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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121439
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ダニ捕獲器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/10 20060101AFI20230824BHJP
   A01P 19/00 20060101ALN20230824BHJP
   A01N 37/08 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
A01M1/10 A
A01P19/00
A01N37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024792
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】591189258
【氏名又は名称】カモ井加工紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 隆也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 哲男
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121BA42
2B121BA51
2B121BA58
4H011AC07
4H011BB06
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】
ダニを誘引する物質によりダニを誘引して不織布袋内に誘導して留まらせ、袋内のシリカゲルによってダニを乾燥死させる一方で、ダニの死骸は不織布袋から出にくい特性を有するダニ捕獲機を提供する。
【解決手段】
ダニ誘引剤を担持させたB型破砕シリカゲルを、不織布の容器に収納したダニ捕獲器であり、前記B型破砕シリカゲルは、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を50質量%以上含有するものであり、前記不織布は、10~50g/m2の目付量であるダニ捕獲器である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダニ誘引剤を担持させたB型破砕シリカゲルを、不織布の容器に収納したダニ捕獲器であり、
前記B型破砕シリカゲルは、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を50質量%以上含有するものであり、
前記不織布は、10~50g/m2の目付量であるダニ捕獲器。
【請求項2】
掃除機内部の塵埃貯蔵部に設置可能な大きさであり、前記塵埃貯蔵部に設置することで、ダニの増殖、又はフン、若しくは死骸の拡散を防止する請求項1に記載のダニ捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアレルギーの原因となるヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ等の屋内塵性ダニを不織布製の容器内に誘引し、容器内部において乾燥死させるダニ捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年住宅の密閉度が上がり、また冷暖房により家屋全体が快適な温度・湿度に保たれるようになった。塵性ダニの生育に適した環境は温度20~30℃、湿度60%以上とされており、ヒトの通常の生活温湿度とオーバーラップするところが多い。このため塵性ダニが季節を問わず、家屋内、寝具、敷物、畳等において発生、繁殖することとなった。
【0003】
家屋内の塵性ダニとしては、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニが知られている。これら塵性ダニはヒトに対して吸血や刺咬などの直接的な被害をもたらすものではないが、その生体、フン、死骸いずれもがアレルギー性疾患の原因となることが判明している。また、塵性ダニを餌とするツメダニが増殖し、その結果としてツメダニによるヒトへの刺咬被害が発生することもある。したがって、これら塵性ダニは、住環境から可能な限り排除することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-308706号公報
【特許文献2】特開平3-206834号公報
