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特開2023-121480出力制御装置および出力情報生成装置、出力制御方法および出力情報生成方法、並びに出力制御プログラムおよび出力情報生成プログラム
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  • 特開-出力制御装置および出力情報生成装置、出力制御方法および出力情報生成方法、並びに出力制御プログラムおよび出力情報生成プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121480
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】出力制御装置および出力情報生成装置、出力制御方法および出力情報生成方法、並びに出力制御プログラムおよび出力情報生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20230824BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024844
(22)【出願日】2022-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月17日に、株式会社LIFULLのウェブサイト(https://lifull.com/news/20819/)にて、発明の概要を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】399127832
【氏名又は名称】株式会社LIFULL
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100173510
【弁理士】
【氏名又は名称】美川 公司
(72)【発明者】
【氏名】上垣 陽和
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 志保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亜依
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】色覚障がい者と色覚正常者の双方において各領域を識別可能に表示して認識させる出力制御装置、出力情報生成装置、出力制御方法及び出力情報生成方法並びに出力制御プログラム及び出力情報生成プログラムを提供する。
【解決手段】情報提供システムSにおいて、表示時に相互に区分して視認されるべき複数の表示領域にそれぞれ対応付けられる表示色を示す表示色情報を取得し、表示領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報を取得し、表示色情報および模様情報に基づいて、各表示領域に対応した表示色および模様を用いた各表示領域の表示を制御する情報提供サーバSVであって、表示色が、色覚障がい者および色覚正常者の双方が各表示領域を相互に識別可能な表示色とされ、模様が、当該模様に対応する表示領域がそれに対応する表示色を用いて表示された場合に、少なくとも色覚障がい者が当該表示領域を他の表示領域から識別可能な模様とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力時に相互に区分して視認されるべき複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色を示す出力色情報の取得と、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報の取得と、
各前記取得された出力色情報および模様情報に基づいた、各前記出力領域に対応した前記出力色および前記模様を用いた当該各出力領域の出力制御と、
を行うシステム制御部を備え、
前記出力色が、色覚に障がいがある色覚障がい者および当該障がいがない色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色であり、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力制御装置。
【請求項2】
各前記出力領域は、表示手段に表示される地図に重ねて且つ当該地図が視認可能に表示される表示領域であり、
前記模様が、単位模様が格子状に直交しつつ複数並んでなる模様であり、
前記模様内の前記単位模様の密度が、各前記表示領域にそれぞれ対応する各前記模様において均一であることを特徴とする請求項1に記載の出力制御装置。
【請求項3】
前記模様の表示における各前記単位模様の表示間隔が、一の当該単位模様の大きさ以上の表示間隔であることを特徴とする請求項2に記載の出力制御装置。
【請求項4】
前記システム制御部は、前記表示されている地図の縮尺が変更されて当該地図が表示される場合でも、一の前記模様における前記単位模様の大きさおよび密度を当該変更の前後で維持しつつ当該模様を表示させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の出力制御装置。
【請求項5】
一または複数の線分のみから一の前記単位模様が構成される場合において、当該各線分の方向が、前記地図における南北方向または東西方向のいずれか一方であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の出力制御装置。
【請求項6】
一の前記単位模様が前記表示手段において三以上連続する画素に相当する長さの線分を含む場合において、当該線分の幅が前記表示手段における一画素に相当する長さであることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記出力色の彩度が、前記色覚正常者のみを対象とした前記表示領域の識別表示時の当該彩度よりも低いことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の出力制御装置。
【請求項8】
各前記出力領域は、当該出力領域に対応する地図の領域ごとの災害の状況を示す災害状況出力領域であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の出力制御装置。
【請求項9】
出力時に色覚に障がいがない色覚正常者により相互に区分して視認される複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色である第1出力色を示す第1出力色情報の取得と、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報の取得と、
前記取得された第1出力色情報に基づいた、前記障がいがある色覚障がい者および前記色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色である第2出力色への前記出力領域ごとの前記第1出力色の変換と、
