(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121484
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】建具装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
E06B7/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024850
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】重村 正和
(72)【発明者】
【氏名】長峰 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒平
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井部 弘美
(72)【発明者】
【氏名】慶野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小峰 正子
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】野末 嵩博
(57)【要約】
【課題】 閉鎖状態の開閉体の一方側に人が存在することをその反対側に報知する。
【解決手段】 建具装置1であって、開放動作する開閉体20と、閉鎖状態の開閉体20の一方側の人を感知する第一感知部31と、同開閉体20の他方側の人を感知する第二感知部41と、音声発生部42とを備え、第一感知部31と第二感知部41の両方の感知信号がある場合に、音声発生部42から音声を発する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体の一方側の人を感知する第一感知部と、同開閉体の他方側の人を感知する第二感知部と、音声発生部とを備え、
前記第一感知部と前記第二感知部の両方の感知信号がある場合に、前記音声発生部から音声を発するようにしたことを特徴とする建具装置。
【請求項2】
前記一方側の音を収集する集音マイクを備え、
前記集音マイクによって収集した音声を、前記他方側で前記音声発生部から発するようにしたことを特徴とする請求項1記載の建具装置。
【請求項3】
前記集音マイクによって集音した音の特徴量より、閉鎖状態の前記開閉体の一方側に人が接近しているか否かを判断し、接近していると判断した場合に、前記音声発生部から音声を発するようにしたことを特徴とする請求項2記載の建具装置。
【請求項4】
前記一方側の人が前記開閉体に接近するのにしたがって、前記音声発生部が発生する音声を増幅するようにしたことを特徴とする請求項3記載の建具装置。
【請求項5】
前記一方側の人が前記開閉体に接近するのにしたがって、前記音声発生部が発生する音声の音色を変化させるようにしたことを特徴とする請求項3又は4記載の建具装置。
【請求項6】
前記音声の変化の割合を調整可能にしたことを特徴とする請求項4又は5記載の建具装置。
【請求項7】
前記音声発生部が発する音声に、足音を含むようにしたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の建具装置。
【請求項8】
前記音声発生部は、前記開閉体の開放方向側へスポット的に音声を発する指向性スピーカを備えることを特徴とすることを特徴とする請求項1~7何れか1項載の建具装置。
【請求項9】
前記音声発生部は、前記開閉体の開放方向側へステレオ音声を発するステレオスピーカを備えることを特徴とすることを特徴とする請求項1~8何れか1項記載の建具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体を移動させ開口部を開放する建具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建具装置には、例えば特許文献1に記載されるように、開口部を開放するように回動する扉体(開閉体)と、この扉体の左右端部及び上端部をコ字状に囲む枠体と、開閉操作のために手が掛けられる手掛け部(ドアノブ等)を具備したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、扉体の開放方向側に人が居る状態で、前記開放方向側に対する反対側から他の人が扉体に接近し該扉体を開放動作した場合、開放方向側の人が前記開放動作に気が付かずに立ち去らないでいると、扉体が開放方向側の人に衝突してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
