(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012136
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230118BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20230118BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20230118BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230118BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230118BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20230118BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230118BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J133/00
C09J175/04
C09J11/08
B32B3/26 A
B32B27/00 M
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115610
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】市川 大翔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02B
4F100CB05
4F100CB05B
4F100DJ01
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4F100GB41
4F100JA13
4F100JA13B
4F100JK06
4F100JL13
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4J004AA10
4J004AA13
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB04
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4J004FA05
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4J040EF282
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4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA08
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】高温環境下でも基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくく、基材と粘着剤層との間の接着性にも優れた粘着テープを提供する。
【解決手段】基材と、少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記基材は、ポリイミド発泡体であり、前記粘着剤層は、前記基材に対する含浸距離が5μm以上である粘着テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記基材は、ポリイミド発泡体であり、
前記粘着剤層は、前記基材に対する含浸距離が5μm以上である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
更に、前記粘着剤層上に剥離層を有し、前記剥離層は、前記粘着剤層に対する180°剥離力が100mN/25mm以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記ポリイミド発泡体は、連続気泡構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記ポリイミド発泡体は、密度が100kg/m3以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル共重合体を含有し、ゲル分率が20重量%以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層は、更に、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記イソシアネート系架橋剤は、イソシアヌレート骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層は、更に、軟化点150℃以上の粘着付与樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層は、300℃での重量減少率が10重量%以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の電子機器の内部には、部品間の隙間を埋めるために、発泡体を基材とする粘着テープが用いられることがある。発泡体は適度な柔軟性を有することから、発泡体を基材とする粘着テープを圧縮しながら該粘着テープを介して部品を貼り合わせることにより、部品間の隙間を埋めつつ部品を良好に固定することができる。
【0003】
発泡体としては、例えば、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体等が用いられる。このような発泡体を基材とする粘着テープとして、例えば、特許文献1及び2には、基材層の少なくとも片面にアクリル系粘着剤層が積層一体化されており、該基材層が特定の架橋度及び気泡のアスペクト比を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートである衝撃吸収テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-242541号公報
