(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121289
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20230824BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20230824BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20230824BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20230824BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20230824BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230824BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20230824BHJP
F24F 130/00 20180101ALN20230824BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/46
F24F11/64
F24F11/89
F24F11/56
F24F110:10
F24F140:00
F24F130:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024544
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大沢 哲人
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260AB20
3L260BA02
3L260BA07
3L260BA08
3L260BA27
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA23
3L260CA25
3L260CA26
3L260CB63
3L260DA07
3L260DA08
3L260FB12
3L260JA20
(57)【要約】
【課題】送風機が適切な位置に設置されないことによる影響を抑えて、より効率よく室内の温度ムラを解消する。
【解決手段】室内に配置された室内機2から上記室内に調和空気を送り出す空気調和機1と、上記室内に配置された送風機4と、を備える空気調和システムであって、上記空気調和システムは、上記送風機4の送風を制御するための送風制御部28Bを備え、上記送風制御部28Bは、上記室内機2が送り出した調和空気が上記送風機4に届いているか否かを判定する判定部28Bcと、上記判定部28Bcの判定結果に基づき、上記送風機4の送風方向を決定する送風方向決定部28Bdと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置された室内機から上記室内に調和空気を送り出す空気調和機と、上記室内に配置された送風機と、を備える空気調和システムであって、
上記空気調和システムは、上記送風機の送風を制御するための送風制御部を備え、
上記送風制御部は、
上記室内機が送り出した調和空気が上記送風機に届いているか否かを判定する判定部と、
上記判定部の判定結果に基づき、上記送風機の送風方向を決定する送風方向決定部と、
を備えることを特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
上記送風制御部は、
上記室内の床を複数の区画に分割し、上記区画毎の床温度を取得する床温度取得部と、
上記送風機が上記複数の区画のどの区画に配置されているかの情報である送風機位置情報を取得する送風機位置取得部と、
を有し、
上記判定部は、上記床温度取得部の取得情報と、上記送風機位置取得部の取得情報と、上記室内機の設定温度とから、上記調和空気の気流が上記送風機に届いているか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載した空気調和システム。
【請求項3】
上記送風方向決定部は、上記判定部の判定結果に基づき、上記室内機が送り出した調和空気が上記送風機に届いていないと判定した場合、上記送風機の送風の向きを、上記室内機が送り出した調和空気が届いている領域の方向に決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載した空気調和システム。
【請求項4】
上記送風機に位置検出用のセンサを設け、
上記送風機位置取得部は、上記センサからの信号によって、上記送風機位置情報を算出する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した空気調和システム。
