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特開2023-12134水浄化剤及びその製造方法、並びに水浄化方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012134
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】水浄化剤及びその製造方法、並びに水浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20230118BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230118BHJP
【FI】
B01D21/01 101A
B01D21/01 107
C02F1/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115608
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅彦
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA06
4D015BA08
4D015BA09
4D015BA10
4D015BA11
4D015BA16
4D015BA17
4D015BB06
4D015BB14
4D015BB17
4D015CA17
4D015CA20
4D015DB03
4D015DB08
4D015DB12
4D015DB22
4D015DB31
4D015DB33
4D015DC04
4D015EA06
4D015EA32
(57)【要約】
【課題】造粒物における植物成分と高分子凝集剤とが分離することを低減することができ、優れた浄化性能を示す水浄化剤及びその製造方法、並びに該水浄化剤を用いた水浄化方法の提供。
【解決手段】植物成分と高分子凝集剤とを含む混合物の造粒物からなり、所定の条件で処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下である水浄化剤である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物成分と高分子凝集剤とを含む混合物の造粒物からなり、
JIS Z 0232の正弦波掃引振動試験条件(レベル2)にて処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下であることを特徴とする水浄化剤。
【請求項2】
前記植物成分と、前記高分子凝集剤との質量比(植物成分/高分子凝集剤)が、0.1/99.9~99.9/0.1である請求項1に記載の水浄化剤。
【請求項3】
前記植物成分と、前記高分子凝集剤との質量比(植物成分/高分子凝集剤)が、1/9~9/1である請求項2に記載の水浄化剤。
【請求項4】
前記植物成分の植物が、長朔黄麻及びモロヘイヤの少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の水浄化剤。
【請求項5】
前記高分子凝集剤が、ポリアクリルアミドである請求項1から4のいずれかに記載の水浄化剤。
【請求項6】
前記水浄化剤の嵩比重が、0.18~0.80g/cmである請求項1から5のいずれかに記載の水浄化剤。
【請求項7】
前記水浄化剤の嵩比重のばらつき(嵩比重の最小値に対する、嵩比重の最大値と最小値との差の割合)が、5%未満である請求項6に記載の水浄化剤。
【請求項8】
純水100質量部に対して前記水浄化剤0.1質量部を溶解乃至分散して得られる溶解乃至分散液の23℃における粘度が、100~350mPa・sである請求項1から7のいずれかに記載の水浄化剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法であって、
乾燥植物を粉砕し、数平均粒径が250μm以下の植物粉末を得る植物粉末製造工程と、
前記植物粉末と高分子凝集剤とを混合し、水分を加えて加圧混練し、押出造粒により造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を粉砕し、顆粒状の造粒物とする粉砕工程とを含むことを特徴とする水浄化剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の水浄化剤及び請求項9に記載の水浄化剤の製造方法により得られた水浄化剤のいずれかを水に溶解乃至分散させ、植物成分及び高分子凝集剤の溶解乃至分散液を得、該溶解乃至分散液を排水に供することにより排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする水浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業排水などの水の浄化に使用する、植物由来の水浄化剤及びその製造方法、並びに該水浄化剤を用いた水浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場に於いて種々の製品を製造する過程において、無機イオンとして金属イオンやフッ素イオン等の環境負荷物質を含む廃液が大量に発生している。
一方、これらの無機イオンの排出に関する規制は徐々に厳しくなっている。この排出規制を遵守するために、無機イオンを含む排水から無機イオンを効果的に除去することができ、しかもできるだけ簡易に、低コストで実施できる無機イオンの除去方法が求められている。
従来、工場排水などから不純物イオンを除去する方法としては、凝集沈殿法、イオン交換法、活性炭などの吸着剤への吸着法、電気的吸着法、および磁気吸着法などが提案されている。
【0003】
