(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121303
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ガスメータおよびガス遮断復帰判断システム
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20230824BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20230824BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G01F3/22 B
H04M11/00 302
H04Q9/00 311J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024564
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真純
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 崇士
(72)【発明者】
【氏名】白澤 忠徳
(72)【発明者】
【氏名】上田 高寛
【テーマコード(参考)】
2F030
5K048
5K201
【Fターム(参考)】
2F030CB01
2F030CC13
2F030CF11
5K048AA15
5K048BA36
5K048DA02
5K048DC01
5K048EB12
5K048GB05
5K201AA07
5K201CC08
5K201CC09
5K201DC04
5K201EB06
5K201EC06
5K201ED09
5K201FB08
(57)【要約】
【課題】ガスメータを含むガスインフラ全体の安全性を確保することができ、復旧作業を効率化することができるガスメータおよびガス遮断復帰判断システムを提供する。
【解決手段】ガスメータは、需要家宅に設置されたガス機器に供給されるガスが通流する流路に設けられて流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、自己診断を行う自己診断部と、振動を検知する振動検知部と、振動検知部により検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する算出部と、地震指標値が所定値以上である場合に流路をガスが通流可能な開放状態から流路内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる遮断部と、遮断部が閉鎖状態になった場合に、自己診断部による診断結果および地震指標値に基づき、遮断部についての閉鎖状態から開放状態への復帰方法を決定する復帰方法決定部とを備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家宅に設置されたガス機器に供給されるガスが通流する流路に設けられて前記流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、
自己診断を行う自己診断部と、
振動を検知する振動検知部と、
前記振動検知部により検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する算出部と、
前記地震指標値が所定値以上である場合に前記流路をガスが通流可能な開放状態から前記流路内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる遮断部と、
前記遮断部が前記閉鎖状態になった場合に、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に基づき、前記遮断部についての前記閉鎖状態から前記開放状態への復帰方法を決定する復帰方法決定部と、を備える、ガスメータ。
【請求項2】
前記需要家宅に関する需要家宅情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記復帰方法決定部は、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に加えて前記需要家宅情報に基づき前記復帰方法を決定する、請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
需要家宅に対応するガスメータおよび前記ガスメータとの間で通信可能なセンターサーバを備えるガス遮断復帰判断システムであって、
前記ガスメータは、
前記需要家宅に設置されたガス機器に供給されるガスが通流する流路に設けられて前記流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、
自己診断を行う自己診断部と、
振動を検知する振動検知部と、
前記振動検知部により検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する算出部と、
