(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121353
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20230824BHJP
B66B 1/18 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B66B11/02 Z
B66B1/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024643
(22)【出願日】2022-02-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F306
3F502
【Fターム(参考)】
3F306AA11
3F306CB06
3F306CB60
3F502HA02
3F502JA92
3F502JB24
(57)【要約】
【課題】マルチカー方式のエレベータにおいて、かご同士、又は、かごと結合して昇降路を移動する昇降駆動装置同士の衝突を防止しつつ、非常停止の発動を最小限に抑えたエレベータを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、軌道と、軌道に沿ってそれぞれ昇降する複数の昇降駆動装置と、各昇降駆動装置に結合するかごと、衝突防止手段と、を備え、衝突防止手段は、昇降駆動装置のブレーキ用スイッチと、昇降駆動装置の非常停止スイッチと、互いに接近する昇降駆動装置同士の距離やかご同士の距離に応じて各スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、スイッチ操作部は、昇降駆動装置同士の距離やかご同士の距離がブレーキ距離になったときにブレーキ用スイッチを操作してブレーキをオンにし、昇降駆動装置同士の距離やかご同士の距離が非常停止距離になったときに非常停止スイッチを操作する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる軌道と、
前記軌道に沿ってそれぞれ昇降する複数の昇降駆動装置と、
各昇降駆動装置に結合する少なくとも一つのかごと、
前記昇降駆動装置及び前記かごの少なくとも一方に設けられ、前記軌道に沿って互いに接近する昇降駆動装置同士及びかご同士の衝突を防ぐ衝突防止手段と、を備え、
前記衝突防止手段は、
少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置のブレーキをオンオフするブレーキ用スイッチと、
少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置を非常停止させる非常停止スイッチと、
前記互いに接近する昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方に応じて、前記ブレーキ用スイッチ又は前記非常停止スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、
前記スイッチ操作部は、前記昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方が前記ブレーキをオンとする距離であるブレーキ距離になったときに前記ブレーキ用スイッチを操作して前記ブレーキをオンにし、前記昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方が前記ブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに前記非常停止スイッチを操作する、エレベータ。
【請求項2】
昇降路を昇降する複数のかごと
前記かごに設けられ、互いに接近するかご同士の衝突を防ぐ衝突防止手段と、を備え、
前記衝突防止手段は、
少なくとも前記互いに接近するかごのブレーキをオンオフするブレーキ用スイッチと、
少なくとも前記互いに接近するかごを非常停止させる非常停止スイッチと、
前記互いに接近するかご同士の距離に応じて、前記ブレーキ用スイッチ又は前記非常停止スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、
前記スイッチ操作部は、前記かご同士の距離が前記ブレーキをオンとする距離であるブレーキ距離になったときに前記ブレーキ用スイッチを操作して前記ブレーキをオンにし、前記かご同士の距離が前記ブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに前記非常停止スイッチを操作する、エレベータ。
【請求項3】
前記非常停止距離を、前記かごの昇降速度に応じて変更する変更手段を備える、請求項1又は請求項2に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のかごを備え、かご同士が異常に接近したときに非常停止が可能なエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降路内に複数のかごを有するマルチカー方式のエレベータが知られている(特許文献1)。このエレベータは、かご同士の衝突を防ぐための安全装置を備える。
図6に示すように、エレベータは、上方に位置するかご111、下方に位置するかご112、レール113、かご111、112の下方への移動を停止させる非常止め部材114、及び、かご111、112の上方への移動を停止させる非常止め部材115を備える。この非常止め部材114,115は、かご111,112を停止させるブレーキとして元々かご111,112に設けられている。
【0003】
また、エレベータは、
