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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121301
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】水槽または人工干潟の管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20170101AFI20230824BHJP
【FI】
A01K61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024561
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 基暉
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104FA00
2B104FA01
2B104FA07
2B104FA13
(57)【要約】
【課題】水棲生物を飼育する水槽または人工干潟において、水槽または人工干潟の環境状態の異常と水棲生物の状態の異常とを早期の段階で適切に判定して警報を出力することで、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる、水槽または人工干潟の管理システムを提供する。
【解決手段】水槽または人工干潟を撮像する撮像装置55Bと、撮像した画像に基づいて水棲生物の状態を判定する管理装置P5とを有する。管理装置は、水槽内の環境表面あるいは人工干潟の環境表面を撮像した環境表面画像を取得する環境表面画像取得部P5Aと、環境表面画像から水棲生物を抽出して環境表面の広さに対する水棲生物の個体数である全域個体密度を求める個体密度測定部P5Bと、全域個体密度が許容範囲を逸脱している場合、水棲生物、あるいは水槽または人工干潟の環境、に異常が生じていると判定して警報を出力する異常判定部P5Cとを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水棲生物を飼育する水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記管理システムは、
前記水槽または前記人工干潟を上方から撮像する撮像装置と、
前記撮像装置にて撮像した画像に基づいて前記水槽内または前記人工干潟内の前記水棲生物の状態を判定する管理装置と、
を有し、
前記管理装置は、
前記撮像装置を用いて、前記水槽内の水面である環境表面を撮像して前記水槽内の水面近傍の画像である環境表面画像を取得する、あるいは前記人工干潟の湿泥表面である環境表面を撮像して前記人工干潟の湿泥表面の画像である環境表面画像を取得する、環境表面画像取得部と、
取得した前記環境表面画像から前記水棲生物を抽出し、前記環境表面の広さに対する前記水棲生物の個体数である全域個体密度を求める、個体密度測定部と、
求めた前記全域個体密度が、予め設定した全域個体密度許容範囲を逸脱している場合に、前記水棲生物に異常が生じている、あるいは前記水槽または前記人工干潟の環境に異常が生じている、と判定して警報を出力する、異常判定部と、
を有する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記全域個体密度許容範囲は、前記水槽または前記人工干潟にて前記水棲生物を実際に飼育した結果に基づいて設定されている、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽または前記人工干潟には、自然環境を再現する環境維持システムが設けられており、
前記環境維持システムは、
前記水槽または前記人工干潟への自然の日光を疑似した疑似日光の強度を時刻に応じて変化させて照射する疑似日光調整装置と、
前記疑似日光調整装置による日照状態を検出する日照状態検出装置と、
前記水槽または前記人工干潟の自然の温度を疑似するように時刻に応じて温度を変化させる温度調整装置と、
前記温度調整装置による温度状態を検出する温度状態検出装置と、
前記水槽または前記人工干潟の自然の溶存酸素を疑似するように時刻に応じて溶存酸素濃度を変化させる溶存酸素濃度調整装置と、
前記溶存酸素濃度調整装置による溶存酸素濃度状態を検出する溶存酸素濃度状態検出装置と、
を含んでおり、
前記管理装置は、
前記疑似日光調整装置からの前記疑似日光による日照状態である日照環境と、前記温度調整装置にて調整した温度状態である温度環境と、前記溶存酸素濃度調整装置にて調整した溶存酸素濃度状態である溶存酸素濃度環境が、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように制御する自然環境維持部を有し、当該自然環境維持部にて自然環境を疑似した疑似自然環境を維持しており、
前記全域個体密度許容範囲は、前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じたそれぞれの許容範囲内に収まっている状態の、前記水槽または前記人工干潟にて前記水棲生物を実際に飼育した結果に基づいて設定されている、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記管理装置は、
前記異常判定部にて、前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じたそれぞれの許容範囲内に収まっているにもかかわらず、前記全域個体密度が前記全域個体密度許容範囲を逸脱していると判定した場合は、前記水棲生物に異常が生じていると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽の前記環境表面または前記人工干潟の前記環境表面は、仮想的に複数の領域に分割されており、
前記疑似日光調整装置と前記日照状態検出装置は、すべての前記領域に対して1つ、あるいは、それぞれの前記領域に設けられており、
前記温度調整装置と前記温度状態検出装置、及び、前記溶存酸素濃度調整装置と前記溶存酸素濃度状態検出装置は、それぞれの前記領域に設けられており、
前記管理装置は、
前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように、それぞれの前記領域に対応する前記疑似日光調整装置と、前記温度調整装置と、前記溶存酸素濃度調整装置と、を制御する前記自然環境維持部を有し、
前記個体密度測定部にて、前記全域個体密度を求めるとともに、それぞれの前記領域内の前記個体数から、それぞれの前記領域の広さに対するそれぞれの前記領域内の前記個体数である領域毎個体密度を、それぞれの前記領域に対応させて求め、
前記異常判定部にて、前記全域個体密度が前記全域個体密度許容範囲内であるにもかかわらず、予め設定した領域毎個体密度許容範囲を逸脱している前記領域の有無に基づいて前記水棲生物が集まっている集団が発生している前記領域がある場合、前記水槽または前記人工干潟のいずれかの前記領域の環境に異常が生じていると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽または前記人工干潟には、
前記環境表面画像取得部にて前記環境表面画像を取得する際に、前記撮像装置の光軸である撮像装置光軸とは平行にならない光軸である照明光軸の撮像用照明を照射するように前記水槽または前記人工干潟の斜め上方に撮像用照明装置が設けられており、
前記管理装置は、
前記環境表面画像を取得する際、前記撮像用照明装置を用いて前記撮像用照明を照射して、前記環境表面または前記環境表面の近傍の前記水棲生物に影あるいは暗部を発生させ、前記環境表面画像内の前記影または前記暗部に基づいて前記水棲生物を抽出する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水棲生物は、所定の特徴を有する運動である特徴的運動を、所定の頻度で実行する習性を有しており、
前記管理装置は、
前記環境表面画像を取得する際、前記撮像用照明装置を用いて前記撮像用照明を照射して、所定の観測期間の間、所定時間間隔で連続する複数の前記環境表面画像を取得、あるいは、所定の観測期間の間、前記環境表面を撮像した動画である環境表面動画を取得し、
取得した複数の前記環境表面画像、あるいは、前記環境表面動画に基づいて抽出した前記水棲生物の輝度の変化に基づいて前記水棲生物の習性に基づいた前記特徴的運動の頻度である特徴的運動頻度を算出する特徴的運動頻度算出部を有し、
前記異常判定部にて、算出した前記特徴的運動頻度が許容頻度範囲を逸脱している場合は、前記水槽または前記人工干潟の環境に異常が生じていると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽の前記環境表面における第1所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第1所定位置には、前記水棲生物を模したダミー体が配置されており、
前記管理装置は、
前記環境表面画像内の前記第1所定位置において前記ダミー体を抽出できない場合には、前記撮像用照明装置と前記撮像装置を含む観測システムの故障であると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項9】
請求項7に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽の前記環境表面における第1所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第1所定位置には、前記水棲生物の大きさ及び輝度を模したダミー体が配置されており、
前記管理装置は、
前記環境表面画像内の前記第1所定位置において前記ダミー体の輝度を所定輝度範囲内として検出できない場合には、前記撮像用照明装置と前記撮像装置を含む観測システムの故障であると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【請求項10】
請求項5に記載の水槽または人工干潟の管理システムであって、
前記水槽の前記環境表面における第2所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第2所定位置には、前記水棲生物を集めることが可能な集合装置が設けられており、
前記管理装置は、
前記集合装置を用いて前記水棲生物を集合させた集合時の場合と、前記集合装置を用いずに前記水棲生物を集合させなかった非集合時の場合とのそれぞれの場合にて、前記第2所定位置の近傍の領域に対応するそれぞれの前記領域毎個体密度を求め、
前記異常判定部にて、前記第2所定位置の近傍の領域における前記集合時の場合の前記領域毎個体密度と、前記第2所定位置の近傍の領域における前記非集合時の場合の前記領域毎個体密度との偏差が所定閾値未満である場合には、前記集合装置の故障であると判定して警報を出力する、
水槽または人工干潟の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、水棲生物を飼育する水槽または人工干潟の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、水棲生物が生息する豊かな海岸などの再生や、水棲生物の養殖などを目的として、水棲生物を飼育する水槽や人工干潟の研究・開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1には、自然本来の食物連鎖を持続的に維持する機能を備えた人工干潟及び人工干潟における生物生息環境の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4566145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された、人工干潟及び人工干潟における生物生息環境の形成方法は、人工干潟の形成方法や人工干潟の構造が開示されているが、人工干潟の環境状態(日照、温度、溶存酸素濃度など)の異常や、人工干潟で飼育している水棲生物の状態の異常(病気や衰弱など)を把握する手段に関して記載されていない。このため、人工干潟で水棲生物を持続的に飼育することが困難である。環境状態の異常や、水棲生物の状態の異常が発生した場合、発生の初期の頃は些細な異常で見落としてしまいがちであるが、早期に発見して速やかに対処しなければ、気付いたときには手遅れで、飼育している水棲生物が死滅してしまう可能性がある。
【0006】
上記問題点を解決するための、本明細書が開示する技術の課題は、水棲生物を飼育する水槽または人工干潟において、水槽または人工干潟の環境状態の異常と水棲生物の状態の異常とを早期の段階で適切に判定して警報を出力することで、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる、水槽または人工干潟の管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本明細書に開示の水槽または人工干潟の管理システムは、次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、水棲生物を飼育する水槽または人工干潟の管理システムである。前記管理システムは、前記水槽または前記人工干潟を上方から撮像する撮像装置と、前記撮像装置にて撮像した画像に基づいて前記水槽内または前記人工干潟内の前記水棲生物の状態を判定する管理装置と、を有する。そして前記管理装置は、前記撮像装置を用いて、前記水槽内の水面である環境表面を撮像して前記水槽内の水面近傍の画像である環境表面画像を取得する、あるいは前記人工干潟の湿泥表面である環境表面を撮像して前記人工干潟の湿泥表面の画像である環境表面画像を取得する、環境表面画像取得部と、取得した前記環境表面画像から前記水棲生物を抽出し、前記環境表面の広さに対する前記水棲生物の個体数である全域個体密度を求める、個体密度測定部と、求めた前記全域個体密度が、予め設定した全域個体密度許容範囲を逸脱している場合に、前記水棲生物に異常が生じている、あるいは前記水槽または前記人工干潟の環境に異常が生じている、と判定して警報を出力する、異常判定部と、を有する。
【0009】
上記第1の手段によれば、環境表面の広さに対する水棲生物の個体数である全域個体密度が、全域個体密度許容範囲を逸脱している場合に、水棲生物に異常が生じている、あるいは水槽または人工干潟の環境に異常が生じている、と判定して警報を出力する。例えば水槽の場合、水槽内の溶存酸素濃度が低い場合には水槽内の水棲生物は水面に集まるし、人工干潟の場合、人工干潟の温度が低い場合には日光を求めて水棲生物は湿泥表面に集まる。また水棲生物が弱っている場合には、水棲生物は環境表面に現れない場合が多い。このように、水槽または人工干潟の環境状態の異常、または水棲生物の状態の異常を早期の段階で適切に判定して警報を出力することで、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる。
【0010】
第2の手段は、上記第1の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記全域個体密度許容範囲は、前記水槽または前記人工干潟にて前記水棲生物を実際に飼育した結果に基づいて設定されている。
【0011】
上記第2の手段によれば、全域固定密度許容範囲を適切な値に設定することができるので、水槽または人工干潟の環境状態の異常、または水棲生物の状態の異常の判定の精度を向上させ、より早期の段階で適切に判定して警報を出力することができる。
【0012】
第3の手段は、上記第2の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽または前記人工干潟には、自然環境を再現する環境維持システムが設けられている。そして前記環境維持システムは、前記水槽または前記人工干潟への自然の日光を疑似した疑似日光の強度を時刻に応じて変化させて照射する疑似日光調整装置と、前記疑似日光調整装置による日照状態を検出する日照状態検出装置と、前記水槽または前記人工干潟の自然の温度を疑似するように時刻に応じて温度を変化させる温度調整装置と、前記温度調整装置による温度状態を検出する温度状態検出装置と、前記水槽または前記人工干潟の自然の溶存酸素を疑似するように時刻に応じて溶存酸素濃度を変化させる溶存酸素濃度調整装置と、前記溶存酸素濃度調整装置による溶存酸素濃度状態を検出する溶存酸素濃度状態検出装置と、を含んでいる。そして前記管理装置は、前記疑似日光調整装置からの前記疑似日光による日照状態である日照環境と、前記温度調整装置にて調整した温度状態である温度環境と、前記溶存酸素濃度調整装置にて調整した溶存酸素濃度状態である溶存酸素濃度環境が、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように制御する自然環境維持部を有し、当該自然環境維持部にて自然環境を疑似した疑似自然環境を維持しており、前記全域個体密度許容範囲は、前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じたそれぞれの許容範囲内に収まっている状態の、前記水槽または前記人工干潟にて前記水棲生物を実際に飼育した結果に基づいて設定されている。
【0013】
上記第3の手段によれば、環境維持システムにて、日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境を、時刻に応じて変化させて、自然環境をより忠実に再現することができる。そして、環境維持システムにて再現された環境で実際に飼育して全域個体密度許容範囲を設定することで、全域個体密度許容範囲をさらに適切な値に設定することができる。これにより、水槽または人工干潟の環境状態の異常、または水棲生物の状態の異常の判定の精度を、さらに向上させることができる。
【0014】
