(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121358
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】泡吐出容器に充填された起泡性洗浄料、起泡性洗浄料の泡弾力増大用組成物、泡吐出容器の押し圧低下用組成物および泡吐出容器の押し圧を低下させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230824BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230824BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230824BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230824BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230824BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20230824BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20230824BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230824BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/73
A61Q19/10
C11D1/52
C11D3/33
C11D3/20
C11D3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024656
(22)【出願日】2022-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年7月8日、https://island.natural-s.jp/campaign/20210702/ https://island.natural-s.jp/shop/g/g8341/ https://island.natural-s.jp/shop/g/g8342/ 〔刊行物等〕 2021年9月24日、https://island.natural-s.jp/campaign/20220202/ https://island.natural-s.jp/shop/g/g8361/ https://island.natural-s.jp/shop/g/g8362/ 〔刊行物等〕 2021年7月8日、ナチュラルサイエンス直営店home札幌店ほか計8店舗 〔刊行物等〕 2021年9月24日、ナチュラルサイエンス直営店home札幌店ほか計13店舗
(71)【出願人】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】木原 俊和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 洋美
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC402
4C083AC442
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC792
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD282
4C083AD392
4C083CC22
4C083CC23
4C083DD27
4C083EE07
4H003AB03
4H003AB09
4H003AB15
4H003AB27
4H003AC05
4H003AC08
4H003AC13
4H003AD04
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB13
4H003EB41
4H003EB42
4H003ED02
4H003FA16
4H003FA17
(57)【要約】
【課題】 泡吐出容器に充填される起泡性洗浄料について、押し圧の増大を抑制しつつ泡弾力を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 泡吐出容器に充填された起泡性洗浄料であって、下記(a)~(c)を含有する前記起泡性洗浄料:(a)N-アシルアミノ酸塩、(b)脂肪酸アルカノールアミド、(c)(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコール;(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、(ウ)還元麦芽糖水飴。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡吐出容器に充填された起泡性洗浄料であって、下記(a)~(c)を含有する前記起泡性洗浄料;
(a)N-アシルアミノ酸塩、
(b)脂肪酸アルカノールアミド、
(c)(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコール;
(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、
(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、
(ウ)還元麦芽糖水飴。
【請求項2】
さらに(d)ガラクトマンナン分解物および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する、請求項1に記載の起泡性洗浄料。
【請求項3】
(a)N-アシルアミノ酸塩:(b)脂肪酸アルカノールアミド=3:7以下の質量比で(b)脂肪酸アルカノールアミドを含有する、請求項1または請求項2に記載の起泡性洗浄料。
【請求項4】
(a)N-アシルアミノ酸塩および(b)脂肪酸アルカノールアミドの合計配合量が20質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の起泡性洗浄料。
【請求項5】
(c)糖アルコールの配合量が0.1質量%以上8質量%未満である、請求項1~4のいずれかに記載の起泡性洗浄料。
【請求項6】
下記(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコールを有効成分とする、起泡性洗浄料の泡弾力増大用組成物;
(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、
(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、
(ウ)還元麦芽糖水飴。
【請求項7】
N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料が泡吐出容器に充填されたときの押し圧低下用組成物であって、脂肪酸アルカノールアミドを有効成分とする、前記押し圧低下用組成物。
【請求項8】
起泡性洗浄料が充填された泡吐出容器の押し圧を低下させる方法であって、N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料の原材料に、脂肪酸アルカノールアミドを配合することを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性洗浄料、泡吐出容器に充填された起泡性洗浄料、起泡性洗浄料の泡弾力増大用組成物、泡吐出容器の押し圧低下用組成物および泡吐出容器の押し圧を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄料とは汚れを落とすことを目的とした製品をいい、起泡性洗浄料とは水を適量加えて泡立てることにより気泡を生成し、泡立つ性質を有する洗浄料をいう。起泡性洗浄料の具体例としては、例えば、シャンプーなどの洗髪料、固形石けん、化粧落とし(クレンジング)、洗顔料、ボディソープ、ハンドソープ、全身シャンプー、食品用洗剤、食器用洗剤、衣料用洗剤、工業用洗剤などを挙げることができる。
