(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121357
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】積付物体の搬入方向決定プログラム、搬入方向決定方法、搬入方向決定装置、およびパレタイズロボット
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20230824BHJP
B65G 57/03 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B65G61/00
B65G57/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024655
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓哉
【テーマコード(参考)】
3F029
【Fターム(参考)】
3F029AA04
3F029AA05
3F029AA08
3F029BA01
3F029CA00
3F029DA01
(57)【要約】
【課題】積付先の容器内の所定位置に物体を積み付ける際に、安全且つ精度良く物体を積み付けるための搬入方向を決定するための積付物体の搬入方向決定プログラムを提供する。
【解決手段】積付物体の搬入方向決定プログラムは、コンピュータに、障害物情報取得機能と、搬入方向決定機能とを実行させる。障害物情報取得機能は、容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に容器内にある障害物の位置を示す情報を取得する機能である。搬入方向決定機能は、取得した、積付位置に対する障害物の位置の方向に基づいて、積付位置に対する物体の搬入方向を決定する機能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得する障害物情報取得機能と、
前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する搬入方向決定機能と
を実行させるための積付物体の搬入方向決定プログラム。
【請求項2】
予め設定された、物体の積付位置に対する障害物の位置ごとの当該物体の搬入可能方向を示した搬入可能ベクトル情報を記憶する搬入可能ベクトル情報記憶機能をさらに有し、
前記搬入方向決定機能では、前記搬入可能ベクトル情報に基づいて、前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に対応する前記物体の搬入可能方向を判断し、判断した搬入可能方向の中から物体の搬入方向を決定する、
請求項1に記載の積付物体の搬入方向決定プログラム。
【請求項3】
前記搬入方向決定機能では、前記搬入可能方向の中から、搬入動作の精度が高い方向、または搬入動作時間が短い方向を、前記搬入方向として決定する
請求項2に記載の積付物体の搬入方向決定プログラム。
【請求項4】
コンピュータが、
容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得し、
前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する、積付物体の搬入方向決定方法。
【請求項5】
容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に、前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得する障害物情報取得部と、
前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する搬入方向決定部と、を備えた積付物体の搬入方向決定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の積付物体の搬入方向決定装置を搭載し、
前記搬入方向決定部で決定した搬入方向から前記積付位置に、前記物体を搬入する動作機構を備えたパレタイズロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積付物体の搬入方向決定プログラム、搬入方向決定方法、搬入方向決定装置、およびパレタイズロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
物流システムにおいては、パレット等の容器に複数個の荷物を積み付けて移動させることで、効率良く荷物の搬送を行っている。その際、パレットに対して単一種類の荷物を積み付ける単載を行うとは限らず、複数種類の荷物を積み付ける複載を行う場合もある。単載の場合は、予め好適な荷物の積付パターンを決めておくことで、複数のパレットに対してこの積付パターンで効率良く積付作業を行うことができる。しかし混載の場合は、荷物の種類や数によって好適な積付パターンが異なるため、パレットごとに荷物の積付位置計画を行う必要がある。