第4の手段は、上記第3の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記管理装置は、前記異常判定部にて、前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じたそれぞれの許容範囲内に収まっているにもかかわらず、前記全域個体密度が前記全域個体密度許容範囲を逸脱していると判定した場合は、前記水棲生物に異常が生じていると判定して警報を出力する。
【0015】
上記第4の手段によれば、環境維持システムの異常ではなく、水棲生物の異常であることを、適切に判定して警報を出力することができる。これにより、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる。
【0016】
第5の手段は、上記第3の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽の前記環境表面または前記人工干潟の前記環境表面は、仮想的に複数の領域に分割されており、前記疑似日光調整装置と前記日照状態検出装置は、すべての前記領域に対して1つ、あるいは、それぞれの前記領域に設けられており、前記温度調整装置と前記温度状態検出装置、及び、前記溶存酸素濃度調整装置と前記溶存酸素濃度状態検出装置は、それぞれの前記領域に設けられている。そして前記管理装置は、前記日照環境と前記温度環境と前記溶存酸素濃度環境が、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように、それぞれの前記領域に対応する前記疑似日光調整装置と、前記温度調整装置と、前記溶存酸素濃度調整装置と、を制御する前記自然環境維持部を有し、前記個体密度測定部にて、前記全域個体密度を求めるとともに、それぞれの前記領域内の前記個体数から、それぞれの前記領域の広さに対するそれぞれの前記領域内の前記個体数である領域毎個体密度を、それぞれの前記領域に対応させて求め、前記異常判定部にて、前記全域個体密度が前記全域個体密度許容範囲内であるにもかかわらず、予め設定した領域毎個体密度許容範囲を逸脱している前記領域の有無に基づいて前記水棲生物が集まっている集団が発生している前記領域がある場合、前記水槽または前記人工干潟のいずれかの前記領域の環境に異常が生じていると判定して警報を出力する。
【0017】
水槽または人工干潟の広さが比較的大きなサイズ(例えば縦×横の長さが25[m]×25[m]など)の場合、複数の領域に分割し、それぞれの領域毎に環境維持システムを設けると便利である。そして上記第5の手段によれば、特定の領域に水棲生物が集まっている「集団」の発生を判定することで、いずれかの領域の環境に異常が発生していることを、早期の段階で適切に判定して警報を出力することができる。
【0018】
第6の手段は、上記第3の手段~第5の手段のいずれか1つに係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽または前記人工干潟には、前記環境表面画像取得部にて前記環境表面画像を取得する際に、前記撮像装置の光軸である撮像装置光軸とは平行にならない光軸である照明光軸の撮像用照明を照射するように前記水槽または前記人工干潟の斜め上方に撮像用照明装置が設けられている。そして前記管理装置は、前記環境表面画像を取得する際、前記撮像用照明装置を用いて前記撮像用照明を照射して、前記環境表面または前記環境表面の近傍の前記水棲生物に影あるいは暗部を発生させ、前記環境表面画像内の前記影または前記暗部に基づいて前記水棲生物を抽出する。
【0019】
上記第6の手段によれば、環境表面の色と水棲生物の色が近似しており区別が困難な場合であっても、水棲生物の「影」または「暗部」を利用して、環境表面画像から水棲生物を適切に抽出することができる。
【0020】
第7の手段は、上記第6の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水棲生物は、所定の特徴を有する運動である特徴的運動を、所定の頻度で実行する習性を有している。そして前記管理装置は、前記環境表面画像を取得する際、前記撮像用照明装置を用いて前記撮像用照明を照射して、所定の観測期間の間、所定時間間隔で連続する複数の前記環境表面画像を取得、あるいは、所定の観測期間の間、前記環境表面を撮像した動画である環境表面動画を取得し、取得した複数の前記環境表面画像、あるいは、前記環境表面動画に基づいて抽出した前記水棲生物の輝度の変化に基づいて前記水棲生物の習性に基づいた前記特徴的運動の頻度である特徴的運動頻度を算出する特徴的運動頻度算出部を有し、前記異常判定部にて、算出した前記特徴的運動頻度が許容頻度範囲を逸脱している場合は、前記水槽または前記人工干潟の環境に異常が生じていると判定して警報を出力する。
【0021】
上記第7の手段によれば、輝度の変化を利用して水棲生物の習性に基づいた特徴的運動(例えば、体を反転させて、一瞬、輝く腹部を見せる運動)の頻度を求めることで、環境の異常の発生(例えば、人工干潟の表面の水分不足(特徴的運動の頻度が減る原因)など)を適切に判定して警報を出力することができる。
【0022】
第8の手段は、上記第6の手段または第7の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽の前記環境表面における第1所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第1所定位置には、前記水棲生物を模したダミー体が配置されている。そして前記管理装置は、前記環境表面画像内の前記第1所定位置において前記ダミー体を抽出できない場合には、前記撮像用照明装置と前記撮像装置を含む観測システムの故障であると判定して警報を出力する。
【0023】
上記第8の手段によれば、撮像用照明装置と撮像装置を含む観測システムの故障を適切に判定して警報を出力することができる。また、誤判定を防止できる。
【0024】
第9の手段は、上記第7の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽の前記環境表面における第1所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第1所定位置には、前記水棲生物の大きさ及び輝度を模したダミー体が配置されている。そして前記管理装置は、前記環境表面画像内の前記第1所定位置において前記ダミー体の輝度を所定輝度範囲内として検出できない場合には、前記撮像用照明装置と前記撮像装置を含む観測システムの故障であると判定して警報を出力する。
【0025】
上記第9の手段によれば、撮像用照明装置と撮像装置を含む観測システムの故障を適切に判定して警報を出力することができる。また、誤判定を防止できる。
【0026】
第10の手段は、上記第5の手段に係る水槽または人工干潟の管理システムであって、前記水槽の前記環境表面における第2所定位置、または前記人工干潟の前記環境表面における第2所定位置には、前記水棲生物を集めることが可能な集合装置が設けられている。そして前記管理装置は、前記集合装置を用いて前記水棲生物を集合させた集合時の場合と、前記集合装置を用いずに前記水棲生物を集合させなかった非集合時の場合とのそれぞれの場合にて、前記第2所定位置の近傍の領域に対応するそれぞれの前記領域毎個体密度を求め、前記異常判定部にて、前記第2所定位置の近傍の領域における前記集合時の場合の前記領域毎個体密度と、前記第2所定位置の近傍の領域における前記非集合時の場合の前記領域毎個体密度との偏差が所定閾値未満である場合には、前記集合装置の故障であると判定して警報を出力する。
【0027】
上記第10の手段によれば、例えば集合装置としてスピーカを用い、所定の音をスピーカから出力した状態で給餌する、などの学習をさせている場合、集合装置の故障を、適切に判定して警報を出力することができる。
【発明の効果】
【0028】
本明細書に開示の水槽または人工干潟の管理システムは、上述の手段をとることにより、水槽または人工干潟の環境状態の異常、または水棲生物の状態の異常を早期の段階で適切に判定して警報を出力し、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】水槽または人工干潟の管理システムを含む、プラントの全体の構成と接続の例を説明する図である。
図2図1における水槽システムの構成の例を説明する斜視図である。
図3図2に対して水槽システムをX軸方向から見た図であり、撮像装置の光軸の方向の例などを説明する図である。
図4図1における人工干潟システムの構成の例を説明する斜視図である。
図5図4に対して人工干潟システムをX軸方向から見た図であり、撮像装置の光軸の方向の例などを説明する図である。
図6図1図5における水槽及び人工干潟の環境維持システムの構成の例を説明する図である。
図7】第1の実施の形態において、人工干潟システムを例として、人工干潟管理装置による[人工干潟システムの全体処理]の例を説明するフローチャートである。
図8図7のフローチャートにおける[環境維持システムを用いた環境調整制御]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図9】時刻に応じた日照強度などの目標値、許容上限値、許容下限値、の例を説明する図である。
図10図7のフローチャートにおける[給餌処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図11図7のフローチャートにおける[全域個体密度チェック]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図12図11のフローチャートにおける[環境修復処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図13】第1の実施の形態の処理手順による、水棲生物異常フラグのON/OFF、環境維持システム異常フラグのON/OFF、が設定される経緯を説明する図である。
図14図7のフローチャートにおける[警報出力処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図15】第2の実施の形態の処理手順であって、第1の実施の形態とは異なる処理となる[人工干潟システムの全体処理]の例を説明するフローチャートである。
図16】第2の実施の形態の処理手順であって、第1の実施の形態とは異なる処理となる[全域個体密度チェック]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図17図15のフローチャートにおける[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図18図15のフローチャートにおける[集団環境修復処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図19】第2の実施の形態の処理手順による、水棲生物異常フラグのON/OFF、環境維持システム異常フラグのON/OFF、が設定される経緯を説明する図である。
図20】第3の実施の形態の処理手順であって、第2の実施の形態とは異なる処理となる[人工干潟システムの全体処理]の例を説明するフローチャートである。
図21図20のフローチャートにおける[習性チェック]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図22図20のフローチャートにおける[警報出力処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図23】第4の実施の形態の処理手順であって、第3の実施の形態とは異なる処理となる[人工干潟システムの全体処理]の例を説明するフローチャートである。
図24図23のフローチャートにおける[観測システムの故障検出]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図25図24のフローチャートにおける[集合装置の故障検出]の例の詳細を説明するフローチャートである。
図26図23のフローチャートにおける[警報出力処理]の例の詳細を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸は鉛直上方、X軸とY軸はそれぞれ水平方向を示している。
【0031】
●[水槽または人工干潟を有するプラント1の全体構成と接続(図1)]
図1は、水槽または人工干潟の管理システムを有するプラント1の全体構成と接続の例を示している。プラント1は、栽培槽システム2、水槽システム3、中間槽システム4、人工干潟システム5、を有している。プラント1は、例えば、プラント設備の建物内に設置されている。また栽培槽システム2は栽培槽管理装置P2にて管理され、水槽システム3は水槽管理装置P3にて管理され、中間槽システム4は中間槽管理装置P4にて管理され、人工干潟システム5は人工干潟管理装置P5にて管理されている。
【0032】
そして栽培槽管理装置P2、水槽管理装置P3、中間槽管理装置P4、人工干潟管理装置P5は通信回線L1に接続され、通信回線L1には、栽培槽管理装置P2、水槽管理装置P3、中間槽管理装置P4、人工干潟管理装置P5の上位の管理装置である総合管理装置P1が接続されている。総合管理装置P1、栽培槽管理装置P2、水槽管理装置P3、中間槽管理装置P4、人工干潟管理装置P5は、例えばパーソナルコンピュータであり、それぞれが管理装置に相当している。管理者は、総合管理装置P1を用いて、栽培槽システム2、水槽システム3、中間槽システム4、人工干潟システム5、の状態を総合的に管理することができる。
【0033】
栽培槽システム2は、野菜や植物を水耕栽培するシステムであり、栽培槽20と栽培槽管理装置P2にて構成されている。栽培槽20には、淡水を栽培槽20に注水する注水配管23A、栽培槽20から排水する排水配管33B、栽培槽20の淡水を中間槽40へ向けて排水する排水配管23C、が接続されている。
【0034】
注水配管23Aには、栽培槽管理装置P2から制御されるバルブ21A、ポンプ22Aが設けられている。排水配管23Bには、栽培槽管理装置P2から制御されるバルブ21Bが設けられている。なお、排水配管23Cの先には、中間槽管理装置P4から制御されるバルブ41D、ポンプ42Dが設けられている。また、栽培槽システム2については、詳細な説明を省略する。
【0035】
水槽システム3は、海水中に生息する魚介類などの水棲生物を飼育(養殖)するシステムであり、水槽30と水槽管理装置P3にて構成されている。水槽30には、海水を水槽30に注水する注水配管33A、人工干潟槽50からの浄化水を水槽30に注水する注水配管33E、水槽30から排水する排水配管33B、水槽30の海水等(水棲生物の糞などを含む海水)を中間槽40へ向けて排水する排水配管33C、ろ過器34Fへ向けて排水するろ過用配管33F、水槽30と中間槽40との間で生体(水棲生物)を移動させる生体移動通路33D、が接続されている。
【0036】
注水配管33Aには、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31A、ポンプ32Aが設けられている。注水配管33Eには、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31E、ポンプ32Eが設けられている。排水配管33Bには、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31Bが設けられている。ろ過用配管33Fには、水槽管理装置P3から制御されるポンプ32F、ろ過器34Fが設けられている。生体移動通路33Dには、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31Dが設けられている。なお、排水配管33Cの先には、中間槽管理装置P4から制御されるバルブ41E、ポンプ42Eが設けられている。
【0037】
中間槽システム4は、水槽30からの海水等(水棲生物の糞などを含む海水)と、栽培槽20からの淡水と、を混合した混合水を、人工干潟槽50に供給する前に、一時的に溜めておくシステムであり、中間槽40と中間槽管理装置P4にて構成されている。中間槽40には、栽培槽20からの淡水を中間槽40に注水する注水配管43D、水槽30からの海水等(水棲生物の糞などを含む海水)を中間槽40に注水する注水配管43E、中間槽40に蓄えられている混合水を人工干潟槽50に向けて排水する排水配管43F、水槽30と中間槽40との間で生体(水棲生物)を移動させる生体移動通路43G、が接続されている。
【0038】
注水配管43Dには、中間槽管理装置P4から制御されるバルブ41D、ポンプ42Dが設けられている。注水配管43Eには、中間槽管理装置P4から制御されるバルブ41E、ポンプ42Eが設けられている。なお、排水配管43Fの先には、人工干潟管理装置P5から制御されるバルブ51A、ポンプ52Aが設けられている。また生体移動通路43Gの先には、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31Dが設けられている。なお、中間槽システム4については、詳細な説明を省略する。
【0039】
人工干潟システム5は、干潟に生息する魚介類などの水棲生物を飼育(養殖)するとともに、水槽30からの海水等(水棲生物の糞などを含む海水)を浄化するシステムであり、人工干潟槽50と人工干潟管理装置P5にて構成されている。人工干潟槽50内には人工干潟50Aが形成されており、人工干潟槽50には、中間槽40からの混合水を人工干潟槽50に注水する注水配管53A、人工干潟槽50から排水する排水配管53B、人工干潟槽50からの浄化水を水槽30に向けて排水する排水配管53E、が接続されている。
【0040】
注水配管53Aには、人工干潟管理装置P5から制御されるバルブ51A、ポンプ52Aが設けられている。排水配管53Bには、人工干潟管理装置P5から制御されるバルブ51Bが設けられている。なお、排水配管53Eの先には、水槽管理装置P3から制御されるバルブ31E、ポンプ32Eが設けられている。
【0041】
以降では、水槽システム3と人工干潟システム5について詳細な説明を行い、水槽30または人工干潟50Aの管理システムについて説明する。
【0042】
●[水槽システム3の概略外観(図2図3)]