【特許文献2】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置等の電子機器の製造においては、部品の実装方法としていわゆるはんだリフロー工程が広く採用されている。リフロー工程では、はんだの融点以上の温度(通常は250℃以上)に加熱することで、半導体チップ、半導体パッケージ等の部品がはんだバンプを介して実装基板等に接合される。しかしながら、半導体チップ、半導体パッケージ等の部品の内部に発泡体を基材とする粘着テープが用いられている場合、リフロー工程において粘着テープが高温に晒されることで、基材である発泡体の厚み、物性(特に、圧縮特性)等が変化してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、高温環境下でも基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくく、基材と粘着剤層との間の接着性にも優れた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材と、少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープであって、上記基材は、ポリイミド発泡体であり、上記粘着剤層は、上記基材に対する含浸距離が5μm以上である粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、基材と、少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープにおいて、基材としてポリイミド発泡体を用いることにより、高温環境下での基材の厚み及び圧縮特性の変化を抑制できることを見出した。一方、基材としてポリイミド発泡体を用いた場合には、基材と粘着剤層との間の接着性(アンカー性)が不充分となり、剥離層(セパレータ)の剥離時等に基材と粘着剤層との界面での剥離が生じやすくなる。本発明者らは、粘着剤層の基材に対する含浸距離を一定値以上に調整することにより、基材と粘着剤層との間の接着性を向上させることもできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の粘着テープは、基材と、少なくとも1つの粘着剤層とを有する。
上記基材は、ポリイミド発泡体である。
発泡体は適度な柔軟性を有することから、上記基材が発泡体であることで、粘着テープを圧縮しながら該粘着テープを介して部品を貼り合わせることにより、部品間の隙間を埋めつつ部品を良好に固定することができる。更に、上記基材が上記ポリイミド発泡体であることで、高温環境下でも上記基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくくなる。
【0010】
上記ポリイミド発泡体は、連続気泡構造を有していても独立気泡構造を有していてもよいが、連続気泡構造を有することが好ましい。上記ポリイミド発泡体が連続気泡構造を有することで、気泡内の空気等の気体が温度変化によって膨張又は収縮した場合でも気泡構造が変化しにくくなり、高温環境下でも上記基材の厚み及び圧縮特性がより変化しにくくなる。
なお、連続気泡構造であることは、ポリイミド発泡体を切断して得た断面を光学顕微鏡(例えば、VHX-6000、キーエンス社製)により100~500倍の倍率で観察したとき、気泡が連続している箇所が観察されることにより判断できる。
【0011】
上記ポリイミド発泡体の密度は特に限定されないが、好ましい上限は100kg/m3である。上記密度が100kg/m3以下であれば、上記ポリイミド発泡体の柔軟性が充分に高くなるため、粘着テープを圧縮しながら該粘着テープを介して部品を貼り合わせることにより、部品間の隙間を埋めつつ部品をより良好に固定することができる。上記密度のより好ましい上限は50kg/m3、更に好ましい上限は30kg/m3である。
上記密度の下限は特に限定されないが、上記ポリイミド発泡体の強度を確保して高温環境下での厚み及び圧縮特性の変化を抑制する観点から、好ましい下限は5kg/m3、より好ましい下限は10kg/m3である。
なお、密度は、JIS K 7222に準拠して電子比重計(例えば、ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して測定できる。
【0012】
上記ポリイミド発泡体は特に限定されず、例えば、ジアミン化合物と酸無水物とを反応させてイミド化合物を得るとともに発泡させることにより製造することができる。
上記発泡させる方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波を照射する方法、テトラカルボン酸ジエステル成分(酸無水物成分)とジアミン成分とからなるポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体粉末を加熱して発泡させ、イミド化する方法等が挙げられる。
【0013】
上記ジアミン化合物として、例えば、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物等が挙げられる。なかでも、芳香族ジアミン化合物が好ましい。
上記芳香族ジアミン化合物は特に限定されず、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、9,10-ジアミノフェナントレン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,7-ジアミノ-2-メトキシフルオレン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノアントラキノン、2,6-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、1,8-ジアミノナフタレン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,4-クメンジアミン、1,3-ビスアミノメチルベンゼン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2-クロロ-1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ビス(アミノ-3-クロロフェニル)エタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルジアミノフルオレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノフェノール、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、4,4’-ジアミノフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、2,2-ビス(4,(4アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-オキシジアニリン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、Bisaniline M、Bisaniline P、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トリジンスルホン、メチレンビス(アントラニル酸)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、4,4’-ジアミノベンザニリド、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ポリオキシアルキレンジアミン類(例えば、HuntsmanのJeffamine D-230、D400、D-2000及びD-4000)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。