【0003】
混載の積み付け作業は、主に作業員が荷物の種類や数を認識して試行錯誤することで行っているため、(1) 積付位置計画の優劣や作業時間が作業員によって異なる、(2) 試行錯誤を伴う作業を行うことで荷物が劣化したり破損したりする恐れがある、(3) 重量の大きい荷物が混在していると中腰で作業している作業者の身体への負担が大きくなるなどの問題点がある。
【0004】
上記(1)および(2)の問題点を解決するため、パレットに対する荷物の積付位置計画を自動算出する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。この技術では、積み付け対象の荷物の種類に基づいて、パレットに複数種類の荷物を混載するための各荷物の積付位置を算出する。この技術を用いることで、パレットに複数種類の荷物を混載する場合に、効率良く積み付け作業を行うことができる。
【0005】
また、上記(3)の問題点を解決するため、ロボットを用いて自動で積付作業を行うことが考えられる。ロボットを用いて積付作業を行うことにより、作業者の身体的負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロボットを用いて積付作業を行う際には、ロボットは積付対象の荷物をパレット上の空き領域内に一度仮置きして、その位置から積み付けの目標位置に向かって寄せて搬入することで、所望の位置に荷物を積み付ける。このように積み付け作業を行うことで、ロボットは、既に積み付けられている他の荷物との干渉を回避しつつ、安全且つ精度良く、積み付け作業を行うことができる。
【0008】
しかし、積付作業中には次々と新たな荷物が積み付けられ、パレット上の空き領域の位置や形状が時々刻々と変化する。そのため、ロボットは、パレット上の積付位置に対してどの方向から積付対象の荷物を搬入すればよいかを特定することが困難であるという問題があった。
【0009】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、積付先の容器内の所定位置に物体を積み付ける際に、安全且つ精度良く物体を積み付けるための搬入方向を決定することが可能な、積付物体の搬入方向決定プログラム、搬入方向決定方法、搬入方向決定装置、およびパレタイズロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る積付物体の搬入方向決定プログラムは、コンピュータに、容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得する障害物情報取得機能と、前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する搬入方向決定機能とを実行させる。
【0011】
また搬入方向決定プログラムは、予め設定された、物体の積付位置に対する障害物の位置ごとの当該物体の搬入可能方向を示した搬入可能ベクトル情報を記憶する搬入可能ベクトル情報記憶機能をさらに有し、前記搬入方向決定機能では、前記搬入可能ベクトル情報に基づいて、前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に対応する前記物体の搬入可能方向を判断し、判断した搬入可能方向の中から物体の搬入方向を決定してもよい。
【0012】
また前記搬入方向決定機能では、前記搬入可能方向の中から、搬入動作の精度が高い方向、または搬入動作時間が短い方向を、前記搬入方向として決定してもよい。
【0013】
また、本開示に係る積付物体の搬入方向決定方法は、コンピュータが、容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得し、前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する。
【0014】
また、本開示に係る積付物体の搬入方向決定装置は、容器内の所定の積付位置に物体を積み付ける際に、前記容器内にある障害物の位置を示す情報を取得する障害物情報取得部と、前記積付位置に対する前記障害物の位置の方向に基づいて、前記積付位置に対する物体の搬入方向を決定する搬入方向決定部とを備える。
【0015】