図2は、水槽30と周囲の機器の概略外観の斜視図であり、図3は、水槽30と周囲の機器をX軸方向から見た図である。なお図3では、各配管やポンプやバルブやろ過器などの記載を省略している。水槽30には、所定水位となるように海水Wsが溜められており、水棲生物A3が飼育・養殖されている。なお水槽30内の環境(温度など)の管理については後述する。また水槽管理装置P3の環境表面画像取得部P3A、個体密度測定部P3B、異常判定部P3C、自然環境維持部P3D、特徴的運動頻度算出部P3Eについては後述する。
【0043】
水槽システム3は、水槽管理装置P3、水槽30、撮像用照明装置35A、撮像装置35B、疑似日光調整装置36A、ダミー体35C、集合装置35D、給餌装置35E、等を有している。なお、すでに説明した各配管、各バルブ、各ポンプ、ろ過器については説明を省略する。水槽システム3の管理システム3Aは、上記の水槽30と各配管を除いた、水槽管理装置P3、撮像用照明装置35A、撮像装置35B、疑似日光調整装置36A、ダミー体35C、集合装置35D、給餌装置35E、各バルブ、各ポンプ、ろ過器、及び、後述する環境維持システム(疑似日光調整装置36Aを含む)等が相当する。
【0044】
撮像装置35Bは、水槽30内の水面である環境表面30Sを撮像して水槽30内の水面近傍の画像である環境表面画像を取得するための装置である。撮像装置35Bは、図2及び図3に示すように、水槽30の斜め上方に配置され、撮像装置光軸35BJが環境表面30Sに向けられている。そして撮像装置35Bは、水槽管理装置P3から制御され、環境表面30Sの全体を撮像した環境表面画像を取得して、環境表面画像を水槽管理装置P3に出力する。
【0045】
撮像用照明装置35Aは、水槽30の斜め上方、かつ、照明光軸35AJが撮像装置光軸35BJと平行にならない位置に配置されている。撮像用照明装置35Aは、水槽管理装置P3から制御され、撮像装置光軸35BJと平行でなく交差する照明光軸35AJにて、平行光の撮像用照明を環境表面30Sに向けて照射する。この撮像用照明の照射により、環境表面30Sの近傍の水棲生物A3には、撮像用照明装置35Aとは反対の側に暗部(影部)が形成される。撮像装置35Bは、交差する光軸により、この暗部(影部)を有する水棲生物を含む環境表面画像を取得する。
【0046】
疑似日光調整装置36Aは、水槽30のほぼ真上に配置されている。疑似日光調整装置36Aは、水槽管理装置P3から制御され、自然の日光を疑似した疑似日光(平行光)の強度を時刻に応じて変化させて環境表面30Sに向けて照射する。
【0047】
ダミー体35Cは、水棲生物A3の大きさ及び輝度を模しており、水槽30の環境表面30Sにおける第1所定位置に配置されている。第1所定位置に配置されたダミー体35Cは、後述するように観測システム(撮像用照明装置35A、撮像装置35B)の故障検出の際に利用される。
【0048】
集合装置35Dは、水槽管理装置P3から制御され、水棲生物A3を集合させることが可能となる集合情報を出力する装置であり、例えばスピーカである。集合装置35Dは、環境表面30Sにおける適切な位置に配置されている。管理者は、所定時間の間、スピーカから音声(集合情報)を出力した後、集合装置35Dの近傍に配置した給餌装置35Eから給餌することを繰り返すことで、スピーカから音声(集合情報)を出力するだけで水棲生物A3が集合するように学習させる。
【0049】
給餌装置35Eは、水槽管理装置P3から制御され、水棲生物A3に給餌するための装置であり、水棲生物A3への餌を吐出する。給餌装置35Eは、環境表面30Sにおける集合装置35Dの近傍に配置されている。
【0050】
●[人工干潟システム5の概略外観(図4図5)]
図4は、人工干潟槽50内の人工干潟50Aと周囲の機器の概略外観の斜視図であり、図5は、人工干潟槽50内の人工干潟50Aと周囲の機器をX軸方向から見た図である。なお図5では、各配管やポンプやバルブなどの記載を省略している。人工干潟槽50には、自然の干潟の湿泥Dsが堆積され、所定水位となるように混合水Wm(ほぼ海水)が溜められており、水棲生物A5が飼育・養殖されている。なお人工干潟槽50内の環境(温度など)の管理については後述する。また人工干潟管理装置P5の環境表面画像取得部P5A、個体密度測定部P5B、異常判定部P5C、自然環境維持部P5D、特徴的運動頻度算出部P5Eについては後述する。
【0051】
人工干潟システム5は、人工干潟管理装置P5、人工干潟槽50、撮像用照明装置55A、撮像装置55B、疑似日光調整装置56A、ダミー体55C、集合装置55D、給餌装置55E、等を有している。なお、すでに説明した各配管、各バルブ、各ポンプについては説明を省略する。人工干潟システム5の管理システム5Aは、上記の人工干潟槽50と各配管を除いた、人工干潟管理装置P5、撮像用照明装置55A、撮像装置55B、疑似日光調整装置56A、ダミー体55C、集合装置55D、給餌装置55E、各バルブ、各ポンプ、及び、後述する環境維持システム(疑似日光調整装置56Aを含む)等が相当する。
【0052】
撮像装置55Bは、人工干潟槽50内の人工干潟50Aの湿泥表面である環境表面50Sを撮像して人工干潟槽50内の人工干潟50Aの湿泥表面の画像である環境表面画像を取得するための装置である。撮像装置55Bは、図4及び図5に示すように、人工干潟槽50内の人工干潟50Aの斜め上方に配置され、撮像装置光軸55BJが環境表面50Sに向けられている。そして撮像装置55Bは、人工干潟管理装置P5から制御され、環境表面50Sの全体を撮像した環境表面画像を取得して、環境表面画像を人工干潟管理装置P5に出力する。
【0053】
撮像用照明装置55Aは、人工干潟槽50内の人工干潟50Aの斜め上方、かつ、照明光軸55AJが撮像装置光軸55BJと平行にならない位置に配置されている。撮像用照明装置55Aは、人工干潟管理装置P5から制御され、撮像装置光軸55BJと平行でなく交差する照明光軸55AJにて、平行光の撮像用照明を環境表面50Sに向けて照射する。この撮像用照明の照射により、環境表面50Sの水棲生物A5には、撮像用照明装置55Aとは反対の側に影が形成される(水棲生物A5の影が環境表面に形成される)。撮像装置55Bは、交差する光軸により、この影を有する水棲生物を含む環境表面画像を取得する。
【0054】
疑似日光調整装置56Aは、人工干潟槽50内の人工干潟50Aのほぼ真上に配置されている。疑似日光調整装置56Aは、人工干潟管理装置P5から制御され、自然の日光を疑似した疑似日光(平行光)の強度を時刻に応じて変化させて環境表面50Sに向けて照射する。
【0055】
ダミー体55Cは、水棲生物A5の大きさ及び輝度を模しており、人工干潟槽50内の人工干潟50Aの環境表面50Sにおける第1所定位置に配置されている。第1所定位置に配置されたダミー体55Cは、後述するように観測システム(撮像用照明装置55A、撮像装置55B)の故障検出の際に利用される。
【0056】
集合装置55Dは、人工干潟管理装置P5から制御され、水棲生物A5を集合させることが可能となる集合情報を出力する装置であり、例えばスピーカである。集合装置55Dは、環境表面50Sにおける適切な位置に配置されている。管理者は、所定時間の間、スピーカから音声(集合情報)を出力した後、集合装置55Dの近傍に配置した給餌装置55Eから給餌することを繰り返すことで、スピーカから音声(集合情報)を出力するだけで水棲生物A5が集合するように学習させる。
【0057】
給餌装置55Eは、人工干潟管理装置P5から制御され、水棲生物A5に給餌するための装置であり、水棲生物A5への餌を吐出する。給餌装置55Eは、環境表面50Sにおける集合装置55Dの近傍に配置されている。
【0058】
●[水槽システム3と人工干潟システム5における環境維持システムの構成(図6)]
環境維持システムは、水槽システム3、人工干潟システム5のそれぞれの環境が自然環境に近づくように、疑似的な自然環境である疑似自然環境を再現、及び維持するシステムである。環境維持システムは、水槽システム3、人工干潟システム5のそれぞれの日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境、水位環境(干潮/満潮を疑似)、塩分濃度環境を、疑似自然環境となるように維持する。
【0059】
つまり、水槽管理装置P3は、水槽システム3の日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境、水位環境(干潮/満潮を疑似)、塩分濃度環境が、疑似自然環境となるように、水槽システム3に設けられた環境維持システムを、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように制御する。同様に、人工干潟管理装置P5は、人工干潟システム5の日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境、水位環境(干潮/満潮を疑似)、塩分濃度環境が、疑似自然環境となるように、人工干潟システム5に設けられた環境維持システムを、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように制御する。
【0060】
また水槽システム3の環境表面30S、人工干潟システム5の環境表面50Sが比較的大きい場合(例えば25[m]×25[m]など)、環境表面30S、50Sを仮想的に複数の領域に分割し、領域ごとに環境維持システムを設けることが好ましい。図6に示す例では、環境表面30Sを4つの領域(領域R3(1、1)~領域R3(2、2))に分割し、環境表面50Sを4つの領域(領域R5(1、1)~領域R5(2、2))に分割した例を示している。なお、水槽30、人工干潟槽50に設けられたマーカM3、M5は、隣り合う領域との境界部に配置されており、環境表面画像からそれぞれの領域に分割する際の目印として利用される。
【0061】
それぞれの領域に設けられた環境維持システムは、温度調整装置36J、56J、温度状態検出装置36K、56K、溶存酸素濃度調整装置36E、56E、溶存酸素濃度状態検出装置36H、56H、水位状態検出装置36C、56C、塩分濃度状態検出装置36D、56D、等を有している。なお、疑似日光調整装置36A、56A、日照状態検出装置36B、56Bについては、領域ごとに設けてもよいし、水槽システム3、人工干潟システム5のそれぞれに1つずつ設けるようにしてもよい。以降の説明では、疑似日光調整装置36A、56A、日照状態検出装置36B、56Bを、水槽システム3、人工干潟システム5のそれぞれに1つずつ設けた例で説明する。なお、すでに説明した各配管、各バルブ、各ポンプ、撮像装置35B、55B、撮像用照明装置35A、55A、集合装置35D、55D、給餌装置35E、55E、ダミー体35C、55Cについては説明を省略する。
【0062】
疑似日光調整装置36A、56Aは、例えば平行光を照射する照明であり、水槽30、人工干潟槽50の真上に配置されている。そして疑似日光調整装置36A、56Aは、水槽30、人工干潟槽50(人工干潟50A)への自然の日光を疑似した疑似日光の強度を時刻に応じて変化させて照射し、水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5から制御され、日照環境を維持する。日照状態検出装置36B、56Bは、例えば日照センサであり、水槽30の環境表面30S、人工干潟槽50の環境表面50Sのいずれかの位置に配置されている。日照状態検出装置36B、56Bは、疑似日光調整装置36A、56Aによる日照状態(疑似日光の強度など)を検出し、検出信号を水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5に出力する。
【0063】
温度調整装置36J、56Jは、例えばヒータであり、水槽30、人工干潟槽50のそれぞれの領域の底面などに配置されている。そして温度調整装置36J、56Jは、水槽30、人工干潟槽50(人工干潟50A)への自然の温度を疑似するように時刻に応じて温度を変化させ、水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5から制御され、温度環境を維持する。温度状態検出装置36K、56Kは、例えば温度センサであり、水槽30、人工干潟槽50のそれぞれの領域におけるいずれかの位置に配置されている。温度状態検出装置36K、56Kは、温度調整装置36J、56Jによる温度状態を検出し、検出信号を水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5に出力する。
【0064】
溶存酸素濃度調整装置36E、56Eは、例えば酸素を発生装置や、空気を取り込んで酸素濃度を増量する装置であり、水槽30、人工干潟槽50の周囲に配置されている。そして溶存酸素濃度調整装置36E、56Eからの酸素は、領域ごとに設けられたバルブ36F、56Fと配管を介して、領域ごとの底面などに設けられた酸素吐出口36G、56Gから吐出される。溶存酸素濃度調整装置36E、56E、及びバルブ36F、56Fは、水槽30、人工干潟槽50(人工干潟50A)への自然の溶存酸素濃度を疑似するように時刻に応じて溶存酸素濃度を変化させ、水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5から制御され、溶存酸素濃度環境を維持する。溶存酸素濃度状態検出装置36H、56Hは、例えば酸素濃度センサであり、水槽30、人工干潟槽50のそれぞれの領域におけるいずれかの位置に配置されている。溶存酸素濃度状態検出装置36H、56Hは、溶存酸素濃度調整装置36E、56Eによる溶存酸素濃度状態を検出し、検出信号を水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5に出力する。
【0065】
水位状態検出装置36C、56Cは、例えば水位センサであり、水槽30、人工干潟槽50のいずれかの位置に配置されている。水位状態検出装置36C、56Cは、水槽30,人工干潟槽50内の水位状態を検出し、検出信号を水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5に出力する。水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5は、時刻に応じた水位(干潮/満潮など)が許容範囲内に収まるように、各槽のポンプやバルブを制御して水槽30,人工干潟槽50の水位を調整して水位環境を維持する。
【0066】
塩分濃度状態検出装置36D、56Dは、例えば塩分濃度センサであり、水槽30、人工干潟槽50のいずれかの位置に配置されている。塩分濃度状態検出装置36D、56Dは、水槽30,人工干潟槽50内の塩分濃度状態を検出し、検出信号を水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5に出力する。水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5は、時刻に応じた塩分濃度が許容範囲内に収まるように、各槽のポンプやバルブを制御して塩分濃度を調整して塩分濃度環境を維持する。
【0067】
以上に説明した環境維持システムにて、水槽30、人工干潟槽50の日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境などを疑似的な自然環境である疑似自然環境に維持して、水棲生物A3、A5を飼育するが、当然ながら種々の異常が発生する可能性がある。これらの異常には、環境状態の異常(調整装置や検出装置の異常など)や、水棲生物の異常(病気や衰弱など)が発生した場合、発生の初期の頃は些細な異常(変化)で見落としてしまいがちであるが、早期に発見して速やかに対処しなければ、気付いたときには手遅れで、飼育している水棲生物が死滅してしまう可能性がある。そこで、以降に説明する管理装置の処理手順により、種々の異常を早期に発見して警報を出力し、飼育している水棲生物の死滅を防止する。
【0068】
●[第1の実施の形態における人工干潟管理装置P5の処理手順(図7図14)]
次に図7図14に示すフローチャートを用いて、人工干潟管理装置P5による人工干潟システム5の管理の処理手順の、第1の実施の形態について説明する。なお、水槽管理装置P3による水槽システム3の管理の処理手順も同様であるので、水槽管理装置P3の処理手順については説明を省略する。
【0069】
●[第1の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図7)]
人工干潟管理装置P5は、図7に示す[人工干潟システムの全体処理]を繰り返し実行しており、ひととおりの処理を終了するごとに、先頭のステップS010へ処理を戻す。なお、図7において、点線にて示すステップS030~S040、ステップS055~S075は、第2~第4の実施の形態にて追加されるステップであり、第1の実施の形態では実装されていない。従って、第1の実施の形態では、ステップS030~S040、ステップS055~S075については説明を省略する。
【0070】
ステップS010にて人工干潟管理装置P5は、環境調整タイミングであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、環境調整タイミングであると判定した場合(Yes)はステップS015へ処理を進め、環境調整タイミングでないと判定した場合(No)はステップS020へ処理を進める。なお「環境調整タイミング」は、上述した環境維持システムによる日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境などを調整するタイミングであり、例えば10分毎のタイミング(xx時10分、xx時20分、xx時30分・・・)に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0071】
ステップS015へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[環境維持システムを用いた環境調整制御]を実行してステップS020へ処理を進める。なお、[環境維持システムを用いた環境調整制御]の処理の詳細については後述する。
【0072】
