(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121424
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】連結金具取り付け治具
(51)【国際特許分類】
E02D 17/08 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
E02D17/08 A
E02D17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024771
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
(72)【発明者】
【氏名】林 正宏
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太朗
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044AA03
(57)【要約】
【課題】連結金具取り付け治具を用いたフランジ部への連結金具取り付け作業の負担を軽減できる連結金具取り付け治具を提供する。
【解決手段】本発明の連結金具取り付け治具は、2つの土留部材のそれぞれのフランジ部を重ねた状態で挟んで保持する連結金具をフランジ部に嵌め込む連結金具取り付け治具であって、フランジ部を挟むフランジ保持部材と、フランジ保持部材の側方に位置し、連結金具をフランジ部に向かって押し込むための押圧面を有する押圧部材と、フランジ保持部材に接続された第1把持部と、押圧部材に接続された第2把持部と、を備え、押圧部材は、フランジ保持部材に連結され、第2把持部が移動することにより押圧面がフランジ部に向かって移動するように構成され、連結部は、押圧面がフランジ部に向かって移動する回転を許容し逆回転を阻止する逆回転阻止機構を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの土留部材のそれぞれのフランジ部を重ねた状態で挟んで保持する連結金具を前記フランジ部に嵌め込む連結金具取り付け治具であって、
第1方向を向いた第1当接面及び前記第1方向に対向する方向を向いた第2当接面を有し、前記第1当接面と前記第2当接面との間に前記フランジ部を挟むフランジ保持部材と、
前記フランジ保持部材の側方に位置し、前記連結金具を前記フランジ部に向かって押し込むための押圧面を有する押圧部材と、
前記フランジ保持部材に接続された第1把持部と、
前記押圧部材に接続された第2把持部と、を備え、
前記押圧部材は、
連結部を中心として回動可能に前記フランジ保持部材に連結され、前記第2把持部が移動することにより前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動するように構成され、
前記連結部は、
前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動する回転を許容し逆回転を阻止する逆回転阻止機構を備える、連結金具取り付け治具。
【請求項2】
前記押圧部材は、
前記押圧面の前記第1方向の端部から突出する金具支持部を備え、
前記金具支持部は、
前記連結金具が前記フランジ部に取り付けられた状態において、前記第1方向に対向する方向に突出する先端部が形成されている、請求項1に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項3】
2つの土留部材のそれぞれのフランジ部を重ねた状態で挟んで保持する連結金具を前記フランジ部に嵌め込む連結金具取り付け治具であって、
第1方向を向いた第1当接面及び前記第1方向に対向する方向を向いた第2当接面を有し、前記第1当接面と前記第2当接面との間に前記フランジ部を挟むフランジ保持部材と、
前記フランジ保持部材の側方に位置し、前記連結金具を前記フランジ部に向かって押し込むための押圧面を有する押圧部材と、
前記フランジ保持部材に接続された第1把持部と、
前記押圧部材に接続された第2把持部と、を備え、
前記押圧部材は、
連結部を中心として回動可能に前記フランジ保持部材に連結され、前記第2把持部が移動することにより前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動するように構成され、
前記押圧部材は、
前記押圧面の前記第1方向の端部から突出する金具支持部を備え、
前記金具支持部は、
前記連結金具が前記フランジ部に取り付けられた状態において、前記第1方向に対向する方向に突出する先端部が形成されている、連結金具取り付け治具。
【請求項4】
前記フランジ保持部材は、
前記第1当接面を有する第1保持部材と、
前記第2当接面を有する第2保持部材と、を備え、
前記第1方向に直交する第2方向からの視点において、前記第1当接面と前記第2当接面との間に隙間が形成され、前記第1把持部が接続されている側に対し反対側から前記フランジ部を挿入自在に構成されている、請求項1~3の何れか1項に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項5】
前記フランジ保持部材は、
前記フランジ部の挿入方向の奥側に、前記第1当接面又は前記第2当接面に垂直に形成された突き当て面を備える、請求項4に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項6】
前記押圧部材は、
前記第1保持部材に連結され、
前記押圧部材の回転中心軸は、
前記第1当接面に平行かつ前記フランジ部の挿入方向に対し垂直である、請求項5に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項7】
前記押圧部材は、
前記第1保持部材に連結され、
前記押圧部材の回転中心軸は、
前記第1当接面に垂直である、請求項5に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項8】
前記第2当接面は、
前記第1保持部材を基準として前記第1把持部を移動させることにより、前記第1当接面に近づくように構成されている、請求項4~7の何れか1項に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項9】
前記第1保持部材と前記第2保持部材とは、
互いに回動可能に連結されている、請求項8に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項10】
前記第2保持部材は、
一端に前記第1把持部が接続され、他端に前記第2当接面を有し、
前記第1把持部と前記第2当接面との間において前記第1保持部材と連結されている、請求項9に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項11】
前記第2当接面は、
前記第1把持部を前記第1方向に移動させることによって、前記第1当接面に向かって移動する、請求項10に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項12】
前記第1保持部材は、
前記第2保持部材との連結部が前記第1当接面の奥側の端を前記第1方向に延長した位置に配置されている、請求項11に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項13】
前記第1当接面及び前記第2当接面は、
凹凸形状を有する、請求項1~12の何れか1項に記載の連結金具取り付け治具。
【請求項14】
前記逆回転阻止機構は、
ラチェット機構である、請求項1に記載の連結金具取り付け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留構造を構成する土留部材のフランジ部に連結金具を取り付ける連結金具取り付け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の基礎を構築するための立坑、地中に構築される集水井、斜面の擁壁などの土木構造物は、土留部材等の土留部材を接続して環状又は馬蹄形(U字形)に壁を形成して構成された土留構造により構成される。