また本開示に係るパレタイズロボットは、前記積付物体の搬入方向決定装置を搭載し、前記搬入方向決定部で決定した搬入方向から前記積付位置に、前記物体を搬入する動作機構を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示の搬入方向決定プログラム、搬入方向決定方法、搬入方向決定装置、およびパレタイズロボットによれば、積付先の容器内の所定位置に物体を積み付ける際に、安全且つ精度良く物体を積み付けるための搬入方向を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る積付位置計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る積付位置計画装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】(a)~(d)は、一実施形態に係る積付位置計画装置が生成した各荷物の積付順序に関する説明図である。
【
図4】一実施形態に係る積付位置計画装置が搬入可能ベクトル情報に用いる9方向のベクトルに関する説明図である。
【
図5】一実施形態に係る積付位置計画装置が記憶した搬入可能ベクトル情報を示す表である。
【
図6】(a)は、一実施形態に係る積付位置計画装置が記憶した搬入可能ベクトル情報中のNo.1のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図であり、(b)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.2のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図であり、(c)は、一実施形態に係る積付位置計画装置が記憶した搬入可能ベクトル情報中のNo.3のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。
【
図7】(a)は、一実施形態に係る積付位置計画装置が記憶した搬入可能ベクトル情報中のNo.7のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図であり、(b)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.12のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図であり、(c)は、一実施形態に係る積付位置計画装置が記憶した搬入可能ベクトル情報中のNo.16のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態では、物流システムにおいて、複数の段ボール箱等の直方体の荷物をパレット等の容器に積み付けて搬送する際に用いる情報として、パレット上の所定位置への荷物の搬入方向を決定する処理について説明する。本実施形態において、段ボール箱等の荷物が積付位置決定処理対象の物体であり、パレットが積付先の容器である。また本実施形態において、「パレット上の所定位置への荷物の搬入方向」を、「当該荷物のプレイスベクトル」と称して、その決定処理について以下に説明する。
【0019】
〈一実施形態による積付荷物のプレイスベクトル決定機能を備えた積付位置計画装置の構成〉
一実施形態による積付荷物の搬入方向決定機能であるプレイスベクトル決定機能を備えた積付位置計画装置の構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態による積付位置計画装置1は、入力部10と、CPU20と、記憶部30と、出力部40とを備える。
【0020】
入力部10は、例えば利用者が操作するマウス、キーボード、または、物流システム全体を統括する上位システムとの通信を行う通信手段で構成される。入力部10は、荷物の積付位置の計画情報を生成するための情報として、積付対象の複数の荷物に関する情報と、積付先のパレットに関する情報を、利用者の操作情報または上位システムから送信される情報に基づいて入力する。具体的には、入力部10は、積付対象の荷物に関する情報および積付先のパレットの情報として、それぞれ種別ごとの数量、形状および大きさの情報を入力する。
【0021】
CPU20は、予め搭載されたプログラムを実行することで動作し、入力情報取得部21と、積付位置計画情報生成部22と、搬入方向決定装置としてのプレイスベクトル決定装置23と、出力情報生成部24とを有する。
【0022】
入力情報取得部21は、入力部10から入力された積付対象の荷物に関する情報を、各荷物に対応するアイテム情報として取得する。また入力情報取得部21は、入力部10から入力された積付先のパレットに関する情報を、容器情報(パレット情報)として取得する。
【0023】
積付位置計画情報生成部22は、入力情報取得部21が取得した情報に基づいて、所定のアイテム情報をパレット情報上の空き空間情報内に割り当てることで、当該アイテム情報に対応する荷物に関し、積付先のパレット上における積付位置を決定する。積付位置計画情報生成部22は、積付位置が決定した荷物に対応するアイテム情報のパレット情報上における割り当て位置を当該アイテム情報に付加して、積付位置計画情報として記憶部30に記憶させる。
