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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121528
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20230824BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20230824BHJP
   B41J 2/055 20060101ALI20230824BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 307
B41J2/055
B41J2/01 401
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024911
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】原田 蒼太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA04
2C056FA04
2C056HA05
2C057AF02
2C057AF21
2C057AG29
2C057AG47
2C057AG55
2C057AG84
2C057AG91
2C057AK07
2C057AQ03
2C057AQ06
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】駆動周波数を高速化させつつ印字品質の低下を抑制できる液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、ノズルプレートと、圧力室と、アクチュエータと、駆動回路と、を備える。ノズルプレートは、ノズルを備える。液体を吐出する圧力室は、前記ノズルに連通する。アクチュエータは、電気信号に応じて前記圧力室の容積を変化させる。駆動回路は、前記アクチュエータを駆動する電気信号を生成する。前記駆動回路が出力する駆動波形は、圧力伝搬時間の1.8倍~2.2倍の周期で複数のパルスを有する吐出パルス部を有する。前記吐出パルス部は、収縮要素を有する第1パルスと、前記第1パルスの前記収縮要素と異なる前記圧力伝搬時間の0.5倍~1.5倍の長さの収縮要素を有する第2パルスと、を有する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを備えるノズルプレートと、
前記ノズルに連通する圧力室と、
電気信号に応じて前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動する電気信号を生成する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路が出力する駆動波形は、圧力伝搬時間の1.8倍~2.2倍の周期で複数のパルスを有する吐出パルス部を有し、
前記吐出パルス部は、収縮要素を有する第1パルスと、前記第1パルスの前記収縮要素と異なる前記圧力伝搬時間の0.5倍~1.5倍の長さの収縮要素を有する第2パルスと、を有する、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1パルスの前記収縮要素は、前記圧力伝搬時間の0.9倍~1.1倍の長さである、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2パルスの前記収縮要素は、前記第1パルスの前記収縮要素よりも短い、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記駆動波形は、隣り合う前記吐出パルス部の間に非吐出パルス部を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記非吐出パルス部は、前記圧力伝搬時間の0.5倍以下の拡張要素を有する、請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出方式にはコンティニュアス方式やオンデマンド方式のピエゾ方式などがある。コンティニュアス方式は印字していない時も連続的に吐出し、印字しない時は偏向電極で屈曲させて媒体に印字しない。コンティニュアス方式は印字駆動周波数が高いが、構造が複雑で廃棄するインクが多い。ピエゾ方式は圧電素子に駆動波形を印加して動作させることで液体吐出ヘッドの圧力室の容量を変化させて印字する。ピエゾ方式は、インクの廃棄はないが、駆動周波数を高速にすることが困難である。
【0003】
ピエゾ方式の液体吐出ヘッドへの吐出制御信号の与え方には、予め駆動波形などの設定データをヘッド駆動回路に転送しておき、各ラインの印字同期信号に合わせてライン単位の印刷画像データをヘッド駆動回路に転送する方式がある。各ラインの各ノズルのドロップ数や吐出量などを制御することで階調となる。
【0004】
駆動波形はライン単位で吐出パルスや予備駆動のブーストパルスや圧力振動を打ち消すキャンセルパルスなどが入った構成となる。しかし、高速化に伴い、各ラインの時間(ラインタイム)が短くなり、ブーストパルスやキャンセルパルスなどを入れる時間的余裕がなくなってくる。各ラインのパルスの終わりから次のラインのパルスの始まり(サイクル間ディレイ)の時間が短くなると、キャンセルしきれなかった分の圧力振動が十分に減衰せずに印字品質が悪化するクロストークが生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4764038号公報
【特許文献2】特開2005-35271号公報