【0003】
係る起泡性洗浄料では、近年、ポンプフォーマーやスクイズフォーマーなどの泡吐出容器に充填された製品が、泡立てる手間が省けるだけでなく、クリーミーな泡質となるために人気がある。一方で、洗顔料やボディソープ、シャンプーなど肌や毛髪に用いられるものでは特に、きめ細かく弾力のある泡質が好まれる。
【0004】
一般に、起泡性洗浄料の泡質を改善するためには、水溶性ポリマー等の増粘剤を用いることが行われている。しかしながら、泡吐出容器に充填される洗浄料においては、増粘剤の配合により急激に液粘度が上昇して、容器の押し圧が高くなり、泡を吐出しにくくなるという課題があった。そこで、泡吐出容器における押し圧の上昇を抑制しつつ泡質を改善する技術が研究開発されており、例えば、特許文献1には、アニオン界面活性剤と、特定の粘度特性を示す水溶性ポリマーとを組合せることにより、押し圧が高くならずに弾力がある濃密な泡をノンエアゾールフォーマー容器から吐出できる洗浄料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、係る特許文献を鑑みても、未だ、押し圧の増大を抑制しつつ弾力が高い泡を泡吐出容器から吐出できる洗浄料は、十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、泡吐出容器に充填される起泡性洗浄料について、押し圧の増大を抑制しつつ泡弾力を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、起泡性洗浄料にN-アシルアミノ酸塩と肪酸アルカノールアミドとを併せて配合することにより、泡吐出容器に充填したときの押し圧を顕著に低くできることを見出した。また、当該起泡性洗浄料に、下記(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコール;(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、(ウ)還元麦芽糖水飴、をさらに配合することにより、泡弾力を顕著に高くできることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る起泡性洗浄料は、泡吐出容器に充填された起泡性洗浄料であって、下記(a)~(c)を含有する;
(a)N-アシルアミノ酸塩、
(b)脂肪酸アルカノールアミド、
(c)(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコール;
(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、
(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、
(ウ)還元麦芽糖水飴。
【0009】
(2)本発明に係る起泡性洗浄料は、さらに(d)ガラクトマンナン分解物および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するものであってもよい。
【0010】
(3)本発明に係る起泡性洗浄料は、(b)脂肪酸アルカノールアミドを、(a)N-アシルアミノ酸塩:(b)脂肪酸アルカノールアミド=3:7以下の質量比で含有するものであってもよい。
【0011】
(4)本発明に係る起泡性洗浄料は、(a)N-アシルアミノ酸塩および(b)脂肪酸アルカノールアミドの合計配合量が20質量%以下であってもよい。
【0012】
(5)本発明に係る起泡性洗浄料は、(c)糖アルコールの配合量が0.1質量%以上8質量%未満であってもよい。
【0013】
(6)本発明に係る起泡性洗浄料の泡弾力増大用組成物は、下記(ア)~(ウ)から選択される1以上の糖アルコールを有効成分とする;
(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、
(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、
(ウ)還元麦芽糖水飴。
【0014】
(7)本発明に係る押し圧低下用組成物は、N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料が泡吐出容器に充填されたときの当該容器の押し圧を低下させる組成物であって、脂肪酸アルカノールアミドを有効成分とする。
【0015】
(8)本発明に係る起泡性洗浄料が充填された泡吐出容器の押し圧を低下させる方法は、N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料の原材料に、脂肪酸アルカノールアミドを配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の起泡性洗浄料によれば、泡吐出容器の押し圧の増大を抑制しつつ、弾力の高い泡を生成することができる。
【0017】
本発明の泡弾力増大用組成物によれば、起泡性洗浄料の泡の弾力を向上することができる。
【0018】
本発明の押し圧低下用組成物によれば、起泡性洗浄料が泡吐出容器に充填されたときの押し圧を低下させ、容易に泡を吐出させることができる使い易い製品を提供することができる。
【0019】
本発明の方法によれば、起泡性洗浄料が充填された泡吐出容器の押し圧を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】各種のアニオン界面活性剤を配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図3】各種のノニオン界面活性剤を配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図4】各種の脂肪酸アルカノールアミドを配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図5】各種の両性界面活性剤を配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図6】各種の両性界面活性剤を配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【
図7】各種の糖アルコールを配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図8】各種の糖アルコールを配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【
図9】各種の水溶性高分子を配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図10】各種の水溶性高分子を配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【
図11】ラウロイルアスパラギン酸Na(アミノ酸系アニオン界面活性剤)とコカミドメチルMEA(ノニオン界面活性剤)との割合を変化させて配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図12】ラウロイルアスパラギン酸Na(アミノ酸系アニオン界面活性剤)とコカミドメチルMEA(ノニオン界面活性剤)との割合を変化させて配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【
