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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121268
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
F02D41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024520
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】三木田 彰
(72)【発明者】
【氏名】福留 大輔
(72)【発明者】
【氏名】児玉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏次郎
(72)【発明者】
【氏名】程 浜
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3G301
【Fターム(参考)】
3G301JA03
3G301LB01
3G301MA11
3G301MA19
3G301MA26
3G301NE01
3G301PB03Z
3G301PB05Z
3G301PE01Z
(57)【要約】
【課題】内燃機関の運転状態に応じて、最適な燃料噴射を実行できる内燃機関の制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の制御システムは、前記内燃機関の第1気筒に接続される吸気ポートと、前記吸気ポートに配置され、前記第1気筒と前記吸気ポートの接続部に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記内燃機関を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に応じて前記燃料噴射弁を一段噴射させる第1制御と、前記燃料噴射弁を多段噴射する第2制御と、を切り替える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御システムであって、
前記内燃機関の第1気筒に接続される吸気ポートと、
前記吸気ポートに配置され、前記第1気筒と前記吸気ポートの接続部に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記内燃機関を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に応じて前記燃料噴射弁を一段噴射させる第1制御と、前記燃料噴射弁を多段噴射する第2制御と、を切り替える、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関の回転数が所定回転数より低い第1回転領域と、前記第1回転領域よりも前記内燃機関の回転数が高い第2回転領域と、において前記内燃機関を制御し、前記内燃機関を前記第1回転領域で制御している場合に前記第2制御を実行する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関の回転数が所定回転数より低い第1回転領域と、前記第1回転領域よりも前記内燃機関の回転数が高い第2回転領域と、において前記内燃機関を制御し、前記内燃機関を前記第2回転領域で制御している場合に前記第1制御を実行する、
請求項1または2に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関の出力が所定出力より低い第1負荷領域と、前記第1負荷領域よりも前記内燃機関の負荷が高い第2負荷領域と、において前記内燃機関を制御し、前記第2負荷領域で前記内燃機関を制御している場合に前記第1制御と前記第2制御との切り替えを実行し、前記第1負荷領域で前記内燃機関を制御している場合に、前記第1回転領域および前記第2回転領域において前記第1制御を実行する、
請求項2または3に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1負荷領域において前記第1制御を実行する場合に前記内燃機関の排気行程から吸気行程にかけて燃料を噴射する、
請求項4に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2制御を実行する場合に前記内燃機関の排気行程に前記燃料を噴射する第1噴射と、前記内燃機関の吸気行程に前記燃料を噴射する第2噴射と、を実行する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項7】
前記第2噴射の噴射量が、前記第1噴射の噴射量よりも多い、
請求項6に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気ポートに燃料を噴射する内燃機関の制御システムが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。このような、吸気ポートに燃料を噴射するシステムとしては、吸気ポート内で混合気を形成するポートインジェクション方式と、吸気ポートから気筒内に向けて燃料を直接噴射するセミダイレクトインジェクション方式と、が知られている。特許文献1および特許文献2は、セミダイレクトインジェクション方式の内燃機関の制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-139410号公報
【特許文献2】特開2021-32131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、内燃機関のエミッションに着目し、吸気行程から排気行程までの一サイクル中に2つの燃料噴射弁のいずれか一方を噴射する内燃機関の制御システムを開示する。特許文献2は、触媒の早期暖機に着目し、2つの燃料噴射弁のうちいずれか一方を噴射する内燃機関の制御システムを開示する。しかし、特許文献1および特許文献2は、内燃機関の運転状態に応じて燃料噴射弁にどのように燃料を噴射させるかについて開示していない。