例えば、凝集沈殿法として、重金属イオンが溶解した排水に塩基を加え、排水を塩基性にして、重金属イオンの少なくとも一部を不溶化し、懸濁固形物を形成させる工程と、排水に無機凝集剤を加え、懸濁固形物を凝結沈降させる工程と、排水に高分子凝集剤を加え、懸濁固形物を巨大フロック化する工程と、モロヘイヤ、小松菜などの葉菜からなる陽イオン交換体が含有されている吸着層に排水を通水する吸着工程を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、モロヘイヤ、又はこの乾燥物、又はこの抽出物の少なくともいずれかを含有する凝集剤と、高分子凝集剤とを混合或いは併用して懸濁液中の微粒子を凝集分離する凝集方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、浄化したい排水の量が多い、排水に含まれる不要物質の量が多い、あるいは排水に含まれる不要物質の種類が多いほど、これら排水の浄化処理に必要な浄化剤を自動で投入するシステムの構築が望まれる。
そこで、自動化浄化装置に好適に使用し得る水浄化剤として、植物粉末と高分子凝集剤との混合物を含む造粒物からなる水浄化剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤を製造する方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-194385号公報
【特許文献2】特開平11-114313号公報
【特許文献3】特開2016-73898号公報
【特許文献4】特開2018-47451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、水浄化剤に関する様々な研究開発が行われている。しかし、本発明者らは、水浄化剤の輸送時に造粒物における植物成分と高分子凝集剤とが分離してしまう場合があること、植物成分と高分子凝集剤とが分離してしまうと十分な水浄化性能が得られなくなってしまうことを新たに知見した。
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、造粒物における植物成分と高分子凝集剤とが分離することを低減することができ、優れた浄化性能を示す水浄化剤及びその製造方法、並びに該水浄化剤を用いた水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、乾燥植物を粉砕し、数平均粒径が250μm以下の植物粉末を得る植物粉末製造工程と、前記植物粉末と高分子凝集剤とを混合し、水分を加えて加圧混練し、押出造粒により造粒物を得る造粒工程と、前記造粒物を粉砕し、顆粒状の造粒物とする粉砕工程とを含む水浄化剤の製造方法により製造した水浄化剤は、造粒物に含まれる植物成分と高分子凝集剤とが分離されにくいこと、水処理剤を所定の条件で処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下であると優れた浄化性能が得られることを見出した。
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 植物成分と高分子凝集剤とを含む混合物の造粒物からなり、
JIS Z 0232の正弦波掃引振動試験条件(レベル2)にて処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下であることを特徴とする水浄化剤である。
<2> 前記植物成分と、前記高分子凝集剤との質量比(植物成分/高分子凝集剤)が、0.1/99.9~99.9/0.1である前記<1>に記載の水浄化剤である。
<3> 前記植物成分と、前記高分子凝集剤との質量比(植物成分/高分子凝集剤)が、1/9~9/1である前記<2>に記載の水浄化剤である。
<4> 前記植物成分の植物が、長朔黄麻及びモロヘイヤの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の水浄化剤である。
<5> 前記高分子凝集剤が、ポリアクリルアミドである前記<1>から<4>のいずれかに記載の水浄化剤である。
<6> 前記水浄化剤の嵩比重が、0.18~0.80g/cmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の水浄化剤である。
<7> 前記水浄化剤の嵩比重のばらつき(嵩比重の最小値に対する、嵩比重の最大値と最小値との差の割合)が、5%未満である前記<6>に記載の水浄化剤である。
<8> 純水100質量部に対して前記水浄化剤0.1質量部を溶解乃至分散して得られる溶解乃至分散液の23℃における粘度が、100~350mPa・sである前記<1>から<7>のいずれかに記載の水浄化剤である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法であって、
乾燥植物を粉砕し、数平均粒径が250μm以下の植物粉末を得る植物粉末製造工程と、
前記植物粉末と高分子凝集剤とを混合し、水分を加えて加圧混練し、押出造粒により造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を粉砕し、顆粒状の造粒物とする粉砕工程とを含むことを特徴とする水浄化剤の製造方法である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水浄化剤及び前記<9>に記載の水浄化剤の製造方法により得られた水浄化剤のいずれかを水に溶解乃至分散させ、植物成分及び高分子凝集剤の溶解乃至分散液を得、該溶解乃至分散液を排水に供することにより排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする水浄化方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、造粒物における植物成分と高分子凝集剤とが分離することを低減することができ、優れた浄化性能を示す水浄化剤及びその製造方法、並びに該水浄化剤を用いた水浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が5%以下の一例であり、トリミングした画像の彩度を0にしたものである。
図1B図1Bは、図1Aの明度補正を行ったものである。