【0024】
プレイスベクトル決定装置23は、障害物情報取得部231と、搬入方向決定部としてのプレイスベクトル決定部232とを有する。障害物情報取得部231は、積付位置計画情報記憶部31に記憶された積付位置計画情報に基づいて、積付対象の荷物ごとに、積付時におけるパレット上の障害物の情報を取得する。パレット上の障害物は、例えば既に積み付けられた他の荷物である。
【0025】
プレイスベクトル決定部232は、障害物情報取得部231で取得した情報および後述する搬入可能ベクトル記憶部32に記憶された情報に基づいて、積付対象の荷物ごとに、パレット上の所定位置への該当する荷物の搬入方向であるプレイスベクトルを決定する。プレイスベクトル決定部232は、決定した荷物ごとのプレイスベクトルを、該当するアイテム情報に付加して記憶部30に記憶させる。
【0026】
出力情報生成部24は、記憶部30に記憶されたアイテム情報に付加された積付位置の情報およびプレイスベクトルに基づいて、決定された積付位置計画情報に関する出力情報を生成して出力部40に出力させる。
【0027】
記憶部30は、積付位置計画情報記憶部31と、搬入可能ベクトル記憶部32とを有する。積付位置計画情報記憶部31は、積付位置決定処理が実行済みのアイテム情報に対して決定された積付位置の情報、およびプレイスベクトル決定処理が実行済みのアイテム情報に対して決定されたプレイスベクトルを記憶する。搬入可能ベクトル記憶部32は、積付対象の荷物の積付位置に対する障害物の位置と、当該荷物の積付位置に向かって搬入可能な方向を示す搬入可能ベクトルとの対応関係を示した搬入可能ベクトル情報を記憶する。
【0028】
出力部40は、出力情報生成部24が生成した出力情報を、プリンタによる印字、表示画面への表示、AR(Augmented Reality)ディスプレイへの表示、上位システムへのデータ送信等により、出力する。
【0029】
〈一実施形態による積付位置計画装置の動作〉
次に、本実施形態による積付位置計画装置の動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。まず、積付位置計画装置1が、利用者の操作または上位システムからの情報送信により、荷物の積付位置の計画情報の生成を指示する情報を取得すると、入力部10が当該情報をCPU20に入力する。
【0030】
CPU20は、入力部10から入力された荷物の積付位置の計画情報の生成を指示する情報を入力情報取得部21が取得し、積付位置計画情報生成部22に送出する。積付位置計画情報生成部22は、当該指示に従って、前回の積付位置計画情報の生成処理により生成されて積付位置計画情報記憶部31に記憶されている積付位置計画情報を削除して、積付位置計画情報記憶部31を初期化する(S1)。
【0031】
次に、利用者の操作または上位システムからの情報送信により、荷物の積付位置の計画情報を生成するための条件として、積付対象の荷物に関する情報および積付先のパレットの情報が入力部10から入力される。具体的には、積付対象の荷物に関する情報として、種別ごとの数量、形状および大きさ(幅、奥行き、および高さ)の情報が入力され、積付先のパレットの情報として、数量、形状、および積付に使用可能な内寸(幅、奥行き)の情報が入力される。
【0032】
ここでは、積付対象の荷物に関する情報として、種別の異なる4個の荷物C1、C2、C3、およびC4について、種別ごとの数量「1個」、形状「直方体」、およびそれぞれの大きさの情報が入力される。また、積付先のパレットPの情報として、数量「1個」、形状「長方形」、および積付に使用可能な内寸の情報が入力される。
【0033】
入力情報取得部21は、入力部10から入力された積付対象の荷物C1、C2、C3、およびC4に関する情報を、各荷物に対応するアイテム情報c1、c2、c3、およびc4として取得する。ここで、1つのアイテム情報は必ずしも1つの荷物に対応していなくても良く、隣接する複数の荷物に対応する複数のアイテム情報を含む最小の直方体を、該当する複数の荷物に対応する1つのアイテム情報として扱ってもよい。また入力情報取得部21は、入力部10から入力された積付先のパレットPに関する情報を、容器情報(パレット情報)pとして取得する。
【0034】
次に、積付位置計画情報生成部22が、入力情報取得部21が取得した情報に基づいて、所定のアイテム情報をパレット情報pの空き空間情報内に割り当てることで、当該アイテム情報に対応する荷物に関し、積付先のパレットP上における積付位置を決定する。積付位置計画情報生成部22がパレットP上における荷物の積付位置を決定する手法については、既知の技術を用いることができる。積付位置計画情報生成部22は、決定した荷物の積付位置の情報を、該当する荷物の積付位置計画情報として取得する。
【0035】
