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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121331
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】反射光分布測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G01N21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024612
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】592004404
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】井上 信一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 美範
(72)【発明者】
【氏名】星 武幸
(72)【発明者】
【氏名】津村 徳道
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】被測定面が曲面である場合にも高精度にBRDF等を測定できる反射光分布測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】反射光分布測定装置10は、曲面状の被測定面12に光21を照射する円環状の線光源20と、光21が照射されている被測定面12を撮像する撮像部30と、を備えている。撮像部30の光軸31と線光源20の円環の中心軸22とが、一致しているとしてもよい。更に、撮像部30によって撮像された画像32に写り込んだ線光源20の反射像の大きさに基づき、被測定面12の曲率半径Rを演算する演算部40を、備えてもよい。演算部40は、曲率半径Rから被測定面12の傾斜を求め、その傾斜を用いて反射光の角度を補正する、としてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面状の被測定面に光を照射する円環状の線光源と、
前記光が照射されている前記被測定面を撮像する撮像部と、
を備えた反射光分布測定装置。
【請求項2】
前記撮像部の光軸と前記線光源の前記円環の中心軸とが一致している、
請求項1記載の反射光分布測定装置。
【請求項3】
前記撮像部によって撮像された画像に写り込んだ前記線光源の反射像の大きさに基づき前記被測定面の曲率半径を演算する演算部を、
更に備えた請求項1又は2記載の反射光分布測定装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記曲率半径から前記被測定面の傾斜を求め、前記傾斜を用いて反射光の角度を補正する、
請求項3記載の反射光分布測定装置。
【請求項5】
曲面状の被測定面に円環状の線光源によって光を照射し、
前記光が照射されている前記被測定面を撮像部によって撮像する、
反射光分布測定方法。
【請求項6】
前記撮像部の光軸と前記線光源の前記円環の中心軸とが一致している、
請求項5記載の反射光分布測定方法。
【請求項7】
前記撮像部によって撮像された画像に写り込んだ前記線光源の反射像の大きさに基づき前記被測定面の曲率半径を演算する、
請求項5又は6記載の反射光分布測定方法。
【請求項8】
前記曲率半径から前記被測定面の傾斜を求め、前記傾斜を用いて反射光の角度を補正する、
請求項7記載の反射光分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定面から戻ってきた反射光について光量分布などを測定する反射光分布測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の反射光の角度分布であるBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)を測定する技術のうち、線光源の反射像を用いたBRDF測定技術は本発明者らにより報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
このBRDFとは、双方向反射率分布関数とも呼ばれる反射モデルの一つであり、反射表面において、光がある方向から入射したとき他の方向へどれだけ反射されるか、を表す関数である。コンピュータグラフィックスの生成にもBRDFは用いられている。実際の物体表面の質感をよりリアルに再現するために、物体表面のBRDFの測定が重要視されている。
【0004】
非特許文献1に開示された反射光分布測定装置70を、図8[A]に示す。反射光分布測定装置70は、試料71の被測定面72を照射する直線状の線光源80と、線光源80によって照射されている被測定面72を撮像する撮像部90と、を備えている。線光源80は、図8[A]において図面に垂直な方向に延びた直線状である。線光源80の線幅は0.4mmである。線光源80と撮像部90は、入射角θi及び反射角θrが試料71に対して正反射の関係になるように、ここではそれぞれ45°に被測定面72の法線75を挟んで配置されている。
【0005】
本発明でいう線光源とは、線状の点光源である。物理用語の点光源とは、ある点から全方向に放射状に光を発する光源である。光軸が平行な平行光、例えば太陽光、と区別される。また、本発明でいう円環状の線光源とは、同心円環状に成形した線状の点光源である。