図1C図1Cは、図1Bを白黒の2値化したものである。
図2A図2Aは、水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%超の一例であり、トリミングした画像の彩度を0にしたものである。
図2B図2Bは、図2Aの明度補正を行ったものである。
図2C図2Cは、図2Bを白黒の2値化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(水浄化剤)
本発明の水浄化剤は、植物成分と高分子凝集剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む混合物の造粒物からなり、所定の条件で処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下である。
本発明で「水の浄化」とは、工業排水、特に無機系工業排水を対象とし、その排水中のニッケル、銅、フッ素などの不要物を除去することをいう。
前記水浄化剤を前記排水に加えると、排水中の無機系不要物は該水浄化剤により凝集分離される。係る凝集物を排水中から取り除くと、排水は浄化される。
【0013】
<造粒物>
前記造粒物(以下、「粒子」と称することもある。)は、植物成分と高分子凝集剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む混合物の造粒物である。
植物粉末と高分子凝集剤と含む混合物の造粒物である水浄化剤を用いると、自動化浄化装置において、所望の性能の水浄化剤を安定して、かつ繰り返し精度よく供給することができる。
【0014】
-植物成分-
前記植物成分(以下、「植物粉末」と称することがある。)の植物としては、排水中の不要物(ニッケル、銅、フッ素など)を凝集分離することができる植物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長朔黄麻(チョウサクコウマ)、モロヘイヤ、小松菜、三つ葉、水菜、ほうれん草などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記植物の中でも、長朔黄麻及びモロヘイヤの少なくともいずれかが好ましく、長朔黄麻がより好ましい。
前記植物の部位としては、特に制限はなく、いずれの部分であっても使用することができ、例えば、葉、茎、根などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記植物成分の水浄化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
-高分子凝集剤-
前記高分子凝集剤としては、上記植物成分と同様、排水中の不要物(ニッケル、銅、フッ素など)を除去する効果を示すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリアクリルアミドの部分加水分解塩、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、CMC(カルボキシメチルセルロース)ナトリウム塩などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記高分子凝集剤の中でも、ポリアクリルアミドが好ましい。該ポリアクリルアミドとしては、例えば、市販されているFlopam AN 905、Flopam AN 926、Flopam AN 956(株式会社エス・エヌ・エフ製)などを用いることができる。
前記高分子凝集剤の水浄化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記水浄化剤における前記植物成分と、前記高分子凝集剤との質量比(植物成分/高分子凝集剤)(「水浄化剤における前記植物成分と、前記高分子凝集剤との含有量比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、浄化対象とする排水の種類などに応じて適宜選択することができるが、0.1/99.9~99.9/0.1が好ましく、1/9~10/1がより好ましく、1/9~9/1が更により好ましく、1/10~8/2が特に好ましい。
【0017】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィラー、増粘剤、着色剤、チキソ性付与剤などが挙げられる。また、混練成分の水への溶解性向上などの目的で、アルコール等の液体を少量含有させてもよい。
尚、その他の成分は、高分子凝集剤を混練する際に含有させてもよく、あるいは、植物成分と高分子凝集剤とを混練する際に含有させてもよい。
前記その他の成分の水浄化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記造粒物の形態(直径、長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、市販の定量器の供給口のサイズに広く適合させる観点から、造粒物の直径は3mm以下、長さは3mm以下が好ましい。また、供給口の通りをスムーズにし、溶解時の溶解性も考慮する場合には、造粒物の直径は1mm以下、長さは1mm以下がより好ましい。
【0019】
<植物成分と高分子凝集剤との分離度合>
前記水浄化剤における植物成分と高分子凝集剤との結着性が不充分であると、輸送などの際の振動等で、材料間で分離が発生する。比重等の差異により輸送などの際に材料間で分離が生じると、自動供給機での定量不良、溶解時の配合比率不良等の問題が発生する。その結果、十分な浄化性能が得られなくなる。
【0020】
本発明の水浄化剤は、JIS Z 0232の正弦波掃引振動試験条件(レベル2)にて処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下である。
前記振動試験は、下記の条件で実施することができる。
[条件]
・ 試験時間 : 90分間
・ 加速度 : 7m/s
・ 周波数範囲 : 3~100Hz
・ 掃引速度 : 1/2オクターブ/分
