(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121520
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04694 20160101AFI20230824BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230824BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230824BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230824BHJP
【FI】
H01M8/04694
H01M8/04313
H01M8/249
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024900
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】川添 大輔
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB17
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA13
5H127BA28
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB41
5H127DC41
(57)【要約】
【課題】予定外の時期に燃料電池システムの発電出力が低下することを避けるための技術を提供する。
【解決手段】本開示の燃料電池システム100は、複数の燃料電池スタック12と、複数の目標運転率にて複数の燃料電池スタック12の運転を制御する制御部140と、を備え、複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に複数の燃料電池スタック12のいずれかが交換された場合、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12が複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックと、
複数の目標運転率にて前記複数の燃料電池スタックの運転を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に前記複数の燃料電池スタックのいずれかが交換された場合、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックが前記複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する、
燃料電池システム。
【請求項2】
交換後の前記燃料電池スタックに適用される前記目標運転率は、交換前の前記燃料電池スタックに適用された前記目標運転率よりも大きい、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記複数の燃料電池スタックのいずれかが前記複数の交換時期以外の時期に交換された場合、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックの前記次の交換時期が交換前の前記燃料電池スタックの前記交換時期に重なるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
交換後の前記燃料電池スタックに適用される前記目標運転率は、交換前の前記燃料電池スタックに適用された前記目標運転率よりも小さい、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記複数の燃料電池スタックのいずれかが前記複数の交換時期以外の時期に交換された場合、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックの前記次の交換時期が交換前の前記燃料電池スタックの前記交換時期の後に到来する前記交換時期に重なるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する、
請求項1又は4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記複数の燃料電池スタックのいずれかが前記複数の交換時期以外の時期に交換された場合、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックの前記次の交換時期が交換前の前記燃料電池スタックに定められた第1交換時期とは異なる第2交換時期に重なるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記複数の交換時期は、前記第1交換時期及び前記第2交換時期を含み、
前記第2交換時期は、前記第1交換時期に最も近い次の交換時期であり、
交換前の前記燃料電池スタックに定められた前記交換時期が前記第1交換時期であるとき、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックの前記次の交換時期が前記第2交換時期に重なるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する、
請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記複数の交換時期以外の時期に前記複数の燃料電池スタックのいずれかが交換された場合、前記制御部は、その交換されたタイミングで前記目標運転率を再設定する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記目標運転率を複数回再設定する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
複数の燃料電池スタックを備えた燃料電池システムの運転方法であって、
複数の目標運転率にて前記複数の燃料電池スタックの運転を制御することと、
前記複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に前記複数の燃料電池スタックのいずれかが交換された場合、交換後の前記燃料電池スタックが前記複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定することと、
を含む、燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の燃料電池スタックを備えた燃料電池システムを開示する。特許文献1には、複数の燃料電池スタックを順次交代して運転することによって、各燃料電池スタックの累積運転時間を短くし、これらの寿命を延ばすことが可能となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池スタックは、故障等の原因により、本来の交換時期以外の時期に交換されることがある。この場合、交換された燃料電池スタックの次の交換時期が問題となる。すなわち、交換された燃料電池スタックを交換前と同じペースで運転すると、再び予定外の時期に交換が必要になる。このことは、燃料電池スタックの交換作業の回数を増加させるだけでなく、予定外の時期における燃料電池システムの発電出力の低下を招く。