ステップS020へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、給餌タイミングであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、給餌タイミングであると判定した場合(Yes)はステップS025へ処理を進め、給餌タイミングでないと判定した場合(No)はステップS030(この場合、ステップS050)へ処理を進める。なお「給餌タイミング」は、水棲生物A5へ餌を与えるタイミングであり、例えば時刻7:00、時刻13:00、の2回/1日に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0073】
ステップS025へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[給餌処理]を実行してステップS030(この場合、ステップS045)へ処理を進める。なお[給餌処理]の処理の詳細については後述する。
【0074】
ステップS045へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、異常チェックタイミングであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、異常チェックタイミングであると判定した場合(Yes)はステップS047へ処理を進め、異常チェックタイミングでないと判定した場合(No)はステップS050へ処理を進める。なお「異常チェックタイミング」は、環境維持システムや水棲生物に異常が発生しているか否かをチェックするタイミングであり、例えば1時間毎のタイミング(・・・時刻6:00、時刻7:00、時刻8:00・・・)に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0075】
ステップS047へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[全域個体密度チェック]を実行してステップS050へ処理を進める。なお[全域個体密度チェック]の処理の詳細については後述する。
【0076】
ステップS050へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境修復中フラグがONであるか否かを判定する。なお「環境修復中フラグ」は、[全域個体密度チェック]にて条件に応じてONに設定され、[環境修復処理]にて条件に応じてON/OFFに設定されるフラグである。そして「環境修復中フラグ」は、環境維持システムによって調整されている環境のいずれかが、時刻に応じた許容範囲から逸脱していた場合(許容上限値と許容下限値の範囲から外れている場合)に、その環境を強制的に修復するように制御(許容上限値と許容下限値の範囲に入るように強制的に制御量を増減する制御)を実行中にONとされるフラグである。人工干潟管理装置P5は、環境修復中フラグがONである場合(Yes)はステップS052へ処理を進め、環境修復中フラグがOFFである場合(No)はステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を進める。
【0077】
ステップS052へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[環境修復処理]を実行してステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を進める。なお[環境修復処理]の詳細については後述する。
【0078】
ステップS090へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[警報出力処理]を実行して、先頭のステップS010へ処理を戻す。なお[警報出力処理]の処理の詳細については後述する。
【0079】
●[第1の実施の形態の[環境維持システムを用いた環境調整制御](図8図9)]
人工干潟管理装置P5は、図7のステップS015の[環境維持システムを用いた環境調整制御]を実行する場合、図8に示す[環境維持システムを用いた環境調整制御]のステップS110へ処理を進める。
【0080】
ステップS110に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、図9の[時刻・日照強度特性]と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた目標日照強度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。人工干潟管理装置P5の記憶装置には、時刻に応じた目標日照強度と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・日照強度特性](図9参照)が記憶されている。また[時刻・日照強度特性]は、例えば自然の干潟の観測結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。
【0081】
そして人工干潟管理装置P5は、日照状態検出装置56Bを用いて取得した日照強度が目標日照強度に近づくように、疑似日光調整装置56Aの制御量を求め、疑似日光調整装置56Aをフィードバック制御し、ステップS120へ処理を進める。
【0082】
ステップS120にて人工干潟管理装置P5は、図9の[時刻・塩分濃度特性]と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた目標塩分濃度(及び許容上限値と許容下限値)を取得し、[時刻・水位特性](干潮/満潮特性)と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた目標水位(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。人工干潟管理装置P5の記憶装置には、時刻に応じた目標塩分濃度と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・塩分濃度特性](図9参照)と、時刻に応じた目標水位と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・水位特性](図9参照)が記憶されている。また[時刻・塩分濃度特性]、[時刻・水位特性]は、例えば自然の干潟の観測結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。
【0083】
そして例えば、人工干潟管理装置P5は、塩分濃度状態検出装置56Dを用いて取得した塩分濃度と目標塩分濃度、及び水位状態検出装置56Cを用いて取得した水位と目標水位、に基づいて、要求塩分濃度と要求混合水量を算出する。そして人工干潟管理装置P5は、中間槽管理装置P4に、要求塩分濃度と要求混合水量を含む要求情報を送信する。中間槽管理装置P4は、受信した要求情報に基づいてバルブ41D、ポンプ42D、バルブ41E、ポンプ42Eを制御して、要求塩分濃度、かつ、要求混合水量以上の水量の混合水を中間槽40に溜め、準備完了情報を人工干潟管理装置P5に送信する。人工干潟管理装置P5は、準備完了情報を受信すると、バルブ51A、ポンプ52A、バルブ51Bを制御して、目標塩分濃度の混合水を、目標水位となるように、人工干潟槽50に溜める。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS130へ処理を進める。
【0084】
なお、水槽システム3を管理する水槽管理装置P3の場合には、海水を注水するので、塩分濃度の調整を省略してもよい。この場合、水槽管理装置P3は、水位状態検出装置36Cを用いて取得した水位が目標水位に近づくように、バルブ31A、ポンプ32A、バルブ31Bを制御する。
【0085】
ステップS130にて人工干潟管理装置P5は、図9の[時刻・温度特性]と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた目標温度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。人工干潟管理装置P5の記憶装置には、時刻に応じた目標温度と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・温度特性](図9参照)が記憶されている。また[時刻・温度特性]は、例えば自然の干潟の観測結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。
【0086】
そして人工干潟管理装置P5は、温度状態検出装置56Kを用いて取得した温度が目標温度に近づくように、領域ごとに温度調整装置56Jの制御量を求め、領域ごとに温度調整装置56Jをフィードバック制御し、ステップS140へ処理を進める。
【0087】
ステップS140にて人工干潟管理装置P5は、図9の[時刻・溶存酸素濃度特性]と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた目標溶存酸素濃度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。人工干潟管理装置P5の記憶装置には、時刻に応じた目標溶存酸素濃度と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・溶存酸素濃度特性](図9参照)が記憶されている。また[時刻・溶存酸素濃度特性]は、例えば自然の干潟の観測結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。
【0088】
そして人工干潟管理装置P5は、溶存酸素濃度状態検出装置56Hを用いて取得した溶存酸素濃度が目標溶存酸素濃度に近づくように、溶存酸素濃度調整装置56Eの制御量、領域ごとのバルブ56F(対象バルブ)の開度などを求め、溶存酸素濃度調整装置56E、領域ごとにバルブ56F(対象バルブ)の開度をフィードバック制御し、図8に示す処理を終了し、図7のステップS020へ処理を戻す。
【0089】
●[第1の実施の形態の[給餌処理](図10)]
人工干潟管理装置P5は、図7のステップS025の[給餌処理]を実行する場合、図10に示す[給餌処理]のステップS210へ処理を進める。
【0090】
ステップS210へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、予め設定された集合実施時間(例えば、1時間程度)の間、集合装置55Dから集合情報を出力するように集合装置55Dの動作を設定し、ステップS220へ処理を進める。例えば集合装置55Dがスピーカの場合、人工干潟管理装置P5は、集合実施時間の間だけ、当該スピーカから集合情報として所定の音声を出力するように設定する。
【0091】
ステップS220にて人工干潟管理装置P5は、集合装置55Dから集合情報の出力を開始してから、予め設定した給餌待機時間(例えば、30分程度)の経過後に給餌するように、給餌装置55Eの動作を設定する。給餌装置55Eは、設定された給餌待機時間が経過すると、水棲生物A5のための所定量の餌を自動的に吐出する。つまり、集合装置55Dから集合情報を出力して、水棲生物A5が集合装置55Dの周囲に集まった頃(給餌待機時間の経過後)を見計らって、給餌装置55Eから給餌し、水棲生物A5が餌を食べ終わった頃(集合実施時間の経過後)に集合装置55Dからの集合情報の出力を停止する。そして人工干潟管理装置P5は、図10に示す処理を終了し、図7のステップS030(この場合、ステップS045)へ処理を戻す。
【0092】
●[第1の実施の形態の[全域個体密度チェック](図11図13)]
人工干潟管理装置P5は、図7のステップS047の[全域個体密度チェック]を実行する場合、図11に示す[全域個体密度チェック]のステップS320へ処理を進める。
【0093】
ステップS320に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aを用いて撮像用照明の照射を開始して(疑似日光調整装置56Aからの疑似日光の照射を一時的に停止)、環境表面50Sに居る水棲生物A5に影を発生させる。そして人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bを用いて、人工干潟50Aの湿泥表面である環境表面50Sを撮像し、人工干潟50Aの湿泥表面の画像である環境表面画像(水棲生物A5とその影が写っている画像)を取得する。その後、人工干潟管理装置P5は、一時的に停止していた疑似日光調整装置56Aからの疑似日光の照射を再開し、撮像用照明装置55Aからの撮像用照明の照射を停止する。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS325へ処理を進める。
【0094】
ステップS325にて人工干潟管理装置P5は、取得した環境表面画像に種々の画像処理を施し、環境表面50S及び環境表面50Sの近傍(湿泥に半分潜っている、など)の水棲生物A5を抽出し、環境表面50S内における水棲生物A5の個体数を算出する。例えば、環境表面画像に施す画像処理として、二値化処理、ラベリング、ラスタスキャン、などを用いて、水棲生物A5の影を抽出し、影の大きさや形状などから水棲生物A5を抽出する。これにより、湿泥が付着して湿泥の色と同色になった水棲生物A5であっても、また、湿泥の表面に種々の凹凸の影があっても、適切に湿泥表面の水棲生物A5を抽出することができる。撮像用照明装置55Aからは平行光を照射し、撮像用照明装置55Aの照明光軸55AJと、撮像装置55Bの撮像装置光軸55BJが平行にならないように設定しているので、水棲生物A5の影は、環境表面画像内に適切に写っている。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS330へ処理を進める。
【0095】
なお、水槽システム3の場合には、水棲生物A3は水面表面である環境表面30Sに居ない場合が多い。しかし、環境表面画像には、環境表面30Sの近傍(水面から所定距離まで深い水中)の水棲生物A3が写っている。また、水槽システム3の場合には、影が写る地面に相当する面がないので、撮像用照明を照射しても水棲生物A3の「影」は発生しない。しかし、水棲生物A3そのものにおける撮像用照明の入射方向とは反対の側に「暗部(影に相当する暗い部分)」が発生するので、この「暗部」を「影」の代わりに利用すればよい。
【0096】
ステップS330にて人工干潟管理装置P5は、予め設定されている環境表面50Sの広さと、算出した水棲生物A5の個体数とに基づいて、環境表面50Sの広さに対する水棲生物A5の個体数である全域個体密度を算出し、ステップS335へ処理を進める。
【0097】
ステップS335にて人工干潟管理装置P5は、図9の[時刻・全域個体密度特性]と現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた標準全域個体密度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。人工干潟管理装置P5の記憶装置には、時刻に応じた標準全域個体密度と、許容上限値及び許容下限値とが設定された[時刻・全域個体密度特性](図9参照)が記憶されている。また[時刻・全域個体密度特性]は、自然の干潟の観測結果や、実際の人工干潟50Aでの飼育結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS340へ処理を進める。
【0098】
ステップS340にて人工干潟管理装置P5は、算出した全域個体密度が、全域個体密度許容範囲内であるか否か(標準全域個体密度の許容上限値以下かつ許容下限値以上であるか否か)を判定する。人工干潟管理装置P5は、算出した全域個体密度が、全域個体密度許容範囲内である場合(Yes)(標準全域個体密度の許容上限以下かつ許容下限以上である場合)にはステップS350へ処理を進め、そうでない場合(No)にはステップS345へ処理を進める。
【0099】
ステップS345へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境状態(日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境など)が環境許容範囲内であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、日照環境については、図9の[時刻・日照強度特性]と現在時刻に基づいて取得した目標日照強度の許容上限値と許容下限値の範囲に、現在の日照強度が収まっている場合は(Yes)と判定し、収まっていない場合は(No)と判定する。そして人工干潟管理装置P5は、温度環境、溶存酸素濃度環境、塩分濃度環境、水位環境、についても同様に判定し、1つでも(No)と判定した環境がある場合にはステップS345では(No)と判定してステップS370へ処理を進め、すべての環境が(Yes)である場合にはステップS345では(Yes)と判定してステップS360へ処理を進める。
【0100】
ステップS350へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、全域個体密度が(全域個体密度)許容範囲内に収まっている(ステップS340)ので、水棲生物は正常であると判定し、水棲生物異常フラグをOFFに設定する。また、環境状態が許容範囲内に収まっていなければ、全域個体密度が(全域個体密度)許容範囲内に収まることはないはずであるので、環境状態は許容範囲内に収まっているとみなしても問題ない。これにより、人工干潟管理装置P5は、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図11に示す処理を終了し、図7のステップS050へ処理を戻す。なお、水棲生物異常フラグと、環境維持システム異常フラグは、後述する[警報出力処理]にて利用される。
【0101】
