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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121501
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230824BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230824BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230824BHJP
   H02J 9/04 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J13/00 311S
H02J9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024873
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今枝 弘典
(72)【発明者】
【氏名】宮地 慶
(72)【発明者】
【氏名】山田 琢寛
【テーマコード(参考)】
5G015
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G015FA02
5G015FA13
5G015GA08
5G015GB01
5G015JA05
5G015JA25
5G015JA32
5G015JA47
5G015JA53
5G015JA55
5G015JA59
5G064AA04
5G064AC10
5G064CB07
5G064CB11
5G064CB14
5G064DA03
5G066AA09
5G066DA06
5G066HA03
5G066HA06
5G066HA11
5G066HA13
5G066HA24
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
5G066LA02
5G066LA04
5G066LA08
(57)【要約】
【課題】蓄電装置を有効に活用しつつ、全停電状態からの復帰時の突入電流を抑制するようにした電力供給システムを提供すること。
【解決手段】本開示技術では、複数の需要家4、40を含む需要家群3へ電力を供給するシステムにおいて、需要家群全体への系統からの電力供給を遮断する遮断器2と、需要家群を複数のブロックに分割したブロックごとに設けられ、系統から当該ブロック内の需要家群への電力供給のオンオフを切り換える開閉器12と、ブロックの1つに設けられた蓄電装置5と、蓄電装置および需要家群の上位側にそれぞれ設けられた変圧器13、23と、全停電状態からの復帰動作を制御する復帰制御部7とを有しており、復帰制御部は、ソフトスタートを行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家を含む需要家群への電力供給システムであって、
前記需要家群への系統からの電力供給を遮断する遮断器と、
前記需要家群を複数のブロックに分割したブロックごとに設けられ、系統から当該ブロック内の需要家群への電力供給のオンオフを切り換える開閉器と、
前記ブロックの1つに設けられた蓄電装置と、
前記蓄電装置および前記需要家群の上位側にそれぞれ設けられた変圧器と、
全停電状態からの復帰動作を制御する復帰制御部とを有し、
前記復帰制御部は、
前記遮断器を遮断状態にしたまま、各前記開閉器をいずれもオン状態として、
前記蓄電装置の出力電圧を、あらかじめ定めた立ち上げ時間を掛けて立ち上げるソフトスタートを行うものである電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給システムであって、
前記遮断器として、
通常時に前記複数のブロックのうち第1群に属するものに電力を供給する第1遮断器と、
通常時に前記複数のブロックのうち第2群に属するものに電力を供給する第2遮断器とを有し、
前記第1群に属するブロックと前記第2群に属するブロックとの間に設けられ通常時にはオフ状態とされる分離開閉器を有し、
前記蓄電装置は前記第1群に属するブロックの1つに設けられており、
前記復帰制御部は、
前記第1群に属するブロックを対象として前記ソフトスタートを行い、
前記ソフトスタートの後で、前記第2遮断器を遮断状態にしたまま、前記分離開閉器をオン状態とすることにより前記第2群に属するブロックへの区間拡大を行う機能を有するものである電力供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力供給システムであって、前記区間拡大では、
