY方向に離間した位置に配置されている。電極21,22は導電性の材料からなり、好ましくはエキシマランプ10から出射される紫外線に対する反射性を示す材料からなる。一例として、電極21,22は、Al、Al合金、ステンレスなどで構成される。
【0025】
各電極21,22の間に、例えば1kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、各エキシマランプ10の放電容器11を介して、内部に封入された放電用ガス10Gに対して前記電圧が印加される。放電用ガス10Gのガス種としては、このような電圧が印加されると、ガス種を構成する原子が励起又はイオン化されることでエキシマ状態となった後、基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる材料であればよい。より具体的には、放電用ガス10Gとしては、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の一種又は複数種の希ガスであっても構わないし、フッ素(F)、塩素(Cl)、ヨウ素(I)、臭素(Br)等のハロゲンガスと前記希ガスとの混合ガスであっても構わない。
【0026】
一例として、放電用ガス10Gとしては、クリプトン(Kr)、塩素(Cl)及びアルゴン(Ar)の混合ガスとすることができる。なお、この場合、クリプトンと塩素は発光ガスとして機能し、アルゴンは緩衝ガスとして機能する。また、緩衝ガスとしては、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)から選択される1以上の希ガスを用いることができる。
【0027】
クリプトン及び塩素の混合ガスを放電用ガス10Gとするエキシマランプ10は、ピーク波長が222nm近傍の紫外線を出射する。222nmを含む、190nm以上、235nm以下の波長帯の紫外線は、仮に人体の皮膚に対して照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行しない。角質層に含まれる角質細胞は細胞としては死んだ状態であるため、例えば、波長254nmの紫外線が照射される場合のように、有棘層、顆粒層、真皮など、生きた細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクがほとんど存在しない。
【0028】
そして、上記波長帯の紫外線は、照射対象物に対する殺菌効果が存在することが分かっている。従って、上記のような放電用ガスが封入されたエキシマランプを搭載した紫外線照射装置は、光殺菌作用を初めとする種々の用途への適用が想定され、幅広い利用場面が考えられる。
【0029】
紫外線照射装置1を稼働させると、不図示の電源から電源線7(図2参照)を介して、上述したように第一電極21と第二電極22の間に高周波電圧が印加される。これにより、各エキシマランプ10に封入された放電用ガス10Gには、放電容器11を介して前記高周波電圧が印加される。
【0030】
エキシマランプ10では、第一電極21と第二電極22の間に高周波電圧を印加し、放電空間(放電容器11内)の絶縁性が破壊されることで、放電用ガス10Gがエキシマ放電し、放電容器11内でエキシマの発光が生じる。絶縁が破壊されると、nsオーダーでの放電、終了を繰り返し行い、これを高周波で行うことで、実質的に連続して点灯しているように見える。
【0031】
図6は、放電状態にあるエキシマランプ10及び電極21,22の断面図である。放電容器11内には、第一電極21と第二電極22の間に印加された電圧によりエキシマ放電する放電領域50(図6でハッチングを施した領域)が形成される。放電領域50内には、放電柱51が存在する。放電領域50は、エキシマランプ10を紫外線カメラ(後述する)で撮像した画像から識別することができる。放電領域50は、エキシマランプ10から出射される紫外線の最大強度値に対して20%以上となる強度の紫外線を出射する領域であり、好ましくは最大強度値に対して30%以上となる強度の紫外線を出射する領域である。
【0032】
放電領域50は、第一電極21と第二電極22に少なくとも一部が対向する。すなわち、放電領域50は、第一電極21と対向する第一領域61および第二電極22と対向する第二領域62の一部に重なっている。
また、放電容器11の光放射面は、放電領域50と重なるように形成される。具体的には、放電容器11の延伸方向(ここでは管軸方向)において、光放射面は、第一電極21と対向する第一領域61および第二電極22と対向する第二領域62の一部が重なっている。
【0033】
一方、放電領域50の最大範囲は、第二電極22から最も離れた第一電極21の端部(第一電極21の-Y方向の端部)21aと、第一電極21から最も離れた第二電極22の端部(第二電極22の+Y方向の端部)22aとの間の領域である。この第一電極21の端部21aと第二電極22の端部22aとの間の領域を放電許容領域60と称する。言い換えると、放電許容領域60は、第一電極21と対向する第一領域61と、第二電極22と対向する第二領域62と、第一領域61と第二領域62の間の第三領域63とからなる。
【0034】
出願人は、放電領域50の延伸方向の長さ(以下、単に長さともいう)が、放電容器11に封入されるハロゲンガスの封入圧等によって変わることを見出した。具体的には、印加される電圧などの点灯条件が同じ場合、放電容器11内のハロゲンガスの封入圧が高いと放電領域50の長さは短くなり、放電容器11内のハロゲンガスの封入圧が低いと放電領域50の長さは長くなる傾向にあることを見出した。これは、ハロゲンガスは、電子親和力が高く、電子を吸着しやすいため、ハロゲンガスが多く存在する空間では放電が広がりにくいためと考えられる。
【0035】
本実施形態では、放電容器11内のハロゲンガスの封入圧を通常よりも高くすることにより、放電領域50の長さを放電許容領域60の長さよりも短くなるように制御する。このとき、放電領域50は、放電許容領域60の延伸方向の両端(端部21a及び端部22a)よりも中央側に位置している。これに対し、従来の封入圧でハロゲンガスを放電容器11内に封入した場合には、点灯初期においても放電領域50の長さが放電許容領域60の長さと実質的に一致する。