前記変換された第2出力色を示す第2出力色情報と、前記取得された模様情報と、に基づいた、前記第2出力色および前記模様を用いた各前記出力領域の出力を行うための出力情報の生成と、
を行うシステム制御部を備え、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記第2出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力情報生成装置。
【請求項10】
出力時に相互に区分して視認されるべき複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色を示す出力色情報を取得するステップと、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報を取得するステップと、
各前記取得された出力色情報および模様情報に基づいて、各前記出力領域に対応した前記出力色および前記模様を用いた当該各出力領域の出力を制御するステップと、
を含む出力制御方法であって、
前記出力色が、色覚に障がいがある色覚障がい者および当該障がいがない色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色であり、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力制御方法。
【請求項11】
各前記出力領域は、表示手段に表示される地図に重ねて且つ当該地図が視認可能に表示される表示領域であり、
前記模様が、単位模様が格子状に直交しつつ複数並んでなる模様であり、
前記模様内の前記単位模様の密度が、各前記表示領域にそれぞれ対応する各前記模様において均一であることを特徴とする請求項10に記載の出力制御方法。
【請求項12】
前記模様の表示における各前記単位模様の表示間隔が、一の当該単位模様の大きさ以上の表示間隔であることを特徴とする請求項11に記載の出力制御方法。
【請求項13】
前記表示されている地図の縮尺が変更されて当該地図が表示される場合でも、一の前記模様における前記単位模様の大きさおよび密度を当該変更の前後で維持しつつ当該模様を表示させることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の出力制御方法。
【請求項14】
一または複数の線分のみから一の前記単位模様が構成される場合において、当該各線分の方向が、前記地図における南北方向または東西方向のいずれか一方であることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の出力制御方法。
【請求項15】
一の前記単位模様が前記表示手段において三以上連続する画素に相当する長さの線分を含む場合において、当該線分の幅が前記表示手段における一画素に相当する長さであることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の出力制御方法。
【請求項16】
前記出力色の彩度が、前記色覚正常者のみを対象とした前記表示領域の識別表示時の当該彩度よりも低いことを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の出力制御方法。
【請求項17】
各前記出力領域は、当該出力領域に対応する地図の領域ごとの災害の状況を示す災害状況出力領域であることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか一項に記載の出力制御方法。
【請求項18】
出力時に色覚に障がいがない色覚正常者により相互に区分して視認される複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色である第1出力色を示す第1出力色情報を取得するステップと、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報を取得するステップと、
前記取得された第1出力色情報に基づいて、前記障がいがある色覚障がい者および前記色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色である第2出力色へ前記出力領域ごとに前記第1出力色を変換するステップと、
前記変換された第2出力色を示す第2出力色情報と、前記取得された模様情報と、に基づいて、前記第2出力色および前記模様を用いた各前記出力領域の出力を行うための出力情報を生成するステップと、
を含む出力情報生成方法であって、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記第2出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力情報生成方法。
【請求項19】
出力制御装置に含まれるコンピュータに、
出力時に相互に区分して視認されるべき複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色を示す出力色情報を取得するステップと、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報を取得するステップと、
各前記取得された出力色情報および模様情報に基づいて、各前記出力領域に対応した前記出力色および前記模様を用いた当該各出力領域の出力を制御するステップと、
を実行させる出力制御プログラムであって、
前記出力色が、色覚に障がいがある色覚障がい者および当該障がいがない色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色であり、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力制御プログラム。
【請求項20】
出力情報生成装置に含まれるコンピュータに、
出力時に色覚に障がいがない色覚正常者により相互に区分して視認される複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色である第1出力色を示す第1出力色情報を取得するステップと、
前記出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報を取得するステップと、
前記取得された第1出力色情報に基づいて、前記障がいがある色覚障がい者および前記色覚正常者の双方が前記出力時において各前記出力領域を相互に識別可能な出力色である第2出力色へ前記出力領域ごとに前記第1出力色を変換するステップと、
前記変換された第2出力色を示す第2出力色情報と、前記取得された模様情報と、に基づいて、前記第2出力色および前記模様を用いた各前記出力領域の出力を行うための出力情報を生成するステップと、
を実行させる出力情報生成プログラムであって、