ステップS360へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境状態がすべて許容範囲内である(ステップS345)にもかかわらず、水棲生物A5の全域個体密度は(全域個体密度)許容範囲を逸脱しているので(ステップS340)、水棲生物は異常であると判定し、水棲生物異常フラグをONに設定する。また人工干潟管理装置P5は、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図11に示す処理を終了し、図7のステップS050へ処理を戻す。
【0102】
ステップS370へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、全域個体密度の異常が環境維持システムの異常に起因するか否かを確認するために環境修復処理を開始する。そして人工干潟管理装置P5は、環境修復処理を開始するために、環境修復中フラグをONに設定し、環境修復開始フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図11に示す処理を終了し、図7のステップS050へ処理を戻す。
【0103】
ステップS370へ処理が進んだ場合は、水棲生物A5の全域個体密度は許容範囲を逸脱している(ステップS340)とともに、いずれかの環境状態も許容範囲を逸脱している(ステップS345)、という場合である。この場合、全域個体密度の異常の原因は、水棲生物A5の異常(病気や衰弱など)か、環境維持システムの異常か、区別することができない。そこで人工干潟管理装置P5は、[環境修復処理]にて環境が正常な状態となるように修復することを試み、環境が正常に修復されても全域個体密度が異常な場合は水棲生物A5の異常であると判定する。そして人工干潟管理装置P5は、図11に示す処理を終了し、図7のステップS050へ処理を戻す。
【0104】
●[第1の実施の形態の[環境修復処理](図12)]
人工干潟管理装置P5は、図7のステップS052の[環境修復処理]を実行する場合、図12に示す[環境修復処理]のステップS410へ処理を進める。
【0105】
ステップS410に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境修復開始フラグ(図11のステップS370にてONに設定されるフラグ)がONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、環境修復開始フラグがONである場合(Yes)は、環境修復処理の開始タイミングであると判定してステップS415へ処理を進め、環境修復開始フラグがOFFである場合(No)は、環境修復処理の開始タイミングではないと判定してステップS425へ処理を進める。
【0106】
ステップS415へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境許容範囲を逸脱している環境に対応する調整装置の制御量を増量または減量し、ステップS420へ処理を進める。例えば、ある領域の温度状態検出装置56Kにて検出した温度(温度環境)が、現在時刻に応じた目標温度の許容上限値と許容下限値(図9参照)である環境許容範囲から逸脱して低い場合、環境許容範囲内に入るように、その領域の温度調整装置56Jへの制御量を強制的に増量して温度を上昇させる。
【0107】
ステップS420にて人工干潟管理装置P5は、環境修復開始フラグをOFFに設定し、修復中タイマを初期化して起動し、ステップS425へ処理を進める。なお、修復中タイマは、環境修復処理を開始してからの経過時間を計測するためのタイマである。
【0108】
ステップS425へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、修復中タイマ(計測時間)が修復待機時間以上であるか否かを判定する。環境の修復にはそれなりの時間がかかるので、修復待機時間は、例えば3~4時間程度に設定されている。人工干潟管理装置P5は、修復中タイマが修復待機時間以上である場合(Yes)はステップS430へ処理を進め、そうでない場合(No)は図12に示す処理を終了し、図7のステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0109】
ステップS430へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境修復中フラグをOFFに設定し、修復回数をカウントアップ(+1)して、ステップS435へ処理を進める。
【0110】
ステップS435にて人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が環境許容範囲内に入ったか否かを判定する。例えば人工干潟管理装置P5は、領域R5(1、1)(図6参照)の温度(温度環境)が環境許容範囲を逸脱して低い場合、ステップS415にて、まず強制的に領域R5(1、1)の温度調整装置56Jの制御量を大きく増量し、その後は図7のステップS015にて制御量を調整する。そして人工干潟管理装置P5は、修復待機時間が経過した場合にステップS435にて、領域R5(1、1)の温度が環境許容範囲内に入ったか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が環境許容範囲内に入った場合(Yes)はステップS440へ処理を進め、修復対象の環境がまだ環境許容範囲を逸脱している場合(No)はステップS445へ処理を進める。
【0111】
ステップS440へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が正常に修復されたと判定し、修復回数を0(ゼロ)に初期化し、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。なお、この時点では、水棲生物A5が正常か異常か判定できないので、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグについては、何も操作せず、現在の状態を保持する。そして人工干潟管理装置P5は、図12に示す処理を終了し、図7のステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0112】
ステップS445へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、修復回数が、予め設定された修復上限回数以上であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、修復回数が修復上限回数以上である場合(Yes)はステップS450へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS455へ処理を進めて再度の環境修復処理を試みる。
【0113】
ステップS450へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は環境維持システムが異常であると判定し、環境維持システム異常フラグをONに設定する。なお、この時点では、水棲生物A5が正常か異常か判定できないので、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグについては、何も操作せず、現在の状態を保持する。例えば修復上限回数が3回に設定されている場合、対象の領域の対象の環境は3回の環境修復処理を試みても環境が正常に修復されなかったので、人工干潟管理装置P5は、環境維持システムに異常が発生していると判定する。そして人工干潟管理装置P5は、図12に示す処理を終了し、図7のステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0114】
ステップS455へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境許容範囲を逸脱している環境に対応する調整装置の制御量をさらに増量、またはさらに減量し、ステップS460へ処理を進める。例えば、領域R5(1、1)の温度状態検出装置56Kにて検出した温度(温度環境)が、現在時刻に応じた目標温度の許容上限値と許容下限値(図9参照)である環境許容範囲から、まだ逸脱して低い場合、環境許容範囲内に入るように、その領域R5(1、1)の温度調整装置56Jへの制御量を強制的に、さらに増量して温度を上昇させる。
【0115】
ステップS460にて人工干潟管理装置P5は、環境修復中フラグをONに設定し、修復中タイマを初期化して起動する。そして人工干潟管理装置P5は、図12に示す処理を終了し、図7のステップS055(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0116】
●[第1の実施の形態の、水棲生物異常フラグのON/OFFと、環境維持システム異常フラグのON/OFFについて(図13)]
図13は、図11の[全域個体密度チェック]と、図12の[環境修復処理]によって、水棲生物異常フラグのON/OFFと、環境維持システム異常フラグのON/OFFが設定される経緯を図示したものである。この図13に示すように、水棲生物異常フラグのON/OFFの設定と、環境維持システム異常フラグのON/OFFの設定が、図11及び図12のフローチャートにて実現されている。
【0117】
●[第1の実施の形態の[警報出力処理](図14)]
人工干潟管理装置P5は、図7のステップS090の[警報出力処理]を実行する場合、図14に示す[警報出力処理]のステップS910へ処理を進める。
【0118】
ステップS910に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境維持システム異常フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、環境維持システム異常フラグがONである場合(Yes)はステップS915Aへ処理を進め、環境維持システム異常フラグがOFFである場合(No)はステップS915Bへ処理を進める。
【0119】
ステップS915Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境維持システム異常の警報を出力し、ステップS920へ処理を進める。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、環境維持システムに異常が発生していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0120】
ステップS915Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境維持システム異常の警報の出力を停止し、ステップS920へ処理を進める。
【0121】
ステップS920に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグがONである場合(Yes)はステップS925Aへ処理を進め、水棲生物異常フラグがOFFである場合(No)はステップS925Bへ処理を進める。
【0122】
ステップS925Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常の警報を出力し、図14に示す処理を終了して図7に示すステップS010へ処理を戻す。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、水棲生物に異常が発生していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0123】
ステップS925Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常の警報の出力を停止し、図14に示す処理を終了して図7に示すステップS010へ処理を戻す。
【0124】
以上に説明した処理にて、水槽管理装置P3、人工干潟管理装置P5、総合管理装置P1、を含む管理装置は、水槽または人工干潟の環境状態の異常と水棲生物の状態の異常とを早期の段階で適切に判定して警報を出力する。この警報に基づいて、管理者が適切な処理を行うことで、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる。
【0125】
●[第2の実施の形態における人工干潟管理装置P5の処理手順(図15図19)]
次に図15図19を用いて、第2の実施の形態の処理手順について説明する。第2の実施の形態では、図19に示す[第2の実施の形態での追加分]が、図13に示す第1の実施の形態に対して追加されている。つまり、全域個体密度が許容範囲内に収まっている場合であっても、後述する「集団」が発生していると判定した場合は、水棲生物または環境維持システムに異常が発生していると判定する。
【0126】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図7)と[全域個体密度チェック](図11)が、それぞれ[人工干潟システムの全体処理](図15)と[全域個体密度チェック](図16)に変更されている。また第2の実施の形態では、図17の[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]と図18の[集団環境修復処理]が追加されている。その他の処理については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。以下、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0127】
●[第2の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図15)]
図15に示すフローチャートは、図7に示すフローチャートに対して、太枠で示したステップが追加されている。つまり、第2の実施の形態では、図15に示すフローチャートにおいて、太枠で示したステップS055~S067が、図7に示す第1の実施の形態に対して追加されている。以下、第1の実施の形態との相違点であるステップS055~S067について説明する。なお、図15において、点線にて示すステップS030~S040、ステップS070~S075は、第3~第4の実施の形態にて追加されるステップであり、第2の実施の形態では実装されていない。従って、第2の実施の形態では、ステップS030~S040、ステップS070~S075については説明を省略する。
【0128】
ステップS055へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団チェックフラグがONであるか否かを判定する。なお「集団チェックフラグ」は、ステップS047の[全域個体密度チェック]にて条件に応じてONに設定される。人工干潟管理装置P5は、集団チェックフラグがONである場合(Yes)はステップS057へ処理を進め、集団チェックフラグがOFFである場合(No)はステップS065へ処理を進める。
【0129】
ステップS057へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団チェックフラグをOFFに設定してステップS060へ処理を進める。
【0130】
ステップS060にて人工干潟管理装置P5は、[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]を実行してステップS065へ処理を進める。なお[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]の処理の詳細については後述する。なお[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]は、給餌タイミングの後、充分な時間が経過してから実行されることが好ましい。
【0131】
ステップS065へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団環境修復中フラグがONであるか否かを判定する。なお「集団環境修復中フラグ」は、[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]にて条件に応じてONに設定され、[集団環境修復処理]にて条件に応じてON/OFFに設定されるフラグである。そして「集団環境修復中フラグ」は、環境維持システムによって調整されている環境のいずれかが、時刻に応じた許容範囲から逸脱していた場合(許容上限値と許容下限値の範囲から外れている場合)に、その環境を強制的に修復するように制御(許容上限値と許容下限値の範囲に入るように強制的に制御量を増減する制御)を実行中にONとされるフラグである。人工干潟管理装置P5は、集団環境修復中フラグがONである場合(Yes)はステップS067へ処理を進め、集団環境修復中フラグがOFFである場合(No)はステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を進める。
【0132】
ステップS067へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[集団環境修復処理]を実行してステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を進める。なお[集団環境修復処理]の詳細については後述する。
【0133】
●[第2の実施の形態の[全域個体密度チェック](図16)]
図15に示す第2の実施の形態の[全域個体密度チェック]では、図11に示す第1の実施の形態のステップS350が、太枠にて示すステップS350Bに変更されている。以下、変更点を主に説明する。人工干潟管理装置P5は、図15のステップS052の[環境修復処理]を実行する場合、図16に示す[環境修復処理]のステップS320へ処理を進める。以下、変更されているステップS350Bのみを説明する。
【0134】