【請求項5】
上記送風制御部は、
上記区画毎の各床温度と上記室内機の設定温度との温度差のうちの一番大きな温度差を最大乖離温度として取得し、その最大乖離温度に基づき上記送風機の送風量を決定する送風量決定部を有し、
上記送風量決定部は、乖離温度が大きい場合、乖離温度が小さい場合に比べて送風量を大きな値に設定する、
ことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれか1項に記載した空気調和システム。
【請求項6】
上記判定部及び上記送風方向決定部は、上記室内機に設け、
上記送風機のファンの向きを制御するファン位置制御部を、当該送風機に設け、
更に、上記送風方向決定部が決定した送風方向の指令を上記ファン位置制御部に無線送信する送信部を、上記室内機に備える、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気を調和する空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン(室内機)の風を室内に効率よく循環させ、室内の温度ムラを解消する方法として、エアコンとサーキュレータその他の送風機との併用及び連携が考えられる。
空気調和機と送風機とを備える空気調和システムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムがある。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、赤外線センサによって、室内機に対する送風機の位置を取得する。また、特許文献1では、室内の温度分布データを分析する。特許文献1に記載のシステムでは、具体的には、床、壁及び天井における全区画の温度差分の情報を比較し、床温度、壁温度又は天井温度と室内機の設定温度との温度差分が最大になる区画である温度差分最大区画を特定する。そして、送風機からの送風の向きである送風方向が、その温度差分最大区画の方向に向くように、送風機のファンの向きが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、送風機は、エアコンの風(調和空気の気流)が行き届く範囲に設置することが望ましい。
しかし、使用者が送風機をそのような適切な位置に設置するとは限らない。このため、特許文献1に記載のシステムでは、送風機が室内の適切な位置、つまりエアコンの風が行き届くエリアに設置されていない場合、室内の温度ムラ解消の効果を十分に発揮することが出来ないおそれがあるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、送風機が適切な位置に設置されないことによる影響を抑えて、より効率よく室内の温度ムラを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題解決のために、本発明の一態様は、室内に配置された室内機から上記室内に調和空気を送り出す空気調和機と、上記室内に配置された送風機と、を備える空気調和システムであって、上記空気調和システムは、上記送風機の送風を制御するための送風制御部を備え、上記送風制御部は、上記室内機が送り出した調和空気が上記送風機に届いているか否かを判定する判定部と、上記判定部の判定結果に基づき、上記送風機の送風方向を決定する送風方向決定部と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、室内の空気をより効率よく循環させることが可能となり、室内の温度ムラを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係る空気調和システムの概略構成図である。
【
図2】本発明に基づく実施形態に係る室内機の基本構成を説明する図である。
【
図3】本発明に基づく実施形態に係る室外機の基本構成を説明する図である。
【
図4】本発明に基づく実施形態に係るリモコンの基本構成を説明する図である。
【
図5】本発明に基づく実施形態に係る送風機の基本構成を説明する図である。
【
図7】送風機の位置を特定する処理フロー例を示す図である。
【
図8】送風機に気流が向かっているか否かを判定する処理フロー例を示す図である。
【
図9】送風方向を決定する処理フロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の空気調和システムは、対象とする室内の空気を冷房、暖房また除湿するなどして、所望の設定条件に空気調和するシステムである。
本実施形態の空気調和システムは、
図1に示すように、空気調和機1と、送風機4と、を備える。
【0011】
(空気調和機1)
