(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121373
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】エネルギ管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230824BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H04Q9/00 311J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024682
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】517012534
【氏名又は名称】i Smart Technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松下 隼人
【テーマコード(参考)】
3C100
5K048
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA57
3C100AA68
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
5K048BA23
5K048BA34
5K048DA02
5K048EB10
5K048EB12
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制して、第一範囲に含まれる複数の第二範囲で消費されるエネルギ消費量を取得する。
【解決手段】エネルギ管理システムは、エネルギ消費量計が周期的に生成する第一エネルギ消費量に関する情報を検出して消費量検出信号として出力する消費量検出部と消費量送信部とを含むエネルギ消費量取得装置と、第二範囲に含まれる生産設備による処理の開始タイミングを第一信号として出力するタイミング情報検出部とタイミング情報送信部と、を含む設備稼働情報取得装置と、第一エネルギ情報を生成する第一エネルギ情報生成部と、生産数と可動時間との少なくともいずれかを含む設備稼働情報を生成する設備稼働情報生成部と、重回帰解析により、複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を算出し、第二エネルギ消費量を含む第二エネルギ情報を生成する第二エネルギ情報生成部と、を含む情報管理装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産設備のエネルギ消費状況を管理するためのエネルギ管理システムであって、
エネルギ消費量取得装置であって、
前記複数の生産設備を含む予め定められた第一範囲で消費される第一エネルギ消費量を計測するエネルギ消費量計に対して後付けで装着され、前記エネルギ消費量計が周期的に生成する前記第一エネルギ消費量に関する情報を検出して消費量検出信号として出力する消費量検出部と、
前記消費量検出信号を送信するための消費量送信部と、を含むエネルギ消費量取得装置と、
設備稼働情報取得装置であって、
前記第一範囲を予め定められた複数の範囲に区分した複数の第二範囲のそれぞれに含まれる少なくとも一の生産設備に対して後付けで装着され、前記一の生産設備による処理の開始タイミングを取得して第一信号として出力するタイミング情報検出部と、
前記第一信号を送信するためのタイミング情報送信部と、を含む設備稼働情報取得装置と、
情報管理装置であって、
前記エネルギ消費量取得装置から受信した前記消費量検出信号を用いて、前記第一エネルギ消費量を含む第一エネルギ情報を生成する第一エネルギ情報生成部と、
前記設備稼働情報取得装置から受信した前記第一信号を用いて、前記生産設備による加工対象品の生産数と、前記生産設備による前記加工対象品に対する処理を実行可能な可動時間との少なくともいずれかを含む設備稼働情報を生成する設備稼働情報生成部と、
生成した前記第一エネルギ情報および前記設備稼働情報を用いた重回帰解析により、前記複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を算出し、前記第二エネルギ消費量を含む第二エネルギ情報を生成する第二エネルギ情報生成部と、を含む情報管理装置と、を備える、
エネルギ管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギ管理システムであって、
前記第一エネルギ情報生成部は、前記第一エネルギ情報として、さらに、生成した前記第一エネルギ消費量を用いて、前記第一範囲で排出される温室効果ガスの第一排出量を算出する、
エネルギ管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエネルギ管理システムであって、
前記第二エネルギ情報生成部は、前記第二エネルギ情報として、さらに、前記第一エネルギ情報または前記第二エネルギ消費量を用いて、前記複数の第二範囲のそれぞれで排出される温室効果ガスの第二排出量を算出する、
エネルギ管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエネルギ管理システムであって、
前記設備稼働情報生成部は、前記生産数および前記可動時間の双方を前記設備稼働情報として生成し、
前記第二エネルギ情報生成部は、前記第一エネルギ情報と、前記生産数および前記可動時間とを用いた重回帰解析により、前記第二エネルギ消費量を算出する、
エネルギ管理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のエネルギ管理システムであって、
前記情報管理装置は、さらに、算出した前記第二エネルギ消費量と、前記設備稼働情報とを用いて、前記生産数に対する前記第二エネルギ消費量の比率、および前記可動時間に対する前記第二エネルギ消費量の比率の少なくともいずれかを算出する指標生成部を備える、
エネルギ管理システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のエネルギ管理システムであって、
前記タイミング情報検出部は、さらに、前記生産設備による処理の停止タイミングを取得して第二信号として出力し、
前記設備稼働情報生成部は、さらに、前記第二信号を用いて前記設備稼働情報を生成する、
エネルギ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機能を備えた電力メータが知られている(例えば、特許文献1)。この電力メータには、電力消費量の検針データを電気事業者に提供するための第1通信モジュールと、需要家でのエネルギ管理のために、需要家が有する管理機器に対して無線通信により電力消費量を送信する第2通信モジュールとが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
需要家が複数の生産設備を有する場合には、電力消費量などのエネルギ消費量を、所有する生産設備ごとや、複数の生産設備を含む製造ラインごとなどの所定の範囲ごとに把握したい場合がある。しかしながら、電力メータなどのエネルギ消費量を取得するための装置を、複数の生産設備ごとや製造ラインごとに設けると、部品点数が増大するといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、複数の生産設備のエネルギ消費状況を管理するためのエネルギ管理システムが提供される。このエネルギ管理システムは、エネルギ消費量取得装置であって、前記複数の生産設備を含む予め定められた第一範囲で消費される第一エネルギ消費量を計測するエネルギ消費量計に対して後付けで装着され、前記エネルギ消費量計が周期的に生成する前記第一エネルギ消費量に関する情報を検出して消費量検出信号として出力する消費量検出部と、前記消費量検出信号を送信するための消費量送信部と、を含むエネルギ消費量取得装置と、設備稼働情報取得装置であって、前記第一範囲を予め定められた複数の範囲に区分した複数の第二範囲のそれぞれに含まれる少なくとも一の生産設備に対して後付けで装着され、前記一の生産設備による処理の開始タイミングを取得して第一信号として出力するタイミング情報検出部と、前記第一信号を送信するためのタイミング情報送信部と、を含む設備稼働情報取得装置と、情報管理装置であって、前記エネルギ消費量取得装置から受信した前記消費量検出信号を用いて、前記第一エネルギ消費量を含む第一エネルギ情報を生成する第一エネルギ情報生成部と、前記設備稼働情報取得装置から受信した前記第一信号を用いて、前記生産設備による加工対象品の生産数と、前記生産設備による前記加工対象品に対する処理を実行可能な可動時間との少なくともいずれかを含む設備稼働情報を生成する設備稼働情報生成部と、生成した前記第一エネルギ情報および前記設備稼働情報を用いた重回帰解析により、前記複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を算出し、前記第二エネルギ消費量を含む第二エネルギ情報を生成する第二エネルギ情報生成部と、を含む情報管理装置と、を備える。
この形態のエネルギ管理システムによれば、第一エネルギ情報および設備稼働情報を用いた重回帰解析により、第二範囲に電力メータなどのエネルギ消費量を取得するための装置を設けることなく、複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を取得することができる。
