IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 筑波大学の特許一覧 ▶ オリジン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-測定装置および測定方法 図1
  • 特開-測定装置および測定方法 図2
  • 特開-測定装置および測定方法 図3
  • 特開-測定装置および測定方法 図4
  • 特開-測定装置および測定方法 図5
  • 特開-測定装置および測定方法 図6
  • 特開-測定装置および測定方法 図7
  • 特開-測定装置および測定方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121491
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20230824BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G01N27/404 341Z
G01N27/404 341U
G01N27/416 323
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024857
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博章
(72)【発明者】
【氏名】中野 晃
(57)【要約】
【課題】例えば、サンプルの酸素濃度を視覚的に把握することを可能とする新規な改善された測定装置および測定方法を得る。
【解決手段】測定装置は、例えば、サンプルを収容する第一室が設けられた第一部位と、酸素を透過可能な酸素透過膜と、電解液を収容し酸素透過膜を介して第一室と隔てられた第二室が設けられた第二部位と、試薬を収容する第三室が設けられた第三部位と、電解液と接触する第一電極と、試薬と接触する第二電極と、電解液および試薬の双方と接触する第三電極と、第一電極と第二電極との間に電位差を生じさせる電圧源と、を備え、第三電極の試薬との接触部は視認可能に設けられ、第三室に収容された試薬において第二電極と第三電極との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを収容する第一室が設けられた第一部位と、
酸素を透過可能な酸素透過膜と、
電解液を収容し前記酸素透過膜を介して前記第一室と隔てられた第二室が設けられた第二部位と、
試薬を収容する第三室が設けられた第三部位と、
前記電解液と接触する第一電極と、
前記試薬と接触する第二電極と、
前記電解液および前記試薬の双方と接触する第三電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせる電圧源と、
を備え、
前記第三電極の前記試薬との接触部は視認可能に設けられ、
前記第三室に収容された前記試薬において前記第二電極と前記第三電極との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる、測定装置。
【請求項2】
前記第一部位には、前記第一室として、複数の第一室が設けられ、
前記第二部位には、前記第一室のそれぞれと対応した前記第二室として、前記第一室のそれぞれと前記酸素透過膜を介して隔てられた、複数の第二室が設けられ、
前記第二室のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極を備えた、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記複数の第一室および前記第二接触部としての複数の第二接触部は、それぞれ、m行×n列(ここに、mおよびnは1以上の整数であって、m×nは2以上の整数)のマトリクス状に配置された、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第一室の、前記複数の第一室の第一マトリクスにおける成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該第一室と前記第二室を介して対応した前記第二接触部の、前記複数の第二接触部の第二マトリクスにおける成分をM2ijとした場合に、
前記第一マトリクスおよび前記第二マトリクスにおいて、jが増える方向としての行方向およびiが増える方向としての列方向のうち一方が平行であり、他方が平行であるかあるいは反平行である、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第二部位には、前記第一室内の複数の位置のそれぞれと連通し、各位置の前記サンプルから前記酸素透過膜を介して当該第二室に収容された電解液に酸素を導入可能な、複数の第二室が設けられ、
前記位置のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極を備えた、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記複数の位置および前記第二接触部としての複数の第二接触部は、それぞれ、m行×n列(ここに、mおよびnは1以上の整数であって、m×nは2以上の整数)のマトリクス状に配置された、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記複数の位置の第一マトリクスにおける各位置の成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該位置と前記第二室を介して対応した前記第二接触部の、前記複数の第二接触部の第二マトリクスにおける成分をM2ijとした場合に、
前記第一マトリクスおよび前記第二マトリクスにおいて、jが増える方向としての行方向およびiが増える方向としての列方向のうち一方が平行であり、他方が平行であるかあるいは反平行である、請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記配線部としての複数の配線部が、互いに交差しない状態で平面的に配置された、請求項2~7のうちいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項9】