上記条件において、約300gのサンプルを円柱型の2Lポリ容器に入れ、蓋をし、縦置き状態で振動を与える。
【0021】
前記水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合は、下記のようにして実体顕微鏡による画像解析により測定することができる。
(1) 実体顕微鏡にて、対象のサンプルの撮影を行う(画像は256色RGBデータ)。
(2) 撮影した画像の2mm×3mmサイズ相当の部分をトリミングする。
(3) トリミングした画像の彩度を0にする。
(4) 彩度を0にした画像の平均明度から、下記の式で明度の補正を行う。
明度補正(%)=平均明度×(-0.11)-6.5
(5) コントラストを100%にし、白黒の2値化をする。
(6) 2値化した画像から白色部分の割合を計測し、当該画像における植物成分と高分子凝集剤との分離度合を求める。
(7) 同一サンプルから3枚の画像を撮影し、上記測定方法で3回分のデータを計測し、平均した値をそのサンプルにおける植物成分と高分子凝集剤との分離度合とする。
【0022】
前記水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合としては、10%以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水浄化性能がより優れる点で、5%以下が好ましい。
【0023】
前記水浄化剤の嵩比重としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.18~0.80g/cmが好ましい。また、自動化システムにおいて、定量にかかる時間と電力を抑えることができ、自動化浄化装置への適用を有効に図ることができる点で、前記嵩比重は、0.4g/cm以上が好ましい。また、水浄化剤の嵩比重の中央値(センター値と称することもある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.45g/cm以上が好ましい。前記嵩比重の中央値は、5サンプルを測定した際の中央値のことをいう。
【0024】
前記嵩比重は以下のように求めることができる。
嵩比重は、パウダーテスターPT-N型(ホソカワミクロン社製)を用い測定することができる。
100ccのステンレスカップに100ccの試料を静かに入れ、その時の試料の比重を測定し、嵩比重とする。
【0025】
前記水浄化剤の嵩比重のばらつき(嵩比重の最小値に対する、嵩比重の最大値と最小値との差の割合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%未満が好ましく、4.5%以下がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、自動化システムにおいて、配合割合のブレが少ない、水浄化性能にムラのない水浄化剤を、繰り返し精度よく供給することができ、自動化浄化装置への適用を有効に図ることができる。
【0026】
前記嵩比重のばらつきは以下のように求めることができる。
測定試料である水浄化剤を、一定の大きさの袋(例えば、700mm×500mmのポリ袋)に入れ、袋の口を熱封止する。その際、次の振動操作において、該水浄化剤が自由に動ける程度の空間が確保されているように袋に入れる水浄化剤の量を考慮する。次に、造粒物が崩れない程度に、袋に入れた水浄化剤を上下に振動させ、その後、該袋の上下部分を含む5点から試料を取り出し、それぞれの嵩比重を測定する。
嵩比重の最大値と最小値を記録し、その最大値と最小値をもとに以下の計算によりばらつきを求める。
嵩比重のばらつき(%)=(嵩比重の最大値と最小値の差/嵩比重の最小値)×100
【0027】
純水100質量部に対して前記水浄化剤0.1質量部を溶解乃至分散して得られる溶解乃至分散液の23℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100~350mPa・sが好ましい。また、前記粘度の中央値(センター値と称することもある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200mPa・s以上が好ましい。前記粘度の中央値は、5サンプルを測定した際の中央値のことをいう。
【0028】
前記水浄化剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の水浄化剤の製造方法により製造することが好ましい。
【0029】
本発明の水浄化剤は、輸送などで振動が生じた場合でも造粒物における植物成分と高分子凝集剤とが分離することを低減することができ、優れた水浄化性能を示す。
また、本発明の水浄化剤によれば、自動供給機にて定量な供給が可能であり、また、溶解乃至分散槽内において沈降や沈殿が抑制され、配管堆積等の不具合が生じない。
本発明の水浄化剤は、水浄化剤を用いた排水の浄化処理を、自動化浄化装置を用いて行う際、低コストで、さらに所望の性能の水浄化剤を安定して、かつ繰り返し精度よく供給することができる自動化浄化装置に、好適に使用し得る。
【0030】
(水浄化剤の製造方法)
本発明の水浄化剤の製造方法は、植物粉末製造工程と、造粒工程と、粉砕工程とを少なくとも含み、必要に応じて更に乾燥工程、分級工程などのその他の工程を含む。
【0031】
<植物粉末製造工程>
前記植物粉末製造工程は、乾燥植物を粉砕し、数平均粒径が250μm以下の植物粉末を得る工程である。
前記乾燥植物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物を天日乾燥又は乾燥機による乾燥により、水分量が5%以下となるまで乾燥させる方法などが挙げられる。
前記乾燥植物の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した水浄化剤の植物成分の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
