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特開2023-121390緩み検出機能付きねじ構造、ねじ緩み検出システム、およびねじ緩み検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121390
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】緩み検出機能付きねじ構造、ねじ緩み検出システム、およびねじ緩み検出方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20230824BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20230824BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F16B31/02 Z
F16B43/00 Z
F16B35/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024711
(22)【出願日】2022-02-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】霜田 智紀
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA03
3J034DA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単な構成でねじの緩みを検出することを目的とする。
【解決手段】緩み検出機能付きねじ構造は、外周にねじを有する軸部1の一端に、軸部1より大きな外径の導電性材料により構成された頭部2と、該頭部2に軸部1からの半径方向への距離を互いに異ならせて設けられた複数の突起3A、3Bと、頭部2とのねじ込み面との間に設けられたワッシャと、該ワッシャ4に軸部1を中心とし、前記突起の半径方向への距離に対応する同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位5A、5Bとを有し、複数の前記接触部位5A、5Bは、軸部1を中心とする円周方向の少なくとも一部でワッシャ4の面方向に分割されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にねじを有する軸部と、
この軸部の一端に設けられ、軸部より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部と、
該頭部における前記軸部の他端側を向く面に、前記軸部からの半径方向への距離を互いに異ならせて設けられた複数の突起と、
前記軸部がねじ込まれる面と前記頭部との間に設けられたワッシャと、
該ワッシャの前記頭部側の面に形成され、前記軸部を中心とし、複数の前記突起の前記軸部の半径方向への距離に対応する同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位と、
を有し、
複数の前記接触部位は、それぞれ、前記軸部を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されている、
ことを特徴とする緩み検出機能付きねじ構造。
【請求項2】
前記接触部位は、前記面と前記頭部との間に挟まれるワッシャの表面に形成された導体層である、
請求項1に記載の緩み検出機能付きねじ構造。
【請求項3】
前記接触部位は、前記円周方向に沿って所定の相互間隔で配置された、
請求項1または2のいずれか1項に記載の緩み検出機能付きねじ構造。
【請求項4】
前記ワッシャの前記頭部と反対側を向く面に、複数の前記接触部位のそれぞれに接続され、互いに絶縁された接続端子部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の緩み検出機能付きねじ構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の緩み検出機能付きねじ構造を有し、
さらに、複数の前記接触部位の間の電気的な導通の有無を検出する検出回路を有する、
ねじ緩み検出システム。
【請求項6】
前記ワッシャの前記頭部と反対側を向く面に前記接触部位と導通状態となるプリント回路基板を有し、
該プリント回路基板に前記検出回路を接続した、
請求項5に記載のねじ緩み検出システム。
【請求項7】