空気調和機1は、室内に設置された室内機2と、屋外に配置された室外機3とを備える。室内機2と室外機3とは、冷媒を循環させる冷媒回路により接続されている。なお、空気調和機1は、図示しない外部電源により、動作するための電力が供給される。
【0012】
(室内機2)
図1に示す室内機2は、壁掛け型の室内機の場合を例示している。ただし、室内機2の設置形態に特に制約はない。室内機2の設置形態は、例えば、天井吊下げ型や天井埋め込み型等でも良い。
【0013】
室内機2は、
図2に示すように、本実施形態では、室内熱交換器21と、送風ファン22と、風向調整器23と、送受信部24と、室内温度センサ29と、送風機位置検出センサ25と、表示器26と、サーミスタ27と、室内機側制御部28と、を備える。ただし、この構成に限らず、例えば室内機2がダクト型の場合、風向調整器23はなくても良い。
【0014】
<室内熱交換器21>
室内熱交換器21は、室内空間Sから取り入れた空気と、冷媒回路中を流れる冷媒との熱交換を行う。室内空間Sは、室内機2を設置した室内の空間である。室内空間Sは空気調和の対象となる空間である。
【0015】
<送風ファン22>
送風ファン22は、室内空間Sから室内の空気を取り入れ、室内熱交換器21で熱交換した調和空気を、室内機2の吹出し口から室内空間Sに送り出す送風手段である。
<風向調整器23>
風向調整器23は、送風ファン22で送り出される調和空気の送り出し方向を調整する。
【0016】
<送受信部24>
送受信部24は、無線にて信号を送信する室内機2の送信部と、信号を受信する受信部とを構成する。
本実施形態では、送受信部24として、赤外線受光ユニット24Aと無線ユニット24Bとを備える。
【0017】
赤外線受光ユニット24Aは、利用者が操作するリモコン5からの信号を受信する。
無線ユニット24Bは、送風機4の制御部(送風機制御部45)と無線通信を行う。
【0018】
<室内温度センサ29>
本実施形態の室内温度センサ29は、サーモパイルで構成される。本実施形態では、サーモパイルは、室内空間Sにおける床面、壁面、天井面の各面の温度のうち、少なくとも床面の複数箇所の床温度について計測を行う。
【0019】
<送風機位置検出センサ25>
送風機位置検出センサ25は、室内機2に対する送風機4の相対位置を検出する。
本実施形態の送風機位置検出センサ25は、位置検出用の磁気センサを含めて構成され、送風機4に設けられた位置検出用の磁気センサ(送風機位置発信部43)からの信号を受信することで、送風機4の位置を検出する。送風機位置検出センサ25は、他の公知の方法によって送風機4の位置を検出してもよい。例えば、送風機位置検出センサ25は、送風機4に内蔵された赤外線発生器が発生する赤外線を受光して、送風機4の位置を検出しても良い。また、送風機位置検出センサ25は、例えば室内機2に内蔵されたカメラが撮像した撮像画像の処理によって、送風機4の位置を検出してもよい。
【0020】
送風機位置検出センサ25は、送風機4の位置だけでなく、送風機4の送風ファン41の現在の向き、又は、基準の向きも検出する構成であっても良い。なお、送風機4の送風ファン41の向きは、送風機4から無線通信で取得してもよい。
【0021】
ここで、送風機4側の位置検出用の磁気センサについて補足説明する。
この磁気センサは、VRのデータグローブやゲームのコントローラ等に使用されている磁気センサと同じタイプの磁気センサを採用すればよい。この磁気センサは、水平方向と垂直方向に直交するコイルを備え、磁束密度の変化により位置と方向を検出する。送風機位置検出センサ25は、磁場を発生し、送風機位置発信部43の発する信号を受信することで、室内機2と送風機4の相対的な位置と方向を特定することが出来る。磁気センサは、送風機4の位置や方向を検出可能なセンサであれば、ジャイロセンサや加速度センサでも良い。
【0022】
なお、この位置検出用の磁気センサは、常時通電しているとコイルが発熱する。このため、送風機4に設ける磁気センサは、室内機2が運転開始する時のみや、室内機側制御部28からの発信要求を受信した場合にのみ、所定時間(例えば、15秒)だけ、つまり短時間だけ作動させることが好ましい。
【0023】
<表示器26>
表示器26は、空気調和機1、特に室内機2の運転状態の表示を行う。
<サーミスタ27>
サーミスタ27は、室内空間Sから室内機2に吸い込まれる調和前の空気温度を測定する。
なお、室内機側制御部28の処理については、後述する。
【0024】
(室外機3)
室外機3は、
図3に示すように、室外熱交換器31と、ファン32と、コンプレッサ33と、各種のセンサ34とを備える。
室外熱交換器31は、室外の空気と冷媒回路中を流れる冷媒との熱交換を行う。ファン32は、屋外から取り入れて室外熱交換器31で熱交換した空気を屋外に送り出す。コンプレッサ33は、冷媒回路において冷媒圧縮を行う。各種のセンサ34は、例えば冷媒圧力や各種温度を測定するセンサである。