【0005】
本開示は、予定外の時期に燃料電池システムの発電出力が低下することを避けるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、
複数の燃料電池スタックと、
複数の目標運転率にて前記複数の燃料電池スタックの運転を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に前記複数の燃料電池スタックのいずれかが交換された場合、前記制御部は、交換後の前記燃料電池スタックが前記複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定する。
【0007】
別の側面において、本開示は、
複数の燃料電池スタックを備えた燃料電池システムの運転方法であって、
複数の目標運転率にて前記複数の燃料電池スタックの運転を制御することと、
前記複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に前記複数の燃料電池スタックのいずれかが交換された場合、交換後の前記燃料電池スタックが前記複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の前記燃料電池スタックに対する前記目標運転率を再設定することと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、予定外の時期に燃料電池システムの発電出力が低下することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における燃料電池システムの構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態1における燃料電池システムの電気回路の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態1における発電ユニットの構成を示すブロック図
【
図4】燃料電池スタックの使用可能期間と運転率との関係を示すグラフ
【
図5A】予定外の時期に交換された燃料電池スタックの運転パターンを説明するグラフ
【
図5B】予定外の時期に交換された燃料電池スタックの他の運転パターンを説明するグラフ
【
図5C】予定外の時期に交換された燃料電池スタックのさらに他の運転パターンを説明するグラフ
【
図5D】予定外の時期に交換された燃料電池スタックのさらに他の運転パターンを説明するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
本発明者が本開示に想到するに至った当時、複数の燃料電池スタックを順次交代して運転することによって、各燃料電池スタックの累積運転時間を短くし、これらの寿命を延ばすことが行われていた。
【0011】
複数の燃料電池スタックを順次交代して運転すると、複数の燃料電池スタックのそれぞれの累積運転時間が互いに略一致し、燃料電池スタックの劣化が均等に進む。この場合、同時期に集中して全ての燃料電池スタックが交換時期を迎えるので、燃料電池スタックの交換作業時における燃料電池システムの発電出力が大幅に低下する。場合によっては、燃料電池システムを完全に停止させる必要がある。
【0012】
燃料電池システムの発電出力が大幅に低下したりゼロになったりすることは、燃料電池システムの利便性を大幅に損なう可能性がある。そのため、燃料電池スタックの交換時における発電出力の低下を抑制するための技術が求められる。
【0013】
この課題を解決するために、本発明者は、複数の目標運転率にて複数の燃料電池スタックの運転を制御することを提案する。複数の目標運転率にて複数の燃料電池スタックを運転させると、複数の燃料電池スタックが互いに異なる時期に寿命を迎える。つまり、燃料電池スタックの交換時期が同時期に集中することを回避できる。その結果、燃料電池スタックの交換時における燃料電池システムの発電出力の低下を抑制することができる。
【0014】
ただし、故障等の原因により、燃料電池スタックを本来の交換時期以外の時期に交換した場合、交換された燃料電池スタックの次の交換時期が問題となる。交換された燃料電池スタックを交換前と同じペースで使用すると、再び予定外の時期に交換が必要になる。このことは、燃料電池スタックの交換作業の回数を増加させるだけでなく、予定外の時期における燃料電池システムの発電出力の低下を招く。あるいは、使用可能期間が終了していないにもかかわらず、該当する燃料電池スタックが本来の交換時期に再び交換されるおそれもある。
【0015】
本発明者は、このような課題を発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、
図1から
図5Dを用いて、実施の形態1を説明する。
【0019】
[1-1.構成]
[1-1-1.燃料電池システムの構成]
図1は、実施の形態1の燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。燃料電池システム100は、複数の発電ユニット101aから101c、燃料ガス供給経路111、及び、ガス排出経路112を備える。
【0020】
複数の発電ユニット101aから101cは、第1発電ユニット101a、第2発電ユニット101b、及び、第3発電ユニット101cを含む。発電ユニットの数は特に限定されない。発電ユニットの数は、2であってもよく、4以上であってもよい。
【0021】
燃料電池システム100は、複数の燃料電池スタック12を含む。詳細には、発電ユニット101aから101cのそれぞれが燃料電池スタック12を含む。
図1の例では、第1発電ユニット101aは、燃料電池スタック12aを含む。第2発電ユニット101bは、燃料電池スタック12bを含む。第3発電ユニット101cは、燃料電池スタック12cを含む。複数の発電ユニット101aから101cのそれぞれが複数の燃料電池スタック12を有していてもよい。すなわち、第1発電ユニット101aは、複数の燃料電池スタック12を有していてもよく、燃料電池スタック12を1台のみ有していてもよい。第2発電ユニット101bは、複数の燃料電池スタック12を有していてもよく、燃料電池スタック12を1台のみ有していてもよい。第3発電ユニット101cは、複数の燃料電池スタック12を有していてもよく、燃料電池スタック12を1台のみ有していてもよい。
【0022】
燃料電池スタック12a,12b及び12cは、それぞれ、特定の目標運転率Rを達成するように制御される。例えば、燃料電池スタック12aは、第1の目標運転率R1を達成するように制御される。燃料電池スタック12bは、第2の目標運転率R2を達成するように制御される。燃料電池スタック12cは、第3の目標運転率R3を達成するように制御される。
【0023】
目標運転率Rは、燃料電池システム100の累積運転時間に対する各燃料電池スタック12の累積運転時間の比率の目標値を表す。例えば、燃料電池システム100の累積運転時間の半分の累積運転時間を目標として燃料電池スタック12の運転が制御されるとき、「0.5」の目標運転率が設定される。
【0024】