図13】ラウロイルアスパラギン酸Na(アミノ酸系アニオン界面活性剤)の配合量を10%とし、コカミドメチルMEA(脂肪酸アルカノールアミドのノニオン界面活性剤)の配合量を0~10%まで変化させて配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図14】加水分解水添デンプンA(糖アルコール)の配合量を変化させて配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図15】加水分解水添デンプンA(糖アルコール)の配合量を変化させて配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【
図16】ガラクトマンナン分解物(水溶性高分子)の配合量を変化させて配合した起泡性洗浄料について、ポンプヘッドの押し圧増大率を示す棒グラフである。
【
図17】ガラクトマンナン分解物(水溶性高分子)の配合量を変化させて配合した起泡性洗浄料について、泡の弾力増大率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
「起泡性洗浄料」とは、上述のとおり、水を適量加えて泡立てることにより気泡を生成し、泡立つ性質を有する洗浄料をいう。なお、本発明においては、気泡を単に「泡」という場合がある。また、泡は、泡の集合体と同義に用いられる場合がある。
【0023】
本発明において、泡吐出容器とは、充填された液状物を空気と混合して、泡状態で吐出できる容器をいう。泡吐出容器として、具体的には、例えば、軟質容器の胴部を押すことで吐出するスクイズフォーマー型、押圧ポンプ(ポンプヘッド)を押すことで吐出するポンプフォーマー型等を例示することができる。泡吐出容器は、泡を吐出するため吐出流路に多孔質膜フィルターを備えるものが多いが、フィルターのメッシュサイズやフィルター枚数などの仕様は特に限定されず、用いることができる。
【0024】
「押し圧」は、泡を吐出させるために、泡吐出容器の一部(例えば、ポンプフォーマー型であればポンプヘッド部分、スクイズフォーマー型であれば胴体部分など)を押すときに要する力をいう。押し圧は、官能試験によって確認することができるほか、後述する実施例で示すように、洗浄料を充填したポンプフォーマーのポンプヘッドを一定の距離押し下げた時の最大荷重を粘弾性測定装置で測定し、これを指標として評価することもできる。この場合は、最大荷重が大きいほど、押し圧が大きいと判断することができる。
【0025】
用語の使い方として、本明細書においては、ある成分を入れた場合と入れない場合とについて押し圧を比較したときに、前者の方が押し圧が小さい場合には、「当該成分により押し圧が低下した」と表現している。また、ある成分を入れた場合と当該成分に換えて別の成分を入れた場合とについて押し圧を比較したときに、前者の方が押し圧が小さい場合には、「当該成分により押し圧の増大が抑制された」と表現している。「押し圧の低下」と「押し圧の増大抑制」とは交換可能に用いられる場合がある。
【0026】
「泡弾力」は、起泡性洗浄料を泡立てて生じた泡の弾力をいう。泡弾力は、官能試験によって確認することができるほか、後述する実施例で示すように、泡を一定の体積分押さえた時の荷重を粘弾性測定装置で測定し、体積弾性率(N/m2)を算出して、これを指標として評価することもできる。この場合は、弾性率が大きいほど、泡弾力が大きいと判断することができる。
【0027】
本発明は、(a)N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料の原材料に、(b)脂肪酸アルカノールアミドを配合することにより、当該起泡性洗浄料が泡吐出容器に充填されたときの押し圧の増大を抑制する、あるいは、押し圧を低下させることを特徴とする。
【0028】
すなわち、本発明は、N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料が泡吐出容器に充填されたときの押し圧低下用組成物であって、脂肪酸アルカノールアミドを有効成分とする、前記押し圧低下用組成物をも提供する。また、本発明は、起泡性洗浄料が充填された泡吐出容器の押し圧を低下させる方法をも提供する。本方法では、N-アシルアミノ酸塩を含む起泡性洗浄料の原材料に、脂肪酸アルカノールアミドを配合することを特徴とする。
【0029】
(a)N-アシルアミノ酸塩は、アミノ酸系アニオン界面活性剤である。N-アシルアミノ酸塩のアシル基は、炭素数4~22ないしは炭素数8~18の飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸に由来するものを例示することができる。係る脂肪酸としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。由来する脂肪酸は、上記の脂肪酸の混合脂肪酸、例えば、ヤシ油、パーム核油などを原料にして得られたものであってもよい。
【0030】
また、N-アシルアミノ酸塩のアミノ酸(一分子内にアミノ基とカルボキシル基とを持つ化合物のほか、一分子内にアミノ基とスルホ基とを持つ化合物も含む)部分は、中性アミノ酸(グリシン、アラニン、サルコシン(N-メチルグリシン)、トレオニン等)や酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)、タウリンを例示することができる。これらのアミノ酸部分はD体、L体あるいはD体とL体の混合物のいずれであってもよい。
【0031】
N-アシルアミノ酸として、具体的には、例えば、カプロイルメチルタウリン、ラウロイルアスパラギン酸、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルサルコシン、ラウロイルトレオニン、ラウロイルタウリン、ミリストイルグルタミン酸、ミリスチルアスパラギン酸、ミリストイルメチルアラニン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルメチルタウリン、オレオイルメチルタウリン、ココイルグルタミン酸、ココイルグリシン、ココイルアラニン、ココイルタウリン、ココイルメチルタウリン、ココイルサルコシン、ココイルトレオニン、パーム脂肪酸グルタミン酸などを例示することができる。
【0032】
また、N-アシルアミノ酸塩の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等の有機アミン塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩;タウリン塩等の他の有機塩を例示することができる。塩は、一種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(b)脂肪酸アルカノールアミドは、従来、増粘剤として用いられているノニオン界面活性剤である。本発明では、意外なことに、N-アシルアミノ酸塩と併用することにより、泡吐出容器の押し圧を低下させる作用を発揮する。脂肪酸アルカノールアミドは、モノアルカノールアミンでもよく、ジアルカノールアミンでもよい。また、第二級アミンでもよく、第三級アミンでもよい。アルカノールアミドを構成する脂肪酸は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、飽和または不飽和のいずれでもよい。脂肪酸の炭素数は10~20を例示することができ、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。由来する脂肪酸は、上記の脂肪酸の混合脂肪酸、例えば、ヤシ油、パーム核油などを原料にして得られたものであってもよい。
【0034】
