(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121310
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】感光性樹脂印刷版原版
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20230824BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20230824BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20230824BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20230824BHJP
B41N 1/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G03F7/11 501
G03F7/038 501
G03F7/037
G03F7/00 502
B41N1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024578
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊島 靖一朗
(72)【発明者】
【氏名】油 努
(72)【発明者】
【氏名】舘 教仁
【テーマコード(参考)】
2H114
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H114AA01
2H114AA23
2H114AA27
2H114AA28
2H114AA30
2H114BA10
2H114DA03
2H114DA46
2H114DA51
2H114DA56
2H114DA61
2H196AA02
2H196BA05
2H196EA02
2H196EA04
2H225AC21
2H225AC31
2H225AC42
2H225AC64
2H225AC72
2H225AD02
2H225AM53N
2H225AM66P
2H225AM72P
2H225AN11P
2H225AN13N
2H225AN21P
2H225AN65P
2H225AN87P
2H225AP01N
2H225AP03N
2H225BA01N
2H225CA02
2H225CB01
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】感赤外線層/保護フィルム間の密着性に優れる感光性樹脂印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上に、感光性樹脂層、感赤外線層および保護フィルムをこの順に有する感光性樹脂印刷版原版であって、前記保護フィルムの感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m以上である感光性樹脂印刷版原版。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、感光性樹脂層、感赤外線層および保護フィルムをこの順に有する感光性樹脂印刷版原版であって、前記保護フィルムの感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m以上である感光性樹脂印刷版原版。
【請求項2】
前記保護フィルムがポリエステルフィルムである請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項3】
前記保護フィルムの表面の感赤外線層側の線粗さRaが0.01~0.20μmである請求項1または2に記載の感光性樹脂層印刷版原版。
【請求項4】
前記感赤外線層が鹸化度60~100モル%のポリビニルアルコールを含有する請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項5】
前記感赤外線層が重合度1,000~3,500のポリビニルアルコールを含有する請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項6】
前記感赤外線層がカルボキシル基および/またはスルホ基を有するカーボンブラックを含有する請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項7】
前記カーボンブラックがカルボキシル基およびラクトン基を有する請求項6に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項8】
前記保護フィルムと感赤外線層が接している請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項9】
前記感光性樹脂層がポリビニルアルコールおよび/またはポリアミドを含有する請求項1~8のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
凸版印刷やフレキソ印刷の分野において、デジタル画像形成技術として知られるCTP(computer to plate)技術は、一般的なものになってきている。CTP技術は、感赤外線層を有する感光性樹脂印刷版原版の感赤外線層に、デジタルデータにより画像マスクを形成した後、画像マスクを介して感光性樹脂層に活性光線を照射し、感光性樹脂層を部分的に光硬化させることによって、レリーフとなる凹凸パターンを形成する方法である。
【0003】
