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  • 特開-放熱器固定構造 図1
  • 特開-放熱器固定構造 図2
  • 特開-放熱器固定構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121391
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】放熱器固定構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
H05K7/20 E
H05K7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024713
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322AB02
5E322AB04
5E322AB07
5E322AB11
5E322EA10
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】電子部品の半田付け部への負荷を低減すること。
【解決手段】放熱器固定構造は、基板2に半田付けによって脚部3Bが接続された電子部品3の本体部3Aに固定される放熱器4と、基板2が固定される機器本体1に設けられた可撓性を有する取付部1Cと、放熱器4と取付部1Cとを接合する接合部材10と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に半田付けによって脚部が接続された電子部品の本体部に固定される放熱器と、
前記基板が固定される機器本体に設けられた可撓性を有する取付部と、
前記放熱器と前記取付部とを接合する接合部材と、
を含む、放熱器固定構造。
【請求項2】
前記取付部は、前記電子部品の前記脚部が前記基板に向けて延びる方向に沿って可撓性を有する、請求項1に記載の放熱器固定構造。
【請求項3】
前記電子部品の前記本体部を支持する支持部材を含み、前記支持部材は、前記放熱器と共に前記接合部材によって前記取付部に接合される可撓性を有する接続部を備える、請求項1または2に記載の放熱器固定構造。
【請求項4】
前記取付部と前記接続部との間で前記放熱器を挟み、前記接合部材を前記取付部から前記放熱器を介して挿通し前記接続部に接合する、請求項3に記載の放熱器固定構造。
【請求項5】
前記電子部品の前記本体部を前記放熱器と前記支持部材とで挟んで固定し、前記放熱器と前記支持部材との間に所定方向に貫通する空間部を設ける、請求項3または4に記載の放熱器固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱器固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、基板に半田付けされる電子部品を放熱器にネジで固定し、当該放熱器を基板および筐体板金に取り付ける構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-236185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筐体板金と、放熱器のネジ固定部と、電子部品が半田付けされる基板との位置の寸法精度を出すことが難しいため、放熱器を剛構造で固定すると基板への電子部品の半田付け部に負荷がかかりやすくなる。そして、半田付け部に負荷がかかると、当該部分にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、電子部品の半田付け部への負荷を低減することのできる放熱器固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の放熱器固定構造は、基板に半田付けによって脚部が接続された電子部品の本体部に固定される放熱器と、前記基板が固定される機器本体に設けられた可撓性を有する取付部と、前記放熱器と前記取付部とを接合する接合部材と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子部品の半田付け部への負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の放熱器固定構造を表す斜視図である。
図2図2は、実施形態の放熱器固定構造を表す一部裁断斜視図である。
図3図3は、実施形態の放熱器固定構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0010】
図1から図3に示すように、実施形態の放熱器固定構造は、例えば、車両の車室内部に搭載される電子機器100に適用される。電子機器100は、例えば、AV(Audio Visual)一体型のカーナビゲーション装置がある。
【0011】
電子機器100は、機器本体1と、基板2と、電子部品3と、放熱器4と、支持部材5と、を含む。
【0012】
機器本体1は、基板2、電子部品3、放熱器4、および支持部材5を収容する筐体であり、上下方向(X方向)、左右方向(Y方向)、前後方向(Z方向)を囲む板部材を有する。図1においては、板金からなる板部材として、左右方向の一方の側板1Aと、上下方向の上板1Bとを示し、他の板部材を省略している。また、機器本体1の前側は、板部材としてディスプレイパネルが設けられる。なお、上下方向(X方向)を鉛直方向ともいい、上下方向(X方向)と前後方向(Z方向)を合わせた面を鉛直面といい、左右方向(Y方向)を水平方向ともいい、左右方向(Y方向)と前後方向(Z方向)を合わせた面を水平面という。
