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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121397
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】スラスト軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/06 20060101AFI20230824BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F16C17/06
F16F7/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024727
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】池端 利尚
(72)【発明者】
【氏名】羅 光益
【テーマコード(参考)】
3J011
3J066
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA15
3J011BA17
3J011KA03
3J011LA06
3J011MA12
3J066AA22
3J066BA01
3J066BD01
3J066BD05
(57)【要約】
【課題】回転軸部材に加わる力が小さく油膜の形成が困難なときでも、スラストパッドに起因する音の発生を低減し、さらなる静音化が図られるスラスト軸受装置を提供する。
【解決手段】一実施形態によるスラスト軸受装置10は、回転する回転軸部材11を軸方向で支持する。スラスト軸受装置10は、スラストパッド14、収容部15および緩衝部材35を備える。スラストパッド14は、回転軸部材11を中心に周方向に複数設けられ、回転軸部材11と摺動する。収容部15は、スラストパッド14を収容する。緩衝部材35は、回転軸部材11の径方向において、スラストパッド14と収容部15との間に設けられ、スラストパッド14と収容部15とが接するときの衝撃を吸収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転軸部材を前記回転軸部材の軸方向で支持するスラスト軸受装置であって、
前記回転軸部材を中心に周方向に複数設けられ、前記回転軸部材と摺動するスラストパッドと、
前記スラストパッドを収容する収容部と、
前記回転軸部材の径方向において、前記スラストパッドと前記収容部との間に設けられ、前記スラストパッドと前記収容部とが接するときの衝撃を吸収する緩衝部材と、
を備えるスラスト軸受装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記スラストパッドを前記回転軸部材の軸方向で支持する円環板状の底部、および前記底部の径方向において外周側から軸方向へ突出する筒部を有し、
前記緩衝部材は、前記筒部の前記底部と反対側の端部に設けられている請求項1記載のスラスト軸受装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記回転軸部材の内周側の端部が前記スラストパッドに接する請求項2記載のスラスト軸受装置。
【請求項4】
前記収容部は、前記スラストパッドを前記回転軸部材の軸方向で支持する円環板状の底部、および前記底部の径方向において外周側から軸方向へ突出する筒部を有し、
前記緩衝部材は、前記筒部の内壁と前記スラストパッドとの間に設けられている請求項1記載のスラスト軸受装置。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記筒部と前記スラストパッドとが離れる方向へ押し付けるバネである請求項4記載のスラスト軸受装置。
【請求項6】
前記回転軸部材の周方向において、複数の前記スラストパッドの間に設けられ、前記スラストパッドを前記収容部に保持する保持部材と、
前記スラストパッドと前記保持部材とが接するときの衝撃を吸収する保持緩衝部材と、