【特許文献3】特開2001-247410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来よりこれら塵性ダニへの対策として、殺虫剤の散布、洗濯、粘着剤を使用したダニ捕集シート、掃除機による吸引除去等による対策が取られてきた。
【0006】
殺虫剤等薬剤を使用する場合、ダニが住環境中に広く存在することから、広範囲の処理が必要であり、ヒトと薬剤の直接接触や、残留薬剤の蒸散による呼吸器系からの吸収が考えられ、健康被害をもたらす可能性がある。ダニが多く棲息する寝具や敷物などへの適用は難しいのが現実である。
【0007】
ダニが熱や乾燥に弱いことから、寝具については丸洗いが推奨されているが、手間と費用を考慮すると頻繁な実施は難しい。また洗い後の寝具の乾燥が完全でなかった場合には、残った水分によってダニを増やしてしまう危険性もある。
【0008】
ダニ捕集シートは、ダニの好む匂いで誘引し、粘着剤で捕獲するものなどがあるが、ダニは小さく軽いため、一般の粘着テープに使用されるような粘着剤では捕獲することはできない。故に専用の特殊な柔らかい粘着剤を使用する必要があるが、製品からの粘着剤の漏れ、にじみ等の使用上のトラブルが発生しやすく、その取り扱いは難しい。また、ダニといえども粘着剤があれば、それを感知し回避するものであって、自ら粘着剤に捕まるダニは多くはなく、効率の悪いものである。粘着剤製品はその使用過程において、埃などが付着し、徐々に粘着性が低下していくことも問題である。現在市販されているシートの中には誘引剤が強い臭気を発するものもあり、臭いが寝具や敷物に移った場合は、シートを除去した後もその場所から継続して臭気が発生するだけでなく、ダニが集まり続けるといった弊害も考えられる。
【0009】
掃除機による吸引除去は有効な手段ではあるが、寝具、敷物においては吸引力が及ぶのはその表層のみであり、また表層に存在するダニも繊維にしがみついて吸引力に抵抗することが知られている。深層のダニ、死骸や糞に至っては吸引力も及ばず、手間の割に対策としては不完全なものである。
【0010】
また、掃除機で吸引した掃除機内の塵埃貯蔵部に集められたダニの増殖抑制についてはこれまで有効な対策が取られることはなかった。
【0011】
塵性ダニは一般家庭に於いて、もともと普遍的に存在する性質のものであり、通常は寝具、敷物におけるダニの数は問題になるほどの数ではない。しかしながらそのような家庭に於いても、塵埃の集積場となる掃除機の塵埃貯蔵部においては、相当数のダニが棲息している。
【0012】
掃除機に吸引される際に、衝撃でダニが死滅するという論もあるが、実際にはダニは塵埃と共に吸い込まれるのであり、塵埃にしがみついたダニは、それがクッションとなって生き残り、塵埃中に含まれる食品滓、ヒトの皮膚、爪などを養分に生存し、充分に繁殖している。
【0013】
掃除機の塵埃貯蔵部はその構造上密閉されているものではないから、掃除機を使用していないときには、せっかく吸引捕獲したダニが、塵埃貯蔵部入口や排気部その他開閉可能な部分から奔逸し、塵埃貯蔵部外部、果ては掃除機外部にも移動する。
【0014】
掃除機内部におけるダニの増殖を抑制しない限り、塵埃貯蔵部またはその近辺で、アレルゲンとなるフンや死骸が増え続けるのであって、これらは乾燥や振動、吸引した空気流によって小さくバラバラになり、アレルゲンとして住環境中に飛散することとなる。
【0015】
掃除機によるダニの吸引除去は家屋内のアレルゲン除去方法として有効であるが、塵埃とともに塵埃貯蔵部に捕らえたダニは、速やかに死に至らしめ、外部に出さないようにすることが好ましい。
【0016】
掃除機の集塵パックの分野においては、特許文献1に記載されているように、誘引物質を含んだ発泡樹脂を誘引材とし、これを屋内に散布した後吸引する方法も知られている。これは広範囲に屋内のダニを誘引して掃除機で吸引するものであるが、屋内に撒き散らした誘引材にダニが誘引されるまで待たなければならないため、その間は部屋が使えないなどの問題がある。
【0017】
また、特許文献2のように、シリカゲルが固定された電気掃除機用集塵パックを電気掃除機内に設置することが提案されている。これは集塵パックの内側表面に樹脂をバインダーとしてシリカゲルを固定するものであるが、このようにすると集塵パックの通気性が悪化して吸引力が低下する問題がある。また、ダニを誘引する効果がないため、集塵パック内にダニをとどめておくことができず、ダニの奔逸に対しては有効ではない。また引用文献2の発明の詳細な説明中には、例として、シリカゲル粉末を布や化繊物でこぼれないように包んだ小袋を集塵パック中に挿入する、という記述が見られる。しかしながら一つの集塵パック内にダニとシリカゲルを包んだ小袋が存在する場合、何らかの誘引剤を付加しておかなければダニはシリカゲルに近づかないのであって、たまたま近傍にいるダニに対して脱水致死の効果があったとしても、集塵パック全体に効果は及ばない。