前記第2群中の前記開閉器を、時間差をおいて順次オンさせていく電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の需要家群に対する電力の供給を、大規模な電源系統から行うばかりでなく、蓄電池等の分散型エネルギーを配置したマイクログリッドにより行うことも行われている。特許文献1の電力管理システムは、停電時に交流電圧を第1の配電系統に供給する主分散電源と、創エネ機器を含む複数の分散電源とが設置されたものである。同文献のシステムはさらに、情報収集部と、発電電力予測部と、消費電力予測部と、運転計画作成部とを備えている。これにより、系統からの送電が途絶えているエリアに対する主分散電源からの電力供給を適切に運用することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6591133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術は、主分散電源からの電力供給を立ち上げた後の運用を対象とするものである。しかしながら、停電状態にて主分散電源からの電力供給を立ち上げるときのことについては記載がない。このため、電力供給の開始時に発生しうる突入電流については何らの解決策も提供していない。したがって、蓄電電力の供給を開始するときに、突入電流の発生により一瞬ではあるが大電流が流れることがあった。このためリレートリップによりシステムが停止することがあると考えられる。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、蓄電装置を有効に活用しつつ、全停電状態からの復帰時の突入電流を抑制するようにした電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電力供給システムは、複数の需要家を含む需要家群へ電力を供給するシステムであって、需要家群全体への系統からの電力供給を遮断する遮断器と、需要家群を複数のブロックに分割したブロックごとに設けられ、系統から当該ブロック内の需要家群への電力供給のオンオフを切り換える開閉器と、ブロックの1つに設けられた蓄電装置と、蓄電装置および需要家群の上位側にそれぞれ設けられた変圧器と、全停電状態からの復帰動作を制御する復帰制御部とを有し、復帰制御部は、遮断器を遮断状態にしたまま、各開閉器をいずれもオン状態として、蓄電装置の出力電圧を、あらかじめ定めた立ち上げ時間を掛けて立ち上げるソフトスタートを行うものである。
【0007】
上記態様における電力供給システムでは、復帰動作を、各開閉器をいずれもオン状態として蓄電装置をソフトスタートさせるソフトスタート動作により行う。これにより、各変圧器への印加電圧が急激に立ち上がることを防止し、突入電流を抑制しつつ、需要家群全体への電力供給を、蓄電装置の蓄電電力により一斉に開始する。
【0008】
上記態様の電力供給システムはさらに、遮断器として、通常時に複数のブロックのうち第1群に属するものに電力を供給する第1遮断器と、通常時に複数のブロックのうち第2群に属するものに電力を供給する第2遮断器とを有し、第1群に属するブロックと第2群に属するブロックとの間に設けられ通常時にはオフ状態とされる分離開閉器を有し、蓄電装置は第1群に属するブロックの1つに設けられており、復帰制御部は、第1群に属するブロックを対象としてソフトスタートを行い、ソフトスタートの後で、第2遮断器を遮断状態にしたまま、分離開閉器をオン状態とすることにより第2群に属するブロックへの区間拡大を行う機能を有するシステムとすることもできる。このようにすると、第1群の中にある蓄電装置の蓄電電力を用いて、隣の第2群の需要家群へも電力を供給することができる。
【0009】
さらに、区間拡大では、第2群中の開閉器を、時間差をおいて順次オンさせていくことが望ましい。このようにすると、区間拡大動作時における突入電流が1ブロック分ずつ別々のタイミングで発生する。このため、複数のブロックの突入電流が重なって同時に発生することがない。したがって電流の瞬間値はそれほど大きなものとはならないので、リレートリップが起こりにくい。
【発明の効果】
【0010】
本開示技術によれば、蓄電装置を有効に活用しつつ、全停電状態からの復帰時の突入電流を抑制するようにした電力供給システムが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態における需要家群を示す模式図である。
図2】需要家群のブロック構成を示す模式図である。
図3】全停電状態を示す模式図である。
図4】ソフトスタート動作を行うときの状態を示す模式図である。
図5】ソフトスタートによる蓄電装置の出力電圧の立ち上げを示すグラフである。
図6】ソフトスタートを行ったときの電流値の変化を示すグラフである。
図7】区間拡大動作を行う態様の需要家群のブロック構成を示す模式図である。
図8】区間拡大動作を開始する前の時点での状態を示す模式図である。
図9】区間拡大動作を行っている状態を示す模式図(その1)である。