前記模様が、当該模様に対応する前記出力領域が当該出力領域に対応する前記第2出力色を用いて出力された場合に、少なくとも前記色覚障がい者が前記出力時において当該出力領域を他の前記出力領域から識別可能な模様であることを特徴とする出力情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の情報の出力状態を制御する出力制御装置等の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるスマートフォンの普及が顕著であり、それに伴って、当該スマートフォンのディスプレイを用いた表示による情報提供に関する研究・開発が活発に行われている。このとき、当該ディスプレイを用いた表示では、カラー表示が行われることが一般的である。
【0003】
一方、スマートフォンの表示を介した上記情報提供を受けるユーザの中には、色覚に障がいがある色覚障がい者と、そのような障がいがない色覚正常者が存在する。色覚障がい者がカラー表示されている情報を視認するとき、特定の色については、色覚正常者とは異なる色として視認することとなる。このような場合、色覚正常者への情報提供を基準とした配色により作成された通常のカラー表示では、色覚障がい者によって認識される色が色覚正常者とは異なることから、本来提供されるべき情報の内容が誤って伝わる場合が出てくる。そこで、このような誤った情報の伝達を防ぐための従来の技術を開示している文献として、下記特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載されている従来技術では、カラーチャート上の一色の指定、および色覚異常の種類の指定を受け付け、指定種類の色覚障がい者が指定色と区別することが難しい色をそのカラーチャート上において強調して表示する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-10085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を含む従来の技術は、あくまで、色覚障がい者が正確な色を認識し易い構成のカラー表示を行うためのものであった。そして、その結果として表示されるカラー画像は、色覚障がい者にとっては視認性の向上等の利便性があるものの、色覚正常者にとっては返って色の区分が視認しづらい場合があるといった問題点があった。
【0006】
本発明は、領域が区分された表示の際に、色覚障がい者と色覚正常者の双方において各領域を識別可能に出力して認識させることを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面では、先ず、出力時に相互に区分して視認されるべき複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色を示す出力色情報が情報提供サーバのシステム制御部において取得される。次に、出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報がシステム制御部において取得される。次に、それぞれ取得された出力色情報および模様情報に基づいた、各出力領域に対応した出力色および模様を用いた当該各出力領域の出力がシステム制御部により制御される。このとき、出力色が、色覚障がい者および色覚正常者の双方が出力時において各出力領域を相互に識別可能な出力色とされている。また、模様が、当該模様に対応する出力領域が当該出力領域に対応する出力色を用いて出力された場合に、少なくとも色覚障がい者が出力時において当該出力領域を他の出力領域から識別可能な模様とされている。これにより、相互に区分して視認されるべき複数の出力領域の出力の際に、色覚障がい者と色覚正常者の双方において各出力領域を識別可能に出力して認識させることができる。
【0008】
また、本発明において、各出力領域は、表示手段に表示される地図に重ねて且つ当該地図が視認可能に表示される表示領域である。そして、模様が、単位模様が格子状に直交しつつ複数並んでなる模様であり、模様内の単位模様の密度が、各表示領域にそれぞれ対応する各模様において均一とされている。これにより、色覚障がい者であっても、地図の内容を視認しつつ当該地図に重ねて表示される各表示領域の識別性および視認性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明において、模様の表示における各単位模様の表示間隔が、一の当該単位模様の大きさ以上の表示間隔とされている。これにより、色覚障がい者であっても、重ねて表示される地図の視認性を維持しつつ、各表示領域の識別性および視認性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明において、システム制御部は、表示されている地図の縮尺が変更されて当該地図が表示される場合でも、一の模様における単位模様の大きさおよび密度を当該変更の前後で維持しつつ当該模様を表示させる。これにより、地図の縮尺が変更される前後における各表示領域の識別性および視認性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、一または複数の線分のみから一の単位模様が構成される場合において、当該各線分の方向が、地図における南北方向または東西方向のいずれか一方とされている。これにより、色覚障がい者であっても、地図に含まれる文字や記号等の判読性を更に損なわせることなく、表示領域の識別性および視認性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、一の単位模様が表示手段において三以上連続する画素に相当する長さの線分を含む場合において、当該線分の幅が表示手段における一画素に相当する長さとされている。これにより、色覚障がい者であっても、地図に含まれる文字や記号等の判読性を損なわせることなく、表示領域の識別性および視認性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、出力色の彩度が、色覚正常者のみを対象とした表示領域の識別表示時の当該彩度よりも低くされている。これにより、色覚障がい者における表示領域の識別性および認識性を更に向上させることができる。
【0014】