脂肪酸アルカノールアミドとして、具体的には、例えば、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド(コカミドメチルMEA)、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(コカミドMEA)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(パーム核脂肪酸アミドDEA)、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド(ラウラミドDEA)、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド((ラウラミド/ミリスタミド)DEA)、ステアリン酸モノエタノールアミド(ステアラミドMEA)、ステアリン酸ジエタノールアミド(ステアラミドDEA)、オレイン酸ジエタノールアミド(オレアミドDEA)、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(ラウラミドMIPA)などを例示することができる。
【0035】
また、ポリアルキレンオキサイド脂肪酸アルカノールアミドとして、具体的には、例えば、POEヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(PEG-3コカミド、PEG-6コカミド、PEG-11コカミド)、POEラウリン酸モノエタノールアミド(PEG-3ラウラミド)、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド(PPG-2コカミド)、ポリオキシプロピレンミリスチン酸モノエタノールアミド、などを例示することができる。これらの脂肪酸アルカノールアミドは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0036】
本発明は、上述の(a)および(b)に併せて、起泡性洗浄料に(c)下記(ア)~(ウ)の糖アルコールを配合することにより、押し圧の増大を抑制しつつ、泡弾力を高くする(増大させる)ことを特徴としている;
(ア)単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン、
(イ)デキストロース当量が14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン、
(ウ)還元麦芽糖水飴。
【0037】
すなわち、本発明は、上記(ア)~(ウ)の糖アルコールを有効成分とする、起泡性洗浄料の泡弾力増大用組成物をも提供する。
【0038】
糖アルコールとは、糖質が有するカルボニル基(アルデヒド基またはケトン基)が還元されてなる多価アルコールをいう。加水分解デンプン(水飴)を還元してなる糖アルコールは、加水分解水添デンプン(還元水飴)とも呼ばれる。麦芽糖水飴を還元してなる糖アルコールは、還元麦芽糖水飴と呼ばれる。
【0039】
糖組成とは、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、加水分解水添デンプンを試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
【0040】
デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)は、水飴の糖化の程度の指標として、従来、用いられる値である。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。すなわち、(イ)の「DEが14以上16以下の水飴を還元してなる加水分解水添デンプン」とは、比較的糖化度の小さい水飴を還元してなる加水分解水添デンプンということができる。
【0041】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0042】
(ウ)の還元麦芽糖水飴は、麦芽糖水飴を還元してなることから、二糖アルコールであるマルチトールを多く含有することが特徴であるが、単糖や3糖、4糖以上の糖アルコールも含む混合物である。糖組成に占めるマルチトールの割合としては、75質量%以上を例示することができる。
【0043】
本発明に係る起泡性洗浄料には、さらに(d)ガラクトマンナン分解物および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有してもよい。ガラクトマンナン分解物および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合すると、押し圧の増大を抑制しつつ、泡弾力を向上し、あるいは洗浄料使用後の皮膚における保湿性を向上することができる。
【0044】
ガラクトマンナンとは、マンノースで構成される直鎖状主鎖にガラクトースで構成される側鎖が結合してなる多糖類であり、ガラクトマンナン分解物とは、ガラクトマンナンを分解(低分子化)したものをいう。分解には、一般に、酸や酵素が用いられる。ガラクトマンナンとしては、マンノースとガラクトースとの構成比率が2:1のグァーガム、3:1のタラガム、4:1のローカストビーンガムなどを例示することができる。ガラクトマンナン分解物の分子量はガラクトマンナンより小さいものであればよく、具体的には原料ガラクトマンナンの1/180~1/10、すなわち分子量5000~100000を例示することができる。
【0045】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、セルロースの骨格にメトキシ基(-OCH3)およびヒドロキシプロポキシ基(-OCH2CHOHCH3)が導入されてなる、セルロース誘導体である。本発明において、HPMCの粘度、分子量、粒子径、メトキシ基の置換度(セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシ基で置換された水酸基の平均個数)およびヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシプロポキシ基の平均モル数)などは適宜設定することができ、一般に化粧品や衛生用品に用いられる仕様のHPMCを用いることができる。
【0046】
本発明において、(a)N-アシルアミノ酸塩、(b)脂肪酸アルカノールアミド、(c)糖アルコールおよび(d)ガラクトマンナン分解物およびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、市販されているものを用いることができる。
【0047】
本発明の起泡性洗浄料は、上記(a)~(d)および水などの溶媒を常法に従って混合することにより製造することができる。本発明の起泡性洗浄料には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(a)~(d)以外の成分を配合することができる。係る他の成分としては、例えば、水などの溶媒ないし分散媒、エタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール等の糖類、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、pH調整剤、着色剤、動植物エキス、ビタミン及びその誘導体、キレート剤、無機又は有機塩類、可溶化剤、防腐剤、殺菌剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤等を例示することができ、これら他の成分は、必要に応じて洗浄料調製時または洗浄料調製後に配合できる。特に、後述する実施例で示すように、両性界面活性剤は泡弾力や押し圧に与える影響は小さいため、その構造ないし種類を問わず、用いることができる。
【0048】
本発明の洗浄料の形態は特に限定されないが、例えば、液状(液体)とすることができる。
【0049】
(a)N-アシルアミノ酸塩および(b)脂肪酸アルカノールアミドの配合比率は、起泡性洗浄料の用途や所望の泡質、使用感、他成分の種類や量に応じて適宜設定することができる。特に、後述する実施例で示すように、脂肪酸アルカノールアミドはごく少量の配合で押し圧の低下効果および泡弾力の向上効果を発揮することができる。また、泡弾力の観点からは、脂肪酸アルカノールアミドの方がN-アシルアミノ酸塩よりも大幅に多くても、問題無いと考えられる。押し圧の観点からは、N-アシルアミノ酸塩:脂肪酸アルカノールアミド=4:6以下あるいは3:7以下の割合を例示することができる。