開放動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体の一方側の人を感知する第一感知部と、同開閉体の他方側の人を感知する第二感知部と、音声発生部とを備え、前記第一感知部と前記第二感知部の両方の感知信号がある場合に、前記音声発生部から音声を発するようにしたことを特徴とする建具装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、閉鎖状態の開閉体の一方側に人が存在することを、その反対側に効果的に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る建具装置の一例を示す正面図である。
【
図2】同建具装置を側方から視て示す模式図である。
【
図3】同建具装置の制御例を示すフローチャートである。
【
図4】開閉体に対する人の接近状態(接近距離)と、音声発生部の音量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、開放動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体の一方側の人を感知する第一感知部と、同開閉体の他方側の人を感知する第二感知部と、音声発生部とを備え、前記第一感知部と前記第二感知部の両方の感知信号がある場合に、前記音声発生部から音声を発するようにした(
図1~
図3参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記一方側の音を収集する集音マイクを備え、前記集音マイクによって収集した音声を、前記他方側で前記音声発生部から発するようにした(
図1~
図3参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記集音マイクによって集音した音の特徴量より、閉鎖状態の前記開閉体の一方側に人が接近しているか否かを判断し、接近していると判断した場合に、前記音声発生部から音声を発するようにした(
図3参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記一方側の人が前記開閉体に接近するのにしたがって、前記音声発生部が発生する音声を増幅するようにした(
図3参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記一方側の人が前記開閉体に接近するのにしたがって、前記音声発生部が発生する音声の音色を変化させるようにした。
【0013】
第六の特徴として、前記音声の変化の割合を調整可能にした(
図3参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記音声発生部が発する音声に、足音を含むようにした。
【0015】
第八の特徴として、前記音声発生部は、前記開閉体の開放方向側へスポット的に音声を発する指向性スピーカを備える。
【0016】
第九の特徴として、前記音声発生部は、前記開閉体の開放方向側へステレオ音声を発するステレオスピーカを備える。
【0017】
なお、後述する実施態様では、以下の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
すなわち、この発明の一つは、建具装置であって、開放動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体の一方側の音声を収集する集音マイクと、前記集音マイクにより集音した音声を、前記開閉体の前記一方側に対する反対側へ発する音声発生部とを具備した(
図2参照)。
この構成によれば、開閉体の一方側の集音マイクで収集した音声を、同開閉体の他方側へ発することができる。
【0018】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1及び
図2は、本発明に係る建具装置の一例を示す。
建具装置1は、内側に開口部を有する枠体10と、枠体10内で回動して前記開口部を開放したり閉鎖したりする開閉体20と、閉鎖状態の開閉体20の一方側(図示例によれば、屋外側)に設けられた第一ユニット30と、同開閉体20の他方側(図示例によれば、屋内側)に設けられた第二ユニット40と、制御部50とを備え、前記一方側を開放側とした扉装置(開き戸)を構成している。
【0020】
枠体10は、閉鎖状態の開閉体20の戸尻部に対向する戸尻側枠部材11と、開閉体20の戸先部に対向する戸先側枠部材12と、開閉体20の上端部に対向する上側枠部材13とを具備して、中央側の開口部を囲む正面視逆凹字状に構成される。
この枠体10は、当該建具装置1の設置対象である建築物等の躯体壁面の開口に固定される。
【0021】
枠体10の下方側は、床面や地面としてもよいし、戸尻側枠部材11と戸先側枠部材12の下端部間にわたる沓摺(下枠部材)等としてもよい。
枠体10の枠内側には、全閉した際の開閉体20を受ける断面略段状の戸当たり部10aが設けられる(
図2参照)。
【0022】
開閉体20は、厚み方向に間隔を置いた二枚の外板21をその内側の芯材及び骨材等(図示せず)により支えて、所定の厚みを有する正面視矩形状の扉体を構成している。