(2)上記形態のエネルギ管理システムにおいて、前記第一エネルギ情報生成部は、前記第一エネルギ情報として、さらに、生成した前記第一エネルギ消費量を用いて、前記第一範囲で排出される温室効果ガスの第一排出量を算出してもよい。
この形態のエネルギ管理システムによれば、温室効果ガスの第一排出量を、エネルギ消費量計とは異なるエネルギ消費量取得装置および設備稼働情報取得装置を用いることによって取得することができる。
(3)上記形態のエネルギ管理システムにおいて、前記第二エネルギ情報生成部は、前記第二エネルギ情報として、さらに、前記第一エネルギ情報または前記第二エネルギ消費量を用いて、前記複数の第二範囲のそれぞれで排出される温室効果ガスの第二排出量を算出してもよい。
この形態のエネルギ管理システムによれば、専用の装置を第二範囲のそれぞれに設けることなく、複数の第二範囲で排出される温室効果ガスの排出量を取得することができる。
(4)上記形態のエネルギ管理システムにおいて、前記設備稼働情報生成部は、前記生産数および前記可動時間の双方を前記設備稼働情報として生成してもよい。前記第二エネルギ情報生成部は、前記第一エネルギ情報と、前記生産数および前記可動時間とを用いた重回帰解析により、前記第二エネルギ消費量を算出してもよい。
この形態のエネルギ管理システムによれば、第二エネルギ消費量の推定精度を向上させることができる。
(5)上記形態のエネルギ管理システムにおいて、前記情報管理装置は、さらに、算出した前記第二エネルギ消費量と、前記設備稼働情報とを用いて、前記生産数に対する前記第二エネルギ消費量の比率、および前記可動時間に対する前記第二エネルギ消費量の比率の少なくともいずれかを算出する指標生成部を備えてよい。
この形態のエネルギ管理システムによれば、設備稼働情報に対する第二エネルギ消費量の比率を指標として表すことにより、第二エネルギ消費量に対する生産設備の生産効率を容易に把握することができる。
(6)上記形態のエネルギ管理システムにおいて、前記タイミング情報検出部は、さらに、前記生産設備による処理の停止タイミングを取得して第二信号として出力してよい。前記設備稼働情報生成部は、さらに、前記第二信号を用いて前記設備稼働情報を生成してよい。
この形態のエネルギ管理システムによれば、生産設備の停止タイミングを取得することにより、生産設備のサイクルタイムや停止時間などの設備稼働情報をより正確に算出することができ、生産設備の生産状況をより詳細に把握することができる。
本開示は、エネルギ管理システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、エネルギ消費状況管理方法、エネルギ消費量取得装置、エネルギ消費状況管理装置、エネルギ管理システムの制御方法、エネルギ消費量取得装置の制御方法、エネルギ消費状況管理装置の制御方法、これらの制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るエネルギ管理システムを示す概略構成図。
【
図3】情報管理装置の内部機能構成を示すブロック図。
【
図4】エネルギ消費量取得装置の機能構成を示すブロック図。
【
図5】消費量検出部を備えるエネルギ消費量取得装置の配置例を示す説明図。
【
図6】第一エネルギ情報生成処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図7】設備稼働情報取得装置の機能構成を示すブロック図。
【
図8】検出部としての光センサを備える設備稼働情報取得装置の配置例を示す説明図。
【
図9】設備稼働情報生成処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図10】設備稼働情報取得装置からの検出信号と、設備稼働情報生成部による処理ルーチンとの関係を示すタイミングチャート。
【
図11】情報管理装置によって実行される処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図12】設備稼働情報および第一エネルギ情報の一例を示す説明図。
【
図13】指標の一例としてのCO2排出指数の表示データの例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態に係るエネルギ管理システム100を示す概略構成図である。エネルギ管理システム100(以下、単に「管理システム100」とも呼ぶ。)は、複数の生産設備のエネルギ消費状況を管理するために用いられる。本開示において「生産設備のエネルギ消費状況」には、生産設備による電力、ガス、ならびに灯油(ケロシン)や重油を含む液体燃料などの種々のエネルギ消費量に関する情報(以下、「消費情報」とも呼ぶ。)と、当該エネルギの消費により発生する二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量に関する情報(以下、「排出量情報」とも呼ぶ。)と、が含まれる。また、本開示において、「生産設備」とは、生産設備そのものに加え、例えば、生産設備を含む製造ライン、工場、建屋など、生産設備よりも広い種々の範囲を含み得る。
【0009】
管理システム100は、生産設備のエネルギ消費状況に加え、さらに、生産設備の設備稼働情報を生成し、管理する。「設備稼働情報」とは、生産設備の稼働状態に関わる情報を意味する。「生産設備の稼働状態」には、生産設備における加工対象品に対する処理の開始および処理の停止が含まれる。本開示において、設備稼働情報には、生産数と、可動時間との少なくともいずれかが含まれる。生産数および可動時間は、エネルギ消費量の変動に対して有意な因子である。「生産数」とは、生産設備の稼働開始後に生産設備が処理を完了させた加工対象品の総数を意味する。本開示における「可動時間」とは、生産設備の稼働時間中において生産設備が加工対象品の処理を実行可能な期間を意味する。生産設備の稼働状態には、さらに、処理に関わる動作・操作、当該動作・操作の開始、実行中、停止、完了といった状態が含まれてもよい。
【0010】
設備稼働情報には、生産数および可動時間のみには限らず、さらに、例えば、生産設備の稼働開始時刻、稼働終了時刻、サイクルタイム、停止時間などの種々の情報が含まれてよい。サイクルタイムとは、生産設備が加工対象品に対する処理を開始してから完了するまでの期間を意味する。停止時間は、稼働時間中において生産設備が加工対象品の処理に寄与していない期間を意味する。停止時間は、稼働時間に含まれ、サイクルタイムには含まれない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態では、管理システム100は、工場200に備えられている。工場200には、複数の製造ラインL1~Lnと、電力メータ50と、配電線70と、分電盤60とが備えられている。製造ラインLnに付された「n」は、2以上の自然数であり、製造ラインの本数を示している。本実施形態では、例えば、製造ラインの本数は30であり、n=30である。以下、複数の製造ラインL1~Lnを区別せずに説明する場合には、「製造ラインLn」と呼称する。
【0012】
製造ラインLnは、例えば、複数の生産設備30と、搬送機構41とを備えている。搬送機構41は、例えば、加工部品やワークなどの加工対象品を搬送する。搬送機構41には、たとえば、ベルトコンベア、予め定められた軌道上を移動する搬送機などが含まれる。
【0013】
生産設備30は、たとえば、金属加工機、溶接機、樹脂成形機、塗装機、熱間鍛造機、完成品回収機、加工部品供給機などの設備である。生産設備30には、加工対象品に対する生産処理や加工処理を実行するためのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)と、PLCに接続されている各種センサとが備えられている。各種センサは、製造ラインLnおよび生産設備30を作動させるために、製造ラインLnおよび生産設備30を設置・配置する際に予め配置されている。なお、一つの製造ラインLnあたりに備えられる生産設備30は、複数に限らず単数であってもよく、製造ラインLnが単数の生産設備30を備える場合等には、搬送機構41は、省略されてもよい。
【0014】
電力メータ50は、例えばJIS C 1216などの日本工業規格に準拠する電力量計である。本実施形態では、三菱電機社製の型番WP3EP-S16Rが用いられている。電力メータ50は、生産設備30によって消費されるエネルギ消費量を計測するためのエネルギ消費量計の一例である。電力メータ50は、例えば、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を介して電気事業者が有するサーバにアクセス可能に構成されてもよい。
【0015】
配電線70は、系統電源などの外部電源からの電力を工場200に引き込む。配電線70に供給された電力は、例えば、電力メータ50に備えられる図示しない変成器により例えば33kVの特別高圧が110Vの低圧に変圧され、また、200Aの電流が5Aの電流に変流されて、工場200に供給される。工場200に供給された電力は、分電盤60により複数の製造ラインLnのそれぞれへと分配される。
【0016】
図2は、工場200の全体の構成を示す俯瞰図である。
図2には、第一範囲AR1と、複数の第二範囲AR2とが示されている。第一範囲AR1は、複数の生産設備30を含む予め定められた範囲であり、電力メータ50が電力消費量を取得可能な最大範囲である。
図2の例では、第一範囲AR1は、工場200である。第一範囲AR1で消費されるエネルギ消費量の総量を、「第一エネルギ消費量」とも呼び、第一範囲AR1で排出される温室効果ガスの排出量の総量を、「第一排出量」とも呼ぶ。