複数の前記第二室と連通されたエア抜き孔が設けられた、請求項1~8のうちいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項10】
前記第二室として、複数の第二室が設けられ、
前記エア抜き孔として、前記複数の第二室間を連通した連通孔が設けられた、請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記試薬は、電気化学発光溶液である、請求項1~10のうちいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項12】
前記試薬は、pH試験液である、請求項1~10のうちいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項13】
サンプルを収容する第一室が設けられた第一部位と、
酸素を透過可能な酸素透過膜と、
電解液を収容し前記酸素透過膜を介して前記第一室と隔てられた第二室が設けられた第二部位と、
試薬を収容する第三室が設けられた第三部位と、
前記電解液と接触する第一電極と、
前記試薬と接触する第二電極と、
前記電解液および前記試薬の双方と接触する第三電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせる電圧源と、
を備え、
前記第三電極の前記試薬との接触部は視認可能に設けられ、
前記第三室に収容された前記試薬において前記第二電極と前記第三電極との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる、測定装置を用いて、
前記第一室に前記サンプルを収容した状態で、前記電圧源によって前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせ、前記試薬の視覚的な状態変化を生じさせる、測定方法。
【請求項14】
前記測定装置において、
前記第一部位には、前記第一室として、複数の第一室が設けられ、
前記第二部位には、前記第一室のそれぞれと対応した前記第二室として、前記第一室のそれぞれと前記酸素透過膜を介して隔てられた、複数の第二室が設けられ、
前記第二室のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極が設けられ、
前記複数の第一室のうちの少なくとも一つに前記サンプルを収容し、かつ前記サンプルを収容した前記第一室とは別の第一室に酸素濃度が既知のリファレンス液を収容した状態で、
前記電圧源によって前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせ、前記試薬の視覚的な状態変化を生じさせる、請求項13に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素透過膜を介してサンプルから電解液に酸素を導入し、当該電解液における酸素電極の電流値に基づいて、サンプルの酸素濃度を測定する測定装置が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-139818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の測定装置では、酸素濃度を数値として把握することができる。一方、酸素濃度の測定に際しては、サンプルの酸素濃度を視覚的に把握したいというニーズもある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、例えば、サンプルの酸素濃度を視覚的に把握することを可能とする新規な改善された測定装置および測定方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、例えば、サンプルを収容する第一室が設けられた第一部位と、酸素を透過可能な酸素透過膜と、電解液を収容し前記酸素透過膜を介して前記第一室と隔てられた第二室が設けられた第二部位と、試薬を収容する第三室が設けられた第三部位と、前記電解液と接触する第一電極と、前記試薬と接触する第二電極と、前記電解液および前記試薬の双方と接触する第三電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせる電圧源と、を備え、前記第三電極の前記試薬との接触部は視認可能に設けられ、前記第三室に収容された前記試薬において前記第二電極と前記第三電極との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる。
【0007】
前記測定装置では、前記第一部位には、前記第一室として、複数の第一室が設けられ、前記第二部位には、前記第一室のそれぞれと対応した前記第二室として、前記第一室のそれぞれと前記酸素透過膜を介して隔てられた、複数の第二室が設けられ、前記測定装置は、前記第二室のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極を備えてもよい。
【0008】
前記測定装置では、前記複数の第一室および前記第二接触部としての複数の第二接触部は、それぞれ、m行×n列(ここに、mおよびnは1以上の整数であって、m×nは2以上の整数)のマトリクス状に配置されてもよい。
【0009】
前記測定装置では、前記第一室の、前記複数の第一室の第一マトリクスにおける成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該第一室と前記第二室を介して対応した前記第二接触部の、前記複数の第二接触部の第二マトリクスにおける成分をM2ijとした場合に、前記第一マトリクスおよび前記第二マトリクスにおいて、jが増える方向としての行方向およびiが増える方向としての列方向のうち一方が平行であり、他方が平行であるかあるいは反平行であってもよい。