この開閉体20は、閉鎖状態から屋外側へ回動することで、戸当たり部10aから離れて枠体10内の開口部を開放し、屋内側へ回動することで、前記開口部を閉鎖するようにして戸当たり部10aに接触又は近接する。
この開閉体20の戸先側には、厚み方向の両側の外板21の間に位置するように、ドアノブユニットA(
図1参照)が装着される。ドアノブユニットAは、厚み方向両側の外板21に、それぞれ、ノブ36,37を貫通させている。
【0023】
開閉体20の戸尻側部分は、ヒンジ23を介して、戸尻側枠部材11に対し回転自在に接続されている。ヒンジ23は、開閉体20の回動支点となる部材であり、周知の平蝶番や旗蝶番、ピボットヒンジ等を用いることが可能である。
【0024】
ドアノブユニットAは、ノブ36,37の回転操作によりラッチを枠体10に係脱するラッチ機構や、鍵又はサムターンの操作により開閉体20を開閉不能にロックする施錠機構等を具備した周知の機構を適用可能である。
【0025】
第一ユニット30は、閉鎖状態の前記開閉体の一方側の人を感知する第一感知部31と、前記一方側の音を収集する集音マイク32とを一体的に具備している。
この第一ユニット30は、前記一方側を向くようにして、開閉体20の上方側の壁面や上側枠部材13等の適宜箇所に設置される。
【0026】
第一感知部31には、例えば、エリアセンサや、3Dセンサ、焦電センサ等と呼称される周知のセンサを適用すればよい。
この第一感知部31は、感知信号を後述する制御部50へ送信するように、制御部50に対し無線又は有線で接続されている。
【0027】
集音マイク32は、収集した音声を電気的な音声信号に変換し出力する。
この集音マイク32は、前記音声信号を、後述する制御部50に送信するように、制御部50に対し無線又は有線で接続されている。
【0028】
第二ユニット40は、開閉体20の他方側の人を感知する第二感知部41及び音声発生部42を備える。
この第二ユニット40は、前記他方側を向くようにして、開閉体20の上方側の壁面や上側枠部材13等の適宜箇所に設置される。
【0029】
第二感知部41には、第一感知部31と同様のセンサを適用すればよい。
音声発生部42は、集音マイク32によって収集した音声を発するためのスピーカである。このスピーカは、好ましい態様としては、前記音声を開放方向側へスポット的に発する指向性スピーカや、前記音声を前記開閉体の開放方向側へステレオ音声として発するステレオスピーカ、あるいは、これらを組み合わせてなるスピーカ等とする。
【0030】
制御部50は、第一感知部31と第二感知部41の両方の感知信号がある場合に、集音マイク32によって収集した音声を、音声発生部42から発するようにした制御回路であり、例えば、シーケンサやマイコンの電子回路によって構成される。
制御部50は、図示例によれば、屋内側の壁面に設けているが、開放側の壁面や、壁内、第一ユニット30又は第二ユニット40の内部等、図示例以外の部分に設けることが可能である。
【0031】
また、第一ユニット30、第二ユニット40又は制御部50の近傍には、これらの機器へ電力を供給するバッテリー装置(図示せず)が設けられる。なお、このバッテリー装置は、壁面等に設けたソーラ発電装置や、商用電源等に置換することが可能である。
【0032】
次に、制御部50による制御動作の一例を
図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
先ず、制御部50は、第一感知部31及び第二感知部41の両方の感知信号があるのを待ち、両方の感知信号があれば、次のステップへ処理を進める(ステップS1)。すなわち、このステップS1では、第一感知部31と第二感知部41の何れか一方の感知信号しかない場合には、次のステップへ処理を進めない。
【0033】
次のステップS2では、一方側(図示例によれば、屋外側)の人が、開閉体20に徐々に接近しているか否かを判断し、徐々に接近していると判断した場合、次のステップへ処理を進め、そうでなければ、前記ステップS1へ処理を戻す。
【0034】
このステップS2の前記判断は、集音マイク32によって集音した音の特徴量に基づく判断である。
すなわち、例えば、集音マイク32によって収音した音が、徐々に増大する場合には、一方側の人が開閉体20に徐々に接近しているものと判断することができる。なお、この判断は、AI(人工知能)により生成された推定モデルを用いたアルゴリズムによる判断とすることも可能である。
【0035】
次のステップS3では、集音マイク32より収集した音声信号を適宜に調整して、次のステップへ処理を進める。
具体的に説明すれば、制御部50は、一方側の人が開閉体20に接近するのにしたがって、音声発生部42へ送信する音声信号を増幅する。
すなわち、集音マイク32によって収音した音が増大するのにつれて、音声発生部42が発生する音声を増大する。この増幅の割合は調整可能であり、例えば、
図4に示すように、一方側の人が開閉体20に近づくほど、音声増幅の変化の割合を大きくする。