をさらに備える請求項1から5のいずれか一項記載のスラスト軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、回転軸部材を軸方向において支持するスラスト軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸部材を軸方向で支持するスラスト軸受装置は、回転軸部材を中心に周方向へ複数設けられているスラストパッドを備えている。スラストパッドは、支点を中心に姿勢を変更することにより、回転軸部材の軸方向における微小な移動を吸収し、回転軸部材の安定した支持を達成する。このスラスト軸受装置は、回転軸部材とスラストパッドとの間に十分な油膜が形成されないと、回転軸部材の安定した支持が困難になる。例えば、回転軸部材に加わる軸方向の力が小さくなると、回転軸部材とスラストパッドとの間に形成される微小な隙間の大きさが不安定になり、安定した油膜の形成が困難になる。その結果、スラストパッドを含むスラスト軸受装置の全体で振動が大きくなり、回転軸部材の自励振動を招き、回転軸部材を含む機器の全体の損傷を招くおそれがある。そこで、特許文献1では、支持板を追加し、安定した油膜の形成を図っている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の場合、構造が複雑化することから、構成する部材間で衝突を招きやすく、この衝突にともなう騒音の増大を招くという問題がある。近年、機器の性能の向上とともに、静音化にも高い要求がある。例えば、回転軸部材の軸方向に加わる力が小さいとき、油膜の形成が不安定化し、スラストパッドの姿勢の変化が大きくなる。このようにスラストパッドの姿勢が変化すると、スラストパッドと周囲の構成部品とは互いに衝突を招きやすく、騒音の発生源となる。特許文献1の場合、騒音の軽減については考慮されておらず、さらなる静音化のためには、油膜の形成を促進するだけでは不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-70853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、回転軸部材に加わる力が小さく油膜の形成が困難なときでも、スラストパッドに起因する音の発生を低減し、さらなる静音化が図られるスラスト軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によるスラスト軸受装置は、回転する回転軸部材を前記回転軸部材の軸方向で支持する。スラスト軸受装置は、スラストパッド、収容部および緩衝部材を備える。スラストパッドは、回転軸部材を中心に周方向に複数設けられ、回転軸部材と摺動する。収容部は、スラストパッドを収容する。緩衝部材は、回転軸部材の径方向において、スラストパッドと収容部との間に設けられ、スラストパッドと収容部とが接するときの衝撃を吸収する。
【0007】
これにより、スラストパッドに微小な揺れや回転軸部材の径方向への移動が生じても、スラストパッドと収容部とが接するときの衝撃は、緩衝部材が吸収する。そのため、回転軸部材に加わる力が小さく、回転軸部材とスラストパッドとの間における油膜の形成が困難なときでも、スラストパッドと収容部との間における音の発生が低減される。したがって、回転軸部材に加わる負荷が小さな厳しい条件下においても、さらなる静音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図3のIの部分を拡大した断面図
図2】第1実施形態によるスラスト軸受装置において、支持する対象となる回転軸部材を含む概略的な構成を示す断面図
図3】第1実施形態によるスラスト軸受装置を示す概略的な断面図
図4】第1実施形態によるスラスト軸受装置を図3の矢印IV方向から見た概略図
図5】第1実施形態によるスラスト軸受装置の変形例を、図3の矢印IV方向から見た概略図
図6図5に示す変形例の要部を示す断面図
図7】第2実施形態によるスラスト軸受装置の要部を、図3の矢印IV方向から見た概略図
図8図7のVIII-VIII線における断面図
図9】第2実施形態によるスラスト軸受装置の変形例の要部を、図3の矢印IV方向から見た概略図
図10】第3実施形態によるスラスト軸受装置の保持部材の近傍を拡大した断面図
図11】第3実施形態によるスラスト軸受装置の保持部材を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の矢印B方向から見た図