複数の目標運転率は、それぞれ、複数の交換時期に対応している。例えば、第1の目標運転率R1を達成するように燃料電池スタック12aの運転を制御すると、燃料電池スタック12aの交換時期は、燃料電池システム100の運用開始時点から5年後である。第1の目標運転率R1は、5年後の交換時期に対応している。燃料電池スタック12の交換時期は、燃料電池システム100の累積運転時間に応じて変化しうる。ただし、工場のような設備で燃料電池システム100を運用する場合、工場の生産計画に基づき、所定期間(例えば5年間)における燃料電池システム100の累積運転時間を予測できる。この場合、燃料電池スタック12の交換時期も予測できる。
【0025】
第1発電ユニット101aは、電装部品群13をさらに含む。電装部品群13は、制御基板及び通信装置を含む。制御基板は、第1発電ユニット101aの各種の機器を制御するための回路基板である。通信装置は、制御基板と必要なデータ通信を行うため装置である。
【0026】
同様に、第2発電ユニット101bは、電装部品群13をさらに含む。第3発電ユニット101cは、電装部品群13をさらに含む。
【0027】
第1発電ユニット101a、第2発電ユニット101b及び第3発電ユニット101cは、互いに同じ構成を有する。燃料電池スタック12の種類は1種類である。このような構成によれば、発電ユニットの数の増減、及び、燃料電池スタック12の数の増減によって、使用者のニーズ、特に要求電力に応じた燃料電池システム100を迅速かつ安価に提供できる。また、燃料電池スタック12の交換が容易である。
【0028】
本実施の形態では、発電ユニットの数が「3」である。
図1では、1つの発電ユニットに対して1つの電装部品群13が設けられている。しかし、このことは必須ではない。複数の燃料電池スタック12に対して1つの電装部品群13が設けられていてもよい。電装部品群13は、燃料電池スタック12のそれぞれに対して設けられていてもよい。燃料電池システム100は、ハードウェアの交換を伴うことなく、発電ユニットの組み換えが可能に構成されていてもよい。
【0029】
燃料ガス供給経路111は、燃料電池システム100の外部に設置された水素含有ガス供給源110から複数の燃料電池スタック12に水素含有ガスを導く。ガス排出経路112は、複数の燃料電池スタック12から排出されたオフガスを燃料電池システム100の外部に導く。水素含有ガスは、例えば、水素ガスの体積含有率が99%以上の純水素ガスである。水素含有ガスは、水蒸気改質反応によって水及び炭化水素から生成された改質ガスであってもよい。
【0030】
図2は、燃料電池システム100の電気回路の構成を示すブロック図である。燃料電池システム100は、制御部140及び通信回路141を備える。制御部140は、通信回路141を通じて、発電ユニット101aから101cの電装部品群13と通信を行う。これにより、制御部140は、発電ユニット101aから101cにおける各機器を制御できる。
【0031】
制御部140は、複数の目標運転率にて複数の燃料電池スタック12の運転を制御する。本実施の形態において、制御部140は、燃料電池スタック12のそれぞれが互いに異なる複数の目標運転率R1,R2及びR3のそれぞれを達成するように、燃料電池スタック12の運転を制御する。発電ユニット101aから101cのそれぞれに互いに異なる目標運転率R1,R2及びR3が割り当てられる。複数の目標運転率R1,R2及びR3は、第1発電ユニット101aのための第1の目標運転率R1、第2発電ユニット101bのための第2の目標運転率R2、及び、第3発電ユニット101cのための第3の目標運転率R3を含む。
【0032】
「目標運転率が割り当てられる」及び「目標運転率を設定する」の用語は、例えば、制御部140のプロセッサ(CPU)が目標運転率をレジスタ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気記憶装置等に記憶させることを意味する。目標運転率に関する情報は、発電ユニットに送信されてもよく、されなくてもよい。
【0033】
燃料電池スタック12の電圧は、累積使用時間に応じて低下する。電圧が閾値を下回った場合、該当する燃料電池スタック12を交換する必要がある。したがって、燃料電池スタック12の使用可能期間(単位:年)は、燃料電池スタック12の運転可能時間と単位期間あたりの発電時間とに応じて決まる。例えば、燃料電池スタック12の運転可能時間が60000時間であり、1日あたりの平均発電時間が12時間であるとき、燃料電池スタック12の使用可能期間は、60000/(12×365)≒13.7(年)である。
【0034】
複数の燃料電池スタック12の間で運転可能時間に差は無い。そのため、互いに異なる複数の目標運転率が設定されることによって、燃料電池スタック12の使用可能期間に差が生じる。すなわち、第1発電ユニット101aに属する燃料電池スタック12aの交換時期、第2ユニット101bに属する燃料電池スタック12bの交換時期、及び、第3ユニット101cに属する燃料電池スタック12cの交換時期は、互いに異なる。例えば、第1発電ユニット101aに属する燃料電池スタック12の最初の交換時期は、燃料電池システム100の運用開始時点から5年後である。第2ユニット101bに属する燃料電池スタック12bの最初の交換時期は、燃料電池システム100の運用開始時点から10年後である。第3ユニット101cに属する燃料電池スタック12cの最初の交換時期は、燃料電池システム100の運用開始時点から15年後である。本実施の形態によれば、燃料電池スタック12の交換時期が同時期に集中することを回避できる。使用可能期間が経過した燃料電池スタック12の交換作業を進めながら、残りの燃料電池スタック12の運転を行うことができる。したがって、燃料電池スタック12の交換時における燃料電池システム100の発電出力の低下を抑制することができる。
【0035】
「交換時期」は、一定の幅を持った期間でありうる。例えば、燃料電池システム100の運用開始時点から5年後に第1発電ユニット101aに属する燃料電池スタック12の交換が必要である場合、交換時期は、5年±6ヵ月でありうる。
【0036】
燃料電池システム100において、複数の燃料電池スタック12は、同一の目標運転率を達成するように制御される2台以上の燃料電池スタック12を含んでいてもよい。例えば、第1発電ユニット101aに複数の燃料電池スタック12が含まれるとき、これらの複数の燃料電池スタック12の目標運転率は同一でありうる。同様に、第2発電ユニット101bに複数の燃料電池スタック12が含まれるとき、これらの複数の燃料電池スタック12の目標運転率は同一でありうる。第3発電ユニット101cに複数の燃料電池スタック12が含まれるとき、これらの複数の燃料電池スタック12の目標運転率は同一でありうる。このような構成によれば、同時期に2台以上の燃料電池スタック12の交換時期が到来するので、燃料電池スタック12の交換作業の回数を減らすことができる。
【0037】
燃料電池システム100は、送電回路130をさらに備える。送電回路130を通じて、燃料電池システム100によって生成された電力が燃料電池システム100の外部の電力負荷131へと供給される。
【0038】
[1-1-2.発電ユニットの構成]
図3は、第1発電ユニット101aの構成を示すブロック図である。第2発電ユニット101b及び第3発電ユニット101cも第1発電ユニット101aと同じ構成を有する。第1発電ユニット101aに関する以下の説明は、第2発電ユニット101b及び第3発電ユニット101cにも適用される。