【0017】
第二範囲AR2は、第一範囲AR1を予め定められた複数の範囲に区分した範囲である。第二範囲AR2は、本開示の管理システム100が生産設備30のエネルギ消費状況を推定し得る最小範囲である。第二範囲AR2には、少なくとも一の生産設備30が含まれる。第二範囲AR2で消費されるエネルギ消費量を、「第二エネルギ消費量」とも呼び、第二範囲AR2で排出される温室効果ガスの排出量を、「第二排出量」とも呼ぶ。
【0018】
第一範囲AR1は、複数の第二範囲AR2に区分できることを前提に、電力メータ50によるエネルギ消費量の取得可能な範囲に応じて任意に設定することができる。例えば、電力メータ50を複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれに対して設けることにより、複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれを第一範囲AR1とすることもできる。この場合には、例えば、製造ラインLnに含まれる複数の生産設備30のそれぞれを第二範囲AR2と設定することができる。また、電力メータ50を、例えば、工場200に含まれる複数の建屋のそれぞれに対して設けることにより、複数の建屋のそれぞれを第一範囲AR1とすることもできる。この場合において、一の建屋に含まれる複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれ、もしくは複数の生産設備30のそれぞれを第二範囲AR2と設定することができる。このように、管理システム100は、予め設定した任意の範囲ごとのエネルギ消費状況を把握することができる。
【0019】
本実施形態では、第一範囲AR1は、工場200であり、第二範囲AR2は、工場200に含まれる複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれである。電力メータ50は、工場200での電力消費量を計測する。管理システム100は、電力メータ50による工場200のエネルギ消費量、すなわち第一エネルギ消費量を利用して、複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれのエネルギ消費量、すなわち第二エネルギ消費量を推定する。
【0020】
図1に示すように、管理システム100は、エネルギ消費量取得装置20aと、設備稼働情報取得装置20bと、情報管理装置10とを備えている。エネルギ消費量取得装置20aは、電力メータ50またはその近傍に後付けにより装着されており、設備稼働情報取得装置20bは、生産設備30またはその近傍に後付けにより装着されている。本開示において、後付けとは、電力メータ50および生産設備30の設置・配置時において、電力メータ50および生産設備30に装着もしくは組み込まれておらず、電力メータ50および生産設備30の動作を制御するPLCに接続されておらず、電力メータ50および生産設備30の稼働・制御とは無関係に電力メータ50および生産設備30に装着・配置されることを意味する。
【0021】
エネルギ消費量取得装置20aは、第一範囲AR1で消費される第一エネルギ消費量を取得するエネルギ消費量取得装置として機能する。本実施形態では、エネルギ消費量取得装置20aは、電力メータ50に対して後付けで装着されることによって、工場200で消費される電力消費量を取得する。エネルギ消費量取得装置20aは、後述するように、電力メータ50から周期的に生成される予め定められた単位ごとの第一エネルギ消費量に関する情報検出して、消費量検出信号として情報管理装置10へと出力する。
【0022】
設備稼働情報取得装置20bは、複数の第二範囲AR2のそれぞれに含まれる少なくとも一の生産設備30に対して後付けで装着される。設備稼働情報取得装置20bは、製造ラインLnなどに対して後付けで装着されてもよい。設備稼働情報取得装置20bは、生産設備30による処理の開始と、処理の停止とを検出する設備稼働情報取得装置として機能する。本実施形態では、設備稼働情報取得装置20bは、生産設備30による処理の開始タイミングに対応する第一信号と、生産設備30による加工対象品に対する処理の停止タイミングに対応する第二信号との検出信号を、情報管理装置10に送信する。本実施形態では、第一信号からその次の第一信号を受信するまでの期間がサイクルタイムとして取得される。なお、第二信号からその次の第二信号を受信するまでの期間がサイクルタイムとして取得されてもよい。
【0023】
情報管理装置10は、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bと協働して、工場200および工場200に含まれる複数の製造ラインL1~Lnのエネルギ消費状況と、複数の製造ラインL1~Lnの設備稼働情報とを管理する。情報管理装置10は、エネルギ消費量取得装置20aから取得した消費量検出信号を用いて、工場200の電力消費量を取得し、取得した工場200の電力消費量を用いて工場200の二酸化炭素排出量を算出する。また、情報管理装置10は、設備稼働情報取得装置20bから取得した第一信号および第二信号を用いて、複数の製造ラインL1~Lnの設備稼働情報を取得する。本実施形態では、情報管理装置10は、さらに、工場200の電力消費量および工場200の二酸化炭素排出量と、設備稼働情報とを用いて、複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれの電力消費量および二酸化炭素排出量を推定する。また、推定した二酸化炭素排出量および設備稼働情報を用いて、生産数に対する第二エネルギ消費量の比率、および可動時間に対する第二エネルギ消費量の比率の少なくともいずれかの指標を生成する。
【0024】
情報管理装置10、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bは、無線通信によってデータを送受信することが可能である。例えば、情報管理装置10は、情報処理装置PC、端末装置PD1,PD2からの要求に応じて、生成した設備稼働情報および指標を、無線通信により、情報処理装置PCおよび端末装置PD1,PD2に送信することができる。
【0025】
情報管理装置10は、ローカルサーバとして工場内に配置されていてもよく、リモートサーバとして工場200以外の場所に配置されていてもよい。情報管理装置10がリモートサーバとして設置される場合には、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bからの検出信号と、端末装置PD1,PD2および情報処理装置PCへの設備稼働情報および指標とは、工場内の無線アクセスポイントおよびイントラネットまたはインターネットといったネットワークを介して情報管理装置10によって送受信される。
【0026】
本実施形態では、情報管理装置10は、生成したエネルギ消費状況、生産設備の設備稼働情報、ならびに指標を用いた表示用データを、情報管理装置10の表示部、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置PC、ならびに端末装置PD1,PD2等に送信し、これらに備えられる表示部に表示するための表示制御装置としても機能する。端末装置PD1,PD2には、例えば、スマートフォン、携帯電話機、PHS、スレート端末、ならびにタブレット端末などが含まれる。
【0027】
図3は、情報管理装置10の内部機能構成を示すブロック図である。情報管理装置10は、中央演算処理装置としてのCPU11と、記憶装置12と、送信・受信部13と、表示部14と、入力装置15と、時間計測のためのタイマ16とを備えており、これらは、バス17を介して相互に通信可能に接続されている。情報管理装置10は、生産設備30の動作を制御するPLCとは異なる装置であり、生産設備30は、情報管理装置10が用いられなくてもPLCによって動作制御される。
【0028】
CPU11は、記憶装置12に格納されている各種プログラムを実行することによって、第一エネルギ情報生成部110、第二エネルギ情報生成部112、設備稼働情報を生成する設備稼働情報生成部114、ならびに指標生成部116として機能する。第一エネルギ情報生成部110は、エネルギ消費量取得装置20aから受信した消費量検出信号を用いて、第一エネルギ消費量を含む第一エネルギ情報を生成する。「第一エネルギ情報」とは、第一範囲AR1での種々の消費情報ならびに排出量情報を意味する。第一エネルギ情報には、例えば、第一エネルギ消費量のほか、さらに、第一範囲AR1で排出される温室効果ガスの排出量である第一排出量、第一エネルギ消費量に基づいて発生するエネルギの使用料金などが含まれてもよい。本実施形態では、第一エネルギ情報生成部110は、さらに、生成した第一エネルギ消費量を用いて第一排出量を算出する。
【0029】
第二エネルギ情報生成部112は、第一エネルギ情報生成部110が生成した第一エネルギ情報と、設備稼働情報生成部114が生成した設備稼働情報を用いて多変量解析(本実施形態において、重回帰分析)を行い、複数の第二範囲AR2のそれぞれの第二エネルギ消費量を算出する。「第二エネルギ情報」とは、第二範囲AR2での種々の消費情報ならびに排出量情報を意味する。第二エネルギ情報には、例えば、第二エネルギ消費量のほか、さらに、第二範囲AR2で排出される温室効果ガスの排出量である第二排出量、第二エネルギ消費量に基づいて発生するエネルギの使用料金が含まれてもよい。本実施形態では、第二エネルギ情報生成部112は、さらに、生成した第二エネルギ消費量を用いて第二排出量を算出する。
