(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121457
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】空調用チャンバーボックスの取付構造
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20230824BHJP
F24F 13/04 20060101ALI20230824BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F24F13/06 B
F24F13/06 A
F24F13/04
F24F13/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024816
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛幸
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L080BA01
3L080BB01
3L081AA10
3L081AB02
(57)【要約】
【課題】空調用チャンバーボックスを吹出口に取付ける作業を、作業者を選ぶことなく短時間で行えるようにする。
【解決手段】天井2に設けられた空調用の吹出口3に、空調用の空気が送られるチャンバーボックス1を天井裏で取付ける空調用チャンバーボックス1の取付構造である。吹出口3は、天井裏に配置された上壁7と、上壁7から上方に延びる通気用の筒体8(第1の筒体)とを有する。チャンバーボックス1は、箱状の本体11と、本体11から下方に延びて吹出口3の筒体8に嵌合する下流側筒体13(第2の筒体)とを備える。下流側筒体13の内周面13aであって同じ高さの部位に、下流側筒体13より下方に延びる複数の取付板21(棒状のばね部材)が取付けられる。取付板21の下端部には、本体11が吹出口3に載せられた状態で吹出口3の上壁7に係合する係合片28が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に設けられた空調用の吹出口に、空調用の空気が送られるチャンバーボックスを天井裏で取付ける空調用チャンバーボックスの取付構造であって、
前記吹出口は、
前記天井裏に配置された上壁と、
前記上壁から上方に延びる通気用の第1の筒体とを有し、
チャンバーボックスは、
前記天井裏で延びる空調用ダクトに接続された箱状の本体と、
前記本体から下方に延びて前記第1の筒体に嵌合する通気用の第2の筒体とを備え、
前記第2の筒体の内面であって同じ高さの部位に、前記第2の筒体より下方に延びる複数の棒状のばね部材が取付けられ、
前記ばね部材の下端部には、前記本体が前記吹出口に載せられた状態で前記吹出口の前記上壁に係合する係合片が設けられていることを特徴とする空調用チャンバーボックスの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の空調用チャンバーボックスの取付構造において、
前記係合片は、先端が前記第2の筒体の外側であって斜め上方を指向するように前記ばね部材の先端部を折り曲げることによって形成されていることを特徴とする空調用チャンバーボックスの取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の空調用チャンバーボックスの取付構造において、
前記第2の筒体は前記第1の筒体の外面に嵌合し、
前記ばね部材の上端部は、
前記第2の筒体の内面と平行に上下方向へ延びる第1の平行部と、
前記第1の平行部の下端から下方に向かうにしたがって次第に前記第2の筒体の内方に延びる傾斜部と、
前記傾斜部の下端から前記第2の筒体の内面と平行に下方へ延びる第2の平行部とを有し、
前記本体が前記吹出口に載せられた状態は、前記傾斜部と前記第2の筒体との間に前記第1の筒体の上端が挟み込まれている状態であることを特徴とする空調用チャンバーボックスの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井の吹出口に天井裏で空調用チャンバーボックスを取付ける空調用チャンバーボックスの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の天井面に設けられている吹出口から吹き出す空調用エアーは、天井裏のエアーダクトから空調用チャンバーボックスに導かれ、この空調用チャンバーボックスで整流されるとともに消音された状態で吹出口に供給されている。従来の空調用チャンバーボックスは、例えば特許文献1に記載されているように吹出口の上方に配置されている。特許文献1に開示されている空調用チャンバーボックスは、吹出口に向けて突出する筒体を備えている。この筒体は、吹出口の筒体と嵌合し、吹出口の筒体にねじ部材によって取付けられている。