前記地震指標値が所定値以上である場合に前記流路をガスが通流可能な開放状態から前記流路内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる遮断部と、
前記センターサーバとの通信を行う通信部と、を有し、
前記センターサーバは、
前記ガスメータから取得した前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に基づき、各前記需要家宅に対応する前記ガスメータの点検方法を決定する点検方法決定部を有する、ガス遮断復帰判断システム。
【請求項4】
前記点検方法決定部は、前記地震指標値としてのSI値に基づき前記ガスメータの点検方法を決定する、請求項3に記載のガス遮断復帰判断システム。
【請求項5】
前記センターサーバは、前記需要家宅に関する需要家宅情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記点検方法決定部は、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に加えて前記需要家宅情報に基づき前記点検方法を決定する、請求項3又は4に記載のガス遮断復帰判断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス容器からのガスの供給が遮断された状態からの復帰方法を決定するガスメータおよびガス遮断復帰判断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の緊急時には、需要家宅に設けられたガスメータの遮断弁が閉鎖されることによってガスの供給が遮断される。遮断後に、震度相当値に応じてガスメータを復帰する方法、すなわちガス容器からのガスの流出を解放する方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の発明では、例えば震度相当値が5強と推定される場合には、配管内のガスの漏洩が無いことを条件にガスメータが自動復帰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一律に震度に応じてガスメータの復帰方法を決定する上記従来のシステムでは、ガスメータを含むガスインフラ全体の安全性をより一層高めることができないという課題があった。また、復旧作業を行う事業者はガスメータの復旧作業の優先度および当該復旧作業に要する時間を把握し難い。そのため、復旧作業を効率よく迅速に行うことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、ガスメータを含むガスインフラ全体の安全性を確保することができ、復旧作業を効率化することができるガスメータおよびガス遮断復帰判断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスメータは、需要家宅に設置されたガス機器に供給されるガスが通流する流路に設けられて前記流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、自己診断を行う自己診断部と、振動を検知する振動検知部と、前記振動検知部により検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する算出部と、前記地震指標値が所定値以上である場合に前記流路をガスが通流可能な開放状態から前記流路内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる遮断部と、前記遮断部が前記閉鎖状態になった場合に、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に基づき、前記遮断部についての前記閉鎖状態から前記開放状態への復帰方法を決定する復帰方法決定部と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、自己診断部による診断結果および地震指標値に基づき、ガス容器からのガスの供給を解放する復帰方法が決定される。これにより、自己診断結果を用いて一律に復帰方法を決定するのではなく、地震指標値に基づく周囲の建物等への影響度合いを加味しつつ復帰方法を決定することができる。この場合、需要家宅について、自己診断部による診断結果に基づき復帰方法が暫定的に手動復帰と判断される場合でも、算出された地震指標値が低い値であるときには、復帰方法決定部によって復帰方法を自動復帰と決定することができる。これにより、復旧作業を効率化することができる。
【0008】
一方、高い地震指標値が算出された場合には、ガスインフラ(ガスメータ、ガス機器供給までのパイプライン、および外部からガスメータまでのパイプライン等)全体の安全性の確認が必要である。したがって、ガスメータが直接的に関与できる範囲以外の安全性も確認することを促す必要がある。そのため、需要家宅について、自己診断部による診断結果に基づき復帰方法が暫定的に自動復帰と判断される場合でも、算出された地震指標値が高い値であるときには、復帰方法決定部によって復帰方法を手動復帰(つまり現場に赴いて復帰作業)と決定することができる。これにより、ガスインフラ全体の安全性の確保が可能である。