【0025】
ここで、室外機3の構成については、特に限定は無く、室外機3としての機能を備えていれば、その構成や形態は、特に限定されない。
【0026】
また、
図1に示す空気調和機1は、室内機2と室外機3とが互いに分離されたセパレート型の空気調和機が例示されている。しかし、室内機2と室外機3とが同一の筺体に納められた一体型の空気調和機であっても良い。
【0027】
(リモコン5)
リモコン5は、
図4に示すように、操作部51と、送信部52と、情報表示部53と、を備える。
操作部51は、使用者の操作によって操作情報を受け付けるための入力部である。送信部52は、室内機2に対して操作部51が受け付けた操作情報を、指示情報である操作コマンドの信号として送信する。情報表示部53は、設定温度や運転モード等の各種情報を表示する表示部である。
【0028】
リモコンから室内機2に送る指示情報には、少なくとも空調の設定温度と、空調の運転モードとして、冷房・暖房などの空調運転種別の指示情報がある。設定温度は、使用者が設定した、室内の目標温度である。
なお、リモコン5は、室内機2からの情報を受信する受信部を有していても良い。
【0029】
(送風機4)
送風機4は、例えばサーキュレータである。本実施形態の送風機4は、羽根部41A(羽根車)を回転させて風を送り出す機構を備える。
【0030】
本実施形態の送風機4は、室内機側制御部28の指示情報に基づいて、送り出す風の風向や風力の制御が可能となっている。なお、本実施形態の送風機4は、室内機2とは独立しており、使用者が持ち運び可能となっている。すなわち、本実施形態の送風機4は、室内の任意の位置に設置が可能となっている。また、送風機4の位置が固定されていても良い。
【0031】
送風機4は、
図5に示すように、送風機4の本体である送風ファン41と、風向調整部42と、送風機位置発信部43と、送受信部44と、送風機制御部45と、を備える。
<送風ファン41>
送風ファン41は、ファンユニットであって、羽根車を備える羽根部41Aと、羽根車を回転駆動する回転モータ41Bとを備える。
【0032】
<風向調整部42>
風向調整部42は、回転機構42Aと、風向調整モータ42Bとを備える。
<回転機構>
回転機構42Aは、室内空間Sの平面視における送風ファン41の向きを旋回により変更する機構である。本実施形態の回転機構42Aは、送風ファン41を上下方向に旋回(上下方向の首振り)する機構も有する。
【0033】
<風向調整モータ42B>
風向調整モータ42Bは、回転機構42Aを介して送風ファン41の向きを調整する駆動部である。
【0034】
<送風機位置発信部43>
送風機位置発信部43は、送風機4の位置を特定する信号を発信する情報発信型センサである。本実施形態の送風機位置発信部43は、上述の通り、磁気を発信するコイルなどを備える磁気センサからなる。送風機位置発信部43は、他にも赤外線の発信や無線の送信などで、位置情報を発信可能な構成であればよい。磁気センサの場合、3次元方向の位置情報を発信可能である。
【0035】
<送受信部44>
本実施形態の送受信部44は、赤外線受光ユニット44Aと無線ユニット44Bとを備える。
赤外線受光ユニット44Aは、スマートリモコン6を介して、室内機2の無線ユニット24Bと無線通信を行う。スマートリモコン6は、無線通信信号を赤外線信号に変換する。また、赤外線受光ユニット24Aは、送風機4用のリモコン(不図示)と無線通信を行う。室内機2との通信部として、赤外線受光ユニット44Aはなくても良い。
無線ユニット44Bは、室内機2の無線ユニット24Bと無線通信を行う。
なお、送風機制御部45については、後述する。
【0036】
(室内機側制御部28)
室内機側制御部28は、
図6に示すように、室内機側空調制御部28Aと、送風制御部28Bと、を備える。室内機側制御部28は、CPU及びメモリを備えたマイコンで構成される。
【0037】
ここで、室内機側空調制御部28Aと送風制御部28Bとは、互いに独立した個別のマイコンで構成されていてもよい。この場合、送風制御部28Bは、室内機2とは独立した筐体であって、かつ室内機2と無線通信可能な筐体内に設けられていても良い。例えば、送風制御部28Bを、リモコン5や送風機4などに内蔵させてもよい。
【0038】
(室内機側空調制御部28A)
室内機側空調制御部28Aは、リモコン5からの指示情報に基づき、室内機2の動作を制御する。本実施形態において、室内機側空調制御部28Aの処理構成については、調和空気を送り出す制御が可能であれば、何ら機能や構成などに制限はない。室内機側空調制御部28Aの処理は、例えば、室内機2についての公知の空調制御で構成する。