外周にねじを有する軸部と、この軸部の一端に設けられ、軸部より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部と、該頭部における前記軸部の他端側を向く面に設けられた複数の突起とを備えるねじ部材を、前記軸部がねじ込まれる面と前記頭部との間に介在するワッシャの前記頭部側に設けられ、前記軸部を中心とする同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位の中心に位置するねじ穴にねじ込むねじ込み工程と、
前記ねじ部材の複数の前記突起が複数の前記接触部位に接触するまで前記ねじ部材をねじ込む締付け工程と、
前記ねじ部材の複数の前記突起との接触により複数の前記接触部位の間の電気的な導通状態を検出する工程と、
を有し、
複数の前記接触部位は、それぞれ、前記軸部を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されており、前記ねじ部材をねじ込む工程によって、前記接触部位の分割されたいずれかの領域に前記突起を接触または非接触とすることを特徴とする、
ねじ緩み検出方法。
【請求項8】
前記ねじ部材を所定の締め付け力でねじ込んだ時の前記突起の導通の有無を検出して記憶する工程と、
導通の有無を記憶した後に導通の有無を検出する工程と、
検出した導通の有無と、記憶された導通の有無とが一致か不一致かによって前記ねじ部材の緩みを判定する工程と、
を有する請求項7に記載のねじ緩み検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み検出機能付きねじ構造、ねじ緩み検出システム、およびねじ緩み検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を始めとする様々な装置に、ボルトとねじ穴、あるいは、ボルトとナットとを用いた固着機構が採用されている。
前記ねじを利用した固着に関連する技術分野にあっては、ねじの緩みを容易かつ迅速に発見して確実な固着を維持することが求められるが、ネジの緩みは、固着後に強固な固着を目指して増し締めをした場合、あるいは、緩みによりボルトの頭部の固着個所から浮き上がり、目視で判別出来る場合、すなわち、既に固着力が低下して初めて発見される場合が多く。固着力の低下に伴う装置の不具合を未然に防止することは困難である。
【0003】
本発明に関連する特許文献1には、ボルトの頭部とワッシャとの間にボルトの締め込み、緩みに伴って近接、離間することにより開閉される接点を有するスイッチを設け、このスイッチの開閉を検出する技術が開示されている。
本発明に関連する特許文献2には、プリント配線基板上のねじ締結部(ボルト穴が形成された領域)に形成した二つのランド(プリントパターン)上に圧潰部と称する突起を設け、この圧潰部がボルト締結に伴う圧縮力によって潰れることにより、二つのランドを導通させ、この導通状態を監視することにより緩みを検出する技術が開示されている。
本発明に関連する特許文献3には、ボルトと該ボルトがねじ込まれる被固定部材との間に感知座金と称する部材を介在させ、この感知座金を構成する上下に重ねられた楔状カム面の相対回転に伴う軸方向への変位によってボルトの緩みを吸収し、さらに、感知座金の変形を検出することによって締め付け力の変化を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-064111号公報
【特許文献2】特開2013-122418号公報
【特許文献3】特開2021-169998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、ボルトの緩みによる軸方向への移動量が前記スイッチを開閉動作させるに足る大きさであることが必要であるから、締め付け強さの精密な管理に対応することが難しいという課題がある。
また特許文献2に記載された技術は、前記特許文献1と同様、締め付けトルクの精密な管理に利用することが難しいとともに、プリント配線基板の表面の導体パターンを接点として利用することから、プリント配線基板の固着に用途が限られ、また導通の有無の判定に不可欠な圧潰部が最初の締め付けに伴って圧潰することから、反復的にボルトを締め付け、あるいは緩める操作を繰り返す用途に使用することができないという課題がある。
また特許文献3に記載れた技術は、二つの楔状カム面を形成するために精密な機械加工が必要であることから、感知座金の製作に多くの工数を要し、コストがかかるという課題がある。
問題がある。