【0009】
上記発明において、ガスメータは、前記需要家宅に関する需要家宅情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記復帰方法決定部は、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に加えて前記需要家宅情報に基づき前記復帰方法を決定してもよい。
【0010】
上記構成に従えば、復帰方法を決定する際に用いる情報として需要家宅情報(例えば一般家庭や病院等の需要家宅ごとに対応付けられた公共性レベルを示す情報)を加えることで、復帰方法を公共性レベルに応じて決定することができる。これにより、ガスメータを含むガスインフラ全体の安全性の確保と復旧作業の効率化とが可能なことを前提として、復旧作業の柔軟性を向上することができる。
【0011】
本発明のガス遮断復帰判断システムは、需要家宅に対応するガスメータおよび前記ガスメータとの間で通信可能なセンターサーバを備えるガス遮断復帰判断システムであって、前記ガスメータは、前記需要家宅に設置されたガス機器に供給されるガスが通流する流路に設けられて前記流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、自己診断を行う自己診断部と、振動を検知する振動検知部と、前記振動検知部により検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する算出部と、前記地震指標値が所定値以上である場合に前記流路をガスが通流可能な開放状態から前記流路内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる遮断部と、前記センターサーバとの通信を行う通信部と、を有し、前記センターサーバは、前記ガスメータから取得した前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に基づき、各前記需要家宅に対応する前記ガスメータの点検方法を決定する点検方法決定部を有するものである。
【0012】
本発明に従えば、自己診断部による診断結果および地震指標値に基づき、各需要家宅に対応するガスメータの点検順位等の点検方法が決定される。これにより、自己診断結果を用いて一律に点検順位を決定するのではなく、地震指標値に基づく周囲の建物等への影響度合いを加味しつつ点検順位を決定することができる。例えば地震指標値が高い場合には、ガスインフラ(ガスメータ、ガス機器供給までのパイプライン、および外部からガスメータまでのパイプライン等)全体の安全性の確認が必要である。したがって、ガスメータが直接的に関与できる範囲以外の安全性も確認することを促す必要がある。この点、自己診断部の診断結果が正常であっても、地震指標値が高い場合には現場確認が必要であると判断し、点検方法決定部は復旧作業の優先度を上げる判断を出すことができる。これにより、現場での復旧作業(確認作業)とそうではない復旧作業とを分けることができると共に迅速化することができ、ゆえにガスインフラの高い安全性を確保することができる。また、自己診断部の診断結果が異常であるときには復旧作業に時間を要することから、地震指標値の高低を問わずに、復旧作業の優先度を下げることができる。これにより、復旧作業を効率化することが可能となる。
【0013】
上記発明において、前記点検方法決定部は、前記地震指標値としてのSI値に基づき前記ガスメータの点検方法を決定してもよい。
【0014】
上記構成に従えば、地震指標値として、建物に対してどの程度の被害が生じるかを数値化したSI値を用いることで、点検方法決定部は点検方法をより厳密に決定することができる。なお、地震指標値として、例えば、震度、マグニチュード、加速度、振幅、変位等、地震の規模を比較可能な各種値を用いることができる。
【0015】
上記発明において、前記センターサーバは、前記需要家宅に関する需要家宅情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記点検方法決定部は、前記自己診断部による診断結果および前記地震指標値に加えて前記需要家宅情報に基づき前記点検方法を決定してもよい。
【0016】
上記構成に従えば、点検方法を決定する際に用いる情報として需要家宅情報(例えば一般家庭や病院等の需要家宅ごとに対応付けられた公共性レベルを示す情報)を加えることで、当該点検方法を公共性レベルに応じて決めることができる。これにより、一般家庭よりも公共性が高い病院等を優先的に点検の対象とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスメータを含むガスインフラ全体の安全性を確保することができ、復旧作業の効率化ができると共に、事業や稼働を優先する需要家宅への復旧作業を優先することができ、災害発生後の復旧作業を加速させるために役立てることができるガスメータおよびガス遮断復帰判断システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本実施形態に係る需要家宅におけるガスメータを含む構成を示すブロック図である。