積付位置計画情報生成部22は、例えばパレット情報p内の所定位置を原点とし、幅方向をx軸、奥行き方向をy軸、高さ方向をz軸としたときのパレット情報pに割り当てたアイテム情報内の所定位置の座標を、対応する荷物の積付位置計画情報として取得する。積付位置計画情報生成部22は、取得した各荷物の積付位置計画情報を、積付位置計画情報記憶部31に記憶させる(S3)。
【0036】
また積付位置計画情報生成部22は、各荷物の積付位置計画情報として、パレットPへの積付順序を決定する。積付位置計画情報生成部22は、積付先のパレットPに既に積み付けられた荷物に隣接する位置に新たな荷物を積み付けるようにして、各荷物の積付順序を決定する。
【0037】
図3(a)~(d)は、積付位置計画情報生成部22が生成した各荷物の積付順序に関する説明図である。ここでは積付位置計画情報生成部22は、荷物C1~C4を、
図3(a)→(b)→(c)→(d)の順序、つまり荷物C1→荷物C2→荷物C3→荷物C4の順序で積み付ける積付順序を決定する。
【0038】
積付位置計画情報生成部22は、積付位置計画情報記憶部31に記憶された各アイテム情報の積付計画情報に、対応する荷物の積付順序を示す情報を付加する(S4)。具体的には、積付位置計画情報生成部22は、積付位置計画情報記憶部31に記憶されたアイテム情報c1の積付計画情報に、対応する荷物C1の積付順序が1番目であることを示す情報を付加する。
【0039】
同様にして積付位置計画情報生成部22は、アイテム情報c2の積付計画情報に、対応する荷物C2の積付順序が2番目であることを示す情報を付加し、アイテム情報c3の積付計画情報に、対応する荷物C3の積付順序が3番目であることを示す情報を付加し、アイテム情報c4の積付計画情報に、対応する荷物C4の積付順序が4番目であることを示す情報を付加する。
【0040】
これらの情報が積付位置計画情報記憶部31に記憶されると、プレイスベクトル決定装置23が、積付対象の各荷物C1、C2、C3、およびC4に関するプレイスベクトル決定処理を実行する。プレイスベクトル決定処理が開始すると、まずプレイスベクトル決定部232が処理対象として荷物C1を選択し(S5)、障害物情報取得部231に該当する障害物の情報を要求する。
【0041】
障害物情報取得部231は、積付位置計画情報記憶部31に記憶された積付位置計画情報に基づいて、荷物C1の積付時にパレットP上にある障害物の情報を取得する(S6)。本実施形態では、障害物情報取得部231は、障害物として、該当する荷物の積付時にパレットP上に既に積み付けられている荷物の情報を取得する。
【0042】
ここでは、ステップS4で説明したように荷物C1→C2→C3→C4の順で積み付けるため、障害物情報取得部231は、荷物C1の積付時には障害物はないと判断する。
【0043】
次に、プレイスベクトル決定部232が、障害物情報取得部231で取得した情報、および搬入可能ベクトル記憶部32に記憶された情報に基づいて、荷物C1をパレットP上の所定の積付位置に積み付ける際の荷物C1の搬入可能方向を判断する(S7)。
【0044】
搬入可能ベクトル記憶部32には、荷物の積付位置に対する障害物の位置ごとに設定された、当該荷物の搬入可能方向を示した搬入可能ベクトル情報が記憶されている。この搬入可能ベクトル情報内の搬入可能方向は、所定の9方向のベクトル群の中から選択されたベクトルで示される。
【0045】
図4を用いて、搬入可能ベクトル情報に用いる9方向のベクトルについて説明する。
図4は、パレットPを上から見た図であり、パレットP上における荷物の積付位置をC0とし、積付位置C0の中心を原点Oとする。また、
図4において、原点OからパレットP上の右に向かう方向をx軸の正方向とし、パレットP上の奥に向かう方向をy軸の正方向とし、垂直に上に向かう方向をz軸(図示せず)の正方向とする。
【0046】
ここで、積付位置C0に対して左側からx軸の正方向である右側に向かって近づく矢印方向を、第1ベクトルv1(1,0)とする。また、積付位置C0に対して左斜め手前側からx軸の正方向且つy軸の正方向である右斜め奥側に向かって近づく矢印方向を、第2ベクトルv2(1,1)とする。また、積付位置C0に対して手前側から奥側に向かって近づく矢印方向を、第3ベクトルv3(0,1)とする。また、積付位置C0に対して右斜め手前側から左斜め奥側に向かって近づく矢印方向を、第4ベクトルv4(-1,1)とする。また、積付位置C0に対して右側から左側に向かって近づく矢印方向を、第5ベクトルv5(-1,0)とする。また、積付位置C0に対して右斜め奥から左斜め手前に向かって近づく矢印方向を、第6ベクトルv6(-1,-1)とする。また、積付位置C0に対して奥側から手前側に向かって近づく矢印方向を、第7ベクトルv7(0,-1)とする。また、積付位置C0に対して左斜め奥側から右斜め手前側に向かって近づく矢印方向を、第8ベクトルv8(1,-1)とする。また、
