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特開2023-121422保存安定性が改善されたニロチニブ塩酸塩含有カプセル剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121422
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】保存安定性が改善されたニロチニブ塩酸塩含有カプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230824BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230824BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230824BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230824BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/02
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024769
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207252
【氏名又は名称】ダイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】早風 公貴
(72)【発明者】
【氏名】荏原 基力
(72)【発明者】
【氏名】坂井 司
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 勝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知子
(72)【発明者】
【氏名】辻井 賢
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD25A
4C076DD26A
4C076DD27A
4C076DD29A
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE42H
4C076FF33
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA20
4C086ZB27
(57)【要約】
【課題】 ニロチニブ塩酸塩を含有する医薬組成物を含有するカプセル剤において、保存時におけるニロチニブの溶出遅延が抑制され、長期にわたり溶出性が維持されたカプセル剤を提供すること。
【解決手段】 ニロチニブ塩酸塩を含有するカプセル剤であって、ニロチニブ塩酸塩と共に配合される添加剤として塩基性賦形剤を用いることによりカプセルの不溶化が抑制され、特に塩基性賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸水素二ナトリウムの群から選択される少なくとも1種を用いるカプセル剤である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニロチニブ塩酸塩を含有するカプセル剤であって、ニロチニブ塩酸塩と共に含有される添加剤として塩基性賦形剤を用いることを特徴とするカプセル剤。
【請求項2】
カプセルがゼラチンを含有するものである請求項1に記載のカプセル剤。
【請求項3】
塩基性賦形剤が無機塩である請求項1又は2に記載のカプセル剤。
【請求項4】
無機塩が、マグネシウム塩、カルシウム塩、リン酸塩、ナトリウム塩の群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載のカプセル剤。
【請求項5】
塩基性賦形剤が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸水素二ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載のカプセル剤。
【請求項6】
ニロチニブ塩酸塩を含有する顆粒と、塩基性賦形剤及び他の添加剤を混合してなる医薬組成物を含有する請求項1~5のいずれかに記載のカプセル剤。
【請求項7】
ニロチニブ塩酸塩が、二水和物の形態である請求項1~6のいずれかに記載のカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニロチニブ塩酸塩を含有するカプセル剤に係わり、保存時におけるニロチニブの溶出遅延が抑制され、長期にわたりニロチニブの溶出性が維持されたカプセル剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次式:
【0003】
【化1】
【0004】
で示される化学名:4-メチル-N-[3-(4-メチル-イミダゾール-1-イル)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-3-(4-ピリジン-3-イル-ピリミジン-2-イルアミノ)-ベンズアミドを有するニロチニブは、薬剤抵抗性の慢性骨髄性白血病の治療に使用されるチロシンキナーゼ阻害剤として、「タシグナ(登録商標)カプセル」の名称で臨床的に使用されている薬剤である(非特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、ニロチニブまたはその塩を含む医薬組成物について開示されているが、保存時の医薬組成物からのニロチニブの溶出性については何ら説明されていない。
【0006】
一方、非特許文献2では、ニロチニブ塩酸塩を含有するタシグナ(登録商標)カプセル製剤について、長期保存試験においてカプセル剤皮のゼラチン架橋による被膜形成が原因と考えられるニロチニブの溶出遅延が生じることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5567340号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】タシグナ(登録商標)カプセル50mg、タシグナ(登録商標)カプセル150mg、タシグナ(登録商標)カプセル200mg、医薬品インタビューフォーム(第20版)