【0005】
本開示の課題は、内燃機関の運転状態に応じて、最適な燃料噴射を実行できる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、前記内燃機関の第1気筒に接続される吸気ポートと、前記吸気ポートに配置され、前記第1気筒と前記吸気ポートの接続部に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記内燃機関を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に応じて前記燃料噴射弁を一段噴射させる第1制御と、前記燃料噴射弁を多段噴射する第2制御と、を切り替える。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、内燃機関の運転状態に応じて一段噴射と、多段噴射とを切り替えることによって、内燃機関の運転領域に応じた最適な燃料噴射を実行できる。これによって、この内燃機関の制御システムは、内燃機関の運転状態に応じて、出力、エミッションなどを最適にできる。この結果、この内燃機関の制御システムによれば、内燃機関の最適な運転ができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、内燃機関の運転状態に応じて、最適な燃料噴射を実行できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御システムのシステム図。
図2】本開示の実施形態による内燃機関の図。
図3】本開示の実施形態による内燃機関の気筒の拡大図。
図4】本開示の実施形態による内燃機関の運転領域を示す図。
図5】本開示の実施形態による燃料噴射タイミングと噴射期間を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において吸気、または排気の流れる方向に対して上流側を上流と明細書に記し、下流側を下流と明細書に記す。
【0011】
図1および図2に示すように、内燃機関2の制御システム1は、複数の吸気ポート4と、複数の排気ポート5と、複数の燃料噴射弁6と、複数の吸気バルブ8と、吸気バルブタイミング可変装置9と、複数の排気バルブ12と、排気バルブタイミング可変装置13と、制御装置20と、を備える。本実施形態の内燃機関2は、複数の気筒11(第1気筒の一例)が直列に配置された直列型の内燃機関2である。しかし、気筒11の配置および数は、変更可能である。具体的には、内燃機関2は、気筒11がV型、または水平対向型に配置されてもよい。また、気筒11の数は、1から12個程度あってもよい。また、本実施形態の内燃機関2は、混合気に点火プラグ10によって点火するガソリンエンジンである。
【0012】
本実施形態の内燃機関2は、過給機14と、吸気マニホールド17と、エアクリーナ21と、を有し、エアクリーナ21から吸い込まれた吸気が過給機14のコンプレッサ14aによって過給される。過給された吸気はインタークーラ15によって冷却され、吸気マニホールド17を介して吸気ポート4に供給される。また、内燃機関2は、排気バルブ16と、排気浄化触媒18と、を有し、過給機14のタービン14bを介して排気浄化触媒18に排気が供給される。しかし、内燃機関2は、過給機14などを有さない内燃機関2であってもよい。
【0013】
図2および図3に示すように、吸気ポート4は、4つの気筒11のそれぞれに接続される。吸気ポート4は、シリンダヘッド2aに設けられる。吸気ポート4は、シリンダヘッド2aによって形成されたポート壁2bによって分岐される第1吸気ポート4aと、第2吸気ポート4bと、を有する。第1吸気ポート4aと、第2吸気ポート4bと、は気筒11の配列方向に隣り合って配置され、同じ気筒11につながる。吸気バルブ8は、第1吸気バルブ8aと、第2吸気バルブ8bと、を有する。第1吸気ポート4aは、気筒11と接続するポート出口(接続部の一例)が第1吸気バルブ8aによって開閉される。第2吸気ポート4bは、第1吸気ポート4aと同様に、気筒11と接続するポート出口が第2吸気バルブ8bによって開閉される。
【0014】
排気ポート5は、4つの気筒11のそれぞれに接続される。排気ポート5は、シリンダヘッド2aに設けられる。排気ポート5は、シリンダヘッド2aによって形成されたポート壁2dによって分岐される第1排気ポート5aと、第2排気ポート5bと、を有する。第1排気ポート5aと第2排気ポート5bは、気筒11の配列方向に隣り合って配置され、同じ気筒11につながる。排気バルブ12は、第1排気バルブ12aと、第2排気バルブ12bと、を有する。第1排気ポート5aは、気筒11と接続するポート入口(接続部の一例)が第1排気バルブ12aによって開閉される。第2排気ポート5bは、第1排気ポート5aと同様に、気筒11と接続するポート入口が第2排気バルブ12bによって開閉される。
【0015】
吸気バルブ8は、吸気カム8cによって駆動される。吸気カム8cは、吸気バルブタイミング可変装置9によって吸気カム8cの位相を変更することが可能である。排気バルブ12は、排気カム12cによって駆動される。排気カム12cは、排気バルブタイミング可変装置13によって排気カム12cの位相を変更することが可能である。吸気バルブタイミング可変装置9および排気バルブタイミング可変装置13は、制御装置20に電気的に接続される。吸気バルブタイミング可変装置9および排気バルブタイミング可変装置13は、制御装置20によって吸気カム8cの位相および排気カム12cの位相がそれぞれ制御される。
【0016】
燃料噴射弁6は、第1燃料噴射弁6aと、第2燃料噴射弁6bと、を有する。燃料噴射弁6は、第1吸気ポート4a、および第2吸気ポート4bのそれぞれに配置される。具体的には、図3に示すように、第1吸気ポート4aには第1燃料噴射弁6aが配置され、第2吸気ポート4bには第2燃料噴射弁6bが配置される。図1に示すように、燃料噴射弁6は、デリバリーパイプ6cから燃料が供給される。第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bは、それぞれ制御装置20と電気的に接続され、制御装置20によって燃料噴射期間および燃料噴射タイミングが制御される。