【0039】
第1発電ユニット101aは、燃料電池スタック12、燃料ガス圧力調整部14、燃料ガス供給経路15、エジェクタ16、混合ガス供給経路17、未反応燃料ガス循環経路18、酸化剤ガス供給部19、酸化剤ガス供給経路20、スタック送電回路132、及び、電装部品群13を備える。
【0040】
燃料電池スタック12は、燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電する。燃料ガスとして、水素含有ガスが用いられる。酸化剤ガスとして、空気が用いられる。燃料電池スタック12は、アノード121、カソード122及び電解質膜123を備える。アノード121には、水素含有ガスが供給される。カソード122には、空気が供給される。電解質膜123は、プロトンの移動を許容するプロトン伝導膜である。燃料電池スタック12は、例えば、固体高分子型燃料電池である。
【0041】
燃料ガス圧力調整部14は、燃料ガス供給経路111と燃料ガス供給経路15とに接続されており、燃料ガス供給経路15を流れる水素含有ガスの圧力を調整する。水素含有ガスは、燃料ガス供給経路111を通じて、水素含有ガス供給源110(
図1)から第1発電ユニット101aに供給される。
【0042】
未反応燃料ガス循環経路18は、燃料電池スタック12のアノード121の出口とエジェクタ16とを接続している。未反応燃料ガス循環経路18を通じて、エジェクタ16に未反応混合ガスが供給される。未反応混合ガスは、アノード121から排出された未反応のガスである。燃料ガス供給経路15を通じて、エジェクタ16に水素含有ガスが供給される。エジェクタ16において、未反応混合ガスと水素含有ガスとが混合され、混合ガスが生成される。
【0043】
混合ガス供給経路17は、エジェクタ16の出口とアノード121の入口とを接続している。混合ガス供給経路17を通じて、燃料電池スタック12のアノード121に混合ガスが供給される。
【0044】
燃料ガス圧力調整部14において水素含有ガスの圧力を調整することによって、混合ガス供給経路17における混合ガスの圧力を調整することができる。これにより、燃料電池スタック12のアノード121における混合ガスの圧力を調整することができる。
【0045】
エジェクタ16は、燃料ガス供給経路15と未反応燃料ガス循環経路18との合流部に配置されている。
【0046】
酸化剤ガス供給部19は、燃料電池スタック12のカソード122に空気を供給する。酸化剤ガス供給部19は、例えば、空気ブロワを含む。
【0047】
酸化剤ガス供給経路20は、酸化剤ガス供給部19と燃料電池スタック12のカソード122の入口とを接続している。酸化剤ガス供給経路20を通じて、燃料電池スタック12のカソード122に空気が供給される。
【0048】
ガス排出経路112は、燃料電池スタック12のカソード122から排出された空気を第1発電ユニット101aの外部へと導く経路である。
【0049】
電装部品群13は、制御部(図示せず)を含み、第1発電ユニット101a及び第1発電ユニット101aに搭載された各種の機器を制御する。この制御部は、制御機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、演算処理部(図示せず)と制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。演算処理部としては、CPUが例示される。記憶部としては、メモリが例示される。
【0050】
電装部品群13は、通信回路141を通じて、燃料電池システム100の制御部140と通信可能である。制御部140からの指示に基づいて、第1発電ユニット101a及び第1発電ユニット101aに搭載された各種の機器が制御される。各種の機器には、弁、ポンプ、電気ヒータなどが含まれる。
【0051】
アノード121のガス拡散の性能などから、アノード121に供給された混合ガスを全て発電に使用することは困難である。発電に使用されなかった未反応混合ガスがアノード121から排出される。未反応混合ガスを廃棄すると、未反応混合ガスに含まれた水素ガスが無駄になり、燃料電池システム100の効率が低下する。本実施の形態によれば、エジェクタ16において、未反応混合ガスと水素含有ガスとが混合され、混合ガスが得られる。混合ガスが燃料電池スタック12のアノード121に供給される。これにより、水素ガスの無駄を減少させ、第1発電ユニット101aの高効率化を図ることができる。
【0052】
燃料電池スタック12において生成された電力は、電装部品群13によって直流から交流に変換され、送電回路130を通じて電力負荷131に送られる。
【0053】
燃料電池システム100においては、制御部140から送信された指示によって、第1発電ユニット101aの発電出力、すなわち、燃料電池スタック12の運転が制御される。これにより、燃料電池システム100の全体の発電出力が調整される。
【0054】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム100について、その動作を以下説明する。
【0055】
制御部140は、発電を開始すべき旨の発電指示があるまで待機する。このような指示は、使用者による入力によるものであってもよく、タイマーの作動によるものであってもよく、制御部140と通信可能な外部機器から燃料電池システム100に向けて送信されたものであってもよい。
【0056】
発電指示を受け取ることに応じて、制御部140は、通信回路141を介して、要求された発電出力に対応する運転指示を発電ユニット101a,101b及び101cのそれぞれに対して送信する。
【0057】
上記の運転指示には、複数の目標運転率R1,R2及びR3が含まれている。複数の目標運転率R1,R2及びR3は、制御部140において算出されてもよく、予め定められていてもよい。
【0058】
本実施の形態において、燃料電池システム100の発電出力は、燃料電池スタック12が発電状態又は休止状態のいずれかの状態を呈することによって調整される。
【0059】
制御部140からの発電指示が各発電ユニット101a,101b及び101cに送られると、電装部品群13によって、燃料電池スタック12及び各種の機器が制御される。これにより、燃料電池スタック12が電力を生成する。
【0060】
燃料電池スタック12の電圧は、燃料電池スタック12の累積運転時間に比例して低下する。すなわち、累積運転時間に比例して燃料電池スタック12の発電能力が低下する。そのため、燃料電池スタック12の累積運転時間が燃料電池スタック12の設計上の運転可能時間を超過した時点で、燃料電池スタック12の使用可能期間が終了したと判断することができる。
【0061】
(燃料電池システム100の累積運転時間)×(目標運転率)=(燃料電池スタック12の累積発電時間)の関係が成り立つので、燃料電池スタック12の使用可能期間と目標運転率との間には反比例の関係がある。
【0062】
次に、燃料電池システム100が50台の発電ユニットを備えている場合について説明する。制御部140は、例えば、互いに異なる5種類の目標運転率を算出する。同一の目標運転率Rが適用される発電ユニットの台数が同一の台数となるように、制御部140は運転を制御する。
【0063】