このようなCTP技術に適した感光性樹脂印刷版原版として、簡単な工程で感熱マスク層のピンホールを小さくかつ減少したフレキソ印刷原版を提供することを目的として、少なくとも支持体と感光性樹脂層と感熱マスク層とカバーフィルムが順次積層されてなるフレキソ印刷原版であって、カバーフィルムの感熱マスク層と接する面の表面エネルギーが25.0~40.0mN/mであり、かつ表面粗さ(Ra)が0.01~0.2μmであること、及び感光性樹脂層と感熱マスク層の間に現像液に分散可能な高分子化合物から形成された保護層が設けられていることを特徴とするフレキソ印刷原版(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、マスク層要素および保護層を有する感光性樹脂積層体において、マスク層要素の耐傷性、およびマスク層要素と保護層との間の良好な密着性の両立を課題として、支持体上に感光性樹脂層、マスク層要素、および保護層をこの順に有する感光性樹脂積層体であって、前記マスク層要素が、ポリビニルアルコール、アニオン性ポリマー、および赤外線吸収物質を含有し、前記ポリビニルアルコールのケン化度が90%より大きい感光性樹脂積層体(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/054225号
【特許文献2】特開2021-162667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感赤外線層を有する感光性樹脂印刷版原版は、感赤外線層に傷が入ると、感光性樹脂層に不要な凹凸パターンが形成される。特許文献1~2に開示される技術においては、カバーフィルムや保護層により、外力や異物の混入などによる感赤外線層の傷の発生を抑制している。しかしながら、感光性樹脂印刷版原版の輸送時などに保護フィルムが剥離しやすい課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、感赤外線層/保護フィルム間の密着性に優れる感光性樹脂印刷版原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持体上に、感光性樹脂層、感赤外線層および保護フィルムをこの順に有する感光性樹脂版印刷版原版であって、前記保護フィルムの感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m以上である感光性樹脂印刷版原版である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、感赤外線層/保護フィルム間の密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0010】
本発明の感光性樹脂印刷版原版(以下、「印刷版原版」と略記する場合がある)は、支持体上に、感光性樹脂層、感赤外線層および保護フィルムをこの順に有する。支持体は、印刷版原版において感光性樹脂層を保持する作用を有する。感光性樹脂層は、画像マスクを介した活性光線の照射により、画像マスクに対応した凹凸パターン(レリーフ)を形成する作用を有する。感赤外線層は、赤外線により部分的に分解蒸散(アブレーション)することによって画像マスクを形成する作用を有する。保護フィルムは、輸送などの印刷版原版の使用前に感赤外線層を外力から保護し、外力や異物の混入などによる感赤外線層の傷の発生を抑制する作用を有する。
【0011】
本発明の印刷版原版は、さらに、必要に応じて、他の層を有してもよい。例えば、支持体と感光性樹脂層との間に易接着層を有してもよく、支持体と感光性樹脂層との接着力を高めることができる。また、感光性樹脂層と感赤外線層との間に中間層を有してもよく、感光性樹脂層と感赤外線層との接着力を高めることができる。ただし、感赤外線層/保護フィルム間には、他の層を有しないこと、すなわち、保護フィルムと感赤外線層とが接していることが好ましい。保護フィルムと感赤外線層が直接接することにより、感赤外線層/保護フィルム間の高い密着性によって、輸送時などにも感赤外線層を保護し、外力や異物の混入などによる感赤外線層の傷の発生を抑制することができる。
【0012】
まず、保護フィルムについて説明する。保護フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐溶剤性、耐候性に優れることから、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0013】
保護フィルムの厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、10~150μmが好ましい。ここで、保護フィルムの厚さは、デジマチックシックネスゲージを用いて、5cm間隔で3点の厚さを測定した平均値とする。
【0014】
本発明の印刷版原版は、保護フィルムの表面のうち、少なくとも感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m以上であることを特徴とする。保護フィルムの表面エネルギーは、隣接する層との間の密着性に寄与する特性であり、感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m未満であると、感赤外線層/保護フィルム間の密着性が低下する。感赤外線層側の表面エネルギーが50mN/m以上であれば、感赤外線層/保護フィルム間の密着性が向上することに加え、湿式塗布により感赤外線層を塗布する場合の濡れ性に優れることから、感赤外線層の光学濃度ばらつきを抑制することができる。感赤外線層側の表面エネルギーは、65mN/m以上が好ましい。一方、感赤外線層側の表面エネルギーは73mN/m以下が好ましい。感赤外線層側の表面エネルギーが73mN/m以下であれば、保護フィルム剥離時に感赤外線層が転写する転写不良を抑制し、保護フィルムを作業性よく剥離することができる。一方、保護フィルムの感赤外線層と反対側の表面エネルギーは特定されない。
【0015】
表面エネルギーが50mN/m以上である表面を有する保護フィルムとしては、例えば、東山フィルム(株)製の帯電防止付き高速印刷用透明PETフィルムKSP-AN(商品名)、東洋新虹(株)製の#125PETコロナ処理品などが挙げられる。
【0016】