【特許文献3】特開平10-296976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、駆動周波数を高速化させつつ印字品質の低下を抑制できる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の液体吐出ヘッドは、ノズルプレートと、圧力室と、アクチュエータと、駆動回路と、を備える。ノズルプレートは、ノズルを備える。液体を吐出する圧力室は、前記ノズルに連通する。アクチュエータは、電気信号に応じて前記圧力室の容積を変化させる。駆動回路は、前記アクチュエータを駆動する電気信号を生成する。前記駆動回路が出力する駆動波形は、圧力伝搬時間の1.8倍~2.2倍の周期で複数のパルスを有する吐出パルス部を有する。前記吐出パルス部は、収縮要素を有する第1パルスと、前記第1パルスの前記収縮要素と異なる前記圧力伝搬時間の0.5倍~1.5倍の長さの収縮要素を有する第2パルスと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す斜視図。
図2】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す断面図。
図3】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す断面図。
図4】実施形態に係る液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の構成を示す説明図。
図5】実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示すブロック図。
図6】比較例の駆動波形の一例を示す説明図。
図7】比較例1の駆動波形の一例を示す説明図。
図8】比較例におけるサイクル間ディレイと吐出速度との関係を示す説明図。
図9】比較例2の駆動波形の一例を示す説明図。
図10】実施例1の駆動波形の一例を示す説明図。
図11】実施例2の駆動波形の一例を示す説明図。
図12】実施例3の駆動波形の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置100の構成を、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、液体吐出ヘッド1の構成を一部省略して示す斜視図であり、図2は、液体吐出ヘッド1の構成を一部省略して示す断面図であり、図3は、液体吐出ヘッドの構成を一部省略して示す断面図である。図4は、液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置100の構成を示す説明図であり、図5は、液体吐出装置100の構成の一例を示すブロック図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0010】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、例えば、液体としてのインクを吐出するピエゾ方式のインクジェットヘッドである。図1乃至図3に示すように、液体吐出ヘッド1は、ベース10と、アクチュエータ20と、振動板30と、流路プレート40と、複数のノズル51を有するノズルプレート50と、フレーム部材60と、駆動回路70と、を備える。
【0011】
ベース10は、例えば、矩形板状に形成される。ベース10には、アクチュエータ20が接合される。
【0012】
アクチュエータ20は、例えば、複数の圧電柱21と、複数の圧電柱21と交互に配置された非駆動圧電柱22と、を備える圧電部材である。アクチュエータ20は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22が所定の間隔で一方向に並ぶことで、櫛歯状に形成される。例えば、このようなアクチュエータ20は、ベース10に接合された積層型圧電部材を、ベース10側とは反対側の端面からダイシングによって溝23を加工して、1つの圧電部材に対して矩形の柱状に形成された複数の圧電素子を所定の間隔で形成する。そして、形成された複数の圧電素子は、電極等が設けられることで、圧電素子としての、交互に配置された複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22を構成する。即ち、アクチュエータ20は、形成された複数の溝23により、一端側が複数に分割され、他端側(ベース10側)が連結する。即ち、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22は、一方向(第1方向)に沿って、溝23を挟んで交互に並列配置される。
【0013】
なお、アクチュエータ20を構成する積層型圧電部材は、シート状の圧電材料を積層して焼結することで形成される。なお、アクチュエータ20は、積層型圧電部材に限定されない。例えば、アクチュエータ20は、チップ型や多段チップ型等であってもよく、他の構成であってもよい。即ち、アクチュエータ20は、圧力室の容積を可変可能なピエゾ方式であればよい。
【0014】
具体例として、図1乃至図3に示すように、圧電柱21及び非駆動圧電柱22は、例えば駆動素子としての積層圧電体である。圧電柱21及び非駆動圧電柱22は、積層された複数の圧電体層211と、ベース10側のダミー層212と、各圧電体層211の主面に形成される内部電極221、222と、外部電極223、224と、を備える。なお、一例としては、圧電柱21及び非駆動圧電柱22は同じ構成である。
【0015】