図7に示すように、非常止め作動時にレール113を挟み込むレール当たり金116、レール当たり金116を上下に動かすレバー117、後述の非常止め作動機構に連結されたレバー押し棒119、及び、かご枠とレバー押し棒119とレバー117とを連結するレバー120等を備える。なお、非常止め部材114,115とレバー117,120とが非常止め作動機構を構成している。
【0004】
このエレベータの安全装置の動作を説明する。
図6に示す上方のかご111と下方のかご112とが通常の距離にある状態から、
図8に示すように上方のかご111と下方のかご112が接近すると、一方のかごに設けられたレバー押し棒119が、他方のかごによって押され、
図7に示すレール当たり金116を上下に動かすレバー117を押し上げて、非常止め部材114,115が作動する。これにより、
図9に示すように、非常止め部材114によりかご111の下方への移動、及び、非常止め部材115によりかご112の上方への移動を非常停止させて、かご111、112同士の衝突が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような非常止め作動機構は、確実に衝突を防止できるように、くさび状の部材をレール113とかご112の一部(非常止め部材114、115)との間に差し込んで急停止する構成であるため、作動後に解除する際に作業員等による解除作業やレール113の点検(曲がり等が無いかの点検等)が必要であり、非常停止後の復旧作業に手間がかかる。そのため、非常止め作動機構を備えたエレベータでは、非常停止から再運転の開始までに時間がかかるおそれがあった。
【0007】
本発明は、昇降路内に複数のかごを有するマルチカー方式のエレベータにおいて、昇降路を移動するかご同士、又は、かごと結合して昇降路を移動する昇降駆動装置同士の衝突を防止しつつ、非常停止の発動を最小限に抑えたエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベータは、
所定方向に延びる軌道と、
前記軌道に沿ってそれぞれ昇降する複数の昇降駆動装置と、
各昇降駆動装置に結合する少なくとも一つのかごと、
前記昇降駆動装置及び前記かごの少なくとも一方に設けられ、前記軌道に沿って互いに接近する昇降駆動装置同士及びかご同士の衝突を防ぐ衝突防止手段と、を備え、
前記衝突防止手段は、
少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置のブレーキをオンオフするブレーキ用スイッチと、
少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置を非常停止させる非常停止スイッチと、
前記互いに接近する昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方に応じて、前記ブレーキ用スイッチ又は前記非常停止スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、
前記スイッチ操作部は、前記昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方が前記ブレーキをオンとする距離であるブレーキ距離になったときに前記ブレーキ用スイッチを操作して前記ブレーキをオンにし、前記昇降駆動装置同士の距離及びかご同士の距離の少なくとも一方が前記ブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに前記非常停止スイッチを操作する。
【0009】
かかる構成によれば、軌道に沿って互いに接近する昇降駆動装置同士の距離又はかご同士の距離がブレーキ距離になったときにスイッチ操作部の操作によって昇降駆動装置のブレーキをオンにして昇降駆動装置同士及びかご同士の衝突を回避し、このブレーキ操作だけでは衝突を回避できない場合(即ち、昇降駆動装置同士又はかご同士の距離が非常停止距離になっても停止できない場合)にのみ、非常停止スイッチを操作して昇降駆動装置を非常停止させることで、昇降駆動装置同士又はかご同士の異常な接近時(正常な運行では起こりえない距離まで接近したとき)においても非常停止の発動を最小限に抑えることができる。
【0010】
本発明の別のエレベータは、
昇降路を昇降する複数のかごと
前記かごに設けられ、互いに接近するかご同士の衝突を防ぐ衝突防止手段と、を備え、
前記衝突防止手段は、
少なくとも前記互いに接近するかごのブレーキをオンオフするブレーキ用スイッチと、
少なくとも前記互いに接近するかごを非常停止させる非常停止スイッチと、
前記互いに接近するかご同士の距離に応じて、前記ブレーキ用スイッチ又は前記非常停止スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、
前記スイッチ操作部は、前記かご同士の距離が前記ブレーキをオンとする距離であるブレーキ距離になったときに前記ブレーキ用スイッチを操作して前記ブレーキをオンにし、前記かご同士の距離が前記ブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに前記非常停止スイッチを操作する。
【0011】
かかる構成によれば、軌道に沿って互いに接近するかご同士の距離がブレーキ距離になったときにスイッチ操作部の操作によってかごのブレーキをオンにしてかご同士の衝突を回避し、このブレーキ操作だけでは衝突を回避できない場合(即ち、かご同士の距離が非常停止距離になっても停止できない場合)にのみ、非常停止スイッチを操作してかごを非常停止させることで、かご同士の異常な接近時(正常な運行では起こりえない距離まで接近したとき)においても非常停止の発動を最小限に抑えることができる。
