(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121440
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】粘着搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230824BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65H5/06 C
B65H5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024793
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 崇行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 定義
【テーマコード(参考)】
3F049
5F131
【Fターム(参考)】
3F049CA11
3F049CA32
3F049LB12
5F131AA10
5F131AA13
5F131CA32
5F131CA38
5F131DA20
5F131DB24
5F131DB25
5F131DB62
(57)【要約】
【課題】通気性を有するシート状物を粘着して搬送する粘着搬送装置の小型化を達成する。
【解決手段】シート状物Wを粘着して搬送する粘着搬送装置10aは、シート状物Wを粘着保持して搬送移動する搬送装置本体11と、シート状物Wに対向する剥離板26を備え、搬送装置本体11に装着される剥離部材23と、回転軸19a、19bが設けられ、搬送装置本体11に装着される支持台16と、外周面に粘着剤層22が設けられた粘着ローラ21と、粘着ローラ21のうちシート状物に粘着する粘着保持領域22aが剥離板26の下方に突出する貼付位置と、粘着保持領域22aが剥離板26よりも上方に離れた剥離位置との間を、剥離部材23に対して粘着ローラ21を相対的に上下動するように搬送装置本体11に設けられた上下動部材と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物を粘着して搬送する粘着搬送装置であって、
前記シート状物に対向する剥離板を備える剥離部材と、
外周面全体に粘着剤層が設けられた粘着ローラと、
前記粘着ローラを前記剥離部材に対して相対的に上下動させる搬送装置本体と、を有し、
前記粘着ローラは、前記粘着剤層のうち前記シート状物に粘着する粘着保持領域が前記剥離板の下方に突出する貼付位置と、前記粘着保持領域が前記剥離板よりも上方に離れた剥離位置との間を、前記搬送装置本体により前記剥離部材に対して相対的に上下動する、粘着搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着搬送装置において、
前記搬送装置本体は、シリンダ本体と、シリンダ本体に対して上下動可能な上下動部材とからなる、粘着搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着搬送装置において、
前記剥離板は前記粘着保持領域を前記シート状物に向けて突出させる開口部を有する、粘着搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着搬送装置において、
前記粘着ローラは、前記搬送装置本体に装着される支持台と、前記支持台に設けられる電動モータと、前記電動モータによって回転駆動される回転軸を介して、前記搬送装置本体に回転可能に装着される、粘着搬送装置。
【請求項5】
請求項4記載の粘着搬送装置において、
前記粘着剤層は、粘着搬送時にシート状物と粘着しない粘着待機領域を有し、
前記電動モータにより前記粘着ローラを寸動回転し、粘着待機領域にある前記粘着剤層の一部を前記粘着保持領域に移動させ、前記粘着保持領域にある前記粘着剤層の一部を前記粘着待機領域に移動させる、粘着搬送装置。
【請求項6】
請求項4記載の粘着搬送装置において、
前記粘着ローラは、前記回転軸に着脱可能に取り付けられる、粘着搬送装置。
【請求項7】
請求項4記載の粘着搬送装置において、
前記剥離部材は2つの前記剥離板を有し、前記支持台はそれぞれ前記粘着ローラが装着された2本の前記回転軸を有し、
それぞれの前記剥離板は前記シート状物に沿う方向に接近離反移動可能に前記搬送装置本体に装着され、
それぞれの2つの前記粘着ローラは相互に接近離反移動可能に前記回転軸に装着される、粘着搬送装置。
【請求項8】
請求項4記載の粘着搬送装置において、
前記剥離部材は前記搬送装置本体に固定され、