【0039】
(送風制御部28B)
送風制御部28Bは、後述する床温度などの室内機2による空調状態に応じて、送風機4の送風を制御するための情報を算出する。
送風制御部28Bは、
図6に示すように、床温度取得部28Baと、送風機位置取得部28Bbと、判定部28Bcと、送風方向決定部28Bdと、送風量決定部28Beとを備える。
【0040】
<床温度取得部28Ba>
床温度取得部28Baは、平面視で見た室内空間Sの床面を複数の区画に分割し、室内温度センサ29が取得(検出)する各区画の床温度情報に基づき、区画毎の床温度を取得する。
【0041】
各区画は、例えば、識別番号が付与されて識別管理される。区画毎の床温度は、室内機2側空調制御のメモリに記憶される。また、床温度取得部28Baは、分割した複数の区画を、設定したX-Y座標(2次元座標)に置き換える処理も行う。
【0042】
なお、区画する領域は、必ずしも床面の全面ではなく、室内機2から室内温度センサ29で認知可能な範囲の領域でも良い。この領域は、例えば、室内からの調和空気を直接に送り出し可能な領域とする。
【0043】
<送風機位置取得部28Bb>
送風機位置取得部28Bbは、送風機位置検出センサ25が受信する信号に基づき、送風機4の位置を特定し、その特定した位置と、複数の区画の座標情報とから、送風機4が複数の区画のどの区画に配置されているかについての情報である送風機位置情報を算出して当該送風機位置情報を取得する。
【0044】
送風機位置取得部28Bbの処理例を、
図7を参照して説明する。なお、この処理は、予め設定した所定の周期(例えば5分毎)で繰り返し実行される。
【0045】
まず、送風機位置取得部28Bbは、ステップS10にて、送風機位置検出センサ25が受信する信号に基づき、送風機4までのX-Y座標上の距離を取得する。
次に、送風機位置取得部28Bbは、ステップS20にて、取得したX-Y座標上の距離に基づき、分割した区画(エリア)のどの区画に送風機4が存在するか特定する。
次に、送風機位置取得部28Bbは、ステップS30にて、特定した送風機4が位置する区画を設置エリアαとして、処理を終了する。
【0046】
<判定部28Bc>
判定部28Bcは、室内機2が送り出した調和空気が送風機4に届いているか否かを判定する。
本実施形態の判定部28Bcは、床温度取得部28Baの取得情報と、送風機位置取得部28Bbの取得情報(送風機位置情報)と、室内機2の設定温度とから、調和空気の気流が送風機4に届いているか否かを判定する。
【0047】
本実施形態の判定部28Bcは、例えば、調和空気の気流が届いている1又は2以上の区画を求め、その区画を調和空気の気流が届いている領域と判定する。ここで、調和空気の気流が届いている領域に含まれる区画を気流到達区画とも呼ぶ。そして、本実施形態の判定部28Bcは、送風機位置情報に基づき、その気流到達区画に送風機4が存在するか否かで、調和空気の気流が送風機4に届いているか判定する。
【0048】
例えば、区画の温度が設定温度に近似している場合には、当該区画を気流到達区画とする。設定温度に近似とは、例えば、設定温度との差が1℃未満とする。気流到達区画が非連続で複数の領域に存在する場合には、例えば、設定温度に一番近い温度状態の領域の区画を、気流到達区画とする。
【0049】
すなわち、本実施形態の判定部28Bcは、各区画の温度と設定温度との温度差を求め、その各区画の温度差に基づき、気流到達区画を求める。また、各区画の温度差から一番温度差が大きな区画も求め、その区画を温度乖離区画として設定する。
【0050】
ここで、判定部28Bcの処理例を、
図8を参照して説明する。なお、この処理は、予め設定した所定の周期(例えば5分毎)で繰り返し実行される。
【0051】
まず、判定部28Bcは、ステップS100にて、床温度取得部28Baの取得情報と送風機位置取得部28Bbの取得情報とから、送風機4が位置する区画である設置エリアαの床温度を取得する。その取得した床温度を床温度αとする。
次に、判定部28Bcは、ステップS110にて、室内機2による現在の空調運転が冷房運転か暖房運転か判定する。冷房運転の場合は(S110-Y)、ステップS120に移行する。暖房運転の場合には(S110-N)、ステップS150に移行する。
【0052】
判定部28Bcは、ステップS120では、床温度αが、設定温度よりも大幅に(例えば2℃以上)高いか否か判定する。判定を満足する場合には(S120-Y)、ステップS130に移行する。一方、判定を満足していない場合には(S120-N)、ステップS140に移行する。
判定部28Bcは、ステップS130では、冷風が、送風機4に届いていないと判断し、処理を行う。そして、処理を終了する。その冷風は、室内機2が送り出した調和空気の気流である。
【0053】