【0012】
前記エレベータでは、
前記非常停止距離を、前記かごの昇降速度に応じて変更する変更手段を備えてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、かごの昇降速度に応じて、非常停止距離等を短くすることで、非常停止をぎりぎりまで遅らせることができる、即ち、非常停止の発動をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、昇降路内に複数のかごを有するマルチカー方式のエレベータにおいて、昇降路を移動するかご同士、又は、かごと結合して昇降路を移動する昇降駆動装置同士の衝突を防止しつつ、非常停止の発動を最小限に抑えたエレベータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータのかごが結合した昇降駆動装置の斜視での模式図である。
【
図2】
図2は、前記エレベータ全体の構成を示す、正面視での模式図である。
【
図3】
図3は、前記エレベータのブロック図である。
【
図4】
図4は、前記エレベータの衝突防止手段による各スイッチの操作を示す模式図であり、
図4(a)は各スイッチがオフである状態を示し、
図4(b)はブレーキ用スイッチがオンとなった状態を示し、
図4(c)は非常停止スイッチがオンとなった状態を示す。
【
図5】
図5は、変形例に係るエレベータのかごが結合した昇降駆動装置の斜視での模式図である。
【
図6】
図6は、従来のエレベータの安全装置を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、
図6のVIIで囲んだ領域の拡大模式図である。
【
図8】
図8は、前記安全装置の非常止め部材の作動開始状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、前記非常止め部材の作動によりかごが停止した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図4を参照しつつ説明する。
【0017】
エレベータ1は、
図1に示すように、所定方向(上下方向)に延びる軌道2と、軌道2に沿ってそれぞれ昇降する複数の昇降駆動装置3と、各昇降駆動装置3に結合する少なくとも一つのかご4と、昇降駆動装置3に設けられ、軌道2に沿って互いに接近する昇降駆動装置3同士及びかご4同士の衝突を防ぐ衝突防止手段5と、を備える。本実施形態では、エレベータ1は、
図2にも示すように、二つの軌道2、三つの昇降駆動装置3、及び、二つのかご4を備える。また、エレベータ1は、
図3に示すように、非常停止距離を、かご4の昇降速度に応じて変更する変更手段6を備える。
【0018】
例えば、エレベータ1は、
図2に示すように、建物内を複数の階(フロア)に跨って上下方向に延びる複数の昇降路7(本実施形態では、二つの昇降路7)を備えるエレベータである。本実施形態のエレベータ1は、かご4とかご4を昇降させる昇降駆動装置3とが分離・結合するエレベータ(昇降分離型エレベータ)である。このエレベータ1では、かご4自体は昇降機能を有していない。また、昇降駆動装置3は、昇降路7内を昇降して建物の地上各階に設けられる乗場8に停止可能である。さらに、昇降駆動装置3は、昇降路7内を昇降して建物の地下に設けられる退避場9に停止可能である。
【0019】
このエレベータ1では、昇降路7が図示左右に並列して2本設けられており、上下方向には地上5階分、地下1階分延びている。さらに、並列する昇降路7間で、かご4が水平方向に移動可能なように両昇降路7が連通している。本実施形態のエレベータ1では、全ての階床において両昇降路7が連通しているが、両昇降路7の少なくとも一部(かご4が通過できる程度の領域)において両昇降路7が連通していればよい。例えば、両昇降路7の連通した部分は、両昇降路7における少なくとも一つの階床、両昇降路7における階床と階床との中間部分、両昇降路7における退避場9であってもよい。これら連通した部分には、開閉可能なゲートを設けておき、ゲートを閉鎖することでかご4の移動を制限することもできる。
【0020】
軌道2は、例えば、昇降路7の内部に設けられた一対のガイドレールGである(
図1参照)。このガイドレールGは、一つの昇降駆動装置3に対して、昇降駆動装置3を水平方向(図示左右方向)から挟むように一対設けられている。なお、ガイドレールGは、一つの昇降駆動装置3に対して、一つ乃至三つ以上設けられていてもよい。
【0021】
本実施形態のエレベータ1では、複数の軌道2のうち少なくとも一つの軌道2に、複数の昇降駆動装置3が配置されている。具体的に、二つの軌道2のうち一方の軌道2に複数(二つ)の昇降駆動装置3が配置され、他方の軌道2に一つの昇降駆動装置3が配置されている。
【0022】
本実施形態の昇降駆動装置3は、かご4と結合可能であり軌道2に沿って昇降する昇降部30、昇降部30と連動して昇降路7内を昇降するカウンターウェイト、昇降部30とカウンターウェイトとを連結するロープ、及び、ロープを駆動するモータ等を含む。ここで、従来のトラクション式エレベータにおいては、ロープに連結した乗りかごそのものを昇降させていた。これに対して、本実施形態のエレベータ1では、従来の乗りかご部分を昇降部30に置き換えている。なお、昇降部30は、自走する構成であってもよい。
【0023】
昇降駆動装置3は、昇降部30の昇降を停止させるブレーキ31を含む(