【0003】
このような土留構造は、土留部材がそれぞれ軽量であり、山間部等の大型の重機が使用できない現場においても、人力での施工が容易であるという利点がある。例えば、内径寸法の小さい立坑を構築するにあたっては、一人の作業者が立坑の中に入り土留部材を連結する作業を行うことができる。
【0004】
土留部材同士は、ボルト及びナットにより連結することができるが、一人の作業者が土留部材を連結する場合、土留部材のフランジ部に形成された連結孔にボルトを通す作業が困難であり多大な時間を要する。そこで、連結孔に差し込む差込み部とフランジ部を挟持する挟持部とを備える連結金具を用いて、土留部材同士のフランジ部同士を連結することにより、作業者は、片手で土留部材を支持しながら連結作業が行うことが可能となっている。
【0005】
連結金具は、略U形に形成された挟持部により土留部材のフランジ部同士を重ねて挟持することより、土留部材同士の連結を行う。また、連結金具の差込み部の先端部は、L字形に曲げられ、土留部材のフランジ部に形成された連結孔の周辺に先端が当接するように構成されている。これにより、土留部材のフランジ部は、差込み部の先端部と挟持部との2か所で支持されるため、連結力が強固になる(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
連結金具をフランジ部に組み付ける際には、まず、土留部材のフランジ部同士を重ねた状態でフランジ部の連結孔に先端部を挿入する。この状態においては、連結金具の挟持部は、フランジ部から外れており、この状態から、挟持部をフランジ部に嵌め込む作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
挟持部は、土留部材のフランジ部を挟持して連結するため、フランジ部が挿入される連結金具本体との間の隙間部分が2つのフランジ部を重ねた厚さ寸法よりも狭く形成されている。よって、挟持部をフランジ部に嵌め込む際には、高い荷重をかけて嵌め込む必要があり、例えばハンマーなどを用いて挟持部に衝撃力を加えて嵌め込む必要がある。この場合、ハンマーの打撃により騒音が生じる。これを防止するため、連結金具に衝撃力を加えなくとも連結金具の取り付け作業が可能となるように、連結金具を土留部材に押し込める連結金具取り付け治具が提案されている。しかし、連結金具の取り付けには、治具を用いても取り付け作業のばらつきによっては、比較的大きい力が必要となり、取り付け作業が困難な場合があるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、連結金具取り付け治具を用いたフランジ部への連結金具取り付け作業の負担を軽減できる連結金具取り付け治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連結金具取り付け治具は、2つの土留部材のそれぞれのフランジ部を重ねた状態で挟んで保持する連結金具を前記フランジ部に嵌め込む連結金具取り付け治具であって、第1方向を向いた第1当接面及び前記第1方向に対向する方向を向いた第2当接面を有し、前記第1当接面と前記第2当接面との間に前記フランジ部を挟むフランジ保持部材と、前記フランジ保持部材の側方に位置し、前記連結金具を前記フランジ部に向かって押し込むための押圧面を有する押圧部材と、前記フランジ保持部材に接続された第1把持部と、前記押圧部材に接続された第2把持部と、を備え、前記押圧部材は、連結部を中心として回動可能に前記フランジ保持部材に連結され、前記第2把持部が移動することにより前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動するように構成され、前記連結部は、前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動する回転を許容し逆回転を阻止する逆回転阻止機構を備える。
【0011】
本発明の連結金具取り付け治具は、2つの土留部材のそれぞれのフランジ部を重ねた状態で挟んで保持する連結金具を前記フランジ部に嵌め込む連結金具取り付け治具であって、第1方向を向いた第1当接面及び前記第1方向に対向する方向を向いた第2当接面を有し、前記第1当接面と前記第2当接面との間に前記フランジ部を挟むフランジ保持部材と、前記フランジ保持部材の側方に位置し、前記連結金具を前記フランジ部に向かって押し込むための押圧面を有する押圧部材と、前記フランジ保持部材に接続された第1把持部と、前記押圧部材に接続された第2把持部と、を備え、前記押圧部材は、連結部を中心として回動可能に前記フランジ保持部材に連結され、前記第2把持部が移動することにより前記押圧面が前記フランジ部に向かって移動するように構成され、前記押圧部材は、前記押圧面の前記第1方向の端部から突出する金具支持部を備え、前記金具支持部は、前記連結金具が前記フランジ部に取り付けられた状態において、前記第1方向に対向する方向に突出する先端部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連結金具取り付け治具は、連結金具を保持できるように、又は逆回転阻止機構により作業状態を変更可能に構成されているため、連結金具を押し込む際の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60を使用する土留構造100の斜視図である。
【
図2】
図1の土留構造100の平面図及び断面構造図である。
【
図3】
図1の土留構造100の土留部材10の軸方向連結部11及び連結部12周辺の拡大図である。
【
図6】
図1の土留部材10を連結する連結金具20の斜視図である。
【
図10】実施の形態1に係る土留構造100に取り付けられた連結金具20の斜視図である。
【
図11】実施の形態1に係る土留構造100に取り付けられた連結金具20の斜視図である。
【
図12】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の使用状態を示す斜視図である。
【
図13】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の使用状態を示す斜視図である。
【
図14】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の側面図である。
【
図15】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の上面図である。
【
図16】実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の要部拡大図である。
【
図17】実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260の上面図である。
【
図18】実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260の側面図である。
【
図19】実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360aの側面図である。
【
図20】実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360bの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る連結金具取り付け治具について図面等を参照しながら説明する。なお、
図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、前、後、表及び裏等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0015】
実施の形態1.