【非特許文献2】タシグナ(登録商標)カプセル200mgについて、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の「審査報告書」(平成20年11月18日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状を鑑みて、ニロチニブ塩酸塩及び添加剤を含有する医薬組成物を含有するカプセル剤において、保存時におけるニロチニブの溶出遅延が抑制され、長期にわたり溶出性が維持されたカプセル剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、保存時におけるカプセル剤被のゼラチン架橋による溶出遅延の原因として、ニロチニブ塩酸塩とゼラチンカプセル自体の接触が原因であることを見出し、この課題に対して、カプセル中に含有するニロチニブ塩酸塩含有医薬組成物中に配合する添加剤として、塩基性賦形剤を配合することにより、カプセル剤の不溶化が抑制され、長期にわたりニロチニブの溶出性が維持されたニロチニブ塩酸塩含有のカプセル剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
したがって、本発明は具体的には以下の態様からなる。
(1)ニロチニブ塩酸塩を含有するカプセル剤であって、ニロチニブ塩酸塩と共に配合される添加剤として塩基性賦形剤を用いることを特徴とするカプセル剤、
(2)カプセルがゼラチンを含有するものである(1)に記載のカプセル剤、
(3)塩基性賦形剤が無機塩である(1)又は(2)に記載のカプセル剤、
(4)無機塩が、マグネシウム塩、カルシウム塩、リン酸塩、ナトリウム塩の群から選択される少なくとも1種である(3)に記載のカプセル剤、
(5)塩基性賦形剤が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸水素二ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である(1)~(4)に記載のカプセル剤、
(6)ニロチニブ塩酸塩を含有する顆粒と、塩基性賦形剤及び他の添加剤を混合してなる医薬組成物を含有する(1)~(5)に記載のカプセル剤、
(7)ニロチニブ塩酸塩が、二水和物の形態である(1)~(6)に記載のカプセル剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ニロチニブ塩酸塩を含有するカプセル剤、特にカプセルがゼラチンを含有するものであるカプセル剤について、保存時におけるニロチニブの溶出遅延が抑制され、長期にわたりニロチニブの溶出性が維持されたニロチニブ塩酸塩含有医薬組成物を含有するカプセル剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が提供するカプセル剤は、ニロチニブ塩酸塩と医薬的に許容可能な塩基性賦形剤を含有し、公知の製造方法により製造されるニロチニブ塩酸塩含有医薬組成物を含有するカプセル剤である。
【0014】
カプセル剤中に含有されるニロチニブ塩酸塩としては、医薬品原体として使用されるニロチニブ塩酸塩であれば特に限定されるものではないが、既に臨床的に使用されているニロチニブ塩酸塩の水和物を用いるのがよく、中でもニロチニブ塩酸塩二水和物を用いるのが良い。
【0015】
本発明で使用されるニロチニブ塩酸塩と共に含有される塩基性賦形剤としては、例えば、無機塩である沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、有機塩基であるメグルミン、アルギニンなどが挙げられる。
【0016】
そのなかでも、塩基性賦形剤として好ましくは、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
好ましく使用されるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えば、富士化学工業株式会社製のノイシリン(登録商標)の普通品と中性品が流通しているが、本発明においては塩基性を示すノイシリン(登録商標)普通品を使用するのが肝要であり、かかる塩基性を示すメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを賦形剤として添加することにより、カプセル剤からのニロチニブの溶出の遅延を抑制することができる。
【0018】
これらの塩基性賦形剤の添加量は、特に限定はされないが、カプセル剤中に含有される医薬組成物全重量に対して1.0~30.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0019】
本発明が提供するカプセル剤にあっては、ニロチニブ塩酸塩及び塩基性賦形剤と共に、製剤学的に通常使用される他の賦形剤、更に、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤などを配合することができる。
【0020】
そのような賦形剤としては、例えば、乳糖一水和物、無水乳糖、糖アルコール、結晶セルロース、トウモロコシデンプン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、本発明で使用することができる結合剤としては、例えば、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。結合剤は、特に限定されないが、医薬組成物の全重量に対して0.1~10.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0022】
本発明で使用することができる崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。崩壊剤は、特に限定されないが、医薬組成物の全重量に対して1.0~20.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0023】
本発明で使用することができる流動化剤としては、例えば、二酸化ケイ素、タルクなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
流動化剤は医薬組成物の全重量に対して0.1~5.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0024】
本発明で使用することができる滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでもステアリン酸マグネシウムを用いるのが好ましい。
滑沢剤は、医薬組成物の全重量に対して0.1~5.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0025】
本発明が提供するカプセル剤は、ニロチニブ塩酸塩と賦形剤等の添加剤を原末のまま混合してカプセルに充填してもよいし、造粒してカプセルに充填してもよい。
なお、カプセルへの充填性の観点から、カプセル内に充填する医薬組成物を造粒し、充填するのが良い。