前記乾燥植物の粉砕の方法としては、特に制限はなく、公知の粉砕機を適宜選択することができ、例えば、アトマイザー(ハンマーミル、ダルトン社製)を用いて、数平均粒径が250μm以下になるように粉砕する方法などが挙げられる。
ここで、数平均粒径は、例えば、Morphologi G3(マルバーン社製)を用いて測定することができる。
【0033】
<造粒工程>
前記造粒工程は、前記植物粉末と高分子凝集剤とを混合し、水分を加えて加圧混練し、押出造粒により造粒物を得る工程である。前記造粒工程では、必要に応じて、植物粉末及び高分子凝集剤以外のその他の成分が含まれていてもよい。
【0034】
前記高分子凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した水浄化剤の高分子凝集剤の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記高分子凝集剤の大きさとしては、造粒物の大きさ以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販の高分子凝集剤が造粒物の大きさ以下の大きさであれば、そのまま使用できる。前記高分子凝集剤が造粒物の大きさ以上の場合は、例えば、アトマイザー(ハンマーミル、ダルトン社製)等の粉砕機を用いて、所望の大きさになるよう粉砕すればよい。
【0035】
上記で得られた植物粉末と、上記高分子凝集剤とを混合し、水分を加えて加圧混練する。
前記植物粉末と、前記高分子凝集剤との混合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した水浄化剤の項目に記載したものと同様とすることができる。
【0036】
前記水の添加量(以下、「混練加水量」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分の合計質量に対し、水が15~250質量%であるのが好ましく、50~200質量%がより好ましく、100~200質量%が特に好ましい。前記固形分の合計質量とは、植物粉末と高分子凝集剤との合計質量をいうが、植物粉末と高分子凝集剤の他にその他の成分(例えば、上記した水浄化剤のその他の成分の項目に記載したもの)を含む場合には、その他の成分も含めた、固形成分をすべて足し合わせたものをいう。
前記混練加水量の目安としては、高分子凝集剤が水を多く吸収するため、高分子凝集剤の混合割合が高いほど、加える水の量は多くなり、例えば、質量比(植物粉末/高分子凝集剤)が、9/1で混合されている混合物に対しては、混合物の合計質量に対し水15質量%を加え、3/1で混合されている混合物に対しては、水20質量%を加え、1/10で混合されている混合物に対しては、水50質量%加えるなどが挙げられる。
【0037】
加圧混練後、該混練物の湿塊を小孔から円柱状に造粒機より押し出して、造粒物(「ペレット状の造粒物」と称することもある。)を得る。
加圧混練・造粒装置としては、特に制限はなく、市販の混練装置を使用することができ、例えば、加圧混練機等が挙げられる。
前記加圧混練時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~60分間が好ましく、10~60分間がより好ましい。
造粒時の回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~90rpmが好ましく、5~15rpmがより好ましく、10rpmが特に好ましい。
造粒時の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20~40Mpaが好ましく、30Mpaが特に好ましい。
【0038】
前記ペレット状の造粒物の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、直径3mm以下、長さ3~10mmが好ましい。
【0039】
<乾燥工程>
前記造粒工程の後、乾燥工程を設けてもよい。この乾燥工程では、前記ペレット状の造粒物を、流動層式乾燥機などで水分率が5~15%程度になるまで乾燥することができる。
【0040】
<粉砕工程>
前記粉砕工程は、前記造粒物を粉砕し、顆粒状の造粒物とする工程である。
前記粉砕には、公知の粉砕機を用いることができる。
前記顆粒状の造粒物の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以下が好ましい。
【0041】
<乾燥工程>
前記粉砕工程の後、乾燥工程を設けてもよい。この乾燥工程は、前記顆粒状の造粒物を、流動層式乾燥機などで水分率が5%以下になるまで乾燥することができる。
【0042】
<分級工程>
前記粉砕工程の後、分級工程を設けることが好ましい。
前記分級は、例えば、振動ふるい式分級機などの公知の装置を用いて行うことができる。
前記分級工程では、メジアン径が150~900μmの範囲になるよう粒子径が所定の範囲にある造粒物を分級することが好ましい。
【0043】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した乾燥工程、分級工程などが挙げられる。
【0044】
本発明の水浄化剤の製造方法によれば、輸送などの振動が生じる場合でも造粒物における植物成分と高分子凝集剤との分離が抑制された水浄化剤を安定的に製造することができる。
また、本発明の水浄化剤の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、水浄化剤の嵩比重の値、分散乃至溶解液の粘度を制御することができる水浄化剤を製造することができる。
また、本発明の水浄化剤の製造方法によれば、植物に対するシェアが軽減された為に分級工程で細かくなり過ぎた水浄化剤を再度混合時に再利用することが可能である。
また、本発明の水浄化剤の製造方法によれば、歩留りを約85%以上に向上させることができ、量産性、コストダウン、品質安定性も向上させることができる。
【0045】
(水浄化方法)