これらの芳香族ジアミン化合物は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミンが好ましい。
【0014】
上記脂肪族ジアミン化合物は特に限定されず、例えば、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ダイマージアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノメンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、ジアミノマレオニトリル、1,3-ジアミノペンタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ(5.2.1.02,6)デカン等が挙げられる。これらの脂肪族ジアミン化合物は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカンが好ましい。
【0015】
上記酸無水物として、例えば、芳香族酸無水物、脂環式基を有する酸無水物等が挙げられる。なかでも、芳香族酸無水物が好ましい。
上記芳香族酸無水物は特に限定されず、例えば、ピロメリット酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-スルホニルジフタル酸、1-トリフルオロメチル-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)-ビス(フタル酸)等の無水物が挙げられる。これらの芳香族酸無水物は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、ピロメリット酸の無水物が好ましい。
【0016】
上記ポリイミド発泡体のうち、市販品としては、例えば、SOLIMIDE HT-340(Boyd社製)が挙げられる。より具体的には例えば、SOLIMIDE HT-340を厚み方向にスライスしたシート(密度7kg/m3、25%圧縮強度6kPa、厚み1000μm)やSOLIMIDE HT-340を厚み方向に加熱圧縮したシート(密度49kg/m3、25%圧縮強度35kPa、厚み1000μm)等を用いることができる。
【0017】
上記ポリイミド発泡体の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は5000μmである。上記厚みが上記範囲内であれば、粘着テープが適度な厚みを有することができ、粘着テープを圧縮しながら該粘着テープを介して部品を貼り合わせることにより、部品間の隙間を埋めつつ部品をより良好に固定することができる。上記厚みのより好ましい下限は200μm、より好ましい上限は2000μmであり、更に好ましい下限は500μm、更に好ましい上限は1500μmである。
【0018】
本発明の粘着テープの全厚みにおける上記ポリイミド発泡体の厚みの割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましい。上記ポリイミド発泡体の厚みの割合が50%以上であれば、粘着テープは好適な圧縮特性を得ることができる。本発明の粘着テープの全厚みにおける上記ポリイミド発泡体の厚みの割合の上限は特に限定されないが、通常想定される形態では99%以下である。上記ポリイミド発泡体の厚みの割合のより好ましい下限は70%、更に好ましい下限は80%である。
なお、ここにいう粘着テープの全厚みは、剥離層の厚みを含まないものとする。
【0019】
上記粘着剤層は、上記基材に対する含浸距離の下限が5μmである。上記含浸距離が5μm以上であれば、上記基材が上記ポリイミド発泡体であっても、上記基材と上記粘着剤層との間の接着性が向上し、剥離層の剥離時等に上記基材と上記粘着剤層との界面での剥離が生じにくくなる。上記含浸距離の好ましい下限は8μm、より好ましい下限は10μmである。
上記含浸距離の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の粘着力を確保する観点から、好ましい上限は20μm、より好ましい上限は15μmである。
なお、粘着剤層の基材に対する含浸距離は、以下のようにして求めることができる。
粘着テープを、粘着剤層と基材との積層方向に平行な面で切断して得た断面を光学顕微鏡(例えば、VHX-6000、キーエンス社製)により200~500倍の倍率で観察する。観察視野内における粘着剤層の最大厚みb(μm)及び最小厚みc(μm)を特定する。これを任意の20箇所(20箇所分の観察視野)について繰り返し、各視野における最大厚みbについての平均値bave(μm)及び最小厚みcについての平均値cave(μm)を算出し、bave-cave(μm)を粘着剤層の基材に対する含浸距離とする。なお、観察視野内における粘着剤層の最大厚みb(μm)とは、断面画像において、粘着剤層の表面(剥離層が積層されている場合は剥離層と粘着剤層との界面)と、粘着剤層/基材界面(粘着剤層と基材との界面)との距離の最大値を意味する。同様に、観察視野内における粘着剤層の最小厚みc(μm)とは、断面画像において、粘着剤層の表面(剥離層が積層されている場合は剥離層と粘着剤層との界面)と、粘着剤層/基材界面(粘着剤層と基材との界面)との距離の最小値を意味する。
【0020】
図1に、本発明の粘着テープにおいて、粘着剤層の基材に対する含浸距離を求める際に用いられる、観察視野内における粘着剤層の最大厚みb(μm)及び最小厚みc(μm)を示す。
図1において、粘着テープ1は、基材2と、粘着剤層3と、剥離層4とを有する。粘着テープ1を光学顕微鏡(例えば、VHX-6000、キーエンス社製)により200~500倍の倍率で観察し、観察視野内における粘着剤層3の最大厚みb(μm)及び最小厚みc(μm)を特定する。最大厚みb(μm)についての平均値b