圧電体層211は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系、または無鉛のKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)系等の圧電材料から薄板状に構成される。複数の圧電体層211は厚さ方向(第2方向)に積層され、焼結することにより接着される。なお、ここで、複数の圧電体層211の積層方向(第2方向)は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の並び方向(第1方向)に対して直交する。
【0016】
内部電極221、222は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で所定形状に構成される導電膜である。内部電極221、222は各圧電体層211の主面の所定領域に形成される。内部電極221、222は、互いに異なる極である。例えば、図3に示すように、一方の内部電極221は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の並び方向(第1方向)、並びに、圧電体層211の積層方向(第2方向)の双方と直交する方向(第3方向)において、圧電体層211の一方の端部に至り、圧電体層211の他方の端部には至らない領域に形成される。他方の内部電極222は、図3に示すように、第3方向において、圧電体層211の一方の端部には至らず、圧電体層211の他方の端部に至る領域に形成される。内部電極221、222は圧電柱21、22の側面に形成される外部電極223、224にそれぞれ接続される。
【0017】
外部電極223、224は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の表面に形成され、内部電極221、222の端部を集めて構成される。例えば外部電極223、224は、圧電体層211の積層方向と直交する第3方向における一方の端面と他方の端面とに、それぞれ形成される。外部電極223、224はメッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどにより成膜される。外部電極223と外部電極224は、異なる極である。外部電極223と外部電極224とは、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の異なる側面部にそれぞれ配置されている。なお、外部電極223と224とは、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の同じ側面部のうち、異なる領域に取り回されていてもよい。
【0018】
本実施形態において一例として外部電極223を個別電極、外部電極224を共通電極とする。複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の個別電極となる外部電極223は、電極層が溝23によって分割され、互いに独立して配置される。共通電極となる外部電極224は、電極層が溝23よりもベース10側の領域で互いに連結され、例えば接地される。
【0019】
外部電極223、224は、例えば駆動回路70に接続される。例えば、個々の外部電極223、224は、配線により駆動回路70の後述するドライバ723を介して、駆動部としての制御部150に接続され、プロセッサ151による制御によって駆動制御可能に構成される。
【0020】
ダミー層212は、圧電体層211と同材料である。ダミー層212は電極を片側にしか有さず、電界がかからないので変形しない。すなわち、ダミー層212は圧電体としては機能せず、アクチュエータ20をベース10に固定するベースとなり、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0021】
一例として、各圧電柱21及び各非駆動圧電柱22は、圧電体層211の積層数を50層以下、各層の厚さを10μm~40μm、厚さと総積層数の積を1000μm未満とする。
【0022】
圧電柱21及び非駆動圧電柱22は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に電圧が印加されることで、圧電体層211の積層方向に沿って縦振動する。ここで言う縦振動とは、例えば「圧電定数d33で定義される厚み方向の振動」である。例えば、図2に示すように、1つおきに配される複数の圧電柱21が振動板30を挟んで圧力室31に対応して配置され、残りの非駆動圧電柱22は振動板30を挟んで隔壁部42に対向する位置に配置される。
【0023】
圧電柱21は、電圧が印加されることで縦振動し、振動板30を変位させる。即ち、圧電柱21は、圧力室31を変形させる。非駆動圧電柱22は、隔壁部42に対向する位置に配置される。非駆動圧電柱22には電圧を印加しない。
【0024】
振動板30は、複数の圧電柱21、22の圧電体層211の積層方向の一方側、即ち、ノズルプレート50側の面に接合される。振動板30は、例えば変形可能に構成される。振動板30は、アクチュエータ20の圧電柱21及び非駆動圧電柱22と、フレーム部材60と、に接合される。
【0025】
振動板30は、例えば、厚さ方向が圧電体層211の積層方向となるように配された平板状である。振動板30は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の並び方向に面方向が延びる。振動板30は、例えば金属板である。振動板30は、各圧力室31に対向するとともに個別に変位可能な複数の振動部位を有する。振動板30は、複数の振動部位が一体に連なって形成される。
【0026】