前記支持台は上下動部材により前記剥離部材に対して上下動する、粘着搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の細孔が設けられた多孔質のシート状物を搬送する粘着搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状物を広げた状態で搬送するために、真空吸着パッドを備えた搬送装置が使用されている。その搬送装置を用いると、シート状物は真空吸着パッドにより吸着されて持ち上げられる。しかし、多数の細孔が設けられた通気性を有するシート状物を真空吸着パッドにより吸着すると、細孔から真空吸着パッドに空気が漏入して十分な吸着力を得ることができない。
【0003】
特許文献1は、表面に穴や溝が形成された被搬送物を、粘着力を利用して保持して搬送するフィンガーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたフィンガーは、ロボットハンド等に取り付けられるフィンガー外装板を有し、2つの粘着テープが巻き付けられた供給リールと、それぞれの粘着テープを巻き取る巻取りリールとが回転可能にフィンガー外装板に取り付けられている。供給リールから繰り出されたそれぞれの粘着テープは、2本の保持ローラにより被搬送物に対向する対向面が形成される。被搬送物は対向面に接触されて、フィンガーにより粘着保持される。搬送後に被搬送物を対向面から離すために、押し出しピンが外装板に取り付けられており、押し出しピンが2つの粘着テープの間から被搬送物を押し付けると、被搬送物は粘着テープから引き離される。
【0006】
このように、2つの粘着テープが巻き付けられた供給リールと、それぞれの粘着テープを巻き取る2つの巻取りリールとをフィンガー外装板に取り付けると、フィンガーは大型となってしまい、被搬送物を持ち上げる位置と配置する位置との間でフィンガーを迅速に搬送移動することができない。
【0007】
また、供給リールの粘着テープを交換する時には、新しい粘着テープを保持ローラや中間ガイドローラに沿うように巻き取りリールに捲回しなければならず、メンテナンスを容易に行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、通気性を有するシート状物を粘着して搬送する粘着搬送装置の小型化とメンテナンス性の向上を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着搬送装置は、シート状物を粘着して搬送する粘着搬送装置であって、前記シート状物に対向する剥離板を備える剥離部材と、外周面全体に粘着剤層が設けられた粘着ローラと、前記粘着ローラを前記剥離部材に対して相対的に上下動させる搬送装置本体と、を有し、前記粘着ローラは、前記粘着剤層のうち前記シート状物に粘着する粘着保持領域が前記剥離板の下方に突出する貼付位置と、前記粘着保持領域が前記剥離板よりも上方に離れた剥離位置との間を、前記搬送装置本体により前記剥離部材に対して相対的に上下動する。
【発明の効果】
【0010】
粘着搬送装置は、外周面全体に粘着剤層が設けられた粘着ローラを有しており、粘着ローラによりシート状物を粘着保持するので、粘着搬送装置を小型化することができる。粘着ローラを回転軸により回転させることにより、外周面の粘着剤層の位置を変化させることにより、粘着ローラの粘着力を保持することができ、多数枚のシート状物の粘着と剥離とを繰り返して搬送することができる。特に、通気性を有するシート状物を搬送するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】シート状物を粘着保持した貼付状態における一実施の形態である粘着搬送装置を示す斜視図である。
【
図4】シート状物を離した剥離状態における
図1の粘着搬送装置を示す斜視図である。
【
図6】シート状物を粘着保持した貼付状態における他の実施の形態である粘着搬送装置を示す正面図である。
【
図8】2つの粘着ローラ間の距離を長くした状態における
図5の粘着搬送装置を示す正面図である。
【
図10】シート状物を離した剥離状態における粘着搬送装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。粘着搬送装置10aは、
図1~
図5に示すように、搬送装置本体11を有している。搬送装置本体11は、工業用ロボットのアーム等に設けられた搬送部材12に取り付けられ、シート状物Wを保持する第1の位置と、保持されたシート状物Wを配置する第2の位置との間を搬送部材12により搬送移動される。
【0013】