【0018】
また、特許文献3にはプロピオン酸ベンジル、酢酸ゲラニル、ネロリドールをシリカゲル等に担持させて散布し、ダニを誘引した後に掃除機で吸引駆除する方法が示されているが、特定の不織布に収容し、ダニが散逸しないような工夫は見られない。
【0019】
このように、従来の方法は、いずれも改善すべき点があった。本発明は、ダニを誘引する物質によりダニを誘引して不織布の容器内に誘導して留まらせ、容器内のシリカゲルによってダニを乾燥死させる一方で、ダニの死骸は不織布の容器から出にくい特性を有するダニ捕獲機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ダニ誘引剤を担持させたB型破砕シリカゲルを、不織布の容器に収納したダニ捕獲器であり、前記B型破砕シリカゲルは、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を50質量%以上含有するものであり、前記不織布は、10~50g/m2の目付量であるダニ捕獲器により、上記の課題を解決する。
【0021】
前記ダニ捕獲器は、掃除機内部の塵埃貯蔵部に設置可能な大きさであり、前記塵埃貯蔵部に設置することで、ダニの増殖、又はフン、若しくは死骸の拡散を防止するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ダニを誘引する物質によりダニを誘引して不織布の容器内に誘導して留まらせ、不織布の容器内のシリカゲルによってダニを乾燥死させる一方で、ダニの死骸は不織布の容器から出にくい特性を有するダニ捕獲機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のダニ捕獲器の好適な実施形態について説明する。
【0024】
本発明のダニ捕獲器は、ダニ誘引剤を担持させたB型破砕シリカゲルを、不織布の容器に収納したダニ捕獲器であり、前記B型破砕シリカゲルは、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を50質量%以上含有するものであり、前記不織布は、10~50g/m2の目付量である。なお、本明細書において、粒子径の範囲は、メッシュ(篩)を用いたふるい分け法によるものとする。
【0025】
ダニ誘引剤(以下、単に誘引剤と称することがある。)としては、特に限定されないが、プロピオン酸ネリル、又はプロピオン酸ゲラニルが特に有用である。これらのダニ誘引剤は、花のような香りがする。ダニ誘引剤の中には、魚臭がするものなどヒトにとって不快な香りがするものがあるが、ヒトが嗅いだときに嫌な感情が生じにくく好ましい。また、上記のダニ誘因剤は、ダニの誘引性、効果の持続性において優れている点でも好ましい。
【0026】
誘引剤として、プロピオン酸ネリル、又はプロピオン酸ゲラニルを使用する場合は、プロピオン酸ネリル、及びプロピオン酸ゲラニルのうちいずれか一種以上を含有することが好ましい。すなわち、それぞれを単独で使用してもよく、双方混合して使用してもよい。また、他の誘引剤との併用も可能である。なお、上記プロピオン酸ネリル、プロピオン酸ゲラニルの基となるネロール、ゲラニオールは、単体では微弱な誘引効果しか示さず、プロピオン酸との化合物となって初めて、持続性を有する誘引剤として有効に機能するものである。
【0027】
シリカゲルに対して誘引剤を担持させるには、例えば、固形状の多孔質体であるシリカゲルに、誘引剤を含有する液剤を接触させる。これにより、シリカゲルの細孔に誘引剤が担持される。このとき、誘引剤の量は、担持させるシリカゲル100重量部に対して、誘引剤が1~50重量部の割合とすることが好ましい。前記液剤における誘引剤の濃度は、特に限定されないが、90~100質量%とすることができる。
【0028】
シリカゲルには、誘引剤たる香料を担持し、同時にダニの水分を奪う役割が求められる。本目的には、粒子径が180~850μmの範囲にあるB型破砕シリカゲルが適しており、更には粒子径が350~850μmの範囲にあるB型破砕シリカゲルがより好適である。
【0029】
B型破砕シリカゲルは、その製造工程によっては、粒子径180~850μmの範囲から外れるものを含むことがある。ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニを乾燥させて死滅させる観点から、B型破砕シリカゲルは、ふるい分け法による粒子径の範囲が180~850μmの粒子を50質量%以上含有するものを使用する。粒子径の範囲が180~850μmの粒子を、80質量%以上含有するものを使用することがより好ましく、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を、90質量%以上含有するものを使用することがより好ましく、粒子径の範囲が180~850μmの粒子を、94質量%以上含有するものを使用することがより好ましい。粒子径の範囲が180~850μmの粒子の含量の上限値は、特に限定されないが、例えば、100質量%以下である。粒子径180~850μmの範囲から外れる粒子を完全に分離することが難しい場合は、98質量%以下にしてもよい。