判定部28Bcは、ステップS140では、冷風が、送風機4に届いていると判断し、処理を行う。そして、処理を終了する。その冷風は、室内機2が送り出した調和空気の気流である。
判定部28Bcは、ステップS150では、床温度αが、設定温度よりも大幅に(例えば2℃以上)温度が低いか否か判定する。判定を満足する場合には(S150-Y)、ステップS160に移行する。一方、判定を満足していない場合には(S150-N)、ステップS170に移行する。
【0054】
判定部28Bcは、ステップS160では、温風が、送風機4に届いていないと判断し、処理を行う。そして、処理を終了する。その温風は、室内機2が送り出した調和空気の気流である。
判定部28Bcは、ステップS140では、温風が、送風機4に届いていると判断し、処理を行う。そして、処理を終了する。その温風は、室内機2が送り出した調和空気の気流である。
【0055】
<送風方向決定部28Bd>
送風方向決定部28Bdは、判定部28Bcの判定結果に基づき、送風機4の送風方向を決定する。
本実施形態の送風方向決定部28Bdは、判定部28Bcの判定結果に基づき、上記調和空気が送り出した調和空気の気流が送風機4に届いていないと判定した場合、送風機4の送風の向きを、平面視で、調和空気が送り出した調和空気が届いている領域(気流到達区画)の方向に決定する。
【0056】
また、本実施形態の送風方向決定部28Bdは、判定部28Bcの判定結果に基づき、上記調和空気が送り出した調和空気が送風機4に届いると判定した場合、送風機4の送風の向きを、平面視で、温度乖離区画の方向に決定する。
ここで、気流到達区画を検知出来ない場合には、送風機4の風向調整を行わないか、送風機4の送風の向きを、平面視で、温度乖離区画の方向に決定する。
【0057】
送風方向決定部28Bdの処理例を、
図9を参照して説明する。なお、この処理は、予め設定した所定の周期(例えば5分毎)で繰り返し実行される。
【0058】
まず、送風方向決定部28Bdは、ステップS200で、判定部28Bcの判定結果に基づき、室内機2が送り出した調和空気の気流が送風機4に届いているか否かを判定する。届いていないと判定した場合には(S200-Y)、ステップS210に移行する。届いていると判定した場合には(S200-N)、ステップS270に移行する。
【0059】
送風方向決定部28Bdは、ステップS210では、床温度取得部28Baの取得情報に基づき、床を分割した複数の区画のうち、設定温度に一番近い区画を特定し、特定した区画を床温度エリアβとする。床温度エリアβは、気流到達区画に対応する。そして、ステップS220に移行する。
【0060】
ここで、上記説明では、設定温度に近い区画を、床温度エリアβ、つまり気流到達区画としているが、これに限定されない。空調の運転モードが冷房モードの場合、一番温度が低い区画を、調和空気の気流の到達エリアとして、床温度エリアβ、つまり気流到達区画に設定しも良い。
【0061】
また、空調の運転モードが暖房モードの場合、一番温度が高い区画を、調和空気の気流の到達エリアとして、床温度エリアβ、つまり気流到達区画に設定しても良い。ただし、暖房時には、暖かい空気は上方に溜まり易いため、床温度取得部28Baで天井側も複数の区画に分割して、各区画の温度を取得し、天井側の区画における一番温度が高い区画を求め、求めた区画の下方に対向配置された床側の区画を、床温度エリアβ、つまり気流到達区画に設定する。
【0062】
また、床温度エリアβ、つまり気流到達区画は、風向調整器23の状態から、室内機2から送り出される気流の向きを推定して、床温度エリアβ、つまり気流到達区画を設定しても良い。
【0063】
送風方向決定部28Bdは、ステップS220では、予め設定したX-Y座標における、設置エリアαを起点とした、床温度エリアβの方向(水平方向)を求め、求めた方向を方向XYとする。方向XYは、例えば基準となる方向に対する角度として求める。そして、ステップS230に移行する。
ステップS230では、室内機2の現在の空調運転が冷房運転か暖房運転か判定する。冷房運転の場合は(S230-Y)、ステップS240に移行する。暖房運転の場合には(S230-N)、ステップS250に移行する。
【0064】
送風方向決定部28Bdは、ステップS240では、送風機4のファンの上下方向の向きを斜め上若しくは斜め下方向に決定し、決定した方向を方向Zとする。そして、ステップS260に移行する。
送風方向決定部28Bdは、ステップS250では、送風機4のファンの上下方向の向きを斜め上方向に決定し、決定した方向を方向Zとする。そして、ステップS260に移行する。
【0065】
この処理例では、空調運転が冷房運転か暖房運転かによって、送風機4の上下方向(垂直方向)の風向も制御する場合を例示している。これは、冷房運転時には、送り出された調和空気が床側に溜まりやすく、暖房運転時は、送り出された調和空気が天井側に溜まり易いためである。