制御部140は、例えば、複数の発電ユニットを5つの異なる群として認識する。第1番目から第10番目の発電ユニットは、A群に属する。第11番目から第20番目の発電ユニットは、B群に属する。第21番目から第30番目の発電ユニットは、C群に属する。第31番目から第40番目の発電ユニットは、D群に属する。第41番目から第50番目の発電ユニットは、E群に属する。制御部140は、各群に対して互いに異なる目標運転率を指示する。また、制御部140は、同一の群に属する複数の発電ユニットに対して同一の目標運転率を指示する。
【0064】
本実施の形態では、A群に対して最も高い目標運転率が指示される。B群、C群、D群の順番で目標運転率が低下する。E群に対して最も低い目標運転率が指示される。
【0065】
図4は、燃料電池スタックの使用可能期間と目標運転率との関係を示すグラフである。横軸は、燃料電池スタックの使用可能期間を表している。縦軸は、各群に割り当てられる目標運転率を表している。グラフは、燃料電池スタックの使用可能期間と目標運転率とが反比例の関係にあることを示している。
【0066】
目標運転率は、燃料電池システム100の実運転率αに基づいて決定され、各群に対して割り当てられる。実運転率αは、燃料電池システム100の運用開始時点から現在までの実際の運転率を表す。例えば、運用開始時点から1年後において、燃料電池システム100の累積運転時間が4380時間であるとき、実運転率αは、α=100×4380/(24×365)=50(%)の計算によって求められる。この計算は、燃料電池システム100の運用開始時点で実施することができない。燃料電池システム100の運用開始時点から所定期間(例えば3ヵ月間)にわたって、目標運転率として、燃料電池システム100の運転計画から算出された値を使用することができる。
【0067】
A群に対して、最も高い目標運転率が割り当てられる。
図4の例によれば、連続運転を表す「100%」の目標運転率がA群に割り当てられる。これにより、A群に属する燃料電池スタックの使用可能期間の終了時期が決まる。先に説明した通り、目標運転率が決まれば燃料電池スタック12の使用可能期間が決まるためである。「連続運転」は、設計上、燃料電池スタックに必要とされる休止時間を除き、所定期間(例えば24時間)あたりの運転時間が最大であることを意味する。
【0068】
C群の目標運転率には、実運転率αの値が割り当てられる。これにより、C群に属する燃料電池スタック12の使用可能期間の終了時期が決まる。最も小さい目標運転率がE群に割り当てられる。E群の使用可能期間の終了時期は、A群の使用可能期間の終了時期とC群の使用可能期間の終了時期との間隔がC群の使用可能期間の終了時期とE群の使用可能期間の終了時期との間隔に一致するように決定される。
【0069】
E群の目標運転率は、近似的に下記式に基づいて算出される。
【0070】
(C群の目標運転率)=[(A群の目標運転率)+(E群の目標運転率)]/2
【0071】
燃料電池システム100の実運転率αの変動に伴って各群の目標運転率が更新されてもよい。すなわち、制御部140は、燃料電池システム100の実運転率αの変動に伴い、各群の目標運転率を随時算出する。新たに算出された目標運転率は、制御部140から各発電ユニットに逐次送信され、更新される。これにより、制御部140が設定した目標運転率に向けて、各発電ユニットが制御される。燃料電池システム100の運用開始時点において、各群の燃料電池スタック12の交換時期は未定である。しかし、燃料電池システム100の運用開始から一定の時間(例えば1年)が経過すれば、実運転率αは一定値に収束する。したがって、各群の燃料電池スタック12の交換時期も概ね決まる。
【0072】
また、A群からE群の各群において、各発電ユニットは、順次交代で運転される。燃料電池スタックの累積運転時間が均一化されるように、制御部140において運転の調整がなされる。これにより、互いに異なる目標運転率が適用される複数の燃料電池スタック12の使用可能期間に差異を設けることができる。併せて、同一の目標運転率が適用される燃料電池スタック12の使用可能期間は概ね一致する。
【0073】
次に、燃料電池スタック12が予定外の時期に交換されたときの処理について説明する。発電ユニット及び/又は燃料電池スタック12に想定外の事象が発生し、本来の交換時期が到来する前に燃料電池スタック12の交換が必要となる場合がある。この場合、該当する燃料電池スタック12を新品のものに交換することによって、その時点までの発電履歴に起因する劣化度もリセットされる。
【0074】
このような場合においては、該当する燃料電池スタック12の劣化度がリセットされたことを制御部140が認識し、該当する燃料電池スタック12に対応する発電ユニットの運転パターンを再構築する必要がある。さもなければ、使用可能期間が終了していないにもかかわらず、該当する燃料電池スタック12が本来の交換時期に再び交換されるおそれがある。一方、該当する燃料電池スタック12を交換前と同じペースで運転すると、再び予定外の時期に交換が必要になる。予定外の時期は、A群からE群のどの群の交換時期とも重複しない。そのため、予定外の時期に燃料電池システム100の発電出力が低下するおそれがある。燃料電池スタック12の交換作業の回数も増加する。
【0075】
この課題に対処するために、本実施の形態では、本来の交換時期以外の時期に燃料電池スタック12の交換を行った段階で、制御部140は、該当する燃料電池スタック12の累積運転時間を0にリセットする。さらに、交換された燃料電池スタック12の目標運転率を再設定する。
【0076】
交換された燃料電池スタック12の目標運転率を再設定する方法は、次の通りである。
【0077】
図5Aは、予定外の時期に交換された燃料電池スタック12の運転パターンを説明するグラフである。横軸は、燃料電池システム100の運用開始時点からの経過時間を表す。縦軸は、燃料電池スタック12の累積運転時間を表す。累積運転時間は、燃料電池スタック12の劣化の度合いを表す。簡単のために、A群、B群及びC群の3つの群を示す。累積運転時間が閾値に到達すると、燃料電池スタック12の交換が必要とされる。閾値は、運転可能時間に対応する。
【0078】
図5Aに示す例において、A群の交換時期は、経過時間t1に到来する。B群の交換時期は、経過時間t2に対応する。C群の交換時期は、経過時間t3に到来する。経過時間t1に累積運転時間が運転可能時間に到達するように、A群に属する燃料電池スタック12に目標運転率R1が割り当てられている。経過時間t2に累積運転時間が運転可能時間に到達するように、B群に属する燃料電池スタック12に目標運転率R2が割り当てられている。経過時間t3に累積運転時間が運転可能時間に到達するように、C群に属する燃料電池スタック12に目標運転率R3が割り当てられている。グラフの傾きが目標運転率の大きさに対応する。
【0079】
ここで、経過時間t4において、故障等のトラブルのため、B群に属する燃料電池スタック12の1つが交換されたものと仮定する。経過時間t4は、B群に属する燃料電池スタック12の本来の交換時期である経過時間t2よりも小さい。制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間をリセットするとともに、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率R2よりも大きい目標運転率を交換後の燃料電池スタック12に適用する。