【0030】
指標生成部116は、設備稼働情報、第一エネルギ情報、ならびに第二エネルギ情報を用いた指標を生成する。本実施形態では、指標生成部116は、指標として、設備稼働情報に対する第一エネルギ情報の比率と、設備稼働情報に対する第二エネルギ情報の比率との少なくともいずれかを生成する。指標の例としては、第一範囲AR1での生産数に対する第一エネルギ消費量の比率、ならびに複数の第二範囲AR2での生産数に対する第二エネルギ消費量の比率である。指標生成部116は、これに代えて、もしくはこれとともに、可動時間に対する第一エネルギ消費量の比率、可動時間に対する第二エネルギ消費量の比率を指標として算出してもよい。指標により、第一範囲AR1ならびに第二範囲AR2での生産効率を、第一エネルギ情報ならび第二エネルギ情報の観点から評価することが容易になる。本実施形態では、指標生成部116は、さらに、生成した指標に関するグラフなどを表示部に表示するための表示用データを生成する。
【0031】
記憶装置12は、たとえば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)である。HDDまたはROMには、本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されている。HDDまたはROMから読み出された各種プログラムは、RAM上に展開されて、CPU11によって実行される。記憶装置12の読み書き可能な領域には、第一エネルギ情報を記憶するための第一エネルギ情報記憶部121と、第二エネルギ情報を記憶するための第二エネルギ情報記憶部122と、設備稼働情報を記憶するための設備稼働情報記憶部124と、生成した指標を記憶するための指標記憶部126とが備えられている。なお、記憶装置12には、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bから受信した消費量検出信号、第一信号、および第二信号が一時的に格納される。
【0032】
送信・受信部13は、エネルギ消費量取得装置20aからの消費量検出信号を取得するための消費量検出信号取得部として機能する。第一エネルギ情報生成部110は、消費量検出信号を用いて、第一エネルギ消費量を取得する。送信・受信部13は、さらに、設備稼働情報取得装置20bから、生産設備30による処理の開始タイミングと、生産設備30による処理の停止タイミングとを取得する処理タイミング取得部として機能する。具体的には、送信・受信部13は、設備稼働情報取得装置20bから送信される第一信号および第二信号を受信することによって、生産設備30による処理の開始タイミングと、生産設備30による処理の停止タイミングとを取得する。
【0033】
送信・受信部13は、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bに対して各種の実行命令を送信してもよい。送信・受信部13は、さらに、端末装置PD1,PD2ならびに情報処理装置PCに対して表示用データを送信してもよい。送信・受信部13は、表示用データに代えて、またはそれとともに消費情報、排出量情報、設備稼働情報、ならびに指標などの種々の情報を送信してもよい。送信・受信部13は、端末装置PD1,PD2や情報処理装置PCからの各種処理の実行を要求する指令信号を受信してもよい。
【0034】
送信・受信部13は、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bに対して有線接続されることなく、エネルギ消費量取得装置20aからの消費量検出信号、および設備稼働情報取得装置20bからの第一信号・第二信号を取得することができる。このように構成することによって、生産設備30および電力メータ50に対してエネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bを後付けで装着または配置するという簡易な方法を用いて、管理システム100を既存の工場等に導入することができる。送信・受信部13が例えば、無線通信機能を有する入出力I/Fである場合には、送信・受信部13は工場内に設置されている図示しない無線中継器(アクセスポイント)を介して、エネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bからの無線電波を受信してもよく、あるいは、送信・受信部13自身が無線アクセスポイントとしてエネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bから無線電波を受信可能な場所に配置されていてもよい。また、送信・受信部13は、無線中継器に対して有線接続されていてもよい。無線通信は、たとえば、IEEE802.11規格に準拠した無線ローカルネットワーク(LAN)を通じた無線接続やBluetooth(登録商標)を用いた無線通信などによって実現され得る。
【0035】
表示部14は、表示用データを表示するためのディスプレイである。表示部14は、さらに、管理システム100を操作する際の処理内容を表示してもよい。入力装置15は、管理システム100に対して入力を行うために用いられる装置である。入力装置15は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0036】
図4は、エネルギ消費量取得装置20aの機能構成を示すブロック図である。エネルギ消費量取得装置20aは、後付けにて電力メータ50に装着または配置される。エネルギ消費量取得装置20aは、消費量検出部25aと、送受信部21aと、コントローラ23aとを備えている。消費量検出部25aと、送受信部21aとは、コントローラ23aに対して通信可能に接続されている。
【0037】
消費量検出部25aは、例えば、電力メータ50に装着されるパルス検出器である。本実施形態では、三菱電機社製の型番PC-11Bを用いた。本実施形態では、消費量検出部25aは、エネルギ消費量取得装置20aとは別体であり、エネルギ消費量取得装置20aは、信号線を介して消費量検出部25aの無電圧接点の出力端子に接続されている。ただし、消費量検出部25aは、エネルギ消費量取得装置20aと別体には限らず、一体に備えられていてもよい。
【0038】
消費量検出部25aは、後述するように、電力メータ50が予め定められたエネルギ単位ごとに周期的に生成する第一エネルギ消費量に関する情報を取得し、消費量検出信号としてのパルス信号を生成してコントローラ23aへと出力する消費量検出部として機能する。「エネルギ消費量計が周期的に生成する第一エネルギ消費量に関する情報」とは、例えば、電力メータ50が一定の電力消費量ごとに発信するパルス信号である。本実施形態では、消費量検出部25aは、電力メータ50が一定の電力消費量ごとに発信するパルス信号を検出し、検出したパルス信号の周期を変換して出力することができる。エネルギ消費量取得装置20aは、消費量検出部25aに代えて、またはそれとともに、パルスの周期を変換するためのシーケンサを備えてもよい。電力メータ50が、パルス信号を出力しない、いわゆるアラゴの円板を利用する積算電力計(誘導型電力量計)である場合には、「エネルギ消費量計が周期的に生成する第一エネルギ消費量に関する情報」は、パルス信号に代えて、円板の周回数などであってもよい。
【0039】
コントローラ23aは、図示しない中央演算処理装置(CPU)と記憶装置とを備えている。コントローラ23aは、消費量検出部25aから受信した消費量検出信号を送受信部21aに出力する。なお、消費量検出部25aに代えてコントローラ23aが消費量検出信号を生成して送受信部21aに出力してもよい。
【0040】
送受信部21aは、任意の通信プロトコルに従い、無線通信によって情報管理装置10に対して消費量検出信号を送信する消費量送信部として機能する。本実施形態において、送受信部21aは、例えば、パルス周期3s以上のパルス信号を送信することができる。なお、コントローラ23aからの指令に従って、送受信部21aが消費量検出信号を生成してもよい。送受信部21aは、情報管理装置10からの実行命令を受信してもよい。
【0041】
図5は、消費量検出部25aを備えるエネルギ消費量取得装置20aの配置例を示す説明図である。エネルギ消費量取得装置20aは、電力メータ50に取り付けられている。
【0042】
電力メータ50は、電力計量部52を備えている。電力計量部52は、配電線70を通過する電流及び電圧に基づいて、工場200の電力消費量の総量を測定する。電力計量部52は、工場200の電力消費量が予め定められた単位に到達するごとに周期的にパルス信号を生成することができる。本実施形態では、電力計量部52は、発信装置付計器であり、例えば、50000パルス/kWhでパルス信号を生成する。
【0043】
本実施形態では、エネルギ消費量取得装置20aの消費量検出部25aは、電力計量部52に設けられるパルス出力端子に接続される。電力メータ50が電気事業者などの他者の所有物である場合などには、必要に応じて消費量検出部25aを電力メータ50に接続するための許諾を電気事業者から得る。消費量検出部25aは、電力計量部52によって生成される周期的なパルスを検出することによって、電力消費量を予め定められた単位ごとに取得する。本実施形態では、消費量検出部25aは、パルス定数を50000パルス/kWhから1パルス/kWhに変換してコントローラ23aに出力する。消費量検出部25aにより生成された消費量検出信号は、コントローラ23aに出力され、送受信部21aに出力される。コントローラ23aが消費量検出部25aからのパルス波形を用いて消費量検出信号を生成して送受信部21aに出力してもよい。消費量検出信号は、送受信部21aにより情報管理装置10へと送信される。なお、変換後のパルス定数は、任意に設定することができる。変換後のパルス定数は、工場200の電力消費量の大きさ、エネルギ管理システム100に要求される電力消費量の計測値の分解能、エネルギ消費量取得装置20aが送信可能なパルス定数などに基づいて設定されることが好ましい。パルス周期の変換比率を小さくすれば、例えば、シーケンサなどを省略することができ、部品点数を低減し得る。