また、本発明において、各出力領域は、当該出力領域に対応する地図の領域ごとの災害の状況を示す災害状況出力領域とされている。これにより、色覚障がい者であっても当該出力領域ごとの災害状況の識別性および視認性を向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の側面では、先ず、出力時に色覚に障がいがない色覚正常者により相互に区分して視認される複数の出力領域にそれぞれ対応付けられる出力色である第1出力色を示す第1出力色情報が、情報提供サーバのシステム制御部において取得される。次に、出力領域にそれぞれ対応付けられる模様を示す模様情報がシステム制御部において取得される。次に、取得された第1出力色情報に基づいて、障がいがある色覚障がい者および色覚正常者の双方が出力時において各出力領域を相互に識別可能な出力色である第2出力色へ、出力領域ごとの第1出力色がシステム制御部により変換される。次に、変換された第2出力色を示す第2出力色情報と、取得された模様情報と、に基づいて、第2出力色および模様を用いた各出力領域の出力を行うための出力情報がシステム制御部により生成される。このとき、模様が、当該模様に対応する出力領域が当該出力領域に対応する第2出力色を用いて出力された場合に、少なくとも色覚障がい者が出力時において当該出力領域を他の出力領域から識別可能な模様とされている。これにより、当該出力情報を用いた各出力領域の出力の際に、色覚障がい者と色覚正常者の双方において各出力領域を識別可能に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】地図データベースおよびハザードマップ作成データベースに接続された情報提供サーバと、複数のユーザ端末と、それらを接続するネットワークと、からなる、本実施形態の情報提供システムの概要構成の一例を示す図である。
図2】(a)は本実施形態のハザードマップ作成データベースに登録されている情報の一例を示す図である。(b)は本実施形態のハザードマップにおける単位模様の一例を示す図である。(c)は本実施形態のハザードマップにおける単位模様の他の一例を示す図である。(d)は本実施形態のハザードマップにおける単位模様の他の一例を示す図である。(e)は本実施形態のハザードマップにおける単位模様の他の一例を示す図である。(f)は本実施形態のハザードマップにおける単位模様の他の一例を示す図である。
図3】本実施形態の災害リスク情報提供ページの一例を示す図である。
図4】本実施形態の災害リスク情報提供処理を示すフローチャートの一例を示す図である。
図5】(a)は比較例の模様の一例を示す図である。(b)は比較例の他の一例を示す図である。(c)は比較例の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1ないし図4を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、地図に対応させた災害リスク情報を地図上の領域ごとに提供する情報提供システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。この場合の災害リスク情報は、災害が発生した場合のリスクのレベル(程度)を例えば地方自治体が地図上の領域ごとに且つ段階的に予測した情報が、当該リスクのレベルが当て嵌まる地域または領域を示す地図と共にユーザに提供されるものである。なお、以下の説明において、上記災害が発生した場合のリスクを単に「災害リスク」と称し、当該災害リスクのレベルを単に「リスクレベル」と称し、上記地図上の地域または領域を纏めて「地域」と称する。また、上記災害とは、例えば、「浸水」、「土砂災害」、「液状化現象」および「地震」等の災害をいう。本実施形態の災害リスク情報提供処理では、当該災害の種類ごとのリスクレベルを示す情報が、その災害リスクが当て嵌まる地域を含む地図と共にユーザに提供される。なお、本実施形態の災害リスク情報提供処理では、災害の種類が地震である場合のリスクレベルは「最大震度」とされる。なお、本発明は、リスクレベルの表示に限らず、表示領域の意味を表示色と模様で表現する場合に広く利用することができ、表示対象もディプレイ等の表示手段に限らず、紙媒体等への印刷手段によっても実現することができる。
【0018】
各ユーザ端末UT1ないしユーザ端末UTn(nは自然数)を使用する各ユーザに対して上記災害リスク情報をそれぞれ提供するため、図1に示される地図データベースDB1には、当該災害リスク情報の提供を受けるユーザ端末UT1ないしユーザ端末UTnのいずれかの図示しないディスプレイ上に地図を表示させるための地図データが、例えば当該地図上の位置を示す位置情報に関連付けて格納されている。このときの位置情報とは、例えば緯度および経度により地図上の位置を示す位置情報である。なお、地図データ自体の構造等は、従来の地図提供サービスで用いられている電子的な地図データの構造と同一である。また、以下の説明において、ユーザ端末UT1ないしユーザ端末UTnに共通の事項を説明する場合、これらを纏めて「ユーザ端末UT」と称する。
【0019】
一方、各ユーザ端末UTを使用する各ユーザに対して上記災害リスク情報を提供するため、図2(a)に例示されるハザードマップ作成データベースDB2には、例えば戸建て物件等の物件情報が掲載される物件情報掲載ページにおいて特定された物件が存在する地域に当て嵌められる災害リスクのリスクレベルを示す上記災害リスク情報である災害リスクマップ(いわゆるハザードマップ)を作成するための種々のデータが予め格納されている。このとき、当該種々のデータは、上記災害リスクのリスクレベルが当て嵌められる地域に関連付けて格納されている。本実施形態の災害リスク情報提供処理では、上記特定された物件の位置を含む地域に当て嵌められる災害リスクのリスクレベルを示すハザードマップが、ユーザ端末UTの上記ディスプレイ上に表示される。このハザードマップの表示は、上記物件が負うと予測される災害リスクに関する情報の各ユーザのユーザ端末UTからの取得要求に応じて、当該取得要求を送信したユーザ端末UTのディスプレイを用いて行われる。本実施形態のハザードマップは、それが当て嵌められる地域を含む地図の判読が可能となるように、当該地図に重ねられて上記ディスプレイ上に表示される。
【0020】
ここで、本実施形態のハザードマップは、災害の種類ごとに、その災害の災害リスクが当て嵌まる地図上の範囲が、リスクレベルを示す表示色と、リスクレベルを示し、且つ規則性のあるまたは連続した模様(柄)と、を用いて、当該範囲の地図に重畳されて表示される。本実施形態のリスクレベルを示す上記表示色および上記模様は、ユーザに含まれる色覚正常者と色覚障がい者の双方が、当該リスクレベルが当て嵌まる地域を当該リスクレベルごとに他の地域から識別しつつ視認することが可能となるように工夫されている。この場合の色覚障がいには、P(Protanope)型(1型2色覚)色覚障がいと、D(Deuteranope)型(2型2色覚)色覚障がいと、T(Trianope)型(3型2色覚)色覚障がいの三つが含まれている。P型色覚障がいは、赤色を感じるL錐体が正常に機能しないことにより発生する。D型色覚障がいは、緑色を感じるM錐体が正常に機能しないことにより発生する。T型色覚障がいは、青色を感じるS錐体が正常に機能しないことにより発生する。
【0021】