ave(μm)と最小厚みcについての平均値c
ave(μm)との差(b
ave-c
ave)を、粘着剤層3の基材2に対する含浸距離とする。なお、
図1に示す粘着テープ1は剥離層4を有するが、本発明の粘着テープはこのような剥離層を有していなくてもよい。
【0021】
上記粘着剤層の上記基材に対する含浸距離を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記基材の密度、25%圧縮強度等を調整する方法、上記粘着剤層のゲル分率、貯蔵弾性率等を調整する方法が挙げられる。更に、粘着テープを製造する際に上記基材と上記粘着剤層とをラミネートするときの圧力、温度、時間等を調整する方法等が挙げられる。
【0022】
上記粘着剤層は特に限定されないが、上記粘着剤層の上記基材に対する含浸距離を上記範囲に調整する観点からは、(メタ)アクリル共重合体を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル共重合体は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体に一般的に用いられるモノマーに由来する構成単位を含有することができる。このようなモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、より高い粘着力を発揮できることから、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0023】
また、上記(メタ)アクリル共重合体を紫外線重合法により調製する場合には、上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
【0024】
上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することで、架橋剤を併用したときに上記(メタ)アクリル共重合体の分子鎖間が架橋する。その際の架橋度を調整することで、上記粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
【0025】
上記架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アミド基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
上記ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0026】
上記(メタ)アクリル共重合体における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層のゲル分率を好ましい範囲に調整する観点から、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0027】
上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましい下限は50万、好ましい上限は200万である。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であることで、上記粘着剤層のゲル分率を好ましい範囲に調整しやすくなるため、上記粘着剤層の上記基材に対する含浸距離を上記範囲に調整しやすくなり、上記基材と上記粘着剤層との間の接着性がより向上する。また、上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であることで、上記粘着剤層が充分な粘着力を発揮でき、粘着テープとして好適に用いられるものとなる。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)のより好ましい下限は70万、より好ましい上限は150万である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
なお、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、カラムとしてGPC LF-804(昭和電工社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ法により、ポリスチレン換算で求めることができる。
GPC装置:Waters社製、2690 Separations Model
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.4mL/min
検出器:示差屈折計RI
カラム温度(測定温度):40℃
注入量:20μL
【0028】
上記(メタ)アクリル共重合体を調製する方法は特に限定されず、上記構成単位の由来となるモノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させる方法等が挙げられる。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。中でも、合成が簡便であることから溶液重合が好ましい。
【0029】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記粘着剤層は、架橋剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤層が上記架橋剤を含有することで、上記(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記(メタ)アクリル共重合体の分子鎖間が架橋する。その際の架橋度を調整することで、上記粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、耐熱性が高く、高温環境下でも上記粘着剤層の発泡、剥離等が生じにくくなることから、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。上記イソシアネート系架橋剤は、耐熱性がより高いことから、イソシアヌレート骨格を有する化合物であることが好ましい。
【0032】
上記粘着剤層における上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0033】
上記粘着剤層は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。
上記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することにより、上記粘着剤層は、被着体に対してより高い接着力を有することができる。