【
図1B】ガスが通流する流路を示すブロック図である。
【
図2】復帰方法を決定する際の復帰方法テーブルを示す図である。
【
図5】本実施形態に係るガス遮断復帰判断システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】ガス遮断復帰判断システムにおける需要家宅内の構成を示すブロック図である。
【
図7】ガス遮断復帰判断システムにおけるセンターサーバの構成を示すブロック図である。
【
図8】各需要家宅についての点検順位を決定する際に作成される点検順位テーブルを示す図である。
【
図9】各需要家宅についての点検順位を決定する際に作成される点検順位テーブルの別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るガスメータおよびガス遮断復帰判断システムについて図面を参照しながら説明する。以下に説明するガスメータおよびガス遮断復帰判断システムは一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0020】
(ガスメータ)
図1Aは本実施形態に係る需要家宅20におけるガスメータ13を含む構成を示すブロック図である。
図1Bはガスが通流する流路13rを示すブロック図である。
図1Aに示すように、需要家宅20には、2つのガス容器11と、切替器12と、ガスメータ13と、2つのガス機器14とが設けられる。需要家宅20の例としては、病院、学校、自治体施設、介護施設、一般家庭および商業施設等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ガスを使用し得る建物であればよい。
【0021】
ガス容器11はガスボンベとも呼ばれ、当該ガス容器11内にはLPガス(液化石油ガス)等のガスが充填されている。切替器12は2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内のガスがガス機器14に供給されるように流路13rの切り替えを行う。これにより、2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内でガス切れが生じても、他方のガス容器11内のガスがガス機器14に供給され得る。
【0022】
ガス機器14は、例えばガスコンロ、ガス給湯器、又はガスファンヒーター等である。但し、ガス機器14は上記に限定されるものではなく、ガスを消費する機器であればよい。
【0023】
ガスメータ13は各ガス機器14に供給されるガスの流量(つまり使用量)を計測する。以下、ガスメータ13の詳細な構成について説明する。
【0024】
ガスメータ13は、流量計側部13aと、自己診断部13bと、振動検知部13cと、算出部13dと、遮断部13eと、開閉制御部13fと、復帰方法決定部13gと、記憶部13hと、通信部13iとを備える。ガスメータ13の前記構成要素のうち自己診断部13b、算出部13d、開閉制御部13f、および復帰方法決定部13gは、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを記憶したメモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))とを含むマイクロコントローラ、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により機能的に実現される。また、記憶部13hとしては、各種メモリ又はハードディスク等を用いることができる。
【0025】
流量計測部13aは、ガス機器14に供給されるガスが通流する流路13rに設けられて当該流路13rを通流するガスの流量を計測する。つまり、流量計測部13aはガス機器14におけるガスの使用量を計測する。
【0026】
自己診断部13bはガスメータ13についての自己診断を行う。詳細には、自己診断部13bはガスメータ13自体が正常に動作可能か否かについての診断、およびガス機器14に対するガスの供給が可能か否かについての診断を行う。例えば、自己診断部13bはガスメータ13の構成要素からのガス漏れ、当該構成要素におけるガス圧の低下、当該構成要素が正常な動作をできるか否か、および、当該構成要素間で正常に通信でき断線等の異常がないかについて検出する。但し、これらの異常は自己診断部13bにより検出され得る異常の単なる例であって、上記に限られるものではない。すなわち、自己診断部13bにより検出される異常には、ガスメータ13自体が正常に動作不可能である場合の各種異常およびガス機器14に対するガスの供給が不可能である場合の各種異常が全て含まれる。
【0027】