保護フィルムの表面エネルギーは、JIS K6768(1999年)に記載のプラスチックフィルム及びシートー濡れ張力試験法に準じて測定することができる。より具体的には、以下の方法により測定する。富士フィルム和光純薬(株)製の、22.6、27.3、30.0~48.0(3.0mN/m刻み)、52.0、56.0、60.0、63.0、67.0、70.0、73.0の各濡れ張力試験用混合液を用いる。保護フィルムの感赤外線層側の表面に、試験用混合液を、表面張力の低いものから2mLスポイト1滴分垂らし、綿棒を用いて速やかに広げ、液膜の状態を観察する。濡れている場合は、次に表面張力の高い試験用混合液を用いて、同様に観察する。液がはじき、液膜が割れたときの試験用混合液の表面張力の値を保護フィルムの表面エネルギーとする。
【0017】
保護フィルムの感赤外線層側の表面の線粗さ(Ra)は、0.01~0.20μmが好ましい。保護フィルムの表面の感赤外線層側のRaを0.01μm以上とすることにより、印刷版原版製造工程において保護フィルムを容易に搬送することができる。一方、保護フィルムの表面の感赤外線層側のRaを0.20μm以下とすることにより、感赤外線層の光学濃度のバラツキをより低減することができる。
【0018】
各種のRaを有するプラスチックフィルムが市販されており、それらの中から所望のRaを有するものを選択して用いることができる。
【0019】
保護フィルムの表面のRaは、レーザー顕微鏡を用いて、非接触形式により測定することができる。より具体的には、以下の方法により測定する。(株)キーエンス製レーザー顕微鏡(VK-X250)を用いて、レンズ倍率20倍の条件で保護フィルム表面を拡大観察する。観察面に対して、無作為に長さ300μmの直線を3本引き、3直線上の線粗さの平均値を算出し、保護フィルム表面の線粗さとする。
【0020】
次に、感赤外線層について説明する。感赤外線層は、(1)赤外レーザーを効率よく吸収して、その熱によって該層の一部または全部が蒸発または融除し、レーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じる、すなわち照射部分の光学濃度の低下が起こる働きと、(2)紫外光を実用上遮断する働きを有する。なお、ここでいう紫外光を実用上遮断するとは、感赤外線層の光学濃度(optical density)が2.0以上のことを指し、2.5以上であることがより好ましい。光学濃度は一般にDで表され、以下の式で定義される。
D=log10(100/T)=log10(I0/I)
ここで、Tは透過率(単位は%)、I0は透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である。
【0021】
本発明における光学濃度は、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出した値をいう。光学濃度は、オルソクロマチックフィルターを用いて、マクベス透過濃度計「TR-927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)により測定することができる。
【0022】
感赤外線層は、赤外線吸収物質およびポリビニルアルコールを含有することが好ましい。
【0023】
赤外線吸収物質としては、波長750nm~20,000nmの範囲に吸収特性を有する物質が好ましく、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、シアニンブラックなどの黒色顔料、酸化マンガン、酸化鉄、酸化クロム、亜クロム酸銅等の無機顔料や、フタロシアニン、置換フタロシアニン誘導体、シアニン染料、メロシアン染料、ポリメチン染料、金属チオレート染料等の色素類が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、アブレーション効率と紫外線吸収性能の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0024】
カーボンブラックは、アニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基を有することにより、分散剤を用いることなくカーボンブラックの分散性を高めることができる。アニオン性基としては、スルホ基、カルボキシル基が好ましい。スルホ基は水中での解離定数が大きく、後述する感赤外線層組成物分散液中におけるカーボンブラックの凝集を抑制する効果が大きい。一方、カルボキシル基は、後述する感赤外線層組成物分散液中に低級アルコールなどの有機溶剤を添加した場合に生じやすいソルベントショックによるカーボンブラックの凝集を抑制し、感赤外線層の塗工欠陥を抑制することができる。
【0025】
アニオン性基としてカルボキシル基を有するカーボンブラックは、ラクトン基を有することが好ましい。カルボキシル基は、水中における解離定数が低く、他の成分の官能基やpHの影響を受けやすいため、カルボキシル基を有するカーボンブラックは凝集しやすい傾向があるが、親水性を有するが、イオン性を有さない、ラクトン基を有することにより、他の成分との静電相互作用の立体障害となり、凝集を抑制する効果がある。このため、カルボキシル基とラクトン基を有するカーボンブラックは、感赤外線層中における分散性を高めることができる。このため、特に前述の高い表面エネルギーを有する、濡れ性に優れる保護フィルムとの組み合わせにおいて、感赤外線層の光学濃度のバラツキをより抑制することができる。
【0026】
感赤外線層における赤外線吸収物質の含有量は、アブレーション効率を向上させる観点から、全固形分中20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。一方、感赤外線層における赤外線吸収物質の含有量は、感赤外線層の耐傷性をより向上させる観点から、全固形分中90質量%以下が好ましく、80質量%以下が好ましい。
【0027】