【0034】
上記粘着付与樹脂の軟化温度は特に限定されないが、好ましい下限は150℃、好ましい上限は180℃である。上記軟化温度が150℃以上であれば、上記粘着剤層の耐熱性が高くなり、高温環境下でも上記粘着剤層の発泡、剥離等が生じにくくなる。上記軟化温度が180℃以下であれば、上記粘着剤層が柔軟になりやすく、被着体に対してより高い接着力を有することができる。上記軟化温度のより好ましい下限は152℃、より好ましい上限は170℃であり、更に好ましい下限は155℃、更に好ましい上限は165℃である。
なお、軟化温度とは、JIS K2207環球法により測定した軟化温度である。
【0035】
上記粘着付与樹脂の水酸基価は特に限定されないが、好ましい下限は25、好ましい上限は55であり、より好ましい下限は30、より好ましい上限は50である。
なお、水酸基価は、JIS K1557(無水フタル酸法)により測定できる。
【0036】
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、ロジンエステル系樹脂等のロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。なかでも、ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び、これらの組み合わせが好ましく、テルペンフェノール樹脂がより好ましい。
【0037】
上記ロジンエステル系樹脂とは、アビエチン酸を主成分とするロジン樹脂、不均化ロジン樹脂及び水添ロジン樹脂、アビエチン酸等の樹脂酸の二量体(重合ロジン樹脂)等を、アルコールによってエステル化させて得られた樹脂である。エステル化に用いたアルコールの水酸基の一部がエステル化に使用されずに樹脂内に含有されることで、水酸基価が上記範囲に調整される。アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。
なお、ロジン樹脂をエステル化した樹脂がロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂をエステル化した樹脂が不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂をエステル化した樹脂が水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂をエステル化した樹脂が重合ロジンエステル樹脂である。
上記テルペンフェノール樹脂とは、フェノールの存在下においてテルペンを重合させて得られた樹脂である。
【0038】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が60重量部である。上記含有量が10重量部以上であれば、上記粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が上がるため、バルクの凝集力がより上がる。上記含有量が60重量部以下であれば、ガラス転移温度(Tg)の上昇により上記粘着剤層が硬くなりすぎることが抑えられ、上記粘着剤層は、充分な粘着力を有することができる。上記含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい下限は20重量部、更に好ましい上限は45重量部である。
【0039】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0040】
上記粘着剤層のゲル分率は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は99重量%である。上記ゲル分率が上記範囲であることで、上記粘着剤層の上記基材に対する含浸距離を上記範囲に調整しやすくなり、上記基材と上記粘着剤層との間の接着性がより向上する。また、上記ゲル分率が上記範囲であることで、上記粘着剤層が充分な粘着力を発揮でき、粘着テープとして好適に用いられるものとなる。上記ゲル分率のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は90重量%であり、更に好ましい下限は50重量%、更に好ましい上限は80重量%である。
なお、ゲル分率は、例えば、(メタ)アクリル共重合体の組成及び重量平均分子量(Mw)、架橋剤の種類及び量、粘着剤層の養生時間等によって調整できる。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(1)のように酢酸エチルに浸漬する前の粘着剤層の重量に対する、酢酸エチルに浸漬し乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W2:酢酸エチル浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0041】
上記粘着剤層の300℃での重量減少率は特に限定されないが、好ましい上限は10重量%である。上記300℃での重量減少率が10重量%以下であれば、上記粘着剤層の耐熱性が高くなり、高温環境下でも上記粘着剤層の発泡、剥離等が生じにくくなる。上記300℃での重量減少率のより好ましい上限は8重量%であり、更に好ましい上限は5重量%である。上記300℃での重量減少率の下限は特に限定されず、小さいほど好ましい。
なお、300℃での重量減少率は、例えば、(メタ)アクリル共重合体の組成及び重量平均分子量(Mw)、架橋剤の種類及び量、粘着付与樹脂の種類及び量等によって調整できる。
なお、300℃での重量減少率は、例えば、粘着剤層を10mg採取しアルミカップに入れ、熱重量測定装置(例えば、STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて10℃/分の昇温速度にて測定することができる。
【0042】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は30μm、好ましい上限は150μmである。上記粘着剤層の厚みが30μm以上であることで、粘着テープが充分な粘着力を発揮することができ、また、粘着テープが適度な厚みを有することができるため、粘着テープを圧縮しながら該粘着テープを介して部品を貼り合わせることにより、部品間の隙間を埋めつつ部品をより良好に固定することができる。上記粘着剤層の厚みが150μm以下であることで、粘着テープの加工性が向上する。上記粘着剤層の厚みのより好ましい上限は100μm、更に好ましい上限は75μmである。
なお、粘着剤層の厚みとは、粘着剤層の基材に対する含浸距離を上述したように求めたときの粘着剤層の最大厚みbについての平均値bave(μm)を意味する。