【0006】
この発明は、簡易な構成によりボルトの小さな緩みの検出を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の第1の態様にかかる緩み検出機能付きねじ構造は、以下の手段を提案している。
この緩み検出機能付きねじ構造は、外周にねじを有する軸部と、この軸部の一端に設けられ、軸部より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部と、該頭部における前記軸部の他端側を向く面に、前記軸部からの半径方向への距離を互いに異ならせて設けられた複数の突起と、前記軸部がねじ込まれる面と前記頭部との間に設けられたワッシャと、該ワッシャの前記頭部側の面に形成され、前記軸部を中心とし、複数の前記突起の前記軸部の半径方向への距離に対応する同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位と、を有し、複数の前記接触部位は、それぞれ、前記軸部を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されていることを特徴とする。
【0008】
また本願の第2の態様にかかるねじ緩み検出方法は、外周にねじを有する軸部と、この軸部の一端に設けられ、軸部より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部と、該頭部における前記軸部の他端側を向く面に設けられた複数の突起とを備えるねじ部材を、前記軸部がねじ込まれる面と前記頭部との間に介在するワッシャの前記頭部側に設けられ、前記軸部を中心とする同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位の中心に位置するねじ穴にねじ込むねじ込み工程と、前記ねじ部材の複数の前記突起が複数の前記接触部位に接触するまでねじ込む締付け工程と、前記ねじ部材の複数の前記突起との接触により複数の前記接触部位の間の電気的な導通状態を検出する工程とを有し、複数の前記接触部位は、それぞれ、前記軸部を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されており、前記ねじ部材をねじ込む工程によって、前記接触部位の分割されたいずれかの領域に前記突起を接触または非接触とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成によりねじの緩みを検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかる緩み検出機能付きねじ構造の最小構成例を示すもので、(a)は下面図、(b)は正面図である。
図2】本発明にかかるねじ緩み検出方法の工程図である。
図3】本発明の第1実施形態にかかるねじ緩み検出装置に使用されるねじを示すもので、(a)は下面図、(b)は正面図である。
図4】第1実施形態にかかるねじ緩み検出装置に使用されるワッシャを示すもので、(a)は上面図、(b)は(a)のX~O~Y矢視線に沿う断面図、(c)は下面図である。
図5】第1実施形態にかかるねじ緩み検出装置に使用される検出用プリント回路基板を示すもので、(a)は上面図、(b)は軸線方向に沿う断面図である。
図6】第1実施形態にかかるねじ緩み検出装置の全体構成を示すもので、(a)は上面図、(b)は軸線方向に沿う断面図である。
図7】第1実施形態にかかるねじ緩み検出装置の使用態様を示すもので、(a)は上面図、(b)は軸線方向に沿う断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に使用されるワッシャの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る緩み検出機能付きねじ構造の最小構成例について図1を参照して説明する。