感赤外線層にポリビニルアルコールを含有することにより、前述の赤外吸収物質の分散性を高めるとともに、感赤外線層の被膜形成性を向上させることができる。また、後述する中間層を有する場合、中間層との密着性を向上させることができる。
【0028】
感赤外線層に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度は、60モル%以上が好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度を60モル%以上とすることにより、水を主成分とする現像液に対する溶解性を向上させることができ、感光性樹脂層、感赤外線層をあわせて水を主成分とする現像液により現像することができる。さらに、感光性樹脂層に含まれる、一般的に脂溶性が大きい低分子量成分であるエチレン性二重結合を有する化合物の感赤外線層への移行を抑制し、感赤外線層の凝集破壊を抑制し、感光性樹脂層/感赤外線層間の密着性を向上させることができる。ポリビニルアルコールの鹸化度は、80モル%以上がより好ましい。一方、感赤外線層におけるポリビニルアルコールの鹸化度は、97モル%以下が好ましく、感赤外線層/保護フィルム間の密着性をより向上させることができる。ポリビニルアルコールの鹸化度は、90モル%以下がより好ましい。
【0029】
また、感赤外線層に含まれるポリビニルアルコールの平均重合度は、1,000以上が好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度を1,000以上とすることにより、感赤外線層の被膜強度を向上させ、感赤外線層の耐傷性を向上させ、光学濃度のばらつきを抑制することができる。また、特に前述の高い表面エネルギーを有する保護フィルム剥離時に発生しやすい傾向にある剥離不良を抑制し、保護フィルムを作業性よく剥離することができる。平均重合度は、1,500以上がより好ましい。一方、平均重合度を3,500以下とすることにより、感赤外線層を容易に形成することができる。また、光学濃度のばらつきを抑制することができる。平均重合度は、2,500以下がより好ましい。
【0030】
ここで、ポリビニルアルコールの鹸化度および重合度は、JIS K 6726-1994(ポリビニルアルコール試験方法)により測定した値である。また、感赤外線層に2種以上のポリビニルアルコールを含有する場合、2種以上のポリビニルアルコール全体としての鹸化度および重合度を意味する。
【0031】
感赤外線層におけるポリビニルアルコールの含有量は、感赤外線層をより容易に形成する観点から、全固形分中10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。一方、感赤外線層におけるポリビニルアルコールの含有量は、アブレーション効率を向上させる観点から、全固形分中80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0032】
また、本発明における感赤外線層には、紫外線を遮光する紫外線吸収物質を含有してもよい。紫外線吸収物質としては、波長300~400nmの範囲に吸収特性を有する物質が好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0033】
感赤外線層は、その他のポリマー、フィラー、界面活性剤、塗布助剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。その他のポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリアミドやそれらの誘導体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0034】
中間層は、鹸化度60~100モル%のポリビニルアルコールを含有することが好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度を60モル%以上とすることにより、水を主成分とする現像液に対する溶解性を向上させることができる。感赤外線層が水を主成分とする現像液により除去可能である場合、感光性樹脂層、中間層、感赤外線層をあわせて水を主成分とする現像液により現像することができる。鹸化度は、65モル%以上が好ましい。一方、中間層におけるポリビニルアルコールの鹸化度は、97モル%以下が好ましく、感光性樹脂層との密着性を向上させることができる。ここで、ポリビニルアルコールの鹸化度は、感赤外線層に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度と同様に測定することができる。また、中間層に2種以上のポリビニルアルコールを含有する場合、2種以上のポリビニルアルコール全体としての鹸化度を意味する。
【0035】
中間層の厚さは、0.1~3μmが好ましい。中間層の厚さを0.1μm以上とすることにより、感赤外線層の耐傷性をより向上させることができる。一方、中間層の厚さを3μm以下とすることにより、凹部画像の深度の深いレリーフを形成することができ、抜き文字画像などの再現性を向上させることができる。中間層の厚さは、2μm以下がより好ましい。
【0036】
次に、感光性樹脂層について説明する。感光性樹脂層は、少なくとも、バインダー樹脂、エチレン性二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含有することが好ましい。感光性樹脂層に紫外線などの光を画像様に照射すると、露光部の感光性樹脂層中の光重合開始剤からフリーラジカルが発生する。発生したフリーラジカルは、エチレン性二重結合を有する化合物間のラジカル重合を誘発し、架橋構造により所望の印刷画像を得るためのレリーフを形成することができる。バインダー樹脂がエチレン性二重結合を有する場合は、バインダー樹脂およびエチレン性二重結合を有する化合物の間でもラジカル重合する。これにより、より光硬化を進め、印刷版の画像再現性を向上させることができる。