例えば、振動板30は、1枚の平板状に構成され、圧電柱21に接合された領域がそれぞれ個別に変位する。振動板30は、例えばSUS板で構成される。振動板30の厚さ寸法は、5μm~15μm程度に構成される。なお、振動板30は、複数の振動部位が、変位しやすいように、振動部位と隣接する部位あるいは互いに隣接する振動部位間に、折り目や段差が形成されていてもよい。
【0027】
振動板30は、圧電柱21の縦振動によって生じる圧電柱21の伸長と圧縮によって、当該圧電柱21に対向配置された部位が変位することで、圧力室31を変形させて、圧力室31の容積を変化させる。
【0028】
振動板30は、圧電柱21、22の第2方向の一方側の端面及びフレーム部材60の端面に、接合される。一例として、本実施形態において、振動板30の第2方向一方側の主面が流路プレート40に接合される。振動板30と流路プレート40との間にはインクが収容可能な圧力室31及びガイド流路34が形成される。振動板30の第2方向の他方側の主面が圧電柱21、22に接合される。また、振動板30の第2方向の他方側の主面がフレーム部材60の端面に接合される。
【0029】
振動板30は、フレーム部材60との間に、インクが収容可能な共通室32を形成する。振動板30は、一方側の主面が圧電柱21、22、フレーム部材60及び共通室32にそれぞれ面しているとともに、他方側の主面が圧力室31、隔壁部42、及びガイド流路34に、それぞれ面している。
【0030】
振動板30は、厚さ方向に貫通するとともに圧力室31と共通室32とを連通させる開口33を複数有する。複数の開口33は、振動板30の厚さ方向で一方側に形成される複数の圧力室31と、振動板30の厚さ方向で他方側に形成される共通室32を連通する。振動板30は、圧電柱21の変形に伴って変形することにより、圧力室31の容積を変化させる。
【0031】
流路プレート40は、振動板30の一方側に接合される。流路プレート40は、ノズルプレート50と振動板30との間に配される。流路プレート40は、所定の流路35を形成する。流路プレート40は、振動板30の外縁部に接合される枠状部41と、複数の流路35を隔てる複数の隔壁部42と、ガイド流路34を形成するガイド壁43と、を備える。
【0032】
所定の流路35は、隔壁部42によって隔てられる複数の圧力室31と、共通室32と、振動板30の複数の開口33と、圧力室31及び開口33を連通する、隔壁部42によって隔てられる複数のガイド流路34と、を含む。
【0033】
複数の圧力室31は、複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22の並び方向である第1方向に並ぶ。一方向に並ぶ複数の圧力室31は、隔壁部42によって隔てられる。複数の圧力室31は、第2方向において、一方側が振動板30で閉塞される。複数の圧力室31は、振動板30の複数の圧電柱21及び複数の非駆動圧電柱22が設けられる側とは反対側に形成される。各圧力室31は、第2方向において、振動板30とは反対側に配されるノズルプレート50に形成されたノズル51に連通する。
【0034】
複数の圧力室31は、ガイド流路34及び開口33を介して共通室32に連通する。圧力室31は共通室32からガイド流路34を経て供給される液体を保有し、圧力室31の一部を形成する振動板30の振動によって変形することで、ノズル51から液体を吐出する。
【0035】
共通室32は、フレーム部材60の内側に形成される。共通室32は、振動板30に設けられた複数の開口33及び複数のガイド流路34を通じて圧力室31に連通する。
【0036】
開口33は、振動板30に形成される。複数の開口33は、共通室32と複数のガイド流路34を連通する。ガイド流路34は、開口33及び圧力室31を連通し、共通室32のインクを圧力室31に案内する。
【0037】
隔壁部42は、第1方向に並ぶ複数の圧力室31間を隔てるとともに、第1方向に並ぶ複数のガイド流路34間を隔て、圧力室31及びガイド流路34の両側部を構成する壁部材である。隔壁部42は振動板30を介して、非駆動圧電柱22に対向配置され、非駆動圧電柱22によって支持される。
【0038】
ノズルプレート50は、例えばSUS・Niなどの金属やポリイミドなどの樹脂材料からなる厚さ10μm~100μm程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート50は圧力室31の一方側の開口を覆うように、流路プレート40の一方側に配置されている。ノズルプレート50には、厚さ方向に貫通する複数のノズル51が形成される。ノズル51は第3方向に沿って並び、ノズル列が形成される。各ノズル51は、複数の圧力室31に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0039】
フレーム部材60は振動板30の第1方向における他方側に配置される。フレーム部材60は圧電柱21、22とともに振動板30に接合される構造体である。フレーム部材60は圧電柱21、22の、振動板30の振動方向に直交する方向に設けられ、例えば本実施形態においてはアクチュエータ20の周りに配置される。フレーム部材60は、液体吐出ヘッド1の外郭を構成する。またフレーム部材60は、内部に液体の流路を形成していてもよい。本実施形態において、フレーム部材60は、振動板30の他方側に接合されるとともに、振動板30との間に共通室32を形成する。
【0040】
駆動回路70は、一端が外部電極223、224に接続される配線フィルム71と、配線フィルム71に搭載されたドライバIC72と、配線フィルム71の他端に実装されたプリント配線基板と、を備える。
【0041】
駆動回路70は、アクチュエータ20の駆動信号を生成する駆動信号生成手段である。駆動回路70は、ドライバIC72により駆動電圧を外部電極223、224に印加することで、圧電柱21、22を駆動し、圧力室31の容積を増減させて、ノズル51から液滴を吐出させる。