本発明の水浄化方法(排水処理方法と称することもある。)は、上述した本発明の水浄化剤及び本発明の製造方法により得られた水浄化剤のいずれかを水に溶解乃至分散させ、植物成分及び高分子凝集剤の溶解乃至分散液を得、該溶解乃至分散液を排水に供することにより排水中の無機系不要物を除去するものである。
【0046】
前記無機系不要物としては、例えば、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物が挙げられる。
【0047】
前記溶解乃至分散液に用いる水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水(蒸留水)、電気伝導度が30μS/cm以上の水などが挙げられる。
【0048】
前記水浄化方法の一例を以下に説明する。
前記水浄化剤は、定量器で定量され、その後溶解槽に供給される。
そこで、所定量の水に溶解乃至分散されて、得られた水浄化剤の溶解乃至分散液は、反応槽に送られ、排水に供される。反応槽において、排水中の無機系不要物(例えば、ニッケル、銅、フッ素など)は、植物粉末と高分子凝集剤とにより凝集分離される。該凝集物を取り除くことにより、排水は浄化される。
【実施例0049】
以下、試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0050】
(試験例1:製造方法の違いによる水浄化剤の比較)
<実施例1>
中国産の長朔黄麻を天日乾燥により水分含有量が5%以下になるまで乾燥させた。
次に、その乾燥した植物を粉砕機で、数平均粒径が250μm以下になるまで粉砕し植物粉末を得た。
前記植物粉末と、高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの粉末(Flopam AN 956、株式会社エス・エヌ・エフ製))とを、両者の混合割合が質量比(植物粉末/高分子凝集剤)として1/1となるように混合し、該混合物の合計質量に対し水を50質量%加えて混練した。
加圧混練機を用いて該混練物を混練した。
この混練物を押出し機にて、直径3mmの円柱状に連続押出してペレット状に造粒した。
この造粒物を流動層式乾燥機で水分が約5%になるまで乾燥した後、粉砕機で粉砕し、振動ふるい式分級機で分級(150~900μm)をして造粒物(実施例1の水浄化剤)を得た。
【0051】
-評価-
下記の各評価を行った。
【0052】
〔分級前の造粒物の外観〕
約100gの分級前の造粒物の外観を下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
-評価基準-
○ : ほとんどの粒が付着していない(バラバラになっている)。
△ : 一部の粒が極端に大きい、又は一部の粒同士が付着している。
× : 半分以上の粒が極端に大きい、又は粒同士が付着している。
【0053】
〔分級歩留り〕
前記造粒物の製造における分級歩留り(%)を以下の式により算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
分級歩留り(%)=(150~900μmの分級量(重量)/分級機投入時の造粒物量(重量))×100
-評価基準-
○ : 分級歩留りが80%以上
△ : 分級歩留りが70%以上80%未満
× : 分級歩留りが70%未満
【0054】
〔耐沈降性、溶解乃至分散液の粘度〕
-実験用に使用する排水-
実験用に使用する排水として、硫酸ニッケル六水和物を純水に溶解し、50mg/Lのニッケルイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に苛性ソーダをpHが10になるよう供給し、攪拌してニッケルを不溶化した。該排水の上澄み液のニッケルイオン濃度は2mg/Lであった。
【0055】
-溶解乃至分散液-
前記造粒物に対し、電気伝導度が111(μS/cm)の水(栃木県鹿沼市水道水)を固形分0.1質量%になるように加えて攪拌し、溶解乃至分散液を得た。
前記溶解乃至分散液の粘度をB型粘度計により測定した。なお、前記粘度の測定は、東機産業製TVC-7型粘度計(B型粘度計)を使用し、室温23℃下、1号ローターにて測定した。溶解乃至分散液の粘度は、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
--評価基準--
◎ : 粘度の中央値が200mPa・s以上
○ : 粘度の中央値が100mPa・s以上200mPa・s未満
× : 粘度の中央値が100mPa・s未満
【0056】
上記排水に対して、固形分が7mg/Lになるように前記造粒物を含む溶解乃至分散液を添加し、攪拌した。ここで、「固形分」の測定方法は、排水中のスラリー濃度を水分計にて計測し、逆算することにより、求めることができる。
溶解乃至分散液を添加した排水を沈殿槽に移送し、その後静置して1時間毎に目視で状態を確認した。
明らかに上澄み液と沈殿物の2層に分かれたと確認した時点を沈降時間として測定した。耐沈降性は、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
--評価基準--
◎ : 沈降時間が、120時間以上である。
○ : 沈降時間が、72時間以上120時間未満である。
× : 沈降時間が、72時間未満である。
【0057】
[嵩比重、嵩比重のばらつき]
前記造粒物について、下記の測定を行い、嵩比重値(最大値、最小値)、嵩比重のばらつきを求めた。
-嵩比重-
嵩比重は、パウダーテスターPT-N型(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。
100ccのステンレスカップに100ccの試料を静かに入れ、その時の試料の比重を測定し、嵩比重とした。嵩比重は、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
--評価基準--
◎ : 嵩比重の中央値が0.45g/cm以上
○ : 嵩比重の中央値が0.35g/cm以上0.45g/cm未満
× : 嵩比重の中央値が0.35g/cm未満