【0037】
バインダー樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリブタジエンラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアクリル酸誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。被膜形成特性、水による現像性、中間層または感赤外線層との密着性の観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0038】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、60~95モル%が好ましい。感光性樹脂層におけるポリビニルアルコールの鹸化度を60モル%以上とすることにより、水を主成分とする現像液に対する溶解性を向上させることができる。特に、前述の感赤外線層が水を主成分とする現像液により除去可能である場合、感光性樹脂層、感赤外線層をあわせて水を主成分とする現像液により現像することができる。一方、感光性樹脂層におけるポリビニルアルコールの鹸化度を95モル%以下とすることにより、感光性樹脂層中における他の成分との相溶性を向上させ、低分子量成分の他の層への移行を抑制することができる。ここで、ポリビニルアルコールの鹸化度は、感赤外線層に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度と同様に測定することができる。また、感光層に2種以上のポリビニルアルコールを含有する場合、2種以上のポリビニルアルコール全体としての鹸化度を意味する。
【0039】
ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。より具体的には、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度:40℃、流速:0.7mL/分の条件で、標準サンプルとして、ポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを用いて測定することができる。
【0040】
感光性樹脂層におけるポリビニルアルコールは、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。
【0041】
ポリビニルアルコールにエチレン性二重結合を導入する方法としては、例えば、(1)ポリビニルアルコールの水酸基と酸無水物とを反応させ、ポリビニルアルコールの水酸基を起点としてカルボキシル基などの反応性基をポリマー側鎖に導入し、その反応性基に不飽和エポキシ化合物を反応させる方法、(2)酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を部分鹸化し、このポリマーの有するカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0042】
ポリビニルアルコールのエチレン性二重結合当量は、1,000g/eq以上19,000g/eq以下が好ましい。エチレン性二重結合当量を1,000g/eq以上とすることにより、印刷版のレリーフ表面の硬度を適度に抑え、印刷再現性をより向上させることができる。一方、エチレン性二重結合当量を19,000g/eq以下とすることにより、印刷面の光硬化を十分に進め、画像再現性および耐刷性を向上させることができる。ここで、ポリビニルアルコールの構造が既知である場合、理論上の1モル当たり重量を、ポリビニルアルコール1分子に含まれるエチレン性二重結合の個数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。また、1H-NMRによりポリビニルアルコール中のエチレン性二重結合のモル数を分析し、分析に使用した試料重量を、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。
【0043】
感光性樹脂層中におけるポリビニルアルコールの含有量は、30~85質量%が好ましい。
【0044】
感光性樹脂層には、前述のポリビニルアルコールとともに、ポリビニルアルコールとの相溶性に優れる、親水性基を有するバインダー樹脂や、ポリマー主鎖が水膨潤性または水溶解性を有するバインダー樹脂を含有してもよい。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基やそれらの塩等が挙げられる。親水性基を有するポリマーとしては、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、カルボキシル基を有する脂肪族共役ジエンの重合体、リン酸基および/またはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルホン酸基含有ポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリマー主鎖自体が水膨潤性または水溶解性を有するポリマーとしては、例えば、ビニルアルコール-アクリル酸ナトリウム共重合体、ビニルアルコール-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル含有ポリアミド、3級窒素原子含有ポリアミド、ポリエーテル、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、でんぷん-ポリアクリル酸ナトリウムグラフト化物、でんぷん-ポリアクリロニトリルグラフト化物のケン化物、セルロースポリアクリル酸グラフト化物、部分架橋ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。これらの中でも、物理的な強度が高く、耐刷性をより向上させることができる点や、強度と溶媒に対する溶解性とのバランスの点からは、3級窒素原子含有ポリアミドが好ましく用いられる。