図5Aに示す例では、交換後の燃料電池スタック12に目標運転率R1が適用されている。交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間は、一点鎖線に沿って増加する。目標運転率R1で運転することによって、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間の増加速度が上がる。時間の経過とともに、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間が交換前の燃料電池スタック12の累積運転時間に追いつく。
【0080】
図5Aに示すように、交換後の燃料電池スタック12を高い目標運転率R1で運転し続けると、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が本来のB群の交換時期よりも早く到来することがある。この場合、経過時間t4’において、交換後の燃料電池スタック12の目標運転率を本来の目標運転率であるB群の目標運転率R2に再設定する。経過時間t4’は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間がB群に属する他の燃料電池スタック12の累積運転時間に追いつく時点である。これにより、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期(=B群の交換時期)に一致するので、予定外の時期に交換作業を行わずに済む。予定外の時期に燃料電池システム100の発電出力が低下することも抑制できる。また、累積運転時間が運転可能時間に達するまで該当する燃料電池スタック12を使い切ることができるので、無駄が生じない。
【0081】
以上の通り、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。これにより、上記した効果が得られる。
【0082】
複数の交換時期以外の時期に複数の燃料電池スタック12のいずれかが交換された場合、制御部140は、その交換された時点で目標運転率を再設定する。これにより、交換された燃料電池スタック12を速やかに燃料電池システム100に組み込んで運転させることができる。
【0083】
図5Aに示す例において、制御部140は、目標運転率を複数回再設定する。これにより、他の燃料電池スタック12に適用された目標運転率を交換後の燃料電池スタック12に適用することが可能となるので、要求電力を満たすように複数の燃料電池スタック12の運転を制御しやすい。
【0084】
なお、交換後の燃料電池スタック12に他の群の目標運転率を再設定することは必須ではない。例えば、必要な休止時間を除き、交換後の燃料電池スタック12が連続運転されるように、設計上許容される最大の目標運転率が交換後の燃料電池スタック12に適用されてもよい。
【0085】
図5Bは、予定外の時期に交換された燃料電池スタック12の他の運転パターンを説明するグラフである。経過時間t4において、故障等のトラブルのため、B群に属する燃料電池スタック12の1つが交換されたものと仮定する。制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間をリセットするとともに、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率R2を交換後の燃料電池スタック12にも適用する。交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間は、一点鎖線に沿って増加する。
【0086】
交換後の燃料電池スタック12をB群の目標運転率R2で運転し続けると、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期は、経過時間t2と経過時間t3との間に到来する。したがって、経過時間t4’において、交換後の燃料電池スタック12の目標運転率を減少させる。経過時間t4’は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間がC群の累積運転時間に追いつく時点である。
【0087】
例えば、交換後の燃料電池スタック12の目標運転率を目標運転率R3に再設定する。これにより、経過時間t4’から経過時間t3まで、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間がC群の他の燃料電池スタック12と同じ速度で増加し、交換後の燃料電池スタック12が経過時間t3で寿命を迎える。交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期がC群の交換時期に一致するので、予定外の時期に交換作業を行わずに済む。累積運転時間が運転可能時間に達するまで該当する燃料電池スタック12を使い切ることができるので、無駄が生じない。
【0088】
交換後の燃料電池スタック12に適用される目標運転率R3は、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率R2よりも小さい。目標運転率を最大限に増加させたとしても、元の交換時期までに運転可能時間を消費することが難しいことがある。そのような場合、交換前の目標運転率よりも小さい目標運転率を設定することによって、上記した効果が容易に得られる。
【0089】
図5Bに示す例において、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期の後に到来する交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0090】
また、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12に定められた第1交換時期とは異なる第2交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0091】
第1交換時期は、例えば、経過時間t2に対応する交換時期である。第2交換時期は、例えば、経過時間t3に対応する交換時期である。
【0092】
また、第2交換時期は、第1交換時期に最も近い次の交換時期でありうる。交換前の燃料電池スタック12に定められた交換時期が第1交換時期であるとき、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が第2交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0093】
図5Cは、予定外の時期に交換された燃料電池スタック12の他の運転パターンを説明するグラフである。経過時間t4において、故障等のトラブルのため、B群に属する燃料電池スタック12の1つが交換されたものと仮定する。制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間をリセットするとともに、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率R2よりも小さい目標運転率R2’を交換後の燃料電池スタック12に適用する。交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間は、一点鎖線に沿って増加する。交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期は、経過時間t3に到来するので、C群の交換時期に重なる。