ステップS350Bに処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団チェックフラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図16に示す処理を終了し、図15のステップS050へ処理を戻す。全域個体密度(水棲生物の個体数)が正常であっても、例えば水棲生物の全てが特定の領域に集まって「集団」を形成している場合には、何らかの異常が発生していると考えるべきである。そこで、「集団」の有無をチェックするために、集団チェックフラグをONに設定して、「集団」のチェックを開始する。
【0135】
●[第2の実施の形態の[領域毎個体密度チェック(集団チェック)](図17)]
次に、第2の実施の形態にて追加された[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]の詳細について説明する。人工干潟管理装置P5は、図16の[全域個体密度チェック]では、環境表面50Sの全体の広さに対する個体数である全域個体密度を算出したが、図17の[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]では、環境表面50Sを分割した領域ごとに、その領域の広さに対する、その領域の個体数である領域毎個体密度を算出する。人工干潟管理装置P5は、図15のステップS060の[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]を実行する場合、図17に示す[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]のステップS530へ処理を進める。
【0136】
ステップS530に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、領域毎に、領域毎個体密度を算出し、ステップS535へ処理を進める。この場合、人工干潟管理装置P5は、すでに取得している環境表面画像に基づいて、領域R5(1、1)内の個体数、領域R5(1、2)内の個体数、領域R5(2、1)内の個体数、領域R5(2、2)内の個体数を求める(マーカM5を用いて各領域に分割して求める)。そして人工干潟管理装置P5は、領域毎の個体数と、予め設定されている各領域の広さと、に基づいて、領域毎に、領域毎個体数を求める。
【0137】
ステップS535にて人工干潟管理装置P5は、領域毎に設定された[時刻・領域毎個体密度特性](図示省略するが、図9の[時刻・全域個体密度特性]と同様)と、現在時刻に基づいて、現在時刻に応じた、その領域の標準領域毎個体密度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。また[時刻・領域毎個体密度特性]は、自然の干潟の観測結果や、実際の人工干潟50Aでの飼育結果に基づいて設定され、許容上限値と許容下限値は適切な値に設定されている。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS540へ処理を進める。
【0138】
ステップS540にて人工干潟管理装置P5は、規定時間(例えば3時間など)以上、「集団」が発生している領域の有無を判定する。人工干潟管理装置P5は、例えば、3時間以上、標準領域毎個体密度の許容上限値と許容下限値による許容範囲(領域毎個体密度許容範囲)よりも大きな領域毎個体密度を有する領域がある場合、規定時間以上「集団」が発生している領域がある、と判定する。人工干潟管理装置P5は、規定時間以上「集団」が発生している領域は無いと判定した場合(Yes)はステップS550へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS545へ処理を進める。なお「集団」が発生している場合は、水棲生物または環境維持システムに異常が発生している可能性がある。
【0139】
ステップS545へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、領域毎に、環境状態(日照環境、温度環境、溶存酸素濃度環境など)が環境許容範囲内であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、日照環境については、図9の[時刻・日照強度特性]と現在時刻に基づいて取得した目標日照強度の許容上限値と許容下限値の範囲に、現在の日照強度が収まっている場合は(Yes)と判定し、収まっていない場合は(No)と判定する。そして人工干潟管理装置P5は、温度環境、溶存酸素濃度環境、塩分濃度環境、水位環境、についても同様に判定し、1つでも(No)と判定した環境がある場合にはステップS545では(No)と判定してステップS570へ処理を進め、すべての環境が(Yes)である場合にはステップS545では(Yes)と判定してステップS560へ処理を進める。
【0140】
ステップS550へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、規定時間以上「集団」が発生している領域は無い(ステップS540)ので、水棲生物は正常であると判定し、水棲生物異常フラグをOFFに設定する。また、「集団」が発生していないのであれば、環境状態は許容範囲内に収まっているとみなしても問題ない。これにより、人工干潟管理装置P5は、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図17に示す処理を終了し、図15のステップS065へ処理を戻す。
【0141】
ステップS560へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境状態がすべて許容範囲内である(ステップS545)にもかかわらず、規定時間以上の「集団」が発生しているので(ステップS540)、水棲生物は異常であると判定し、水棲生物異常フラグをONに設定する。また人工干潟管理装置P5は、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図17に示す処理を終了し、図15に示すステップS065へ処理を戻す。
【0142】
ステップS570へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団環境修復中フラグをONに設定し、集団環境修復開始フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図17に示す処理を終了し、図15のステップS065へ処理を戻す。
【0143】
ステップS570へ処理が進んだ場合は、規定時間以上の「集団」が発生している領域が有るが(ステップS540)、いずれかの環境状態も許容範囲を逸脱している(ステップS545)、という場合である。この場合、規定時間以上の「集団」が発生している異常の原因は、水棲生物A5の異常(病気や衰弱など)か、環境維持システムの異常か、区別することができない。そこで人工干潟管理装置P5は、[集団環境修復処理]にて環境が正常な状態となるように修復することを試み、環境が正常に修復されても規定時間以上の「集団」が発生している異常な場合は水棲生物A5の異常であると判定する。
【0144】
●[第2の実施の形態の[集団環境修復処理](図18)]
次に、第2の実施の形態にて追加された[集団環境修復処理]の詳細について説明する。図18に示す[集団環境修復処理]は、図12に示す[環境修復処理]とよく似た処理であり、環境修復開始フラグ/環境修復中フラグ/修復中タイマ/修復待機時間、のそれぞれが、集団環境修復開始フラグ/集団環境修復中フラグ/集団修復中タイマ/集団修復待機時間、に変更されている。人工干潟管理装置P5は、図15のステップS067の[集団環境修復処理]を実行する場合、図18に示す[集団環境修復処理]のステップS610へ処理を進める。
【0145】
ステップS610に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団環境修復開始フラグ(図17のステップS570にてONに設定されるフラグ)がONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、集団環境修復開始フラグがONである場合(Yes)は、集団環境修復処理の開始タイミングであると判定してステップS615へ処理を進め、集団環境修復開始フラグがOFFである場合(No)は、集団環境修復処理の開始タイミングではない判定してステップS625へ処理を進める。
【0146】
ステップS615へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境許容範囲を逸脱している環境に対応する調整装置の制御量を増量または減量し、ステップS620へ処理を進める。例えば、ある領域の温度状態検出装置56Kにて検出した温度(温度環境)が、現在時刻に応じた目標温度の許容上限値と許容下限値(図9参照)である環境許容範囲から逸脱して低い場合、環境許容範囲内に入るように、その領域の温度調整装置56Jへの制御量を強制的に増量して温度を上昇させる。
【0147】
ステップS620にて人工干潟管理装置P5は、集団環境修復開始フラグをOFFに設定し、集団修復中タイマを初期化して起動し、ステップS625へ処理を進める。なお、集団修復中タイマは、集団環境修復処理を開始してからの経過時間を計測するためのタイマである。
【0148】
ステップS625へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団修復中タイマ(計測時間)が集団修復待機時間以上であるか否かを判定する。環境の修復にはそれなりの時間がかかるので、集団修復待機時間は、例えば3~4時間程度に設定されている。人工干潟管理装置P5は、集団修復中タイマが集団修復待機時間以上である場合(Yes)はステップS630へ処理を進め、そうでない場合(No)は図18に示す処理を終了し、図15のステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0149】
ステップS630へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団環境修復中フラグをOFFに設定し、集団修復回数をカウントアップ(+1)して、ステップS635へ処理を進める。
【0150】
ステップS635にて人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が環境許容範囲内に入ったか否かを判定する。例えば人工干潟管理装置P5は、領域R5(1、1)(図6参照)の温度(温度環境)が環境許容範囲を逸脱して低い場合、ステップS615にて、まず強制的に領域R5(1、1)の温度調整装置の制御量を大きく増量し、その後は図7のステップS015にて制御量を調整する。そして人工干潟管理装置P5は、集団修復待機時間が経過した場合にステップS635にて、領域R5(1、1)の温度が環境許容範囲内に入ったか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が環境許容範囲内に入った場合(Yes)はステップS640へ処理を進め、修復対象の環境がまだ環境許容範囲を逸脱している場合(No)はステップS645へ処理を進める。
【0151】
ステップS640へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、修復対象の環境が正常に修復されたと判定し、集団修復回数を0(ゼロ)に初期化し、環境維持システムは正常であると判定し、環境維持システム異常フラグをOFFに設定する。なお、この時点では、水棲生物A5が正常か異常か判定できないので、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグについては、何も操作せず、現在の状態を保持する。そして人工干潟管理装置P5は、図18に示す処理を終了し、図15のステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0152】
ステップS645へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集団修復回数が、予め設定された集団修復上限回数以上であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、集団修復回数が集団修復上限回数以上である場合(Yes)はステップS650へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS655へ処理を進めて再度の集団環境修復処理を試みる。
【0153】
ステップS650へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境維持システムは異常であると判定し、環境維持システム異常フラグをONに設定する。なお、この時点では、水棲生物A5が正常か異常か判定できないので、人工干潟管理装置P5は、水棲生物異常フラグについては、何も操作せず、現在の状態を保持する。例えば集団修復上限回数が3回に設定されている場合、対象の領域の対象の環境は3回の修復を試みても環境が正常に修復されなかったので、人工干潟管理装置P5は、環境維持システムに異常が発生していると判定する。そして人工干潟管理装置P5は、図18に示す処理を終了し、図15のステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0154】
ステップS655へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境許容範囲を逸脱している環境に対応する調整装置の制御量をさらに増量、またはさらに減量し、ステップS660へ処理を進める。例えば、領域R5(1、1)の温度状態検出装置56Kにて検出した温度(温度環境)が、現在時刻に応じた目標温度の許容上限値と許容下限値(図9参照)である環境許容範囲から、まだ逸脱して低い場合、環境許容範囲内に入るように、その領域R5(1、1)の温度調整装置56Jへの制御量を強制的に、さらに増量して温度を上昇させる。
【0155】
ステップS660にて人工干潟管理装置P5は、集団環境修復中フラグをONに設定し、集団修復中タイマを初期化して起動し、再度の集団環境修復処理を試みる。そして人工干潟管理装置P5は、図18に示す処理を終了し、図7のステップS070(この場合、ステップS090)へ処理を戻す。
【0156】
●[第2の実施の形態の、水棲生物異常フラグのON/OFFと、環境維持システム異常フラグのON/OFFについて(図19)]
図19は、図16の[全域個体密度チェック]と、図12の[環境修復処理]と、図17の[領域毎個体密度チェック(集団チェック)]と、図18の[集団環境修復処理]によって、水棲生物異常フラグのON/OFFと、環境維持システム異常フラグのON/OFFが設定される経緯を図示したものである。この図19に示すように、水棲生物異常フラグのON/OFFの設定と、環境維持システム異常フラグのON/OFFの設定が、上記のフローチャートにて実現されている。なお、図19に示す第2の実施の形態に関する図は、図13に示す第1の実施の形態に関する図に対して、[第2の実施の形態での追加分]が追加されている。
【0157】
●[第3の実施の形態における人工干潟管理装置P5の処理手順(図20図22)]
次に図20図22を用いて、第3の実施の形態の処理手順について説明する。第3の実施の形態では、第2の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図15)と[警報出力処理](図14(第1の実施の形態と同じ))が、それぞれ[人工干潟システムの全体処理](図20)と[警報出力処理](図22)に変更されている。また第3の実施の形態では、図21の[習性チェック]が追加されている。その他の処理については、第2の実施の形態と同様であるので説明を省略する。以下、第2の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0158】
●[第3の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図20)]
図20に示すフローチャートでは、太枠で示したステップS070~S075が、図15に示す第2の実施の形態に対して追加されている。以下、第2の実施の形態との相違点であるステップS070~S075について説明する。なお、図20において、点線にて示すステップS030~S040は、第4の実施の形態にて追加されるステップであり、第3の実施の形態では実装されていない。従って、第3の実施の形態では、ステップS030~S040については説明を省略する。
【0159】
ステップS070へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、習性チェックタイミングであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、習性チェックタイミングであると判定した場合(Yes)はステップS075へ処理を進め、習性チェックタイミングでないと判定した場合(No)はステップS072へ処理を進める。なお「習性チェックタイミング」は、水棲生物A5が、所定の特徴を有する運動である特徴的運動を、所定の頻度で実行する習性を確認するタイミングであり、例えば1時間毎のタイミング(・・・時刻6:00、時刻7:00、時刻8:00・・・)に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0160】
なお、以下の例では、水棲生物A5がムツゴロウであり、特徴的運動は、1時間あたりに1~2回程度の頻度で、体を反転させる動作(背中と腹を反転させて元に戻る動作)で説明する。例えばムツゴロウは、定期的に体を反転させて干潟表面の湿泥を全身に付着させ、体が乾燥することを防止する、という習性を有しており、干潟表面の湿泥の水分が不足すると、反転(特徴的運動)の頻度が多くなる。この特徴的運動の頻度が多くなった場合は、人工干潟の環境表面50Sの水分が不足している場合であるので、散水等にて環境表面50Sの水分を補充する必要がある。なお、水槽システム3で飼育する水棲生物A3にも、同様に定期的に体を反転させる習性がある場合(乾燥防止とは目的が異なる)、同様にチェックをすることができる。