【0044】
図6は、第一エネルギ情報生成処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、エネルギ消費量取得装置20aおよび情報管理装置10の起動時から、エネルギ消費量取得装置20aおよび情報管理装置10が稼働終了されるまでの間、繰り返し実行され得る。
【0045】
ステップS100では、エネルギ消費量取得装置20aのコントローラ23aは、消費量検出部25aからのパルス信号としての消費量検出信号の入力を確認する。コントローラ23aは、消費量検出部25aから消費量検出信号が入力されない場合には(S100:NO)、消費量検出信号の入力を待機する。
【0046】
消費量検出部25aからの消費量検出信号が入力されると(ステップS100:Yes)、コントローラ23aは、消費量検出信号を送受信部21aに出力し、送受信部21aは、取得したパルス信号を情報管理装置10に送信する(ステップS102)。
【0047】
ステップS110では、第一エネルギ情報生成部110は、第一エネルギ情報を生成する。エネルギ消費量取得装置20aから送信された消費量検出信号は、無線通信を介して、情報管理装置10の送信・受信部13によって受信される。第一エネルギ情報生成部110は、消費量検出信号の受信ごとに電力消費量を積算する。本実施形態では、第一エネルギ情報生成部110は、エネルギ消費量取得装置20aからの消費量検出信号の入力回数を積算し、積算した入力回数の総和に、消費量検出部25aによる変換後のパルス定数の逆数(本実施形態において、1kWh/パルス)を乗じて得た数値を電力消費量として算出する。本実施形態では、第一エネルギ情報生成部110は、第一エネルギ情報として、予め定められた単位時間(本実施形態において、10分)あたりの電力消費量の積算値を算出する。第一エネルギ情報生成部110は、生成した単位時間あたりの電力消費量の積算値を、日時情報と関連付けて第一エネルギ情報記憶部121に記録する。
【0048】
本実施形態では、第一エネルギ情報生成部110は、さらに、第一エネルギ情報として、単位時間あたりの二酸化炭素排出量を算出する。具体的には、第一エネルギ情報生成部110は、第一エネルギ情報記憶部121に格納された単位時間あたりの電力消費量の積算値に排出係数を乗じて得た数値を、単位時間あたりの二酸化炭素排出量として演算する。「排出係数」とは、活動量あたりの二酸化炭素の排出量であり、予め定められた単位量あたりのエネルギ消費量に対する二酸化炭素の排出量を意味する。本実施形態では、排出係数は、1kWhの電力を発電するために排出される二酸化炭素の排出量に相当する。二酸化炭素の排出量の単位は、例えば、t・CO2/kWhである。本実施形態では、排出係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき、環境省・経済産業省により公表される電気事業者別排出係数を用いて予め設定されており、記憶装置12に予め格納されている。ただし、排出係数は、固定値として予め記憶装置12に格納される場合には限定されず、インターネットなどの広域ネットワークを介して逐次に取得した値を用いて適宜に更新されてもよい。このように構成することにより、排出係数が変動する場合であっても最新の値を用いて二酸化炭素排出量を導出することができる。第一エネルギ情報生成部110は、生成した単位時間あたりの二酸化炭素排出量の積算値を、日時情報と関連付けて第一エネルギ情報記憶部121に記録する。
【0049】
図7は、設備稼働情報取得装置20bの機能構成を示すブロック図である。設備稼働情報取得装置20bは、後付けにて製造ラインLnに含まれる一の生産設備30に装着または配置されて、製造ラインLn全体の設備稼働情報を取得する。設備稼働情報取得装置20bは、設備稼働情報の測定精度を向上するために、製造ラインLnに含まれる複数の生産設備30に装着または配置されてもよい。設備稼働情報取得装置20bは、タイミング情報検出部25bと、第一送受信部21b1と、第二送受信部21b2と、コントローラ23bとを備えている。タイミング情報検出部25bを、以下、単に「検出部25b」とも呼ぶ。設備稼働情報取得装置20bは、エネルギ消費量取得装置20aとは、送受信部が2つである点と、検出部の構成が異なる点とにおいて相違し、それ以外の構成はエネルギ消費量取得装置20aと同様である。検出部25bと、第一送受信部21b1と、第二送受信部21b2とは、コントローラ23bに対して通信可能に接続されている。
【0050】
検出部25bは、生産設備30に装着される各種センサである。検出部25bとして用いられるセンサとしては、光センサ、音センサ、熱センサ、電流センサ、距離センサ、気圧センサ、加速度センサ、回転速度センサ、湿度センサ、磁気センサ、ならびに圧力センサなどが用いられる。各センサはいずれも生産設備30の稼働状態を検出するためのセンサである。
【0051】
検出部25bは、生産設備30による加工対象品に対する処理の開始タイミングを検出し、パルス信号を生成する。本実施形態では、検出部25bは、さらに、生産設備30による加工対象品に対する処理の停止タイミングを検出し、パルス信号を生成する。検出部25bは、例えば、生産設備30による処理の開始を検出すると、基準状態から立ち上がり(オン)、生産設備30による処理の停止を検出すると、オン状態から立ち下がる(オフ)パルス信号を生成する。生成されたパルス信号は、コントローラ23bに出力される。検出部25bは、生産設備30による処理の開始を検出すると、オン状態から基準状態へ立ち下がり(オフ)、生産設備30による処理の停止を検出すると、基準状態からの立ち上がる(オン)パルス信号を生成してもよい。検出部25bのその他の構成は、消費量検出部25aと同様であるので説明を省略する。
【0052】
コントローラ23bは、図示しない中央演算処理装置(CPU)と記憶装置とを備えている。コントローラ23bは、検出部25bから受信したパルス信号を用いて第一信号および第二信号を生成し、第一送受信部21b1および第二送受信部21b2にそれぞれ振り分けて出力する。本実施形態では、コントローラ23bは、検出部25bから受信したパルス信号の立ち上がり(オン)を検出して、第一信号を生成して第一送受信部21b1に出力し、検出部25bから受信したパルス信号の立ち下がり(オフ)を検出すると、第二信号を生成して第二送受信部21b2に出力する。なお、生産設備30による処理の開始を検出すると、オン状態から基準状態へ立ち下がり(オフ)、生産設備30による処理の停止を検出すると、基準状態から立ち上がる(オン)パルス信号を検出部25bが生成する場合には、パルス信号の立ち下がりの検出により第一信号を生成して第一送受信部21b1に出力し、パルス信号の立ち上がりの検出により第二信号を生成して第二送受信部21b2に出力してもよい。また、コントローラ23bに代えて検出部25bが第一信号および第二信号を生成してコントローラ23bに出力してもよい。
【0053】
第一送受信部21b1および第二送受信部21b2は、任意の通信プロトコルに従い無線通信によって情報管理装置10に対して第一信号および第二信号を送信するタイミング情報送信部として機能する。より具体的には、第一送受信部21b1は、第一信号を情報管理装置10に送信する第一送信部として機能し、第二送受信部21b2は、第二信号を情報管理装置10に送信する第二送信部として機能する。設備稼働情報取得装置20bが処理の開始タイミングのみを検出する場合には、第二送受信部21b2は、省略されてもよい。
【0054】
図8は、検出部25bとしての光センサを備える設備稼働情報取得装置20bの配置例を示す説明図である。生産設備30には、PLCを収容する筐体310が隣接して配置されている。筐体310には生産設備30の稼働状態を三色の信号灯で示すシグナルタワー40が備えられている。信号灯は、生産設備30の稼働状態を示す表示部である。シグナルタワー40によって示される稼働状態は、例えば、緑色が処理中、黄色が処理の停止中、赤色が異常停止である。
【0055】
検出部25bとしての光センサには、信号灯の点灯または消灯を検出することができる光電変換素子、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタを用いることができる。検出部25bは、例えば、シグナルタワー40の緑色の信号灯の発光面に装着される。検出部25bをシグナルタワー40に装着することによって、シグナルタワー40によって示される生産設備30による加工対象品の処理の開始もしくは処理の停止を容易に検出することができる。本実施形態では、検出部25bは、緑色の信号灯が点灯した場合には、生産設備30による処理の開始を検出し、緑色の信号灯が消灯した場合には、生産設備30による処理の停止を検出する。生産設備30による処理の開始を検出した場合には、コントローラ23bは、検出部25bからのパルス波形を用いて第一信号を生成して第一送受信部21b1に出力する。生産設備30による処理の停止を検出した場合には、コントローラ23bは、検出部25bからのパルス波形を用いて第二信号を生成して第二送受信部21b2に出力する。検出部25bが第一信号および第二信号を生成してコントローラ23bに出力してもよい。