振動検知部13cは振動を検知する。詳細には、振動検知部13cは振動の加速度値を検知する感震センサである。振動検知部13cにより得られる検知結果に基づき、後述のSI値が算出される。なお、SI(Spectral Intensity)値は、建物に対してどの程度の被害が生じるかを数値化したものとして一般に用いられている値である。
【0028】
算出部13dは、振動検知部13cにより検知された振動に基づき地震の大きさを示す地震指標値を算出する。本実施形態では、算出部13dは地震指標値として例えばSI値を算出する。
【0029】
遮断部13eは、地震指標値が所定値以上である場合に、流路13rをガスが通流可能な開放状態から流路13r内のガスの流れを遮断する閉鎖状態へと切り替わる。開閉制御部13fは遮断部13eの開閉動作を制御する。開閉制御部13fは、地震等に起因したSI値が所定値以上になったときや何らかの異常が生じたときに、遮断部13eにより流路13rを遮断させる。これにより、ガス容器11からガス機器14へのガスの供給が遮断される。
【0030】
復帰方法決定部13gは、開閉制御部13fの制御によって遮断部13eの遮断が行われた場合に、その後にガス容器11からのガスの流出を解放する復帰方法を決定する。この場合、復帰方法決定部13gは、自己診断の種およびSI値に基づき復帰方法を決定する。復帰方法としては、自動復帰、遠隔復帰および手動復帰がある。
【0031】
自動復帰とは、ガスメータ13自体が自動でガス漏れ検査を実行し、ガス漏れが生じていなければ、開閉制御部13fにより自動で遮断部13eを閉鎖状態から開放状態へ移行させる処理である。このようにガスメータ13自体で判断するため、自動復帰を行うには高い安全性の確保が確認されていることが必要となる。また、遠隔復帰とは、後記のセンターサーバ10からの指令により遮断部13eを閉鎖状態から開放状態へ移行させる処理である。遠隔復帰は人の判断により遠隔で復帰させるものであるため、周囲情報等の収集した上で遠隔復帰を実行することができる。さらに、手動復帰とは、事業者による現場での復旧作業によって遮断部13eを閉鎖状態から開放状態へ移行させるものである。手動復帰は、復帰させてよいかどうかの判断がつかない場合に現場確認を行った後に実行するものである。なお、復帰方法決定部13gによる復帰方法の決定については後で詳述する。
【0032】
各ガスメータ13の記憶部13hには、そのガスメータ13に対応する需要家宅の公共性レベルを示す需要家宅情報が予め記憶されている。また、記憶部13hには、復帰方法(自動復帰、遠隔復帰および手動復帰)を決定する際に参照される後記の復帰方法テーブルT1が記憶されている。復帰方法テーブルT1には所定のパラメータを示す情報が含まれている。上記パラメータとしては、例えば、種々の自己診断(後記の異常(a)および異常(b)等)や、地震指標値としてのSI値が挙げられる。また、ガスメータ13が設けられた需要家宅20に関する需要家宅情報を復帰方法テーブルに含ませてもよい。これについては後述する。なお、上記の需要家宅情報は需要家宅20に対応する公共性のレベルを示す情報であり、数値が高いほど公共性が高いことを示す情報である。例えば、病院である需要家宅20の需要家宅情報は5に設定され、一般家庭である需要家宅20の需要家宅情報は1に設定される。
【0033】
通信部13iは、後述のセンターサーバ10に対して無線により通信を行う機能を有する。通信部13iとセンターサーバ10との無線通信方式としては、例えばインターネットやLAN、又はLPWA(Low Power Wide Area)等の通信ネットワークを用いることができる。通信部13iは需要家宅20におけるガス機器14にて使用されたガスの使用量の情報や需要家宅を識別する需要家宅情報等を定期的にセンターサーバ10に送信する。なお、通信部13iは、定期的な送信だけでなく、異常検知時のアラームのように検知のタイミングで異常検知を知らせるための送信を行うことがある。
【0034】
以下、地震により遮断部13eが閉鎖状態となったガスメータ13に関する復帰方法の決定処理について説明する。閉鎖状態となったガスメータ13は、復帰方法決定部13gにより、自己診断部13bによる診断結果および地震指標値に基づいて自身の復帰方法を決定する。
図2は復帰方法を決定する際の復帰方法テーブルT1を示す図である。
【0035】
図2に示すように、復帰方法テーブルT1には、地震指標値(SI値)と、自己診断と、復帰方法とが含まれる。
【0036】
復帰方法決定部13gは復帰方法テーブルT1に記憶された各情報に基づき復帰方法を決定する。つまり、復帰方法テーブルT1は復帰方法決定部13gが復帰方法を決定する際の判断テーブルである。復帰方法決定部13gは、算出部13dにより算出されたSI値および自己診断部13bによる診断結果を基に復帰方法テーブルT1を参照して復帰方法を決定する。
【0037】