【0161】
ステップS072へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグがONであるか否かを判定する。なお「習性チェックフラグ」は、ステップS075の[習性チェック]にてONに設定される。人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグがONである場合(Yes)はステップS075へ処理を進め、習性チェックフラグがOFFである場合(No)はステップS090へ処理を進める。
【0162】
ステップS075へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[習性チェック]を実行してステップS090へ処理を進める。なお[習性チェック]の処理の詳細については後述する。
【0163】
●[第3の実施の[習性チェック](図21)]
次に、第3の実施の形態にて追加された[習性チェック]の詳細について説明する。人工干潟管理装置P5は、図20のステップS075の[習性チェック]を実行する場合、図21に示す[習性チェック]のステップS710へ処理を進める。
【0164】
ステップS710に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグがONである場合(Yes)はステップS725へ処理を進め、習性チェックフラグがOFFである場合(No)はステップS715へ処理を進める。
【0165】
ステップS715へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、予め設定された観測期間(例えば、30分~1時間程度)の間、撮像用照明を照射するように撮像用照明装置55Aの動作を設定する。そして人工干潟管理装置P5は、観測期間の間、所定時間間隔(例えば、0.1秒~1秒程度の時間間隔)で、連続する複数の環境表面画像を撮像して取得するように撮像装置55Bの動作を設定する、あるいは、観測期間の間、環境表面の動画を撮像して取得するように撮像装置55Bの動作を設定する。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS720へ処理を進める。
【0166】
ステップS720にて人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグをONに設定し、習性チェックタイマを初期化して起動する。なお習性チェックタイマは、上記の観測期間を計測するためのタイマである。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS725へ処理を進める。
【0167】
ステップS725へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、習性チェックタイマにて計測した時間が、観測期間を経過したか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、習性チェックタイマにて計測した時間が観測期間を経過している場合(Yes)はステップS730へ処理を進め、そうでない場合(No)は図21に示す処理を終了し、図20のステップS090へ処理を戻す。
【0168】
ステップS730へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、連続する複数の環境表面画像、あるいは環境表面の動画から水棲生物A5を抽出する。そして人工干潟管理装置P5は、抽出した水棲生物A5における、時刻に応じた輝度の変化を求める。水棲生物A5がムツゴロウの場合、ムツゴロウの背中側の輝度と腹側の輝度は異なっており、背中側はほぼ黒色であり輝度は低く、腹側は銀色に輝く高い輝度である。人工干潟管理装置P5は、この輝度の変化に基づいて、ムツゴロウの習性である、体を反転させる動作(特徴的運動)の頻度(観測期間における反転回数)を算出する。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS735へ処理を進める。
【0169】
ステップS735にて人工干潟管理装置P5は、習性チェックフラグをOFFに設定し、ステップS740へ処理を進める。
【0170】
ステップS740にて人工干潟管理装置P5は、時刻に応じた標準特徴的運動頻度が設定された[時刻・標準特徴的運動頻度特性](図示省略)と現在時刻に基づいて、時刻に応じた特徴的運動頻度の標準である標準特徴的運動頻度(及び許容上限値と許容下限値)を取得する。そして人工干潟管理装置P5は、ステップS745へ処理を進める。
【0171】
ステップS745にて人工干潟管理装置P5は、ステップS730にて求めた特徴的運動の頻度が、標準特徴的運動頻度の許容上限値(許容頻度範囲)よりも多いか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、求めた特徴的運動頻度が許容上限値よりも多い場合(あるいは、許容頻度範囲を逸脱している場合)(Yes)はステップS750へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS760へ処理を進める。
【0172】
ステップS750へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、人工干潟の環境表面50Sの水分が不足しているので、水棲生物A5の特徴的運動の頻度が許容上限値よりも多くなっていると判定して、水分不足警告フラグをONに設定し、散水要求フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図21に示す処理を終了し、図20のステップS090へ処理を戻す。
【0173】
ステップS760へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、人工干潟の環境表面50Sの水分は不足していないので、水棲生物A5の特徴的運動の頻度は許容上限値以下であると判定して、水分不足警告フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図21に示す処理を終了し、図20のステップS090へ処理を戻す。
【0174】
●[第3の実施の形態の[警報出力処理](図22)]
図22に示す第3の実施の形態の[警報出力処理]は、図14に示す第1及び第2の実施の形態の[警報出力処理]に対して、太枠にて示すステップS930~S937が追加されている。以下、第1及び第2の実施の形態からの変更点を主に説明する。
【0175】
ステップS930に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、水分不足警告フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、水分不足警告フラグがONである場合(Yes)はステップS935Aへ処理を進め、水分不足警告フラグがOFFである場合(No)はステップS935Bへ処理を進める。
【0176】
ステップS935Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、(環境表面の)水分不足の警報を出力し、ステップS936へ処理を進める。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、環境表面の水分が不足していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0177】
ステップS936へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、散水要求フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、散水要求フラグがONである場合(Yes)はステップS937へ処理を進め、散水要求フラグがOFFである場合(No)は図22に示す処理を終了し、図20のステップS010へ処理を戻す。
【0178】
ステップS937へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、散水要求フラグをOFFに設定し、予め設定された散水実行時間(例えば、10分~30分程度)の間、環境表面50S(人工干潟の表面)に散水するように、散水装置(図示省略)の動作を設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図22に示す処理を終了し、図20のステップS010へ処理を戻す。なお水槽システム3の場合では、散水を省略する。
【0179】
ステップS935Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、環境表面の水分が不足していることを示す警報の出力を停止し、図22に示す処理を終了し、図20のステップS010へ処理を戻す。
【0180】
●[第4の実施の形態における人工干潟管理装置P5の処理手順(図23図26)]
次に図23図26を用いて、第4の実施の形態の処理手順について説明する。第4の実施の形態では、第3の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図20)と[警報出力処理](図22)が、それぞれ[人工干潟システムの全体処理](図23)と[警報出力処理](図26)に変更されている。また第4の実施の形態では、図24の[観測システムの故障検出]と、図25の[集合装置の故障検出]が追加されている。その他の処理については、第3の実施の形態と同様であるので説明を省略する。以下、第3の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0181】
●[第4の実施の形態の[人工干潟システムの全体処理](図23)]
図23に示すフローチャートは、図20に示すフローチャートに対して、太枠で示したステップが追加されている。つまり、第4の実施の形態では、図23に示すフローチャートにおいて、太枠で示したステップS030~S040が、図20に示す第3の実施の形態に対して追加されている。その他の処理については第3の実施の形態と同様であるので説明を省略する。以下、第3の実施の形態との相違点であるステップS030~S040について説明する。
【0182】
ステップS030へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、観測システムの故障検出タイミングであるか否かを判定する。なお「観測システム」は、環境表面画像を取得するための装置であり、この場合、撮像用照明装置55Aと撮像装置55Bを含むシステムである。また、「観測システムの故障検出タイミング」は、例えば「異常チェックタイミング」と同じタイミングであり、例えば1時間毎のタイミング(・・・時刻6:00、時刻7:00、時刻8:00・・・)に設定されているが、これに限定されるものではない。人工干潟管理装置P5は、観測システムの故障検出タイミングであると判定した場合(Yes)はステップS035へ処理を進め、観測システムの故障検出タイミングではないと判定した場合(No)はステップS032へ処理を進める。
【0183】
ステップS032へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONであるか否かを判定する。なお「故障検出中フラグ」は、図25の[集合装置の故障検出]にてON/OFFに設定される。人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONである場合(Yes)はステップS035へ処理を進め、故障検出中フラグがOFFである場合(No)はステップS040へ処理を進める。
【0184】
ステップS035へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[観測システムの故障検出]を実行してステップS040へ処理を進める。なお[観測システムの故障検出]の処理の詳細については後述する。
【0185】
ステップS040へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、観測システムに故障があるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、観測システムに故障が発生している場合(Yes)はステップS090へ処理を進め、観測システムに故障が発生していない場合(No)はステップS045へ処理を進める。なお人工干潟管理装置P5は、観測システムに故障が発生しているか否か、例えば撮像用照明装置故障フラグのON/OFF状態、撮像装置故障フラグのON/OFF状態にて判定することができる。
【0186】
●[第4の実施の形態の[観測システムの故障検出](図24)]
次に、第4の実施の形態にて追加された[観測システムの故障検出]の処理の詳細について説明する。人工干潟管理装置P5は、図23のステップS035の[観測システムの故障検出]を実行する場合、図24に示す[観測システムの故障検出]のステップSA10へ処理を進める。
【0187】
ステップSA10に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONである場合(Yes)はステップSA70へ処理を進め、故障検出中フラグがOFFの場合(No)はステップSA15へ処理を進める。
【0188】
ステップSA15へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aの故障検出を開始する。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aの断線チェックを行い、ステップSA20へ処理を進める。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aを通電/非通電にしてチェックを行い、撮像用照明装置55Aが断線しているか否かをチェックすることができる。
【0189】
ステップSA20にて人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aが断線していないか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aが断線していない判定した場合(Yes)はステップSA25へ処理を進め、断線していると判定した場合(No)はステップSA80へ処理を進める。
【0190】
ステップSA80へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aは故障していると判定し、撮像用照明装置正常フラグをOFFに設定し、撮像用照明装置故障フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図24に示す処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aが故障していると判定した場合は、撮像装置55Bの故障検出、集合装置55Dの故障検出を行わない。
【0191】
ステップSA25へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aは正常であると判定し、撮像用照明装置正常フラグをONに設定し、撮像用照明装置故障フラグをOFFに設定し、ステップSA30へ処理を進める。
【0192】
ステップSA30にて人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bの故障検出を開始する。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aを用いて撮像用照明の照射を開始し(疑似日光調整装置を一時的に停止)、撮像装置55Bを用いて環境表面50Sを撮像し、環境表面画像を取得する。その後、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aからの撮像用照明の照射を停止し、疑似日光調整装置の動作を復帰させる。そして人工干潟管理装置P5は、ステップSA35へ処理を進める。
【0193】
ステップSA35にて人工干潟管理装置P5は、環境表面画像に写っている環境表面50Sの第1所定位置に配置されているダミー体55C(図4参照)を、水棲生物A5と同様に抽出し、ダミー体55Cの数を算出する。また、人工干潟管理装置P5は、各ダミー体の輝度を算出し、ステップSA40へ処理を進める。
【0194】
なお、ダミー体55Cは、大きさ、輝度、形状など、水棲生物A5を模して第1所定位置に配置されており、環境表面画像に写っていれば、水棲生物A5と同様に抽出される。なお、ダミー体55Cの背中側の輝度、腹側の輝度は、それぞれ水棲生物の背中側の輝度、腹側の輝度、と同様にされている。そしてダミー体55Cの数体は腹側を上に向け、残りは背中側を上に向けて配置されている。
【0195】
ステップSA40にて人工干潟管理装置P5は、環境表面画像における第1所定位置から抽出されたダミー体の数、各ダミー体の輝度など、が正常に判定されているか否かを判定する。ダミー体の数や各ダミー体の輝度は予めわかっており、人工干潟管理装置P5は、環境表面画像から抽出されたダミー体の数やダミー体の輝度と、予めわかっている数や輝度が正常であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、抽出したダミー体の数が正しく、かつ、各ダミー体の輝度がそれぞれ所定輝度範囲内である場合(Yes)はステップSA50へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA60へ処理を進める。
【0196】
ステップSA50へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bは正常であると判定し、撮像装置正常フラグをONに設定し、撮像装置故障フラグをOFFに設定し、ステップSA70へ処理を進める。
【0197】