図12】第3実施形態によるスラスト軸受装置の保持部材を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の矢印B方向から見た図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、スラスト軸受装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図2に示すように第1実施形態によるスラスト軸受装置10は、回転軸部材11をこの軸方向で支持する。回転軸部材11は、軸本体部12およびカラー部13を有している。カラー部13は、軸本体部12と一体に設けられ、径方向外側へ突出する円板状に形成されている。なお、カラー部13の形状は、本実施形態で例示したような円板状に限らず、任意の形状とすることができる。スラスト軸受装置10は、回転軸部材11の軸方向において、少なくとも一方の側から回転軸部材11のカラー部13を支持する。図2に示す例の場合、スラスト軸受装置10は、カラー部13を軸方向の両側から支持している。
【0010】
スラスト軸受装置10は、スラストパッド14および収容部15を備えている。収容部15は、一般にキャリアリング(carrier ring)と称される。収容部15は、図3に示すように底部16および筒部17を有している。すなわち、収容部15は、スラストパッド14を収容する容器状に形成されている。底部16は、中心部に回転軸部材11が貫く穴部18を有し、円環板状に形成されている。筒部17は、径方向において底部16の外周側から回転軸部材11の軸方向にカラー部13側へ突出している。収容部15は、この底部16と筒部17とによってスラストパッド14を収容する収容室を形成している。
【0011】
スラストパッド14は、図4に示すように収容部15において回転軸部材11の周方向へ複数設けられている。すなわち、複数のスラストパッド14は、回転軸部材11を周方向へ包囲して収容部15に収容されている。スラストパッド14は、図1に示すようにパッド本体部21および脚部22を有している。脚部22は、底部16のカラー部側の面23に接している。これにより、スラストパッド14は、この脚部22を支点として回転軸部材11の周方向および径方向へ揺れ動くことができる。収容部15は、スラストパッド14の脚部22と接することにより、スラストパッド14を回転軸部材11の軸方向で支持している。
【0012】
スラスト軸受装置10は、上記に加え、図2図4に示すように保持部材24を備えている。保持部材24は、パッドストップ(pad stop)とも称され、収容部15に固定されている。保持部材24は、回転軸部材11の周方向において複数のスラストパッド14の間に設けられている。すなわち、保持部材24は、回転軸部材11の周方向において隣り合うスラストパッド14の間に設けられている。保持部材24は、回転軸部材11の周方向においてスラストパッド14の移動を制限するとともに、隣り合うスラストパッド14の衝突を防止する。また、保持部材24は、スラストパッド14を収容部15から落下しないように保持する。保持部材24は、円柱状であってもよく、軸を含む平面で2つに分割した2つ割形状など、任意の形状を採用することができる。
【0013】
保持部材24は、図3に示すように胴部25、首部26および頭部27を有している。胴部25、首部26および頭部27は、一体に形成されている。保持部材24は、胴部25において収容部15に固定されている。首部26は、胴部25および頭部27よりも外径が小さく形成されている。頭部27は、首部26の胴部25と反対側に設けられ、首部26よりも外径が大きく形成されている。スラストパッド14は、回転軸部材11の周方向において側方側に溝部28を有している。保持部材24の頭部27がスラストパッド14の溝部28に挿入されることにより、スラストパッド14は収容部15から落下しないように収容部15に保持される。これとともに、スラストパッド14は、溝部28に頭部27が挿入されることにより、収容部15に対する位置が決定される。
【0014】
スラストパッド14は、図1図3に示すように回転軸部材11の軸方向において、脚部22と反対側に摺動面31を形成する。この摺動面31は、図2に示すようにカラー部13の端面32と摺動する。図2に示す例の場合、カラー部13は、回転軸部材11の軸方向において両側にそれぞれ端面32を有している。これらの端面32は、スラストパッド14の摺動面31と摺動する。スラスト軸受装置10は、回転軸部材11との間を潤滑する潤滑油が供給されている。回転軸部材11が回転すると、カラー部13とスラストパッド14との間には潤滑油による油膜が形成される。
【0015】