【0058】
-嵩比重のばらつき-
嵩比重のばらつきは、測定試料である造粒物を、一定の大きさの袋(700mm×500mmのポリ袋)に入れ、袋の口を熱封止し、次にこの袋に入れた造粒物を上下に振動させた後、該袋の上下部分を含む5点から試料を取り出し、それぞれの嵩比重を測定した。
嵩比重の最大値と最小値を記録し、その最大値と最小値をもとに以下の式により嵩比重のばらつきを求めた。嵩比重のばらつきは、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。なお、嵩比重のばらつきは、水浄化性能にムラのない水浄化剤を、繰り返し精度よく供給することができるという観点から評価し、自動化浄化装置への適用の有効性を評価した。
嵩比重のばらつき(%)=(嵩比重の最大値と最小値の差/嵩比重の最小値)×100
--評価基準--
◎ : 嵩比重のばらつきが5%未満
○ : 嵩比重のばらつきが5%以上10%未満
× : 嵩比重のばらつきが10%以上
【0059】
長朔黄麻の粉末の嵩比重は0.15g/cm、高分子凝集剤の嵩比重は、0.75g/cmである。これらの混合物である実施例1の造粒物の嵩比重は、下記の表1で示されるように、0.18~0.80g/cm程度であった。
本発明の水浄化剤は、植物成分と高分子凝集剤を含む混合物の造粒物としたことで、嵩比重の値を任意に制御することが可能となった。
【0060】
〔材料歩留り〕
前記造粒物の製造における材料歩留り(%)を以下の式により算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
材料歩留り(%)=(分級後の造粒物重量/製造に用いた高分子凝集剤と植物粉末の合計重量)×100
-評価基準-
◎ : 材料歩留りの中央値が80%以上
○ : 材料歩留りの中央値が75%以上80%未満
△ : 材料歩留りの中央値が70%以上75%未満
× : 材料歩留りの中央値が70%未満
【0061】
〔耐分離性〕
前記造粒物について、植物成分と高分子凝集剤との結着性(耐分離性)を下記のようにして評価した。
【0062】
-輸送振動試験-
前記造粒物について、下記の輸送振動試験を行った。
具体的には、JIS Z 0232の正弦波掃引振動試験条件(レベル2)として下記の条件を使用して実施した。
[条件]
・ 試験時間 : 90分間
・ 加速度 : 7m/s
・ 周波数範囲 : 3~100Hz
・ 掃引速度 : 1/2オクターブ/分
上記条件において、約300gのサンプルを円柱型の2Lポリ容器に入れ、蓋をし、縦置き状態で振動を与えた。
【0063】
-画像解析-
植物成分と高分子凝集剤が分離するということは、分離後、高分子凝集剤単体、植物単体として存在することになる。そのため、高分子凝集剤単体の場合、その白色度を利用し、画像解析による白色部分の面積を求めることにより分離度合を算出できる。
そこで、上記振動試験を行った後の水浄化剤の水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合について、下記のようにして、実体顕微鏡による画像解析により測定を行った。
(1) 実体顕微鏡にて、対象のサンプルの撮影を行った(画像は256色RGBデータ)。
(2) 撮影した画像の2mm×3mmサイズ相当の部分をトリミングした。
(3) トリミングした画像の彩度を0にした。
(4) 彩度を0にした画像の平均明度から、下記の式で明度の補正を行った。
明度補正(%)=平均明度×(-0.11)-6.5
(5) コントラストを100%にし、白黒の2値化をした。
(6) 2値化した画像から白色部分の割合を計測し、当該画像における植物成分と高分子凝集剤との分離度合を求めた。
(7) 同一サンプルから3枚の画像を撮影し、上記測定方法で3回分のデータを計測し、平均した値をそのサンプルにおける植物成分と高分子凝集剤との分離度合とした。
【0064】
上記画像解析により得られた植物成分と高分子凝集剤との分離度合を下記の基準により評価した。結果を表1に示す。
-水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合(耐分離性)の評価基準-
◎ : 水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が、5%以下
○ : 水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が、5%超10%以下
× : 水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が、10%超
なお、水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が5%以下の一例として、分離度合が3.2%だったものを図1A~1Cに示す。図1Aはトリミングした画像の彩度を0にしたものであり、図1B図1Aの明度補正を行ったものであり、図1C図1Bを白黒の2値化したものである。また、水浄化剤の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%超の一例として、分離度合が17.9%だったものを図2A~2Cに示す。図2Aはトリミングした画像の彩度を0にしたものであり、図2B図2Aの明度補正を行ったものであり、図2C図2Bを白黒の2値化したものである。
【0065】
〔量産性〕
前記実施例1の量産性を下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
-評価基準-
◎ : 水浄化剤の生産量が、20kg/時間以上である。
○ : 水浄化剤の生産量が、10kg/時間以上20kg/時間未満である。
△ : 水浄化剤の生産量が、10kg/時間未満である。
【0066】
<比較例1>
実施例1と同様にして、長朔黄麻の植物粉末を得た。