より具体的に、先ず、本実施形態のリスクレベルを示す表示色について説明する。今、ある種類の災害の災害リスクのリスクレベルが、例えば「リスクレベル0」から「リスクレベル5」の六段階に予め分類されているとする。このとき、「リスクレベル0」はその種類の災害がほぼ予測されない状態を意味している。これに対して、「リスクレベル1」から「リスクレベル5」は、その数字が大きくなるに従ってリスクレベルが上がっている(災害リスクが深刻となる)ことを意味している。ここで、従来では、色覚正常者が通常視認し得る色により、「リスクレベル0」には透明(白色)が、「リスクレベル1」には青色が、「リスクレベル2」には緑色が、「リスクレベル3」には黄色が、「リスクレベル4」にはオレンジ色が、「リスクレベル5」には赤色が、それぞれ対応付けられていた。このような表示色のリスクレベルへの対応付けは、色覚正常者は、一般に、リスクレベルが低い場合は青色寄りの色に対応付けてそれを想起し、リスクレベルが高くなるに従って赤色寄りの色に対応付けてそれを想起することに起因している。本実施形態のリスクレベルを示す表示色では、上記色覚正常者におけるリスクレベルと表示色との上記従来の関係を踏まえつつ、色覚正常者と色覚障がい者の双方がそれらの表示色を相互に異なる色として視認することができるように、「リスクレベル1」に対応付けられていた青色がシアン寄りの青色に変更されている。一方、「リスクレベル2」ないし「リスクレベル5」に対しては、それぞれ、上記従来と同様の緑色ないし赤色が対応付けられている。ここで、それぞれのリスクレベルに対応付けられる各表示色をRGB値およびHTML(HyperText Markup Language)カラーコードで表した一例としては、以下の通りとなる。
(a)「リスクレベル1」に対応付けられた表示色
RGB値:95,199,222
HTMLカラーコード:#5FC7DE
(b)「リスクレベル2」に対応付けられた表示色
RGB値:51,177,120
HTMLカラーコード:#33B178
(c)「リスクレベル3」に対応付けられた表示色
RGB値:255,188,51
HTMLカラーコード:#FFBC33
(d)「リスクレベル4」に対応付けられた表示色
RGB値:237,97,3
HTMLカラーコード:#ED6103
(e)「リスクレベル5」に対応付けられた表示色
RGB値:209,53,42
HTMLカラーコード:#D1352A
なお、上記RGB値およびHTMLカラーコードは一例であるが、これらのRGB値等は、ユーザ端末UTにおける画像処理機能に基づき、色覚障がい者および色覚正常者の双方において識別可能に適宜設定することが好ましい。
【0022】
更に、リスクレベルごとの表示色の彩度に差を付けることで、識別度および認識度を向上させることができる。この場合の当該彩度の差は、例えば、本実施形態の彩度(すなわち、色覚正常者および色覚障がい者の双方を対象とした彩度)を色覚正常者のみを対象とした彩度よりも低くすることにより当該差を出すのが好ましい。本発明の発明者らの検討により、このような本実施形態のリスクレベルに対する表示色の対応付けであれば、色覚正常者における従来の表示色によるリスクレベルの段階的な想起と、色覚障がい者によるリスクレベルごとの表示色を識別した視認(特に、リスクレベルが異なる地域が隣接している場合の表示色による地域ごとのリスクレベルの識別視認)と、が両立可能であることが判っている。なお、表示色が異なっても彩度が同じである場合、色覚正常者および色覚障がい者の双方におけるリスクレベルの識別度(認識度)が低下または識別不能となる可能性がある。この場合、表示色ごとに彩度に差をつけることで、上記識別度(認識度)を向上させるように構成している。
【0023】
次に、本実施形態のリスクレベルを示す模様について説明する。本実施形態の災害情報提供処理では、各ユーザ端末UTのディスプレイ上において、リスクレベルが異なる複数の地域を含む地図の表示に重ねて、当該リスクレベルごとに異なる態様の模様が、当該地図の内容を視認可能に表示される。このとき、各リスクレベルの地域は、当該リスクレベルに対応付けられている上記表示色で表示されると共に、当該リスクレベルに対応付けられる態様の模様も合せて表示される。より具体的に、上記リスクレベルが上述した「リスクレベル0」から「リスクレベル5」の六段階に予め分類されているとする。本実施形態のリスクレベルを示す模様は「リスクレベル0」には対応付けられておらず、よって「リスクレベル0」の地域について、模様は表示されない。これに対し、「リスクレベル1」ないし「リスクレベル5」に対しては、図2(b)ないし図2(f)にそれぞれ示す単位模様UP1ないし単位模様UP5のいずれか一つが、一定の間隔を空けて格子状に直交しつつ並べられた模様が対応付けられている。本発明の発明者らの検討により、このような本実施形態のリスクレベルに対する模様の対応付けであれば、色覚障がい者によるリスクレベルごとの地域を識別した視認(リスクレベルが異なる地域が隣接している場合の当該地域ごとのリスクレベルの識別視認)が可能であることが判っている。
【0024】
次に、単位模様UP1ないし単位模様UP5について、具体的にその形状等を説明する。先ず、単位模様UP1は、図2(b)に示すように、一辺がユーザ端末UTのディスプレイにおける連続した画素二つ分に相当する長さの正方形とされている。次に、単位模様UP2は、図2(c)に示すように、上記ディスプレイ上の表示における縦方向の線分であって、幅が当該ディスプレイにおける一画素に相当する長さであり、長さが当該ディスプレイにおける連続した画素七つ分に相当する長さの線分とされている。次に、単位模様UP3は、図2(d)に示すように、上記ディスプレイ上の表示における横方向の線分であって、幅が当該ディスプレイにおける一画素に相当する長さであり、長さが当該ディスプレイにおける連続した画素七つ分に相当する長さの線分とされている。次に、単位模様UP4は、図2(e)に示すように、上記ディスプレイ上の表示における横方向の線分および縦方向の線分がそれぞれの中心で十字に交差してなり、それぞれの線分の幅が当該ディスプレイにおける一画素に相当する長さであり、それぞれの線分の長さが当該ディスプレイにおける連続した画素六つ分に相当する長さとされている。次に、単位模様UP5は、図2(f)に示すように、直径が上記ディスプレイにおける連続した画素二つ分に相当する長さの円形とされている。なお、本発明の発明者らの検討によれば、一の単位模様の大きさおよびその表示密度以外に、単位模様の構成として斜め線を用いると、色覚正常者および色覚障がい者の双方において視認による識別性が低下することが判っている。このような場合においては、斜め線自体の角度に対応した識別性(視認性)の変化等を考慮し、識別性(視認性)の優劣に応じて単位模様の形状や表示密度を適宜設定するように構成することが好ましい。
【0025】
