(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012129
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】アプセット溶接機の溶接準備方法と、その実施に直接使用するアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/02 20060101AFI20230118BHJP
B23K 11/24 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B23K11/02 330
B23K11/24 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115601
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】398069447
【氏名又は名称】株式会社キャダック
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】丹保 勝利
(57)【要約】
【課題】ワークWの弾性に起因して溶接部の接合強度にばらつきや不足が生じないようにする。
【解決手段】固定側の電極21に対して移動側の電極22を前後に駆動するサーボアンプ11付きのサーボモータ12と、移動側の電極22とサーボモータ12との間に介装するロードセル14とを設け、ロードセル14は、リセット信号S3 により出力値Vをゼロ点にリセット可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉ループ形せん断補強筋を製造する際のアプセット溶接機の溶接準備方法であって、ループ状のワークの両端面を弾発的に突き合わせて固定側、移動側の各電極の間にワークの両端部を挟むようにセットしてクランプし、サーボモータを介して移動側の電極を後退させてワークの両端面を分離させ、移動側の電極とサーボモータとの間に介装するロードセルの出力値をゼロ点にリセットすることを特徴とするアプセット溶接機の溶接準備方法。
【請求項2】
固定側の電極に対して移動側の電極を前後に直線的に駆動するサーボアンプ付きのサーボモータと、移動側の電極と前記サーボモータとの間に介装するロードセルとを備えてなり、前記ロードセルは、リセット信号により出力値をゼロ点にリセット可能であることを特徴とするアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置。
【請求項3】
前記サーボアンプは、溶接中のワークの溶接部の加圧力、押込量の各目標値が達成されるように前記サーボモータを介して移動側の電極を駆動制御することを特徴とする請求項2記載のアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置。
【請求項4】
前記サーボモータは、出力軸にボールねじ機構を連結し、前記ロードセルは、前記ボールねじ機構に連結することを特徴とする請求項2または請求項3記載のアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高品質の閉ループ形せん断補強筋(いわゆる溶接閉鎖形のフープ筋、スターラップ筋などを総称していう、以下同じ)を製造するために特に有益なアプセット溶接機の溶接準備方法と、その実施に直接使用するアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉ループ形せん断補強筋を製造するときは、まず、所定材質、所定サイズの異形棒鋼を所定の形状、サイズのループ状のワークWに成形する(
図6(A))。なお、このとき、ワークWの両端部W1 、W1 は、たとえば約20mm程度互いに重複させて成形する。つづいて、ワークWは、両端部W1 、W1 の両端面をワークWの弾性により弾発的に突き合わせた上(同図(B))、図示しないアプセット溶接機(突合せ抵抗溶接機)の固定側、移動側の各電極の間に両端部W1 、W1 を挟むようにセットしてクランプし(たとえば
図6(B)のクランプ位置C、C)、アプセット溶接機を作動させて両端部W1 、W1 の両端面を加圧通電しながら抵抗溶接し、同図(A)の両端部W1 、W1 の重複部分相当の膨出部WA1 を溶接部に有する所定形状の製品WAを作ることができる(同図(C))。
【0003】