[土留構造100]
図1は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60を使用する土留構造100の斜視図である。
図2は、
図1の土留構造100の平面図及び断面構造図である。
図3は、
図1の土留構造100の土留部材10の軸方向連結部11及び連結部12周辺の拡大図である。
図3は、
図2(b)のB部の拡大図である。
図1~
図3を用いて土留構造100について説明する。土留構造100は、例えば構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物であって、地盤を掘削して形成された縦穴の内部に構築されるものである。以下の説明において、土留構造100の外側を地山92、内側を空間部93と呼ぶ。実施の形態1において、土留構造100は、円管状に形成されているが、円管状に限定するものではない。土留構造100は、例えば、平面視において、長円形、楕円形、矩形、小判形又は馬蹄形に形成することができ、管状に限定されるものでもない。また、
図2に示されているr方向は、土留構造100の半径方向であり、θ方向は周方向であり、z方向は高さ方向を示している。なお、θ方向は土留部材10の長手方向と一致しており、これを第1方向と称する。また、z方向は土留部材10の幅方向であり、これを第2方向と称する。実施の形態1において、z方向は重力方向に一致しているが、これのみに限定されず、重力方向に傾斜していても良い。
【0016】
実施の形態1に係る土留構造100は、複数の土留部材10が環状体50を形成するように複数の連結部材で接続し、その環状体50同士を軸方向に複数の連結部材で接続した構造になっている。
図1及び
図2に示されている土留構造100は、環状体50A及び50Bをz方向に交互に6段積み重ねた構造になっている。
【0017】
[環状体50]
土留構造100を構成する各環状体50は、土留部材10をθ方向に複数接続して構成されたものであり、土留部材10の長手方向の端部同士を接続させて形成されている。土留部材10は、幅方向、即ちz方向に波形が付されている本体14(
図4及び
図5参照)と、本体14の長手方向、即ちθ方向の両端に平板状の縦フランジ部19とを備える。縦フランジ部19は、本体14の長手方向の端面に溶接されている。環状体50において、隣り合う土留部材10は、縦フランジ部19同士を連結金具20gにより連結され、軸方向連結部11を形成している。軸方向連結部11は、軸方向に延びる縦フランジ部19同士を連結する部分であり、z方向に延びる連結部である。なお、
図3に示される軸方向連結部11には、連結金具20gが3個取り付けられているが、取り付けられる数量は土留部材10の形状により適宜変更できるものである。例えば、後述する
図4に示される土留部材10であれば、4個の連結金具20gが軸方向連結部11に取り付けられる。
【0018】
土留部材10により構成された環状体50同士は、土留部材10のz方向の端部において連結金具20で接合されている。
図2(b)及び
図3に示されている様に、上側の環状体50Aの土留部材10a及び10bと、下側の環状体50Bの土留部材10dとは、長手方向(θ方向)の両端の位置を互いにずらして接合されている。また、環状体50Aの上側に配置されている環状体50Bの土留部材10cも、土留部材10a及び10bに対し長手方向(θ方向)の両端の位置をずらして接合されている。実施の形態1においては、上に位置する土留部材10と、下に位置する土留部材10とは、長手方向の長さの半分だけずらして連結されている。これにより、土留構造100は、θ方向の各位置において強度及び剛性のばらつきを抑えることができる。ただし、上下に位置する土留部材10は、長手方向に半分ずらして連結する形態に限定されるものではない。例えば、土留部材10の横フランジ部13に形成された複数の連結孔13aを長手方向に少なくとも1つ以上ずらして連結した形態であっても良い。
【0019】
[土留部材10]
図4及び
図5は、
図1の土留部材10の断面図である。
図4及び
図5は、土留部材10の長手方向に垂直な断面を示しており、
図3に示されている土留構造100のC-C部を含む断面の一例を示している。
図4に示されている土留部材10の本体14は、長手方向に垂直な断面においてサインカーブ状の波形が付されている。また、
図5に示されている土留部材10の本体14は、角が丸められた矩形波状になっており、土留構造100の外側及び内側に互いに平行な面が形成されている。
【0020】
図4及び
図5に示されている土留部材10は、それぞれ断面形状が異なり本体14の波形状が異なるが、z方向の両端部に横フランジ部13が形成されており、z方向に互いに接続可能な構造となっている。横フランジ部13は、連結金具20を適用する連結孔13aが形成されている。連結孔13aは、横フランジ部13に複数形成されており、θ方向に等間隔に設けられている。
【0021】
図4に示される土留部材10の本体14は、サインカーブ状の波形が付されており、地山側からの土圧による荷重に対抗することができる。本体14は、波形が付されていることにより、単純な平板状の断面形状に形成されるよりもr方向に掛かる荷重に対する強度及び剛性が高い。
【0022】
図5に示されている土留部材10の台形波形状に形成されている本体14は、