【0003】
空調用チャンバーボックスの筒体を吹出口の筒体にねじ部材によって取付けるためには、先ず、これらの筒体が重なり合っている状態で、これらの筒体を貫通する複数の下穴を穿設する。そして、タップねじを下穴に挿入して電動ドライバー等でねじ込む。このようにタップねじがねじ込まれることにより、タップねじがねじ穴を形成しながら両筒体にねじ込まれ、両筒体がねじ部材によって互いに締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空調用チャンバーボックスを吹出口に取付ける作業は、複数の下穴を開けてから各々の下穴にそれぞれねじ部材をねじ込む作業であり、作業時間が長くかかるという問題があった。また、この作業は、天井裏の狭い空間で行う必要があるために、訓練を積んだ熟練の作業者でしか行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、空調用チャンバーボックスを吹出口に取付ける作業を、作業者を選ぶことなく短時間で行うことが可能な空調用チャンバーボックスの取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る空調用チャンバーボックスの取付構造は、天井に設けられた空調用の吹出口に、空調用の空気が送られるチャンバーボックスを天井裏で取付ける空調用チャンバーボックスの取付構造であって、前記吹出口は、前記天井裏に配置された上壁と、前記上壁から上方に延びる通気用の第1の筒体とを有し、チャンバーボックスは、前記天井裏で延びる空調用ダクトに接続された箱状の本体と、前記本体から下方に延びて前記第1の筒体に嵌合する通気用の第2の筒体とを備え、前記第2の筒体の内面であって同じ高さの部位に、前記第2の筒体より下方に延びる複数の弾性材製のばね部材が取付けられ、前記ばね部材の下端部には、前記本体が前記吹出口に載せられた状態で前記吹出口の前記上壁に係合する係合片が設けられているものである。
【0008】
本発明は、前記空調用チャンバーボックスの取付構造において、前記係合片は、先端が前記第2の筒体の外側であって斜め上方を指向するように前記ばね部材の先端部を折り曲げることによって形成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記空調用チャンバーボックスの取付構造において、前記第2の筒体は前記第1の筒体の外面に嵌合し、前記ばね部材の上端部は、前記第2の筒体の内面と平行に上下方向へ延びる第1の平行部と、前記第1の平行部の下端から下方に向かうにしたがって次第に前記第2の筒体の内方に延びる傾斜部と、前記傾斜部の下端から前記第2の筒体の内面と平行に下方へ延びる第2の平行部とを有し、前記本体が前記吹出口に載せられた状態は、前記傾斜部と前記第2の筒体との間に前記第1の筒体の上端が挟み込まれている状態であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空調用チャンバーボックスを吹出口に取付ける作業を、作業者を選ぶことなく短時間で行うことが可能な空調用チャンバーボックスの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、空調用チャンバーボックスと吹出口の一部を破断して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、空調用チャンバーボックスと吹出口の斜め下方から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は、空調用チャンバーボックスと吹出口の断面図である。
【
図4】
図4は、空調用チャンバーボックスと吹出口の接続部分の横断面図である。
【
図6】
図6は、空調用チャンバーボックスに取付けられたばね部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る空調用チャンバーボックスの取付構造の一実施の形態を
図1~
図9を参照して詳細に説明する。
図1に示す空調用チャンバーボックス1は、
図1において最も下に描かれている天井2の上方、すなわち天井裏の空間Sに設置されるもので、天井2に取付けられた吹出口3に後述する取付構造4によって取付けられている。
【0013】
(吹出口の説明)
吹出口3は、いわゆる「アネモ」と呼称される空調用の部品で、天井2を上下方向に貫通する状態で天井2に固定された箱体5と、箱体5の下端部に設けられた制気口6(
図2参照)と、箱体5の上壁7に設けられた通気用の筒体8とを備えている。箱体5は、中空の箱状に形成され、天井裏に配置されている。箱体5は、制気口6が屋内に露出するように天井2に取付けられている。この制気口6は、