シート状物Wは多数の細孔が形成されて通気性を有する天然または人工の皮革や樹脂製のシート部材である。例えば、通気性のシート状物Wにより椅子等の被覆シートを製造する場合には、径が1~2mm程度の孔が5mm程度の間隔で設けられ、寸法が400mm×300mmで、厚みが1~2mm、質量が100~200g程度のシート状物Wが使用される。シート状物Wは、多数の細孔をシート素材に形成すると、細孔により通気性のシート状物となる。このようなシート状物Wを搬送するために、粘着搬送装置10aを使用することができる。
【0014】
搬送装置本体11は空気圧により駆動されるシリンダにより構成される。シリンダである搬送装置本体11は、シリンダ本体20とシリンダ本体20に対して上下方向に往復動可能に設けられたピストンロッド13を有し、ピストンロッド13はシリンダ本体20の内部にシリンダ本体20に対して上下方向に往復動可能に組み込まれたピストンに取り付けられ、上下動可能な上下動部材を構成する。往復動板14がピストンロッド13に取り付けられ、2本のガイドロッド15が往復動板14に取り付けられており、それぞれのガイドロッド15はシリンダ本体20に往復動可能に装着されている。ガイドロッド15がピストンロッド13とともに往復動板14に取り付けられた状態でシリンダ本体20に装着されている。そのため、上下動部材であるピストンロッド13および往復動板14が、上下方向に移動する際のシリンダ本体20に対する回転移動を防止できる。すなわち、ガイドロッド15は、上下動部材の回転防止部材を構成する。
【0015】
支持台16が搬送装置本体11の往復動板14に取り付けられ、電動モータ17が支持台16に装着されている。電動モータ17のシャフト18はモータケースの両端部から外方に突出している。シャフト18の一端部に第1の回転軸19aが連結され、他端部に第2の回転軸19bが連結されており、両方の回転軸19a、19bは同軸である。電動モータ17のシャフト18を回転軸19a、19bを含めた長さとし、シャフト18と回転軸19a、19bを一体に構成してもよい。
【0016】
粘着ローラ21がそれぞれの回転軸19a、19bに同軸上に装着されており、
図3に示すように、粘着剤層22が粘着ローラ21の外周面全体に設けられている。粘着剤層22は、粘着ローラ21の外周面に粘着テープを巻き付けることにより形成することができる。粘着テープとして両面粘着テープを使用すると、粘着テープを粘着ローラ21の外周面に巻き付けることにより、粘着剤層22が設けられた粘着ローラ21を容易に製造することができる。粘着力が強く、シート状物に粘着痕が付きにくい粘着剤層が設けられたテープが好適であり、例えば、粘着剤としてナノゲル等の化学的または物理的に架橋された合成ポリマーが設けられた粘着テープを使用することが望ましい。
【0017】
剥離部材23が搬送装置本体11に装着されており、剥離部材23は搬送装置本体11の正面に水平方向に固定される連結部材24と、連結部材24の両端部に上下方向に取り付けられる支持棒材25とを有している。
図1に示されるように、シート状物Wに対向する剥離板26がそれぞれの支持棒材25に取り付けられている。四辺形の開口部27がそれぞれの剥離板26に粘着ローラ21に対応して形成されており、開口部27には粘着ローラ21の一部が入り込むようになっている。
【0018】
図3は粘着ローラ21の一部が開口部27に入り込んだ状態を示す。支持台16はピストンロッド13により上下方向に駆動され、粘着ローラ21を剥離板26に向けて下方に移動させると、
図1~
図3に示すように、粘着ローラ21は、剥離板26に接近して粘着ローラ21の外周面のうち下端部が開口部27から剥離板26の下方に突出する貼付位置になる。この貼付位置のときには、
図3に示すように、粘着ローラ21の外周面の粘着剤層22は、シート状物Wに粘着する粘着保持領域22aとシート状物Wに粘着しない粘着待機領域22bを有する。粘着保持領域22aが剥離板26の下方に突出する。この状態のもとで、搬送装置本体11を搬送部材12によりシート状物Wに接近移動させると、シート状物Wは粘着ローラ21の粘着保持領域22aに粘着されて保持される。粘着ローラ21に保持されたシート状物Wは搬送装置本体11により第1の位置から第2の位置に搬送される。なお、搬送装置本体11を搬送部材12によりシート状物Wに接近移動させてから粘着ローラ21の粘着保持領域22aを剥離板26の下方に突出させてもよい。また、粘着ローラ21のうち剥離板26の下方に突出する領域の一部のみを粘着保持領域としてもよい。
【0019】
第2の位置において、支持台16をピストンロッド13により上方に移動させると、
図4および