【0094】
目標運転率R2’は、経過時間t4と経過時間t3との間の時間の長さ、及び、燃料電池スタック12の運転可能時間から算出されうる。例えば、経過時間t4と経過時間t3との間の時間の長さが13年間であり、燃料電池スタック12の運転可能時間が60000時間であるとき、目標運転率R2’は、R2’=100×60000/(13×24×365)≒52.7(%)の計算によって求められる。
【0095】
図5A及び
図5Bに示す例によれば、各群の目標運転率を交換後の燃料電池スタック12に設定するので、設定された目標運転率を達成するように燃料電池スタック12の運転を制御しやすい。
図5Cに示す例によれば、目標運転率の再設定の処理が1回で済む。
【0096】
図5Dは、予定外の時期に交換された燃料電池スタック12の他の運転パターンを説明するグラフである。経過時間t4において、故障等のトラブルのため、B群に属する燃料電池スタック12の1つが交換されたものと仮定する。制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間をリセットするとともに、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率R2よりも大きい目標運転率R1を交換後の燃料電池スタック12に適用する。交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間は、一点鎖線に沿って増加する。
【0097】
目標運転率R1は、設計上許容される最大の目標運転率であってもよい。目標運転率R1で該当する燃料電池スタック12を運転したとしても、該当する燃料電池スタック12の累積運転時間は、B群の交換時期よりも遅い時期に閾値に達する。したがって、経過時間t4’において、交換後の燃料電池スタック12の目標運転率を減少させる。経過時間t4’は、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間がC群の累積運転時間に追いつく時点である。
【0098】
例えば、交換後の燃料電池スタック12の目標運転率をC群の目標運転率R3に再設定する。これにより、経過時間t4’から経過時間t3まで、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間がC群の他の燃料電池スタック12と同じ速度で増加し、交換後の燃料電池スタック12が経過時間t3で寿命を迎える。交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期がC群の交換時期に一致するので、予定外の時期に交換作業を行わずに済む。累積運転時間が運転可能時間に達するまで該当する燃料電池スタック12を使い切ることができるので、無駄が生じない。
【0099】
図5Dに示す例によれば、交換前の目標運転率R2よりも大きい目標運転率R1と、交換前の目標運転率R2よりも小さい目標運転率R3とが順番に該当する燃料電池スタック12に適用される。
【0100】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、複数の目標運転率に対応する複数の交換時期以外の時期に複数の燃料電池スタック12のいずれかが交換された場合、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12が複数の交換時期のいずれかに次の交換時期を迎えるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定する。
【0101】
これにより、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が他の複数の交換時期のいずれかに一致するので、予定外の時期に交換作業を行わずに済む。予定外の時期に燃料電池システム100の発電出力が低下することも抑制できる。また、累積運転時間が運転可能時間に達するまで該当する燃料電池スタック12を使い切ることができるので、無駄が生じない。
【0102】
また、本実施の形態において、交換後の燃料電池スタック12に適用される目標運転率は、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率よりも大きくてもよい。この場合、時間の経過とともに、交換後の燃料電池スタック12の累積運転時間が交換前の燃料電池スタック12の累積運転時間に追いつく。これにより、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期(=B群の交換時期)に一致する。
【0103】
また、本実施の形態において、複数の燃料電池スタック12のいずれかが複数の交換時期以外の時期に交換された場合、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定してもよい。これにより、上記した効果が得られる。
【0104】
また、本実施の形態において、交換後の燃料電池スタック12に適用される目標運転率は、交換前の燃料電池スタック12に適用された目標運転率よりも小さくてもよい。これにより、交換された燃料電池スタック12を速やかに燃料電池システム100に組み込んで運転させることができる。目標運転率を最大限に増加させたとしても、元の交換時期までに運転可能時間を消費することが難しいことがある。そのような場合、交換前の目標運転率よりも小さい目標運転率を設定することによって、上記した効果が容易に得られる。
【0105】
また、本実施の形態において、複数の燃料電池スタック12のいずれかが複数の交換時期以外の時期に交換された場合、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12の交換時期の後に到来する交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定してもよい。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0106】
また、本実施の形態において、複数の燃料電池スタック12のいずれかが複数の交換時期以外の時期に交換された場合、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が交換前の燃料電池スタック12に定められた第1交換時期とは異なる第2交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定してもよい。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0107】
また、本実施の形態において、複数の交換時期は、第1交換時期及び第2交換時期を含んでいてもよく、第2交換時期は、第1交換時期に最も近い次の交換時期であってもよく、交換前の燃料電池スタック12に定められた交換時期が第1交換時期であるとき、制御部140は、交換後の燃料電池スタック12の次の交換時期が第2交換時期に重なるように交換後の燃料電池スタック12に対する目標運転率を再設定してもよい。これにより、該当する燃料電池スタック12の交換時期によらず、上記した効果が得られる。