図10】区間拡大動作を行っている状態を示す模式図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、図1のような電力供給システム10を対象とする。電力供給システム10は、系統線1から遮断器2を介して電力供給を受ける需要家群3を対象とする。遮断器2は、系統線1からの電力供給を遮断する機能を有するものである。
【0013】
需要家群3には、複数の需要家4、40が含まれている。需要家4は、一般家庭等の比較的小規模な需要家である。需要家40は、工場、学校、病院等の比較的大規模な需要家である。遮断器2の下位には、需要家4、40の他に蓄電器5が配置されている。さらに太陽光発電装置その他の小規模発電装置が配置されていてもよい。以下の説明で需要家群3というときは、蓄電器5、および存在する場合には小規模発電装置もその中に含むものとする。
【0014】
需要家4、40における電力需要は、系統線1からの電力供給により賄われる他に、蓄電器5からの放電によっても賄われる。蓄電器5の充電は、深夜のような電気代が安い時間帯に系統線1からの電力供給により行われる。小規模発電装置を持つ需要家群3の場合には小規模発電装置の発電電力も蓄電器5の充電に充てることができる。本開示技術では、需要家群3において全停電が起こった後の回復時の動作を対象とする。
【0015】
需要家群3における系統線1からの配電系統の概要は、図2に示されるようになっている。需要家4、40は、遮断器2より下位の主高圧線11に、変圧器13を介して接続されている。1つの変圧器13の下位には、1つの大規模需要家40、または複数の小規模需要家4が存在している。各変圧器13の容量は同一でなくてもよい。蓄電器5は、遮断器2より下位の主高圧線11に、変圧器23を介して接続されている。変圧器23の下位には、蓄電器5のみが存在しており需要家4、40は存在していない。変圧器23の容量がいずれかの変圧器13の容量と同一であってもよい。変圧器13および変圧器23は、需要家群3における主要なインダクタンス負荷である。
【0016】
遮断器2より下位の主高圧線11上の複数箇所に、区間開閉器12が配置されている。主高圧線11における遮断器2から最初の区間開閉器12までの範囲、および区間開閉器12からその隣の区間開閉器12までの範囲をそれぞれ「区間」という。需要家群3は、区間開閉器12により複数のブロック9に分割されている。需要家4、40、および蓄電器5のうち同一のブロック9に属するものは、主高圧線11における同一の区間に接続されている。区間開閉器12により、系統切替時等の供給元電源の切り替え、および、事故時における故障個所の復旧のための切り離しに対応している。
【0017】
区間開閉器12は、そのすぐ下流側のブロック9に属する需要家4、40への電力供給のオンオフを切り換える開閉器である。区間開閉器12とは別に、大規模需要家40には個別開閉器18が設けられている。蓄電器5には個別開閉器8が設けられている。個別開閉器8、18は、主高圧線11とそれぞれの変圧器13、23との間に配置されている。1つのブロック9に属するものの内訳としては、図2に示されるものと異なるブロック9があってもよい。例えば、小規模需要家4のみが属するブロック9、大規模需要家40のみが属するブロック9、蓄電器5のみが属するブロック9があってもよい。ブロック9の総数はもっと多くてもよい。
【0018】
図2に示すように、蓄電器5と変圧器23との間にはパワーコンディショナー6が配置されている。さらに、制御部7が設けられている。蓄電器5とパワーコンディショナー6とで蓄電装置を構成している。パワーコンディショナー6は、直流交流変換、周波数調整等を行うものである。制御部7は、蓄電器5およびパワーコンディショナー6を制御する制御端末である。制御部7に個別開閉器8の開閉制御機能を持たせることも可能である。あるいは図2中の制御部7とは別に制御端末(例えば後述する図7中の制御部14)を設けてそこに個別開閉器8の開閉制御機能を持たせることもできる。通常の送電状態では、遮断器2、すべての区間開閉器12、すべての個別開閉器8、18がいずれもオン状態である。需要家群3が全停電状態にあるときには図3に示すように、すべての区間開閉器12および蓄電器5の個別開閉器8がオフにされる。
【0019】
本形態では、全停電状態になり系統線1からの電力供給が回復していないときに、蓄電器5の貯蔵電力を利用して需要家群3への電力供給を行う。その蓄電器5からの電力供給の開始時にソフトスタート動作を行う。ソフトスタート動作を行う目的は、電力供給の開始時には、変圧器13、23の残留磁束等の要因による突入電流が流れる可能性があるので、これを緩和するためである。ソフトスタート動作を行う前に、需要家群3全体の送電線網の巡回視察は済まされており、異常箇所は見つからなかった、あるいはあったとしても切り離し済みとされているものとする。ソフトスタート動作は、制御部7が行う復帰動作の1つである。もう1つの復帰動作である区間拡大動作については、ソフトスタート動作の説明の後で説明する。