【0066】
送風方向決定部28Bdは、ステップS270では、床温度取得部28Baの取得情報に基づき、床面を分割した複数の区画のうち、設定温度と一番離れている床温度の区画を特定し、特定した区画を床温度エリアγとする。床温度エリアγは、温度乖離区画に対応する。そして、ステップS280に移行する。
【0067】
送風方向決定部28Bdは、ステップS280では、予め設定したX-Y座標における、設置エリアαを起点とした、床温度エリアγの方向(水平方向)を求め、求めた方向を方向XYとする。例えば、基準となる方向に対する角度として求める。そして、ステップS290に移行する。
送風方向決定部28Bdは、ステップS290では、送風機4の送風ファン41の上下方向の向きを中間方向に決定し、決定した方向を方向Zとする。そして、ステップS260に移行する。
【0068】
送風方向決定部28Bdは、ステップS260では、決定した方向XYと方向Zの情報を風向指示の指令として、送受信部44を通じて送風機制御部45に送信して、処理を終了する。
【0069】
<送風量決定部28Be>
送風量決定部28Beは、区画毎の床温度と上記室内機2の設定温度との温度差のうちの一番大きな温度差を最大乖離温度として取得し、その乖離温度に基づき送風機4の送風量を決定する。
【0070】
本実施形態の送風量決定部28Beは、例えば、温度乖離区画での温度差である最大乖離温度が大きい場合、乖離温度が小さい場合に比べて送風量を大きな値に設定する。
すなわち、最大乖離温度(温度差)に応じて、段階的若しくは連続的に送風量が大きくなるように設定する。
【0071】
ここで、送風量決定部28Beの処理例を、
図10を参照して説明する。なお、この処理は、予め設定した所定の周期(例えば5分毎)で繰り返し実行される。
まず、ステップS300では、複数の区画のうち、設定温度から一番離れた区画(温度乖離区画)である床温度エリアγでの、設定温度との温度差γを求める。
【0072】
次に、ステップS310では、送風機4のファン回転数として、下記(1)式に基づき、温度差γに比例した値として算出する。すなわち、送風機4のファン回転数を、温度乖離区画の乖離具合、すなわち温度ムラの度合に応じて設定する。ここで、温度差γは、室内空間Sの温度ムラの度合を表すパラメータである。
【0073】
ファン回転数 = c× 温度差γ +d ・・・(1)
ここで、c及びdは、係数である。
なお、(1)式では、送風ファン41のファン回転数の設定値と温度差γの値とが、線形の場合を例示しているが、非線形であってもよい。
【0074】
次に、ステップS320では、風量指示の指令を、送受信部44を通じて送風機制御部45に送信して、処理を終了する。
【0075】
(送風機制御部45)
送風機制御部45は、送風機4の送風ファン41の向きや送風量を調整するなど、送風機4を制御するための制御部である。送風機制御部45は、CPU及びメモリを備えたマイコンで構成される。
本実施形態の送風機制御部45は、
図11に示すように、ファン位置調整部45Aと、ファン風量調整部45Bとを備える。
【0076】
<ファン位置調整部45A>
ファン位置調整部45Aは、送風制御部28Bからの信号に基づき、送風ファン41の向きを調整する。
本実施形態のファン位置調整部45Aは、室内機側制御部28が送信した信号に基づき、送風方向決定部28Bdが決定した送風方向となるように、風向調整モータ42Bを駆動する。本実施形態では、送風ファン41の向きの水平方向、及び上下方向の角度を調整する。
【0077】
例えば、ファン位置調整部45Aは、送風ファン41の基準の向きに対する旋回角度を室内機側制御部28から取得して、当該旋回角度となるように、風向を調整する。
【0078】
<ファン風量調整部45B>
ファン風量調整部45Bは、送風制御部28Bからの信号に基づき、送風ファン41の風量を調整する。
ファン風量調整部45Bは、室内機側制御部28からの信号がない場合には、使用者が送風機4の入力部を操作することで設定された風量、又は送風機4用のリモコン(不図示)からの指示情報を取得することで設定された風量となるように、回転モータ41Bを駆動制御する。
【0079】
一方、ファン風量調整部45Bは、室内機側制御部28からの信号に基づき、風量の情報を取得すると、その取得した風量(モータ回転数)となるように、回転モータ41Bを駆動制御する。
【0080】
(動作その他)
室内空間Sの温度ムラを解消することを目的とする場合、送風機4は、室内機2から送り出された調和空気の気流が届く範囲に設置することが望ましい。しかし、使用者が送風機4を室内の適切な位置に設置するとは限らない。