【0056】
図9は、設備稼働情報生成処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、設備稼働情報取得装置20bおよび情報管理装置10の起動時から、設備稼働情報取得装置20bおよび情報管理装置10が稼働終了されるまでの間、繰り返し実行され得る。
【0057】
ステップS200では、設備稼働情報取得装置20bは、検出部25bからのパルス信号の入力を確認する。コントローラ23bは、検出部25bからパルス信号が入力されない場合には(S200:NO)、パルス信号の入力を待機する。
【0058】
コントローラ23bは、検出部25bからのパルス信号が入力されると(ステップS200:YES)、検出したパルス信号の立ち上がり(オン)、または立ち下がり(オフ)を検出する(ステップS210)。本実施形態では、コントローラ23bは、パルス信号の立ち上がり(オン)を検出した場合には(S210:YES)、生産設備30による加工対象品に対する処理の開始タイミングに対応する第一信号を生成して第一送受信部21b1に出力し、第一送受信部21b1は、取得した第一信号を情報管理装置10に送信する(ステップS211)。コントローラ23bは、パルス信号の立ち下がり(オフ)を検出した場合には(S210:NO)、生産設備30による加工対象品に対する処理の停止タイミングに対応する第二信号を第二送受信部21b2に出力し、第二送受信部21b2は、取得した第二信号を情報管理装置10に送信する(ステップS212)。
【0059】
ステップS220では、設備稼働情報生成部114は、第一信号および第二信号を用いて、設備稼働情報を生成する。設備稼働情報取得装置20bから送信された第一信号および第二信号は、無線通信を介して、情報管理装置10の送信・受信部13によって受信される。設備稼働情報生成部114は、第一信号および第二信号を受信するたびに設備稼働情報を生成する。
【0060】
本実施形態では、設備稼働情報生成部114は、設備稼働情報として、生産数を取得する。設備稼働情報生成部114は、例えば、第一信号を検出してから次の第一信号を検出するまでの期間をサイクルタイムとし、サイクルタイムを取得した回数を計数することによって生産数を取得することができる。設備稼働情報生成部114は、生産数には限らず、可動時間を取得してもよい。取得する設備稼働情報は、後述する重回帰分析による第二エネルギ情報の推定精度を向上させる観点から、エネルギ消費量の変動に対して有意な因子であることが好ましい。なお、可動時間は、例えば、稼働開始時刻から稼働終了時刻までの稼働時間から、停止時間を除くことによって算出することができる。稼働時間とは、生産設備30の稼働開始から稼働完了までの時間を意味する。例えば、情報管理装置10の起動当日に最初に第一信号を受信したタイミングを生産設備30の稼働開始時刻とし、最後に第二信号を受信したタイミングを稼働終了時刻とすることができる。
【0061】
図10は、設備稼働情報取得装置20bからの検出信号と、設備稼働情報生成部114による処理ルーチンとの関係を示すタイミングチャートである。
図10に示す横軸は、時間軸であり、縦軸は、検出部25bによるオン信号とオフ信号との生成タイミングを模式的に示している。
図10には、サイクルタイムCT1が模式的に示されている。
【0062】
図10の例において、時間T1では、検出部25bが生産設備30による処理の開始を検出し、コントローラ23bにより基準状態から立ち上がるオン信号としての第一信号が生成される。時間T2では、検出部25bが生産設備30による処理の停止を検出し、オン状態から立ち下がるオフ信号としての第二信号が生成される。時間T3では、生産設備30による次の加工対象品に対する処理が開始され、コントローラ23bによって第一信号が生成されている。設備稼働情報生成部114は、時間T1に第一信号を受信してから、時間T3に次の第一信号を受信するまでの期間をサイクルタイムCT1として取得し、生産数を積算する。設備稼働情報生成部114は、設備稼働情報として、予め定められた単位時間(本実施形態において、10分)ごとの生産数の積算値を算出する。生成された設備稼働情報は、日時情報と関連付けられて設備稼働情報記憶部124に格納される。
【0063】
図11は、情報管理装置10によって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS300では、設備稼働情報生成部114は、設備稼働情報記憶部124から単位時間あたりの生産数の積算値を読み出して取得する。ステップS310では、第一エネルギ情報生成部110は、単位時間あたりの第一エネルギ情報、具体的には、単位時間あたりにおける第一範囲AR1での電力消費量の積算値と、単位時間あたりにおける第一範囲AR1での二酸化炭素排出量の積算値とを、第一エネルギ情報記憶部121から読み出して取得する。二酸化炭素排出量の積算値は、ステップS110に代えてステップS300において、電力消費量の積算値と、排出係数とを用いて算出されてもよい。
【0064】
ステップS320では、第二エネルギ情報生成部112は、第一エネルギ情報および設備稼働情報の取得が終了したか否かを確認する。第一エネルギ情報および設備稼働情報の取得の終了条件は、例えば、取得開始から予め定められた時間が経過したこと、取得開始から所定の日時に達したこと、単位時間あたりにおける第一エネルギ情報および設備稼働情報の取得数が所定値に到達したことなどが挙げられる。終了条件が満たされていない場合(S320:NO)、ステップS300に戻り、終了条件が満たされた場合(S320:YES)、ステップS330へと移行する。
【0065】
ステップS330では、第二エネルギ情報生成部112は、第二エネルギ情報を生成する。より具体的には、第二エネルギ情報生成部112は、生成した第一エネルギ情報および設備稼働情報を用いた多変量解析により、複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を算出して第二エネルギ情報として生成する。
【0066】
本実施形態では、第二エネルギ情報生成部112は、多変量解析として以下の回帰式(1)を用いた重回帰分析により、複数の第二範囲AR2のそれぞれの第二エネルギ消費量を算出する。
Et=a1・p1+a2・p2+・・・+an・pn+E0 ・・・式(1)
【0067】
Etは、いわゆる目的変数である。Etには、第一エネルギ情報生成部110によって取得された第一エネルギ情報が用いられる。以下、式(1)について、第一エネルギ情報が第一エネルギ消費量としての電力消費量である例を用いて説明する。pnは、説明変数である。nは、2以上の自然数であり、第二範囲AR2の数、すなわち製造ラインLnの数を意味する。p1~pnは、複数の製造ラインL1~Lnに付された1~nの数値と対応付けられており、設備稼働情報生成部114によって取得された複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれの設備稼働情報が用いられる。本実施形態では、設備稼働情報として生産数が用いられ、p1~pnには、製造ラインL1~Lnのそれぞれの生産数が用いられる。
【0068】
anは、係数であり、本開示の重回帰分析の結果として得られる値である。nは、2以上の自然数であり、pnが有するnと同様である。anは、第二範囲AR2それぞれの第二エネルギ消費量の推定値に相当する。E0は、切片であり、本開示の重回帰分析の結果として得られる値である。E0は、例えば、工場200において製造ラインLn以外の設備によって消費される電力消費量などの生産設備以外により消費されるエネルギ消費量を含む第三エネルギ消費量や、製造ラインLnの停止時間中における待機状態での製造ラインLnによる電力消費量など、工場200において可動時間以外に消費される電力消費量の総量の推定値として導出される。
【0069】
本実施形態では、第二エネルギ情報として、さらに、単位時間あたりにおける第二範囲AR2での二酸化炭素排出量を算出する。第二範囲AR2での二酸化炭素排出量は、第一範囲AR1での二酸化炭素排出量と、設備稼働情報とを用いた重回帰分析により導出されてもよく、ステップS330により得られた第二範囲AR2の電力消費量それぞれに排出係数を乗じることにより導出されてもよい。
【0070】
ステップS340では、指標生成部116は、算出した第二エネルギ消費量と、設備稼働情報とを用いて、指標を生成する。指標生成部116は、指標としてCO2排出指数を算出する。「CO2排出指数」とは、生成した設備稼働情報に対する二酸化炭素排出量の比率を意味する。本実施形態では、指標生成部116は、設備稼働情報のうち生産数を用いてCO2排出指数を算出する。具体的には、指標生成部116は、以下の式(2)を用いてCO2排出指数を算出する。
CO2排出指数(g・CO2/個)=二酸化炭素排出量(g・CO2)/生産数 ・・・式(2)
【0071】
生産数を用いたCO2排出指数に代えて、またはこれとともに可動時間に対する第二エネルギ消費量の比率がCO2排出指数として算出されてもよい。また、CO2排出指数は、上記式(2)において、生産数に代えて生産金額を用いて算出されてもよい。生産金額は、生産数分の製品がすべて販売された場合の売上高に相当する。生産金額は、例えば、以下の式(3)によって算出することができる。