【0042】
配線フィルム71は、複数の個別電極である個別電極223及び共通電極224に接続される。例えば、配線フィルム71は、外部電極223、224の接続部に熱圧着等により固定されるACF(異方導電性フィルム)である。配線フィルム71は、例えば、ドライバIC72が実装されたCOF(Chip on Film)である。
【0043】
ドライバIC72は、配線フィルム71を介して外部電極223、224に接続される。なお、ドライバIC72は、配線フィルム71ではなく、ACP(異方導電ペースト)、NCF(非導電性フィルム)、及びNCP(非導電性ペースト)のような他の手段によって、外部電極223、224に接続されても良い。
【0044】
ドライバIC72は、各圧電柱21、22を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。ドライバIC72は、液体吐出装置100の制御部150から入力された画像信号に従い、インクを吐出させるタイミング及びインクを吐出させる圧電柱21を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、ドライバIC72は、制御信号に従って圧電柱21に印加する電圧、すなわち駆動信号(電気信号)を生成する。ドライバIC72が圧電柱21に駆動信号を印加すると、圧電柱21は、振動板30を変位させて圧力室31の容積を変化させるように駆動する。これにより、圧力室31に充填されたインクは、圧力振動を生じる。圧力振動により、圧力室31に設けられたノズル51からインクが吐出する。なお、液体吐出ヘッド1は、1画素に着弾するインク滴の量を変更することで階調表現を実現できるようにしてもよい。また、液体吐出ヘッド1は、インクの吐出回数を変えることで、1画素に着弾するインク滴の量を変更できるようにしてもよい。このように、ドライバIC72は、駆動信号を圧電柱21に印加する印加部の一例である。
【0045】
例えば、ドライバIC72は、データバッファ721、デコーダ722、ドライバ723を備えている。データバッファ721は、印字データを圧電柱21、22毎に時系列に保存する。デコーダ722は、圧電柱21、22毎に、データバッファ721に保存された印字データに基づいて、ドライバ723を制御する。ドライバ723は、デコーダ722の制御に基づき、各圧電柱21、22を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、各圧電柱21、22に印加する電圧である。
【0046】
プリント配線基板は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)である。プリント配線基板は、液体吐出装置100の制御部150に接続される。
【0047】
以下、液体吐出ヘッド1を備える液体吐出装置100の一例について、図4及び図5を参照して説明する。液体吐出装置100は、例えば、インクジェット記録装置である。液体吐出装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、を備える。また、液体吐出装置100は、制御部150を備える。
【0048】
液体吐出装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路Aに沿って、吐出対象物である印刷媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
【0049】
筐体111は、液体吐出装置100の外郭を構成する。筐体111の所定箇所に、用紙Pを外部に排出する排出口を備える。
【0050】
媒体供給部112は複数の給紙カセットを備え、各種サイズの用紙Pを複数枚積層して保持可能に構成される。
【0051】
媒体排出部114は、排出口から排出される用紙Pを保持可能に構成された排紙トレイを備える。
【0052】
画像形成部113は、用紙Pを支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0053】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0054】
支持部117は、画像形成の際に、搬送ベルト118の上面である保持面に用紙Pを支持するとともに、ベルトローラ120の回転によって所定のタイミングで搬送ベルト118を送ることにより、用紙Pを下流側へ搬送する。
【0055】
ヘッドユニット130は、液体吐出ヘッド1と、液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数のインクタンク132と、液体吐出ヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、供給ポンプ134と、を備える。
【0056】
本実施形態において、ヘッドユニット130は、複数設けられる。各ヘッドユニット130は、異なる色のインクが用いられる。例えば、複数のヘッドユニット130として、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132を備える。インクタンク132は接続流路133によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0057】
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結される。そして、液体吐出ヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、液体吐出ヘッド1の各ノズル51に供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0058】