【0036】
次のステップS4では、上記のようにして調整された音声信号を、音声発生部42へ送信し、音声発生部42から開閉体20の他方側(屋内側)へ音声を発する。
【0037】
次のステップS5では、第一感知部31と第二感知部41の何れか一方の感知信号がなくなったか否かを判断し、両方の感知信号がなければ、次のステップへ処理を進め、そうでなければ上記ステップS1へ処理を戻す。
すなわち、何れか一方の感知信号がない場合、開閉体20の何れか一方側のみにしか人が存在しないので、他方側への報知が必要なくなる。
なお、ステップS5の他例としては、第一感知部31と第二感知部41の両方の感知信号がなくなったことを条件に、次のステップへ処理を進めるようにしてもよい。
【0038】
そして、次のステップS6では、音声発生部42による音声の発信を停止し、上記ステップS1へ処理を戻す。
【0039】
よって、上記実施態様によれば、開閉体20の一方側(屋外側)に人が近づいていることを、その他方側の人に、効果的に報知することができ、ひいては、他方側の人が開閉体20を急に開放して、その開閉体20が一方側の人に接触するようなことを防ぐことができる。
【0040】
<変形例>
上記実施態様によれば、集音マイク32によって収集した音声を調整して音声発生部42から発するようにしたが、他例としては、第一感知部31と第二感知部41の両方の感知信号がある場合に、図示しない記憶装置に記憶した音声データに基づく音声を、音声発生部42から発するようにすることも可能である。
この他例において、前記音声データは、好ましくは、足音とし、この足音を、上記ステップS3により調整し、上記ステップS4で音声発生部42から発する。
この態様によれば、他方側の人に対し、音声発生部42から発せられる足音の変化により、一方側から人が近づいてくることをより効果的に認識させることができる。
【0041】
さらに他例としては、音声発生部42により収集した音声に、予め記憶した前記音声データを複合して、音声発生部42から発することも可能である。
【0042】
また、上記実施態様によれば、集音マイク32により収集した音声の解析により、一方側の人が開閉体20に近づいているか否かを判断したが、他例としては、一方側の人と開閉体20の間の距離を測定する距離センサを設け、この距離センサの感知信号に基づき、一方側の人が開閉体20に近づいているか否かを判断するようにすることも可能である。
【0043】
さらに他例としては、集音マイク32により収集した音声の解析により、一方側の人が開閉体20に近づく速度を導き、この速度が大きくなるのにつれて、音声発生部42から発する音声を大きくするようにしてもよい。さらに、この他例において、前記速度を速度センサにより感知することも可能である。
【0044】
また、上記構成では、開閉体20に対する一方側の人の接近距離及び/又は接近速度に応じて、音声発生部42が発生する音声を増大したが、他例としては、開閉体20に対する一方側の人の接近距離及び/又は接近速度に応じて、制御部50が備える電子回路等によって、音声発生部42が発生する音声の音色を変化させるようにしてもよい。
ここで、前記「音色を変化」とは、具体的には、集音マイク32によって収集した音声や、予め記憶した音声について、音程を変える処理をしたり、リバーブ等のエフェクト処理をしたりする。
さらに、前記音色の変化について、その変化の割合を調整可能にしてもよい。
【0045】
また、上記実施態様では、屋外側に第一ユニット30を設け、屋内側に第二ユニット40を設けたが、その配置を逆にすることも可能である。
【0046】
また、上記実施態様では、開閉体20が一方側(屋外側)のみへ開放する態様したが、他例としては、開閉体20が一方側と他方側の双方に開放する態様とすることも可能である。この他例においては、上述した屋外側の第一ユニット30及び屋内側の第二ユニット40に加えて、屋外側に第二ユニット40を設けるとともにこの第二ユニット40に対応する第一ユニット30を屋内側に設ける。
このようにすれば、開閉体20に対し屋外側と屋内側の何れから人が近づいた場合でも、そのことを逆側の人に報知することができる。
【0047】
また、上記実施態様では、特に好ましい態様として、音声発生部42を集音マイク32の側に対する反対側(図示例によれば屋内側)に設けたが、この音声発生部42は、前記反対側で音声を把握できるようにすれば、集音マイク32の側に設けることも可能である。
【0048】
また、上記実施態様に付加する構成として、音声発生部42が音声を発するのに伴って光を発する発光装置(例えば、LED等)を設けてもよい。
【0049】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:建具装置
10:枠体
20:開閉体
30:第一ユニット
31:第一感知部
32:集音マイク
40:第二ユニット
41:第二感知部
42:音声発生部