図4においては矢印を図示しないが、積付位置C0に対して上から下に向かって近づく方向を、第9ベクトルv9(0,0)とする。
【0047】
図5は、これらの第1ベクトルv1(1,0)~第9ベクトルv9(0,0)を用いて、荷物の積付位置に対する障害物の位置ごとに設定された、搬入可能ベクトル情報を示す表である。
図5では、荷物の積付位置に対する障害物の位置に関するNo.1~No.16の16通りのパターンについて、予め設定された搬入可能ベクトルを示している。表中では、パターンごとに、荷物の積付位置に対する障害物の位置を示す項目「x軸負側」、「x軸正側」、「y軸負側」、および「y軸正側」のうち、各パターンについて障害物が存在する項目に〇印を付している。これらの搬入可能ベクトルの例として、No.1、No.2、No.6、No.7、No.12、およびNo.16のパターンの搬入可能ベクトルについて、以下に説明する。
【0048】
図6(a)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.1のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。このパターンの場合は、パレットP上に障害物がなく、9方向のすべてのベクトルが搬入可能ベクトルとして設定されている。
【0049】
図6(b)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.2のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。No.2のパターンでは、荷物の積付位置C0の左側、つまりx軸の負側に障害物D1がある。この場合、荷物の積付位置C0に対する障害物D1の方向と反対方向のベクトルv5(-1, 0)と、これに隣接するベクトルv4(-1, 1)およびv6(-1, -1)との3方向のベクトルが、搬入可能ベクトルとして設定される。
【0050】
図6(c)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.6のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。No.6のパターンでは、荷物の積付位置C0の左側、つまりx軸の負側に障害物D2があり、積付位置C0の右側、つまりx軸の正側に障害物D3がある。この場合、障害物D2およびd3に干渉しないv9(0, 0), v3(0, 1),および v7(0, -1)の3方向のベクトルが、搬入可能ベクトルとして設定される。
【0051】
図7(a)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.7のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。No.7のパターンでは、荷物の積付位置C0の左側、つまりx軸の負側に障害物D4があり、積付位置C0の手前側、つまりy軸の負側に障害物D5がある。この場合、荷物の積付位置C0に対する障害物D3およびd4の方向と反対方向ベクトルv6(-1, -1)が、搬入可能ベクトルとして設定される。
【0052】
図7(b)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.12のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。No.12のパターンでは、荷物の積付位置C0の左側、つまりx軸の負側に障害物D6があり、積付位置C0の右側、つまりx軸の正側に障害物D7があり、積付位置C0の手前側、つまりy軸の負側に障害物D8がある。この場合、障害物D6、d7、およびd8に干渉しないv9(0, 0), およびv7(0, -1)の2方向のベクトルが、搬入可能ベクトルとして設定される。
【0053】
図7(c)は、搬入可能ベクトル情報中のNo.16のパターンに関する搬入可能ベクトルを示す図である。No.16のパターンでは、荷物の積付位置C0の左側、つまりx軸の負側に障害物D9があり、積付位置C0の右側、つまりx軸の正側に障害物D10があり、積付位置C0の手前側、つまりy軸の負側に障害物D11があり、積付位置C0の奥側、つまりy軸の正側に障害物D12がある。この場合、障害物D9、D10、D11、およびD12に干渉しないv9(0, 0)のベクトルが、搬入可能ベクトルとして設定される。
【0054】
上述した
図6(c)のNo.6のパターン、
図7(b)のNo.12のパターン、または
