(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121529
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ナノ材料、ナノ材料の作製方法、及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230824BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20230824BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230824BHJP
C01G 21/16 20060101ALI20230824BHJP
C07C 57/50 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
H01L31/04 112B
H01L31/04 164
B82Y30/00
B82Y40/00
C01G21/16
C07C57/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024912
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】沈 青
(72)【発明者】
【氏名】李 玉勝
(72)【発明者】
【氏名】丁 超
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 修二
【テーマコード(参考)】
4H006
5F151
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB82
4H006AB92
4H006BJ50
5F151AA20
5F151DA11
5F151FA02
5F151FA06
(57)【要約】
【課題】ホットキャリアを効率的、かつ高速に取り出すことのできるナノ材料と、その作製方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットが分散された量子ドット有機溶液にカルボキシ基(‐COOH)を化学アンカー基として有するフラーレン誘導体を混合し、量子ドットに結合しているオレイン酸リガンドを、前記カルボキシ基から水素イオンが離脱した電気陰性のフラーレン誘導体リガンドで置換してナノ材料を取得する。このナノ材料は、一般式ABX
3(A=Cs,FA,MA、B=Pb
2+,Sn
2+、X=I
-、Br
-、Cl
-)で表されるハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットと、この量子ドットに結合する電気陰性のフラーレン誘導体リガンドと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式ABX3(A=Cs,FA,MA、B=Pb2+,Sn2+、X=I-、Br-、Cl-)で表されるハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットと、
前記量子ドットに結合する電気陰性のフラーレン誘導体リガンドと、
を有するナノ材料。
【請求項2】
前記フラーレン誘導体リガンドは、カルボキシ基を化学アンカー基として有するフラーレン誘導体から水素イオンが離脱したルイス塩基(-COO)を有する、
請求項1に記載のナノ材料。
【請求項3】
前記フラーレン誘導体は、フェニルC61酪酸メチル(PCBM)、ビスPCBM、または4-(1',5'-ジヒドロ-1'-メチル-2'H-[5,6]フラーレノ-C60-Ih-[1,9-c]ピロル-2'-イル)安息香酸(C61-SAM)である、
請求項2に記載のナノ材料。
【請求項4】
ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットが分散された量子ドット有機溶液に、カルボキシ基(‐COOH)を化学アンカー基として有するフラーレン誘導体を混合し、
前記量子ドットに結合しているオレイン酸リガンドを、前記カルボキシ基から水素イオンが離脱した電気陰性のフラーレン誘導体リガンドで置換して、ナノ材料を取得する、
ナノ材料の作製方法。
【請求項5】
前記量子ドットが分散された前記量子ドット有機溶液と前記フラーレン誘導体との混合液を攪拌または超音波処理することで、前記オレイン酸リガンドを前記電気陰性のフラーレン誘導体リガンドで置換する、
請求項4に記載のナノ材料の作製方法。
【請求項6】
前記攪拌または前記超音波処理の時間を調整してリガンド置換速度を制御する、
請求項5に記載のナノ材料の作製方法。
【請求項7】
フェニルC61酪酸メチル(PCBM)、またはビスPCBMを、塩酸及び酢酸と反応させて前記カルボキシ基(‐COOH)を有する前記フラーレン誘導体を生成し、
生成された前記フラーレン誘導体を前記量子ドットが分散された前記量子ドット有機溶液に混合する、
請求項4から6のいずれか1項に記載のナノ材料の作製方法。
【請求項8】
前記カルボキシ基(‐COOH)を有するフラーレン誘導体として、4-(1',5'-ジヒドロ-1'-メチル-2'H-[5,6]フラーレノ-C60-Ih-[1,9-c]ピロル-2'-イル)安息香酸(C61-SAM)を前記量子ドットが分散された前記量子ドット有機溶液に混合する、
請求項4から6のいずれか1項に記載のナノ材料の作製方法。
【請求項9】
第1電極と第2電極の間に光活性層を有する太陽電池において、
前記光活性層は、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットに、ルイス塩基を有する電気陰性のフラーレン誘導体リガンドが結合したナノ材料で形成されている、
太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料、ナノ材料の作製方法、及び太陽電池に関し、特に、ホットキャリアを効率的に取り出すことのできるナノ材料とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットキャリア太陽電池は、「ショックレー・クワイサー限界」と呼ばれるエネルギー変換効率の限界を超える光起電デバイスとして期待されている。「ショックレー・クワイサー限界」は、どのような半導体を用いても太陽電池の変換効率は32.7%(測定方法によっては30~33%)を超えないという提唱である。ここでは、単一の半導体材料(単一接合)を用いることが前提とされている。これに対し、エネルギーロスがないものと仮定したときの理想的な単一接合のホットキャリア太陽電池の変換効率は、約67%といわれている。