ステップSA60へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bは故障していると判定し、撮像装置正常フラグをOFFに設定し、撮像装置故障フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図24に示す処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bが故障していると判定した場合は、集合装置55Dの故障検出を行わない。
【0198】
ステップSA70へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、[集合装置の故障検出]の処理を実行し、図24に示す処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。なお[集合装置の故障検出]の処理の詳細については後述する。
【0199】
●[第4の実施の形態の[集合装置の故障検出](図25)]
次に、第4の実施の形態にて追加された[集合装置の故障検出]の詳細について説明する。人工干潟管理装置P5は、図24のステップSA70の[集合装置の故障検出]を実行する場合、図25に示す[集合装置の故障検出]のステップSB10へ処理を進める。
【0200】
ステップSB10へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグがONである場合(Yes)はステップSB30へ処理を進め、故障検出中フラグがOFFである場合(No)はステップSB15へ処理を進める。
【0201】
ステップSB15へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aを用いて撮像用照明の照射を開始し(疑似日光調整装置を一時的に停止)、撮像装置55Bを用いて環境表面50Sを撮像した環境表面画像を取得する。なお、この時点では集合装置55D(スピーカなど)を動作させていないので、人工干潟管理装置P5は、非集合時の環境表面画像を取得する。その後、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aからの撮像用照明の照射を停止し、疑似日光調整装置の動作を復帰させる。そして人工干潟管理装置P5は、ステップSB20へ処理を進める。
【0202】
ステップSB20にて人工干潟管理装置P5は、予め設定された故障検出時間(例えば、1時間程度)の間、集合情報を出力するように集合装置55Dの動作を設定する。人工干潟管理装置P5は、例えば、約1時間の間、水棲生物A5を集合させる集合情報(所定の音声など、給餌時に出力する音声)を出力して水棲生物A5を集めることを開始し、ステップSB25へ処理を進める。
【0203】
ステップSB25にて人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグをONに設定し、故障検出タイマを初期化して起動し、ステップSB30へ処理を進める。なお故障検出タイマは、集合装置から集合情報の出力を開始してからの経過時間を計測するタイマである。
【0204】
ステップSB30にて人工干潟管理装置P5は、故障検出タイマにて計測した時間が、予め設定された故障検出待機時間(例えば、約30分)を経過したか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、故障検出タイマにて計測した時間が故障検出待機時間を経過した場合(Yes)はステップSB35へ処理を進め、まだ故障検出待機時間を経過していない場合(No)は図25に示す処理を終了し、図24のステップSA70の下へ処理を戻して図24の処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。
【0205】
ステップSB35へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aを用いて撮像用照明の照射を開始し(疑似日光調整装置を一時的に停止)、撮像装置55Bを用いて環境表面50Sを撮像した環境表面画像を取得する。なお、この時点では集合装置55D(スピーカなど)を動作させて故障検出待機時間を経過しているので、人工干潟管理装置P5は、集合時の環境表面画像を取得する。その後、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aからの撮像用照明の照射を停止し、疑似日光調整装置の動作を復帰させる。そして人工干潟管理装置P5は、ステップSB40へ処理を進める。
【0206】
ステップSB40にて人工干潟管理装置P5は、故障検出中フラグをOFFに設定してステップSB45へ処理を進める。
【0207】
ステップSB45にて人工干潟管理装置P5は、ステップSB15にて取得した非集合時の環境表面画像と、ステップSB35にて取得した集合時の環境表面画像と、に基づいて、環境表面及び環境表面近傍の水棲生物A5を抽出する。そして人工干潟管理装置P5は、非集合時/集合時のそれぞれの環境表面画像から、集合装置55Dが設置されている第2所定位置の近傍の領域における水棲生物A5の個体数、領域毎個体密度をそれぞれ算出する。図6の例の場合、集合装置55Dの位置(第2所定位置)の近傍となる領域R5(2、2)について、非集合時の個体数と領域毎個体密度と、集合時の個体数と領域毎個体密度を算出する。そして人工干潟管理装置P5は、ステップSB50へ処理を進める。
【0208】
ステップSB50にて人工干潟管理装置P5は、非集合時の水棲生物A5の個体数(または領域毎個体密度)と、集合時の水棲生物A5の個体数(または領域毎個体密度)との偏差(あるいは単純な差)を算出し、ステップSB55へ処理を進める。
【0209】
ステップSB55にて人工干潟管理装置P5は、偏差(あるいは単純な差)が、予め設定された所定閾値以上であるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、偏差(あるいは差)が所定閾値以上である場合(Yes)はステップSB60へ処理を進め、偏差(あるいは差)が所定閾値未満である場合(No)はステップSB70へ処理を進める。
【0210】
ステップSB60へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置は正常であると判定し、集合装置正常フラグをONに設定し、集合装置故障フラグをOFFに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図25に示す処理を終了し、図24のステップSA70の下へ処理を戻して図24の処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。
【0211】
ステップSB70へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置は故障していると判定し、集合装置正常フラグをOFFに設定し、集合装置故障フラグをONに設定する。そして人工干潟管理装置P5は、図25に示す処理を終了し、図24のステップSA70の下へ処理を戻して図24の処理を終了し、図23のステップS040へ処理を戻す。
【0212】
●[第4の実施の形態の[警報出力処理](図26)]
図26に示す第4の実施の形態の[警報出力処理]は、図22に示す第3の実施の形態の[警報出力処理]に対して、太枠にて示すステップS940~S965A、S965Bが追加されている。以下、第3の実施の形態からの変更点を主に説明する。
【0213】
ステップS940に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置故障フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置故障フラグがONである場合(Yes)はステップS945Aへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS942へ処理を進める。
【0214】
ステップS942へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置正常フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置正常フラグがONである場合(Yes)はステップS945Bへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS950へ処理を進める。
【0215】
ステップS945Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aの故障の警報を出力し、ステップS950へ処理を進める。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、撮像用照明装置55Aが故障していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0216】
ステップS945Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像用照明装置55Aが故障していることを示す警報の出力を停止し、ステップS950へ処理を進める。
【0217】
ステップS950に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置故障フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、撮像装置故障フラグがONである場合(Yes)はステップS955Aへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS952へ処理を進める。
【0218】
ステップS952へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置正常フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、撮像装置正常フラグがONである場合(Yes)はステップS955Bへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS960へ処理を進める。
【0219】
ステップS955Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bの故障の警報を出力し、ステップS960へ処理を進める。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、撮像装置55Bが故障していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0220】
ステップS955Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、撮像装置55Bが故障していることを示す警報の出力を停止し、ステップS960へ処理を進める。
【0221】
ステップS960に処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置故障フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、集合装置故障フラグがONである場合(Yes)はステップS965Aへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS962へ処理を進める。
【0222】
ステップS962へ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置正常フラグがONであるか否かを判定する。人工干潟管理装置P5は、集合装置正常フラグがONである場合(Yes)はステップS965Bへ処理を進め、そうでない場合(No)は図26に示す処理を終了し、図23のステップS010へ処理を戻す。
【0223】
ステップS965Aへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置55Dの故障の警報を出力し、図26に示す処理を終了し、図23のステップS010へ処理を戻す。例えば人工干潟管理装置P5は、自身が備えている表示装置(モニタ)や音声出力装置(スピーカ)から、集合装置55Dが故障していることを示す警報を出力して管理者に報知する。
【0224】
ステップS965Bへ処理を進めた場合、人工干潟管理装置P5は、集合装置55Dが故障していることを示す警報の出力を停止し、図26に示す処理を終了し、図23のステップS010へ処理を戻す。
【0225】
以上の処理により、水棲生物を飼育する水槽または人工干潟において、水槽または人工干潟の環境状態の異常と水棲生物の状態の異常とを早期の段階で適切に判定して警報を出力することで、飼育している水棲生物が死滅することを未然に防止することができる。
【0226】
以上、人工干潟システム5を管理する人工干潟管理装置P5(管理装置に相当)の説明をしたが、水槽システム3を管理する水槽管理装置P3(管理装置に相当)も同様であり、水槽管理装置P3については説明を省略する。
【0227】
また、図11及び図16のステップS320、図21のステップS715、図24のステップSA30、図25のステップSB15、SB35の処理を実行している人工干潟管理装置P5または水槽管理装置P3は、撮像装置を用いて、水槽内の水面である環境表面を撮像して水槽内の水面近傍の画像である環境表面画像を取得する、あるいは、人工干潟の湿泥表面である環境表面を撮像して人工干潟の湿泥表面の画像である環境表面画像を取得する、環境表面画像取得部P5A、P3A(図4図2参照)に相当している。
【0228】
また、図11及び図16の[全域個体密度チェック]の処理を実行している人工干潟管理装置P5または水槽管理装置P3は、取得した環境表面画像から水棲生物を抽出し、環境表面の広さに対する水棲生物の個体数である全域個体密度を求める、個体密度測定部P5B、P3B(図4図2参照)に相当している。
【0229】
また、図11及び図16の[全域個体密度チェック]と、図14及び図22及び図26の[警報出力処理]を実行している人工干潟管理装置P5または水槽管理装置P3は、求めた全域個体密度が、予め設定した全域個体密度許容範囲を逸脱している場合に、水棲生物に異常が発生している、あるいは水槽または人工干潟の環境に異常が発生している、と判定して警報を出力する、異常判定部P5C、P3C(図4図2参照)に相当している。
【0230】
また、図8の[環境維持システムを用いた環境調整制御]を実行している人工干潟管理装置P5または水槽管理装置P3は、疑似日光調整装置からの疑似日光による日照状態である日照環境と、温度調整装置にて調整した温度状態である温度環境と、溶存酸素濃度調整装置にて調整した溶存酸素濃度状態である溶存酸素濃度環境が、時刻に応じて設定されたそれぞれの許容範囲内に収まるように制御する、自然環境維持部P5D、P3D(図4図2参照)に相当している。
【0231】
また、図21の[習性チェック]を実行している人工干潟管理装置P5または水槽管理装置P3は、取得した複数の環境表面画像、あるいは、環境表面動画に基づいて抽出した水棲生物の輝度の変化に基づいて水棲生物の習性に基づいた特徴的運動の頻度である特徴的運動頻度を算出する、特徴的運動頻度算出部P5E、P3E(図4図2参照)に相当している。
【0232】
●[その他]
本明細書に開示の技術の、水槽または人工干潟の管理システムは、本実施の形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されず、本明細書に開示の技術の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0233】
水槽システム3、人工干潟システム5にて飼育する水棲生物A3、A5は、魚介類であればよく、特に限定しない。また「習性チェック」に関する処理は、飼育する魚介類の習性に応じて変更すればよい。
【0234】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0235】
1 プラント
2 栽培槽システム
3 水槽システム
3A、5A 管理システム
4 中間槽システム
5 人工干潟システム
20 栽培槽
21A、21B バルブ
22A ポンプ
23A 注水配管
23B、23C 排水配管
30 水槽
30S 環境表面
31A、31B、31D バルブ
32A、32E、32F ポンプ
33A、33E 注水配管
33B、33C 排水配管
33D 生体移動通路
33F ろ過用配管
34F ろ過器
35A、55A 撮像用照明装置
35AJ、55AJ 照明光軸
35B、55B 撮像装置
35BJ、55BJ 撮像装置光軸
35C、55C ダミー体
35D、55D 集合装置
35E、55E 給餌装置
36A、56A 疑似日光調整装置
36B、56B 日照状態検出装置
36C、56C 水位状態検出装置
36D、56D 塩分濃度状態検出装置
36E、56E 溶存酸素濃度調整装置
36F、56F バルブ
36G、56G 酸素吐出口
36H、56H 溶存酸素濃度状態検出装置
36J、56J 温度調整装置
36K、56K 温度状態検出装置
40 中間槽
41D、41E バルブ
42D、42E ポンプ
43D、43E 注水配管
43F 排水配管
43G 生体移動通路
50 人工干潟槽
50A 人工干潟
50S 環境表面
51A、51B バルブ
52A ポンプ
53A 注水配管
53B、53E 排水配管
Ds 湿泥
L1 通信回線
P1 総合管理装置(管理装置)
P2 栽培槽管理装置(管理装置)
P3 水槽管理装置(管理装置)
P4 中間槽管理装置(管理装置)
P5 人工干潟管理装置(管理装置)
P5A、P3A 環境表面画像取得部
P5B、P3B 個体密度測定部
P5C、P3C 異常判定部
P5D、P3D 自然環境維持部
P5E、P3E 特徴的運動頻度算出部
R3(1、1)~R3(2、2)、R5(1、1)~R5(2、2) 領域
Ws 海水
Wm 混合水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26