回転軸部材11は、例えば図示しない内燃機関や電動機などの回転する動力源から動力を必要とする駆動部へ駆動力を伝達する。この動力源と駆動部との間で負荷が変動すると、回転軸部材11は、回転速度が変化するとともに、軸方向に加わる力が変化する。そのため、回転軸部材11は、回転速度や軸方向に加わる力の変化にともなって、径方向、周方向および軸方向へわずかな移動が生じる。そこで、スラスト軸受装置10は、この回転軸部材11の移動を吸収するために、スラストパッド14が脚部22を支点として揺れ動くように設けられている。このように、スラストパッド14が揺れ動くことにより、回転軸部材11のわずかな移動はスラストパッド14の姿勢の変化によって吸収される。一方、スラスト軸受装置10は、このスラストパッド14の移動および姿勢の変化が許容されるため、姿勢の変化の際にスラストパッド14と収容部15とが衝突すると、音の発生を招く。特に、回転軸部材11の回転数が小さいとき、あるいは回転軸部材11に加わる力が小さいとき、カラー部13とスラストパッド14との間における潤滑油による油膜の形成が不十分になることがある。このように、油膜の形成が不十分なとき、スラストパッド14の姿勢の変化が大きくなりやすく、振動や衝突にともなう音の発生を招きやすい。
【0016】
そこで、第1実施形態のスラスト軸受装置10は、図1に示すように緩衝部材35を備えている。緩衝部材35は、例えばウレタン、ニトリル(NBR)、フッ素樹脂などの合成ゴム、アルミニウム、真鍮、ホワイトメタルのようなスラストパッド14よりも軟質の金属、木材、またはクッション材などのようにスラストパッド14よりも軟質の材料で形成されている。なお、緩衝部材35は、これらの例示に限らず、スラスト軸受装置10の使用条件で発生する衝撃を吸収するという機能を維持可能であれば任意の材料を選択することができる。特に、緩衝部材35は、スラストパッド14の機能に与える影響が小さい弾性を有する材料であることが好ましい。緩衝部材35は、回転軸部材11の径方向においてスラストパッド14と収容部15との間に設けられている。
【0017】
具体的には、緩衝部材35は、収容部15の筒部17において、底部16と反対側の端部に設けられている。緩衝部材35は、例えばスクリューねじなどの固定部材36によって、収容部15に固定されている。緩衝部材35は、カラー部13側の端面がスラストパッド14の摺動面31よりも底部16側に位置している。これにより、カラー部13と緩衝部材35とが接することはない。第1実施形態の場合、緩衝部材35は、図4に示すように略直方体状または円弧柱状のブロックに形成されている。この緩衝部材35は、周方向へ複数設けられているスラストパッド14に対応して周方向へ複数設けられている。
【0018】
緩衝部材35を固定部材36で収容部15に取り付けることにより、緩衝部材35は軸方向へ押しつぶされる。これにより、緩衝部材35は、図1に示すように回転軸部材11の径方向において筒部17の内壁よりもわずかに内周側へ突出する。緩衝部材35は、例えば0.5mm~数mm程度、内周側に突出する。このように緩衝部材35が内周側へ突出することにより、スラストパッド14と収容部15との間には緩衝部材35が設けられる。そのため、スラストパッド14の姿勢が変化すると、緩衝部材35は収容部15の筒部17に先立ってスラストパッド14と接する。これにより、スラストパッド14と収容部15の筒部17とが接するときの衝撃は、緩衝部材35によって吸収される。その結果、スラストパッド14と収容部15との衝突による音の発生は低減される。
【0019】
第1実施形態の場合、スラスト軸受装置10は図1に示すようにブッシュ37を備えている。ブッシュ37は、軸方向において固定部材36と収容部15との間に設けられている。緩衝部材35の内周側への突出量は、固定部材36で緩衝部材35を押しつぶす量によって決定される。ブッシュ37を設けることにより、固定部材36によって押しつぶされる緩衝部材35の寸法、すなわち緩衝部材35の内周側への突出量が定められる。この場合、緩衝部材35の内周側への突出量は、スラストパッド14の姿勢の変化を制限しないように設定される。
【0020】
また、緩衝部材35は、ブロック状に代えて、図5に示すように円環状に設けてもよい。この場合、緩衝部材35は、図5に示すように周方向で2つに分割した円弧環状に限らず、3つ以上に分割してもよく、周方向へ連続した円環状であってもよい。緩衝部材35は、円環状に設けるとき、図6に示すように押え板38を通して固定部材36によって収容部15に固定される。すなわち、緩衝部材35は、押え板38と収容部15との間に挟み込まれる。この例の場合でも、固定部材36の締め付け量を調整することにより、押え板38と収容部15との間に挟まれた緩衝部材35が押しつぶされる量は調整される。緩衝部材35は、押え板38を通して固定部材36で押しつぶされることにより、内周側へ突出し、スラストパッド14と収容部15との間に設けられる。