【0108】
また、本実施の形態において、複数の交換時期以外の時期に複数の燃料電池スタック12のいずれかが交換された場合、制御部140は、その交換された時点で目標運転率を再設定してもよい。これにより、交換された燃料電池スタック12を速やかに燃料電池システム100に組み込んで運転させることができる。
【0109】
また、本実施の形態において、制御部140は、目標運転率を複数回再設定してもよい。これにより、他の燃料電池スタック12に適用された目標運転率を交換後の燃料電池スタック12に適用することが可能となるので、要求電力を満たすように複数の燃料電池スタック12の運転を制御しやすい。
【0110】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。ただし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0111】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0112】
複数の燃料電池スタック12は、同一の目標運転率を達成するように制御される2台以上の燃料電池スタック12を含んでいてもよい。これにより、同時期に2台以上の燃料電池スタック12の交換時期が到来するので、燃料電池スタック12の交換作業の回数を減らすことができる。また、一部の燃料電池スタック12が交換された場合においても、残りの燃料電池スタック12の使用可能期間が所定の交換時期に終了する。そのため、燃料電池スタック12を交換するための追加の日程が発生しない。
【0113】
制御部140は、発電ユニット101aから101cを制御できる限り特に限定されない。発明の主題を表現する際に、発電ユニット101aから101cを制御する装置を、制御部140の他にも、制御手段又はそれらに類似する文言で表記する場合がある。制御部140は様々な態様で実現可能である。
【0114】
例えば、制御部140としてプロセッサを用いてもよい。制御部140としてプロセッサを用いれば、プログラムを格納している記憶媒体からプログラムをプロセッサに読み込ませ、プロセッサによりプログラムを実行することで、各種処理を実行することが可能となる。記憶媒体に格納されたプログラムを変更することで処理内容を変更できるので、制御内容の変更の自由度を高めることができる。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及び、MPU(Micro-Processing Unit)などがある。記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、及び、光ディスクなどがある。
【0115】
また、制御部140として、プログラムの書き換えが不可能なワイヤードロジックを用いてもよい。制御部140としてワイヤードロジックを用いれば、処理速度の向上に有効である。ワイヤードロジックとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などがある。
【0116】
また、制御部140として、プロセッサとワイヤードロジックとの組み合わせを用いてもよい。プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて制御部140を実現すれば、ソフトウェア設計の自由度を高めつつ、処理速度を向上させることができる。また、制御部140と、制御部140と別の機能を有する回路とを、1つの半導体素子で構成してもよい。別の機能を有する回路としては、例えば、A/D・D/A変換回路などがある。また、制御部140は、1つの半導体素子で構成してもよいし、複数の半導体素子で構成してもよい。複数の半導体素子で制御部140を構成する場合、特許請求の範囲に記載の各制御を、互いに異なる半導体素子で実現してもよい。さらに、半導体素子と抵抗又はコンデンサなどの受動部品とを含む構成によって制御部140を構成してもよい。
【0117】
通信回路141は、制御部140と発電ユニット101aから101cとの通信を可能にするものである限り特に限定されない。発明の主題を表現する際に、制御部140と発電ユニット101aから101cとの通信を可能にする回路を、通信回路141の他にも、コミュニケータ、通信部、送受信手段、送受信部又はそれらに類似する文言で表記する場合がある。
【0118】
通信回路は様々な態様で実現可能である。例えば、通信回路は、制御部140と発電ユニット101aから101cとを有線で接続するように構成されていてもよく、制御部140と発電ユニット101aから101cとを無線で接続するように構成されていてもよい。制御部140と発電ユニット101aから101cとが有線で接続される場合、通信のセキュリティ性、及び、通信の安定性が向上する。
【0119】
有線接続の通信回路としては、例えば、Ethernet(イーサネット:登録商標)規格に基づく有線LAN、又は、光ファイバーケーブルを用いた有線接続などがある。
【0120】
無線接続の通信回路としては、基地局等の外部機器を介して無線接続する回路、制御部140と発電ユニット101aから101cとを直接無線接続する回路などがある。基地局等を介しての制御部140と発電ユニット101aから101cとの無線接続としては、例えば、WiFi(ワイファイ:登録商標)ルータと無線通信するIEEE802.11対応の無線LAN、第3世代移動通信システム(通称3G)、第4世代移動通信システム(通称4G)、IEEE802.16対応のWiMax(ワイマックス:登録商標)、LPWA(Low Power Wide Area)などがある。
【0121】
通信回路141として、制御部140と発電ユニット101aから101cとを直接無線接続する通信回路を用いれば、通信のセキュリティ性の向上に有効である。また、WiFi(ワイファイ:登録商標)ルータなどの中継機器が存在しない場所でも、燃料電池システム100と外部機器との通信が可能となる。制御部140と発電ユニット101aから101cとを直接無線接続する通信回路としては、例えば、Bluetooth(ブルートゥース:登録商標)による通信、ループアンテナを介したNFC(Near Field Communication)による通信、赤外線通信などがある。
【0122】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、複数の燃料電池スタックを備えた燃料電池システムに適用可能である。本開示は、1台以上の燃料電池スタックを含む発電ユニットを3台以上備えた燃料電池システムに特に有用である。
【符号の説明】
【0124】
12,12a,12b,12c 燃料電池スタック
13 電装部品群
14 燃料ガス圧力調整部
15 燃料ガス供給経路
16 エジェクタ
17 混合ガス供給経路
18 未反応燃料ガス循環経路
19 酸化剤ガス供給部
20 酸化剤ガス供給経路
100 燃料電池システム
101a 第1発電ユニット
101b 第2発電ユニット
101c 第3発電ユニット
110 水素含有ガス供給源
111 燃料ガス供給経路
112 ガス排出経路
121 アノード
122 カソード
123 電解質膜
130 送電回路
131 電力負荷
132 スタック送電回路
140 制御部
141 通信回路