供給ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。供給ポンプ134は、供給流路に設けられている。供給ポンプ134は、配線により制御部150に接続され、制御部150によって制御される。供給ポンプ134は、液体吐出ヘッド1に液体を供給する。
【0059】
搬送装置115は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る搬送路Aに沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路Aに沿って配置される複数のガイドプレート対121と、複数の搬送用ローラ122と、を備えている。
【0060】
複数のガイドプレート対121は、それぞれ、搬送される用紙Pを挟んで対向配置される一対のプレート部材を備え、用紙Pを搬送路Aに沿って案内する。
【0061】
搬送用ローラ122は、制御部150の制御によって駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路Aに沿って下流側に送る。なお、搬送路Aには用紙の搬送状況を検出するセンサが各所に配置される。
【0062】
制御部150は、例えば、制御基板である。制御部150は、プロセッサ151、ROM(Read Only Memory)152、RAM(Random Access Memory)153、入出力ポートであるI/Oポート154、画像メモリ155を搭載している。
【0063】
プロセッサ151は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の処理回路である。プロセッサ151は、I/Oポート154を通して、液体吐出装置100に設けられるヘッドユニット130、駆動モータ161、操作部162、及び各種センサ163等を制御する。プロセッサ151は、画像メモリ155に保存した印字データを描画順に駆動回路70に送信する。
【0064】
ROM152は、各種のプログラムなどを記憶する。RAM153は、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶する。I/Oポート154は、外部接続機器200等の外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部である。外部接続機器200からの印字データは、I/Oポート154を通じて制御部150へ送信され、画像メモリ155に保存される。
【0065】
以下、実施形態に係る液体吐出装置100に用いられる液体吐出ヘッド1の駆動回路70で生成される駆動信号による駆動波形について、従来の駆動波形の一例である比較例の駆動波形と比較して説明する。
【0066】
[比較例の駆動波形]
先ず、図6乃至図9を用いて、比較例の駆動波形を説明する。
【0067】
図6に示すように、比較例の駆動波形は、ライン単位で駆動波形が構成される。比較例の駆動波形は、各ラインにおいて、吐出パルス部、予備駆動のブーストパルス部及び圧力振動を打ち消すキャンセルパルス部などが入る。
【0068】
ここで、比較例の駆動波形には、インクが充填された圧力室31の圧力振動周期の半周期である圧力伝搬時間AL(Acoustic Length)に対して、1.8AL~2.2AL(即ち、2.0AL±0.2AL(ばらつき))の周期の圧力振動を維持する吐出パルス部を設ける。また、比較例の駆動波形のブーストパルス部には、吐出パルス部に対して、2ALの時間の同位相のパルスか、1ALの時間の逆位相のパルスを設ける。また、比較例の駆動波形のキャンセルパルス部には、吐出パルス部に対して、2ALの時間の逆位相のパルスか、1ALの時間の同位相のパルスを設ける。また、ブーストパルス部とキャンセルパルス部を除き、非吐出時はパルスを設けないサイクル間ディレイを設ける。
【0069】
比較例の駆動波形の例として、図7に、比較例1として従来の駆動波形と圧力振動との関係を示し、図9に、比較例2として、比較例の駆動波形において、隣り合うラインの間のブーストパルス部、サイクル間ディレイ及びキャンセルパルス部を有さず、複数のパルスを連続させた駆動波形と、連続駆動による圧力振動との関係を示す。また、図8に、圧力振動が残留した場合のサイクル間ディレイと吐出速度の関係を示す。
【0070】
[比較例1]
図7に示す圧力振動のように、比較例1の駆動波形では、キャンセルパルス部で打ち消せない圧力振動が残留した場合、サイクル間ディレイの時間で減衰する。しかしながら、図8に示すように、サイクル間ディレイが短い場合、吐出速度や吐出体積が影響を受ける。また、サイクル間ディレイが短くなるため駆動周波数を高くすることが困難となる。
【0071】
[比較例2]
図9の比較例2は、連続駆動した場合の駆動波形と圧力振動である。理論上は最大の駆動周波数とすることができる波形であるが、安定性やロバスト性が低下して印字品質が悪化する。また、インクの粘度や各圧力室の加工誤差により圧力伝搬時間が変わり、吐出パルスによる圧力振動の残る程度に差が生じるが、僅かな差であっても連続で吐出した場合は、差が蓄積して影響が大きくなる。
【0072】
[実施形態の駆動波形]
次に、本実施形態の液体吐出ヘッド1の駆動波形を説明する。本実施形態の液体吐出ヘッド1の駆動波形は、複数回の吐出パルスを含む吐出パルス部を有する。また、液体吐出ヘッド1の駆動波形は、圧力振動を吐出しない程度に維持する非吐出パルスを含む非吐出パルス部を含む。吐出パルス部は、インクが充填された圧力室31の圧力振動周期の半周期である圧力伝搬時間ALに対して、1.8AL~2.2AL(即ち、2.0AL±0.2AL(ばらつき))の周期の圧力振動を維持する。