生産金額=生産数×加工対象品の単価 ・・・式(3)
CO2排出指標に、金額に関する指標である生産金額を用いることにより、設備稼働情報に対する二酸化炭素排出量の比率を金額に関連付けて視認することができ、使用者の改善意欲を喚起することができる。CO2排出指数は、生産金額に代えて、例えば、生産設備30の稼働時間を用いてもよく、生産設備30の生産能力に関する種々の設備稼働情報を用いてもよい。
【0072】
図11に示すように、ステップS350では、指標生成部116は、生成した指標を用いて、指標を統計的に示す数値およびグラフを、表示部14に表示するための表示用データとして生成する。生成した表示用データは、表示部14ならびに端末装置PD1,PD2および情報処理装置PCに出力されて、本フローは終了する。表示部14、端末装置PD1,PD2、および情報処理装置PCには、生成された表示用データに基づく画面が表示される。
【0073】
図12は、設備稼働情報生成部114および第一エネルギ情報生成部110によって取得された設備稼働情報および第一エネルギ情報の一例を示す説明図である。
図12に示す表TB1には、特定の一週間の平日の日時情報、対応する日時に取得された設備稼働情報および第一エネルギ情報、ならびに重回帰分析による第二エネルギ情報の算出結果の例が示されている。表TB1は、表示用データとして、表示部14、端末装置PD1,PD2、および情報処理装置PCに表示されてもよい。なお、図示の便宜の観点から表TB1の一部のデータは省略されている。
【0074】
表TB1は、複数の表示領域DC1~DC6に区分されている。表示領域DC1は、設備稼働情報生成部114および第一エネルギ情報生成部110が設備稼働情報および第一エネルギ情報を取得した日時が表示されている。表示領域DC2には、複数の製造ラインL1~Lnのそれぞれの設備稼働情報が示されている。本実施形態において、表示領域DC2には、設備稼働情報としての生産数が示されており、その単位は、例えば「個」である。表示領域DC3には、複数の製造ラインL1~Lnによる生産数の総量が示されている。
【0075】
表示領域DC4には、第一エネルギ情報生成部110によって算出された、予め定められた単位時間(本実施形態において、10分)ごとの第一範囲AR1での電力消費量が表示されている。表示領域DC5には、第一エネルギ情報生成部110によって算出された、予め定められた単位時間(本実施形態において、10分)ごとの第一範囲AR1での二酸化炭素排出量が表示されている。第二エネルギ情報生成部112は、表TB1に示されるデータのうち、表示領域DC2に示される製造ラインL1~Lnの生産個数と、表示領域DC4に示される電力消費量とを用いて重回帰分析を行い、製造ラインL1~Lnそれぞれの第二エネルギ消費量として、電力消費量ならびに二酸化炭素排出量を算出する。
【0076】
表示領域DC6には、重回帰分析によって得られた第二エネルギ消費量としての製造ラインL1~Lnそれぞれの二酸化炭素排出量が示されている。具体的には、特定の一週間のうち平日5日間での二酸化炭素排出量の合計値である。さらに、製造ラインL1~Lnそれぞれの電力消費量が示されてもよい。表示領域DC6には、「その他」として、重回帰分析によって得られた第三エネルギ消費量に相当する切片の値と、第二エネルギ消費量の総計とが示されている。なお、第二エネルギ消費量の総計は、第一エネルギ消費量に相当する。表示領域DC6あるいはそれ以外の表示領域において、さらに、製造ラインL1~Lnの加工対象品1個あたりの電力消費量ならびに加工対象品1個あたりの二酸化炭素排出量の情報が表示されてもよい。製造ラインL1~Lnごとの第二エネルギ消費量に対する生産効率を視認しやすくすることにより、作業者等の改善意欲を喚起することができる。
【0077】
重回帰分析に用いるデータ数(いわゆるN数)は、任意に設定することができる。第二エネルギ情報の推定精度を向上させる観点から多いほど好ましく、例えば、説明変数の個数の10倍以上であることが好ましい。本実施形態では、工場200の製造ラインLnの数は30であり、重回帰分析に用いられるN数は300以上であることが好ましい。
図12の例では、N数は、設備稼働情報および第一エネルギ情報を取得する単位時間と、取得する期間とによって規定される。より具体的には、平日での工場200の稼働時間として、11月22日(月曜日)5時30分~11月26日(金曜日)24時00分までにおいて、10分を単位時間として、生産数、電力消費量、二酸化炭素排出量が取得されている。データ数は、N=687であり、重回帰分析による推定精度が充分に得られるデータ数が準備されている。
【0078】
第一エネルギ情報および設備稼働情報を取得する期間は、互いに統計的に有意差がない期間ごとに設定されることが好ましい。本実施形態では、第一エネルギ情報および設備稼働情報を取得する期間を、製造ラインLnの稼働状況に有意差がある休日と、平日とに分けて、休日と平日とのそれぞれの期間ごとに重回帰分析を行う。これにより、製造ラインLnの稼働状況が異なる時間帯ごとに第二エネルギ情報を推定し、第二エネルギ情報の推定精度を向上させることができる。
【0079】
図13は、指標生成部116によって生成される指標の一例としてのCO2排出指数の表示データTB2の例を示す説明図である。
図13に示す表示データTB2には、複数の領域DA1~DA3が含まれている。領域DA1には、特定のひと月における二酸化炭素排出量の日次推移が示されている。日次推移を表示することにより、所定の日や曜日の電力消費量および二酸化炭素排出量を容易に確認することができる。
図13の例では12月04日(土曜)および12月05日(日曜)の二酸化炭素排出量が少ないことを容易に視認することができる。領域DA2には、特定の日での単位時間(本実施形態において、10分)あたりの二酸化炭素排出量の推移が示されている。
【0080】
領域DA3には、縦軸をCO2排出指数とし、横軸に製造ラインL1~Lnに対応する製造工程の名称が表示されている。なお、図示の便宜の観点から、製造工程の名称を、符号A~Uを用いて示している。製造工程は、CO2排出指数が大きい順で配列されている。換言すれば、領域DA3には、製造工程が、CO2排出指数に対する改善の優先順位が高い順で示されている。
図13の例では、製造工程Aおよび製造工程Bにおける二酸化炭素排出量の観点での生産効率が悪いことが把握できる。このように表示データTB2により、改善を優先すべき製造工程を容易に把握することができる。
【0081】
以上、説明したように、本実施形態のエネルギ管理システムは、エネルギ消費量取得装置20aと、設備稼働情報取得装置20bと、情報管理装置10とを備えている。エネルギ消費量取得装置20aは、第一範囲AR1で消費される第一エネルギ消費量を計測するエネルギ消費量計としての電力メータ50に対して後付けで装着され、エネルギ消費量計が周期的に生成するパルスを検出して消費量検出信号として出力する消費量検出部25aと、消費量検出信号を送信するための消費量送信部と、を含んでいる。設備稼働情報取得装置20bは、複数の第二範囲AR2のそれぞれに含まれる少なくとも一の生産設備30に対して後付けで装着され、生産設備30による処理の開始タイミングを取得して第一信号として出力するタイミング情報検出部25bと、第一信号を送信するためのタイミング情報送信部と、を含んでいる。情報管理装置10は、エネルギ消費量取得装置20aから受信した消費量検出信号を用いて、第一エネルギ消費量を含む第一エネルギ情報を生成する第一エネルギ情報生成部110と、設備稼働情報取得装置20bから受信した第一信号を用いて、生産数と可動時間との少なくともいずれかを含む設備稼働情報を生成する設備稼働情報生成部114と、生成した第一エネルギ情報および設備稼働情報を用いた重回帰解析により、複数の第二範囲AR2のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を算出し、第二エネルギ消費量を含む第二エネルギ情報を生成する第二エネルギ情報生成部112と、を含んでいる。本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、第一エネルギ情報および設備稼働情報を用いた重回帰解析により、第二範囲AR2に電力メータなどのエネルギ消費量を取得するための装置を設けることなく、複数の第二範囲のそれぞれで消費される第二エネルギ消費量を取得することができる。また、エネルギ消費量取得装置20aを生産設備30に対して後付けするという簡易な方法により、既設の製造ラインLnにおけるエネルギ消費量を取得し管理することができる。
【0082】
本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、第一エネルギ情報生成部110は、第一エネルギ情報として、さらに、生成した第一エネルギ消費量を用いて、第一範囲AR1で排出される二酸化炭素排出量を算出する。したがって、従来、電力メータ50によっては取得対象となっていなかった二酸化炭素排出量に関する情報を、電力メータ50とは異なる簡易なエネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bを用いることによって容易に取得することができる。
【0083】