図3参照)。このブレーキ31は、ブレーキ31により昇降部30の昇降を停止させた後、再度、昇降部30を昇降させるときには、制御によりブレーキ31の解除が可能である。また、ブレーキ31は、例えば、昇降駆動装置3のモータの動力を遮断するモータ動力遮断310、及び、モータに設けられたディスクブレーキ等の機械式ブレーキ311である。なお、ブレーキ31は、モータ動力遮断310及び機械式ブレーキ311の少なくとも一方であってもよい。
【0024】
また、昇降駆動装置3は、昇降駆動装置3を非常停止させる非常止め部材32を含む。非常止め部材32は、例えば、ガイドレールGと昇降部30におけるガイドレールGにより挟まれている部位との間に打ち込まれるくさび状の部材である。この非常止め部材32は、非常止め部材32により昇降部30を非常停止させた後、再度、昇降部30を昇降させるときには、作業員等による非常止め部材32の除去作業やガイドレールGの点検(曲がりや傷が無いかの点検等)が必要である。
【0025】
このエレベータ1では、昇降部30は、水平方向(図示左右方向)に延びる横軌道33を備える構成としている(
図1参照)。そのため、かご4は、このかご4が結合している昇降部30に、別の昇降駆動装置3の昇降部30が隣り合ったとき、結合している昇降部30の横軌道33に沿い水平方向に移動することで、隣り合った別の昇降部30の横軌道33に移行できる。なお、昇降部30は、昇降部30からかご4が落下しないで移動可能な構成であればよく、例えば、横軌道33の代わりに、水平方向成分を含む斜め方向に延びる移動路を有していてもよい。
【0026】
かご4は、利用者が搭乗する乗りかごである。なお、かご4は、利用者以外に荷物を載せることができるかごであってもよい。なお、かご4が結合している昇降部30は、かごよりも上下方向における外側に突出している。
【0027】
また、かご4は、例えば、利用者が搭乗する乗りかご本体401、及び、乗りかご本体401の背面に、水平方向に延びるように突出しており、昇降部30の横軌道33を走行するための走行部43を備える。なお、走行部43は、乗りかご本体401の側面に設けられていてもよい。
【0028】
本実施形態のかご4は、該かご4が横軌道33を走行するための動力を、例えば、走行部43に備えており自走する。また、かご4は、例えば、横軌道33における走行を制御するマイコンを有する。なお、かご4は、該かご4が横軌道33を走行するための動力を備えない構成であってもよく、この場合、昇降部30に備えられた引き込み機構により横軌道33を走行してもよい。
【0029】
乗りかご本体401は、開閉により内外を連通させるかごドア400を備える。本実施形態のかごドア400は、センターオープンの両開きとされている。なお、乗場8に設けられる乗場ドアも同様の形態とされている。なお、かごドア400及び乗場ドアは、片開きであってもよい。
【0030】
以上のエレベータ1では、制御部が、各昇降駆動装置3及び各かご4に対して乗場呼びの割当等の群管理制御を行う。この群管理では、制御部は、
図2に示す所定の階の乗り場7において乗場呼びが入ったときに(例えば、乗り場8において呼びボタンが押下されたときに)、利用者等の輸送効率が高くなるように複数の昇降駆動装置3から前記乗場呼びに対応する昇降駆動装置3を選択し、この選択された昇降駆動装置3の昇降部30を該乗場呼びの入った乗り場8に向かわせる。また、この群管理では、制御部は、かご呼びが入ったときに(例えば、かご4内の利用者が階床釦を押下したときに)、利用者等の輸送効率が高くなるように前記かご呼びに対応する経路を選択し、この経路に基づいて昇降部30をかご4の行先の乗場8に向かわせる。
【0031】
衝突防止手段5は、昇降部30やかご4の昇降の制御ミス(例えば、昇降駆動装置3の経路選択に関する制御ミス)や、昇降部30やかご4の昇降速度の制御不良(本実施形態では、昇降駆動装置3のロープを駆動するモータの減速に関する制御不良)が起きたとき、昇降部30同士やかご4同士が衝突することを防止する。具体的に、昇降部30同士やかご4同士の衝突は、同じ軌道2に沿って移動する隣り合う昇降部30が同じ方向に昇降するとき、進行方向における前方に位置する昇降部30の加速不良や、進行方向における後側に位置する昇降部30の減速不良により生じるおそれがある。また、衝突防止手段5は、少なくとも互いに接近する昇降駆動装置3のブレーキ31をオンオフするブレーキ用スイッチ50と、少なくとも互いに接近する昇降駆動装置3を非常停止させる非常停止スイッチ51と、互いに接近する昇降駆動装置3同士の距離及びかご4同士の距離の少なくとも一方に応じて、ブレーキ用スイッチ50又は非常停止スイッチ51を操作するスイッチ操作部52と、を備える(
図3参照)。ブレーキ用スイッチ50及び非常停止スイッチ51は、それぞれ、リミットスイッチである。
【0032】
ブレーキ用スイッチ50は、昇降駆動装置3のブレーキ31に接続されている。また、ブレーキ用スイッチ50は、オンされると、モータ動力遮断310がオンとなる(昇降部30への動力の供給が停止される)とともに、機械式ブレーキ311がオンとなる。
【0033】
非常停止スイッチ51は、非常止め部材32に接続されている。また、非常停止スイッチ51は、オンされると、非常止め部材32が作動する(本実施形態では、くさび状の部材がガイドレールGと昇降部30におけるガイドレールGにより挟まれている部位との間に打ち込まれる)。
【0034】
ブレーキ用スイッチ50及び非常停止スイッチ51は、例えば、昇降部30内に配置されている。また、ブレーキ用スイッチ50及び非常停止スイッチ51は、昇降部30の昇降方向(上下方向)に並んで配置されている。非常停止スイッチ51は、ブレーキ用スイッチ50よりも昇降部30内において、隣り合う昇降部30が互いに離隔する側に配置されている。
【0035】