【0010】
前記測定装置では、前記第二部位には、前記第一室内の複数の位置のそれぞれと連通し、各位置の前記サンプルから前記酸素透過膜を介して当該第二室に収容された電解液に酸素を導入可能な、複数の第二室が設けられ、前記測定装置は、前記位置のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極を備えてもよい。
【0011】
前記測定装置では、前記複数の位置および前記第二接触部としての複数の第二接触部は、それぞれ、m行×n列(ここに、mおよびnは1以上の整数であって、m×nは2以上の整数)のマトリクス状に配置されてもよい。
【0012】
前記測定装置では、前記複数の位置の第一マトリクスにおける各位置の成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該位置と前記第二室を介して対応した前記第二接触部の、前記複数の第二接触部の第二マトリクスにおける成分をM2ijとした場合に、前記第一マトリクスおよび前記第二マトリクスにおいて、jが増える方向としての行方向およびiが増える方向としての列方向のうち一方が平行であり、他方が平行であるかあるいは反平行であってもよい。
【0013】
前記測定装置では、前記配線部としての複数の配線部が、互いに交差しない状態で平面的に配置されてもよい。
【0014】
前記測定装置では、複数の前記第二室と連通されたエア抜き孔が設けられてもよい。
【0015】
前記測定装置では、前記第二室として、複数の第二室が設けられ、前記エア抜き孔として、前記複数の第二室間を連通した連通孔が設けられてもよい。
【0016】
前記測定装置では、前記試薬は、電気化学発光溶液であってもよい。
【0017】
前記測定装置では、前記試薬は、pH試験液であってもよい。
【0018】
また、本発明の測定方法は、例えば、サンプルを収容する第一室が設けられた第一部位と、酸素を透過可能な酸素透過膜と、電解液を収容し前記酸素透過膜を介して前記第一室と隔てられた第二室が設けられた第二部位と、試薬を収容する第三室が設けられた第三部位と、前記電解液と接触する第一電極と、前記試薬と接触する第二電極と、前記電解液および前記試薬の双方と接触する第三電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせる電圧源と、を備え、前記第三電極の前記試薬との接触部は視認可能に設けられ、前記第三室に収容された前記試薬において前記第二電極と前記第三電極との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる、測定装置を用いて、前記第一室に前記サンプルを収容した状態で、前記電圧源によって前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせ、前記試薬の視覚的な状態変化を生じさせる。
【0019】
前記測定方法では、前記測定装置において、前記第一部位には、前記第一室として、複数の第一室が設けられ、前記第二部位には、前記第一室のそれぞれと対応した前記第二室として、前記第一室のそれぞれと前記酸素透過膜を介して隔てられた、複数の第二室が設けられ、前記第二室のそれぞれと対応した前記第三電極として、それぞれ、前記第二室内に露出し前記電解液と接触する第一接触部と、前記第三室内に露出した前記接触部としての第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部とを電気的に接続した配線部と、を有した複数の第三電極が設けられ、前記複数の第一室のうちの少なくとも一つに前記サンプルを収容し、かつ前記サンプルを収容した前記第一室とは別の第一室に酸素濃度が既知のリファレンス液を収容した状態で、前記電圧源によって前記第一電極と前記第二電極との間に電位差を生じさせ、前記試薬の視覚的な状態変化を生じさせてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、サンプルの酸素濃度を視覚的に把握することを可能とする新規な改善された測定装置および測定方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態の測定装置の例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、第2実施形態の測定装置の例示的かつ模式的な斜視図である。
図3図3は、第2実施形態の測定装置の例示的かつ模式的な分解斜視図である。
図4図4は、第2実施形態の測定装置の第一電極、第二電極、および第三電極の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
図5図5は、第2実施形態の測定装置の第一室の第一マトリクスおよび第二接触部の第二マトリクスを示す例示的かつ模式的な平面図である。
図6図6は、第3実施形態の測定装置の第一電極、第二電極、および第三電極の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
図7図7は、第3実施形態の測定装置の第一室の第一マトリクスおよび第二接触部の第二マトリクスを示す例示的かつ模式的な平面図である。
図8図8は、第4実施形態の測定装置の第一室における第二室と連通した各位置の第一マトリクスおよび第二接触部の第二マトリクスを示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0023】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0024】
本明細書において、序数は、部位や、部材等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0025】