この緩み検出機能付きねじ構造は、外周にねじを有する軸部1と、この軸部1の一端に設けられ、軸部1より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部2と、該頭部2における前記軸部1の他端側を向く面に、前記軸部1からの半径方向への距離を互いに異ならせて設けられた複数の突起3A、3Bと、前記軸部1がねじ込まれる面と前記頭部2との間に設けられたワッシャと、該ワッシャ4の前記頭部2側の面に形成され、前記軸部1を中心とし、複数の前記突起の前記軸部の半径方向への距離に対応する同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位5A、5Bと、を有し、複数の前記接触部位5A、5Bは、それぞれ、前記軸部1を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、前記軸部1をねじ込む操作によって、複数の前記突起3A、3Bが前記複数の接触部位5A、5Bに接触してこれらの接触部位5A、5Bを前記頭部2を介して互いに電気的に接続することができる。また、前記接触部位5A、5Bがワッシャ4の面方向に分割されていることから、前記軸部1の回転角度により、前記突起3A、3Bが前記接触部位5A、5Bが存在する個所、あるいは、前記接触部位5A、5Bの分割個所に接触して、前記電気的な接続状態を切り換えてねじの回転を検出することができる。
【0013】
本発明に係るねじ緩み検出方法の最小構成例について、図1、2を参照して説明する。
この検出方法は、外周にねじを有する軸部1と、この軸部1の一端に設けられ、軸部1より大きな外径を有し、導電性材料により構成された頭部2と、該頭部2における前記軸部1の他端側を向く面に設けられた複数の突起3A、3Bとを備えるねじ部材を、前記軸部1がねじ込まれる面と前記頭部2との間に介在するワッシャ4の前記頭部2側の面に設けられ、前記軸部1を中心とする同心円状をなすとともに、互いに電気的に絶縁された複数の接触部位5A、5Bの中心に位置するねじ穴にねじ込むねじ込み工程SP1と、前記ねじ部材の複数の前記突起3A、3Bが複数の前記接触部位5A、5Bに接触するまで前記ねじ部材をねじ込む締付け工程SP2と、前記ねじ部材の複数の前記突起3A、3Bとの接触により複数の前記接触部位5A、5Bの間の電気的な導通状態を検出する工程SP3とを有し、複数の前記接触部位5A、5Bは、それぞれ、前記軸部1を中心とする円周方向の少なくとも一部で分割されており、前記ねじ部材をねじ込む工程によって、前記接触部位5A、5Bの分割されたいずれかの領域に前記突起3A、3Bを接触または非接触とすることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、前記軸部1をねじ込む操作によって、複数の前記突起3A、3Bが前記複数の接触部位5A、5Bに接触してこれらの接触部位5A、5Bを前記頭部2を介して互いに電気的に接続することができる。また、前記接触部位5A、5Bがワッシャ4の面方向に分割されていることから、前記軸部1の回転角度により、前記突起3A、3Bが前記接触部位5A、5Bが存在する個所、あるいは、前記接触部位5A、5Bの分割個所に接触して、前記電気的な接続状態が切り換えられ、この接続状態の検出からねじの回転を検出することができる。
【0015】
図1、2を具体化した本発明の第1実施形態に係る構成について図3図7を参照して説明する。なお、図3~7において、図1と共通の構成には同一符号を付し、説明を簡略化する。
ボルト、ビス等のねじ部材10は、全体が電気的に導通特性を持つ軟鋼等の材料で作られており、軸部1と頭部2とを主要な構成部分とする。前記頭部2の下面には、突起3A、3Bを備えている。
【0016】
前記突起3A、3Bは、前記ワッシャ4の上面の接触部位5A、5Bに接触させることを目的とし、該接触部位5A、5Bと同じ間隔で設けられている。詳細には、前記突起3A、3Bは、前記軸部1の中心軸線Oからの半径方向への距離が互いに異なり、また、前記接触部位5A。5Bは、前記突起3A、3Bの前記中心軸線Oからの距離に対応する径の同心円に沿って配置されている。
【0017】
図4(a)(b)(c)は前記ワッシャ4の詳細を示す。該ワッシャ4の前記ねじ部材10と接触する表面には、2つの電気的に導通特性を持つ材料で作られている前記接触部位5A、5B(50A、50B)が、それぞれ円形に(前記突起3A、3Bの半径方向への距離と同じ径の同心円上に)円周方向へ等間隔で配置されている。なお図4(a)(b)に示す厚さ(軸線O方向への寸法)が大きく、前記突起3A、3Bと接触可能な円周方向へ分割された接触部位に便宜上符号50A、50Bを付し、厚さの小さな円環状の(裏面側の)接触部位に符号51A、51Bを付して区別する。
円周方向に等間隔に配置された前記接触部位5A、5B(50A、50B)の間(半径方向の間)は樹脂等により構成された絶縁材料部40となっていて、接触部位5A、5B(50A、50B)を互いに電気的に絶縁している。
【0018】