【0020】
[ソフトスタート動作]
ソフトスタート動作について説明する。ソフトスタート動作は、遮断器2をオフにして次の1.、2.の手順で行われる。需要家群3の電力使用機器のオンオフ状況は問わない。
1.すべての区間開閉器12および蓄電器5の個別開閉器8をいずれもオン状態にする(図4参照)。個別開閉器18については、図4中ではすべてオンにしているが、任意である。
2.蓄電器5をソフトスタートさせる。
【0021】
ソフトスタートとは、蓄電器5の貯蔵電力に基づくパワーコンディショナー6の出力交流電圧を、図5に示すようにゼロから目標電圧まで徐々に上昇させることである。これにより図6に示すように、電圧立ち上げ時に変圧器13に流れる突入電流を緩和する。ソフトスタート動作は、制御部7の制御により行われる。制御部7は、ソフトスタート動作部としての機能を有する復帰制御部でもある。
【0022】
図6は、通常状態で想定される最大負荷時の電流値が約26Aである需要家群3を想定して、立ち上げ時間を2秒に設定してソフトスタートを行った場合の電流値の変遷である。図6は3相各相のグラフを重ね書きしたものであるが、本形態としての評価上はピーク電流値にのみ着目すれば十分である。図6中のピーク電流値は約11.8Aで、これは十分に許容範囲内である。
【0023】
本発明者らが行ったシミュレーションの結果では、立ち上げ時間を0.1秒に短縮しても突入電流の緩和は十分であった。立ち上げ時間を過度に長くすることに特段の利点はないので、立ち上げ時間は0.1~10秒の範囲内に設定することが望ましい。ソフトスタート動作により、需要家群3全体に対して蓄電器5から電力供給する状態となる。以上がソフトスタート動作の説明である。
【0024】
[区間拡大動作]
区間拡大動作は、前述のソフトスタート動作が完了した後に、蓄電器5から電力供給される範囲をさらに拡大する動作である。この動作は、需要家群が複数の群に分割されている場合に適用される。この動作が適用される電力供給システムには、図7に示す需要家群が含まれている。図7の需要家群では、主高圧線11中に分離開閉器22が設けられている。図7中における分離開閉器22の左側には、図2に示した需要家群3と同じ需要家群が配置されている。以下これを第1群の需要家群3といい、図2中の遮断器2を第1遮断器2という。図7中における分離開閉器22の右側の需要家群を第2群の需要家群33という。分離開閉器22は、区間開閉器12と同様のものであるが、運用上、通常時にはオフ状態とされており特殊な場合にのみオン状態とされるものである。分離開閉器22は通常時には、第1群の需要家群3と第2群の需要家群33とを分離している。
【0025】
図7中における分離開閉器22の右側の第2群の需要家群33には、複数のブロック9が配置されている。図7では第2群に属するブロック9が3つ描かれているが、もっと多くてもよい。各ブロック9の内容は、第1群の需要家群3(図2)の場合と同じく任意である。第2群のブロック9同士の間にも区間開閉器12が配置されている。第2群の需要家群33は、通常時には第2遮断器32を介して系統線31から電力供給を受けるようになっている。図2中の系統線1と図7中の系統線31とは、別々の変電所の管轄下にあることもありうる。図7の電力供給システムには、区間開閉器12、分離開閉器22を操作する制御部14が設けられている。制御部14は、区間拡大動作に関して復帰制御部として機能する。
【0026】
上記の第1群の需要家群3と第2群の需要家群33とがいずれも全停電状態になり、そのうちの第1群の需要家群3について前述のソフトスタート動作が完了しているものとする。この状態まで分離開閉器22はオフ状態のままである。この状態から、第2群の需要家群33に対して区間拡大動作を行うことができる。区間拡大動作を開始する前の時点では、図8に示すように、第2遮断器32と分離開閉器22とがいずれもオフにされている。第2群の需要家群33の中の区間開閉器12もすべてオフにされている。この時点で第1群の需要家群3は、図4に示した状態にあり、パワーコンディショナー6の出力電圧の立ち上げも完了している。このとき図7では、分離開閉器22のすぐ左側まで、パワーコンディショナー6の出力電圧が来ている状態にある。
【0027】
制御部14に区間拡大動作の実行を指示すると、この図8の状態から、分離開閉器22がオン状態となり、図9の状態となる。これにより、第2群の需要家群33のうち一番左のブロック9に属する需要家4、40への電力供給が開始される。図9中の他のブロック9に属する需要家4、40への電力供給はこの時点ではまだ開始されない。需要家群33の電力使用機器のオンオフ状況は問わない。
【0028】
区間開閉器12として、時間差オン機能を有するものを用いることができる。その場合の区間開閉器12は、オフ状態にされていても、電圧が印加されると自動的にオン状態に転ずる。電圧が印加されてからオンするまでには一定の時間差がある。この時間差は、5~30秒の範囲内の任意の値に設定されていればよい。