図5に示すように、粘着保持領域22aは剥離板26よりも上方に離れた剥離位置に移動する。粘着ローラ21が剥離位置に移動すると、シート状物Wは粘着ローラ21から剥離されて、第2の位置にシート状物Wは配置される。粘着ローラ21の一部が四辺形の開口部27から突出した粘着位置のときには、剥離部材23の剥離板26が粘着ローラ21を囲むように、シート状物Wに面接触しているので、粘着ローラ21が剥離位置に移動すると、シート状物Wは確実に粘着ローラ21から剥離される。このとき、点接触によるシート状物Wの剥離に比べて、シート状物Wに剥離痕が残りにくくなる。また、ガイドロッド15によりピストンロッド13の回転が防止されているので、粘着ローラ21は剥離板26に対して回転することなく粘着位置に移動し、確実に開口部27に粘着ローラ21が入り込むようになっている。
【0020】
粘着ローラ21はステッピングモータからなる電動モータ17により回転駆動され、粘着ローラ21の粘着剤層22は粘着ローラ21の回転に伴って回転移動する。粘着剤層22の回転移動によって、シート状物Wが粘着する粘着保持領域22aにある粘着剤層22の一部が粘着待機領域22bへ移動し、粘着待機領域22bにある粘着剤層22の一部が粘着保持領域22aへ移動する。一定の領域の粘着保持領域22aにより多数枚のシート状物Wを粘着搬送すると、その領域の粘着力が低下するが、粘着保持領域22aにある粘着剤層22の一部を粘着待機領域22bへ移動させ、粘着待機領域22bにある粘着剤層22の一部を粘着保持領域22aへ移動させると、粘着ローラ21によるシート状物Wの粘着力を回復させることができる。
【0021】
粘着力を回復するための粘着ローラ21の回転は、粘着保持領域22aの全体を新たな粘着剤層22に変更することなく、粘着待機領域22bにある粘着剤層22の一部を粘着保持領域22aへ移動させるように、粘着ローラ21を僅かに回転つまり寸動回転すればよい。粘着待機領域22bにある粘着剤層22の一部を粘着保持領域22aに含ませると、粘着保持領域22aの粘着力を回復させることができる。
【0022】
粘着搬送装置10aは、外周面に粘着剤層22が設けられた粘着ローラ21を用いているので、装置を小型化することができる。しかも、粘着ローラ21を回転させることにより、粘着力を回復させて多数のシート状物Wの粘着搬送を行うことができるので、粘着ローラ21を長期間連続使用することができる。
【0023】
実験によれば、
図1~
図5に示した粘着搬送装置10aにより、粘着保持領域22aを変化させることなく、約50枚のシート状物Wを搬送したところ、粘着剤層22に埃等が付着して粘着力が低下した。そこで、電動モータ17により粘着ローラ21を3~4度の角度で回転させて粘着保持領域22aに新しい粘着剤層22を露出させることにより、同様の枚数のシート状物Wを粘着搬送させることができた。これにより、1組の粘着ローラ21により約5000枚のシート状物Wを粘着搬送することができた。粘着ローラ21は回転軸19a、19bに着脱可能となっており、粘着テープを他のローラに沿わせたりリールに捲回したりすることなく、容易に新たな粘着ローラ21に交換することができる。
【0024】
粘着搬送装置10aにおいては、剥離部材23が搬送装置本体11に固定され、支持台16がピストンロッド13により上下動するように搬送装置本体11に取り付けられており、粘着ローラ21が剥離板26に対して上下動する。粘着ローラ21の剥離板26に対する上下動は、相対的であればよく、剥離板26を粘着ローラ21に対して上下動させるようにしてもよい。その場合には、剥離板26がピストンロッド13に取り付けられ、粘着ローラ21が搬送装置本体11に固定される。このように、粘着ローラ21と剥離板26の一方を上下動させることにより、粘着ローラ21は搬送装置本体11により剥離位置と粘着位置との間を剥離板26に対して相対的に移動する。
【0025】
図6~
図10は他の実施の形態である粘着搬送装置10bを示す。これらの図においては、上述した粘着搬送装置10aを構成する部材と共通性を有する部材には同一の符号が付されている。
【0026】
粘着搬送装置10bは搬送装置本体11を有しており、この搬送装置本体11は上述した粘着搬送装置10aの搬送装置本体11と同様に、空気圧により駆動されるシリンダにより構成される。なお、
図6~
図10においては、搬送装置本体11は外形が概略的に示されている。搬送装置本体11は、工業用ロボットのアーム等からなる搬送部材12に取り付けられ、シート状物Wを保持する第1の位置と、保持されたシート状物Wを配置する第2の位置との間を搬送部材12により搬送移動される。
【0027】
図6および