【0013】
基板2は、プリント基板であり板状に形成され、機器本体1の内部において、板面が水平面に沿って配置される。基板2は、機器本体1において水平面に沿う板部材、例えば、図示しない底板や中板に対してネジ6によって固定される。
【0014】
電子部品3は、集積回路(IC:Integrated Circuit)などの電子デバイスであって、矩形状の本体部3Aと、本体部3Aの外部に延びる脚部3Bと、で構成される。電子部品3は、脚部3Bが基板2の孔2Aに挿通されて半田7(図3参照)によって半田付けされる。実施形態では、電子部品3は、水平面に沿って配置された基板2の孔2Aに対して上下方向に脚部3Bが挿通される。
【0015】
放熱器4は、電子部品3の放熱を行うものであり、アルミ合金などの熱伝導性の高い部材で構成される。放熱器4は、伝熱部4Aと、放熱部4Bと、を有する。伝熱部4Aは、電子部品3の本体部3Aの外面に沿って接触できるように板状に形成される。伝熱部4Aは、実施形態では、本体部3Aの鉛直面に接触するように鉛直面を有するように上下方向に延びる板状に形成される。伝熱部4Aは、ネジ8によって本体部3Aに接触して固定される。従って、伝熱部4Aは、電子部品3の本体部3Aの熱が伝わる。放熱部4Bは、伝熱部4Aの上方の端部に連続して設けられる。放熱部4Bは、伝熱部4Aの上方の端部から水平方向に折れ曲がる水平部4Baと、水平部4Baの延びた端部から上方に折れ曲がる鉛直部4Bbと、鉛直部4Bbの延びる途中と、延びた端部から水平方向に延びるフィン部4Bcと、を有する。従って、放熱部4Bは、伝熱部4Aに伝わった熱を水平部4Ba、鉛直部4Bb、およびフィン部4Bcから放熱する。
【0016】
支持部材5は、電子部品3を保持するものであり、板金で構成される。支持部材5は、固定部5Aと、支持部5Bと、を有する。固定部5Aは、電子部品3の本体部3Aの外面に沿って接触できるように絞り加工が施され板状に形成される。固定部5Aは、実施形態では、本体部3Aの鉛直面に接触するように鉛直面を有するように上下方向に延びる板状に形成される。固定部5Aは、本体部3Aを放熱器4の伝熱部4Aとで挟むように配置され、伝熱部4Aを固定するネジ8によって本体部3Aに接触して固定される。また、固定部5Aは、放熱器4における放熱部4Bのフィン部4Bcの延びた先端部と向き合って配置され、フィン部4Bcの先端部側を塞ぐように前後方向に貫通する空間部9を構成する。支持部5Bは、本体部3Aの両側を囲むように固定部5Aの両側端部から折れ曲がって延びる。支持部5Bは、下部が基板2の水平面に当接すると共に、放熱器4の伝熱部4Aの下端が当接する。これにより、支持部材5は、電子部品3の本体部3Aおよび放熱器4にかかる荷重を基板2に受けさせて本体部3Aおよび放熱器4を支持する。また、支持部材5は、板金からなるため、電子部品3の本体部3Aの熱が伝わる。
【0017】
このように構成された電子機器100に対し、放熱器4を固定する放熱器固定構造は、機器本体1に設けられた取付部1Cと、支持部材5に設けられた接続部5Cと、放熱器4と取付部1Cと接続部5Cとを接合するネジからなる接合部材10と、を含む。
【0018】
取付部1Cは、機器本体1であって、実施形態では上板1Bに設けられる。取付部1Cは、上板1Bの板金を型抜きして形成される。取付部1Cは、上板1Bに形成される開口部1Baの縁から開口部1Baの内側に水平方向に延びる舌片状に構成される。取付部1Cは、開口部1Baの縁から延びる基部に切欠1Caaによって可撓性を有する撓み部1Caが形成される。取付部1Cは、図3に二点鎖線で示すように撓み部1Caによって上下方向に弾性変形して撓む。また、取付部1Cは、開口部1Baの縁から延びる先端部に上下方向に貫通する貫通孔1Cbが形成される。貫通孔1Cbは、接合部材10であるネジが挿通される。
【0019】
接続部5Cは、支持部材5であって、実施形態では固定部5Aに設けられる。接続部5Cは、固定部5Aと共に板金から形成される。接続部5Cは、固定部5Aの上方に延びた先端部を折り曲げて水平方向に延びる舌片状に構成される。接続部5Cは、折り曲げられた基部に切欠5Caaによって可撓性を有する撓み部5Caが形成される。接続部5Cは、図3に二点鎖線で示すように撓み部5Caによって上下方向に弾性変形して撓む。また、接続部5Cは、水平方向に延びる先端部に上下方向に貫通するネジ孔5Cbが形成される。ネジ孔5Cbは、接合部材10であるネジが捩じ込まれる。
【0020】
放熱器4は、最上位置のフィン部4Bcに上下方向に貫通する貫通孔4Cが形成される。貫通孔4Cは、接合部材10であるネジが挿通される。
【0021】
この放熱器固定構造は、接合部材10によって機器本体1に対して取付部1Cを介して放熱器4の上端部が固定される。従って、電子部品3の本体部3Aに固定される放熱器4は、可撓性を有する取付部1Cを介して機器本体1に固定される。また、放熱器固定構造は、接合部材10によって機器本体1に対して取付部1Cおよび接続部5Cを介して支持部材5の上端部が固定される。従って、放熱器4と共に電子部品3の本体部3Aに固定される支持部材5は、可撓性を有する取付部1Cおよび接続部5Cを介して機器本体1に固定される。
【0022】