本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、第二エネルギ情報生成部112は、第二エネルギ情報として、さらに、第一エネルギ情報または第二エネルギ消費量を用いて、複数の第二範囲AR2のそれぞれで排出される二酸化炭素排出量を算出する。したがって、二酸化炭素排出量を検出するための装置を第二範囲AR2のそれぞれに設けることなく、複数の第二範囲AR2で排出される二酸化炭素排出量を取得することができる。
【0084】
本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、さらに、算出した第二エネルギ消費量と、設備稼働情報とを用いて、生産数に対する第二エネルギ消費量の比率、および可動時間に対する第二エネルギ消費量の比率の少なくともいずれかを算出する指標生成部116を備えている。本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、設備稼働情報に対する二酸化炭素排出量の比率を指標として表すことにより、二酸化炭素排出量に対する生産設備30の生産効率を容易に把握することができる。
【0085】
本実施形態のエネルギ管理システム100によれば、設備稼働情報生成部114は、さらに、停止タイミングを用いて設備稼働情報を生成する。生産設備30の停止タイミングを取得することにより、生産設備30のサイクルタイムや停止時間などの設備稼働情報をより正確に算出することができ、生産設備30の生産状況をより詳細に把握することができる。
【0086】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、消費量検出部25aのみが消費量検出部として機能する例を示した。これに対して、消費量検出部25aとコントローラ23aとによって消費量検出部が実現されてもよい。コントローラ23aは、消費量検出部25aから受信したパルス信号を記憶装置に格納しておき、情報管理装置10から受信した実行命令に応じて、消費量検出信号を情報管理装置10に対して送信する処理を実行してもよい。
【0087】
(B2)上記実施形態においては、情報管理装置10およびエネルギ消費量取得装置20aおよび設備稼働情報取得装置20bは、無線通信にて通信を行っているが、有線通信によって行われてもよい。例えば、生産設備30の近傍に有線ローカルエリアネットワーク(LAN)接続ポートが備えられている場合には、接続ポートを利用することによって新たな配線の手間を省くことができ、無線通信と同様にして簡易にエネルギ管理システム100を導入することができる。
【0088】
(B3)上記実施形態では、設備稼働情報取得装置20bが、生産設備30による処理の開始タイミングに対応する第一信号と、処理の停止タイミングに対応する第二信号とを情報管理装置10に送信し、情報管理装置10が第一信号と第二信号とを用いて、設備稼働情報および指標を生成する例を示した。これに対して、情報管理装置10は、生産設備30による処理の開始タイミングのみ、すなわち第一信号のみを取得して、開始タイミングのみを用いて設備稼働情報および指標を生成する構成であってもよい。この場合には、設備稼働情報取得装置20bにおいて、検出部25bは、生産設備30による処理の開始タイミングを検出し、コントローラ23bが検出部25bから受信したパルス信号を用いて第一信号のみを生成してよい。設備稼働情報取得装置20bは、第一信号を情報管理装置10に送信するための第一送受信部21b1と、第二送受信部21b2とのいずれか一方のみを備えてよい。このようにすることで設備稼働情報取得装置20bを簡易な構成とすることができ、情報管理装置10での処理を簡易化できる。なお、情報管理装置10は、第二信号のみを取得し、停止タイミングのみを用いて設備稼働情報および指標を生成する構成であってもよい。開始タイミングのみを用いて設備稼働情報および指標を生成する場合において、設備稼働情報生成部114は、第一信号からその次の第一信号を受信するまでの期間をサイクルタイムとして取得してよい。
【0089】
(B4)上記実施形態では、消費量検出部25aは、電力メータ50に装着されるパルス検出器である例を示した。これに対して、消費量検出部25aは、パルス検出器以外の検出器であってもよい。例えば、電力メータ50がパルス信号を出力しない、いわゆるアラゴの円板を利用する積算電力計(誘導型電力量計)である場合には、消費量検出部25aは、当該円板の回転数を検出することにより、電力消費量を、電力メータ50から周期的に生成される予め定められたエネルギ単位ごとに取得する。消費量検出部25aを磁気センサとし、例えば、円板または円板の回転軸に金属片や磁石を設けることにより、円板の周回を検出することにより電力消費量を検出することができる。また、円板にスリットを設ければ、赤外線センサとしての消費量検出部25aを用いることにより、電力消費量を検出することができる。
【0090】
(B5)上記実施形態では、生産設備のエネルギ消費状況として、生産設備30による電力消費量を例に説明した。これに対して、検出する対象となるエネルギは、電力には限らず、ガス、灯油(ケロシン)や重油を含む液体燃料などの種々のエネルギであってもよい。例えば、生産設備30によるガス消費量を検出する場合には、電力メータ50に代えて、ガス消費量を計測するためのガス消費量計に対して、消費量検出部25aを接続することにより上記実施形態と同様の効果を得ることができる。ガス消費量計がパルス発信機能を備える場合には、ガス消費量計から出力される予め定められた流量ごとのパルス信号を、消費量検出部25aにより消費量検出信号として取得することができる。
【0091】
(B6)上記実施形態では、特定の一週間の第二エネルギ情報を推定するために、特定の一週間の平日の第一エネルギ情報および設備稼働情報のデータが10分を単位時間として取得される例を示した。これに対して、一週間には限らず、一日、一ヶ月、一年などの任意の期間の第二エネルギ情報を推定することもできる。また、第一エネルギ情報および設備稼働情報を取得する単位時間は、10分には限らず、1分、1時間、1日などの任意の期間であってもよい。第一エネルギ情報および設備稼働情報を取得する単位時間は、説明変数の個数、ならびに重回帰分析により第二エネルギ情報を推定する期間に応じて設定されることが好ましい。また、平日と休日とに分けて第一エネルギ情報および設備稼働情報を取得する場合には限らず、例えば、平日と休日のほか、製造ラインLnのメンテナンスなどの製造ラインLnの停止期間、工場の操業計画など、エネルギ消費状況の傾向が異なる要素を予め抽出して、異なる傾向を示す期間ごとに重回帰分析を行ってもよい。情報管理装置10が、一定期間で得られたデータを用いて統計的に有意差の有無を判断して、有意差が異なるクラスタごとに重回帰分析を行ってもよい。
【0092】
(B7)上記実施形態では、第二エネルギ情報生成部は、第一エネルギ情報と、生産数とを用いた重回帰解析により、第二エネルギ消費量を算出する例を示した。これに対して、第二エネルギ情報生成部は、第一エネルギ情報および生産数に加え、さらに可動時間を用いた重回帰解析により、第二エネルギ消費量を算出してもよい。この場合には、設備稼働情報生成部は、生産数および可動時間の双方を設備稼働情報として生成してもよい。また、第二エネルギ情報生成部は、第一エネルギ情報、生産数、および可動時間に加え、さらに生産数および可動時間以外の設備稼働情報を用いてもよい。加工対象品を加熱する処理を行う生産設備30では、生産設備30の温度が低い場合には、温度が高い場合に比べて電力消費量が大きくなり得る。そのため、例えば、生産設備30の温度は、エネルギ消費量の変動に対して有意な因子であると考えることができ、設備稼働情報として取得し得る。複数の種類の設備稼働情報が用いられる場合には、第二エネルギ情報生成部は、例えば、以下の式(4)を用いた重回帰分析により、複数の第二範囲AR2のそれぞれの第二エネルギ消費量Ekを算出することができる。
【0093】
【数1】
Et:第一エネルギ情報。
Ek:第二エネルギ消費量。
E0k:設備稼働情報の種類ごとの切片。
n:第二範囲Ar2(製造ラインLn)の数。ただし、nは、2以上の自然数。
m:設備稼働情報の種類の数。ただし、mは、2以上の自然数。
【0094】
この形態の管理システム100によれば、重回帰分析の因子を増加させることにより、第二エネルギ消費量の推定精度を向上させることができる。
【0095】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0096】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
AR1…第一範囲、AR2…第二範囲、DA1~DA3…領域、DC1~DC6…表示領域、L1~Ln…製造ライン、PC…情報処理装置、PD1,PD2…端末装置、TB1…表、TB2…表示データ、10…情報管理装置、11…CPU、12…記憶装置、13…送信・受信部、14…表示部、15…入力装置、16…タイマ、17…バス、20a…エネルギ消費量取得装置、20b…設備稼働情報取得装置、21a…送受信部、21b1…第一送受信部、21b2…第二送受信部、23a,23b…コントローラ、25a…消費量検出部、25b…タイミング情報検出部、30…生産設備、40…シグナルタワー、41…搬送機構、50…電力メータ、52…電力計量部、60…分電盤、70…配電線、100…エネルギ管理システム、110…第一エネルギ情報生成部、112…第二エネルギ情報生成部、114…設備稼働情報生成部、116…指標生成部、121…第一エネルギ情報記憶部、122…第二エネルギ情報記憶部、124…設備稼働情報記憶部、126…指標記憶部、200…工場、310…筐体