【0043】
本発明の粘着テープは、上記基材と、少なくとも1つの上記粘着剤層とを有していれば特に限定されず、上記基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0044】
本発明の粘着テープは、更に、上記粘着剤層上に剥離層(セパレータ)を有していてもよい。
上記剥離層の上記粘着剤層に対する180°剥離力は特に限定されないが、好ましい上限が100mN/25mmである。上記180°剥離力が100mN/25mm以下であれば、上記剥離層の剥離時に上記剥離層を容易に剥離することができ、基材破壊を抑制することができる。上記180°剥離力のより好ましい上限は90mN/25mm、更に好ましい上限は50mN/25mmである。
上記180°剥離力の下限は特に限定されないが、粘着テープの使用時まで上記粘着剤層を保護する観点から、好ましい下限は10mN/25mmである。
なお、剥離層の粘着剤層に対する180°剥離力は、剥離層の表面にコーティングされている離型処理層(シリコーン樹脂、アルキル樹脂等からなる層)の種類、架橋度、厚み等によって調整できる。
なお、剥離層の粘着剤層に対する180°剥離力は、JIS Z 0237に準拠し、引張試験機にて300mm/分の速度で180°方向(折り返し方向)に剥離層を剥離することで測定できる。
【0045】
上記剥離層は特に限定されず、例えば、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。なお、上記剥離層に離型処理が施されている場合、上記剥離層は、離型処理面が上記粘着剤層に対向した状態となるようにして上記粘着剤層上に積層される。
上記剥離層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は12μm、好ましい上限は100μmであり、より好ましい下限は25μm、より好ましい上限は75μmである。
【0046】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、以下のような方法が挙げられる。
まず、(メタ)アクリル共重合体、必要に応じて、架橋剤、粘着付与樹脂等に溶剤を加えて粘着剤aの溶液を作製する。得られた粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルム(剥離層)をその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。次いで、上記離型フィルム(剥離層)とは別の離型フィルム(剥離層)を用意し、この離型フィルム(剥離層)の離型処理面に粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルム(剥離層)の表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルム(剥離層)で覆われた粘着テープを得ることができる。
【0047】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧してもよい。これによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルム(剥離層)で覆われた粘着テープを得ることができる。
【0048】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、半導体装置等の電子機器の製造において好適に用いられる。なかでも、半導体装置等の電子機器の内部において部品間の隙間を埋めるために好適に用いられる。
本発明の粘着テープは、高温環境下でも基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくく、基材と粘着剤層との間の接着性にも優れることから、はんだリフロー工程等において粘着テープが高温に晒される場合であっても好適に用いられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、高温環境下でも基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくく、基材と粘着剤層との間の接着性にも優れた粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の粘着テープにおいて、粘着剤層の基材に対する含浸距離を求める際に用いられる、観察視野内における粘着剤層の最大厚みb及び最小厚みcを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0052】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル共重合体の調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、モノマーを2時間かけて滴下添加した。モノマーとしてはブチルアクリレート(BA)96.9重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)0.1重量部、及び、アクリル酸(Aac)3重量部を用いた。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、(メタ)アクリル共重合体含有溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル共重合体について、カラムとしてGPC LF-804(昭和電工社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ法により、ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)を求めた。
GPC装置:Waters社製、2690 Separations Model
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.4mL/min
検出器:示差屈折計RI
カラム温度(測定温度):40℃
注入量:20μL
【0053】
(2)粘着テープの製造