これらにより、図2(a)に示すハザードマップ作成データベースDB2には、リスクレベルごとに、そのリスクレベルが当て嵌められる地域の位置および範囲を示す位置情報(緯度情報および経度情報により示される位置情報)と、そのリスクレベルに当て嵌められる表示色を示す表示色情報と、そのリスクレベルに当て嵌められる模様を示す模様情報と、が予め格納されている。ハザードマップ作成データベースDB2は、全ての種類の災害のハザードマップに当て嵌められる。また、図2(a)に示す模様情報としては、上記単位模様UP1ないし上記単位模様UP5のいずれかを示す情報と、当該いずれかの単位模様を用いてユーザ端末UTのディスプレイ上に模様が表示される場合の単位模様同士の間隔および密度を示す情報と、が含まれている。このとき、当該間隔は、対応する一の単位模様の大きさ以上の間隔とされている。また、上記単位模様UP1ないし上記単位模様UP5それぞれの大きさ(図2(b)ないし図2(f)参照)およびその表示密度は、上記ディスプレイ上で表示される地図の縮尺が変更されて表示される場合でも、当該変更の前後で維持される。更に、当該表示密度は、例えば上記ディスプレイにおける256画素×256画素の領域(いわゆるタイル)内において、1024個、512個または256個のいずれかが、上記単位模様UP1ないし上記単位模様UP5それぞれの大きさに対応させて予め選択されている。当該表示密度は、一の模様内では均一とされている。
【0026】
ここで、図3に示すように、本実施形態の物件情報掲載ページにおける災害リスク情報提供ページPには、各ユーザからの上記取得要求に応じて、特定された物件OBの位置を含む地図MPに重ねて且つ当該地図MPの内容(地名の文字等)が視認可能に、当該地図MPに含まれる地域に当て嵌められる災害リスクのリスクレベルを示すハザードマップHZが、当該取得要求が送信されたユーザ端末UTのディスプレイ上に情報提供サーバSVにより表示される。この災害リスク情報提供ページPでは、上記ハザードマップ作成データベースDB2を参照することで、その災害におけるリスクレベルがそれぞれ当て嵌められる各地域の位置に、当該リスクレベルが当て嵌められる災害リスクマップA1ないし災害リスクマップA5が、単位模様UP1ないし単位模様UP5を用いて表示される。災害リスクマップA1ないし災害リスクマップA5としては、上記ハザードマップ作成データベースDB2の模様情報により示される一定の大きさ、間隔および密度で、対応する単位模様UP1ないし単位模様UP5のいずれかが、格子状に直交しつつ並べられて表示される。例えば図3に示すように、災害リスクマップA1としては、単位模様UP3が格子状に直行しつつ並べられて表示される。また、災害リスクマップA2としては、単位模様UP4が格子状に直行しつつ並べられて表示される。また、災害リスクマップA3としては、単位模様UP4が災害リスクマップA2とは異なる密度で格子状に直行しつつ並べられて表示される。また、災害リスクマップA4としては、単位模様UP4が災害リスクマップA2および災害リスクマップA3とは異なる密度で格子状に直行しつつ並べられて表示される。また、災害リスクマップA5としては、単位模様UP2が格子状に直行しつつ並べられて表示される。
【0027】
更に、災害リスク情報提供ページPには、ハザードマップHZに加えて、当該ハザードマップHZを構成する災害リスクマップA1ないし災害リスクマップA5それぞれの意味を理解するための凡例Lが、情報提供サーバSVにより表示される。凡例Lとしては、災害の種類を示す種類情報Cと、災害リスクマップA1ないし災害リスクマップA5として表示される模様の態様とリスクレベルとの関係を示す関係情報LLと、物件OBの位置に当て嵌められるリスクレベルとの関係を示す説明情報LTと、が表示される。このとき、関係情報LLにおける、物件OBの位置に当て嵌められるリスクレベルを示す模様(図3に示す場合は、災害リスクマップA2として表示される単位模様UP4からなる模様)の部分には、図3に示すような物件OBを示すマークまたは記号が併せて表示されるのが好ましい。
【0028】
図4のフローチャートを参照して、本発明の動作を説明する。情報提供サーバSVのシステム制御部は、特定の物件が負うと予測される災害リスクに関する情報の取得要求であって当該特定物件の位置を示す位置情報を含む取得要求が、いずれかのユーザ端末UTからネットワークNWを介して送信されてきたか否かを監視する(ステップS1)。ステップS1の監視において、取得要求が送信されてこない場合(ステップS1:NO)、システム制御部は当該監視を継続する。ステップS1の監視において取得要求が送信されてきた場合(ステップS1:YES)、システム制御部は次に、取得要求により示されている特定物件の位置を含む地図の地図データを地図データベースDB1から取得する(ステップS2)。次に、システム制御部は、ステップS2で取得された地図データに対応する地図に含まれている地域をハザードマップ作成データベースDB2において検索し、災害リスクマップに対応する災害リスク地域の位置および範囲を示す災害リスク地域情報と、各災害リスク地域におけるリスクレベルを示すリスクレベルデータを取得する(ステップS3)。次に、システム制御部は、ステップS3で取得された災害リスク地域情報およびリスクレベルデータに基づき、ハザードマップ作成データベースDB2を参照して、複数の災害リスクマップA1ないし災害リスクマップA5を含むハザードマップHZを表示するための表示色データおよび模様データをそれぞれ生成する(ステップS4)。このとき、表示色データおよび模様データは、例えばCSS(Cascading Style Sheets)を用いて記述される。次に、システム制御部は、ステップS4で生成された表示色データおよび模様データに基づき、取得要求を送信してきたユーザ端末UTのディスプレイ上にハザードマップHZを表示するため、ユーザ端末UTに向けてハザードマップ表示データを送信する(ステップS5)。このハザードマップ表示データは、災害の種類ごとに、上記ハザードマップHZを表示するためのハザードマップ表示データである。次に、システム制御部は、上記ハザードマップ表示データを送信したユーザ端末UTにおいて、表示中の地図MPの縮尺を変更する操作または地図MPとしての表示範囲を移動する(スクロールする)操作のいずれかが実行されたか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定において、上記縮尺を変更する操作または上記表示範囲を移動する操作のいずれかが実行された場合(ステップS6:YES)、システム制御部は、上記ステップS2に戻り、縮尺変更後または表示範囲移動後の新たな地図について、上述してきたステップS2ないしステップS6を繰り返す。このとき、ステップS5において送信されたハザードマップ表示データを取得したユーザ端末UTのディスプレイ上では、地図MPの縮尺の変更操作または表示範囲の移動操作が実行された場合でも、災害リスクマップA1等の表示における単位模様UP3等の大きさおよび密度が維持される。
【0029】