スイッチ操作部52は、ブレーキ用スイッチ50を介してブレーキ31に接続されている。また、スイッチ操作部52は、昇降駆動装置3(昇降部30)同士の距離及びかご4同士の距離の少なくとも一方が昇降駆動装置3のブレーキ31をオンとする距離であるブレーキ距離になったときにブレーキ用スイッチ50を操作してブレーキ31をオンにする。
【0036】
ここで、ブレーキ距離とは、昇降部30同士又はかご4同士の衝突を防ぐためにブレーキ31を強制的にオンさせるために設定された距離であり、本実施形態のエレベータ1では、例えば800mm~2500mmである。
【0037】
さらに、スイッチ操作部52は、非常停止スイッチ51を介して非常止め部材32に接続されている。昇降駆動装置3(昇降部30)同士の距離及びかご4同士の距離の少なくとも一方がブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに非常停止スイッチ51を操作する。
【0038】
また、スイッチ操作部52は、昇降駆動装置3の昇降部30から突出する長さである突出長さが変化する部材である。スイッチ操作部52の突出長さは、スイッチ操作部52に力がかかったときに、この力の大きさに応じて徐々に変化する。本実施形態では、スイッチ操作部52は、昇降部30の上面及び下面の両方に配置されている。具体的に、スイッチ操作部52は、昇降部30の上面における外周部を除く部位、及び、昇降部30の下面における外周部を除く部位にそれぞれ配置されている。昇降部30の上面に配置されたスイッチ操作部52は、昇降部30の下面に配置されたスイッチ操作部52に対して、昇降方向においてずれた位置に配置されている。
【0039】
本実施形態では、スイッチ操作部52は、スイッチ操作部52が取り付けられた昇降部30と別の昇降部30に対して当接可能な当接部520を有する(
図1参照)。また、スイッチ操作部52は、当接部520を支持し且つ昇降部30に取り付けられる支持部521を有する。さらに、支持部521は、昇降部30に固定される略筒状の固定部523と、先端に当接部520が固定され且つ固定部523内に配置された軸部524と、を有する。
【0040】
当接部520は、例えば、当接面522が円形状の部材である。この当接面522の面積は、軸部524の断面積よりも大きいため、安定した状態で接近した昇降部30に当接する。
【0041】
軸部524は、固定部523の内側から昇降部30内に延びている。また、軸部524は、当接部520に別の部材が当接し、この別の部材から押し込まれることで、スイッチ操作部52が配置された昇降部30内に押し込まれて収納される。これにより、軸部524の突出長さが短くなる。
【0042】
本実施形態では、上下方向に並ぶ昇降駆動装置3の両方に、スイッチ操作部52が設けられている。上側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Aは、下側に位置する昇降部30に当接する。下側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Bは、上側に位置する昇降部30に当接する。
【0043】
なお、上側のスイッチ操作部52A及び下側のスイッチ操作部52Bが、互いに上下方向に並んで配置される場合、上側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Aは、下側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Bに当接する。また、下側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Bは、上側に位置する昇降部30に設けられたスイッチ操作部52Aに当接する。この場合、一方の昇降駆動装置3のみにスイッチ操作部52が設けられている場合と異なり、接近する昇降駆動装置3間の距離を、各昇降部30に設けたスイッチ操作部52A、52Bで分けて検知することができるため、各スイッチ操作部52A、52Bの突出長さを短くできる。また、上下方向に並ぶ昇降駆動装置3の一方のみに、スイッチ操作部52が設けられていてもよい。例えば、上側の昇降部30のみにスイッチ操作部52が設けられる場合、スイッチ50B、51Bを設けずに、スイッチ51A、51Bがスイッチ50B、51Bの機能を兼ねていてもよい。即ち、スイッチ50A,51Aによって、上側の昇降部30及び下側の昇降部31が駆動されてもよい。
【0044】
以下、スイッチ操作部52による各スイッチ50、51の操作について、
図4(a)~
図4(c)を用いて説明する。
【0045】
昇降部30同士が衝突の危険無く運行している場合、
図4(a)に示すように、上側スイッチ操作部52Aは、下側の昇降部30と離隔し、下側スイッチ操作部52Bは、上側の昇降部30と離隔している。このとき、スイッチ操作部52において、支持部521の当接部520と反対側に位置する基端部525は、ブレーキ用スイッチ50よりも当接部520側に位置している。具体的に、上側スイッチ操作部52Aの基端部525Aは、上側の昇降部30のブレーキ用スイッチ50Aよりも当接部520A側(下側)に位置している。また、下側スイッチ操作部52Bの基端部525Bは、下側の昇降部30のブレーキ用スイッチ50Bよりも当接部520B側(上側)に位置している。この状態では、各スイッチ50、51は、オフ状態となっている。
【0046】
次に、上下に並ぶ昇降部30同士が接近すると、