【0050】
(a)N-アシルアミノ酸塩および(b)脂肪酸アルカノールアミドの合計配合量もまた、洗浄料の用途や所望の泡質、使用感、他成分の種類や量に応じて適宜設定することができる。後述する実施例で示すように、脂肪酸アルカノールアミドはごく少量の配合で押し圧の低下効果を発揮するが、この効果を生かす観点からは、N-アシルアミノ酸塩と脂肪酸アルカノールアミドとの合計配合量として、20質量%以下を例示することができる。
【0051】
(c)糖アルコールの配合量もまた、洗浄料の用途や所望の泡質、使用感、他成分の種類や量に応じて適宜設定することができる。後述する実施例で示すように、糖アルコールはごく少量の配合(例えば0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上)で泡弾力の増大効果を発揮し、当該効果の観点からは、配合量が多くても問題無いと考えられる。押し圧の観点からは、糖アルコールの配合量は8質量%未満を例示することができる。
【0052】
(d)ガラクトマンナン分解物および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合量もまた、洗浄料の用途や所望の泡質、使用感、他成分の種類や量に応じて適宜設定することができる。後述する実施例で示すように、これらの水溶性高分子は、ごく少量の配合(例えば0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上)から泡弾力の増大効果を発揮し、当該効果の観点からは、配合量が多くても問題無いと考えられる。押し圧の観点からは、これら水溶性高分子の配合量は、6質量%未満を例示することができる。
【0053】
以下、本発明について各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。また、本実施例において、「%」は、特段の記載のない限り質量%((w/w)%)を表す。
【実施例0054】
<試験方法>試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)使用原料
図1に示す原料(全て市販品)を用いて洗浄料を製造した。
【0055】
(2)起泡性液体洗浄料の製造
起泡性液体洗浄料(以下、単に「洗浄料」という。)は、水に、各実施例に示す配合となるように各成分を混合し、溶解することにより製造した。洗浄料の水素イオン濃度は、クエン酸および/または水酸化ナトリウムを添加することによりpH6となるよう調整した。なお、各実施例における配合(表1~表14)では、市販品の使用量ではなく、各成分の固形分濃度(純濃度)を質量百分率で示す。その場合において、ラウリルグルコシドの濃度は50%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度は100%、エチルヘキシルグリセリンの濃度は100%として算出した。製造した洗浄料は、ポンプフォーマー型の泡吐出容器(容量;80mL、吐出量;0.35g、フィルター枚数;2枚、メッシュサイズ;200メッシュおよび100メッシュ)(単に「ポンプフォーマー」という場合がある。)に充填した。
【0056】
(3)押し圧の評価
洗浄料を充填したポンプフォーマーまたは充填しない空のポンプフォーマーを、粘弾性測定装置(SUN RHEO METER、COMPAC-100II、サン科学)のテーブルに固定し、ポンプヘッドを押し下げた時の最大荷重(N)を測定した。測定条件は、アダプター:無し(直径10mmのアダプター接続用端子でポンプヘッドを押す)、侵入距離:10mm、テーブルスピード:1mm/秒、検体温度:25℃とした。測定は1検体につき3回行い、最大荷重の平均値を求めた。洗浄料を充填したポンプフォーマーを検体とした場合の最大荷重について、空のポンプフォーマーを検体とした場合の最大荷重を100%とした百分率を算出し、これを押し圧増大率(%)とした。当該押し圧増大率は、その値が大きいほどポンプヘッドを押し下げるために要する力(押し圧)を増大させる効果が大きく、その値が小さいほど押し圧を増大させる効果が小さいといえる。
【0057】
(4)泡弾力の評価
洗浄料を充填したポンプフォーマーのポンプヘッドを押し下げて、泡状の洗浄料を容器(直径60mm、高さ50mm)に擦りきり充填した。この容器を粘弾性測定装置(SUN RHEO METER、COMPAC-100II、サン科学)のテーブルに固定し、アダプターで泡を押した時の荷重を測定して、体積弾性率(N)を算出した。測定条件は、アダプター:No.25(直径30mm)、侵入距離:5mm、テーブルスピード:1mm/秒、検体温度:25℃とした。測定は1検体につき3回行い、体積弾性率(N/m2)の平均値を求めた。「ノニオン界面活性剤を配合した検体における体積弾性率」について、「ノニオン界面活性剤を配合しない検体における体積弾性率」を100%とした百分率を算出し、これを弾力増大率(%)とした。当該弾力増大率は、その値が大きいほど泡弾力を増大させる効果が大きく、その値が小さいほど泡弾力を増大させる効果が小さいといえる。
【0058】
<実施例1>アニオン界面活性剤の検討
アニオン界面活性剤として、ラウロイルアスパラギン酸Na(アミノ酸系、N-アシルアミノ酸塩)、ラウレス硫酸Na(硫酸エステル塩)、オレフィン(C14-16)スルホン酸Na(スルホン酸塩)またはラウレス-6カルボン酸Na(カルボン酸塩)を用いて洗浄料を作製し、No.1~4とした。その配合を表1に示す。続いて、No.1~4について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図2に示す。
【表1】
【0059】
図2に示すように、押し圧増大率は、No.2(ラウレス硫酸Na(硫酸エステル塩))、No.3(オレフィン(C14-16)スルホン酸Na(スルホン酸塩))およびNo.4(ラウレス-6カルボン酸Na(カルボン酸塩))では107%を超えていたのに対して、No.1(ラウロイルアスパラギン酸Na(アミノ酸系、N-アシルアミノ酸塩))では101.14%と、100%と比較して増大幅が顕著に小さかった。すなわち、ラウロイルアスパラギン酸Na(N-アシルアミノ酸塩、アミノ酸系アニオン界面活性剤)を配合した洗浄料では、押し圧が殆ど増大しなかった。この結果から、起泡性液体洗浄料にN-アシルアミノ酸塩を配合することにより、泡吐出容器の押し圧の増大を抑制できることが明らかになった。
【0060】
<実施例2>ノニオン界面活性剤の検討
(1)各種のノニオン界面活性剤
ノニオン界面活性剤として、コカミドメチルMEA(脂肪酸アルカノールアミド)、ラウリン酸PEG-80ソルビタンおよびポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル)、ステアリン酸PEG-150(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)、ラウリン酸ポリグリセリル-10(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ラウレス-10(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)ならびにラウリルグルコシド(アルキルグルコシド)を用いて洗浄料を作製し、No.1~8とした。その配合を表2に示す。続いて、No.1~8について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図3に示す。
【表2】
【0061】