【0017】
図3に示すように、第1燃料噴射弁6aは、燃料を噴射する噴孔がポート壁2bの上流側端部2cよりも、気筒11側に配置される。第1燃料噴射弁6aは、第1吸気バルブ8aが開弁時に燃料を気筒11に向かって噴射する。第2燃料噴射弁6bは、第1燃料噴射弁6aと同様に、燃料を噴射する噴孔がポート壁2bの上流側端部2cよりも、気筒11側に配置される。第2燃料噴射弁6bは、第2吸気バルブ8bが開弁時に燃料を気筒11に向かって噴射する。すなわち、本実施形態の内燃機関2は、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに混合気を形成するとともに、気筒11にも燃料を噴射可能なセミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2である。
【0018】
制御装置20は、アクセルペダル30に取り付けられたアクセルポジションセンサ30aからアクセル開度Thを検知し、アクセル開度Thに応じて、内燃機関2を制御する装置である。本実施形態では、制御装置20は、内燃機関2の運転状態に応じて、第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bを制御し、燃料噴射タイミングと、燃料噴射期間を制御する。具体的には、制御装置20は、内燃機関2の運転状態に応じて第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bを制御する。制御装置20は、第1制御と第2制御とで第1燃料噴射弁6a及び第2燃料噴射弁を制御する。第1制御は、第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bの少なくともいずれか一方を一段噴射させる制御である。第2制御は、第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bの少なくともいずれか一方を多段噴射させる制御である。制御装置20は、第1制御と第2制御とを切り替える制御を実行する。また、制御装置20は、運転状態に応じて、吸気カム8cおよび排気カム12cの位相を変更することによって、吸気バルブ8および排気バルブ12のバルブ開閉タイミングを制御する。
【0019】
また、制御装置20は、エアフロセンサ22、およびアクセルポジションセンサ30aなどのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、スロットルバルブ24、過給機14の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置20は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0020】
次に、図4および図5を用いて、制御装置20が実行する制御について説明する。なお、図5のバルブタイミングのグラフは、膨張行程から圧縮行程までの吸気バルブ8および排気バルブ12のバルブリフト量(縦軸)と、バルブ開閉タイミングと、を示すグラフである。領域Aのグラフは、後述する内燃機関2の運転領域の領域Aにおける燃料噴射タイミング、噴射期間、および燃料噴射量(縦軸)を示すグラフである。同様に、領域Bのグラフは、内燃機関2の運転領域の領域Bにおける燃料噴射タイミング、噴射期間、および燃料噴射量(縦軸)を示すグラフである。領域Cのグラフは、内燃機関2の運転領域の領域Cにおける燃料噴射タイミング、噴射期間、および燃料噴射量(縦軸)を示すグラフである。
【0021】
図4に示すように、制御装置20は、内燃機関2の運転領域(運転状態の一例)を例えば3つの領域に分けて制御する。領域Aは、内燃機関2の回転数が所定回転数より低い低回転から中回転の領域(第1回転領域の一例)であり、内燃機関2の出力またはトルク(負荷)が、所定出力または所定トルク(負荷)よりも高い中負荷から高負荷の領域(第2負荷領域の一例)である運転領域である。所定回転数は、例えば、内燃機関2の最高回転数の半分付近の回転数であってもよい。所定出力は、例えば、内燃機関2の最大トルク(負荷)の半分付近の出力であってもよい。所定トルク(負荷)は、例えば、内燃機関2の最大トルク(負荷)の半分付近の負荷であってもよい。領域Bは、領域Aよりも負荷が低い領域(第1負荷領域の一例)である運転領域である。領域Cは、領域Aよりも内燃機関2の回転数(エンジン回転数)が高い領域(第2回転領域の一例)である。
【0022】
図4の領域Aにおいて、制御装置20は、排気バルブ12の閉弁タイミングと、吸気バルブ8の開弁タイミングと、を重ねるバルブオーバーラップ制御を実行する。これによって、慣性過給による充填効率の向上が見込まれる。一方で、本実施形態のように過給機14によって過給される場合、吸気マニホールド17の圧力が正圧になる。
【0023】
本実施形態のセミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2の場合、このような領域Aでは、(1)バルブオーバーラップ制御による第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに形成した混合気が排気ポート5に吹き抜けること、および、(2)吸気マニホールド17が正圧になることよる第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに対する燃料の付着すること、に配慮することが好ましい。(1)は、気筒11内に直接燃料を供給する吸気行程における燃料噴射において配慮することが好ましい。(2)は、吸気ポート4内に混合気を形成する排気行程における燃料噴射において配慮することが好ましい。
【0024】