【0030】
シリカゲルとしては、例えば、富士シリシア化学株式会社のフジシリカゲルB型破砕シリカゲル20~40メッシュ、30~80メッシュ、あるいは豊田化工株式会社のB型破砕シリカゲル20~40メッシュ、30~80メッシュなどが好適に使用できる。
【0031】
一般にダニは体内に水分を多く保有する生物であり、その水分を奪うことで比較的容易に乾燥死に至らしめることができる。B型シリカゲルはA型シリカゲルに比し、高湿度環境における吸湿性能が高い。このため高湿度環境下にあっても、水分を多く含むダニの生体から、更に水分を奪うことができる。またB型シリカゲルは吸放湿性を有するため、ダニの水分を奪った後は環境中に放湿し、手を加えることなく繰り返しの使用が可能である。例えば乾燥剤として用いられるものにはA型シリカゲル、酸化カルシウム、塩化カルシウムなどがある。これらは速やかに吸湿するが、人為的な処理なくして放湿することがなく、飽和した後は近傍にダニがいたとしても何らの効果も示さない。
【0032】
また本発明では特に破砕シリカゲルを選定するが、当該シリカゲルが鋭利な断面を有していることから、シリカゲル間をダニが移動する際に、ダニの体躯を傷つけ、水分を奪いやすくする作用がある。一般にダニは狭いところに潜り込む性質を有しており、そのような場所で集団を形成することから、シリカゲル粒子間の隙間にはダニが集まりやすい。塵性ダニの体長は100~400μm程度であって、粒子径180~850μmの破砕シリカゲルは、ダニが潜り込みやすい大きさの隙間を形成することから、ダニがシリカゲルの隙間に留まりやすく好ましい。シリカゲルが180μmより小さい場合はダニが潜り込む隙間がないため、乾燥死させる効果が低下する。また850μmより大きい場合は隙間が大きくなりすぎるため、やはり乾燥死させる効果が低下する。
【0033】
球状シリカゲルは、同重量の破砕シリカゲルよりも表面積が小さいため、ダニの水分を奪う効果が劣り、ダニの体表面を傷つける作用も有していないことから、本目的においては効果が劣る。
【0034】
不織布は、10~50g/m2の目付量を有するものを使用する。不織布としては、例えば、繊維を熱融着することにより構成されたスパンボンド不織布やサーマルボンド不織布、繊維をバインダーによって結合させたケミカルボンド不織布、あるいは高圧水流で繊維を絡ませるスパンレース不織布などが使用可能であり、これらは単独あるいは複合して用いてもよいし、異種材料と不織布の組み合わせとしてもよい。
【0035】
上記不織布は、ランダムに重なり合った繊維の接点を、熱、バインダー、あるいは繊維同士の摩擦力によって結合、保持させるものであり、繊維により3次元構造が形成されている。ダニは迷路のようになった繊維の間をかき分けながら、あるいは自身が通過可能な場所を選択しながら内部に侵入していくが、一方で死骸となったダニは、繊維に遮られ外部には出にくいという特徴を有することになる。
【0036】
ここで、いずれの不織布も目付量が小さすぎる場合は繊維間の距離が大きく粗となり、シリカゲルを保持しておくことができない。また目付量が大きすぎる場合は繊維密度が高く、ダニが入りにくくなる。本目的には10~50g/m2の目付量を有するものが適するが、15~30g/m2がより好適な範囲である。
【0037】
不織布を使用してシリカゲルを収納する容器を作製する場合、袋状に成形したものが最も適しているが、成形する袋のサイズ、形状に特に制限はない。例えば掃除機の塵埃貯蔵部に捕獲器を設置する場合、一辺が5cm以下の四角形の袋を形成すれば、そのまま掃除機の吸引口から吸引して塵埃貯蔵部に定着させ、そこでのダニ増殖抑制が可能となる。前記一辺の下限値は特に限定されないが、ヒートシール工程における作業上の制約から2cm以上とすることができる。その他にも、例えば寝具やカーペット等の広い範囲に適用する場合には、A4サイズや新聞紙サイズの大きさに加工することも可能であり、使用状況に応じて不織布容器の大きさを変え、本発明のダニの誘引致死効果を活用することができる。
【0038】
また製袋方法についても従来より知られた手法が利用可能であり、超音波加工、ヒートシール加工、粘着剤・接着剤による貼付加工などが可能で、特に制限はない。
【0039】
