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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121311
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】標的
(51)【国際特許分類】
   F41J 2/02 20060101AFI20230824BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230824BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230824BHJP
   A63F 9/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F41J2/02
D03D1/00 Z
B32B5/26
A63F9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024579
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 彩
(72)【発明者】
【氏名】大槻 真也
(72)【発明者】
【氏名】二ノ宮 有希
【テーマコード(参考)】
4F100
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AB10
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100BA02
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG12A
4F100DG12B
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ86
4L048AA21
4L048CA01
4L048CA15
4L048DA24
(57)【要約】
【課題】
電源を必要とせず、連続使用性や持ち運び性に優れる標的を提供する。
【解決手段】
少なくとも一方の面において、繊維を含むシート状部材Aとシート状部材Bとを含み、前記シート状部材Aの平均熱放射率と前記シート状部材Bの平均熱放射率との差が0.10以上であり、厚さが2.0mm以下である標的とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面において、繊維を含むシート状部材Aとシート状部材Bとを含み、前記シート状部材Aの平均熱放射率と前記シート状部材Bの平均熱放射率との差が0.10以上であり、厚さが2.0mm以下である標的。
【請求項2】
前記面における、前記シート状部材Aの面積の割合が、全面積の1%以上99%以下である請求項1に記載の標的。
【請求項3】
前記シート状部材Aおよび前記シート状部材Bのガーレ剛軟度が、40mN以下である請求項1または2に記載の標的。
【請求項4】
前記シート状部材Aまたは前記シート状部材Bが、金属層を有する請求項1~3のいずれかに記載の標的。
【請求項5】
前記シート状部材Aまたは前記シート状部材Bが、蓄熱素材を含む請求項1~4のいずれかに記載の標的。
【請求項6】
前記シート状部材Aおよび前記シート状部材Bが織物であり、カバーファクターが0.7以上である請求項1~5のいずれかに記載の標的。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線映像装置を用いた訓練用の標的として、電熱線を埋め込んで赤外線の放射量を増大させたり、ベニヤ板に金属箔を貼り付けて放射量を少なくさせたりして、地面と区別するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-126100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電熱線を用いるものは着弾により断線するため、連続射撃訓練には不向きであり、連続使用性に劣る。また、電源を近くに配備する手間や持ち運び時にかさばるという問題や、危険性を伴うという課題もあった。
【0005】
一方で、金属箔を用いるものは、同等の低放射率のものがある環境で、周囲環境との区別がし難いという問題があった。
【0006】
さらに、ベニヤ板を用いるものは、弾丸貫通孔から裂け目が伝搬しやすいという課題があり、連続射撃訓練に向いているとは言えず、連続使用性に劣る。加えて、持ち運び時にかさばるという問題もあった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、電源を必要とせず、連続使用性や、持ち運び性に優れる標的を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような構成を有する。
(1)少なくとも一方の面において、繊維を含むシート状部材Aとシート状部材Bとを含み、前記シート状部材Aの平均熱放射率と前記シート状部材Bの平均熱放射率との差が0.10以上であり、厚さが2.0mm以下である標的。
(2)前記面における、前記シート状部材Aの面積の割合が、全面積の1%以上99%以下である(1)に記載の標的。
(3)前記シート状部材Aおよび前記シート状部材Bのガーレ剛軟度が、40mN以下である(1)または(2)に記載の標的。
(4)前記シート状部材Aまたは前記シート状部材Bが、金属層を有する(1)~(3)のいずれかに記載の標的。
(5)前記シート状部材Aまたは前記シート状部材Bが、蓄熱素材を含む(1)~(4)のいずれかに記載の標的。