図2に示すように、複数の通気穴6aを有し、箱体5に着脱可能に取付けられている。
筒体8は、円筒からなり、箱体5の上壁7から上方に延びている。この実施の形態においては、吹出口3の筒体8が本発明でいう「第1の筒体」に相当する。
【0014】
(空調用チャンバーボックスの説明)
空調用チャンバーボックス1は、
図1~
図3に示すように、箱状の本体11と、本体11の一側壁11aに設けられた通気用の上流側筒体12と、本体11の底壁11b(
図2参照)に設けられた通気用の下流側筒体13とを備えている。
本体11は、中空の箱状に形成されている。
上流側筒体12は、円筒からなり、箱体5から水平方向に延びている。上流側筒体12には、天井裏で延びる空調用ダクト14(
図3参照)が接続されている。このため、本体11は、上流側筒体12を介して空調用ダクト14に接続されることになる。空調用ダクト14には空調用の空気が供給されている。この空調用の空気は、空調用ダクト14から空調用チャンバーボックス1に送られ、空調用チャンバーボックス1と吹出口3とを通って制気口6から室内に吹き出される。
【0015】
下流側筒体13は、円筒からなり、箱体5から下方に延びている。この実施の形態による下流側筒体13は、吹出口3の筒体8が嵌合状態で内部に挿入できるように形成されている。この実施の形態においては、この下流側筒体13が本発明でいう「第2の筒体」に相当する。
【0016】
(取付構造の説明)
図3に示すように、下流側筒体13の内周面(内面)13aには、本発明の取付構造4の主要部を構成する複数の取付板21が設けられている。本発明の取付構造4は、複数の取付板21と、これらの取付板21が取付けられた空調用チャンバーボックス1の下流側筒体13と、下流側筒体13と嵌合する筒体8を有する吹出口3の上壁7などによって構成されている。
【0017】
取付板21は、ばね材料によって帯板状に形成されており、
図5に示すように、所定の形状に折り曲げられているとともに、一端部(上端部)に貫通孔22が穿設されている。この実施の形態においては、取付板21が本発明でいう「棒状のばね部材」に相当する。また、この実施の形態による取付板21は、
図4に示すように、下流側筒体13を周方向に4等分する位置にそれぞれ配置され、下流側筒体13にリベット23によって取付けられている。
図4の破断位置は、
図3中にIV-IV線によって示す位置である。リベット23は、
図6に示すように、取付板21の貫通孔22と、下流側筒体13の貫通孔24とを貫通し、取付板21と下流側筒体13とを締結している。4個の取付板21は、下流側筒体13の内周面13aであって同じ高さの部位に取付けれられている。
【0018】
取付板21は、
図6に示すように、上端部がリベット23によって下流側筒体13に取付けられた状態で下流側筒体13より下方に延びる長さに形成されている。
取付板21の上端部は、下流側筒体13の内周面13aと平行に上下方向へ延びる第1の平行部25と、第1の平行部25の下端から下方に向かうにしたがって次第に下流側筒体13の内方(
図6においては右方)に延びる傾斜部26と、傾斜部26の下端から下流側筒体13の内周面13aと平行に下方へ延びる第2の平行部27とを有している。第1の平行部25に貫通孔22が形成され、第1の平行部25がリベット23によって下流側筒体13に取付けられている。第2の平行部27は、第1の平行部25より下流側筒体13の内方に所定の距離だけ離れている。この所定の距離とは、吹出口3の筒体8を挿入可能な距離である。
【0019】
取付板21の下端部には、係合片28が設けられている。
係合片28は、先端が下流側筒体13の外側であって斜め上方を指向するように取付板21の先端部(第2の平行部27の下端部)を折り曲げることによって形成されている。
取付板21の全長は、吹出口3の筒体8の軸線方向の長さに基づいて設定されている。詳述すると、取付板21の全長は、
図3に示すように、空調用チャンバーボックス1の本体11が吹出口3に載せられた状態で、係合片28の先端が吹出口3の上壁7の下面に接し、係合片28が上壁7に係合する長さである。ここでいう本体11が吹出口3に載せられた状態とは、
図9に示すように、空調用チャンバーボックス1の下流側筒体13が吹出口3の筒体8の外周面(外面)8aに嵌合し、取付板21の傾斜部26と下流側筒体13との間に吹出口3の筒体8が挟み込まれた状態である。
【0020】
(取付手順の説明)
次に、本発明に係る取付構造4によって空調用チャンバーボックス1を吹出口3に取付ける手順を
図7~
図9を用いて説明する。
空調用チャンバーボックス1を吹出口3に取付けるにあたっては、空調用チャンバーボックス1に複数の取付板21を予め取付けておく。空調用チャンバーボックス1を吹出口3に取付けるためには、先ず、