なお、ニードルパンチ不織布、ステッチボンド不織布は一般的に厚さが厚く繊維も密であることからダニの侵入性において劣ることがある。
【実施例0040】
以下に実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
下記の350~850μmのB型破砕シリカゲルの粒子を95質量%含有し、残部がそれ以外の粒径の粒子であるB型破砕シリカゲル(A)、
下記の180~550μmのB型破砕シリカゲルの粒子を95質量%含有し、残部がそれ以外の粒径の粒子であるB型破砕シリカゲル(B)、又は
下記の1~3mmのB型球状シリカゲルの粒子を95質量%含有し、残部がそれ以外の粒径の粒子であるB型球状シリカゲル(C)と、
下記のプロピオン酸ネリルを含有する液剤(A)、又は
下記のプロピオン酸ゲラニルを含有する液剤(B)とを混合することにより、B型破砕シリカゲルの細孔に、液状の誘引剤を担持させて、誘引材を得た。なお、上記の粒径は、いずれも篩を用いたふるい分け法によるものである。
【0042】
なお、プロピオン酸ネリルを含有する液剤(A)は、株式会社井上香料製造所製のものであり、製品名はネリルプロピオネートであり、プロピオン酸ネリルの含量は98質量%以上である。
【0043】
なお、プロピオン酸ゲラニルを含有する液剤(B)は、株式会社井上香料製造所製のものであり、製品名はゲラニルプロピオネートであり、プロピオン酸ゲラニルの含量は96質量%以上である。
【0044】
B型破砕シリカゲルと液剤との混合に際しては、B型破砕シリカゲル100重量部と、各液剤10重量部とを混合した。
【0045】
目付量30g/m2のスパンボンド不織布で4×4cmの方形状に形成した不織布袋を作製し、上記の方法で作製した各誘引材1gを入れてヒートシール機にて封をして実施例1ないし3に係るダニ捕獲器を作製した。実施例1ないし3のダニ捕獲器で使用した不織布、シリカゲル、又は誘引剤(香料)の組み合わせは以下の通りである。
【0046】
[実施例1]
不織布:スパンボンド不織布30g/m2
シリカゲル:B型破砕シリカゲル(A)350~850μm
香料:プロピオン酸ネリルの液剤(A)
【0047】
[実施例2]
不織布:スパンボンド不織布30g/m2
シリカゲル:B型破砕シリカゲル(B)180~550μm
香料:プロピオン酸ネリルの液剤(A)
【0048】
[実施例3]
不織布:スパンボンド不織布30g/m2
シリカゲル:B型破砕シリカゲル(A)350~850μm
香料:プロピオン酸ゲラニルの液剤(B)
【0049】
目付量30g/m2のスパンボンド不織布、又は目付量70g/m2のニードルパンチ不織布で4×4cmの方形状に形成した不織布袋を作製し、上記の方法で作製した各誘引材1g又は香料を担持していないB型破砕シリカゲルを入れてヒートシール機にて封をして比較例1ないし3に係るダニ捕獲器を作製した。比較例1ないし3のダニ捕獲器で使用した不織布、シリカゲル、又は誘引剤(香料)の組み合わせは以下の通りである。
【0050】
[比較例1]
不織布:スパンボンド不織布30g/m2
シリカゲル:B型球状シリカゲル(C)1~3mm
香料:プロピオン酸ネリルを含有する液剤(A)
【0051】
[比較例2]
不織布:ニードルパンチ不織布70g/m2
シリカゲル:B型破砕シリカゲル(A)350~850μm
香料:プロピオン酸ネリルを含有する液剤(A)
【0052】
[比較例3]
不織布:スパンボンド不織布30g/m2
シリカゲル:B型破砕シリカゲル(A)350~850μm
香料:なし
【0053】
[試験1]
試験には実験室内で飼育しているヤケヒョウヒダニを用いた。紙の上に上記実施例1ないし比較例3に係るダニ捕獲器を置き、それぞれ40cmの距離を開けて培地・ダニ混合物0.1g(ダニ約1000匹相当)を設置した。72時間後に袋を回収し、袋内に侵入したダニの数をカウントした。
【0054】
【表1】
【0055】
試験2
モニター家庭4軒で、実施例1、又は比較例1に係るダニ捕獲器を布団やカーペットの下に1ヶ月設置し、捕獲したダニの数をカウントした。
【0056】
【表2】
【0057】
試験3
モニター家庭4軒で、実施例1、及び比較例3に係るダニ捕獲器を同時に同じ掃除機に吸わせ、掃除機の塵埃貯蔵部内で捕獲したダニの数をカウントした。
【0058】
【表3】
【0059】
試験3の結果から、本発明のダニ捕獲器は掃除機の塵埃貯蔵部へ設置することにより、ダニを効率的に捕獲できることがわかる。これに留まらず、試験1又は試験2の結果からわかるように、ダニが多く存在する寝具や敷物の下、家具の裏や部屋の隅等の埃の溜まりやすい場所への設置も可能である。このように本発明のダニ捕獲器は、家屋内におけるダニの増殖抑制、ダニアレルゲンの拡散抑制、ひいてはダニアレルギーの低減・予防に資するものである。