(6)前記シート状部材Aおよび前記シート状部材Bが織物であり、カバーファクターが0.7以上である(1)~(5)のいずれかに記載の標的。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電源を必要とせず、連続使用性や持ち運び性に優れ、赤外線映像装置などを用いたシステムの射撃等の目標となる標的を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるシート状部材は、繊維を含むものであれば特に限定されないが、織物、編物、不織布、およびそれらの複合品などが例示される。その中でも、破れが伝搬しにくく連続射撃しやすいなど連続使用性に優れることから、織物が好ましい。さらに、織物におけるカバーファクターが0.7以上であることが好ましく、0.9以上1.5以下であることがより好ましい。カバーファクターは、以下の式で算出することができる。
・√経糸密度×繊度/2+√緯糸密度×繊度/2
0.7以上であると、赤外線による検知がしやすくなり、また、平均熱放射率を制御することも容易になる。また、さらに樹脂や金属などを加工した層がある場合、搬送中等での剥がれを抑制する効果もある。また、1.5以下であると、持ち運び性により優れる。
【0011】
かかる繊維を構成する素材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合した共重合ポリエステルなどからなるポリエステル、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6成分とナイロン6・6成分を共重合した共重合ポリアミドなどからなるポリアミド、ビニロン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどに代表されるアラミド、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの合成樹脂や、綿、麻などの天然繊維が例示できる。また、これら素材には、製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などを含有せしめることができる。繊維の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0012】
本発明におけるシート状部材Aの平均熱放射率とシート状部材Bの平均熱放射率との差(平均熱放射率差)は、0.10以上である。このような構成にすることにより、シート状部材Aとシート状部材Bとの間でコントラストを生み、照準を合わせやすくなる。更には、平均熱放射率差が0.20以上あると、よりコントラストがはっきりするため好ましい。平均熱放射率差が0.10未満の場合、コントラストが小さくなり、周辺の環境によっては検知しにくくなる可能性がある。上限は特に限定されないが、通常は1.0以下である。各材料のおおよその放射率は既に知られているが、添加剤やコーティング剤などで制御することができる。なお、本発明における平均熱放射率は、実施例に記載の方法で測定した値を用いる。また、平均熱放射率差は絶対値を用い、シート状部材Aやシート状部材Bにおける平均熱放射率の大小は問わない。
【0013】
本発明の標的は、厚さが2.0mm以下である。2.0mmを超えると、折りたたんだ際に嵩張り、持ち運びすることが難しくなる。持ち運び性により優れる点で、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。また、耐久性に優れる点で、0.01mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましい。本発明でいう厚さとは、本発明における標的の最も厚い部分の厚さをいう。一方のシート状部材が他方のシート状部材に積層されている態様の場合は、その積層されている部分の厚みを含む。また、積層のために接着剤層がある場合や、さらに樹脂層や金属層を有する場合などはそれらを含む厚さをいう。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。なお、本発明の標的は、さらに板など他の材料に積層して使用することも可能であるが、その際の本発明の標的における厚さは、その他の材料を除く厚さである。
【0014】
本発明の標的は、少なくとも一方の面において、シート状部材Aとシート状部材Bとを含む。少なくとも一方の面において含むとは、少なくとも一方の面において、シート状部材Aとシート状部材Bとが露出して存在すればよく、両方の面において露出して存在していても良い。シート状部材Aとシート状部材Bとを組合せる方法は、特に限定されないが、平面方向につなぎ合わせる方法、一方の部材に他方の部材を積層する方法等、少なくとも一方の面において、シート状部材Aとシート状部材Bが露出して存在させる方法を適宜使用できる。本発明においては、両方の面において、シート状部材Aとシート状部材Bとが存在することが、標的の表裏を意識せずに使用できる点で好ましい。この場合、平面方向につなぎ合わせる方法が、厚さの増加を抑制できる点で好ましい。また、組み合わせには縫製、接着、プリント等の製造方法を採用することができる。中でも縫製は、標的の柔軟性を損なわずに組み合わせるのに適しているため、好ましい製造方法である。
【0015】