なお、このようにしてワークWの両端部W1 、W1 を抵抗溶接するとき、加圧力、通電電流、通電加圧時間等の溶接パラメータや溶接パターンなどによって溶接部の接合強度が大きく影響されることが分かっている(たとえば特許文献1、2)。また、従来のアプセット溶接機において、移動側の電極は、空圧シリンダまたは油圧シリンダにより駆動されている(同)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-81389号公報
【特許文献2】特開2016-215268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、ワークWの両端部W1 、W1 を
図6(B)のように弾発的に突き合わせる際に、ワークWを構成する異形棒鋼の公称径が大きく、ワークWのサイズが小さいと、ワークWの弾性により両端面を押し付ける方向に作用する力が大きくなるため、両端面を接合する抵抗溶接の際に加圧力が過大となり、溶接部の接合強度が極端にばらついたり不足したりすることがあるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、アプセット溶接機の移動側の電極と駆動用のサーボモータとの間にロードセルを導入することによって、ワークの弾性に起因する溶接部の接合強度の問題を効果的に解決することができるアプセット溶接機の溶接準備方法と、その実施に直接使用するアプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、閉ループ形せん断補強筋を製造する際のアプセット溶接機の溶接準備方法であって、ループ状のワークの両端面を弾発的に突き合わせて固定側、移動側の各電極の間にワークの両端部を挟むようにセットしてクランプし、サーボモータを介して移動側の電極を後退させてワークの両端面を分離させ、移動側の電極とサーボモータとの間に介装するロードセルの出力値をゼロ点にリセットすることをその要旨とする。
【0008】
請求項2の発明の構成は、固定側の電極に対して移動側の電極を前後に直線的に駆動するサーボアンプ付きのサーボモータと、移動側の電極とサーボモータとの間に介装するロードセルとを備えてなり、ロードセルは、リセット信号により出力値をゼロ点にリセット可能であることをその要旨とする。
【0009】
なお、サーボアンプは、溶接中のワークの溶接部の加圧力、押込量の各目標値が達成されるようにサーボモータを介して移動側の電極を駆動制御することができる。
【0010】
また、サーボモータは、出力軸にボールねじ機構を連結し、ロードセルは、ボールねじ機構に連結することができる。
【発明の効果】
【0011】
かかる請求項1の発明の構成によるときは、固定側、移動側の電極にワークをセットしてクランプし、サーボモータを介して移動側の電極を後退させてワークの両端面を分離させると、ロードセルには、ワークの弾性による引張力が負荷される。そこで、このときのロードセルの出力値をゼロ点にリセットすれば、リセット時のワークの弾性相当分だけロードセルの入出力特性をシフトすることができる。
【0012】
一方、その後の溶接工程において、サーボモータを介して移動側の電極を前進させてワークの両端面を閉じると、ワークの両端面には、ワークの弾性による圧縮力と、サーボモータの駆動力に基づく引張力または圧縮力とのベクトル和に等しい力が負荷され、ロードセルは、サーボモータの駆動力に基づく力だけを検出する。ただし、ワークの弾性による圧縮力は、両端面を分離させた時にロードセルに負荷されるワークの弾性による引張力と同大である。そこで、ロードセルは、入出力特性がワークの弾性相当分だけシフトされていることにより、ワークの弾性による圧縮力を反映して、ワークの両端面すなわち溶接部に負荷される力相当の出力信号を出力することができ、サーボモータは、ロードセルの出力値に基づいて移動側の電極を駆動制御することにより、ワークの弾性による圧縮力を含む所定の加圧力相当の力をワークの溶接部に正しく負荷させることができる。
【0013】
なお、ロードセルの出力値をリセットする際、ワークの両端面は、機械的に離れている限り必要最少の隙間に開けばよく、実用的には、たとえば0.5~1.5mm程度の微少隙間に分離させれば十分である。また、ロードセルのリセット時のワークの弾性による引張力は、それを数値的に読み取って記憶したりする必要がなく、それがロードセルに負荷されている状態でロードセルの出力値をゼロ点にリセットし、ロードセルの入出力特性をワークの弾性相当分だけシフトさせるだけである。そこで、ロードセル自体としては、リセット時のワークの弾性相当分を入出力特性に反映させることができればよく、任意の形式が使用可能である。