図3に示すように、押し圧増大率は、No.2(ラウリン酸PEG-80ソルビタン(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル))、No.3(ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル))、No.4(ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル))、No.5(ステアリン酸PEG-150(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル))、No.6(ラウリン酸ポリグリセリル-10(ポリグリセリン脂肪酸エステル))、No.7(ラウレス-10(ポリオキシエチレンアルキルエーテル))およびNo.8(ラウリルグルコシド(アルキルグルコシド))では106%を超えていた。これに対して、No.1(コカミドメチルMEA(脂肪酸アルカノールアミド))では101.14%と、100%と比較して増大幅が顕著に小さかった。すなわち、コカミドメチルMEA(脂肪酸アルカノールアミド)を配合した洗浄料では、押し圧が殆ど増大しなかった。この結果から、起泡性液体洗浄料に脂肪酸アルカノールアミドを配合することにより、泡吐出容器の押し圧の増大を抑制できることが明らかになった。
【0062】
(2)各種の脂肪酸アルカノールアミド
ノニオン界面活性剤を配合せずに洗浄料を作製し、No.1とした。また、脂肪酸アルカノールアミドとして、コカミドメチルMEA、コカミドDEAまたはコカミドMEAを用いて洗浄料を作製し、No.2~4とした。その配合を表3に示す。続いて、No.1~4について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図4に示す。
【表3】
【0063】
図4に示すように、押し圧増大率は、No.1(ノニオン界面活性剤無し)の110.40%に対して、No.2(コカミドメチルMEA)では104.72%、No.3(コカミドDEA)では105.31%、No.4(コカミドMEA)では104.40%であり、No.2~4ではNo.1よりも顕著に小さかった。また、No.2~4の間では、押し圧増大率はほぼ同等であった。
【0064】
すなわち、コカミドメチルMEA、コカミドDEAまたはコカミドMEAを配合した洗浄料では、ノニオン界面活性剤を配合しなかったものよりも、押し圧が顕著に低下した。また、当該低下効果は、コカミドメチルMEA(メチル基を有するモノエタノールアミド)、コカミドDEA(ジノエタノールアミド)およびコカミドMEA(モノエタノールアミド)を用いた場合のいずれにおいても、ほぼ同等に得られた。この結果から、起泡性液体洗浄料に脂肪酸アルカノールアミドを配合することにより、泡吐出容器の押し圧を低下できることが明らかになった。また、脂肪酸アルカノールアミドは、その種類ないし構造を問わず、当該押し圧の低下効果を発揮することが明らかになった。
【0065】
<実施例3>両性界面活性剤の検討
(1)押し圧の評価
両性界面活性剤を配合せずに洗浄料を作製し、No.1とした。また、両性界面活性剤としてラウリルベタイン(アルキルベタイン型)、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(スルホベタイン型)またはココアンホ酢酸Na(グリシン型)を用いて洗浄料を作製し、No.2~4とした。それらの配合を表4に示す。続いて、No.1~4について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図5に示す。
【表4】
【0066】
図5に示すように、押し圧増大率は、No.1(両性界面活性剤無し)の104.72%に対して、No.2(ラウリルベタイン(アルキルベタイン型))では106.99%、No.3(ラウラミドプロピルヒドロキススルタイン(スルホベタイン型))では105.94%、No.4(ココアンホ酢酸Na(グリシン型))では105.93%であり、No.2~4はNo.1と比較していずれも同等ないしやや大きかった。すなわち、ラウリルベタイン、ラウラミドプロピルヒドロキススルタインまたはココアンホ酢酸Naを配合した洗浄料の押し圧は、両性界面活性剤を配合しなかったものと同等ないしやや大きかった。この結果から、両性界面活性剤は、起泡性液体洗浄料において泡吐出容器の押し圧の低下効果ないし増大抑制効果を発揮しないことが明らかになった。
【0067】
(2)泡弾力の評価
両性界面活性剤を配合しない洗浄料としてNo.1-1およびNo.1-2を作製した。また、ラウリルベタインを配合する洗浄料としてNo.2-1およびNo.2-2を、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタインを配合する洗浄料としてNo.3-1およびNo.3-2を、ココアンホ酢酸Naを配合する洗浄料としてNo.4-1およびNo.4-2を、それぞれ作製した。なお、No.1-2、No.2-2、No.3-2およびNo.4-2は、ノニオン界面活性剤を配合せず、その他はNo.1-1、No.2-1、No.3-1およびNo.4-1とそれぞれ同組成の洗浄料である。これらの配合を表5に示す。
【表5】
【0068】
続いて、No.1-1~No.4-2について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.1-1では、No.1-2の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。No.2-1、No.3-1およびNo.4-1も同様に、No.2-2、No.3-2およびNo.4-2の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図6に示す。
【0069】
図6に示すように、弾力増大率は、No.1-1(両性界面活性剤無し)の104.65%に対して、No.2-1(ラウリルベタイン(アルキルベタイン型))では102.99%、No.3-1(ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(スルホベタイン型))では102.74%、No.4-1(ココアンホ酢酸Na(グリシン型))では103.06%であり、No.2~4はNo.1と同等であった。すなわち、ラウリルベタイン(アルキルベタイン型両性界面活性剤)、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(スルホベタイン型両性界面活性剤)またはココアンホ酢酸Na(グリシン型両性界面活性剤)を配合した洗浄料では、両性界面活性剤を配合しないものと比較して、泡弾力の増大効果がみとめられなかった。この結果から、両性界面活性剤は、起泡性液体洗浄料において泡弾力の増大効果を発揮しないことが明らかになった。
【0070】
<実施例4>糖アルコールの検討
(1)押し圧の評価
糖アルコールを配合せずに洗浄料を作製し、No.1とした。また、糖アルコールとして、加水分解水添デンプンA、加水分解水添デンプンB、加水分解水添デンプンC、加水分解水添デンプンD、ソルビトールおよび還元麦芽糖水飴を用いて洗浄料を作製し、No.2~7とした。洗浄料の配合を表6に、各糖アルコールの糖組成を表7に、それぞれ示す。続いて、No.1~7について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図7に示す。
【表6】
【0071】
【0072】
図7に示すように、押し圧増大率は、No.1(糖アルコール無し)の102.04%に対して、No.2(加水分解水添デンプンA)が107.00%、No.3(加水分解水添デンプンB)が107.10%、No.4(加水分解水添デンプンC)が107.87%、No.5(加水分解水添デンプンD)が106.86%、No.6(ソルビトール)が109.29%、No.7(還元麦芽糖水飴)が107.49%であり、No.2~7はNo.1と比較していずれもやや大きかった。また、No.2~7の間では、押し圧増大率はほぼ同等であった。
【0073】