このため、領域Aにおいて、制御装置20は、燃料噴射弁6を多段噴射する第2制御を実行する。より具体的には、図5に示すように、領域Aにおける第2制御は、排気行程において第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bによって一段目の燃料噴射(第1噴射の一例)を実行し、混合気を形成する。その後、吸気行程において第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bによって二段目の燃料噴射(第2噴射の一例)を実行する。
【0025】
ここで、二段目の燃料噴射の噴射量が一段目の燃料噴射の噴射量よりも多い。これによって、排気行程における燃料噴射が第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに付着することを抑制する。
【0026】
また、図5に示すように、制御装置20は、バルブオーバーラップがない状態、すなわち排気バルブ12が閉弁状態(第1排気バルブ12aおよび第2排気バルブ12bともに閉弁した状態)において、二段目の燃料噴射を実行する。これによって、吸気行程において噴射した燃料が排気ポート5に吹き抜けることを抑制できる。
【0027】
図4の領域Bにおいて、制御装置20は、バルブオーバーラップ制御は実行しない。また、このような低負荷の領域では、過給機14による過給もない。このため、吸気マニホールド17の圧力は負圧であり、燃料噴射量も少ない。
【0028】
本実施形態のセミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2の場合、このような領域Bでは、(3)第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bのダイナミックレンジ(流量特性)に配慮することが好ましい。
【0029】
このため、領域Bにおいて制御装置20は、排気行程から吸気行程にかけて燃料噴射弁6を一段噴射する第1制御を実行する。より具体的には、図5の領域Bに示すように、排気行程から吸気行程にかけて一段で燃料噴射を実行する。これによって、1回の噴射における燃料噴射量を、多段噴射に比べて増量することができる。この結果、第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bの燃料噴射量が、流量特性下限(ダイナミックレンジ下限)を下回ることを抑制できる。なお、制御装置20は、領域Bにおいて燃料噴射量がダイナミックレンジ下限に近付いた場合、第1燃料噴射弁6a、または第2燃料噴射弁6bのいずれか一方によって燃料噴射を実行してもよい。
【0030】
図4の領域Cにおいて制御装置20は、バルブオーバーラップ制御は実行しない。しかし、過給機14による過給圧が高い領域である。このため、吸気マニホールド17の圧力は正圧である。
【0031】
本実施形態のセミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2の場合、このような領域Bでは、(4)燃料気化熱による気筒11の冷却に配慮することが好ましい。
【0032】
このため、領域Cにおいて制御装置20は、吸気行程において燃料噴射弁6を一段噴射する第1制御を実行する。より具体的には、図5の領域Cに示すように、吸気行程において一段で燃料噴射を実行する。これによって、一段で噴射する燃料噴射量が多く、高い燃料圧力による噴霧の貫徹力が強くなる。このため、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに燃料が付着し難くなる。この結果、気筒11に入る燃料量も多くなり、燃料気化熱による気筒11の冷却効果が発生しやすい。
【0033】
このように構成した内燃機関2の制御システム1では、例えば、アクセルペダル30が踏み込まれた(例えば、アクセル開度Thが80%以上の)状況において、制御装置20は、領域Aにおいて第2制御を実行し、領域Cに遷移すると第1制御に切り替える。一方、例えば、アクセルペダル30が緩やかに踏まれた(例えば、アクセル開度Thが30%未満の)状況において、制御装置20は、領域B(第1負荷領域)において第1制御を実行する。このように制御装置20は、セミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2として運転状況に応じて最適な燃料噴射を実行する。これによって、内燃機関2の出力性能の向上、エミッションの低減、燃費の向上が可能である。
【0034】
以上説明した通り、本開示によれば、内燃機関2の運転状態に応じて、最適な燃料噴射を実行できる内燃機関2の制御システム1を提供できる。
【0035】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。例えば、外部充電又は外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に適用してもよい。
【0036】
(a)上記実施形態では、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bのそれぞれに第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bを配置する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。燃料噴射弁6は、吸気ポート4と気筒11の接続部に噴射できる配置であれば、吸気ポートの形状にあわせてどのように配置してもよい。
【0037】
(b)上記実施形態では、領域Aにおける第2制御について、一段目および二段目の2回の燃料噴射を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。一段目をさらに複数の燃料噴射に分割してもよい。二段目も同様である。
【符号の説明】
【0038】
1 :制御システム
2 :内燃機関
4 :吸気ポート
6 :燃料噴射弁
11 :気筒
20 :制御装置
図1
図2
図3
図4
図5