【0045】
エチレン性二重結合を有する化合物とは、エチレン性二重結合を有する、分子量が10,000未満であるものを指す。エチレン性二重結合を有する化合物の分子量は、2,000以下が好ましい。
【0046】
エチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、国際公開第2017/038970号に記載される(メタ)アクリレートや、グリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0047】
感光性樹脂層中におけるエチレン性二重結合を有する化合物の含有量は、10~60重量%が好ましい。
【0048】
光重合開始剤としては、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0049】
感光性樹脂層中における光重合開始剤の含有量は、0.1~10質量%が好ましい。
【0050】
感光性樹脂層には、必要に応じて、相溶助剤、撥インキ剤、重合禁止剤、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを含有してもよい。
【0051】
感光性樹脂層に相溶助剤を含有することにより、感光性樹脂層を構成する成分の相溶性を高め、低分子量成分のブリードアウトを抑制し、感光性樹脂層の柔軟性を向上させることができる。相溶助剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールやこれらの誘導体などの多価アルコール類が挙げられる。感光性樹脂層中における相溶助剤の含有量は、30質量%以下が好ましい。
【0052】
感光性樹脂層に撥インキ剤を含有することにより、印刷中にレリーフの凹部にインキが入り込むことを抑制し、再現性を向上させることができる。撥インキ剤としては、例えば、シリコーン化合物やフッ素含有化合物などが挙げられる。感光性樹脂層中における撥インキ剤の含有量は、5%質量以下が好ましい。
【0053】
感光性樹脂層に重合禁止剤を含有することにより、熱安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。これらを1種以上含有してもよい。感光性樹脂層中における重合禁止剤の含有量は、0.001~5質量%が好ましい。
【0054】
次に、支持体について説明する。支持体としては、例えば、ポリエステルなどからなるプラスチックシート、スチレン-ブタジエンゴムなどからなる合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどからなる金属板などが挙げられる。支持体の厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、100~350μmの範囲が好ましい。
【0055】
支持体は、易接着処理されていることが好ましく、レリーフやフロア層との接着性を向上させることができる。易接着処理方法としては、例えば、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、コーティングにより易接着層を設けることが好ましい。
【0056】
次に、本発明の印刷版原版の製造方法について、支持体上に、感光性樹脂層、中間層、感赤外線層および保護フィルムを有する場合を例に説明する。
【0057】
例えば、ポリビニルアルコール、エチレン性二重結合を有する化合物およびその他添加剤を溶媒に加熱溶解し、感光性樹脂組成物溶液を得る。溶媒としては、水/アルコール混合溶媒などが挙げられる。
【0058】
必要により易接着層を有する支持体上に、感光性樹脂組成物溶液を流延し、乾燥して感光性樹脂層を形成する。次に、中間層および感赤外線層を形成した保護フィルムを感光性樹脂層上に密着させることにより、感光性樹脂印刷版原版を得ることができる。中間層および感赤外線層を形成した保護フィルムは、例えば、保護フィルム上に、前述の感赤外線層の成分を含有する感赤外線層組成物分散液を塗布し、乾燥した後、前述の中間層の成分を含有する中間層組成物溶液を塗布し、乾燥する方法などが挙げられる。
【0059】
本発明の印刷版原版を用いた印刷版の製造方法について説明する。印刷版原版の感光性樹脂層を部分的に光硬化させる露光工程、感光性樹脂層の未硬化部分を、水を含む液体により除去する現像工程を有することが好ましい。
【0060】
露光工程においては、保護フィルムを剥離した感光性樹脂印刷版原版を、ファイバーレーザーなどの赤外線レーザーを有するデジタルイメージャーに装着し、感赤外線層を分解蒸散(アブレーション)することにより画像マスクを形成する。その後、感赤外線層から形成した画像マスクを介して、波長300~400nmの紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させることが好ましい。露光光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯、UV-LEDランプなどが挙げられる。
【0061】
現像工程においては、水を含む液体により未露光部の感光性樹脂層を除去することが好ましい。現像装置としては、スプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機などが挙げられる。
【0062】
さらに、必要に応じて、現像後に紫外線を照射する後露光工程を設けてもよい。後露光工程により、未反応のエチレン性二重結合を有する化合物の反応によって、レリーフをより強固にすることができる。
【0063】