【0073】
即ち、吐出パルス部は、圧力伝搬時間ALの1.8倍(1.8AL)~2.2倍(2.2AL)の周期のタイミングで連続して動作する複数回の吐出パルスを有し、そして、これら複数回の吐出パルスは、異なる周期で圧力室31を収縮させる2種以上の周期を有する。具体例として、吐出パルス部は、単数又は複数の第1パルス及び単数又は複数の第2パルスを組み合わせることで構成される。
【0074】
第1パルスは、圧力室31を収縮させる収縮要素を含む。第1パルスの収縮要素は、圧力伝搬時間ALの0.9倍(0.9AL)~1.1倍(1.1AL)の時間で圧力室31を収縮させる。例えば、吐出パルス部において複数の第1パルスが連続する。
【0075】
第2パルスは、第1パルスとは異なるパルスである。第2パルスは、第1パルスと同様に、圧力伝搬時間ALの1.8倍(1.8AL)~2.2倍(2.2AL)の周期の圧力振動を維持するパルスである。第2パルスは、インク吐出のタイミングで、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)~1.5倍(1.5AL)の時間で圧力室31を収縮させるパルスのうち少なくとも一種類のパルスである。ここで、第2パルスの収縮要素は、圧力伝搬時間ALの0.5~1.5倍の間の周期で複数設定可能である。例えば、第1パルスをパルスPAとしたときに、第2パルスは、異なるパルスPB~Pnというように、複数の異なるパルス(複数種のパルス)を設定可能である。
【0076】
即ち、吐出パルス部は、第1パルスであるパルスPAと、第2パルスである異なるパルスPB~Pnまでの少なくとも1つと、を有する。
【0077】
非吐出パルス部は、インクが吐出しない程度に圧力振動を維持する。非吐出パルス部は、吐出パルス部の間に設けられる。非吐出パルス部は、収縮要素及び拡張要素を有さないか、又は、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)以下の拡張要素を有する。
【0078】
このような液体吐出ヘッド1の駆動波形の具体例及び駆動波形による圧力振動の例として、以下、実施例1乃至実施例3を図10乃至図12を用いて説明する。
[実施例1]
図10は、実施例1に係る駆動波形を示す。実施例1の駆動波形は、隣り合うライン間にサイクル間ディレイを有さず、吐出パルス部を第1パルスとしての複数のパルスPAと、第2パルスとしての複数のパルスPB及び複数のパルスPCとを有する。例えば、パルスPBの収縮要素の時間は、パルスPAの収縮要素の時間よりも短く、パルスPCの収縮要素の時間は、パルスPBの収縮要素の時間のよりも短い。また、実施例1の駆動波形は、例えば、ブーストパルス部の後の吐出パルス部において、2つのパルスPAと、4つのパルスPBと、2つのパルスPCとを有する。そして、実施例1の駆動波形は、吐出パルス部のあとに、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)以下の拡張要素を有する非吐出パルス部としてのキャンセルパルス部を有する。
【0079】
[実施例2]
図11は、実施例2に係る駆動波形を示す。実施例2の駆動波形は、隣り合う吐出パルス部の間に非吐出パルス部を有する。吐出パルス部は、第1パルスとしての複数のパルスPAと、第2パルスとしての単数又は複数のパルスPB及び単数又は複数のパルスPCとを有する。具体的には、非吐出パルス部の前の吐出パルス部は、第1パルスとしての2つのパルスPAと、第2パルスとしての1つのパルスPBとを有する。非吐出パルス部の後の吐出パルス部を第1パルスとしての3つのパルスPAと、第2パルスとしての1つのパルスPB及び1つのパルスPCとを有する。例えば、パルスPBの収縮要素の時間は、パルスPAの収縮要素の時間よりも短く、パルスPCの収縮要素の時間は、パルスPBの収縮要素の時間のよりも短い。隣り合う吐出パルス部の間に設けられる非吐出パルス部は、収縮要素及び拡張要素を有さない。また、実施例2の駆動波形は、例えば、ブーストパルス部、吐出パルス部、非吐出パルス部、吐出パルス部及びキャンセルパルス部を順に有する。そして、実施例2の駆動波形は、吐出パルス部のあとに、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)以下の拡張要素を有する非吐出パルス部としてのキャンセルパルス部を有する。
【0080】
[実施例3]
図12は、実施例3に係る駆動波形を示す。実施例3の駆動波形は、隣り合う吐出パルス部の間に非吐出パルス部を有する。吐出パルス部は、第1パルスとしての複数のパルスPAと、第2パルスとしての単数又は複数のパルスPB及び単数又は複数のパルスPCとを有する。具体的には、非吐出パルス部の前の吐出パルス部は、第1パルスとしての2つのパルスPAと、第2パルスとしての1つのパルスPBとを有する。非吐出パルス部の後の吐出パルス部を第1パルスとしての3つのパルスPAと、第2パルスとしての1つのパルスPB及び1つのパルスPCとを有する。例えば、パルスPBの収縮要素の時間は、パルスPAの収縮要素の時間よりも短く、パルスPCの収縮要素の時間は、パルスPBの収縮要素の時間のよりも短い。非吐出パルス部は、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)以下の拡張要素を有する。また、実施例3の駆動波形は、例えば、ブーストパルス部、吐出パルス部、非吐出パルス部、吐出パルス部及びキャンセルパルス部を順に有する。そして、実施例3の駆動波形は、吐出パルス部のあとに、圧力伝搬時間ALの0.5倍(0.5AL)以下の拡張要素を有する非吐出パルス部としてのキャンセルパルス部を有する。