得られた(メタ)アクリル共重合体含有溶液に、(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して、架橋剤としてエポキシ系架橋剤テトラッドC(三菱ガス化学社製)0.1重量部(固体成分比率)を加え、粘着剤溶液を調製した。得られた粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルム(剥離層)(SP4020、東洋クロス社製)上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成させた。この積層フィルムの粘着剤層を、ポリイミド発泡体(SOLIMIDE HT-340を厚み方向に加熱圧縮したシート、Boyd社製、密度49kg/m3、25%圧縮強度35kPa、厚み1000μm)にラミネーターを使用し、ラミネート圧力0.5MPa、ラミネート温度40℃、ラミネート速度300mm/minの条件で加圧した。その後40℃で48時間加熱し、養生を行った。これにより、粘着テープを得た。
【0054】
(3)粘着剤層の厚み及び基材に対する含浸距離の測定
粘着テープを、粘着剤層と基材との積層方向に平行な面で切断して得た断面を光学顕微鏡(VHX-6000、キーエンス社製)により500倍の倍率で観察した。観察視野内における粘着剤層の最大厚みb(μm)及び最小厚みc(μm)を特定した。これを任意の20箇所(20箇所分の観察視野)について繰り返し、各視野における最大厚みbについての平均値bave(μm)及び最小厚みcについての平均値cave(μm)を算出し、bave-cave(μm)を粘着剤層の基材に対する含浸距離とした。
また、粘着テープを製造する際、積層フィルムの粘着剤層をポリイミド発泡体に加圧する前(ラミネート前)の粘着剤層の厚みについても求めた。
【0055】
(4)ゲル分率の測定
粘着テープを20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W2:酢酸エチル浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0056】
(5)300℃での重量減少率の測定
粘着テープの粘着剤層を10mg採取しアルミカップに入れた。熱重量測定装置(STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて10℃/分の昇温速度にて測定することで、粘着剤層の300℃での重量減少率を求めた。
【0057】
(6)剥離層の粘着剤層に対する180°剥離力
JIS Z 0237に準拠し、引張試験機にて300mm/分の速度で180°方向(折り返し方向)に剥離層を剥離することで、剥離層の粘着剤層に対する180°剥離力を測定した。
【0058】
(実施例2~8、比較例1~2)
(メタ)アクリル共重合体の組成、粘着付与樹脂の添加の有無、架橋剤の種類又は量、基材の種類等を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
なお、剥離層の粘着剤層に対する180°剥離力は、剥離層に使用するPETフィルムの種類を変更することで調整した。
使用した材料を下記に示す。
【0059】
・イソシアネート系架橋剤コロネートHX(イソシアヌレート骨格を有する化合物、東ソー社製)
・イソシアネート系架橋剤コロネートL(イソシアヌレート骨格を有さない化合物、東ソー社製)
・粘着付与樹脂(重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、軟化温度155℃、荒川化学工業社製)
・離型層SP1008-75μm(離型処理した厚み75μmのPETフィルム、東洋クロス社製)
・離型層SP3000-75μm(離型処理した厚み75μmのPETフィルム、東洋クロス社製)
・ポリイミド発泡体(SOLIMIDE HT-340を厚み方向にスライスしたシート、Boyd社製、密度7kg/m3、25%圧縮強度6kPa、厚み1000μm)
・ポリエチレン発泡体(ボラーラXL-H♯1001、積水化学工業社製、密度100kg/m3、25%圧縮強度68kPa、厚み1000μm)
・ポリウレタン発泡体(PORON L-32、ロジャースイノアック社製、密度320kg/m3、25%圧縮強度80kPa、厚み1500μm)
【0060】
(比較例3)
粘着テープの製造においてラミネート条件を、ラミネート圧力0.01MPa、ラミネート温度23℃に変更することにより、粘着剤層の基材に対する含浸距離を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして、粘着テープを得た。
【0061】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0062】
(1)高温環境下(リフロー工程)での評価
粘着テープについて、リフロー工程と同程度の260℃120秒間の加熱処理を施した。
【0063】
加熱処理前後の基材の厚みを測定し、その変化率(変化率(%)=(加熱処理前の厚み(μm)-加熱処理後の厚み(μm))/加熱処理前の厚み(μm)×100)を求めた。変化率が10%以下であった場合を〇、10%を超えた場合を×とした。なお、基材の厚みは、粘着テープを、粘着剤層と基材との積層方向に平行な面で切断して得た断面を光学顕微鏡(VHX-6000、キーエンス社製)により200倍の倍率で観察して測定し、任意の20箇所(20箇所分の観察視野)の平均値(μm)を用いた。
【0064】
加熱処理前後の基材の25%圧縮強度を測定し、その変化率(変化率(%)=(加熱処理前の圧縮強度(kPa)-加熱処理後の圧縮強度(kPa))/加熱処理前の圧縮強度(kPa)×100)の絶対値を求めた。変化率の絶対値が10%以下であった場合を〇、10%を超えた場合を×とした。なお、基材の25%圧縮強度(圧縮応力)の測定は、JIS K 6767:1999に準拠し、以下のように行った。
粘着テープを20mm×20mmにカットし、厚さ約5mm×20mm×20mmのサンプルを作製した。サンプルを速度10mm/minで圧縮方向に押しつぶし、25%圧縮された時点の圧力(kPa)を確認した。
【0065】
加熱処理後の粘着剤層の発泡の有無を観察した。発泡が見られなかった場合を◎、100mm2当たりの発泡の個数が5個以下であった場合を〇、100mm2当たりの発泡の個数が6個以上であった場合を△とした。
【0066】
(2)剥離層の剥離時の界面剥離及び基材破壊の評価
粘着テープの剥離層を粘着剤層から300mm/分の速度で180°方向に剥がした。界面剥離(基材-粘着剤層)が見られなかった場合を〇、見られた場合を×とした。また、基材破壊が見られなかった場合を〇、基材破壊が見られた場合を△とした。
【0067】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、高温環境下でも基材の厚み及び圧縮特性が変化しにくく、基材と粘着剤層との間の接着性にも優れた粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 粘着テープ
2 基材(ポリイミド発泡体)
3 粘着剤層
4 剥離層(セパレータ)