すなわち、加水分解水添デンプンA、加水分解水添デンプンB、加水分解水添デンプンC、加水分解水添デンプンD、ソルビトールまたは還元麦芽糖水飴を配合した洗浄料の押し圧は、糖アルコールを配合しなかったものと比較して、いずれもやや大きかった。この結果から、起泡性液体洗浄料に糖アルコールを配合すると、押し圧がやや増大することが明らかになった。また、当該押し圧の増大効果は、糖アルコールの種類ないし構造を問わず、同程度に発揮されることが明らかになった。
【0074】
(2)泡弾力の評価
糖アルコールを配合しない洗浄料としてNo.1およびNo.8を作製した。また、各種の糖アルコールを配合する洗浄料として、No.2~7を作製した。なお、No.8は、ノニオン界面活性剤および糖アルコールを配合せず、その他はNo.1~7と同組成の洗浄料である。これらの配合を表8に示す。続いて、No.1~8について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.1~7では、No.8の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図8に示す。
【表8】
【0075】
図8に示すように、弾力増大率は、No.1(糖アルコール無し)の102.07%に対して、No.2(加水分解水添デンプンA)では123.40%、No.7(還元麦芽糖水飴)では123.53%であり、No.1よりも顕著に大きかった。一方、No.3(加水分解水添デンプンB)では101.52%、No.4(加水分解水添デンプンC)では102.35%、No.5(加水分解水添デンプンD)では105.45%、No.6(ソルビトール)では102.90%であり、No.1と同等であった。すなわち、糖アルコールとして加水分解水添デンプンAまたは還元麦芽糖水飴を配合した洗浄料では、弾力増大率が顕著に大きかった。この結果から、起泡性液体洗浄料に「単糖を1~10質量%、二糖を6~12質量%、三糖を7~12質量%、四糖を5~10質量%および五糖以上を64~82質量%含有する糖組成の加水分解水添デンプン」、「デキストロース当量が14以上16以下の加水分解デンプンを還元してなる加水分解水添デンプン」または「還元麦芽糖水飴」を配合することにより、泡弾力を顕著に増大できることが明らかになった。
【0076】
<実施例5>水溶性高分子の検討
(1)押し圧の評価
水溶性高分子を配合せずに洗浄料を作製し、No.1とした。また、水溶性高分子として、ガラクトマンナン分解物、イヌリンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて洗浄料を作製し、No.2~4とした。これらの配合を表9に示す。続いて、No.1~4について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図9に示す。
【表9】
【0077】
図9に示すように、押し圧増大率は、No.1(水溶性高分子無し)の107.00%に対して、No.2(ガラクトマンナン分解物)が107.00%、No.3(イヌリン)が112.36%、No.4(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が108.16%であった。すなわち、No.3はNo.1よりも大きかったのに対して、No.2およびNo.4はNo.1と同等であった。すなわち、ガラクトマンナン分解物またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合した洗浄料の押し圧は、水溶性高分子を配合しなかったものと同等であった。この結果から、起泡性液体洗浄料に水溶性高分子を配合する場合に、ガラクトマンナン分解物またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いると、押し圧の増大を抑制できることが明らかになった。
【0078】
(2)泡弾力の評価
水溶性高分子を配合しない洗浄料としてNo.1およびNo.5を作製した。また、各種の水溶性高分子を配合する洗浄料として、No.2~4を作製した。なお、No.5は、ノニオン界面活性剤、糖アルコールおよび水溶性高分子を配合せず、その他はNo.1~4と同組成の洗浄料である。これらの配合を表10に示す。続いて、No.1~5について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.1~4では、No.5の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図10に示す。
【表10】
【0079】
図10に示すように、弾力増大率は、No.1(水溶性高分子無し)の123.40%に対して、No.2(ガラクトマンナン分解物)では125.74%、No.3(イヌリン)では126.43%、No.4(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)では127.61%であり、No.2~4はいずれもNo.1よりやや大きかった。また、No.2~4の間では、弾力増大率はほぼ同等であった。すなわち、ガラクトマンナン分解物、イヌリンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合した洗浄料では、泡弾力の増大効果がやや大きくなった。この結果から、起泡性液体洗浄料に水溶性高分子を配合することにより、泡弾力をやや増大できることが明らかになった。また、泡弾力の増大効果は、水溶性高分子の分子量ないし構造を問わず、同程度に発揮されることが明らかになった。
【0080】
<実施例6>界面活性剤の配合割合の検討
ラウロイルアスパラギン酸Na(アニオン界面活性剤)とコカミドメチルMEA(ノニオン界面活性剤)との配合割合(本実施例において、「アニオン:ノニオン」と略記する。)を10:0~5:5まで変化させて洗浄料を作製し、No.1~6とした。それらの配合を表11に示す。
【表11】
【0081】
(1)押し圧の評価
No.1~6について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図11に示す。
図11に示すように、押し圧増大率は、No.1(アニオン:ノニオン=10:1)の116.85%に対して、No.2(アニオン:ノニオン=9.5:0.5)では107.94%、No.3(アニオン:ノニオン=9:1)では103.52%、No.4(アニオン:ノニオン=8:2)では105.69%、No.5(アニオン:ノニオン=7:3)では106.83%、No.6(アニオン:ノニオン=5:5)では110.84%であり、No.2~6はNo.1と比較していずれも顕著に小さかった。
【0082】
すなわち、アニオン:ノニオン=9.5:0.5~5:5の配合割合でラウロイルアスパラギン酸NaとコカミドメチルMEAとを配合した洗浄料では、配合しなかったものと比較して押し圧が顕著に小さくなった。この結果から、起泡性液体洗浄料において、脂肪酸アルカノールアミドは、ごく少量の配合で押し圧の低下効果が得られることが明らかになった。また、脂肪酸アルカノールアミドの配合割合は、N-アシルアミノ酸塩:脂肪酸アルカノールアミド=5:5以下、4:6以下あるいは3:7以下であれば、押し圧の低下効果が得られると考えられた。
【0083】
(2)泡弾力の評価
No.1~6について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.2~6では、No.1の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図12に示す。
図12に示すように、弾力増大率は、No.1(アニオン:ノニオン=10:0)の100%に対して、No.2(アニオン:ノニオン=9.5:0.5)では126.37%、No.3(アニオン:ノニオン=9:1)では131.53%、No.4(アニオン:ノニオン=8:2)では127.81%、No.5(アニオン:ノニオン=7:3)では126.97%、No.6(アニオン:ノニオン=5:5)では126.54%であり、No.2~6はNo.1と比較していずれも顕著に大きかった。また、No.2~4の間では、弾力増大率はほぼ同等であった。