図7に示すように、空調用チャンバーボックス1を上方から吹出口3に接近させ、取付板21の係合片28を吹出口3の筒体8に接触させる。このとき、全ての係合片28の傾斜した下面に筒体8を接触させる。
【0021】
このように取付板21が吹出口3の筒体8に接触している状態で空調用チャンバーボックス1を下げる。空調用チャンバーボックス1が下げられると、係合片28が筒体8に接触ながら筒体8に対して滑り、取付板21が筒体8の径方向の内側に向けて撓む。そして、
図8に示すように、係合片28が筒体8の内方に入り、取付板21のばね力で筒体8の内周面8bを外側に向けて押しながら下方に進むようになる。
【0022】
空調用チャンバーボックス1を更に下げると、
図9に示すように、吹出口3の筒体8の上端部が取付板21の傾斜部26と下流側筒体13との間に挟み込まれるようになり、それ以上空調用チャンバーボックス1を下げることができなくなる。このときには、取付板21の係合片28が筒体8の下端から下方に外れ、取付板21のばね力で弾性変形前の初期の位置に戻される。この結果、係合片28が筒体8に対して径方向の外側に移動し、吹出口3の上壁7に係合する。係合片28が上壁7に係合することにより、吹出口3に対する空調用チャンバーボックス1の上方への移動が規制される。また、この取付状態においては、取付板21の傾斜部26が吹出口3の筒体8に取付板21のばね力で押し付けられるから、空調用チャンバーボックス1が吹出口3の筒体8に対して上下方向および周方向へ移動する際に抵抗が付与される。
【0023】
このように、この実施の形態による空調用チャンバーボックス1の取付構造4によれば、取付板21の下端部に設けられた係合片28が吹出口3の上壁7に係合することにより空調用チャンバーボックス1の外れ止めを行うことができるから、工具を使用することなく簡単に空調用チャンバーボックス1を吹出口3に取付けることができる。この取付作業を行うにあたって熟練者は不必要である。したがって、この実施の形態によれば、空調用チャンバーボックス1を吹出口3に取付ける作業を、作業者を選ぶことなく短時間で行うことが可能な空調用チャンバーボックスの取付構造を提供することができる。
【0024】
空調用チャンバーボックス1を吹出口3から外す場合は、制気口6を吹出口3から外して室内側から吹出口3の箱体5内に手を入れ、係合片28を指で摘まんで取付板21を筒体8の径方向内側に向けて撓ませる。このように取付板21が撓むことにより係合片28と上壁7との係合が解除される。そして、その状態で空調用チャンバーボックス1を上に持ち上げることによって、吹出口3から外すことができる。このため、この空調用チャンバーボックス1の取付構造4は、空調用チャンバーボックス1の交換、点検などのメンテナンス性が高いものである。
【0025】
吹出口3の形状は、メーカー、型番などにより様々である。しかし、この実施の形態による取付構造4は、取付板21の形状を吹出口3に合わせて変えることにより、どのような吹出口3にも適用することができる。
また、空調用チャンバーボックス1を固定する力、すなわち耐震性を高くするためには、取付板21の厚みを厚く形成してばね力を強くしたり、使用する取付板21の枚数を増やすことにより可能である。
【0026】
この実施の形態による係合片28は、先端が下流側筒体13の外側であって斜め上方を指向するように取付板21の先端部を折り曲げることによって形成されている。このため、係合片28が吹出口3の筒体8に接触して滑ることにより、何ら操作することなく筒体8の内方に入るようになるから、空調用チャンバーボックス1の取付作業をより一層簡単に行うことが可能になる。
【0027】
この実施の形態による取付板21の上端部は、第1の平行部25と、傾斜部26と、第2の平行部27とを有している。空調用チャンバーボックス1の本体11が吹出口3に載せられることにより、傾斜部26と空調用チャンバーボックス1の下流側筒体13との間に吹出口3の筒体8の上端が挟み込まれる。このため、取付板21の上端部が吹出口3の筒体8にばね力で押し付けられることにより、空調用チャンバーボックス1が吹出口3に対して移動する際に抵抗が付与されるようになる。したがって、空調用チャンバーボックス1をより一層強固に吹出口3に取付けることが可能になる。
【0028】
上述した実施の形態による棒状のばね部材(取付板21)は、ばね材料によって帯板状に形成されている。しかし、棒状のばね部材としては、帯板状に形成されたものに限定されることはなく、例えば断面円形の棒体や、断面矩形の棒体などでもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…空調用チャンバーボックス、2…天井、3…吹出口、4…取付構造、7…上壁、8…筒体(第1の筒体)、11…本体、13…下流側筒体(第2の筒体)、21…取付板(ばね部材)、25…第1の平行部、26…傾斜部、27…第2の平行部、28…係合片。