【0006】
線光源80から照射された光73は、被測定面72で反射して、撮像部90で光沢として撮像される。このとき、撮像部90で得られた被測定面72の画像には、線光源80の反射像が直線状の光沢として写り込む。この反射像の光量分布から被測定面72のBRDFが測定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Inoue and N. Tsumura, “Measuring Method for Line Spread Function of Specular Reflection,” OSA Continuum 3(4), 864-877 (2020).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、反射光分布測定装置70を用いて物体のBRDFを測定する技術では、平面に対しては高精度な測定結果が得られるものの、曲面に対しては測定精度が落ちるという問題があった。その理由は、図8[B]に示すように、曲面の被測定面74の反射像が形成される領域では、線光源80からの光73が当たる位置毎に、光73の反射角度が変わるためである。その結果、被測定面74の画像に写し込まれる線光源80の反射像から求める反射角度が平面の場合に対して歪んだ値になってしまうので、反射光分布の測定が不正確になる。換言すると、光73の反射角度が被測定面74の光沢によるのか被測定面74の傾斜によるのかわからない反射光を測定することになる。
【0009】
特にコンピュータグラフィックスで表示したい対象(例えば工業製品や美術品等)は曲面で構成されている場合が多いため、曲面でも高精度にBRDFを測定できる技術が待望されている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、被測定面が曲面である場合にも高精度にBRDF等を測定できる反射光分布測定装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく実験及び考察を繰り返したところ、物体表面の複雑な曲面でも部分的に見れば球面として扱えることに気がついた。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る反射光分布測定装置は、
曲面状の被測定面に光を照射する円環状の線光源と、
前記光が照射されている前記被測定面を撮像する撮像部と、
を備えた装置である。
【0013】
そして、本発明に係る反射光分布測定方法は、
曲面状の被測定面に円環状の線光源によって光を照射し、
前記光が照射されている前記被測定面を撮像部によって撮像する、
方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、曲面状の被測定面に円環状の線光源によって光を照射し、その被測定面を撮像することにより、線光源全体の円環状の反射像が被測定面の画像に写り込む。この円環状の反射像から被測定面の曲率半径を推定し、この曲率半径から被測定面の測定位置の傾斜を算出できることから、被測定面の傾斜による反射角度の増減を補正した反射光分布を正確に測定できるので、被測定面が曲面である場合にも高精度にBRDF等を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1の反射光分布測定装置を示す構成図である。
図2図2[A]は図1において円環状の線光源を被測定面側から見た平面図であり、図2[B]は図2[A]におけるIIb-IIb線断面図である。
図3】円環状の線光源の他の例を示す平面図である。
図4】撮像部で撮像された画像を示す図であり、図4[A]は第一例、図4[B]は第二例を、図4[C]は第三例である。
図5】曲率半径を測定する場合の第一例を示す説明図であり、図5[A]は平面状の被測定面を撮像する場合、図5[B]は球面状の被測定面を撮像する場合である。
図6】曲率半径を測定する場合の第一例を示す説明図であり、図6[A]は平面状の被測定面を撮像する場合の他の例、図6[B]は球面状の被測定面を撮像する場合の他の例である。
図7図7[A]は曲率半径を測定する場合の第二例を示す説明図、図7[B]は反射角を補正する場合の一例を示す説明図、図7[C]は撮像部で撮像された画像を示す説明図である。
図8図8[A]は従来技術における反射光分布測定装置を示す構成図、図8[B]は図8[A]において被測定面が曲面である場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。
【0017】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の反射光分布測定装置を示す構成図である。図2[A]は図1において円環状の線光源を被測定面側から見た平面図であり、図2[B]は図2[A]におけるIIb-IIb線断面図である。図3は、円環状の線光源の他の例を示す平面図である。以下、図1乃至図3に基づき説明する。
【0018】