図8に示すように、シリンダである搬送装置本体11は、上下方向に往復動可能に設けられたピストンロッド13を有し、ピストンロッド13は上下動可能な上下動部材を構成する。往復動板14がピストンロッド13に取り付けられ、2本のガイドロッド15が往復動板14に取り付けられている。
【0028】
支持台16が搬送装置本体11の往復動板14に装着され、電動モータ17が支持台16に装着されている。電動モータ17のシャフト18はモータケースの両端部から外方に突出している。シャフト18の一端部に第1の回転軸19aが継手31により連結され、回転軸19aは軸受32により支持台16に回転可能に支持されている。シャフト18の他端部に第2の回転軸19bが継手31を介して連結されており、回転軸19bは軸受32により支持台16に回転可能に支持されている。両方の回転軸19a、19bは同軸である。
【0029】
粘着ローラ21がそれぞれの回転軸19a、19bに装着されており、それぞれの粘着ローラ21は回転軸19a、19bに対して軸方向に移動可能である。したがって、2つの粘着ローラ21は相互に接近離反する方向に移動可能である。上述した粘着搬送装置10aと同様に、粘着剤層22が粘着ローラ21の外周面に設けられている。粘着剤層22は、上述したように、粘着ローラ21の外周面に粘着テープを巻き付けることにより形成することができる。
【0030】
剥離部材23を構成するそれぞれの剥離板26は、ねじ部材33により支持棒材25に取り付けられており、ねじ部材33は回転軸19a、19bに平行となって剥離板26に形成されたスリット34を貫通している。したがって、ねじ部材33を緩めると、剥離板26を回転軸19a、19bに沿う方向、つまりシート状物Wに沿う方向に移動させることができる。このように、2つの剥離板26は、粘着ローラ21と同様に、シート状物Wに沿う方向に相互接近離反移動可能に搬送装置本体11に装着されている。
【0031】
図6および
図7は2つの剥離板26が最接近し、2つの粘着ローラ21の間の距離が最も短くなった状態を示す。一方、
図8および
図9は2つの剥離板26が最離反し、2つの粘着ローラ21の間の距離が最も長くなった状態を示す。両方の粘着ローラ21の間の距離は、粘着搬送するシート状物Wの大きさに応じて設定することができる。
【0032】
図8は、粘着ローラ21の粘着保持領域22aが剥離板26の下面から下方に突出した粘着ローラ21の貼付位置を示し、粘着位置においてシート状物が粘着ローラ21に粘着保持される。一方、
図10は粘着ローラ21が剥離板26よりも上方に移動して粘着ローラ21が剥離位置となった状態を示し、この剥離板においては粘着ローラ21に粘着保持されたシート状物は粘着ローラ21から剥離される。
【0033】
粘着搬送装置10bは2つの粘着ローラ21の間隔を変更することにより、同じ装置で、種々のサイズのシート状物を粘着搬送することができる。
【0034】
図6~
図10に示す粘着搬送装置10bにおいても、粘着ローラ21の剥離板26に対する上下動は、相対的であればよく、剥離板26を粘着ローラ21に対して上下動させるようにしてもよい。その場合には、剥離板26がピストンロッド13に取り付けられ、粘着ローラ21が搬送装置本体11に固定される。
【0035】
それぞれの粘着搬送装置10a、10bは、2つの粘着ローラ21を備えているが、1つの粘着ローラ21を備えた粘着搬送装置とすることも可能である。さらに、それぞれの回転軸19a、19bに2つの粘着ローラ21を装着することにより、4つの粘着ローラ21を備えた粘着搬送装置とすることも可能である。
【0036】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、搬送装置本体11は空気圧シリンダにより構成され、ピストンロッド13により支持台16を上下動するようにしているが、電動アクチュエータやソレノイドアクチュエータにより支持台16を上下動させるようにしてもよい。その場合には、電動アクチュエータやソレノイドアクチュエータが取り付けられる部材が搬送装置本体を構成する。粘着搬送装置は通気性を有するシート状物を粘着搬送する場合に好適であるが、通気性を有しないシート状物を粘着搬送するためにも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10a、10b 粘着搬送装置
11 搬送装置本体
12 搬送部材
13 ピストンロッド
14 往復動板
15 ガイドロッド
16 支持台
17 電動モータ
18 シャフト
19a、19b 回転軸
20 シリンダ本体
21 粘着ローラ
22 粘着剤層
22a 粘着保持領域
22b 粘着待機領域
23 剥離部材
24 連結部材
25 支持棒材
26 剥離板
27 開口部
33 ねじ部材
34 スリット