【0003】
ホットキャリアは、電子や正孔が電場からポテンシャル障壁に打ち勝つ運動エネルギーを得て結晶の温度よりも高い温度をもつ状態をいう。従来の光吸収材料と比較して、ペロブスカイト材料のホットキャリア寿命は長く、ペロブスカイト量子ドットのホットキャリア寿命は、バルク材料よりもさらに長い(例えば、非特許文献1参照)。量子ドットのキャリア閉じ込め効果により、キャリアはバルク中よりも長い時間、高エネルギーに保たれる。特に、ハロゲン化鉛ペロブスカイト量子ドットは、ホットキャリアの冷却にかかる時間が長く、ホットキャリア太陽電池の有力な候補である。
【0004】
ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)、ヨウ化鉛ホルムアミジニウム(FAPbI3)等の有機無機ハイブリッド型ペロブスカイトを光活性層として用い、マグネシウムドープされた酸化亜鉛(ZMO:Zn1-xMgxO)を電子選択層として用いたペロブスカイト太陽電池が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.J. Li, T.C. Sum et al., Nat. Commun. 2017, 8, 14350
【非特許文献2】C. Ding, Q. Shen et al., Nano Energy 53, 17-26, November 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MAPbI3、FAPbI3などのハイブリッド型ハロゲン化鉛ペロブスカイト量子ドットは長い絶縁性のリガンドをもち、効率よくホットキャリアを取り出すことが難しい。ペロブスカイト量子ドットからホットキャリアを素早く、具体的には、ホットキャリアの緩和時間よりも早く取り出すことができれば、エネルギー変換効率はさらに向上する。本発明は、ホットキャリアを効率的、かつ高速に取り出すことのできるナノ材料と、その作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ナノ材料は、一般式ABX3(A=Cs,FA,MA、B=Pb2+,Sn2+、X=I-、Br-、Cl-)で表されるハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットと、前記量子ドットに結合する電気陰性のフラーレン誘導体リガンドと、を有する。
【0008】
ナノ材料の作製方法は、
ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットが分散された量子ドット有機溶液に、カルボキシ基(‐COOH)を化学アンカー基として有するフラーレン誘導体を混合し、
前記量子ドットに結合しているオレイン酸リガンドを、前記カルボキシ基から水素イオンが離脱した電気陰性のフラーレン誘導体リガンドで置換して、ナノ材料を取得する。
【発明の効果】
【0009】
ホットキャリアを高効率、かつ迅速に取り出すことができるナノ材料とその作製方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施形態で用いるフラーレン誘導体の一例を示す図である。
【
図1B】実施形態で用いるフラーレン誘導体の別の例を示す図である。
【
図1C】実施形態で用いるフラーレン誘導体のさらに別の例を示す図である。
【
図2】
図1A~1Cのフラーレン誘導体の存在を示すNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)スペクトルである。
【
図3】実施形態のナノ材料と、その作製方法を示す模式図である。
【
図4】実施形態のナノ材料の合成を、公知物質と比較して示す図である。
【
図5】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光)スペクトルである。
【
図6】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すXPSスペクトルである。
【
図7】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すXPSスペクトルである。
【
図8】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すFTIR(Fourier-Transform Infrared spectroscopy:フーリエ変換赤外分光)スペクトルである。
【
図9】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すFTIRスペクトルである。
【
図10】量子ドットとフラーレン誘導体リガンドの相互作用を示すFTIRスペクトルである。
【
図11】量子ドットとフラーレン誘導体材料のPYS(Photoelectron Yield Spectroscopy:光電子収量分光)スペクトルである。
【
図12】フラーレン誘導体材料の(αhν)
2-hνプロットである。
【
図13】量子ドットとフラーレン誘導体材料のバンド構造を示す図である。
【
図14】各種サンプルの光吸収スペクトルを示す図である。
【
図15】
図14の光吸収スペクトルの2次微分を示す図である。
【
図16】各種サンプルのPL(Photoluminescence:発光)スペクトルの図である。
【
図17】各種サンプルの光励起キャリアの寿命を示す図である。
【
図18】各種サンプルのXRD(X-ray diffraction:X線回折)スペクトルを示す図である。
【
図19】各種サンプルのPL強度の励起光強度依存性を示す図である。
【
図20】各種サンプルの量子ドット中のホットキャリアの存在時間を示す図である。
【
図21】各種サンプルのホットキャリアの温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1A~