本実施形態1の反射光分布測定装置10は、曲面状の被測定面12に光21を照射する円環状の線光源20と、光21が照射されている被測定面12を撮像する撮像部30と、を備えている。撮像部30の光軸31と線光源20の円環の中心軸22とが、一致しているとしてもよい。更に、撮像部30によって撮像された画像32に写り込んだ線光源20の反射像の大きさに基づき、被測定面12の曲率半径Rを演算する演算部40を、備えてもよい。演算部40は、曲率半径Rから被測定面12の傾斜を求め、その傾斜を用いて反射光の角度を補正する、としてもよい。曲面はその多くが部分的に見れば球面とみなせる。曲率半径Rは、球面の中心Oから被測定面12までの長さである。
【0019】
線光源20及び撮像部30は、試料11の被測定面12と対向するように、例えば架台等に設置される。試料11は、例えばX-Yステージ14等に載置される。又は、線光源20、撮像部30及び演算部40を一体化して携帯可能とし、これを移動が難しい物体の測定に用いてもよい。例えば、撮像部30としてカメラを用いた場合、そのレンズを線光源20の円環内に嵌め込んで、コンパクトにしてもよい。なお、図1では、わかりやすくするために、線光源20及び試料11を断面で示している。
【0020】
図2は線光源20の具体的な一例を示す。線光源20は絞り板23及び筐体25を有する。絞り板23及び筐体25は、被測定面12側から見て同じ円環状になっており、互いに接合されている。絞り板23には、円環状にスリット24が幅0.4mmで形成されている。筐体25には、LEDなどの発光素子26が多数収容されている。これにより、発光素子26からの光21は、スリット24のみから射出されるようになっている。つまり、円環状の線光源20の「円環」とは、スリット24の形状のことである。
【0021】
また、撮像部30としてのカメラのシャッターボタンを押すと瞬間的に強く発光するストロボ(又はフラッシュとも呼ばれる。)を、発光素子26として用いてもよい。この場合は、撮像時の外光の影響を低減できる。なお、図2では、わかりやすくするために、スリット24の幅を他の部分に比べて拡大して描いている。
【0022】
円環状の線光源における「円環」は、必ずしも完全な円である必要はなく、例えば図3に示すように、円全体を推測可能であれば一部が欠けた円であってもよい。図3に示す線光源50では、絞り板53に形成されたスリット54の一部が欠けている。この場合は、絞り板53がスリット54で二つに分離されないので、スリット54の形成が容易である。なお、線光源50の断面構造は線光源20と同じである。
【0023】
撮像部30は、CCDセンサ又はCMOSセンサなどの二次元イメージセンサ及び撮像用の光学系を有する一般的なカメラを用いている。その二次元イメージセンサの受光面で捉えた画像32は、二次元座標上のフォトセルごとの光量(すなわち光量分布)として電気信号に変換され、演算部40へ出力されるとともに、ディスプレイなどに拡大表示される。撮像部30は、光軸31を中心とする画角φで、被測定面12を撮像する。通常、撮像部30の光軸31は、撮像部30で得られる画像32の中心に位置する。また、撮像部30の光軸31と被測定面12の法線13とが一致するように、撮像部30及び被測定面12の位置が調整されている。つまり、図1に示すように、光軸31、中心軸22及び法線13は、全て一致している。
【0024】
演算部40は、例えばパーソナルコンピュータ内に画像処理及び数値計算のコンピュータプログラムによって実現されている。パーソナルコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びHDD等からなる一般的なものでよい。コンピュータプログラムは、HDDに格納されており、HDDからRAMにロードされ、CPUにて実行される。HDDの代わりにSSD等を用いてもよい。
【0025】
次に、反射光分布測定装置10の動作について説明する。
【0026】
まず、線光源20及び撮像部30を被測定面12に対向させ、線光源20から被測定面12に光21を照射する。すると、被測定面12には、線光源20の円環状の反射像が生ずる。この状態において撮像部30によって被測定面12を撮像することにより、線光源20の円環状の反射像が写り込んだ画像32が得られる。
【0027】
画像32について、第一例を図4[A]、第二例を図4[B]、第三例を図4[C]に示す。図4[A]の画像32aは、被測定面が平面状(曲率半径R無限大)の場合である。図4[B]の画像32bは、被測定面が球面状(凸面かつ曲率半径R大)の場合である。図4[C]の画像32cは、被測定面が球面状(凸面かつ曲率半径R小)の場合である。これらの図から明らかなように、画像32に写り込んだ線光源20の反射像の大きさが小さくなるほど、被測定面12の曲率半径Rも小さくなる。つまり、線光源20の反射像の大きさと曲率半径Rとは一対一の関係にあるので、線光源20の反射像の大きさを測ることによって曲率半径Rを求めることができる。これらの関係は、実測又は計算よって得られる。
【0028】
次に、線光源20の反射像の大きさと曲率半径Rとの関係を、計算によって得る方法の第一例を説明する。
【0029】
図5[A]は平面状の被測定面15を撮像する場合、図5[B]は球面状の被測定面12を撮像する場合である。図5[A]において、被測定面15の法線16は、撮像部30の光軸31及び線光源20の中心軸22と一致している。図5[B]においても、被測定面12の法線13は、撮像部30の光軸31及び線光源20の中心軸22と一致している。つまり、どちらの場合も、被測定面以外は同じ条件である。このとき、図5[A]では線光源20の円環状の反射像201が生じ、図5[B]では反射像201よりも小さい円環状の反射像202が生じている。図5において、図1と同じ部分には同じ符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0030】