図5の断面において、環状体50の内側に突出して位置する内側フランジ部16と、環状体50の外側に突出して位置する外側フランジ部17及び18と、を備える。内側フランジ部16と外側フランジ部17及び18とは、実質的に平行に形成されている。内側フランジ部16と外側フランジ部17及び18との間は、ウェブ部15により接続されている。ウェブ部15は、
図5の断面においてr方向に延びる面を有し、r方向に対し若干傾斜している。ウェブ部15の傾斜方向は、本体14を中心軸Cから見た時に、波形状の谷の部分の開放端が広く、谷底が狭くなる様になっている。このように構成されることにより、本体14は波付けのための塑性加工を行う際に、離型しやすく製造が容易になる。
【0023】
また、ウェブ部15は、r軸に平行に近い角度で成形されることにより、内側フランジ部16、外側フランジ部17及び18の幅が広くなる。これにより、土留部材10は、r方向に曲げモーメントが負荷されたときの剛性が高くなる。例えば、
図4に示される土留部材10よりも
図5に示される土留部材10は、r方向の寸法が大きくr方向に掛かる荷重に対し剛性が高い。
図1の土留構造100の土留部材10が面方向、つまりr方向に荷重を受けた場合に、土留部材10はr方向に曲げモーメントが負荷される。このとき、土留部材10の曲げの中立軸Nについての断面係数は、中立軸Nから遠い内側フランジ部16、外側フランジ部17及び18の幅が広い方が大きくなる。よって、ウェブ部15がr軸に平行に近い角度で構成されることにより、内側フランジ部16、外側フランジ部17及び18のz方向の幅寸法が広くなり、土留部材10は、r方向の曲げ荷重に対する強度及び剛性が高くなる。具体的には、ウェブ部15は、内側フランジ部16又は外側フランジ部17及び18に垂直な方向に対し、0°以上20°以下に設定され、さらに望ましくは0°以上3°以下に設定される。
【0024】
なお、
図5の、内側フランジ部16、外側フランジ部17及び18は、ウェブ部15と同じ板厚で形成されているが、板厚をウェブ部15よりも厚くしても良い。このように構成されることにより、中立軸Nから遠い内側フランジ部16、外側フランジ部17及び18の断面積が大きくなり、土留部材10は、断面係数をさらに高くすることができる。また、
図4及び
図5に示されている土留部材10の断面形状は、一例であり、他の形状であっても良い。
【0025】
図4及び
図5に示されている土留部材10のz方向の両端部は、横フランジ部13が形成されている。横フランジ部13は、z方向に対し垂直に形成され、平坦な部分に連結孔13aが設けられている。横フランジ部13は、r方向及びθ方向に平行であり連結金具20が取り付けられる程度の面を有している。特に、横フランジ部13の先端部13bは、連結金具20の挟持部23(
図6~9を参照)が嵌る程度の平面を有する。
【0026】
[連結金具20]
図6は、
図1の土留部材10を連結する連結金具20の斜視図である。
図7は、
図6の連結金具20の上面図である。
図8は、
図6の連結金具20の側面図である。
図9は、
図6の連結金具20の底面図である。
図6~
図9に示されるx方向及びy方向により形成される平面は、連結金具20の連結金具本体22に沿った平面であり、z方向は、x方向及びy方向に垂直方向を示している。また、x方向は、挟持部23の幅方向に一致しており、連結金具20が横フランジ部13に取り付けられた状態においてθ方向と略一致する。実施の形態1において、連結金具20は、板金を折り曲げて形成された金具であり、土留部材10を連結する連結部材の1つである。連結金具20は、エンボス加工により形成された凸部26を備える連結金具本体22と、連結金具本体22のy方向の一方の端部からz方向逆向きに向かって折り曲げられた差込み部25と、連結金具本体22のy方向の他方の端部からz方向逆向きに向かって折り曲げられた挟持部23と、を備える。なお、以下において、隣接する土留部材10同士を連結する横フランジ部13及び縦フランジ部19をそれぞれ、フランジ部13及びフランジ部19と称する場合がある。以下に説明する、連結金具20は、フランジ部13又はフランジ部19に取り付けられ、隣接する土留部材10を連結するものである。
【0027】
連結金具20は、差込み部25が土留部材10の横フランジ部13に形成された連結孔13aに差し込まれ、挟持部23が横フランジ部13の先端部13bを挟持することにより2つの土留部材10を連結するものである。連結金具20は、横フランジ部13に嵌め込まれて土留部材10を連結できるため、ボルト及びナットを用いた連結と比較して連結作業の効率が向上する。
【0028】
図7及び
図9に示される様に、連結金具本体22の挟持部23が形成されている挟持側端部22aの端縁22cは、x軸に平行に形成されている。連結金具本体22は、y方向に対し傾斜して延びている。連結金具本体22のy方向の端縁22dは、z方向逆向きに延びる差込み部25に接続されている。差込み部25が接続されている端縁22dは、x軸に対し傾斜している。
【0029】
差込み部25は、連結金具本体22の端縁22dからz方向に延び、その先端でL字に折り曲げられ先端部21が形成されている。先端部21は、板面21bがy方向に沿って延びている。先端部21の板面21bは、連結金具本体22からz方向にずれた位置において連結金具本体22の板面と略平行に形成されている。または、先端部21の板面21bは、連結金具本体22の板面と平行ではなく、先端21aがz方向に向かうように傾斜していても良い。このように構成されることにより、連結される2つの土留部材10の横フランジ部13の一方の面側に連結金具本体22が配置され、他方の面側に先端部21が配置され、2つの横フランジ部13を先端部21と連結金具本体22との間に保持することができる。