また、各図中、X方向を矢印Xで示し、Y方向を矢印Yで示し、Z方向を矢印Zで示している。X方向およびY方向は、基板の表面に沿う方向であり、Z方向は、基板の厚さ方向であるとともに、基板および基板上に積層される各層の積層方向である。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。また、測定装置100の使用状態において、X方向およびY方向は、略水平方向に沿い、Z方向は、略鉛直上方を向く。
【0026】
また、各図の寸法の比率は、実際の構造とは異なる場合がある。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、測定装置100A(100)の断面図である。図1に示されるように、測定装置100は、第一室R1が設けられた第一部位11と、第二室R2が設けられた第二部位12と、第三室R3が設けられた第三部位13と、を備えている。
【0028】
第一室R1は、第一部位11において、筐体10や、壁16、酸素透過膜14等によって囲まれることにより、形成されている。第一室R1には、液体のサンプルSが収容される。第一室R1の上方は開放されており、測定者は、第一室R1に、上方からサンプルSを注入することができる。筐体10や、壁16は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料で作られる。また、酸素透過膜14は、例えば、シリコーンで作られる。
【0029】
第二室R2は、第二部位12において、筐体10や、壁16、酸素透過膜14等によって囲まれることにより、形成されている。第二室R2には、電解液Eが収容される。電解液は、例えば、塩化カリウム溶液である。第二室R2は、酸素透過膜14を介して第一室R1と隔てられている。ただし、第二室R2内に収容された電解液Eには、酸素透過膜14を介して、第一室R1に収容されたサンプルSから、酸素が導入される。
【0030】
第一室R1は、第二室R2の上方に配置されている。これにより、測定装置100がZ方向と交差した方向に大型化するのが抑制されている。
【0031】
第三室R3は、第三部位13において、筐体10や、壁16、蓋部材15等によって囲まれることにより、形成されている。第三室R3には、試薬Iが収容される。試薬Iは、例えば、電気化学発光溶液(以下、ECL溶液と称する、electrochemiluminescence:ECL)や、pH試薬である。ECL溶液は、例えば、1 M KCl、5 mM [Ru(bpy)3]2+、25 M トリプロピルアミン(Tripropylamine)を含む50 mM リン酸緩衝液(pH 7.4)である。また、pH試験液は、例えば、万能pH指示薬を含む1 M KClである。蓋部材15は、透明であり、試薬Iの輝度や色等の状態を外から(上から)見ることができるよう構成されている。第三室R3は、第一室R1および第二室R2とは、壁16等によって隔てられている。蓋部材15は、窓部材とも称される。
【0032】
第二室R2には、第一電極21と、第三電極23の第一接触部23aと、が露出している。第一電極21および第一接触部23aは、電解液Eと接触している。また、第三室R3には、第二電極22と、第三電極23の第二接触部23bと、が露出している。第二電極22および第二接触部23bは、試薬Iと接触している。第三電極23は、壁16を貫通し、電解液Eおよび試薬Iの双方に接触している。なお、蓋部材15は、少なくとも、第三電極23のうち試薬Iとの接触部としての第二接触部23bを、外から視認できるよう、構成されている。また、第三電極23のうち、第一接触部23aと第二接触部23bとの間の部位は、配線部23cと称される。
【0033】
測定装置100は、電圧源30を備えている。電圧源30は、第一電極21と第二電極22との間に電位差を生じさせる。
【0034】
本実施形態では、第一電極21がアノードとなり、第二電極22がカソードとなるように適当な電圧を印加する。
【0035】
第一電極21は、例えば、銀で作られる。ただし、これには限定されず、第一電極21は、例えば、白金、金のような別の材料で作られてもよい。
【0036】
第二電極22は、例えば、白金で作られる。ただし、これには限定されず、第二電極22は、例えば、金や、銀のような別の材料で作られてもよい。
【0037】
また、第三電極23は、例えば、白金で作られる。ただし、これには限定されず、第三電極23は、例えば、金や、カーボン、ITO(透明電極)のような別の材料で作られてもよい。
【0038】
このような構成において、電圧源30を作動させ、第一電極21と第二電極22との間に電圧を印加すると、第一電極21および第二接触部23bでは、酸化反応が生じ、第二電極22および第一接触部23aでは、還元反応が生じる。このような現象は、バイポーラ電気化学と称され、第三電極23は、バイポーラ電極と称される。なお、電圧源30によって印加する電圧は、電解液Eまたは試薬Iの電気分解が生じる電圧未満に設定される。
【0039】
当該構成では、第二室R2の電解液Eにおける酸素濃度が高いほど、第一接触部23aにおける還元反応が促進され、これに伴い、第三室R3の試薬Iにおいて、第二接触部23bにおける酸化反応が進行する。
【0040】
ここで、試薬Iにおいては、第二接触部23b(第三電極23)と第二電極22との間で流れる電流に応じて視覚的な状態変化が生じる。
【0041】
試薬IがECL溶液である場合、当該試薬Iは、第二接触部23bの近傍において、酸化反応に伴って第三電極23に流れる電流により発光し、その電流値が大きくなるほど発光強度が大きくなる。すなわち、サンプルSにおいて酸素濃度が高いほど、電解液Eにおける酸素濃度が高くなり、電圧源30によって第一電極21と第二電極22との間に印加した電圧に対して第二接触部23bと試薬Iとの間で流れる電流が大きくなり、これにより、当該第二接触部23bの近傍における試薬Iの発光強度が大きくなる。逆に、サンプルSにおいて酸素濃度が低いほど、電解液Eにおける酸素濃度が低くなり、電圧源30によって第一電極21と第二電極22との間に印加した電圧に対して第二接触部23bと試薬Iとの間で流れる電流が小さくなり、これにより、当該第二接触部23bの近傍における試薬Iの発光強度が小さくなる。したがって、測定者は、例えば、測定装置100の外部から、第二接触部23bの近傍における試薬Iの発光強度を視認することにより、その輝度すなわち明るさによって、サンプルSにおける酸素濃度を視覚的に把握することができる。また、コンピュータが、カメラのような撮像装置を介して試薬Iの発光領域の輝度値を取得し、輝度値と酸素濃度との相関関係を示すデータを参照することにより、当該輝度値に対応した酸素濃度を算出してもよい。