図7(c)No.16のパターンは、積付対象の荷物が積付位置C0に到達する前に隣接する障害物と干渉する可能性があり、本来は好ましいパターンではない。そのため、積付位置計画装置1は、所定荷物の積付時における障害物の位置がこれらのパターンにならないように積付位置計画情報を生成しておくことが望ましい。積付位置計画装置1は、積付対象の荷物に対する障害物の方向と反対方向に十分な空きスペースがない場合に限って、これらのパターンにより積み付けを行うように、積付位置計画情報を生成する。
【0055】
また積付位置計画装置1は、積付位置計画情報を生成する際に、隣接する荷物間に適当なマージン、例えば1cm程度の隙間を設けるように予め設定しておくことで、これらのパターンで荷物を積み付ける際に隣接する荷物との干渉を回避するようにしてもよい。
【0056】
プレイスベクトル決定部232は、荷物C1の積付時には障害物がないと判断したことにより、
図5の搬入可能ベクトル情報中のNo.1のパターンに該当すると判断する。そしてプレイスベクトル決定部232は、荷物C1をパレットP上の所定の積付位置に積み付ける際には、v1(1,0),v2(1,1)・・・v9(0,0)の9個すべてのベクトルが搬入可能ベクトルであると判断する。
【0057】
プレイスベクトル決定部232は、搬入可能ベクトルであると判断した9個のベクトルの中から、1つのプレイスベクトルを選択する。プレイスベクトル決定部232は、複数の搬入可能ベクトルの中から1つのプレイスベクトルを選択する際には、例えば、ロボットの動作特性に基づいて搬入動作の精度が高いと判断されるベクトル、または搬入動作時間が短いベクトル等を選択する。ここでは、プレイスベクトル決定部232は、動作時間が最も短いv9(0, 0)を選択する。
【0058】
プレイスベクトル決定部232は、選択したベクトルv9(0, 0)を、荷物C1のプレイスベクトルとして決定し、積付位置計画情報記憶部31内の荷物C1に対応するアイテム情報c1に付加して記憶させる(S8)。以上で、荷物C1に関するプレイスベクトル決定処理を終了する。
【0059】
次にプレイスベクトル決定部232は、まだプレイスベクトルを決定していない荷物(荷物C2、C3、およびC4)があると判断し(S9の「NO」)、ステップS5に戻る。プレイスベクトル決定部232は、次の処理対象として荷物C2を選択し(S5)、障害物情報取得部231に該当する障害物の情報を要求する。
【0060】
障害物情報取得部231は、荷物C2の積付時には、パレットP上に障害物として荷物C1があると判断し、荷物C1の形状、大きさ、および位置の情報を取得する(S6)。
【0061】
次に、プレイスベクトル決定部232が、障害物情報取得部231で取得した情報、および搬入可能ベクトル記憶部32に記憶された情報に基づいて、荷物C2の積付時は、
図5の搬入可能ベクトル情報中のNo.4のパターンに該当すると判断する。そしてプレイスベクトル決定部232は、荷物C2をパレットP上の所定の積付位置に積み付ける際には、v8(1, -1), v7(0, -1), v6(-1, -1)の3個のベクトルが搬入可能ベクトルであると判断する。
【0062】
プレイスベクトル決定部232は、搬入可能ベクトルであると判断した3個のベクトルの中から、1つのベクトル、例えばベクトルv7(0, -1)を選択する。プレイスベクトル決定部232は、選択したベクトルv7(0, -1)を、荷物C2のプレイスベクトルとして決定し、積付位置計画情報記憶部31内の荷物C2に対応するアイテム情報c2に付加して記憶させる(S8)。
【0063】
プレイスベクトル決定部232は、同様の処理により、ベクトルv5(-1, 0)を、荷物C3のプレイスベクトルとして決定し、積付位置計画情報記憶部31内の荷物C3に対応するアイテム情報c3に付加して記憶させる。また、プレイスベクトル決定部232は、ベクトルv9(0, 0)を、荷物C4のプレイスベクトルとして決定し、積付位置計画情報記憶部31内の荷物C4に対応するアイテム情報c4に付加して記憶させる。
【0064】
すべての荷物C1~C4に関するプレイスベクトル決定処理が終了すると(S9の「YES」)、出力情報生成部24が、積付位置計画情報記憶部31に記憶された積付位置計画情報および各荷物のプレイスベクトルの情報を、出力部40に出力させる(S10)。
【0065】
上述した積付位置計画装置1を、積付作業を行うパレタイズロボット(図示せず)に搭載し、当該パレタイズロボットが、出力部40から出力された積付位置計画情報および各荷物のプレイスベクトルの情報に基づいて、各荷物の積付動作を行うようにしてもよい。この場合、パレタイズロボットが有する動作機構が、出力部40から出力された情報に基づいて、各荷物を、積付位置計画情報で示される積付位置に、プレイスベクトルで示される方向から搬入する。
【0066】
具体的には、パレタイズロボットの動作機構は、積付対象の荷物を、まず積付位置からプレイスベクトルで示される方向と反対方向に数cm離れた位置に荷物を仮置きする。そして、仮置きした位置から荷物をプレイスベクトルで示される方向に積付位置までずらすことで、積付作業を行う。このようにパレタイズロボットが動作することにより、効率良く且つ精度良く、荷物の積付作業を行うことができる。