本発明の標的においては、上記シート状部材Aとシート状部材Bとを含む面において、シート状部材Aの面積の割合が、全面積の1%以上99%以下であることが好ましい。本発明でいう全面積とは、シート状部材Aとシート状部材Bの両方が露出して存在する面における、シート状部材Aとシート状部材Bの合計面積をいう。両方の面にシート状部材Aとシート状部材Bが露出して存在する場合、少なくとも一方の面において、本発明の範囲であれば良い。一方のシート状部材が他方のシート状部材に重なり、露出していない部分が存在する場合、その露出していない部分の面積を除く。1%以上または99%以下であると、赤外線映像装置などでコントラストを検知しやすくなる。5%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また、90%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0016】
本発明の標的は、シート状部材Aおよびシート状部材Bのガーレ剛軟度が、40mN以下であることが望ましい。40mN以下であると、折りたたんで持ち運びすることが容易になる。下限は特に限定されないが、通常0.1mN以上であることが好ましい。シート状部材Aとシート状部材Bが共に、本発明の範囲にあることが、より持ち運び性に優れるため好ましい。ガーレ剛軟度を下げるためには、例えば、繊維を細くしたり、樹脂等を塗布する場合は硬度の低い樹脂を選択したりすることで達成することができる。
【0017】
本発明のシート状部材Aまたはシート状部材Bは、金属層を有することが好ましい。金属層は、1層でも良いし、複数層であっても良い。金属層を有することで、平均熱放射率を調整することが容易になる。金属層は標的の全面でも良いし、一部であっても良い。
【0018】
金属層を形成する金属としては特に限定されないが、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム等や、これら合金等が適宜使用される。その中でも加工性および汎用性の面から、チタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銅、銀から選ばれる少なくとも1種の金属及びその合金が好ましく用いられる。
【0019】
かかる金属層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、またそれらの方法により製造した金属転写箔などにより形成することができる。また、金属粒子の表面を樹脂で完全に被覆させたもので層を形成していても良い。
【0020】
かかる金属層の厚さは、0.003μm以上100μm以下であることが好ましい。金属層の厚さを、0.003μm以上とすることで、平均熱放射率を低下させることができる。一方、100μm以下とすることで、シートの折りたたみ性や柔軟性、連射耐久性が阻害されるのを防ぐことができる。金属層の厚さの測定方法は特に限定されないが、層の形成に蒸着を用いる場合は、試料から蒸着源までの距離をL(m)、金属の体積をv(m)とし、下式により算出することができる。
・蒸着膜の厚さt(m)=v÷4πL
【0021】
また、任意の2点を分光干渉法やマイクロメータで測定し、その平均値とすることもできる。本発明においては、いずれかの方法で得られた値が、上記範囲であることが好ましい。
【0022】
金属層は、基材上に直接形成してもよいし、難燃層や紫外線吸収層等、他の機能性付与層の上層もしくは下層に形成してもよい。特に、金属層の上層に少なくとも1層以上の層を形成することで、平均熱放射率を目標値に調整することがより容易となる。
【0023】
この上層の形成方法は特に限定されないが、コーティングや、凸版印刷機(フレキソ印刷)を用いることで、連射耐久性を損なうことなく層を形成することが容易となる。
【0024】
本発明におけるシート状部材Aまたはシート状部材Bは、蓄熱素材を含むことが好ましい。蓄熱素材を含むことで実温度が高温になりやすくなり、周囲環境とのコントラストを形成しやすくなる。本発明における蓄熱素材とは、熱エネルギーを蓄え放出することができる材料であれば特に限定されず、蓄熱セラミックス、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素質粒子や、炭素繊維、酸化インジウムスズ、アンチモンドープ酸化スズ、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン等が例示できる。また、蓄熱性を有する繊維やフィルムなどでも良い。蓄熱素材は、1種であっても良いし、複数含んでいても良い。また、蓄熱素材を含ませる態様は特に限定されず、例えば、シート状部材上に塗布してもよいし、繊維やフィルムなどの素材に練りこんでもよい。
【0025】
本発明において、シート状部材を構成する織物、編物、不織布等の製造方法は特に限定するものではなく、公知のいかなる方法でも用いることが可能である。例えば、織物であれば、長繊維の紡績糸を混綿して紡績糸を得た後、単糸または双糸、捲縮加工糸等の糸を用いて、レピア織機などを用いて、綾織、平織などの組織を製織することができる。
【実施例0026】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
(1)平均熱放射率
シート状部材A、シート状部材Bについて、射撃面の任意の2箇所を「D and S AERD」熱放射率計(Devices and Services社製 ASTM C 1371)にて測定した。射撃面はシート状部材Aとシート状部材Bの両方が露出している面とした。測定した平均値を算出したものを、それぞれの平均熱放射率とした。
【0028】
(2)厚さ