本発明の感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いて得られる印刷版は、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機などを用いた凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途、フレキソ印刷用途などに用いることできる。これらの中でも、凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途により好適に用いることができる。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
【0065】
<感光性樹脂層用ポリマーの合成>
(合成例1)
三菱ケミカル(株)製の部分鹸化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”(登録商標)KL-05(平均重合度:500、鹸化度:80モル%、Mw:38,000)をアセトン中で膨潤させ、“ゴーセノール”KL-05 100質量部に対して、無水コハク酸を4.2質量部添加し、60℃で6時間撹拌して分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去した後、乾燥した。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここに、グリシジルメタクリレートを6質量部添加して、部分鹸化ポリビニルアルコール中にエチレン性二重結合を導入し、ポリマーAの溶液を得た。得られたポリマーAのエチレン性二重結合当量は5,611g/eq、重量平均分子量は40,000であった。なお、重量平均分子量は、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度:40℃、流速:0.7mL/分の条件で、標準サンプルとして、ポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを用いて測定した。また、エチレン性二重結合当量は、内標として3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3d4を添加した重水/重メタノール混合溶媒1mlに、ポリマーAを30mg溶解し、1H-NMR測定を行い、エチレン性二重結合のモル数を測定し、分析に使用した試料中のポリマーAを、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより算出した。
【0066】
(合成例2)
ε-カプロラクタム20質量部、N-(2-アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩80質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に、180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して、水溶性ポリアミド樹脂である3級アミノ基を有するポリアミド樹脂(ポリマーB)を得た。得られたポリマーBについて、合成例1と同様に測定した重量平均分子量は72,000であった。
【0067】
<易接着層を有する支持体の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡(株)製)260質量部およびPS-8A(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱した後、30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7質量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、東ソー(株)製)25質量部およびEC-1368(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層用塗工液を得た。
【0068】
厚さ250μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、前述の方法により得られた易接着層用塗工液を、バーコーターを用いて、乾燥後厚さが30μmになるように塗布し、180℃のオーブンを用いて3分間加熱して溶媒を除去し、易接着層を有する支持体を得た。
【0069】
<感光性樹脂層組成物溶液の調製>
撹拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、合成例1により得られたポリマーA 45質量部、合成例2により得られたポリマーB 5質量部を添加し、“ソルミックス”(登録商標)H-11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50質量部および水50質量部の混合溶媒を加え、撹拌しながら90℃で2時間加熱し、ポリマーを溶解させた。得られた混合物を70℃に冷却した後、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート 5質量部、グリセロールジメタクリレート 15質量部、ポリアルキレングリコール(PEG200)ジアクリレート 15質量部、2,2-ジメトキシ-1,1-ジフェニルエタン-1-オン 1.3質量部、ペンタエリスリトールポリオキシエチレンエーテル 10質量部、N-(アンモニウムオキシ)-N-ニトロソフェニルアミン 0.2質量部、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール 0.02質量部を添加して30分間撹拌し、感光性樹脂層組成物溶液を得た。
【0070】
<感赤外線層組成物分散液の調製>