前記植物粉末と、高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの粉末(Flopam AN 956、株式会社エス・エヌ・エフ製))とを、両者の混合割合が質量比(植物粉末/高分子凝集剤)として1/1となるように混合し、該混合物の合計質量に対し水を60質量%加えて混練し撹拌造粒方式により造粒をした以外は、実施例1と同様にして造粒物(比較例1の水浄化剤)を得た。
前記造粒物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0067】
<比較例2>
実施例1と同様にして、長朔黄麻の植物粉末を得た。
前記植物粉末と、高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの粉末(Flopam AN 956、株式会社エス・エヌ・エフ製))とを、両者の混合割合が質量比(植物粉末/高分子凝集剤)として1/1となるように混合し、該混合物の合計質量に対し水を70質量%加えて混練しシート化造粒方式により造粒をした以外は、実施例1と同様にして造粒物(比較例2の水浄化剤)を得た。
前記造粒物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示したように、実施例1では、各特性の制御幅が広く良好であった。一方、比較例1では耐分離性、嵩比重の特性が悪く満足のいく結果が得られなかった。また、シート化造粒方式の比較例2も特性が良好であったが、歩留りで満足のいく結果が得られなかった。
【0070】
(試験例2)
<実施例2~12、比較例3~12の水浄化剤の製造>
実施例1と同様にして、長朔黄麻の植物粉末を得た。
前記植物粉末と、高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの粉末(Flopam AN 956、株式会社エス・エヌ・エフ製))とを、両者の混合割合が質量比(植物粉末/高分子凝集剤)として下記の表2-1~3-2に記載の質量比となるように混合し、該混合物の合計質量に対し水を下記の表2-1~3-2に記載の量で加えて混練した。
該混練物を、加圧混練機を用いて、下記の表2-1~3-2に記載の混練時間、造粒時回転数、及び造粒時圧力で混練した。
この混練物を押出し機にて、直径3mmの円柱状に連続押出してペレット状に造粒した。
この造粒物を流動層式乾燥機で水分が約5%になるまで乾燥した後、粉砕機で粉砕し、振動ふるい式分級機で分級(150~900μm)をして造粒物(実施例2~12、比較例3~12の水浄化剤)を得た。
【0071】
<評価>
[植物成分と高分子凝集剤との分離度合(耐分離性)]
実施例2~12、比較例3~12で得られた造粒物の耐分離性について、試験例1と同様にして評価した。結果を下記の表2-1~3-2に示す。
【0072】
[水浄化性能(粘度、沈降時間の測定を含む)]
-実験用に使用する排水-
実験用に使用する排水として、硫酸ニッケル六水和物を純水に溶解し、50mg/Lのニッケルイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に苛性ソーダをpHが10になるよう供給し、攪拌してニッケルを不溶化した。該排水の上澄み液のニッケルイオン濃度は2mg/Lであった。
【0073】
-溶解乃至分散液-
実施例2~12、比較例3~12で得られた造粒物に対し、下記の表2-1~3-2に記載の電気伝導度の水(栃木県鹿沼市水道水)を固形分0.1質量%になるように加えて攪拌し、溶解乃至分散液を得た。
前記溶解乃至分散液の粘度をB型粘度計により測定した。なお、前記粘度の測定は、東機産業製TVC-7型粘度計(B型粘度計)を使用し、室温23℃下、1号ローターにて測定した。結果を下記の表2-1~3-2に示す。
【0074】
-評価-
上記排水に対して、固形分が7mg/Lになるように水浄化剤を含む溶解乃至分散液を添加し、攪拌した。ここで、「固形分」の測定方法は、排水中のスラリー濃度を水分計にて計測し、逆算することにより、求めることができる。
溶解乃至分散液を添加した排水を沈殿槽に移送し、その後静置して1時間毎に目視で状態を確認した。
明らかに上澄み液と沈殿物の2層に分かれたと確認した時点を沈降時間として測定した。結果を下記の表2-1~3-2に示す。
また、上澄み液を採取し、DR3900吸光光度計(HACH社製)により、ニッケルイオン濃度を測定し、下記の基準により水浄化性能を評価した。結果を下記の表2-1~3-2に示す。
[水浄化性能の評価基準]
◎ : ニッケルイオン濃度が、0.3mg/L以下
○ : ニッケルイオン濃度が、0.3mg/L超0.8mg/L以下
△ : ニッケルイオン濃度が、0.8mg/L超1.0mg/L以下
× : ニッケルイオン濃度が、1.0mg/L超
【0075】
【表2-1】
【0076】
【表2-2】
【0077】
【表3-1】
【0078】
【表3-2】
【0079】
表2-1~3-2に示したように、所定の条件で処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%以下である実施例2~12は、植物成分と高分子凝集剤との一体化による相乗効果により優れた水浄化性能を示し全て良好であった。植物成分と高分子凝集剤との質量比を変えた実施例2~4は、いずれも各特性が良好であった。また、混練加水量が50%の実施例5と混練水量が200%の実施例6も特性が良好であった。また、混練時間、造粒時回転数、及び造粒時圧力のいずれかを変えた実施例7~12も特性が良好であった。
一方、所定の条件で処理した後の植物成分と高分子凝集剤との分離度合が10%よりも大きい比較例3~12は、植物成分と高分子凝集剤との相乗効果が得られず、水浄化性能は全て悪かった。また、高分子凝集剤成分の割合が多い比較例3、植物成分の割合が極端に多い比較例4では粘度の特性が悪く、満足のいく結果が得られなかった。
【0080】
以上の結果から、本発明によれば、水浄化剤における植物成分と高分子凝集剤の分離が抑制され、優れた水浄化性能を示すことが確認された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C