接触部位5A(50A)はねじ部材10の突起3Aと接触し、接触部位5B(50B)はねじ部材10の突起3Bと接触するように同じ内径となっている。接触部位5A、5B(50A、50B)は、前記ワッシャ4の表面に形成された環状の(前記接触部位5A、5B(50A、50B)がなす同心円に沿う)溝41の中にあり、溝41の深さは、前記ねじ部材10の下面の突起3A、3Bの高さとほぼ同一の寸法となっている(正確には、突起3A、3Bの高さよりわずかに浅く、突起3A、3Bがわずかに圧縮状態に変形した際の高さに対応する深さとなっている)。また前記溝41は、前記突起3A、3Bの基端部(最も太い部分)よりわずかに大きな幅寸法を有する。
【0019】
なお前記ワッシャ4の中心には、前記ねじ部材10の軸部1が挿通される挿通孔42が形成されている。
また前記接触部位5A、5B、が配置され、互いに絶縁材料部40によって電気的に絶縁された領域の内周、外周には、ねじの締め付けに伴う圧縮に耐える強度を有する鋼などの材料により構成された内側環状部材43A、外側環状部材43Bがそれぞれ設けられている。
【0020】
前記接触部位5A,5Bは、図4(c)に示すように、前記ワッシャ4の裏面では円周方向に連続した円状の輪となっている。この裏面の円状の接触部位5A、5B(51A、51B)は、図5に示すプリント配線基板60の表面に形成された前記接触部位5A、5Bと同径の円状をなす導体パターン61A、61Bに接触可能に構成されている。
【0021】
前記導体パターン61A、61Bは、挿通孔62を中心にして前記ワッシャ4の接触部位5A、5Bの径と同じ距離に、例えば図5に示すように同心円状に形成されている。前記導体パターン61A、61Bからは、信号線63A、63Bが引き出され、該信号線63A、63Bは、例えば該プリント配線基板60上に搭載している検出回路(信号線63A、63Bから供給される二値信号に基づいてねじの緩みを判定する回路)64などに入力し、信号線の状態監視を行う。なお前記診断回路等は本信号を入力するためだけの専用回路で無くてもよい。
また、図5の例では、プリント配線基板60上の導体パターンは円形としているが、ワッシャの接触部位5A、5Bの中心からの距離と同じ距離に配置されていれば円形でなくても構わない。
【0022】
図6(a)(b)を参照して、一実施形態のねじ緩み検出装置の動作および、この検出装置を利用したねじ緩み検出方法の各工程を説明する。
前記ねじ部材10をワッシャ4に通し、さらに、プリント配線基板60を通してその下方の雌ねじ穴70(例えば、ねじ部材10の雄ねじに対応する雌ねじを有するナットや、筐体に形成されたねじ穴)に固定したときの動作を説明する。
前記ねじ部材10の軸部1を挿通孔42、62に通し、さらに下方の雌ねじ(図示略)にねじ込むと、前記頭部2の下面の突起3A、3Bがワッシャ4の上面に接近して行き接触する。
【0023】
前記突起3A、3Bが前記ワッシャ4の上面に接触した後、さらにねじ込むと、前記溝41に侵入して行き、接触部位50A、50Bが存在する領域(回転角度)で所定のトルクに達した場合には、前記接触部材50A、50Bが前記突起3A、3Bに接触し、導電性を有する前記頭部2を介し、図中矢印Aで示すように電流が流れる導通状態となり、接触部位51A,51B、さらにはこれと接触する導体パターン61A、61Bが導通状態となり、この導通状態が検出回路64によって検出される。
すなわち、前記突起3A、3Bが前記接触部位50A、50Bに接触することによって、“1”という二値データが検出回路64に検出され、初期値として記憶される。
なお前記ねじ部材10を所定のトルクで締め付ける(所定のトルクまで締め付けることにより初期の締め付け力を得る)ためのトルクの測定は、締め付け工具に生じる応力を検出することや、いわゆるトルクレンチを用いて所定のトルクで締め付ける等の周知の手段により行うことができる。
【0024】
また、図7(a)に示すように、前記突起3A、3Bが前記接触部位50A、50Bの存在しない領域まで角度θだけ回転して所定のトルクに達した場合には、前記接触部位51A、51Bの上方となる位置にあるため、中間に絶縁材料部40が介在し、突起3A、3Bが導通状態とならないため、接触部位51A,51B、さらにはこれと接触する導体パターン61A、61Bが非導通状態となり、この非導通状態が検出回路64によって検出される。
すなわち、前記突起3A、3Bが前記接触部位50A、50Bに接触しないことによって、“0”という二値データが検出回路64に検出され、初期値として記憶される。
【0025】