シート状部材Aとシート状部材Bを重ね、厚みが大きくなる箇所から任意の2箇所をマイクロメータ「CLM1-15QM」(株式会社ミツトヨ製)にて測定し、その平均値を本発明における厚さとした。実施例においては、シート状部材Bとシート状部材Aとが積層されている箇所の厚みが大きくなるため、その部分から任意に2箇所選んだ。
【0029】
(3)ガーレ剛軟度
JISL1096(2010)8.22曲げ反発性A法に則り実施した。試験片のサイズは長さ89mm幅25mmで行った。生地の一方向をタテ、他方向をヨコとして各5点ずつ測定し、タテヨコそれぞれで平均値を求めた。
【0030】
(4)面積の割合
シート状部材Aの面積の割合は、射撃面に関して算出を行った。射撃面はシート状部材Aとシート状部材Bの両方が露出している面とした。シート状部材Aおよびシート状部材Bのそれぞれ表面に出ている部分の面積を、メジャーを用いて測定し、m2単位で少数第3位を四捨五入して求めた。シート状部材Aとシート状部材Bの面積の合計を全面積とした。求めたシート状部材Aの面積の割合(%)を全面積で除して、小数点第2位を四捨五入して割合を求めた。
【0031】
(5)連続使用性(連射耐久性)
試験方法:実施例の方法にて各シート状部材を作製したサンプルを、MIL-STD-662Fに準拠した方法で射撃試験した。サンプルの任意の場所を20cm四方の固定枠に固定し、サンプルから2.5mの距離に銃口を配し、“Caliber”50(NATO STANDARD STANAG 2920-V2,(2003)旭精機工業株式会社製)を250~300m/sで発射した。弾速の検速位置はサンプルの手前0.5mとした。射撃後に貫通したサンプルを取り外し、貫通孔が弾の面積よりも外に裂けている部分の長さをノギスで測定し、全ての裂け目が10mm未満のものを「○」、10mmを超える裂け目があるものを「×」とした。
【0032】
(6)識別性
草原の中、標的のシート状部材Aおよびシート状部材Bが存在する面が東の上空を向くよう、地面に対して45度の角度で展張し、100m離れた位置に赤外線サーモグラフィカメラ装置「H2640」(日本アビオニクス株式会社製)を配置した。撮影時刻は9時から11時、この時の大気温は25℃、天気は晴れ、全天日射量は1~3MJ/m/hr、風速は0~5m/sであった。シート状部材Aとシート状部材Bの赤外線撮像装置が示す見かけの最高温度を記録し、次の基準で識別性を判定した。
【0033】
・シート状部材Aとシート状部材Bの温度差5℃以上 : 〇
・シート状部材Aとシート状部材Bの温度差5℃未満2℃以上: △
・シート状部材Aとシート状部材Bの温度差2℃未満 : ×。
【0034】
実施例1
カーボンブラックを練りこんだポリエステル原着糸“テトロン”1670T-60-C170黒(東レ株式会社製)を用いて通常の方法でカバーファクター1.0の2/1ツイル織物を製織し、これをシート状部材Aとした。
【0035】
ポリエステル繊維“テトロン”560T-96-702C(東レ株式会社製)を用いて通常の方法でカバーファクター1.2の白色平織物を製織した。“セイカボンド”「E-263」(大日精化工業株式会社製)100部、“セイカボンド”「C-26」(大日精化工業株式会社製)20部、酢酸エチル140部を混合したものを、アルミ転写箔ホットスタンピングメタリックフィルム(和信化学工業株式会社製)にドライ塗布量が3g/mになるよう通常のグラビアマシンで塗布・乾燥を行い、前記白色平織物に転写したものを、シート状部材Bとした。
【0036】
シート状部材Bを2m四方、シート状部材Aを1m四方に裁断し、シート状部材Aを、シート状部材Bの転写箔貼合面の中央に配置して積層し、縫製した。
【0037】
このように作製した標的の性能を確認したところ、識別性は「〇」、連射耐久性は「〇」であった。この標的の評価結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
蓄熱素材として、蓄熱性を有する黒色の“SUMMER SHIELD”(東レ株式会社製)の非遮熱面に“セイカボンド”「E-263」(大日精化工業株式会社製)100部、“セイカボンド”「C-26」(大日精化工業株式会社製)20部、酢酸エチル140部を混合したものを実施例1同様にグラビアコートして乾燥し、33Tのナイロン平織物「KT3030A」(東レ株式会社製CF1.1)と貼合したものをシート状部材Aとした。
【0039】
実施例1記載の白色平織物に、通常の蒸着方法にてアルミニウムを0.6μm厚さ分蒸着することにより、アルミ蒸着生地を作製した。”コータックス”「LH-408」(東レ・ファインケミカル株式会社製)5部、“コロネート”「HL」(東ソー株式会社製)0.1部、“Shepherd”「223 green」(THE SHEPHERD COLOR COMPANY社製)0.2部、酢酸エチル5部を調合したものを、このアルミ蒸着生地の蒸着面に、平均熱放射率が0.50となるようにワイヤーバーコーティングして着色層を形成し、シート状部材Bとした。
【0040】
シート状部材Bを2m四方、シート状部材Aを1.5m四方に裁断し、シート状部材Aを着色面が外側になるよう、シート状部材Bの転写箔貼合面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
実施例1で作製した白色平織物に、40“ピーブライト”「AVT」(尾池メタリックデザイン株式会社製)を実施例1と同様の方法で転写した生地を作製した。この生地の転写面に“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」(DIC株式会社製)に、ポリマー濃度と同量の導電性粉末「T-1」(三菱マテリアル電子化成株式会社製)を分散して適宜MEKで希釈したものを、平均熱放射率0.75となるようにコーティング・乾燥を行い、シート状部材Aとした。