使用者が、送風機4を、室内機2から送り出された調和空気の気流が届く範囲に設置していない場合、送風機4による室内空間Sの温度ムラ解消の効果を十分に発揮することが出来ないおそれがある。
【0081】
これに対し、本実施形態のシステムでは、送風機4の設置位置に応じて、送風機4の送風方向を調整することで、室内の空気をより効率よく循環させることが可能となる。この結果、本実施形態では、室内の温度ムラを解消することが可能となる。
【0082】
具体的には、本実施形態では、使用者が、室内機2からの気流が行き届かない場所に送風機4を置いてしまっても、送風機4の送風方向が、室内機2からの調和空気が届いている領域側に向くように自動調整される。これによって、本実施形態では、室内機2からの調和空気が届いている領域の空気が送風機4によって室内に拡散されて、室内空間Sの空気を効率よく循環させる。この結果、本実施形態では、温度ムラを解消することが出来る。
【0083】
また、本実施形態では、室内機2からの気流が行き届いている場所に送風機4が置かれている場合、送風機4の送風方向を、室内機2からの調和空気が届いていない領域側に向くように自動調整する。これによって、本実施形態では、室内機2からの調和空気の気流が届いている領域の空気が、送風機4によって室内に拡散されて、室内空間Sの空気を効率よく循環させる。この結果、本実施形態では、温度ムラを解消することが出来る。
【0084】
また、本実施形態では、空調運転が冷房運転か暖房運転かによって、送風機4からの送風の上下方向の向きも自動調整することで、より早期に温度ムラを解消することが出来る。
また、本実施形態では、送風機4の風量を、設定温度との温度差に基づき調整することで、より早期に温度ムラを解消することが出来る。
【0085】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)室内に配置された室内機から上記室内に調和空気を送り出す空気調和機と、上記室内に配置された送風機と、を備える空気調和システムであって、上記空気調和システムは、上記送風機の送風を制御するための送風制御部を備え、上記送風制御部は、上記室内機が送り出した調和空気が上記送風機に届いているか否かを判定する判定部と、上記判定部の判定結果に基づき、上記送風機の送風方向を決定する送風方向決定部と、を備える。
(2)上記送風制御部は、上記室内の床を複数の区画に分割し、上記区画毎の床温度を取得する床温度取得部と、上記送風機が上記複数の区画のどの区画に配置されているかの情報である送風機位置情報を取得する送風機位置取得部と、を有し、上記判定部は、上記床温度取得部の取得情報と、上記送風機位置取得部の取得情報と、上記室内機の設定温度とから、上記調和空気の気流が上記送風機に届いているか否かを判定する。
(3)上記送風方向決定部は、上記判定部の判定結果に基づき、上記室内機が送り出した調和空気が上記送風機に届いていないと判定した場合、上記送風機の送風の向きを、上記室内機が送り出した調和空気が届いている領域の方向に決定する。
(4)上記送風機に位置検出用のセンサを設け、上記送風機位置取得部は、上記センサからの信号によって、上記送風機位置情報を算出する。
(5)上記送風制御部は、上記区画毎の各床温度と上記室内機の設定温度との温度差のうちの一番大きな温度差を最大乖離温度として取得し、その最大乖離温度に基づき上記送風機の送風量を決定する送風量決定部を有し、上記送風量決定部は、乖離温度が大きい場合、乖離温度が小さい場合に比べて送風量を大きな値に設定する。
(6)上記判定部及び上記送風方向決定部は、上記室内機に設け、上記送風機のファンの向きを制御するファン位置制御部を、当該送風機に設け、更に、上記送風方向決定部が決定した送風方向の指令を上記ファン位置制御部に無線送信する送信部を、上記室内機に備える。
【符号の説明】
【0086】
1 空気調和機
2 室内機
3 室外機
4 送風機
5 リモコン
6 スマートリモコン
21 室内熱交換器
22 送風ファン
23 風向調整器
24 送受信部
24A 赤外線受光ユニット
24B 無線ユニット(送信部)
25 送風機位置検出センサ
26 表示器
27 サーミスタ
28 室内機側制御部
28A 室内機側空調制御部
28B 送風制御部
28Ba 床温度取得部
28Bb 送風機位置取得部
28Bc 判定部
28Bd 送風方向決定部
28Be 送風量決定部
29 室内温度センサ
41 送風ファン
41A 羽根部
41B 回転モータ
42 風向調整部
42A 回転機構
42B 風向調整モータ
43 送風機位置発信部
43 送風機位置発信部(位置検出用のセンサ)
44 送受信部
44A 赤外線受光ユニット
44B 無線ユニット
45 送風機制御部
45A ファン位置調整部
45B ファン風量調整部
S 室内空間