【0042】
試薬IがpH試験液である場合、当該試薬Iは、第二接触部23bの近傍において、第二接触部23bの近傍で生じる酸化反応に伴って酸性色に変化し、当該第二接触部23bと試薬Iとの間で流れる電流の電流値が大きくなるほど、より低いpHに対応した色に変化する。すなわち、サンプルSにおいて酸素濃度が高いほど、電解液Eにおける酸素濃度が高くなり、電圧源30によって第一電極21と第二電極22との間に印加した電圧に対して第二接触部23bと試薬Iとの間で流れる電流が大きくなり、これにより、当該第二接触部23bの近傍において試薬Iの色が、より低いpHに対応した色になる。逆に、サンプルSにおいて酸素濃度が低いほど、電解液Eにおける酸素濃度が低くなり、電圧源30によって第一電極21と第二電極22との間に印加した電圧に対して第二接触部23bと試薬Iとの間で流れる電流が小さくなり、これにより、当該第二接触部23bの近傍において試薬Iの色が、より高いpHに対応した色になる。したがって、測定者は、例えば、測定装置100の外部から、第二接触部23bの近傍における試薬Iの色を視認することにより、その色によって、サンプルSにおける酸素濃度を視覚的に把握することができる。また、コンピュータが、カメラのような撮像装置を介して試薬Iの発色領域のRGB輝度値を取得し、RGB輝度値と酸素濃度との相関関係を示すデータを参照することにより、当該RGB輝度値に対応した酸素濃度を算出してもよい。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態の測定装置100A(100)にあっては、第三室R3内で試薬Iと接触する第三電極23の第二接触部23b(接触部)の近傍において、当該試薬Iに、サンプルSの酸素濃度に応じた視覚的な変化を生じさせることができる。したがって、測定者は、サンプルSの酸素濃度を、試薬Iの輝度や色により、視覚的に把握することができる。
【0044】
[第2実施形態]
[測定装置の構成]
図2は、第2実施形態の測定装置100B(100)の外観を示す斜視図である。図2に示されるように、本実施形態では、第一部位11において、複数の第一室R1がマトリクス状(アレイ状)に配置されており、また、第三部位13において、複数の第二接触部23bがマトリクス状に配置されている。すなわち、第一部位11には、第一室R1のマトリクスM1が設けられ、第三部位13には、第二接触部23bのマトリクスM2が設けられている。そして、第二接触部23bのそれぞれは、第一室R1に対応して設けられている。上述したように、第二接触部23bの近傍において、サンプルSの酸素濃度に対応して、試薬Iの視覚的な状態が変化する。したがって、マトリクスM2における当該第二接触部23bの位置と、マトリクスM1における第一室R1の位置と、の対応関係を予め把握しておくことで、複数のサンプルSについて、それぞれの酸素濃度を同時並行的に把握することができる。また、本実施形態では、マトリクスM1とマトリクスM2とがY方向に並んで設けられており、マトリクスM1における各位置とマトリクスM2における各位置との対応関係を視覚的に把握しやすいため、各サンプルSに対応した試薬Iの視覚的な状態、すなわち酸素濃度を把握しやすいという利点が得られる。さらに、本実施形態によれば、マトリクスM2において複数の第二接触部23bの位置における試薬Iの視覚的な状態、すなわち輝度や色等を比較することにより、複数のサンプルS間で酸素濃度を比較することが可能になるという利点も得られる。
【0045】
図3は、測定装置100Bの分解斜視図である。図3に示されるように、測定装置100Bは、基板101と、絶縁層102と、中間部材103と、酸素透過膜14と、蓋部材15と、上側部材104と、を備えている。
【0046】
基板101は、絶縁体で作られている。第一電極21、第二電極22、および第三電極23は、基板101の面101a上に形成されている。
【0047】
第一電極21は、端子部21aと、配線部21bと、第二室R2のそれぞれに露出して電解液Eと接触する接触部21cと、を有している。接触部21cは、配線部21bを介して、端子部21aと電気的に接続されている。
【0048】
第二電極22は、端子部22aと、配線部22bと、第三室R3に露出して試薬Iと接触する複数の接触部22cと、を有している。接触部22cは、配線部22bを介して、端子部22aと電気的に接続されている。
【0049】
第三電極23は、第一室R1と1対1で対応した第二室R2のそれぞれに対応して設けられている。第三電極23は、各第二室R2に露出した第一接触部23aと、第三室R3に露出した第二接触部23bと、第一接触部23aと第二接触部23bとを電気的に接続した配線部23cと、を有している。
【0050】
図4は、第三電極23およびその近傍における第一電極21および第二電極22を示す平面図である。図4に示されるように、第一接触部23aは、それぞれ略円形状に形成されている。第一電極21の接触部21cには、当該第一接触部23aを略C字状の隙間g1をあけて収容する(取り囲む)切欠が設けられている。すなわち、第一接触部23aは、隙間g1を介して、第一電極21の接触部21cと面している。
【0051】
第二接触部23bは、それぞれ略円形状に形成されている。第二電極22の接触部22cには、当該第二接触部23bを略C字状の隙間g2をあけて収容する(取り囲む)切欠が設けられている。すなわち、第二接触部23bは、隙間g2を介して、第二電極22の接触部22cと面している。
【0052】