なお、上述した実施形態に限らず、取付部1Cが上板1Bではなく側板1Aに設けられていてもよい。また、上述した実施形態に限らず、図において、X方向を水平方向とし、Y方向またはZ方向を鉛直方向とした配置であってもよい。
【0023】
このように、実施形態の放熱器固定構造は、基板2に半田付けによって脚部3Bが接続された電子部品3の本体部3Aに固定される放熱器4と、基板2が固定される機器本体1に設けられた可撓性を有する取付部1Cと、放熱器4と取付部1Cとを接合する接合部材10と、を含む。
【0024】
この放熱器固定構造によれば、電子部品3の本体部3Aに固定される放熱器4は、電子部品3の脚部3Bが半田付けされた基板2を固定する機器本体1に対し、機器本体1に設けられた取付部1Cの撓みを介して接合される。従って、実施形態の放熱器固定構造は、接合の際、電子部品3の基板2への半田付けの接続の位置精度や、放熱器4の電子部品3への固定の位置精度や、基板2の機器本体1への固定の位置精度に誤差が生じても、当該誤差を取付部1Cの撓みで吸収しつつ、放熱器4を機器本体1に接合できる。従って、実施形態の放熱器固定構造は、上記位置精度の誤差による電子部品3の半田付け部への負荷を低減できる。
【0025】
また、実施形態の放熱器固定構造では、取付部1Cは、電子部品3の脚部3Bが基板2に向けて延びる上下方向に沿って可撓性を有する。
【0026】
この放熱器固定構造によれば、半田付け部においては、脚部3Bが延びて基板2の孔2Aに挿通される方向に負荷がかかることでクラックが生じやすく、当該方向に取付部1Cの撓みを生じさせることで、クラックが生じやすい方向で半田付け部にかかる負荷を低減できる。従って、実施形態の放熱器固定構造は、半田付け部へのクラックの発生を抑えることができる。
【0027】
また、実施形態の放熱器固定構造では、電子部品3の本体部3Aを支持する支持部材5を含み、支持部材5は、放熱器4と共に接合部材10によって取付部1Cに接合される可撓性を有する接続部5Cを備える。
【0028】
支持部材5は、電子部品3の本体部3Aに固定されるが、電子部品3の基板2への半田付けの接続の位置精度や、支持部材5の電子部品3への固定の位置精度や、基板2の機器本体1への固定の位置精度に誤差が生じると、電子部品3の半田付け部への負荷が生じるおそれがある。この点、実施形態の放熱器固定構造によれば、支持部材5は、可撓性を有する接続部5Cを介して放熱器4と共に接合部材10によって取付部1Cに接合されるため、接合の際、上記誤差を接続部5Cおよび取付部1Cの撓みで吸収しつつ、支持部材5を放熱器4と共に機器本体1に接合できる。従って、実施形態の放熱器固定構造は、上記位置精度の誤差による電子部品3の半田付け部への負荷を低減できる。しかも、この放熱器固定構造は、接合部材10を取付部1Cおよび接続部5Cの接合に共用でき、部品点数の増加を防げる。
【0029】
また、実施形態の放熱器固定構造では、取付部1Cと接続部5Cとの間で放熱器4(最上位置のフィン部4Bc)を挟み、ネジである接合部材10を取付部1Cから放熱器4を介して挿通し接続部5Cのネジ孔5Cbに捩じ込んでいる。実施形態の放熱器固定構造は、このように構成することで、アルミ合金などの低剛性の放熱器4にネジ孔を形成することによる放熱器4へのクラックの発生を防止できる。しかも、実施形態の放熱器固定構造は、取付部1Cと接続部5Cとの間で放熱器4を挟んで接合することで、放熱器4にネジ孔を形成して取付部1Cに接合することと、放熱器4と取付部1Cとの接触状態を同時にでき、放熱性能を確保できる。
【0030】
また、実施形態の放熱器固定構造では、接続部5Cは、電子部品3の脚部3Bが基板2に向けて延びる上下方向に沿って可撓性を有する。
【0031】
上述したように、半田付け部においては、脚部3Bが延びて基板2の孔2Aに挿通される方向に負荷がかかることでクラックが生じやすく、当該方向に接続部5Cの撓みを生じさせることで、クラックが生じやすい方向で半田付け部にかかる負荷を低減できる。従って、実施形態の放熱器固定構造は、半田付け部へのクラックの発生を抑えることができる。
【0032】
また、実施形態の放熱器固定構造では、電子部品3の本体部3Aを放熱器4と支持部材5とで挟んで固定し、放熱器4と支持部材5との間に所定方向に貫通する空間部9を設ける。
【0033】
この実施形態の放熱器固定構造によれば、所定方向に貫通する空間部9を放熱用の流路とすることで放熱効果を向上できる。
【0034】
なお、実施形態の放熱器固定構造では、放熱器4と取付部1Cとを接合する際、図3に一点鎖線で示すように、放熱器4と取付部1Cとの間に隙間を設け、この隙間を無くすように接合部材10で接合する。また、実施形態の放熱器固定構造では、放熱器4と接続部5Cとを接合する際、放熱器4と接続部5Cとの間に隙間を設け、この隙間を無くすように接合部材10で接合する。この放熱器固定構造によれば、このように構成することで、寸法誤差の吸収率を増すことができる。
【0035】
また、実施形態の放熱器固定構造では、接合部材10による接合方向を、基板2の板面に交差する上下方向に沿って行う。この放熱器固定構造によれば、接合部材10による接合方向を基板2が撓み易い方向に合わせることで、寸法誤差の吸収率を増すことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 機器本体
1C 取付部
2 基板
3 電子部品
3A 本体部
3B 脚部
4 放熱器
5 支持部材
5C 接続部
9 空間部
10 接合部材
図1
図2
図3