ステップS6の判定において、上記縮尺変更の操作および上記表示範囲移動の操作のいずれもが実行されない場合(ステップS6:NO)、次に、システム制御部は、所定の理由により本実施形態の災害リスク情報提供処理を終了する旨の操作が実行される等の理由により、本実施形態の災害リスク情報提供処理を終了するか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7の判定において、本実施形態の災害リスク情報提供処理を終了しない場合(ステップS7:NO)、システム制御部は、ステップS1に戻って上記取得要求の取得の監視を継続する。一方、ステップS7の判定において、本実施形態の災害リスク情報提供処理を終了する場合(ステップS7:YES)、システム制御部は、そのまま当該災害リスク情報提供処理を終了する。
【0030】
以上の本実施形態の災害リスク情報提供処理によれば、相互に区分して視認されるべき複数の災害リスクマップA1等の表示の際に、色覚障がい者と色覚正常者の双方において各災害リスクマップA1等を識別可能に表示して認識させることができる。また、色覚障がい者であっても、地図MPの内容を視認しつつ当該地図MPに重ねて表示される各災害リスクマップA1等を確実に識別して認識することができる。更に、色覚障がい者であっても、重ねて表示される地図MPの視認性を維持しつつ、各災害リスクマップA1等を確実に識別して認識することができる。また、地図MPの縮尺が変更される前後における各災害リスクマップA1等の識別性および認識性を維持することができる。更に、色覚障がい者であっても、地図MPに含まれる文字や記号等の判読性を損なわせることなく、災害リスクマップA1等を確実に識別させて認識させることができる。また、災害リスクマップA1等の表示色の彩度が、色覚正常者のみを対象としたハザードマップの識別表示時の当該彩度よりも低いので、色覚障がい者における災害リスクマップA1等の識別性および認識性を更に向上させることができる。
【0031】
なお、本実施形態におけるユーザ端末UTとしては、上記スマートフォンの他、ディスプレイを備える例えばパーソナルコンピュータやタブレット型携帯端末等を用いることができる。また、紙媒体の印刷物として印刷されたハザードマップとしての災害リスクマップA1等において、その印刷色および模様として本実施形態の表示色および模様を用いることも可能である。
【0032】
更に、ハザードマップにおける災害リスクマップA1等の識別以外に、表示色および模様による領域分けの識別として、例えば、人口密度の違いによる領域分けの識別、ある駅の利用者の分布の領域分けの識別、および植生が多い領域と少ない領域の領域分けの識別等において、当該領域分けの表示等に本実施形態の表示色および模様を適用することもできる。
【0033】
更にまた、本実施形態において、図4に示すフローチャートに相当するプログラムを、光ディスクまたはハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いは、インターネット等のネットワークから取得して記録しておき、これらを汎用のマイクロコンピュータで読み出して実行することにより、その処理中にネットワークにアクセスすることなく、当該マイクロコンピュータを本実施形態のシステム制御部として機能させることも可能である。
【比較例】
【0034】
次に、本実施形態のリスクレベルを示す表示色および模様を決定するに当たって、本願発明の発明者らによって比較例として考慮された事項を説明する。
【0035】
(I)災害リスクマップ間のグラデーションについて
色覚正常者の視認状態に基づき、「青色は安全を表し、赤色は危険を表している」との基本概念の下、先ず、近年の災害情報で使われ始めているリスクレベル別の色に合わせることを検討したところ、リスクレベルの段階分けが本実施形態の災害リスク情報提供処理に合わず、また色分けの基準が異なることによる災害リスクのリスクレベルの誤認の可能性が危惧された。次に、同系色で、色がグラデーションとしてリスクレベルが高くなるに従って徐々に黒っぽくなるものも検討されたが、地図に重ねて表示する場合には透過した色を重ねることとなるため、凡例のどの色が地図に重ねられているのか判断がつかないことが判った。更に、光の屈折率に合わせた態様(紫色が最もリスクレベルが高いことを示す態様)も検討されたが、その場合の各表示色には、元々「危険」や「安全」といったイメージがあまり無いものなので、凡例と合せた認識が必要となることが判った。以上の検討に基づき、色覚正常者と色覚正常者の双方がリスクレベルを識別可能とするためには、表示色のみによる識別を期待することは無理があり、本実施形態の模様を合せて表示することが必要であるとの結論に至った。
【0036】
(II)リスクレベルを示す表示色について
上記基本概念を踏襲しつつ、いずれの型の色覚障がい者であっても、リスクレベルを示す表示色のそれぞれが視認による識別が可能となることを目指して、表示色を検討した。
【0037】
(a)従来の色覚正常者による表示色の視認による識別においても、黄緑色と黄色の差が見分けられない場合があり、同じ程度の色の差異の場合には視認による識別ができなくなる場合があることが判った。このため、先ず、従来の各リスクレベルを示す表示色それぞれよりも濃い表示色を検討したが、色覚正常者では青色と緑色の色相が似通ってしまうこととなり、D型色覚障がい者では緑色と赤色の部分が似た色に見えることとなり、P型色覚障がい者では緑色とオレンジ色の部分が似た色に見えることなり、T型色覚障がい者では青色と緑色がほぼ同じに見えることが判った。
【0038】
(b)上記(II)(a)の検討結果を踏まえて、緑色の色相を黄色に寄せたものに変更したところ、D型色覚障がい者では緑色とオレンジ色が同じような色に見えてしまうと共に、緑色と黄色、黄色とオレンジ色の差が少ないことが判った。また、P型色覚障がい者では、緑色と黄色がほぼ同じの色に見えてしまうことが判った。
【0039】
(c)上記(II)(a)および上記(II)(b)の検討結果を踏まえると、隣接する表示色同士の差が見え難かったので、最も高いリスクレベルを紫色とし、オレンジ色を使用しないこととすると共に、黄色と近くなる黄緑色を元の緑色に戻し、代わりに青色をシアンに寄せた表示色とした。この結果、当初の「青色が安全で赤色が危険」というイメージから離れてしまうことが判った。また、D型色覚障がい者において、緑色と赤色の差が少なくなることも判った。
【0040】
(d)上記(II)(a)ないし上記(II)(c)の検討結果を踏まえて、リスクレベルの段階的なイメージに近い色のままで、オレンジ色と近くなってしまう緑色を黄色味を抜いた表示色に変更すると共に、なるべく表示色の濃さのバランスを取るべく、青色を最初に選定したものに戻した。この結果、T型色覚障がい者において青色と緑色の差が少なくなってしまうことが判った。
【0041】
(e)上記(II)(a)ないし上記(II)(d)の検討結果を踏まえて、本実施形態のリスクレベルを示す表示色のように、色覚正常者向けの青色をシアン寄りのものに変更すると共に、その他の表示色(緑色ないし赤色)を色覚正常者向けのものと同じ表示色としたところ、色覚障がい者および色覚正常者の双方において、一定の差をもってそれぞれのリスクレベルの表示色の視認による識別が可能となると共に、本実施形態のリスクレベルを示す模様を重ねることで、当初の目的が達成できる可能性を見出せた。