ここで、
被測定面15,12から線光源20までの距離をa、
被測定面15から反射像201までの距離をb1、
被測定面12から反射像202までの距離をb2、
被測定面12から球面の焦点Fまでの焦点距離をf、
被測定面12から球面の中心Oまでの曲率半径をR、
反射像201の大きさをd1、
反射像202の大きさをd2、
とする。a,b1は既知であり、d1/d2は画像32から測定可能であり、b2,f,Rが未知である。
【0031】
このとき、図5[B]において凸面鏡の写像公式及び倍率mは次式で表すことができる。
(1/a)-(1/b2)=-1/f
=-2/R (∵2×f=R) ・・・(1)
m=b2/a=d2/d1 ・・・(2)
式(2)から未知のb2について次式が得られる。
b2=(a×d2)/d1 ・・・(3)
式(1)、(3)から未知のRについて次式が得られる。
R=2/{(1/b2)-(1/a)}
=2×a/{(d1/d2)-1} ・・・(4)
【0032】
したがって、既知のaと測定されたd1/d2とを式(4)に代入することによって、Rを求めることができる。例えば、aとd1との多数の組み合わせからなるデータベースを予め作成しておき、球面状の被測定面12を測定する度にd2を得て、a,d1/d2を式(4)に代入することによって、Rを求めるようにしてもよい。
【0033】
また、測定したd2がd1に等しければ、式(4)右辺の分母が0になるので、Rが無限大となる。つまり、被測定面が平面であるか否かの検出にも有効である。なお、本実施形態1では球面状の被測定面12が凸面である場合について説明したが、被測定面12が凹面である場合も凹面鏡の写像公式を用いて凸面の場合と同様に曲率半径Rを求めることができる。また、円環状の反射像201,202の大きさd1,d2として、その直径を対象としたが、例えば半径など、どの部分を対象にしてもよい。
【0034】
次に、曲率半径Rの求め方について、図7[A]に基づき第二例を説明する。図7[A]において、図5[B]と同じ部分には同じ符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0035】
光軸13を通る撮像部30の中心及び線光源20のスリット24の部分を、それぞれ点で表す。ここで、
被測定面12における光軸13と交わる点をP、
入射光211と反射光222とが被測定面12上で正反射する位置を点Q、
撮像部30と線光源20との中間の位置を点S、
被測定面12から撮像部30までの距離を、被測定面12から線光源20までの距離と同じくa、
撮像部30と線光源20との距離をc、撮像部30と点Sとの距離をc/2、
点Pと点Qとの距離をe、
とする。
また、中心Oと点Sとを結ぶ直線131が点Qを通るものとする。
【0036】
このとき、図7[A]から明らかなように、次式が成り立つ。
e/R=(c/2)/(R+a) ・・・(5)
∴R/e=(R+a)/(c/2)
この両辺にe×(c/2)をかけると、
R(c/2)=(R+a)×e
となるので、Rは次式で与えられる。
R=(a×e)/((c/2)-e) ・・・(6)
【0037】
したがって、既知のa,cと測定されたeとを式(6)に代入することによって、Rを求めることができる。また、測定したeがc/2に等しければ、式(6)右辺の分母が0になるので、Rが無限大となる。つまり、第一例と同様、被測定面が平面であるか否かの検出にも有効である。
【0038】
図7[C]は撮像部30で撮像された画像32を示し、図7[C]において図7[A]の各符号に対応する部分は同じ符号を用いる。画像32において、撮像部30の光軸31は既知である。光軸31は、一般に画像32の中心になり、点Pに重なる。画像32では、被測定面12上を撮像した際の線光源20の反射光のピークを、黒い円環(反射像202)で示している。曲率半径Rは、前述したように、画像32の中心(点P)から正反射位置である点Qまでの距離eから算出可能である。例えば、画像32の画素何個分が実際の何mmに相当するというように、距離eは実際の長さに対応づけられている。また、線光源20の反射光量分布は、中心(点P)から放射状に広がる線で切った反射像202の断面である。
【0039】
次に、曲率半径Rから被測定面12の傾斜を求め、その傾斜を用いて反射光の角度を補正する方法について、その一例を図7[B]に基づき説明する。図7[B]において、図7[A]と同じ部分には同じ符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0040】
ここで、
被測定面12の傾斜角をβ、
補正前の反射光212の角度をα1、
補正後の反射光212の角度をα2、
点Qを通り光軸31に平行な線を直線311、
とする。角度α1は撮像部30が点Qを見る角度である。
【0041】
このとき、図7[B]から明らかなように、β,α1,α2は次式で与えられる。
β=arcsin(e/R) ・・・(7)
α1=arctan(e/a) ・・・(8)
α2=α1+β ・・・(9)
【0042】
したがって、式(7)及び曲率半径Rから傾斜角βを求め、式(8)、式(9)及び傾斜角βを用いて反射光222の角度α1を角度α2に補正することができる。これにより、正反射位置である点Qにおいて、反射光222の反射角(角度α2)は入射光221の入射角に等しくなり、正しく補正されたことがわかる。