【0042】
上記の“ピーブライト”を転写した生地の転写面に、“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」(DIC株式会社製)をMEKで適宜希釈したものを、平均熱放射率が0.55となるようにコーティング・乾燥を行い、シート状部材Bとした。
【0043】
シート状部材Aを2m四方、シート状部材Bを1.5m×1mの長方形に裁断し、シート状部材Bをコーティング面が外側になるよう、シート状部材Aのコーティング面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
実施例1で作製した2/1ツイル織物に、“DILAC”「BLACK PV-5824A」(DIC株式会社製)をMEKで希釈し、平均熱放射率0.84となるようにコーティング・乾燥を行い、シート状部材Aとした。実施例3で作製した“ピーブライト”を転写した生地をシート状部材Bとした。
【0045】
シート状部材Aを0.8m四方、シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをコーティング面が外側になるよう、シート状部材Bのアルミ転写面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例5
“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」に、ポリマー濃度と同量の「LaB6-O」(日本新金属株式会社製)を分散したものをMEKで適宜希釈し、実施例1で作製した2/1ツイル織物に、平均熱放射率0.82となるようにコーティングを行ったものをシート状部材Aとした。
【0047】
“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」に、ポリマー濃度と同量の「JR405」(テイカ株式会社製)を分散してMEKで適宜希釈したものを、実施例3で作製した“ピーブライト”を転写した生地の転写面に平均熱放射率が0.60となるようにコーティングを行い、シート状部材Bとした。
【0048】
シート状部材Aを0.5m四方、シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをコーティング面が外側になるよう、シート状部材Bのアルミ転写面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」に、ポリマー濃度と同量の「JR1000」(テイカ株式会社製)を分散してMEKで適宜希釈したものを、実施例3で作製したアルミ転写生地の転写面に平均熱放射率が0.62となるようにコーティングを行い、シート状部材Aとした。また、シート状部材Bは、実施例3で作製したものを用いた。
【0050】
シート状部材Aを1.0m四方、シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをコーティング面が外側になるよう、部材シート状部材Bのアルミ転写面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
実施例1で製織した白色平織物を“Dianix”「Black CC-R」(Dystar Textilfarben GmbH & Co.社製)を用いて2.60%owf、130℃の条件で染色した生地をシート状部材Aとした。
【0052】
“HAULAC”「MAT PV-8034_CK0010」80部、“DILAC”「GREEN LG9-171_CK0015」(DIC株式会社製)20部、MEK適宜を調合したものを、実施例2で作製したアルミ蒸着生地の蒸着面に、平均熱放射率が0.62となるようにワイヤーバーコーティングして着色層を形成し、シート状部材Bとした。
【0053】
シート状部材Aを1.95m四方、部材シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをシート状部材Bのコーティング面の中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例3
実施例1と同様のシート状部材Aを用いた。また、16μm厚さのアルミニウム箔A1085を、シート状部材Bとした。
【0055】
シート状部材Aを1.0m四方、シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをシート状部材Bの中央に配置して積層し、縫製した。この標的の評価結果を表1に示す
比較例4
実施例1で製織した白色平織物を“Dianix”「Green CC」(Dystar社製)を用いて1.30%owf、130℃の条件で染色した生地をシート状部材Aとした。ポリエステルフィルム“ルミラー”「#250-E20」(東レ株式会社製)をシート状部材Bとした。シート状部材Aを0.1m四方、シート状部材Bを2.0m四方に裁断し、シート状部材Aをシート状部材Bの中央に配置して縫製した。この標的の評価結果を表1に示す
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の標的は、電源を必要とせず、連続使用性や持ち運び性に優れることから、赤外線映像装置などを用いた各種の標的に使用でき、例えば訓練や遊びなど様々なシチュエーションにおいて、砲弾や銃、矢などの標的に有用である。