図3に示されるように、絶縁層102は、Z方向における略一定の厚さを有してZ方向と交差して広がっている。絶縁層102は、基板101の面101a、第一電極21、第二電極22、および第三電極23を部分的に覆っており、基板101とともに、各電極間を絶縁している。絶縁層102には、開口102a,102bが設けられており、当該開口102a,102bと重なる領域では、電極同士は、絶縁層102によっては絶縁されない。また、絶縁層102は、第一電極21および第二電極22のそれぞれの端子部21a,22aは覆っていない。言い換えると、端子部21a,22aは、絶縁層102によっては覆われず、露出している。絶縁層102は、例えば、ポリイミドのような絶縁体で作られる。
【0053】
開口102aは、第二室R2のそれぞれに対応して設けられており、平面視で略円形状の形状を有し、絶縁層102をZ方向に貫通している。絶縁層102は、第一電極21のうち、配線部21bと、接触部21cのうち上述した切欠の縁に沿った部位より外側の部位(図4の第二室R2の二点鎖線より外側の部位)とを覆っている。また、絶縁層102は、開口102aの内側において、第三電極23の第一接触部23aと、第一電極21の接触部21cのうち当該の第一接触部23aを取り囲む切欠の縁に沿った部位(図4の第二室R2の二点鎖線より内側の部位)と、を露出させている。
【0054】
開口102bは、第三室R3に対応して設けられており、平面視で略四角形状の形状を有し、絶縁層102をZ方向に貫通している。開口102bの縁には、第三電極23の第二接触部23bのそれぞれに対応して当該開口102b内に突出した突出部102cが設けられている。突出部102cの先端には、円環状部位が設けられている。この円環状部位は、第二接触部23bと、その周囲を取り囲む第二電極22の接触部22cの切欠との間の円環状の隙間g2(図4参照)を覆っている。絶縁層102は、当該隙間g2と、第三電極23の配線部23cと、を覆っている。また、絶縁層102は、開口102bの内側において、第三電極23の第二接触部23bと、第二電極22の接触部22cの比較的広い領域とを、露出させている。
【0055】
中間部材103は、絶縁層102上に載置されている。中間部材103は、Z方向における略一定の厚さを有してZ方向に交差して広がっている。中間部材103には、第二室R2の側面を形成する開口103aと、第三室R3の側面を形成する開口103cと、が設けられている。開口103aは、平面視で略円形状の形状を有し、中間部材103をZ方向に貫通している。また、開口103cは、平面視で略四角形状の形状を有し、中間部材103をZ方向に貫通している。
【0056】
図3から明らかとなるように、第二室R2は、複数の第一接触部23a(第三電極23)のそれぞれに対応して設けられるのに対し、第三室R3は、複数の第二接触部23b(第三電極23)に対して共用されている。試薬Iの視覚的な状態変化は、主に第二接触部23bの近傍において生じるため、このように第三室R3が複数の第三電極23について共用されても問題は生じない。なお、中間部材103は、例えば、エポキシ樹脂のような絶縁体で作られる。また、本実施形態では、第三室R3の数は1であるが、2以上であってもよい。
【0057】
また、中間部材103には、組み立て時あるいは測定前において開口103a(第二室R2)からのエア抜きを行うためのエア抜き孔を構成するスリット103b1,103b2が設けられている。エア抜き孔は、当該スリット103b1,103b2の側面と、下方の絶縁層102と、上方の酸素透過膜14と、に囲まれて形成されている。スリット103b2は、複数の開口103a間、すなわち複数の第二室R2間を連通している。また、スリット103b1は、スリット103b2を介して複数の開口103a、すなわち複数の第二室R2と連通されるとともに、中間部材103の外縁、すなわち測定装置100B外とも、連通されている。このような構成によれば、エア抜き作業を行うことにより、複数の第二室R2内に、エアが残存するのを抑制することができる。なお、測定実施時には、スリット103b1は塞がれてもよい。
【0058】
さらに、中間部材103には、組み立て時あるいは測定前において開口103c(第三室R3)からのエア抜きを行うためのエア抜き孔を構成するスリット103dが設けられている。エア抜き孔は、当該スリット103dの側面と、下方の絶縁層102と、上方の蓋部材15と、に囲まれて形成されている。スリット103dは、開口103c、すなわち第三室R3と連通されるとともに、中間部材103の外縁、すなわち測定装置100B外とも、連通されている。このような構成によれば、エア抜き作業を行うことにより、第三室R3内に、エアが残存するのを抑制することができる。なお、測定実施時には、スリット103dは塞がれてもよい。
【0059】
酸素透過膜14は、複数の開口103aを内側に含む範囲で、中間部材103を上から覆っている。
【0060】
蓋部材15は、開口103cを内側に含む範囲で、中間部材103を上から覆っている。
【0061】
上側部材104は、酸素透過膜14上に載置されている。上側部材104は、Z方向における略一定の厚さを有してZ方向に交差して広がっている。上側部材104には、第三電極23の第一接触部23a、絶縁層102の開口102a、および中間部材103の開口103aとZ方向に並ぶように、開口104aが設けられている。開口104aは、平面視で略円形状の形状を有し、上側部材104をZ方向に貫通している。
【0062】
本実施形態では、第一部位11は、上側部材104と、酸素透過膜14と、を有している。そして、上側部材104によって第一室R1の側面が形成され、酸素透過膜14によって第一室R1の底面が形成されている。
【0063】
また、第二部位12は、酸素透過膜14と、中間部材103と、絶縁層102と、基板101と、を有している。そして、酸素透過膜14によって第二室R2の頂面が形成され、中間部材103および絶縁層102によって第二室R2の側面が形成され、基板101によって第二室R2の底面が形成されている。第二室R2の底面では、第一電極21の接触部21cの一部と、第三電極23の第一接触部23aと、が露出している。