図4(b)に示すように、上側スイッチ操作部52Aの当接部520Aは、下側の昇降部30に当接し、下側から上側の昇降部30内に徐々に押し込まれる。これにより、上側スイッチ操作部52Aの基端部525Aが、上側の昇降部30に設けられたブレーキ用スイッチ50Aに到達すると、ブレーキ用スイッチ50Aがオンとなる。その結果、上側の昇降部30を昇降するモータのブレーキ31がオンとなる。本実施形態では、上側の昇降部30について、モータ動力遮断310がオンとなるとともに、機械式ブレーキ311がオンとなる。また、下側スイッチ操作部52Bの当接部520は、上側の昇降部30に当接し、上側から下側の昇降部30内に徐々に押し込まれる。これにより、下側スイッチ操作部52Bの基端部525が、下側の昇降部30に設けられたブレーキ用スイッチ50Bに到達すると、ブレーキ用スイッチ50Bがオンとなる。その結果、下側の昇降部30を昇降するブレーキ31がオンとなる。本実施形態では、下側の昇降部30について、モータ動力遮断310がオンとなるとともに、機械式ブレーキ311がオンとなる。
【0047】
さらに、上下に並ぶ昇降部30同士が接近すると、
図4(c)に示すように、上側スイッチ操作部52Bの当接部520Bは、下側の昇降部30に当接した状態で、下側から上側の昇降部30内にさらに押し込まれる。これにより、上側スイッチ操作部52Aの基端部525Aが、上側の昇降部30に設けられた非常停止スイッチ51Aに到達すると、非常停止スイッチ51Aがオンとなる。その結果、上側の昇降部30に対して非常止め部材32が作動する。このとき、本実施形態では、くさび状の部材がガイドレールGと上側の昇降部30におけるガイドレールGにより挟まれている部位との間に打ち込まれる。このとき、本実施形態では、くさび状の部材がガイドレールGと上側の昇降部30におけるガイドレールGにより挟まれている部位との間に打ち込まれる。また、下側スイッチ操作部52Bの当接部520は、上側の昇降部30に当接した状態で、上側から下側の昇降部30内にさらに押し込まれる。これにより、下側スイッチ操作部52Bの基端部525が、下側の昇降部30に設けられた非常停止スイッチ51Bに到達すると、非常停止スイッチ51Bがオンとなる。その結果、下側の昇降部30に対して非常止め部材32が作動する。このとき、本実施形態では、くさび状の部材がガイドレールGと下側の昇降部30におけるガイドレールGにより挟まれている部位との間に打ち込まれる。
【0048】
なお、
図4(a)~
図4(c)に示すように、非常停止スイッチ51が、ブレーキ用スイッチ50よりも、スイッチ操作部52の押込み方向における奥側に位置する構成であれば、リミットスイッチの代わりに、押込み釦によるメカニカルスイッチを用いることができる。
【0049】
変更手段6は、例えば、昇降部30やかご4の速度を検知して、スイッチ操作部52の突出長さを制御することで、非常停止距離を変更する制御部である。具体的に、変更手段6は、昇降部30やかご4の速度が小さいとき、スイッチ操作部52における昇降部30内に配置される部位の長さを一定としたまま、スイッチ操作部52全体の長さを短くすることで、スイッチ操作部52の突出長さを短くする。これにより、変更手段6は、非常停止距離に加えて、ブレーキ距離を昇降部30やかご4の昇降速度に応じて変更する。なお、変更手段6は、スイッチ操作部52全体の長さを一定としたまま、スイッチ操作部52における昇降部30内に配置される部位の長さを長くすることで、スイッチ操作部52の突出長さを短くしてもよい。この場合、スイッチ操作部52における昇降部30内に配置される部位の長さを長くした分だけ、各スイッチ50、51を押込み方向の奥側に移動させることで、各スイッチ50、51の操作を適切なタイミングで行うことができる。
【0050】
スイッチ操作部52の突出長さは、昇降部30やかご4の減速距離(非常止め部材32が作動してから、昇降部30やかご4停止するまでに必要な走行距離)の分だけ確保されていればよい。なお、昇降部30やかご4の減速距離は、接近する昇降部30やかご4の速度によっても異なるが、この速度を定格速度(最大速度)と仮定して調整すれば、安全を確保することができる。
【0051】
変更手段6は、昇降部30やかご4の速度に応じて、非常停止距離等(本実施形態では、スイッチ操作部52の突出長さ)を段階的に変更する。例えば、変更手段6は、定格速度が毎分60m以下であれば、スイッチ操作部52の突出長さを800mmとし、定格速度が毎分60m~150mであればスイッチ操作部52の突出長さを2200mmとし、定格速度が毎分150m以上であれば、スイッチ操作部52の突出長さを2500mmとする。なお、変更手段6は、非常停止距離等を徐々に(連続的に)変更してもよい。
【0052】
変更手段6は、上側及び下側のスイッチ操作部52の突出長さを異なる長さする制御を行ってもよい。例えば、変更手段6は、昇降部30及びかご4の走行方向と反対側に位置するスイッチ操作部52の突出長さを最短の長さに制御してもよい。この場合、変更手段6は、昇降部30及びかご4の走行方向側に位置するスイッチ操作部52の突出長さを、昇降部30やかご4の速度に応じて段階的に制御してもよい。
【0053】
また、昇降部30及びかご4が停止状態の場合、変更手段6は、上側及び下側の両方または一方のスイッチ操作部52の突出長さを最短の長さに制御してもよい。例えば、昇降部30及びかご4が停止状態から定格速度になる過程では、変更手段6は、昇降部30及びかご4が停止状態でスイッチ操作部52の突出長さが最短である状態から、昇降部30及びかご4の走行速度(加速)に応じてスイッチ操作部52の突出長さが伸ばされ、定格速度に達した時にスイッチ操作部52の突出長さが最長になるように制御してもよい。また、昇降部30及びかご4が定格速度から停止状態になる過程では、変更手段6は、スイッチ操作部52の突出長さが最長である状態から、昇降部30及びかご4の走行速度(減速)に応じてスイッチ操作部52の突出長さが縮められ、昇降部30及びかご4が停止状態でスイッチ操作部52の突出長さが最短になるように制御してもよい。