なお、放電容器11の光放射面は、放電容器11の延伸方向において放電領域50と重なるように形成され、更には、放電領域50の長さよりも長くなるよう形成されている。より望ましくは、光放射面は放電許容領域60と同等かそれ以上の範囲が確保され、放電領域50で発生した光を放電容器11外へ放射しやすい形態が望ましい。
【0036】
例えば、エキシマランプ10を同じ点灯条件下で長期間にわたって点灯する場合について説明する。図7Aは点灯初期の放電領域50の様子を模式的に示した図であり、図7Bは点灯中期の放電領域50の様子を模式的に示した図であり、図7Cは点灯後期の放電領域50の様子を模式的に示した図である。
【0037】
点灯初期においては、図7Aに示すように、所定の点灯条件下で放電領域50の長さが放電許容領域60の長さよりも短くなるように制御しておく。
【0038】
エキシマランプ10は、点灯時間が長くなるにつれて、発光ガス中のハロゲンガスが消費される。ハロゲンガスが僅かに減少することで、発光ガス自体の放電特性が良好となり、同じ点灯条件下であっても放電領域50の長さは徐々に長くなる。よって、点灯中期においては、図7Bに示すように、図7Aに示す点灯初期に比べて、放電領域50の長さが長くなっている。ただし、この時点においても、放電領域50の長さは、放電許容領域60の長さよりも短い。放電領域50の長さが長くなるほど、放射される面積が増えて光線量が増えるため、高い照度が得られやすくなる。
【0039】
点灯後期においては、図7Cに示すように、ハロゲンガスがさらに減少することで、放電領域50の長さは、最大範囲、すなわち放電許容領域60の長さまで長くなる。
【0040】
前述のように、通常、エキシマランプは、同じ点灯条件下であっても、点灯時間が長くなるにつれて次第に照度が低下していくことが知られている。これに対し、本実施形態に係るエキシマランプ10は、点灯初期においては放電領域50の長さを短くして照度を制限しつつ、点灯中期~点灯後期においては放電領域50の長さを徐々に長くして照度を高めることによって、点灯時間の経過とともに照度が低下することを抑制できる。
【0041】
放電領域50の延伸方向の長さは、放電許容領域60の延伸方向の長さの95%以下であるのが好ましい。すなわち、放電領域50の長さは、放電許容領域60の長さの少なくとも5%以上は伸びる余地があるのが好ましい。これにより、エキシマランプ10は、点灯時間の経過につれて約5%以上照度を上げることができるため、経時的な照度低下を効果的に抑制することができる。
【実施例0042】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0043】
所定の点灯条件下で連続して点灯させたエキシマランプ10について、放電領域50の経時的変化を観察した。
【0044】
エキシマランプ10の仕様は以下のとおりである。放電容器11の長さは60mm、内径は4mmとした。放電容器11には塩素を封入し、塩素の封入圧は0.15kPaとした。放電容器11の外表面に配置した電極21,22の延伸方向の幅(第一領域および第二領域の長さに相当する)は、それぞれ16.4mmとした。電極21,22間の距離(第三領域の長さに相当する)は6mmとした。電極21,22間に印加する電圧は4kVとした。
【0045】
放電領域50の観察のため、エキシマランプ10を紫外線カメラ(UVカメラ)によって撮像した。エキシマランプ10から130mm離間した位置に紫外線カメラのCMOSセンサを配置した。
【0046】
エキシマランプ10を点灯させた後、放電許容領域60を紫外線カメラで撮像し、強度比を整えた(最大強度値を1に規格化した)。紫外線カメラによる撮像は、点灯から2時間後、2600時間後、4500時間後に行った。
【0047】
強度比の結果を図8に示す。図8の縦軸は規格化された強度であり、横軸は放電許容領域の延伸方向一端からの長さである。図8中のハッチングを施した矩形は、参考として示す電極21,22である。最大強度値に対して20%以上となる領域を放電領域と定義し、この放電領域の長さを比較した。その結果、放電領域の長さが点灯時間の経過とともに長くなることが分かる。
【0048】
また、紫外線カメラによる実際の撮像を図9に示す。この結果からも、放電領域の長さが点灯時間の経過とともに長くなることが分かる。また、点灯から2時間後の照度を100%とすると、2600時間後の照度は96%、4500時間後の照度は89%であった。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0051】
上記の実施形態では、点灯初期および点灯中期において、放電容器11内の放電領域50が、放電許容領域60の延伸方向の両端よりも中央側に位置するとして説明しているが、これに限定するものではない。点灯した際に、放電容器11内の放電領域50が、放電許容領域60の延伸方向の両端よりも中央側に位置していれば、その後、点灯時間の経過とともに放電領域50の長さが徐々に長くなるため、本発明の作用効果を奏することができる。
【0052】
上記の実施形態では、放電容器11は、Y方向に沿った管軸を有する管形状であるが、これに限定するものではない。例えば、放電容器11は、Y方向及びZ方向に延伸するX方向視で矩形状の扁平な容器であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 :紫外線照射装置
10 :エキシマランプ
10G :放電用ガス
11 :放電容器
21 :第一電極
21a :第一電極の端部
22 :第二電極
22a :第二電極の端部
50 :放電領域
51 :放電柱
60 :放電許容領域
61 :第一領域
62 :第二領域
63 :第三領域
L1 :紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9