【0081】
このような実施形態の駆動波形は比較例の単一の吐出パルスと異なり、圧力振動を減衰・増幅させる複数種の吐出パルスを有する吐出パルス部で構成されるか、又は、吐出パルス部に加えて圧力振動を吐出しない程度に維持する非吐出パルスで構成される。
【0082】
即ち、収縮要素のパルス幅は、1ALの時に最も圧力振動が高くなり、ずれるほど圧力振動が低下する。このため、実施形態の駆動波形は、複数種の吐出パルスであるパルスPA~Pnを組み合わせることで、図10乃至図12の圧力振動に示すように、連続で吐出する時の圧力振動を個別で制御するために、パルス幅や電圧などで圧力振動を調整できる。
【0083】
また、実施形態の駆動波形は、圧力振動を吐出しない程度に維持する非吐出パルス部を、吐出パルス部間で非吐出になる時に設ける。例えば、図11のように、吐出パルス部の間の非吐出時に拡張要素のパルスを設けない場合、圧力振動はインクの粘度などに基づき減衰する。その場合、非吐出パルス部の後の吐出パルス部での圧力振動が弱くなり、吐出量の低下に繋がる。このため、次の吐出パルス部においてインクを安定して吐出するために、図12のように、非吐出時も圧力振動を制御することも好適である。
【0084】
上述したように、液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ20を駆動するための駆動回路70が生成する駆動信号としての駆動波形を、インクを吐出する吐出パルス部において、複数の異なる収縮要素を有するパルスPA~Pnから2以上用いる構成とする。これにより、液体吐出ヘッド1は、サイクル間ディレイを設けなくても、圧力振動を減衰させることができ、駆動周波数を高速化させつつ印字品質の低下を抑制できる。
【0085】
なお、実施形態は、例として提示したものであり、上述した例に限定されない。例えば、上述した圧電柱21、22の具体的な構成や、流路の形状、流路プレート40、ノズルプレート50、フレーム部材60を含む各種部品の構成や位置関係は上述した例に限られるものではなく、適宜変更可能である。また、ノズル51や圧力室31の配列も上記に限られるものではない。たとえばノズル51を2列以上配列してもよい。また複数の圧力室31の間に、ダミー室を形成してもよい。また、ピエゾ方式の液体吐出ヘッド1であれば、種々のアクチュエータを用いることができる。
【0086】
また、上述した例では、アクチュエータが振動板を駆動し、これにより圧力室を変形させて液体を吐出するルーフシュータ型の液体吐出ヘッド1を説明したが、この例に限られない。即ち、上記の駆動波形は、アクチュエータによって圧力室を変形させる種々のタイプの液体吐出ヘッドに適用できる。例えば、液体吐出ヘッドは、サイドシュータ型の液体吐出ヘッドでもよい。
【0087】
また、上述した例では、液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100において、吐出する液体は印字用のインクの説明をしたが、液体は上述したインクに限られるものではなく、透明光沢インク、赤外線又は紫外線等を照射したときに発色するインク、又はその他の特殊インクなども吐出可能である。さらに、液体吐出ヘッド1は、インク以外の液体を吐出することができるものであっても良い。なお、液体吐出ヘッド1が吐出する液体は、懸濁液などの分散液であっても良い。液体吐出ヘッド1が吐出するインク以外の液体としては例えば、プリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体、人工的に組織又は臓器などを形成するための細胞などを含む液体、接着剤などのバインダー、ワックス、又は液体状の樹脂などが挙げられる。このため、液体吐出装置は、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途等にも用いることが可能である。
【0088】
以上説明した少なくともひとつの実施形態の液体吐出ヘッドによれば、複数の異なる収縮要素を有するパルスを2以上有する駆動波形とすることで、駆動周波数を高速化させつつ印字品質の低下を抑制できる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…液体吐出ヘッド、10…ベース、20…アクチュエータ、21…圧電柱、22…非駆動圧電柱、23…溝、30…振動板、31…圧力室、32…共通室、33…開口、34…ガイド流路、35…流路、40…流路プレート、41…枠状部、42…隔壁部、43…ガイド壁、50…ノズルプレート、51…ノズル、60…フレーム部材、70…駆動回路、71…配線フィルム、72…ドライバIC、100…液体吐出装置、111…筐体、112…媒体供給部、113…画像形成部、114…媒体排出部、115…搬送装置、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121…ガイドプレート対、122…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…インクタンク、133…接続流路、134…供給ポンプ、150…制御部、151…プロセッサ、154…I/Oポート、155…画像メモリ、161…駆動モータ、162…操作部、163…種センサ、200…外部接続機器、211…圧電体層、212…ダミー層、221…内部電極、222…内部電極、223…外部電極(個別電極)、224…外部電極(共通電極)、721…データバッファ、722…デコーダ、723…ドライバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12