復帰方法テーブルT1を用いた復帰方法の決定の際には、自己診断部13bによる診断結果が異常(a)である場合には、原則、手動復帰とされる。但し、診断結果が異常(a)であっても、SI値が閾値(例えば12)未満であれば、復帰方法が遠隔復帰に決定される。一方、自己診断部13bによる診断結果が異常(b)である場合には、原則、自動復帰とされる。但し、診断結果が異常(b)であっても、SI値が上記の閾値以上であれば、復帰方法が遠隔復帰に決定される。異常(a)と異常(b)とは、それぞれガスメータ13内に生じる異常であるが、互いに異なる種の異常とする。また、自己診断部13bによる診断結果が正常である場合には自動復帰とされる。
【0038】
ここで、復帰方法テーブルに公共性レベルを示す需要家宅情報をさらに含ませてもよい。
図3は別例の復帰方法テーブルT1aを示す図であり、
図4はさらに別例の復帰方法テーブルT1bを示す図である。
【0039】
図3に示すように、復帰方法テーブルT1aにおいては、SI値および自己診断の種類だけでなく、公共性レベルを示す需要家宅情報が含まれる。復帰方法決定部13gは、算出部13dにより算出されたSI値、自己診断部13bによる診断結果、および記憶部13hに予め記憶されている需要家宅情報を基に復帰方法テーブルT1aを参照して復帰方法を決定する。
【0040】
以下、復帰方法テーブルT1aを基に復帰方法を決定する処理の幾つかの例を挙げて説明する。復帰方法テーブルT1aを用いた復帰方法の決定の際には、自己診断部13bによる診断結果が異常(a)である場合には、原則、手動復帰とされる。但し、診断結果が異常(a)であっても、公共性が1であれば(つまり公共性が低ければ)、復帰方法が遠隔復帰に決定される。公共性が1である需要家宅とは例えば一般住宅である。一方、自己診断部13bによる診断結果が異常(b)である場合には、原則、遠隔復帰とされる。但し、診断結果が異常(b)であっても、公共性が1を超えれば(つまり公共性が高ければ)、復帰方法が手動復帰に決定される。なお、復帰方法テーブルT1aにおける「決定すべき復帰方法」が空欄になっているケースでは、復帰方法として原則的な復帰方法が決定される。これは
図4の復帰方法テーブルT1bも同様とする。
【0041】
図4に示すように、復帰方法テーブルT1bにも、SI値および自己診断の種類だけでなく、公共性レベルを示す需要家宅情報が含まれる。復帰方法決定部13gは、算出されたSI値、自己診断部13bによる診断結果、および需要家宅情報を基に復帰方法テーブルT1bを参照して復帰方法を決定してもよい。なお、復帰方法テーブルT1bにおけるSI値と自己診断の種に対応した原則の復帰方法は、復帰方法テーブルT1aにおける同復帰方法と同一である。
【0042】
復帰方法テーブルT1bを用いた復帰方法の決定の際には、需要家宅の公共性が高い場合(公共性が例えば5以上である場合)、原則的な復帰方法が遠隔復帰であれば自動復帰に決定され、原則的な復帰方法が手動復帰であれば遠隔復帰に決定される。これは、需要家宅が例えば無人商業施設等である場合に起因して復旧作業の利便性や効率化を優先するという観点に基づいている。一方、需要家宅の公共性が低い場合(公共性が例えば5未満である場合)、全てのケースの復帰方法がそれぞれ手動復帰に決定される。以上のように、公共性に準じて復帰方法を決定することができる。
【0043】
(ガスメータを含むガス遮断復帰判断システム)
図5は本実施形態に係るガス遮断復帰判断システム100の構成を示すブロック図である。
図6はガス遮断復帰判断システム100における需要家宅20内の構成を示すブロック図である。また、
図7はガス遮断復帰判断システム100におけるセンターサーバ10の構成を示すブロック図である。なお、
図6において
図1の構成要素と同じ構成要素については同一符号を付与し、特筆する場合を除きそれらの説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、ガス遮断復帰判断システム100はセンターサーバ10および複数の需要家宅20を含む。なお、
図5では4つの需要家宅20を例示しているが、ガス遮断復帰判断システム100において需要家宅20は3つ以下であってもよいし、或いは5つ以上であってもよい。
【0045】
図6に示すように、ガス遮断復帰判断システム100におけるガスメータ13Aは、流量計側部13aと、自己診断部13bと、振動検知部13cと、算出部13dと、遮断部13eと、開閉制御部13fと、記憶部13hと、通信部13iとを備える。
【0046】
図7に示すように、センターサーバ10は、点検順位決定部10aと、記憶部10bと、通信部10cとを備える。点検順位決定部10aが点検方法決定部に相当する。点検順位決定部10aは、CPUとプログラムを記憶したメモリおよびRAMとを含むマイクロコントローラ、又は、ASICにより機能的に実現される。記憶部10bとしては、各種メモリ又はハードディスク等を用いることができる。また、通信部10cは各需要家宅20における通信部13iとの間で無線により通信を行う。なお、点検順位決定部10aの処理については、後で詳述する。
【0047】