【0084】
すなわち、コカミドメチルMEAを配合した洗浄料では、配合しなかったものと比較して泡弾力が顕著に大きくなった。また、泡弾力の増大幅は、コカミドメチルMEAの配合割合にかかわらずほぼ同等であった。この結果から、起泡性液体洗浄料において、脂肪酸アルカノールアミドはその配合割合の多少にかかわらず、泡弾力を増大できることが明らかになった。
【0085】
<実施例7>界面活性剤の配合量の検討
ラウロイルアスパラギン酸Na(アニオン界面活性剤)の配合量を10%とし、コカミドメチルMEA(ノニオン界面活性剤)の配合量を0~10%まで変化させて洗浄料を作製し、No.1~6とした。すなわち、No.1~6は、ラウロイルアスパラギン酸NaおよびコカミドメチルMEAの合計配合量を10~20%まで変化させた洗浄料である。それらの配合を表12に示す。No.1~6について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図13に示す。
【表12】
【0086】
図13に示すように、押し圧増大率は、No.1(アニオン10%、ノニオン0%)の116.85%に対して、No.2(アニオン10%、ノニオン1%)では105.40%、No.3(アニオン10%、ノニオン1.5%)では103.20%、No.4(アニオン10%、ノニオン2%)では105.69%、No.5(アニオン10%、ノニオン5%)では105.17%、No.6(アニオン10%、ノニオン10%)では115.95%であり、No.2~6はNo.1と比較していずれも小さかった。特に、No.2~5がNo.1よりも顕著に小さく、No.6はNo.1よりもやや小さかった。
【0087】
すなわち、コカミドメチルMEAを1~10%(ラウロイルアスパラギン酸NaとコカミドメチルMEAとを、合計配合量で10~20%)配合した洗浄料では、配合しなかったものと比較して押し圧が小さくなった。この結果から、起泡性液体洗浄料において、脂肪酸アルカノールアミドは、ごく少量の配合で押し圧の低下効果が得られることが明らかになった。また、N-アシルアミノ酸塩および脂肪酸アルカノールアミドの合計配合量は、押し圧の低下効果の観点からは、20%以下が好ましいことが明らかになった。
【0088】
<実施例8>糖アルコールの配合量の検討
ノニオン界面活性剤も糖アルコールも配合しない洗浄料としてNo.1を作製した。また、加水分解水添デンプンA(糖アルコール)を1~16%配合した洗浄料としてNo.2~6を作製した。それらの配合を表13に示す。
【表13】
【0089】
(1)押し圧の評価
No.1~6について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図14に示す。
図14に示すように、押し圧増大率は、No.1(糖アルコールもノニオン界面活性剤も無し)の110.40%に対して、No.2(加水分解水添デンプンA 1%)では107.94%、No.3(加水分解水添デンプンA 2%)では107.00%、No.4(加水分解水添デンプンA 4%)では108.49%であり、No.2~4はNo.1と比較していずれも小さかった。一方、No.5(加水分解水添デンプンA 8%)では113.05%、No.6(加水分解水添デンプンA 16%)では112.85%であり、No.5~6はNo.1よりもやや大きかった。
【0090】
すなわち、加水分解水添デンプンAを1%、2%および4%配合した洗浄料では、ノニオン界面活性剤を配合しない洗浄料よりも押し圧が小さかった。一方で、加水分解水添デンプンAを8%および16%配合した洗浄料では、ノニオン界面活性剤を配合しない洗浄料よりも押し圧が大きかった。この結果から、脂肪酸アルカノールアミドによる押し圧の低下効果を生かす観点からは、糖アルコールの配合量は8%未満が好ましいことが明らかになった。
【0091】
(2)泡弾力の評価
No.1~6について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.2~6では、No.1の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図15に示す。
図15に示すように、弾力増大率は、No.1(糖アルコールもノニオン界面活性剤も無し)の100%に対して、No.2(加水分解水添デンプンA1%)では123.95%、No.3(加水分解水添デンプンA2%)では123.40%、No.4(加水分解水添デンプンA4%)では123.88%、No.5(加水分解水添デンプンA8%)では131.68%、No.6(加水分解水添デンプンA16%)では151.76%であり、No.2~6はNo.1と比較していずれも顕著に大きかった。
【0092】
すなわち、加水分解水添デンプンAを少量でも配合した洗浄料では、配合しなかったものと比較して泡弾力が顕著に大きくなった。この結果から、起泡性液体洗浄料において、糖アルコールは配合量が少量であっても、泡弾力を増大できることが明らかになった。
【0093】
<実施例9>水溶性高分子の配合量の検討
ノニオン界面活性剤、糖アルコールおよび水溶性高分子のいずれも配合しない洗浄料としてNo.1を作製した。また、ガラクトマンナン分解物(水溶性高分子)を0~6%配合した洗浄料としてNo.2~6を作製した。それらの配合を表14に示す。
【表14】
【0094】
(1)押し圧の評価
No.1~6について押し圧を評価して押し圧増大率を求めた。その結果を
図16に示す。
図16に示すように、押し圧増大率は、No.1(ノニオン界面活性剤、糖アルコールおよび水溶性高分子のいずれも無し)の110.40%に対して、No.2(ガラクトマンナン分解物0%)では107.00%、No.3(ガラクトマンナン分解物1%)では107.00%、No.4(ガラクトマンナン分解物2%)では106.10%、No.5(ガラクトマンナン分解物4%)では108.62%であり、No.2~5はNo.1と比較していずれも小さかった。一方、No.6(ガラクトマンナン分解物8%)では111.67%であり、No.1よりもやや大きかった。
【0095】
すなわち、ガラクトマンナン分解物を1%、2%および4%配合した洗浄料では、ノニオン界面活性剤を配合しない洗浄料よりも押し圧が小さく、ノニオン界面活性剤を配合した洗浄料と同程度の押し圧であった。一方で、ガラクトマンナン分解物を6%配合した洗浄料では、ノニオン界面活性剤を配合しない洗浄料よりも押し圧が大きかった。この結果から、脂肪酸アルカノールアミドによる押し圧の低下効果を生かす観点からは、水溶性高分子の配合量は6%未満が好ましいことが明らかになった。
【0096】
(2)泡弾力の評価
No.1~6について泡弾力を評価して弾力増大率を求めた。すなわち、No.2~6では、No.1の体積弾性率を100%とした体積弾性率の百分率を算出して弾力増大率とした。その結果を
図17に示す。
図17に示すように、弾力増大率は、No.1(ノニオン界面活性剤、糖アルコールおよび水溶性高分子のいずれも無し)の100%に対して、No.2(ガラクトマンナン分解物0%)では123.40%、No.3(ガラクトマンナン分解物1%)では125.74%、No.4(ガラクトマンナン分解物2%)では131.82%、No.5(ガラクトマンナン分解物4%)では149.21%、No.6(ガラクトマンナン分解物6%)では161.08%であり、No.2~6はNo.1と比較していずれも顕著に大きかった。また、No.3~6は、No.2と比較しても大きかった。
【0097】
すなわち、ガラクトマンナン分解物は、その配合量が大きいほど泡弾力が大きくなる傾向であり、1%の配合量であっても泡弾力の増大効果が得られた。この結果から、起泡性液体洗浄料において、水溶性高分子は配合量が少量であっても、泡弾力を増大できることが明らかになった。