【0030】
図7に示されるように、連結金具本体22の差込み部25が形成されている差込み側端部22bは、挟持部23が形成されている側の挟持側端部22aよりも幅が狭く形成されており、横フランジ部13の連結孔13aに差し込める程度の幅に形成されている。つまり、先端部21は、2つの土留部材10の横フランジ部13の連結孔13aに挿通自在になっている。また、差込み側端部22bは、エンボス加工が施され凸部26が形成されていることにより、剛性が向上している。
【0031】
一方、挟持部23が形成されている挟持側端部22aは、挟持部23が2つの土留部材10の横フランジ部13を挟んで保持できるように、幅が広く形成されている。
【0032】
[連結金具20の取付状態]
図10及び
図11は、
図1の土留構造100に取り付けられた連結金具20の斜視図である。
図10は、
図3に示される土留構造100の第1連結金具20a、20b、20e、20fの斜視図である。
図11は、
図3に示される土留構造100の連結金具20c及び20dの斜視図である。実施の形態1において土留構造100の環状体50A及び50Bとの連結部12a~12dに設置された連結金具20は、すべて同じ方向を向けて取り付けられているわけではなく、部分的に
図6~9に示されているz方向を逆方向に向けて取り付けられていても良い。
【0033】
具体的には、第1連結金具20a、20b、20e、20fは、差込み部25及び挟持部23が連結金具本体22からz方向逆向きに延びるような状態、即ち
図10に示されている状態で配置される。連結金具20c及び20dは、差込み部25及び挟持部23が連結金具本体22からz方向に延びるような状態、即ち
図11に示されている状態で配置される。
【0034】
図10及び
図11のどちらの状態においても、連結金具20は、先端部21及び差込み部25を横フランジ部13の連結孔13aに差し込まれた状態で、挟持部23が2つの土留部材10の横フランジ部13を挟みこんで土留部材10同士を連結する。連結金具20は、先端部21及び差込み部25を連結孔13aに差し込んだ状態で、連結孔13aを中心にして連結金具20を回転させることにより、挟持部23と連結金具本体22との間に横フランジ部13を進入させる。この際、
図12及び
図13に示される連結金具取り付け治具60を用いて連結金具20を横フランジ部13側に押し込むことにより、横フランジ部13が挟持部23と連結金具本体22の間に嵌め込まれる。挟持部23の当接部23bと連結金具本体22との開口幅は、2枚の横フランジ部13の先端部13bの厚さ方向寸法よりも狭く形成されており、挟持部23の当接部23bと連結金具本体22とは、2つの横フランジ部13をz方向に圧接させるように保持する。
【0035】
[連結金具取り付け治具60]
図12及び
図13は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の使用状態を示す斜視図である。
図12は、連結金具20の先端部21を土留部材10の連結孔13aに挿し込み、挟持部23がフランジ部13から外れた状態である。
図13は、連結金具20の先端部21がフランジ部13に嵌め込まれた状態を示している。連結金具取り付け治具60は、第1把持部64及び第2把持部65を作業者が操作することにより、少ない力で連結金具20を正規の位置に取り付けるものである。また、連結金具取り付け治具60は、2つの土留部材10の横フランジ部13を挟むことにより連結金具取り付け治具60を横フランジ部13に固定し、その状態で押圧部材63を用いて連結金具20を横フランジ部13に嵌め込むものである。
【0036】
図12に示す様に、連結金具取り付け治具60が横フランジ部13に固定され連結金具20が嵌め込まれる前の状態においては、連結金具取り付け治具60の第2把持部65は上側に位置する。その状態から第2把持部65を下げる操作をすることにより、第2把持部65が接続されている押圧部材63が連結部66を中心に回転して連結金具20を押す。これにより、作業者は、第2把持部65に力を加えるだけで、第2把持部65に掛けた力よりも大きな力を押圧部材63から連結金具20に加えられる。
【0037】
図14は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の側面図である。
図15は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の上面図である。連結金具取り付け治具60は、横フランジ部13を重ねた状態で挟み込んで保持するフランジ保持部材61と、フランジ保持部材61に連結され連結金具20を横フランジ部13に向かって押し込む押圧部材63を備える。フランジ保持部材61は、
図14の上側から横フランジ部13に当接する第1当接面61cを有する第1保持部材61aと、下側から横フランジ部13に当接する第2当接面61dを有する第2保持部材61bと、を備える。第1当接面61cは、z方向逆向きを向いた面であり、第2当接面61dは、第1当接面61cと対向する向き、つまりz方向を向いた面である。横フランジ部13は、第1当接面61cと第2当接面61dとの間に形成された保持部に挿入される。
【0038】