【0067】
以上の実施形態によれば、積付位置計画装置は、積付先のパレット内の所定位置に積付対象の荷物を積み付ける際に、安全且つ精度良く、荷物を搬入することが可能なプレイスベクトルを決定することができる。
【0068】
また本実施形態によれば積付位置計画装置は、予め、荷物の積付位置に対する障害物の位置ごとの荷物の搬入可能方向を示した搬入可能ベクトル情報を記憶している。そして積付位置計画装置は、記憶した搬入可能ベクトル情報に基づいて該当する荷物の搬入可能方向を判断し、その中から当該荷物のプレイスベクトルを決定する。このように処理を実行することにより、積付位置計画装置は、より効率良く且つ精度良く、荷物を搬入することが可能なプレイスベクトルを決定することができる。
【0069】
また積付位置計画装置は、複数の搬入可能ベクトルの中からプレイスベクトルを決定する際に、搬入動作の精度が高い方向、または搬入動作時間が短い方向を選択する。このように選択してプレイスベクトルを決定することにより、より効率良く、荷物を搬入することが可能なプレイスベクトルを決定することができる。
【0070】
上述した実施形態においては、積付位置計画装置1が、自装置内で生成した積付位置計画情報に基づいて各荷物のプレイスベクトルを決定する場合について説明した。しかしこれには限定されず、積付位置計画装置1が、他の装置で生成された積付位置計画情報を外部から取得し、取得した積付位置計画情報に基づいて各荷物のプレイスベクトルを決定してもよい。
【0071】
この場合、入力部10が他の装置から積付位置計画情報を取得し、取得した積付位置計画情報を入力情報取得部21が積付位置計画情報記憶部31に記憶させる。そして、積付位置計画情報記憶部31に記憶された積付位置計画情報に基づいて、プレイスベクトル決定装置23が各荷物のプレイスベクトルを決定する。
【0072】
ここで、他の装置から取得する積付位置計画情報は、積付先のパレットに対する各アイテム情報の位置が特定可能な情報であればよい。この積付位置計画情報としては、例えば各アイテム情報の座標や形状を直接記述した数値データのほか、CADデータ、写真、LiDARにより計測された点群データなどが考えられる。
【0073】
また上述した実施形態では、プレイスベクトル決定装置23がパレット上に既に積み付けられた他の荷物を障害物として認識する場合について説明したが、これには限定されず、積付先の容器の形状に基づく物体を障害物として認識してもよい。
【0074】
積付先の容器の形状に基づく物体としては例えば、積付先の容器であるかご車の壁面等がある。このような物体を障害物として認識する場合には、予め積付位置計画情報記憶部31に該当する物体の形状、大きさ、および位置の情報を入力しておく。これにより、障害物情報取得部231がこれらの情報を用いて該当する障害物情報を取得して、プレイスベクトルの決定処理に用いることができる。
【0075】
上述した実施形態では、容器に積み付ける物体が段ボール箱の場合について説明したが、これには限定されず、個別製品の収納箱、建築資材、米袋やセメント袋等の袋類など、直方体として近似可能な物体であれば用いることができる。
【0076】
また、上述した実施形態では、積付先の容器がパレットの場合について説明したが、これには限定されず、かご車、折り畳みコンテナ、トラック、建設資材置き場などであってもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、積付位置計画装置1が単一の装置で構成された場合について説明したが、これには限定されず、複数の装置で構成されていてもよい。例えば、入力部10と出力部40をWebブラウザで実装し、入力部10からネットワーク経由で積付位置計画装置に積付位置計画情報の生成処理を実行させ、生成された情報をネットワーク経由で出力部40に送信してもよい。
【0078】
上述したプレイスベクトル決定装置23が有する障害物情報取得機能およびプレイスベクトル決定機能をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータをプレイスベクトル決定装置として機能させる搬入方向決定プログラムを構築することも可能である。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 積付位置計画装置
10 入力部
21 入力情報取得部
22 積付位置計画情報生成部
23 プレイスベクトル決定装置
24 出力情報生成部
30 記憶部
31 積付位置計画情報記憶部
32 搬入可能ベクトル記憶部
40 出力部
231 障害物情報取得部
232 プレイスベクトル決定部