【0021】
以上説明した第1実施形態では、スラストパッド14と収容部15との間には緩衝部材35が存在する。そのため、スラストパッド14に微小な揺れや回転軸部材11の径方向への移動が生じても、スラストパッド14と収容部15とが接するときの衝撃は、緩衝部材35が吸収する。これにより、回転軸部材11に加わる力が小さく、回転軸部材11とスラストパッド14との間における油膜の形成が困難なときでも、スラストパッド14と収容部15との間における音の発生が低減される。したがって、回転軸部材11に加わる負荷が小さな厳しい条件下においても、さらなる静音化を図ることができる。
【0022】
(第2実施形態)
第2実施形態によるスラスト軸受装置を図7および図8に示す。
第2実施形態では、緩衝部材41は、筒部17の内壁171とスラストパッド14との間に設けられている。具体的には、緩衝部材41は、バネであり、筒部17とスラストパッド14とが離れる方向へ力を加える。緩衝部材41は、回転軸部材11の径方向に設けられている。緩衝部材41は、スラストパッド14の径方向に設けられた収容穴42に挿入されている。緩衝部材41は、一方の端部が収容穴42を形成するスラストパッド14に接し、他方の端部が筒部17の内壁171に接している。そして、緩衝部材41は、スラストパッド14と筒部17とが離れる方向へ力を加える。スラストパッド14と筒部17との間に設けられる緩衝部材41は、図7に示すように1本でもよく、図9に示すように2本であってもよい。また、緩衝部材41は、これらの例に限らず、3本以上であってもよい。
【0023】
第2実施形態では、緩衝部材41はスラストパッド14と筒部17とが離れる方向へ力を加える。そのため、スラストパッド14に姿勢の変化が生じ、スラストパッド14が収容部15の筒部17に接するとき、その衝撃は緩衝部材41が吸収する。これにより、回転軸部材11に加わる力が小さく、回転軸部材11とスラストパッド14との間における油膜の形成が困難なときでも、スラストパッド14と収容部15との間における音の発生が低減される。したがって、回転軸部材11に加わる負荷が小さな厳しい条件下においても、さらなる静音化を図ることができる。
【0024】
(第3実施形態)
第3実施形態によるスラスト軸受装置を図10に示す。
第3実施形態では、スラスト軸受装置10は、保持緩衝部材51を備えている。保持緩衝部材51は、保持部材24の首部26に設けられている。保持緩衝部材51は、緩衝部材35と同様に例えば合成ゴムなど弾性を有する材料で形成されている。保持緩衝部材51は、例えば図11に示すように首部26においてスラストパッド14と接する位置に設けられている。また、保持緩衝部材51は、例えば図12に示すように首部26を周回して全周に設けてもよく、首部26の周方向へ分割して設けてもよい。
【0025】
スラストパッド14は、姿勢の変化によって、収容部15だけでなく、スラストパッド14を保持する保持部材24とも接する。第3実施形態の場合、スラストパッド14の姿勢が変化すると、スラストパッド14は保持部材24の首部26に直接接することなく保持緩衝部材51に接する。これにより、スラストパッド14と保持部材24とが接するときの衝撃は保持緩衝部材51によって吸収される。その結果、スラストパッド14と保持部材24との衝突による音の発生は低減される。
【0026】
第3実施形態では、スラストパッド14と保持部材24との間には保持緩衝部材51が存在する。そのため、スラストパッド14に微小な揺れや回転軸部材11の径方向および周方向への移動が生じても、スラストパッド14と保持部材24とが接するときの衝撃は、保持緩衝部材51が吸収する。これにより、回転軸部材11に加わる力が小さく、回転軸部材11とスラストパッド14との間における油膜の形成が困難なときでも、スラストパッド14と保持部材24との間における音の発生が低減される。したがって、回転軸部材11に加わる負荷が小さな厳しい条件下においても、さらなる静音化を図ることができる。
【0027】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10はスラスト軸受装置、11は回転軸部材、14はスラストパッド、15は収容部、16は底部、17は筒部、24は保持部材、35は緩衝部材、41は緩衝部材、51は保持緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12