【0054】
以上のエレベータ1では、軌道2に沿って互いに接近する昇降部30同士の距離がブレーキ距離になったときにスイッチ操作部52の操作によって昇降駆動装置3のブレーキ31をオンにして昇降部30同士の衝突を回避し、このブレーキ操作だけでは衝突を回避できない場合(即ち、昇降部30同士の距離が非常停止距離になっても停止できない場合)にのみ、非常停止スイッチ51を操作して昇降部30を非常停止させることで、昇降部30同士の異常な接近時(正常な運行では起こりえない距離まで接近したとき)においても非常停止の発動を最小限に抑えることができる。
【0055】
しかも、ブレーキ31だけで衝突を回避できた場合には、非常停止させた場合のようにガイドレールG(レール)の確認作業等を行うことなくブレーキ用スイッチ50を操作してブレーキ31をオフにするだけで復旧できる。また、ブレーキ31だけで衝突を回避できた場合には、非常停止で衝突を回避した場合と異なり、ガイドレールGが損傷することもない。
【0056】
本実施形態のエレベータ1では、変更手段6が、昇降部30やかご4の昇降速度に応じて、非常停止距離を短くすることで、非常停止をぎりぎりまで遅らせることができる、即ち、非常停止の発動をより抑えることができる。
【0057】
なお、本発明のエレベータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態のエレベータ1では、衝突防止手段5は、昇降駆動装置3に設けられていたが、かご4のみ、あるいは、昇降駆動装置3及びかご4の両方に設けられていてもよい。かご4に設けられる衝突防止手段5のスイッチ操作部52の突出長さは、かご4から突出する長さである。なお、衝突防止手段5を、昇降駆動装置3又はかご4の一方のみに設ける場合、より接近しやすいもの(上下方向で接近する昇降駆動装置3及びかご4のうちより外側に突出したもの)に設ければよい。
【0059】
例えば、
図6に示すように、スイッチ操作部52は、かご4のかご本体401の上面及び下面に取り付けられてもよい。スイッチ操作部52は、各かご4に配置されているが、接近するかご4の一方のかご4に取り付けられていてもよい。スイッチ操作部52は、かご4のかご本体401の端部(
図6では、かご本体401の上面の隅部及び下面の隅部)に取り付ける。これにより、かご本体401内の空間の広さを確保することができる。同図では、かご本体401の上面及びかご本体の下面に設けられたスイッチ操作部52は、昇降方向においてずれて配置されているが、昇降方向において隣り合う位置に配置されてもよい。
【0060】
このエレベータ1では、軌道2に沿って互いに接近するかご4同士の距離がブレーキ距離になったときにスイッチ操作部52の操作によって昇降駆動装置3のブレーキ31をオンにしてかご4同士の衝突を回避し、このブレーキ操作だけでは衝突を回避できない場合(即ち、かご4同士の距離が非常停止距離になっても停止できない場合)にのみ、非常停止スイッチ51を操作して昇降駆動装置3を非常停止させることで、かご4同士の異常な接近時(正常な運行では起こりえない距離まで接近したとき)においても非常停止の発動を最小限に抑えることができる。
【0061】
なお、上下方向に並ぶ昇降駆動装置3及びかご4において、上側と下側とで異なる装置に衝突防止手段5が設けられていてもよい。例えば、上側に位置する装置における昇降駆動装置3のみに衝突防止手段5が設けられ、且つ、下側に位置する昇降部30及びかご4についてかご4のみに衝突防止手段5が設けられてもよい。この場合、上側に位置する昇降部30に設けられた衝突防止手段5のスイッチ操作部52が下側に位置する昇降部30に当接可能であり、下側に位置するかご4に設けられた衝突防止手段5のスイッチ操作部52は、上側に位置するかご4に当接可能な構成を有する。
【0062】
また、上記実施形態のエレベータ1は、昇降駆動装置3を備えていたが、昇降駆動装置3を備えていなくてもよい。この場合、エレベータ1は、昇降路7を昇降する複数のかご4とかご4に設けられ、互いに接近するかご4同士の衝突を防ぐ衝突防止手段5と、を備える。この衝突防止手段5は、少なくとも互いに接近するかご4のブレーキ40をオンオフするブレーキ用スイッチ50と、少なくとも互いに接近するかご4を非常停止させる非常停止スイッチ51と、互いに接近するかご4同士の距離に応じて、ブレーキ用スイッチ50又は非常停止スイッチ51を操作するスイッチ操作部52と、を備える。かご4のブレーキ40は、かご4を昇降させる昇降装置(モータ等)のブレーキである。なお、ブレーキ40は、かご4が自走する場合はかご4自体に設けられていてもよい。スイッチ操作部52は、かご4同士の距離がブレーキ40をオンとする距離であるブレーキ距離になったときにブレーキ用スイッチ50を操作してブレーキ40をオンにし、かご4同士の距離がブレーキ距離よりも短い非常停止距離になったときに非常停止スイッチ51を操作する。
【0063】
これにより、軌道2に沿って互いに接近するかご4同士の距離がブレーキ距離になったときにスイッチ操作部52の操作によってかご4のブレーキ40をオンにしてかご4同士の衝突を回避し、このブレーキ操作だけでは衝突を回避できない場合(即ち、かご4同士の距離が非常停止距離になっても停止できない場合)にのみ、非常停止スイッチを操作してかご4を非常停止させることで、かご同士の異常な接近時(正常な運行では起こりえない距離まで接近したとき)においても非常停止の発動を最小限に抑えることができる。しかも、かご4のブレーキ40だけで衝突を回避できた場合には、非常停止させた場合のようにガイドレールG(レール)の確認作業等を行うことなくブレーキ用スイッチ50を操作してブレーキ40をオフにするだけで復旧できる。