【0042】
(III)リスクレベルを示す模様について
上記(I)および上記(II)の検討結果を踏まえて、どのような模様が本実施形態のリスクレベルを示す模様として適切かを検討した。このとき、重ねて表示される地図における文字の表示に影響を与えないようにすること、および模様の態様を今後増やす場合にも対応できるようになるべくシンプルな模様とすること、の二点に主眼を置いて検討した。
【0043】
すなわち、上記(II)の検討結果としての表示色に重ねることを目的として、図5(a)ないし図5(c)に例示する模様の採用を検討した。その結果、図5(a)に例示する大きめの線分と点の模様や、図5(b)に例示する細い線分の模様を、大きさの調整を行いつつ用いることとした。なお、図5(c)に例示する細かい粒状の模様は、細かすぎてリスクレベルの差が判り難い場合があり、また複雑な模様の場合は、汎用性が低下することが判った。このとき、点状の模様につき、その大きさの調整を行えば、十字の模様等は採用できる可能性があることが判った。
【0044】
(IV)リスクレベルを示す表示色と模様との組合せについて
上記基本概念を踏襲しつつ、上記(III)までの検討結果を踏まえ、上記(III)で検討したリスクレベルを示す表示色と模様との組合せを検討した。
【0045】
(a)表示色が青色である場合、P型およびD型それぞれの色覚障がい者では、模様の背景となる表示色が殆ど透明に見えてしまうため、単位模様の面積が大きいか、または単位模様が複雑なものがよいことが判った。このとき、単位模様自体の色を紫色に寄せることで、地図に含まれる文字等とも被らなくなることが判った。
【0046】
(b)表示色が緑色または黄色である場合、P型およびD型それぞれの色覚障がい者では、黄色とオレンジ色とが殆ど同じ表示色となるため、単位模様の形状が大きく異なるものが望ましいことが判った。
【0047】
(c)表示色がオレンジ色である場合、P型およびD型それぞれの色覚障がい者では、緑色と黄色とが殆ど同じ表示色となるため、単位模様自体が大きく異なるものがよく、更に表示色が濃くなって模様が目立つため、単位模様としては簡素なものがよいことが判った。
【0048】
(d)表示色が赤色の場合、それ自体が濃くなって模様が目立つため、単位模様としては簡素なものがよいことが判った。
【0049】
以上の(IV)(a)ないし(IV)(d)の検討結果に基づき、全ての色覚障がい者における見え方を照らし合わせ、表示色と模様の相性が良さそうな組合せを基礎として検証を進めることとした。
【0050】
(V)リスクレベルを示す模様自体の色について
上記リスクレベルを示す各表示色に合わせることを前提として、地図内の文字等の表示に影響を与えない模様自体の色を検討した。
【0051】
具体的には、
(a)模様自体の色における白の透明度を調整したもの、
(b)模様自体の色における黒の透明度を調整したもの、
(c)背景となる表示色の彩度を落としたもの、および
(d)背景となる表示色と同じ色で透明度を調整したもの、
の四つにつき、色覚正常者における見え方を検討した。その結果、上記(V)(a)の場合は、明度が高い青色および黄色の場合に、模様が殆ど視認できなくなることが判った。また上記(V)(d)の場合は明度の高い青色、緑色および黄色の場合に、模様が殆ど視認できなくなることが判った。
【0052】
そこで、上記(V)(b)と上記(V)(c)について、各型の色覚障がい者における見え方を検討した。その結果、上記(V)(b)の場合は、それぞれの単位模様は判断し易いが、地図内の文字等が潰れてしまう可能性があることが判った。これに対し、上記(V)(c)の場合は、青色としての調整が必要ではあるものの、地図内の表示等の視認性を低下させずにそれぞれの模様の視認が可能であることが判った。
【0053】
(VI)リスクレベルを示す模様自体の形状(種類)等について
上記リスクレベルを示す各表示色に合わせることを前提として、単位模様自体の形状等を検討した。
【0054】
具体的には、
(a)背景となる表示色は用いずに細かな単位模様をメッシュ状に並べたもの、
(b)背景となる表示色を用いて単位模様の透過度を下げたもの、
(c)背景となる表示色を用いて単位模様の透過度を上げつつその大きさを大きくしたもの、および、
(d)背景となる表示色は用いずに単位模様の大きさを大きくしたもの、
の四つにつき、色覚正常者おける見え方を検討した。その結果、上記(VI)(b)の場合は単位模様の視認自体が難しくなることが判った。また、上記(VI)(c)の場合は上記(VI)(b)との間に差異がなく単位模様の視認が難しくなることが判った、また、上記(VI)(d)の場合はリスクレベルごとの災害リスクマップが判り難くなると共に地図の内容も認識し難くなることが判った。
【0055】
そこで、上記(VI)(a)の検討を踏まえた方向で単位模様の他の形状等を検討した。すなわち、
(e)単位模様の大きさによってリスクレベルごとの差を出したもの、
(f)背景となる表示色は用いずに点形状の様々な単位模様を用いてリスクレベル間の差を出したもの、
(g)背景となる表示色を用いて点形状の様々な単位模様を用いてリスクレベル間の差を出したもの(このとき、単位模様が視認し易いようにその大きさを大きくする)、および、
(h)背景となる表示色は用いずに点形状の様々な単位模様を用い、更にリスクレベルの境界に枠線を書くことでリスクレベルの区分けを明確としたもの、
の四つにつき、色覚正常者における見え方を検討した。その結果、上記(VI)(e)の場合は単位模様の密度が不統一となるため地図が判読し難くなり、上記(VI)(f)の場合は単位模様が細かすぎて判読が難しくなることが判った。また、上記(VI)(h)の場合は、書き込んだ枠線により地図の内容が判読し難くなることが判った。これらに対し、上記(VI)(g)の場合は、単位模様によりリスクレベルの差が視認でき、単位模様の密度を合わせることで地図も読み易くなることが判った。そして、上記(VI)(g)の場合に加えて、地図自体の文字等に干渉しないような濃さの単位模様とすると共に、全ての単位模様の密度をなるべく均一とすることで、地図を違和感なく視認できるようになることが判った。
【0056】
以上の(I)から(VI)の検討を経て、本実施形態のリスクレベルを示す表示色および模様が、上述した本実施形態のように決定されたのである。
【符号の説明】
【0057】
C 種類情報
L 凡例
P 災害リスク情報提供ページ
S 情報提供システム
A1、A2、A3、A4、A5 災害リスクマップ
DB1 地図データベース
DB2 ハザードマップ作成データベース
HZ ハザードマップ
LL 関係情報
LT 説明情報
MP 地図
NW ネットワーク
OB 物件
SV 情報提供サーバ
UT1、UT2、UTn ユーザ端末
UP1、UP2、UP3、UP4、UP5 単位模様
図1
図2
図3
図4
図5