【0014】
請求項2の発明の構成によるときは、サーボアンプ付きのサーボモータは、移動側の電極を前後に駆動することにより、固定側、可動側の各電極にクランプするワークを押し方向、引き方向の双方向に駆動制御することができ、ロードセルは、移動側の電極とサーボモータとの間に作用する力を検出することができる。そこで、ロードセルは、サーボモータを介してワークの両端面を分離させたときに外部からのリセット信号により出力値をゼロ点にリセットさせ、ワークの弾性相当分だけ入出力特性をシフトさせて請求項1の発明を円滑に実施することができる。
【0015】
サーボモータのサーボアンプは、たとえばロードセルの出力値、サーボモータの駆動量を入力して、外部から与えられる溶接中のワークの溶接部の加圧力、押込量の各目標値が達成されるように、サーボモータによる移動側の電極の駆動制御動作を実行する。ただし、サーボモータの駆動量は、たとえばサーボモータに内蔵のエンコーダを介して検出してもよく、サーボモータの制御対象としての移動側の電極の移動ストロークを検知する外付けセンサを介して検出してもよい。また、押込量とは、アプセット溶接におけるアプセット代またはアプセット寄り代(JIS Z 3001)をいう。
【0016】
サーボモータは、出力軸に連結するボールねじ機構を介して回転運動を直線運動に変換し、移動側の電極を直線的に駆動する形式が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0019】
アプセット溶接機における移動側の電極の駆動装置は、サーボアンプ11付きのサーボモータ12と、ロードセル14とを備えてなる(
図1、
図2)。
【0020】
アプセット溶接機は、固定側の電極21、移動側の電極22を有し、固定側、移動側の電極21、22は、それぞれ共通のベースフレーム23上の固定架台21a、移動架台22a上に積載されている。固定側、移動側の電極21、22には、それぞれクランプ用の可動電極21b、22bが付設されており、固定架台21aは、ベースフレーム23上の台座21c上に固定され、移動架台22aは、ベースフレーム23上の台座22c上に直線状のガイド部材22dを介して前後動自在に搭載されている(
図1、
図2の各矢印K方向)。固定側、移動側の電極21、22は、それぞれ共通の電流調整器24を介して溶接電源25に接続されている。
【0021】
サーボモータ12の出力軸には、ボールねじ機構13が連結されており、ロードセル14は、移動架台22a、ボールねじ機構13を介し、移動側の電極22とサーボモータ12との間に介装されている。サーボモータ12は、ブラケット12aを介してベースフレーム23上に積載されている。また、ボールねじ機構13は、ボールねじ軸13a、ねじ部材13bを組み合わせ、ボールねじ軸13aの一端は、タイミングベルト、ギヤ、チェーンなどの伝動部材13cを介してサーボモータ12の出力軸に連結され、ねじ部材13bは、ロードセル14に連結されている。なお、ボールねじ軸13aは、サーボモータ12の出力軸に直結してもよい。
【0022】
サーボモータ12用のサーボアンプ11には、制御ユニット30からの目標信号S1 が入力されている。また、制御ユニット30は、電流調整器24、ロードセル14に対してそれぞれ指令信号S2 、リセット信号S3 を出力することができ、ロードセル14は、サーボアンプ11に出力信号S4 を出力している。制御ユニット30は、クランプ用の可動電極21b、22b用の図示しない油圧シリンダに動作信号を送出し、可動電極21b、22bを介して固定側、移動側の電極21、22に所定のループ状のワークWをクランプすることができる。また、制御ユニット30は、電流調整器24に指令信号S2 を送出することにより、固定側、移動側の電極21、22間のワークWの溶接部に所定の溶接用の通電電流Iを通電させることができる。
【0023】