【0064】
上記実施形態のエレベータ1では、昇降駆動装置3のブレーキ31は、例えば、昇降駆動装置3のモータの動力の遮断モータ動力遮断や、モータに設けられたディスクブレーキ等の機械式ブレーキであったが、モータ動力遮断機械式ブレーキの動作に加えて、モータの動力の遮断や機械式ブレーキを実施する前に、モータのトルク制御による強めの減速を行ってもよい。
【0065】
上記実施形態のスイッチ操作部52では、一つの部材がブレーキ用スイッチ50を操作する部位と、非常停止スイッチ51を操作する部位と、を兼ねていたが、これらの部位が別々に設けられた構成であってもよい。具体的に、スイッチ操作部52は、二つの部材(例えば、二本の棒状の部材)からなり、一方の部材が、ブレーキ用スイッチ50を操作し、他方の部材が、非常停止スイッチ51を操作し且つ一方の部材よりも突出長さの短いものであってもよい。
【0066】
なお、スイッチ操作部52は、テレスコピックパイプやパンタグラフといった伸縮構造を有するものであってもよい。この場合、スイッチ操作部52は、伸縮構造を有し且つ昇降部3同士又はかご4同士の距離を検知する距離検知部材と、距離検知部材による昇降部3同士又はかご4同士の距離に応じて、各スイッチ50、51を操作する操作本体部と、を有する。距離検知部材は、伸縮構造であるため、かご本体401の隅部以外の領域(例えば、かご本体401の上面の中央部及び下面の中央部)に取り付けることができる。
【0067】
なお、かご4に設けられる距離検知部材が、先端に当接部を有し且つ支持部がパンタグラフ形状であれば、接近するかご4やこのかご4に設けられる距離検知部材が当接部に真上や真下以外の方向から当接しても、支持部が上下方向に延びる棒状である構造と異なり、容易に縮むため、各スイッチ50、51が確実に動作する。この構成では、各スイッチ50、51は、支持部が縮むことにより操作可能な位置に配置されたロータリースイッチであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態のエレベータ1は、上下方向に並んだ昇降駆動装置3同士やかご4同士の衝突を防止するものであったが、これに加えて、水平方向に並んだ昇降駆動装置3同士やかご4同士の衝突を防止するものであってもよい。この場合、上下方向における突出長さが変化するスイッチ操作部52に加えて、左右方向における突出長さが変化するスイッチ操作部52を備えてもよい。左右方向における突出長さが変化するスイッチ操作部52は、昇降部30や乗りかご本体401の側面に配置される。
【0069】
上記実施形態のエレベータ1では、昇降駆動装置3は三つであったが、二つ乃至四つ以上であってもよい。また、軌道2は、二つ設けられていたが、一つ乃至三つ以上であってもよい。この場合、エレベータ1は、昇降路7を一つ乃至三つ以上備えていてもよい。かご4は、一つ乃至三つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…エレベータ、2…軌道、3…昇降駆動装置、4…かご、5…衝突防止手段、6…変更手段、7…昇降路、8…乗場、9…退避場、30…昇降部、31…ブレーキ、32…非常止め部材、33…横軌道、40…ブレーキ、43…走行部、50…ブレーキ用スイッチ(スイッチ)、51…非常停止スイッチ(スイッチ)、52…スイッチ操作部、52A…上側スイッチ操作部(スイッチ操作部)、52B…下側スイッチ操作部(スイッチ操作部)、111…かご、112…かご、113…レール、114、115…非常止め部材、116…レール当たり金、117…レバー、119…レバー押し棒、120…レバー、310…モータ動力遮断モータ動力遮断、311…機械式ブレーキ、400…かごドア、401…かご本体、520、520A、520B…当接部、521、521A、521B…支持部、522…当接面、523、523A、523B…固定部、524、524A、524B…軸部、525、525A,525B…基端部、G…ガイドレール
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる軌道と、
前記軌道に沿ってそれぞれ昇降する複数の昇降駆動装置と、
各昇降駆動装置に結合する少なくとも一つのかごと、
前記昇降駆動装置に設けられ、前記軌道に沿って互いに接近する昇降駆動装置同士及びかご同士の衝突を防ぐ衝突防止手段と、を備え、
前記昇降駆動装置は、前記かごと結合可能であり前記軌道に沿って昇降する昇降部と、前記昇降駆動装置を非常停止させる非常止め部材と、を含み、
前記衝突防止手段は、
少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置のブレーキをオンオフするブレーキ用スイッチと、
前記非常止め部材に接続され、オンになったときに、前記非常止め部材が作動することで、少なくとも前記互いに接近する昇降駆動装置を非常停止させる非常停止スイッチと、
前記昇降部に取り付けられ、前記互いに接近する昇降駆動装置同士の距離に応じて、前記ブレーキ用スイッチ又は前記非常停止スイッチを操作するスイッチ操作部と、を備え、
前記ブレーキ用スイッチ及び前記非常停止スイッチは、上下方向に並んで配置され、
前記スイッチ操作部は、少なくとも基端部が前記昇降部に対して上下方向に押し込まれるように上下動可能な棒状の部材であり、上下動して前記基端部が前記ブレーキ用スイッチに到達したときに前記ブレーキをオンにし、さらに上下動して前記基端部が前記非常停止スイッチに到達しときに前記非常停止スイッチをオンにする、エレベータ。
【請求項2】
前記非常停止スイッチを操作する非常停止距離を、前記かごの昇降速度に応じて変更する変更手段を備える、請求項1に記載のエレベータ。