センターサーバ10の記憶部10bには、ガスメータ13Aの算出部13dにより算出されるSI値、自己診断部13bによる診断結果および需要家宅20に関する需要家宅情報から後述の点検順位を決定するためのロジック(演算式)が記憶される。また、記憶部10bには、各ガスメータ13Aに対応する需要家宅の公共性レベルを示す需要家宅情報が予め記憶される。
【0048】
図8は各需要家宅20についての点検順位を決定する際に作成される点検順位テーブルT2を示す図である。
【0049】
図8に示すように、点検順位テーブルT2には、需要家宅20ごとの地震指標値(SI値)と、自己診断結果と、決定された点検順位とが含まれる。点検順位テーブルT2および後記の点検順位テーブルT3は記憶部10bに記憶される。
【0050】
点検順位決定部10aは各ガスメータ13AからSI値および自己診断結果を受信すると、需要家宅20ごとにそのSI値および自己診断結果を点検順位テーブルT2に保存する。後述の
図9も同様とする。また、点検順位決定部10aは点検順位テーブルT2に記憶されたSI値および自己診断結果に基づき、各需要家宅20に対応するガスメータ13Aの点検順位を決定する。以下、具体的に説明する。なお、点検順位テーブルT2では、4つの需要家宅20を各々識別するために、需要家宅E~Hと記載している。
【0051】
点検順位テーブルT2において、需要家宅Eについて、SI値を16とし、自己診断結果を異常とする。同様に、需要家宅Fについて、SI値を17とし、自己診断結果を正常とし、需要家宅Gについて、SI値を15とし、自己診断結果を正常とする。また、需要家宅Hについて、SI値を16とし、自己診断結果を正常とする。
【0052】
点検順位決定部10aは、自己診断結果が異常である場合には復旧作業に時間を要するという観点から、まず各自己診断結果のうち正常なガスメータ13Aの点検順位を異常なガスメータ13Aの点検順位よりも高くする。つまり、異常のあるガスメータ13Aの点検順位は、正常であるガスメータ13Aの点検順位よりも劣後する。この場合、
図8における需要家宅F,G,Hの各点検順位は需要家宅Eの点検順位に優先する。この時点で、点検順位決定部10aは需要家宅Eに対応するガスメータ13Aの点検順位を4番に決定する。点検順位決定部10aは決定した点検順位を点検順位テーブルT2に記憶させる(以下、同様とする)。
【0053】
次に、点検順位決定部10aは、需要家宅F,G,Hの各点検順位を決定する。このとき、点検順位決定部10aはSI値が大きいほど点検順位を優先させる。
図8では、需要家宅F、需要家宅H、需要家宅Gの順でSI値が大きいため、点検順位決定部10aは需要家宅Fの点検順位を1番とし、需要家宅Hの点検順位を2番とし、需要家宅Gの点検順位を3番として決定する。点検順位決定部10aは点検順位テーブルT2において各需要家宅20の点検順位を決定した後、当該点検順位を各需要家宅20に対応するガスメータ13Aに対して報知する。
【0054】
以上のように、自己診断結果が異常であるときには復旧作業に時間を要することから、SIの高低を問わずに、復旧作業の優先度すなわち点検順位を下げることができる。これにより、復旧作業を効率化することが可能となる。
【0055】
点検順位決定部10aは、自己診断結果およびSI値に加え、さらに需要家宅情報に基づき各需要家宅20の点検順位を決定してもよい。
図9は各需要家宅20についての点検順位を決定する際に作成される点検順位テーブルT3を示す図である。なお、点検順位テーブルT3では、5つの需要家宅20を各々識別するために、需要家宅I~Mと記載している。
【0056】
図9に示すように、点検順位テーブルT3には、需要家宅20ごとの地震指標値(SI値)と、自己診断結果と、需要家宅情報と、決定された点検順位とが含まれる。
【0057】
点検順位テーブルT3において、例えば病院である需要家宅Iについて、SI値を16とし、自己診断結果を正常とし、需要家宅情報を5とする。同様に、例えば商業施設である需要家宅Jについて、SI値を10とし、自己診断結果を正常とし、需要家宅情報を3とし、例えば一般家庭である需要家宅Kについて、SI値を15とし、自己診断結果を異常とし、需要家宅情報を1とする。また、例えば避難所である需要家宅Lについて、SI値を17とし、自己診断結果を正常とし、需要家宅情報を5とし、例えば介護施設である需要家宅Mについて、SI値を15とし、自己診断結果を異常とし、需要家宅情報を5とする。
【0058】
点検順位決定部10aは、上述と同じ観点から、まず各自己診断結果のうち正常なガスメータ13Aの点検順位を異常なガスメータ13Aの点検順位よりも高くする。この場合、
図9における需要家宅I,J,Lの各点検順位は需要家宅K,Mの点検順位に優先する。
【0059】
次に、点検順位決定部10aは、需要家宅K,Mの各需要家宅情報のうち需要家宅情報が大きいほど点検順位を優先させる。
図9では、需要家宅M、需要家宅Kの順で需要家宅情報が大きいため、点検順位決定部10aは需要家宅Mの点検順位を4番とし、需要家宅Kの点検順位を5番として決定する。点検順位決定部10aは決定した点検順位を点検順位テーブルT3に記憶させる。