【0064】
本実施形態でも、第二室R2は、酸素透過膜14を介して第一室R1と隔てられている。ただし、第二室R2内に収容された電解液Eには、酸素透過膜14を介して、第一室R1に収容されたサンプルSから、酸素が導入される。
【0065】
また、第三部位13は、蓋部材15と、中間部材103と、絶縁層102と、基板101と、を有している。そして、蓋部材15によって第三室R3の頂面が形成され、中間部材103によって第三室R3の側面が形成され、絶縁層102および基板101によって第三室R3の底面が形成されている。第三室R3の底面では、第二電極の接触部22cの一部と、第三電極23の第二接触部23bと、が露出している。
【0066】
[複数の第一室のマトリクスおよび第三電極の第二接触部のマトリクスの配置]
図5は、本実施形態の測定装置100Bにおける、複数の第一室R1のマトリクスM1と、複数の第二接触部23bのマトリクスM2と、を示す平面図である。マトリクスM1は、第一マトリクスの一例であり、マトリクスM2は、第二マトリクスの一例である。
【0067】
図5に示されるように、マトリクスM1およびマトリクスM2は、それぞれ、m行×n列のマトリクス状に配置されている。mおよびnは、本実施形態ではいずれも4であるが、これには限定されず、mおよびnは、1以上の整数であって、m×nが2以上の整数であればよい。
【0068】
ここで、図4に示されるように、本実施形態では、第三電極23の第一接触部23aと第二接触部23bとを電気的に接続する配線部23cは、面101a上で、互いに交差しない状態で平面的に配置されている。また、本実施形態では、配線部23cは、なるべく短くするため、面101aのうち、第一電極21の接触部21cと第二電極22の接触部21cとの間の領域と、接触部21c,22cに対してX方向に隣接した領域と、で配策されている。このため、第三電極23Aの第一接触部23aに対して、第三電極23Bの第一接触部23aがY方向の反対方向(図4では右方)に離れているのに対し、第三電極23Aの第二接触部23bに対して、第三電極23Bの第二接触部23bはY方向(図4では左方)に離れている。また、上述したように、サンプルSが収容される第一室R1(図4には不図示)は、第一接触部23aに対してZ方向に並んでいる。
【0069】
したがって、図5に示されるように、第一室R1の、マトリクスM1における成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該第一室R1と第二室R2を介して対応した第二接触部23bの、マトリクスM2における成分をM2ijとした場合に、マトリクスM1とマトリクスM2とで、列方向Dcは平行となり、行方向Drは反平行(平行でありかつ逆向き)となる。この場合、平面視において、マトリクスM1(の各成分)とマトリクスM2(の各成分)とは、それらマトリクスM1,M2間でX方向に延びる仮想線VLに対して線対称となる。このように、本実施形態では、列方向Dcが平行であり、行方向Drが反平行であり、マトリクスM1,M2の対応する成分同士が規則的に並んでいるため、測定者は、第一室R1に対応する第二接触部23bを、容易に把握することができる。
【0070】
また、図5では、第三室R3では、第二接触部23bと重なるように試薬Iの発光領域あるいは変色領域が生じる。図5では、一例として、試薬IがECL溶液である場合について、発光領域の輝度が高いほど第二接触部23bの内側(≒発光領域)のドットパターンの目を細かく、輝度が低いほどドットパターンの目を粗く、表した。図5からわかるように、複数のサンプルSについて、酸素濃度の差が生じた場合には、図5に示されるように、第二接触部23bと重なった発光領域の輝度の差が生じるため、測定者は、各第一室R1に収容したサンプルSについて、酸素濃度の相対比較を行うことができる。また、試薬IがpH試験液である場合も同様の結果が得られる。
【0071】
さらに、測定に際し、複数の第一室R1のうち少なくともいずれか一つに、酸素濃度が既知のリファレンス液を収容してもよい。その場合、当該リファレンス液を収容した第一室R1(例えば、図5の第一室R1R)に対応した第二接触部23b(例えば、図5の第二接触部23bR)の近傍における試薬Iの輝度あるいは色を基準として、当該基準となる輝度に対する輝度の高低、あるいは当該準となる色に対する色の違い、として、他の第一室R1に収容したサンプルSの酸素濃度の、当該リファレンス液の酸素濃度に対する大小を、視覚的に判別することができる。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態によれば、複数のサンプルSの酸素濃度を同時並行的に把握することができるようになる。また、複数のサンプルS間の酸素濃度の比較や、酸素濃度が既知のリファレンス液に対応した視覚的状態(輝度や色等)との比較により、各サンプルの酸素濃度の既知の値に対する大小を把握することも可能となる。
【0073】
また、サンプルを収容する第一室R1のそれぞれに対応して酸素電極が設けられた従来の測定装置にあっては、当該第一室R1の数が増えるほど、当該酸素電極のそれぞれと電気的に接続された外部接続端子の数や当該酸素電極と外部接続端子とを電気的に接続する配線の数が増大するため、測定装置が大型化してしまう虞がある。この点、本実施形態の測定装置100B(100)によれば、外部接続端子としての端子部21a,22aは複数の第一室R1について共通とすることができ、これに伴って、当該端子部21a,22aと酸素電極としての接触部21c,22cとを電気的に接続する配線としての配線部21b,22bの数も上記従来の測定装置と比べて少なくて済むため、その分、より多くのサンプルの酸素濃度を測定可能な測定装置を、より小型に構成することができるという利点が得られる。
【0074】
[第3実施形態]