表1に示すポリビニルアルコール5質量部に対し、エタノール/水=10/90(重量比)の混合溶媒95質量部を添加し、75℃で2時間加熱溶解し、5質量%の水溶液を作製した。得られたポリビニルアルコールの5質量%水溶液50重量部と、カーボンブラック水分散液((株)オリエント化学工業製、BonjetBlackCW-1)をさらに水で希釈して得られたカーボンブラックの10質量%水分散液30重量部と、“ソルミックス”(登録商標)H-11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)20重量部を室温にて混合し、感赤外線層組成物1~6の分散液を得た。感赤外線層組成物1~6の分散液中のカーボンブラックの分散性はいずれも良好で、グラインドゲージにより2μm以上の凝集物は確認されなかった。なお、ポリビニルアルコールの鹸化度および重合度は、JIS K 6726-1994(ポリビニルアルコール試験方法)により測定した。
【0071】
【0072】
<中間層組成物溶液の調製>
ポリビニルアルコール(JP-18(日本酢ビ・ポバール(株)製、鹸化度88%、平均重合度1,800))10質量部に対して、エタノール54質量部、純水36質量部を添加し、75℃で2時間加熱溶解し、中間層組成物溶液を得た。
【0073】
実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
【0074】
<保護フィルムの表面エネルギー>
保護フィルムの表面エネルギーは、JIS K6768(1999年)に記載のプラスチックフィルム及びシートー濡れ張力試験法に準じて測定した。具体的には、富士フィルム和光純薬(株)の、22.6、27.3、30.0~48.0(3.0mN/m刻み)、52.0、56.0、60.0、63.0、67.0、70.0、73.0の各濡れ張力試験用混合液を用いて、各実施例および比較例に用いた保護フィルムの感赤外線層側の表面に、試験用混合液を、表面張力の低いものから2mLスポイト1滴分垂らし、綿棒を用いて速やかに広げ、液膜の状態を観察した。濡れている場合は、次に表面張力の高い試験用混合液を用いて、同様に観察した。液がはじき、液膜が割れたときの試験用混合液の表面張力の値を保護フィルムの表面エネルギーとした。
【0075】
<保護フィルムの厚さ>
各実施例および比較例に用いた保護フィルムについて、デジマチックシックネスゲージ((株)ミツトヨ製ID-C112)を用いて、5cm間隔で3点の厚さを測定し、その平均値を算出して保護フィルムの厚さとした。
【0076】
<保護フィルムの線粗さ>
各実施例および比較例に用いた保護フィルムについて、(株)キーエンス製レーザー顕微鏡(VK-X250)を用いて、レンズ倍率20倍の条件で表面を拡大観察した。観察面に対して、無作為に長さ300μmの直線を3本引き、3直線上の線粗さの平均値を算出し、保護フィルム表面の線粗さとした。
【0077】
<感赤外線層の光学濃度のバラツキ>
各実施例および比較例により得られた保護フィルム/感赤外線層積層体をA4サイズ(縦297mm×横210mm)にカットした。保護フィルム/感赤外線層積層体をマス目30点(1区画縦約50mm×横約40mm)に区切り、各区画の光学濃度を、マクベス透過濃度計「TR-927」を用いて測定した。得られた30点の光学濃度に対して、標準偏差(σ)を算出し、光学濃度のバラツキを評価した。
【0078】
<保護フィルムの密着性>
各実施例および比較例により得られた印刷版原版を縦25cm×横5cmの短冊状にカットした。短冊状の印刷版原版から短辺側の保護フィルムを3cm程度剥がした状態で、引っ張り試験機(島津製作所:オートグラフAGS-X)の測定台に固定した。保護フィルムを200mm/分の速度で180°剥離した時の剥離抵抗値を測定し、サンプル幅の5cmで割った値を剥離力とした。剥離力が20mN/cm以上であれば、密着性に優れると判断した。
【0079】
[実施例1]
前述の方法により得られた易接着層を有する支持体の易接着層上に、感光性樹脂層組成物溶液を流延し、60℃で2時間乾燥し、厚さ650μmの感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚さは、易接着層を有する支持体上に所定の厚さのスペーサーを置き、はみ出している部分の感光性樹脂層組成物溶液を、水平な金尺で掻き出すことによって調整した。
【0080】
次に、保護フィルムである厚さ100μmのPETフィルムKSP-AN(東山フィルム(株)製)上に、バーコーターを用いて、前述の方法により得られた感赤外線層組成物1の分散液を塗布し、120℃の熱風オーブンで30秒間乾燥し、感赤外線層を形成して保護フィルム/感赤外線層積層体を得た。感赤外線層の厚さは、保護フィルムの値をゼロとしたオルソクロマチックフィルターを用いた光学濃度(マクベス透過濃度計「TR-927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)の透過モード)が3.0になるように調整した。
【0081】
得られた保護フィルム/感赤外線層積層体上に、前述の方法により得られた中間層組成物溶液を、バーコーターを用いて、乾燥後厚さが0.2μmになるように塗布し、120℃の熱風オーブンで30秒間乾燥し、中間層を形成して保護フィルム/感赤外線層/中間層積層体を得た。前述の方法により形成した感光性樹脂層上に、水50質量部/エタノール50質量部の混合溶媒を塗布し、中間層/感赤外線層/保護フィルム積層体を、中間層側が感光性樹脂層上になるようにラミネートし、印刷版原版1を得た。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0082】
[実施例2~6]
感赤外線層組成物を表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様に印刷版原版を得た。評価結果を表2に示す。
【0083】
[実施例7]
保護フィルムを厚さ125μmのPETフィルム#125PETコロナ処理品(東洋新虹(株)製)に変更したこと以外は実施例1と同様に印刷版原版を得た。評価結果を表2に示す。
【0084】
[比較例1~7]
保護フィルムを表3に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様に印刷版原版を得た。評価結果を表3に示す。
【0085】
【0086】