図14に示す様に、連結金具取り付け治具60は、第1当接面61cと第2当接面61dとの隙間の奥側、つまり隙間の第1把持部64が配置されている側に、第1当接面61c又は第2当接面61dに垂直な突き当て面61gを備える。作業者が連結金具取り付け治具60を土留部材10側に押し付けると、横フランジ部13の先端部13bが突き当て面61gに当接し、連結金具取り付け治具60は、連結金具20を押し込むのに適正な位置に配置される。
【0039】
図15に示す様に、第2保持部材61bは、θ方向に沿って並べられた同じ形状の板状の部材61e、61fを備え、その2つの部材61e及び61fの間に第1保持部材61aを挟んでいる。部材61e及び61fは、第1把持部64に接合され、一体に形成されている。第1保持部材61aが有する第1当接面61cと第2保持部材61bが有する第2当接面61dとは、
図15に示すθ方向にずれて配置されている。
【0040】
図16は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の要部拡大図である。第1保持部材61aと第2保持部材61bとは、連結部67によって互いに回動可能に連結されている。第1保持部材61aを基準にした場合、第1把持部64を下げると第2当接面61dは、第1当接面61cに近づくように変位し、第1把持部64を上げると第1当接面61cから離れる方向に変位する。
図16は、第1把持部64をz方向逆向きに移動させることにより、第2当接面61dがz方向に移動した状態を示している。なお、第1保持部材61aと第2保持部材61bとは、回転できる範囲に制限が設けられていると良い。また、リンク機構又はカムなどを用いて、第1把持部64を移動させた際に第1当接面61cと第2当接面61dとが互いに近づく様に構成しても良い。
【0041】
第1保持部材61aと第2保持部材61bとは、連結部67の回転軸中心周りに回転できる。第2保持部材61bは、一端に第1把持部64が接続され、他端には第2当接面61dが形成されている。連結部67は、第1保持部材61aと第1把持部64との接続部と、第2当接面61dとの間に配置されている。また、連結部67は、突き当て面61gの下方、つまり第1当接面61c又は第2当接面61dの奥側の端からz方向逆向きに延ばした仮想線上に位置する。
【0042】
第1保持部材61aは、第1当接面61cよりもz方向に押圧部材63との連結部66を備える。押圧部材63には第2把持部65が取り付けられているため、作業者は、第2把持部65を把持して操作することにより、押圧部材63及び連結部66を介して第1保持部材61aの位置を制御できる。よって、作業者は、第2把持部65を支持して
図16の上側に位置する第1保持部材61aの位置を保持しつつ、第1把持部64を下に引き下げることにより、第2保持部材61bが連結部67周りに回転し、第2当接面61dが第1当接面61cに近づく。これにより、第1当接面61cと第2当接面61dとが、その間に挿入された横フランジ部13を挟み込み、保持する。第1当接面61cと第2当接面61dとは、表面に凹凸形状が形成されており、
図14及び
図15のθ方向に沿って溝が形成されており、フランジ保持部材61が横フランジ部13から外れにくくなっている。
【0043】
また、第1保持部材61aと第2保持部材61bとは互いに回動できない構造であっても良い。この場合は、
図14に示す様に、第1当接面61cと第2当接面61dとの隙間に挿入された横フランジ部13の先端部13bが第1当接面61cに当接し、第2当接面61dの先端側の部分が横フランジ部13の裏面13cに当接する。第1当接面61cと第2当接面61dとは、表面に凹凸形状が形成されており、
図14及び
図15のθ方向に沿って溝が形成されており、フランジ保持部材61が横フランジ部13から外れにくくなっている。
【0044】
図15に示す様に、押圧部材63は、フランジ保持部材61から側方、つまりθ方向逆向きにずらした位置に配置されている。押圧部材63は、フランジ保持部材61に連結され、回転可能に構成されている。押圧部材63は、連結部66を軸として、第2把持部65の操作により回動可能に構成されている。押圧部材63は、連結部66周りに回動可能であり、回転中心軸が
図14及び
図15に示されたθ軸に平行である。つまり、押圧部材63の回転中心軸は、横フランジ部13を第1当接面61c及び第2当接面61dの間に挿入する方向(r方向逆向き)に垂直かつ第1当接面61cに垂直になっている。
【0045】
図12及び
図13に示す様に、押圧部材63の押圧面63aは、回転移動し、連結金具20を押す。連結部66の回転中心軸から押圧面63aまでの距離に対し、第2把持部65は、長く形成されている。そのため、作業者は、第2把持部65を操作することにより、容易に押圧面63aを介して連結金具20に大きな力を加えることができる。フランジ保持部材61は、第1当接面61c及び第2当接面61dの間に横フランジ部13を保持することにより、押圧面63aからの反力を受けても連結金具取り付け治具60が横フランジ部13から外れない様に構成されている。
【0046】
つまり、連結部66は、第1当接面61cよりも上側に位置するため、第2把持部65から下側に力を加えることにより、第1当接面61cが横フランジ部13側に押し付けられるように作用する。したがって、押圧部材63が連結金具20を押し込む際に、フランジ保持部材61が横フランジ部13を強く挟みこみ連結金具取り付け治具60の位置が強固に保持される。これにより、フランジ保持部材61は、押圧部材63が連結金具20を押し込む反力を受けることができる。