その場合にあっては、ニロチニブ塩酸塩とカプセル剤皮(ゼラチン)との接触を低減させる観点から、ニロチニブ塩酸塩を例えばクロスポビドンである崩壊剤と混合して造粒物を調製し、かかるニロチニブ塩酸塩を含有する造粒物に乳糖等を加えて混合してカプセル充填用の医薬組成物とした後、カプセルに充填するのがより好ましい。
【0026】
本発明が提供するカプセル剤中に充填される医薬組成物は、医薬品製造分野における公知の製造方法により製造することができる。
すなわち、ニロチニブ塩酸塩を含有する造粒物の造粒方法としては、例えば湿式造粒法、乾式造粒法、溶融造粒法などが挙げることができる。また、カプセル剤の調製は、一般的な製剤機器を用いて一般的な方法により製剤化を行うことができる。
【実施例0027】
以下に本発明を、検討例を含む実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0028】
実施例1:塩基性賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩398.0g、クロスポビドン35.0gを撹拌造粒機に投入し、混合した。この混合物に精製水140.0gを添加して造粒した。得られた造粒物を整粒し、流動層乾燥機に投入して乾燥した後、整粒した。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤としてのメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(普通品:塩基性)3.6g、乳糖一水和物18.7g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0029】
実施例2:塩基性賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は、実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤としてのメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(普通品:塩基性)9.0g、乳糖一水和物13.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0030】
実施例3:塩基性賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は、実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤としての沈降炭酸カルシウム9.0g、乳糖一水和物13.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0031】
実施例4:塩基性賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は、実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤としての酸化マグネシウム9.0g、乳糖一水和物13.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0032】
実施例5:塩基性賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は、実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤としてのリン酸水素二ナトリウム9.0g、乳糖一水和物13.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0033】
比較例1:塩基性賦形剤を添加しないカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は、実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤を用いることなく、他の添加剤として乳糖一水和物22.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0034】
比較例2:塩基性賦形剤でない賦形剤を添加したカプセル剤の調製
ニロチニブ塩酸塩及びクロスポビドンからなる顆粒の調製方法は実施例1と同様に行った。
得られた顆粒37.1gに、塩基性賦形剤でない賦形剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(中性品)9.0g、乳糖一水和物13.3g、軽質無水ケイ酸0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gを加えて混合した。この混合物400.0mgをゼラチン製カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0035】
上記した実施例並びに比較例のニロチニブ200mgを含有するカプセル剤としての処方を表にまとめれば、下記表1及び表2に示すとおりである。
【0036】
【表1】
【0037】
*1:ニロチニブとして200mgの添加量
【0038】
【表2】
【0039】
*1:ニロチニブとして200mgの添加量
【0040】
試験例:ニロチニブの溶出性評価
上記した各実施例並びに比較例で調製したニロチニブ塩酸塩含有カプセル剤を、60℃恒温機にて14日間保管した後、カプセル剤からのニロチニブの溶出試験を行った。
溶出試験法としては、第十七改正日本薬局方の溶出試験法に準じて、パドル法(毎分50回転)を用い、試験液として溶出試験第1液を900mL用い、カプセルはシンカーに入れて試験を実施した。
試料は1ベッセルにつき1カプセルを用い、試験開始120分時点における6ベッセルのニロチニブの平均溶出率にて評価した。
【0041】
その結果を、下記表3に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
表3中に示した結果からも判明するように、塩基性賦形剤を配合した各実施例では比較例1(塩基性賦形剤の非添加)、比較例2(中性の賦形剤の添加)に対して、ニロチニブの溶出率の低下が改善されていることが理解される。
また、実施例1に比較して、塩基性賦形剤をさらに高含量で配合した実施例2~5では溶出率の低下がさらに改善していることが示された。
この結果から、塩基性賦形剤の添加がカプセル剤の保管時における溶出率の低下を抑制する効果を発揮していることが示され、本発明の特異性がよく理解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明により、保存時におけるニロチニブの溶出遅延が抑制され、長期にわたり溶出性が維持されたニロチニブ塩酸塩含有医薬組成物を含有するカプセル剤を提供することができる点で、産業上の利用性は多大なものである。