【0043】
次に、反射光分布測定装置10の作用及び効果について説明する。
【0044】
(1)反射光分布測定装置10によれば、曲面状の被測定面12に円環状の線光源20によって光21を照射し、被測定面12を撮像することにより、線光源20全体の円環状の反射像202が被測定面12の画像32に写り込む。したがって、測定したい反射像202に加えて、その位置の曲率半径R及びその位置の傾斜を算出可能な画像32が得られることから、曲面の傾斜の影響を補正した反射光分布を正確に測定できるので、被測定面12が曲面である場合にも高精度にBRDF等を測定できる。
【0045】
従来技術において、図8[B]に示すように、曲面の被測定面74の反射像が形成される領域では、直線状の線光源80からの光73が当たる位置毎に、光73の反射角度が被測定面74の傾斜によって変わる。そのため、曲面の被測定面74の画像に写し込まれる線光源80の反射像は、平面の場合の反射に比べ歪んだ分布になってしまう。これに対し、本実施形態1では、光量分布の測定と同時に被測定面74のその位置の曲率半径Rを算出でき、曲率半径Rからその位置の傾斜が得られる。そのため、曲面状の被測定面12の画像32に写し込まれる線光源20の反射像に基づき、被測定面12が曲面である場合にも、傾斜による角度の増減を補正して高精度にBRDF等を測定できる。
【0046】
(2)撮像部30の光軸31と線光源20の円環の中心軸22とが一致する場合は、被測定面12の法線13を精度よく測定できる。つまり、画像32の中心に反射像202が来るように撮像部30及び線光源20(又は被測定面12)の位置を調整すれば、光軸31及び中心軸22が被測定面12の法線13に一致したことになる。このとき、画像32において反射像202が真円となり、画像32の中心が法線13の位置となる。以下、図6に基づき更に詳しく説明する。
【0047】
図6[A]は平面状の被測定面15を撮像する場合、図6[B]は球面状の被測定面12を撮像する場合である。図6[A]において、被測定面15の法線16は、光軸31及び中心軸22と一致していない。図6[B]においても、被測定面12の法線13は、光軸31及び中心軸22と一致していない。このとき、どちらの場合も反射像201,202は、撮像部30の画角φの端の方、すなわち画像32においても端の方に位置し、しかも真円ではなく楕円となる。これらの図から明らかなように、法線16,13が光軸31及び中心軸22と一致していないことは容易に検出できる。この状態から撮像部30及び線光源20(又は被測定面15,12)の位置を図5のように調整することにより、法線16,13を精度よく測定できる。
【0048】
(3)撮像部30によって撮像された画像32に写り込んだ線光源20の反射像202の大きさに基づき、被測定面12の曲率半径Rを演算する演算部40を、備えた場合は、前述したように、被測定面12の曲率半径Rを容易かつ精度よく測定できる。このように、反射光分布測定装置10によれば、球面状の被測定面12の法線13や曲率半径Rに基づき被測定面12の傾斜を把握できるので、これらの情報を利用して球面状の被測定面12のBRDFを精度よく測定できる。光沢を有する物体の多くは平面ではなく曲面であるため、工業製品、美術品、文化財等のBRDF測定に反射光分布測定装置10を活用できる。
【0049】
(4)反射光分布測定装置10の動作を方法の発明として捉えると、次の工程を含む反射光分布測定方法となる。
曲面状の被測定面12に円環状の線光源20によって光21を照射し、光21が照射されている被測定面12を撮像部30によって撮像する方法。このとき、撮像部30の光軸31と線光源20の円環の中心軸22とが一致している、としてもよい。また、撮像部30によって撮像された画像32に写り込んだ線光源20の反射像202の大きさに基づき、被測定面12の曲率半径Rを演算する、としてもよい。更に、曲率半径Rから被測定面12の傾斜を求め、この傾斜を用いて反射光の角度を補正する、としてもよい。
この反射光分布測定方法も、反射光分布測定装置10と同等の作用及び効果を奏する。
【0050】
<その他>
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができ、そのように変更された技術も本発明に含まれる。例えば、曲率半径の算出方法や反射角の補正方法は、前述した以外にも何通りも考えられ、どのような方法でも用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 反射光分布測定装置(実施形態1)
11 試料
12 被測定面(球面状)
13 法線
R 曲率半径
O 中心
14 X-Yステージ
15 被測定面(平面状)
16 法線
20,50 線光源(円環状)
201,202 反射像
21 光
22 中心軸
23,53 絞り板
24,54 スリット
25 筐体
26 発光素子
30 撮像部
31 光軸
32,32a,32b,32c 画像
φ 画角
40 演算部
70 反射光分布測定装置(従来技術)
71 試料
72 被測定面(平面)
73 光
74 被測定面(曲面)
75 法線
80 線光源(直線状)
90 撮像部
θi 入射角
θr 反射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8