以上のステップにより、前記ねじ部材10を所定の締め付け力で締め付けた際の突起3A、3Bの導通状態を示す初期値を記憶した後、突起3A、3Bの導通状態を示す二値データを所定の周期で監視することにより、前記ねじ部材10の回転に伴う前記二値データの変化を知ることができ、わずかな緩みを検出して、締め付け力の低下を未然に防止することができる。
以上説明したように、前記ねじ部材10を所定のトルクでねじ込んだ状態における停止位置に接触部位50A、50Bが存在するか否かによって、“1”または“0”の二値データが検出回路64に記憶されているので、前記ねじ部材10が緩み(所定のトルクを下回る程度に回転し)、前記突起3A、3Bによる導通状態が、“1”から“0”、あるいは、“0”から“1”へ変化する。この変化を予め記憶された値との比較によって判定することにより、前記ねじ部材10の緩みを検出することができる。
したがって、振動や衝撃等により前記ねじ部材10が徐々に回転して必要な締め付け力が得られなくなる端緒となる初期の緩みに伴うなるわずかな回転を検出することが可能となる。
【0026】
なお実施形態にあっては、前記ねじ部材10の緩み方向への回転のみならず、締め付け方向への回転によっても二値データが変化するが、フェイルセーフの設計思想に基づき、締め付け方向への回転に伴う二値データの変化であっても緩み方向への回転と同様に警報等を発して目視点検や増し締め等の対応を執ることにより、緩みに起因する不具合の防止に寄与することができる。
【0027】
また前記構成によれば、ねじ部材の緩みの検出に歪ゲージ、圧電素子等を用いたセンサを用いることなく、単に突起3A、3Bの導通の有無による二値データにより判定することができるから、低コストで実現することができる。
【0028】
前記接触部位50A、50Bを設ける円周方向への間隔は上記第1実施形態に限定されるものではなく、さらに細かくすることによって、前記ねじ部材10のどの程度の回転により緩みを判定するかの分解能を変更することができる。
図8は第1実施形態より細かい分解能を実現した第2実施形態を示すものである。
図8にあっては、ワッシャ4の表面に設ける接触部位52A、52Bと絶縁材料部40との間隔を小さくすることによって、ねじ部材10の回転による緩みの検出精度を高めている。
【0029】
図6に示す第1実施形態と対比して説明すれば、第1実施形態では、接触部位50A、50Bを円形状に6箇所、30°分の長さで配置している(θ=30°)。これにより、第1実施形態では、ねじ部材10の回転量が30°回転した場合に(停止位置により30°以下となる場合もある)、緩みを検出することが可能となっているが、この第2実施形態では、接触部位52A、52Bの配置間隔を図8のように15°間隔に狭めてその数を増やすことによって、前記ねじ部材10の回転量が少ない場合であっても、緩みの検出が可能な構造となっている。
すなわち第2実施形態では、接触部位を第1実施形態の2倍の12箇所、15°分の長さで配置されたワッシャとすることによって、前記ねじ部材10の緩みが15°(停止位置により30°以下となる場合もある)であっても、その回転を検出することが可能となる。
【0030】
なお、接触部位の円周方向への分割数(実施形態におけるθの角度)、接触部位が存在する領域と存在しない領域 との円周方向への長さの比、接触部位の半径方向への寸法、ねじ部材、ワッシャ、プリント配線版の具体的形状は第1、第2実施形態に限定されるものではない。
さらに、ねじ部材の頭部の突起の個数は2個に限定されるものではなく、また、これらの配列は、実施形態の如く同一の半径方向(直線上)に沿って並ぶ配置に限定されるものではなく、円周方向へ位置をずらして配置しても良い。
【0031】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、緩み検出機能付きねじ構造、ねじ緩み検出システム、およびねじ緩み検出方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 軸部
2 頭部
3A、3B 突起
4 ワッシャ
5A、5B、50A、50B、51A、51B 接触部位
10 ねじ部材
40 絶縁材料部
41 溝
42 挿通孔
43A 内側環状部材
43B 外側環状部材
60 プリント配線基板
61A、61B 導体パターン
62 挿通孔
63A、63B 信号線
70 雌ねじ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明は、簡易な構成により、ワッシャに対して回転したボルトの小さな緩みの検出を可能にすることを目的とする。