一方、サーボモータ12は、ボールねじ機構13、ロードセル14、移動架台22aを介して移動側の電極22を前後に駆動してワークWに圧縮力または引張力を加え、ロードセル14は、サーボモータ12の駆動力に基づく力Fを検出し、出力値Vの出力信号S4 としてサーボアンプ11に出力する。なお、サーボアンプ11には、サーボモータ12に内蔵の図示しないエンコーダから、サーボモータ12の駆動量がフィードバックされている。また、サーボアンプ11には、制御ユニット30からの目標信号S1 として、ワークWの溶接部に加えるべき加圧力Pの目標値Ps 、ワークWの溶接部に発生させるべき押込量Aの目標値As が入力されており、サーボアンプ11は、加圧力P、押込量Aの各目標値Ps 、As が達成されるように、サーボモータ12を介して移動側の電極22を駆動制御することができる。
【0024】
ただし、制御ユニット30は、ワークWの断面積により加圧力Pの目標値Ps をワークWの溶接部に負荷される圧縮力に換算し、サーボモータ12から移動側の電極22に至る駆動系の仕様に基づき、押込量Aの目標値As をサーボモータ12の駆動量に換算して、サーボアンプ11に出力するものとする。また、ロードセル14は、制御ユニット30からのリセット信号S3 により、現に検出中の力Fに拘らず、出力信号S4 の出力値Vをゼロ点にリセットする。
【0025】
アプセット溶接機により閉ループ形せん断補強筋を製造する際の動作手順は、たとえば
図3のフローチャートとおりである。
【0026】
まず、
図6(A)のループ状のワークWを用意し、ワークWの両端部W1 、W1 の両端面を弾発的に突き合わせて(同図(B))、固定側、移動側の電極21、22にセットし、両端部W1 、W1 を挟むようにしてワークWをクランプする(同図(B)のクランプ位置C、C、
図3のステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。
【0027】
その後、サーボモータ12を介して移動側の電極22を後退させてワークWに引き方向の力を加え、ワークWの両端面を開いて分離させる(2)。このとき、制御ユニット30は、目標信号S1 の押込量Aの目標値As として、たとえばAs =-1mmをサーボモータ12の駆動量に換算してサーボアンプ11に出力すればよい。また、ロードセル14は、ワークWの両端面が分離することにより、ワークWの弾性による引張力F=Fd <0を検出し(
図4の直線(1))、出力信号S4 として出力値V=Vd <0を出力することができる。ただし、
図4の横軸、縦軸は、それぞれロードセル14が検出する力F、ロードセル14からの出力信号S4 の出力値Vを示し、直線(1)は、原点を通るロードセル14の正規の入出力特性である。また、
図4の横軸の正方向、負方向は、それぞれ力Fの圧縮方向、引張方向である。
【0028】
次に、制御ユニット30は、リセット信号S3 をロードセル14に送出してロードセル14の出力値Vをゼロ点にリセットする(3)。すなわち、ロードセル14の入出力特性は、実質的に
図4の直線(1)から直線(2)にシフトし、ロードセル14は、引張力F=Fd <0を負荷されながら出力値V=0にリセットされる。なお、
図4において、直線(2)は、引張力F=Fd に対する出力値V=Vd 相当だけ直線(1)を上方に平行移動させている。そこで、その後のロードセル14は、
図4の直線(2)の入出力特性に基づいて動作し、
図3のステップ(1)~(3)は、アプセット溶接機の溶接準備方法に該当している。
【0029】
つづいて、制御ユニット30は、サーボモータ12を介して移動側の電極22をゆっくり前進させてワークWの両端面を閉じるとともに、サーボモータ12の駆動力を調節して所定の加圧力P1 相当の圧縮力F1 をワークの両端面に負荷させる((4)、
図4)。ただし、このときの圧縮力F1 は、ワークWの弾性による圧縮力|Fd |より小さく、したがって、サーボモータ12は、その駆動力に基づく引張力F1a=F1 -|Fd |<0をワークWに与える必要がある。一方、ロードセル14は、
図4の直線(2)の入出力特性であるから、引張力F=F1aに対する出力値V=V1 であり、出力値V=V1 は、直線(1)の正規の入出力特性では、圧縮力F1 =F1a+|Fd |に対応している。すなわち、サーボアンプ11は、ロードセル14からの出力信号S4 の出力値V=V1 となるようにサーボモータ12の駆動力を調節して引張力F1aを実現し、ワークWの両端面に所定の圧縮力F1 を負荷させて加圧力Pの目標値Ps =P1 を達成することができる。
【0030】
なお、ステップ(4)における制御動作を要約すると、次のとおりである。まず、