図6は、本実施形態の測定装置100C(100)の第三電極23およびその近傍における第一電極21および第二電極22を示す平面図である。第3実施形態の測定装置100C(100)は、上記第2実施形態の測定装置100Bと同様の構成を備えている。よって、本実施形態の測定装置100Cによっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
ただし、本実施形態は、第三電極23の形状および配線部23cのレイアウトが、上記第2実施形態と相違している。図6に示されるように、本実施形態でも、第三電極23の第一接触部23aと第二接触部23bとを電気的に接続する配線部23cは、面101a上で、互いに交差しない状態で平面的に配置されている。ただし、本実施形態では、配線部23cは、面101aのうち、第一電極21の接触部21cと第二電極22の接触部21cとの間の領域と、接触部21c,22cに対してX方向に隣接した領域と、接触部21c,22cに対してX方向の反対方向に隣接した領域と、で配策されている。このため、配線部23cの一部を、平面視において、S字状に配策することができる。この場合、複数の第三電極23について、第一接触部23aと第二接触部23bとを、同じ順に並べることができる。
【0076】
図7は、本実施形態の測定装置100Cにおける、複数の第一室R1のマトリクスM1と、複数の第二接触部23bのマトリクスM2と、を示す平面図である。図7に示されるように、本実施形態では、マトリクスM1とマトリクスM2とで、列方向Dcおよび行方向Drの双方が平行になり、互いに対応するもの同士で、マトリクスM1における第一室R1の成分の位置と、マトリクスM2におおける第二接触部23bの成分の位置とが、同じになる。この場合も、マトリクスM1,M2の対応する成分同士が規則的に並ぶため、測定者は、第一室R1に対応する第二接触部23bの位置を、容易に把握することができる。
【0077】
[第4実施形態]
図8は、本実施形態の測定装置100D(100)の平面図である。第4実施形態の測定装置100D(100)は、上記第2実施形態の測定装置100Bと同様の構成を備えている。よって、本実施形態の測定装置100Dによっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
ただし、本実施形態は、上側部材104Dの構成が、上記第2実施形態と相違している。図8に示されるように、本実施形態では、上側部材104Dにおいて第一室R1を構成する開口104aは、上記第2実施形態や第3実施形態よりも大きく開口し略四角形状の断面を有してZ方向に延びた貫通孔である。本実施形態でも、第一室R1の側面は、上側部材104Dによって形成され、第一室R1の底面は、酸素透過膜14によって形成されている。
【0079】
そして、第一室R1には、酸素透過膜14を介して、マトリクス状に並んだ複数の第二室R2が連通している。第二室R2は、それぞれ、当該第二室R2とZ方向に並んだ第一室R1内の位置Pと、酸素透過膜14を介して連通している。本実施形態では、第一室R1内の互いに異なる複数の位置PのマトリクスM1が、第一マトリクスの一例である。
【0080】
第二室R2のそれぞれには、第一室R1の位置Pに位置するサンプルSから、酸素透過膜14を介して、酸素が導入される。すなわち、第二室R2には、比較的広い第一室R1の溶存酸素の局所的な濃度に応じた酸素が導入されることになる。本実施形態では、位置Pのそれぞれに対して、第二室R2、および当該第二室R2に露出した第一接触部23aを有した第三電極23の第二接触部23bが、対応することになる。したがって、本実施形態によれば、測定者は、位置Pに対応した第二接触部23bの近傍における試薬Iの輝度や色により、サンプルSにおける溶存酸素濃度の分布を測定することができる。
【0081】
複数の位置PのマトリクスM1と、複数の第二接触部23bのマトリクスM2とは、上記実施形態における第二室R2のマトリクスM1および第二接触部23bのマトリクスM2と同様に設定することができる。すなわち、位置Pの、マトリクスM1における成分をM1ijとし(ここに、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)、当該位置Pと第二室R2を介して対応した第二接触部23bの、マトリクスM2における成分をM2ijとした場合に、マトリクスM1とマトリクスM2とで、列方向Dcを平行とし、行方向Drを反平行(第2実施形態と同様)または平行(第3実施形態と同様)とすればよい。これにより、測定者は、各位置Pに対応する第二接触部23bを、容易に把握することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0083】
例えば、第一マトリクスと第二マトリクスとでは、行方向が平行で、列方向が平行または反平行であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…筐体
11…第一部位
12…第二部位
13…第三部位
14…酸素透過膜
15…蓋部材
16…壁
21…第一電極
21a…端子部
21b…配線部
21c…接触部
22…第二電極
22a…端子部
22b…配線部
22c…接触部
23,23A,23B…第三電極
23a…第一接触部
23b,23bR…第二接触部
23c…配線部
30…電圧源
100,100A~100D…測定装置
101…基板
101a…面
102…絶縁層
102a…開口
102b…開口
102c…突出部
103…中間部材
103a…開口
103b1…スリット(エア抜き孔)
103b2…スリット(エア抜き孔)
103c…開口
103d…スリット(エア抜き孔)
104,104D…上側部材
104a…開口
Dc…列方向
Dr…行方向
E…電解液
g1,g2…隙間
I…試薬
M1…マトリクス(第一マトリクス)
M2…マトリクス(第二マトリクス)
P…位置
R1,R1R…第一室
R2…第二室
R3…第三室
S…サンプル
X…方向
Y…方向
Z…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8