【0060】
次いで、点検順位決定部10aは、上記と同様に、需要家宅I,J,Lの各需要家宅情報のうち需要家宅情報が大きいほど点検順位を優先させる。
図9では、需要家宅Jの需要家宅情報が需要家宅Iおよび需要家宅Lよりも小さいため、点検順位決定部10aは需要家宅Jの点検順位を3番として決定する。
【0061】
ここで、需要家宅Iの需要家宅情報と、需要家宅Lの需要家宅情報とは共に5で同値である。そのため、点検順位決定部10aは、需要家宅I,Lの点検順位を決定するにあたり、SI値が大きいほど点検順位を優先させる。
図9では、需要家宅LのSI値が需要家宅IのSI値よりも大きいので、点検順位決定部10aは、需要家宅Lの点検順位を1番とし、需要家宅Iの点検順位を2番として決定する。点検順位決定部10aは点検順位テーブルT3において各需要家宅20の点検順位を決定した後、当該点検順位を各需要家宅20に対応するガスメータ13Aに対して報知する。以上のように、復旧作業の効率化を図りつつ、高いSI値に起因してガスメータ13Aを含むガスインフラ全体の安全性が求められる優先度に基づき復旧作業の点検順位を決定することができる。
【0062】
以上述べたように、本実施形態のガスメータ13によれば、自己診断結果、SI値および需要家宅情報に基づき、ガスメータ13の復帰方法が決定される。これにより、自己診断結果を用いて一律に復帰方法を決定するのではなく、SI値に基づく周囲の建物等への影響度合いおよび需要家宅に対応した公共性レベルを加味しつつ復帰方法を決定することができる。これにより、ガスメータ13を含むガスインフラ全体の高い安全性の確保と復旧作業の効率化とを実現できると共に、復旧作業の柔軟性を向上することができる。
【0063】
また、本実施形態のガス遮断復帰判断システム100によれば、自己診断結果およびSI値に基づき、各需要家宅20のガスメータ13Aの点検順位が決定される。これにより、自己診断結果を用いて一律に点検順位を決定するのではなく、SI値に基づく周囲の建物等への影響度合いを加味しつつ点検順位を決定することができる。これにより、ガスメータ13Aを含むガスインフラ全体の高い安全性の確保と復旧作業の効率化とを実現できると共に、復旧作業の柔軟性を向上することができる。また、自己診断結果およびSI値に加えて需要家宅情報に基づき各需要家宅20に対応するガスメータ13Aの点検順位を決定することで、公共性の高い需要家宅20の点検順位を公共性の低い需要家宅20の点検順位よりも優先させることができる。これによって、需要家宅20の公共性レベルをも加味した点検順位を決定することができる。
【0064】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0065】
上記実施形態のガス遮断復帰判断システム100では、点検順位テーブルT3に基づき各需要家宅20のガスメータ13Aの点検順位を決定する際に、需要家宅情報の大小を先行して判断した後に、SI値の大小をもってして点検順位の優劣を決定した。しかし、これに限定されるものではなく、SI値の大小を先行して判断した後に、需要家宅情報の大小をもってして点検順位の優劣を決定することも可能である。
【0066】
また、上記実施形態のガス遮断復帰判断システム100では、点検順位決定部10aは点検方法の一例として需要家宅20ごとにガスメータ13の点検順位を決定したが、これに限らず、点検方法の他例として需要家宅20ごとにガスメータ13の復帰方法を決定することも可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、地震指標値としてSI値を用いたが、これに限らず、地震指標値として震度の値などを用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、各需要家宅20について2つのガス容器11および2つのガス機器14を例示したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11は1つ又は3つ以上でもよく、ガス機器14も1つ又は3つ以上でもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態では、ガス容器11にガスの一例としてのLPガス(液化石油ガス)を充填したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11に酸素等の他のガスを充填してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 センターサーバ
10a 点検順位決定部
10b 記憶部
10c 通信部
11 ガス容器
13,13A ガスメータ
13a 流量計側部
13b 自己診断部
13c 振動検知部
13d 算出部
13e 遮断部
13f 開閉制御部
13g 復帰方法決定部
13h 記憶部
13i 通信部
13r 流路
14 ガス機器
20 需要家宅
100 ガス遮断復帰判断システム