【0047】
以上のように、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60は、横フランジ部13に固定された状態で、連結金具20を押し込むことができる。押圧部材63は、第2把持部65の操作により作業者の力でも容易に大きな力で連結金具20を押し込むことができる。そのため、従来において、連結金具20をハンマーなどで叩き、衝撃力を加えて嵌め込んでいたのに対し、衝撃音が発生せず、作業時の騒音を抑制できる。
【0048】
また、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60は、押圧部材63の回転中心軸に逆回転阻止機構を備える。押圧部材63の回転中心軸は、逆回転阻止機構を備えることにより、押圧面63aが横フランジ部13に近づく方向に移動できるが、離れる方向への移動即ち逆回転が阻止される。これにより、押圧部材63が連結金具20を横フランジ部13に押し込む際に、作業者は常に第2把持部65に押し込み方向の力を加え続ける必要がない。例えば、連結金具20を押し込む途中で、作業者が第2把持部65にさらに力を加えたい場合があったときに、作業者は一度第2把持部65から手を離して、第2把持部65の掴み方を変えられる。つまり、連結金具取り付け治具60は、連結金具20を横フランジ部13に押し込む途中に作業者が第2把持部65に加える力を抜いても連結金具20の位置が保持できるため、作業性が向上する。
【0049】
押圧部材63の連結部66に設けられた逆回転阻止機構は、例えばラチェット歯車とラチェット歯車の回転を一方向に規制するラチェット爪とを備えるラチェット機構である。または、逆回転阻止機構は、ワンウェイクラッチやフリーホイールなどの逆回転を阻止する機構であっても良い。また、逆回転阻止機構は、解除できるように構成されていても良い。
【0050】
以上のように、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60は、押圧部材63とフランジ保持部材61との連結部66に逆回転阻止機構を備えることにより、連結金具20の押し込み作業が容易になる。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260について説明する。連結金具取り付け治具260は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60の第2把持部65を動かす方向を変更したものである。実施の形態2においては、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図17は、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260の上面図である。
図18は、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260の側面図である。実施の形態1に係る押圧部材63の回転中心軸はθ軸に平行であったが、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260の押圧部材263は、z軸に実質的に平行に構成されている。つまり、押圧部材263の回転中心軸は、第1当接面61c又は第2当接面61dに対し垂直になる様に構成されている。
【0053】
連結金具取り付け治具260は、第1保持部材61aからθ方向に突出して設けられた回転軸支持部材269に連結部266が設けられている。押圧部材263は、その連結部266周りに回動自在に構成されている。
【0054】
押圧部材263は、第2把持部65が接続されており、
図17のr方向に向かって移動させることにより、押圧面263aが連結部266周りに移動し、連結金具20を押す。これにより、連結金具20は、横フランジ部13に嵌め込まれる。
【0055】
押圧面263aは、表面が円筒面に形成されている。これにより、押圧面263aと連結金具20との当接位置がばらつきにくくなる。仮に、実施の形態2において、押圧面263aが平面であったとすると、
図17に示す上面からみたときに直線で表される面同士が接触することになる。そのため、押圧部材263の回転角度に応じて連結金具20と押圧面263aとの接触位置が安定しない。なお、実施の形態1に係る押圧面63aは、
図14に示す側面図において直線で表される面であるが、対応する連結金具20の形状が円弧形状であるため、当接位置のばらつきは生じにくくなっている。
【0056】
以上のように、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260は、実施の形態1と同様に横フランジ部13に固定された状態で、連結金具20を押し込むことができる。押圧部材263は、第2把持部65の操作により作業者の力でも容易に大きな力で連結金具20を押し込むことができる。そのため、従来において、連結金具20をハンマーなどで叩き、衝撃力を加えて嵌め込んでいたのに対し、衝撃音が発生せず、作業時の騒音を抑制できる。
【0057】