図4の直線(1)の正規の入出力特性に基づいて必要な圧縮力F1 に対応するロードセル14の出力値V=V1 を見出し、
図4の直線(2)の入出力特性となっているロードセル14の出力値V=V1 となるようにサーボモータ12の駆動力を調節すると、サーボモータ12による引張力F1a=F1 -|Fd |<0を実現して目的を達成することができる。
【0031】
その後、制御ユニット30は、電流調整器24に指令信号S2 を送出してワークWの両端面の溶接部に所定の通電電流I=I1 を通電させて一次溶接を開始するとともに(5)、目標信号S1 の押込量Aの目標値As =A1 が達成されるのを待つ(6)。所定の押込量A=A1 が達成されたら(6)、通電電流I=I1 を停止するとともに、サーボモータ12を介して、ワークWの溶接部に加圧力P=Ph1相当の圧縮力Fh1≒0を加えながら所定時間の一次ホールド動作を実行する(7)。
【0032】
以下同様にして、制御ユニット30は、別の加圧力P2 相当の圧縮力F2 >|Fd |をワークWの溶接部に負荷させる((8)、
図4)。このとき、サーボモータ12の駆動力に基づく圧縮力F2a=F2 -|Fd |>0は、ロードセル14の出力値V=V2 に対応しており、ステップ(8)における制御動作は、ステップ(4)における制御動作と実質的に同一である。つづいて、溶接用の通電電流I=I2 として二次溶接を開始し(9)、所定の押込量A=A2 となるのを待ち(10)、別の加圧力P=Ph2相当の圧縮力Fh2<F2 をワークWの溶接部に加えながら所定時間の二次ホールド動作を実行し(11)、可動電極21b、22bを開いてワークWのクランプを開放して(12)、
図6(C)の製品WAを製造することができる。その後、移動側の電極22を原点に復帰させて次のワークWのセットに備える(13)。
【0033】
図3の一連の処理手順における具体的な動作パラメータの一例を
図5に示す。ただし、
図5の「準備段階」の列は、
図3のステップ(1)~(3)に対応し、以下、「一次溶接」、「一次ホールド」、「二次溶接」、「二次ホールド」の列は、それぞれステップ(4)~(6)、(7)、(8)~(10)、(11)に対応する。また、「一次溶接」、「二次溶接」の所要時間は、それぞれ約10秒、1~2秒の程度であった。
【0034】
なお、
図5の「準備段階」の押込量A=-20mm相当は、
図6(A)のワークWの両端部W1 、W1 の重複部分の長さに対応しており、加圧力P=290kg/cm
2 は、
図6(B)のワークWの両端面に作用するワークWの弾性による圧縮力|Fd |に対応している。また、「一次溶接」の加圧力P=273kg/cm
2 =P1 は、一次溶接の際にワークWの両端面に負荷させる圧縮力F1 に対応しており、「一次ホールド」、「二次溶接」、「二次ホールド」の加圧力P=14、1488、1190kg/cm
2 =Ph1、P2 、Ph2は、それぞれ一次ホールド、二次溶接、二次ホールドの際にワークWの溶接部に負荷させる圧縮力Fh1≒0、F2 >|Fd |、Fh2<F2 に対応している。ただし、「一次ホールド」、「二次ホールド」は、それぞれワークWの溶接部の半溶融組織の安定化、冷却化を目的としているが、「二次ホールド」は、必ずしも必須ではない。
【0035】
図3の処理手順、
図5の動作パラメータを適用した製品WAは、溶接部の接合強度が母材以上に強力であり、ばらつきも十分小さく、安定していることが確認された。
【0036】
以上の説明において、ロードセル14は、圧縮力、引張力の双方を検出するに代えて、圧縮力のみを検出してもよい。ただし、このときのロードセル14は、ワークWの両端面を分離させて出力値をゼロ点にリセットする際に、ワークWの種別ごとにあらかじめ設定する一定値相当分だけ入出力特性をシフトさせるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、ワークの弾性による圧縮力がばらついても、溶接部の接合強度がばらついたり不足したりすることがなく、閉ループ形せん断補強筋を製造するに際し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
W…ワーク
P…加圧力
A…押込量
Ps 、As …目標値
V…出力値
S3 …リセット信号
11…サーボアンプ
12…サーボモータ
13…ボールねじ機構
14…ロードセル
21、22…電極
特許出願人 株式会社 キャダック