【0029】
図9で分離開閉器22がオンになるとその直後に、図9中で左から一番目の区間開閉器12にも電圧がかかる。それから前述の時間差が経過した後に当該区間開閉器12が上記自動オン機能もしくは制御部14の制御によりオンとなる。これにより図10の状態となり、左から二番目のブロック9に属する需要家4、40への電力供給が新たに開始される。この要領で、第2群のブロック9が前述の時間差ごとに1つずつ、電力供給範囲に加わっていく。やがて第2群の需要家群33のすべてに、図2中の蓄電器5からの電力供給が行き渡る。これが区間拡大動作である。つまり区間拡大動作では、分離開閉器22をオンすることにより第2群の需要家群33への電力供給を開始する。区間拡大動作の開始と同時に電力が供給されるのは1つのブロック9だけであり、その後、前述の時間差をおいて電力供給範囲が1ブロックずつ拡大していく。
【0030】
区間拡大動作でも突入電流が発生する。分離開閉器22がオンになったとき、および、その後の各区間開閉器12がオンになったときである。このため、制御部14に区間拡大動作の実行を指示するか否かは、分離開閉器22や区間開閉器12がオンになったときの突入電流によってリレートリップが起こると予想されるか否かによって決定しなければならない。この判断は、蓄電器5の出力余力、需要家群33の各ブロック9の内容、分離開閉器22や区間開閉器12がオンになる時点での立ち上げ済みのブロック9による使用電流、等の要因を総合的に考慮して行う。区間拡大動作を実行してもリレートリップには至らないと判断される場合にのみ、電力供給システムの管理者が制御部14に区間拡大動作の実行を指示する。
【0031】
区間開閉器12を順次オンさせていく動作については、前述の区間開閉器12の時間差オン機能による代わりに、前述の制御部14の制御により同様のことを行うこととしてもよい。あるいは個別操作により行ってもよい。図2中の第1群の需要家群3に配置されている区間開閉器12も時間差オン機能を持つものであってもよいが、ソフトスタート動作でその機能が使用されることはない。分離開閉器22も区間開閉器12と同様の時間差オン機能を持つものであってもよいが、その場合、通常の送電時には強制的にその機能を停止させておく。
【0032】
ソフトスタート動作もしくはソフトスタート動作および区間拡大動作により蓄電器5から需要家群3、33への電力供給体制が整うと、以後、系統線1からの電力供給が回復するまでの間、需要家群3、33は、蓄電器5からの電力供給により、通常時とほぼ同様に電力を消費することができる。蓄電器5には、全停電状態になる前のもともとの蓄電残量が十分にあることが要請される。このため、通常時にて、蓄電器5の蓄電残量に下限値を設け、蓄電器5の実際の蓄電残量がその下限値を下回ることがないように運用することが望ましい。
【0033】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、蓄電装置を有する需要家群3において全停電状態となった後に、ソフトスタート動作もしくはソフトスタート動作および区間拡大動作により、蓄電装置から需要家群3、33への電力供給を開始することとしている。これにより、蓄電装置を有効に活用しつつ、全停電状態からの復帰時の突入電流を抑制するようにした電力供給システムが実現されている。
【0034】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、蓄電器5の上の個別開閉器8のオンをその自動オン機能によるようにしてもよい。図2中における蓄電器5およびパワーコンディショナー6の位置は、同図中で最も左のブロック9の中には限らない。同図中の他のブロック9の中であってもよい。
【0035】
需要家群3、33におけるブロック9の配置について、図2図7等では直列状の配置を示したが、並列配置の部分があってもよい。並列配置の部分がありかつ区間拡大動作を行う場合、互いに等位となる区間開閉器12同士で、時間差オン機能の待機時間に差を付けておくことが望ましい。パワーコンディショナー6は、同等の機能を有する他の機器で置き替えてもよい。蓄電器5の配置されているブロック9において、変圧器23の下位に蓄電器5の他に需要家4、40が存在していてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 系統線 12 区間開閉器
2 遮断器 13 変圧器
3 需要家群 14 制御部
4 需要家 22 分離開閉器
5 蓄電器 23 変圧器
7 制御部 32 遮断器
8 個別開閉器 33 需要家群
9 ブロック 40 大規模需要家
10 電力供給システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10