また、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260は、実施の形態1に係る連結金具取り付け治具60と同様に押圧部材263の回転中心軸に逆回転阻止機構を備える。これにより、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260も実施の形態1と同様に連結金具20の押し込み作業性が向上する。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360について説明する。連結金具取り付け治具360は、実施の形態1及び実施の形態2に係る連結金具取り付け治具60、260の押圧部材63の形状を変更したものである。実施の形態3においては、実施の形態1及び実施の形態2と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図19は、実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360aの側面図である。連結金具取り付け治具360aの押圧部材363は、押圧面63aの下端部から押圧面63aに交差する方向に突出する金具支持部63bを備える。金具支持部63bは、L字状に形成され、押圧面63aから延びる突出部63dと、突出部63dの先端において突出部63dと交差する方向に延びる係合部63cと、を備える。
【0060】
押圧部材363は、押圧面63aと金具支持部63bとによりコ字形(又はU字形)に形成され、その内側に連結金具20を保持できる。また、押圧部材363の連結部66の外周面68が押圧面63aと金具支持部63bとにより形成されたコ字形の開放部を部分的に覆う様に配置されている。これにより、押圧部材363は、コ字形の内部に配置された連結金具20の挟持部23及び挟持側端部22aを保持できる。作業者は、連結金具20を連結金具取り付け治具360aに保持した状態で、連結金具20を土留部材10へ取り付けることもできる。
【0061】
また、金具支持部63bの係合部63cは、連結金具20の挟持部23の先端部23aに引っかかるように形成されている。つまり、係合部63cは、挟持部23の先端部23aに引っかかる程度に突出部63dから突出して形成されている。連結金具取り付け治具360は、土留部材10に取り付けられた状態の連結金具20に係合部63cを引っかけた状態で第2把持部65を上に引き上げることにより、連結金具20を取り外すために使用することもできる。なお、押圧部材363の逆回転阻止機構は、連結金具20を取り外すときは解除されている。または、実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360は、押圧面63aが横フランジ部13から離れる方向に移動するのを許容し、近づく方向に移動するのを阻止するように逆回転阻止機構を切り替えられるように構成されていても良い。
【0062】
図20は、実施の形態3に係る連結金具取り付け治具360bの側面図である。連結金具取り付け治具360bは、実施の形態2に係る連結金具取り付け治具260に金具支持部63bを追加したものである。連結金具取り付け治具360bは、実施の形態2のように押圧部材263の回転中心軸がz軸に実質的に平行に構成されているものである。この場合、押圧面263aの上端部から横フランジ部13が位置する方向に金具抑え部69が設けられていても良い。これにより、連結金具取り付け治具360bも、連結金具20を保持した状態で土留部材10に取り付けが可能となり、取り外し作業も可能となる。また、連結金具取り付け治具360bも、逆回転阻止機構を逆転させて使用できるように構成されていても良い。
【0063】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。また、以上の説明においては、横フランジ部13に連結金具20を取り付ける場合のみを示したが、連結金具取り付け治具60、260、360a及び360bは、縦フランジ部19に連結金具20を取り付ける場合においても使用できる。
【符号の説明】
【0064】
10 土留部材、10a 土留部材、10b 土留部材、10c 土留部材、10d 土留部材、11 軸方向連結部、12 連結部、12a 連結部、12b 連結部、12c 連結部、12d 連結部、13 横フランジ部、13a 連結孔、13b 先端部、13c 裏面、14 本体、15 ウェブ部、16 内側フランジ部、17 外側フランジ部、18 外側フランジ部、19 縦フランジ部、20 連結金具、20a 第1連結金具、20b 第1連結金具、20c 連結金具、20e 第1連結金具、20f 第1連結金具、20g 連結金具、21 先端部、21a 先端、21b 板面、22 連結金具本体、22a 挟持側端部、22b 差込み側端部、22c 端縁、22d 端縁、23 挟持部、23a 先端部、23b 当接部、25 差込み部、26 凸部、50 環状体、50A 環状体、50B 環状体、60 連結金具取り付け治具、61 フランジ保持部材、61a 第1保持部材、61b 第2保持部材、61c 第1当接面、61d 第2当接面、61e 部材、61f 部材、61g 突き当て面、63 押圧部材、63a 押圧面、63b 金具支持部、63c 係合部、63d 突出部、64 第1把持部、65 第2把持部、66 連結部、67 連結部、68 外周面、69 金具抑え部、92 地山、93 空間部、100 土留構造、260 連結金具取り付け治具、263 押圧部材、263a 押圧面、266 連結部、269 回転軸支持部材、360 連結金具取り付け治具、360a 連結金具取り付け治具、360b 連結金具取り付け治具、363 押圧部材、C 中心軸、N 中立軸。