図1Cは、実施形態で用いるフラーレン誘導体の例を示す。実施形態のナノ材料は、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットに、電気陰性のフラーレン誘導体のリガンドを結合することで、ホットキャリアの取り出しを促進する。量子ドットに配位する電気陰性のフラーレン誘導体リガンドを得るに先立って、化学アンカー基としてカルボキシ基(-COOH)を有するフラーレン誘導体を準備する。フラーレンは、60個の炭素原子(C)が球状の構造体を形成しており、優れた電子受容体である。発明者らは、フラーレンの表面に有機化合物が結合したフラーレン誘導体を、有機半導体リガンドとして量子ドットと組み合わせることができるのではないか、という技術思想に基づいて、本発明を成すに至った。量子ドットの表面にフラーレン誘導体リガンドを結合することで、量子ドットから効率良くホットキャリアを取り出し、太陽電池のエネルギー変換効率を向上する。
【0012】
図1Aは、-COOHを有するフラーレン誘導体22Aとして、PCBA(Phenyl-C61-Butyric acid:フェニルC61酪酸)を示す。PCBAは、PCBM(Phenyl-C61-Butyric acid methyl ester:フェニルC61酪酸メチル)を加水分解することで得られ、フラーレンの表面に、炭素(C)と酸素(O)の二重結合(C=O)、及び、Cと水酸基(OH)の一重結合を有する。たとえば、20mLのクロロベンゼン(C
6H
5Cl)に、100mg、0.147mmоlのPCBMを加えた溶液を、窒素雰囲気下で3時間還流する。この溶液に、12M、2mLの塩酸(HCl)と、5mLの酢酸を一度に加え、反応混合物を16時間還流する。その後、減圧下で溶媒を除去して得られた残留物を、メタノール(MeOH)からの沈殿により精製して、褐色の固体PCBA(55mg、56%)を得る。このPCBAから水素が離脱したルイス塩基の形態でのフラーレン誘導体を、リガンド置換により、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットに結合する。リガンド置換については、
図3を参照して後述する。
【0013】
図1Bは、-COOHを有するフラーレン誘導体22BとしてBis-PCBAを示す。Bis-PCBAは、Bis-PCBMを加水分解することで得られる。Bis-PCBMは、フラーレンの表面にフェニル環(C
6H
5)とメトキシカルボニル基(-COOCH
3)の組を2組有し、
図1Aと同じ方法で加水分解することで、フラーレンの表面にカルボキシ基を2つ有するBiS-PCBAが得られる。すなわち、Bis-PCBMのクロロベンゼン溶液に塩酸と酢酸を一度に加え、16時間の還流を経て沈殿生成により、-COOHを2つ有するBis-PCBAを取得する。このBis-PCBAから水素が離脱した電気陰性のフラーレン誘導体を、リガンド置換により、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットに結合する。
【0014】
図1Cは、-COOH基を有するフラーレン誘導体22Cとして、4-(1',5'-ジヒドロ-1'-メチル-2' H-[5,6]フラーレノ-C60-Ih-[1,9-c]ピロル-2'-イル)安息香酸(C60-SAM)を示す。C60-SAMとして、入手可能な市販品であるSigma Aldrich社製の製品(純度99%以上)を用いることができる。C60-SAMから水素が離脱した電気陰性のフラーレン誘導体を、リガンド置換により、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドットに結合する。
【0015】
図2は、
図1A、
図1B、及び
図1Cのフラーレン誘導体22A、22B、22Cの存在を示すNMRスペクトルである。横軸は化学シフトδ(ppm)、縦軸は強度(任意単位)である。化学シフトδは、標準物質であるテトラメチルシラン(TMS)のメチル基の共鳴周波数を基準(ゼロ)として、この基準信号からの共鳴周波数のずれを測定周波数で割り算した値である。
【0016】
PCBA、Bis-PCBA、C60-SAMのそれぞれを、テトラヒドロフラン(THF)とカーボンブラック(CB)の溶液に分散して、NMRスペクトルを測定する。各NMRスペクトルで、8.0の近傍と、7.3の前後に現れるピークは、水素(2H)のピークである。
【0017】
カルボン酸、すなわち分子中に-COOHを含む化合物のNMRスペクトルのピークは10~15ppmに現れることが知られている。この領域のスペクトルを拡大すると、δが11.0の位置にPCBAとBis-PCBAのピークが現れ、δが11.7の位置にC60-SAMのピークが現れる。ここから、上述した化学反応により、化学アンカー基として-COOHを有するPCBA、Bis-PCBA、及びC60-SAMが得られていることが確認される。
【0018】
図3は、実施形態のナノ材料と、その作製方法を示す模式図である。まず、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドット21が分散された有機(トルエンまたはクロロベンゼン)溶液である量子ドット有機溶液25に、フラーレン誘導体22A、22B、または22Cを混合する。フラーレン誘導体22A、22B、または22Cを混合する前の量子ドット溶液25では、オレイン酸から水素カチオンが離脱したOA
-が量子ドット21の表面に配位されている。より具体的には、アニオン基であるROO
-が、量子ドット21のPbカチオンと結合する。
【0019】
フラーレン誘導体の配位プロセスは、オレイン酸の配位プロセスと類似する。-COOHを有するフラーレン誘導体を量子ドット有機溶液25に混合すると、-COOHから水素カチオンが離脱して、ルイス塩基の形態の化学ラジカルに変化する。ルイス塩基は、共有結合に使われずに供与できる電子対を少なくとも一つ有する原子、分子、またはイオンである。水素カチオンが離脱したルイス塩基の形態でのフラーレン誘導体は電気陰性であり、量子ドット21に結合しているオレイン酸(OA-)リガンドと速やかに置き換わって、Pb+と結合する。得られたナノ材料20A、20B、または20Cは、ハロゲン化金属ペロブスカイトの量子ドット21に、電気陰性のフラーレン誘導体リガンド23A、23B、または23Cが結合したものである。以下では、ナノ材料20A、20B、及び20Cを、適宜「ナノ材料20」と総称する。
【0020】
図3の例で、量子ドット21はCsPbI
3であるが、この例に限定されない。一般式ABX
3で表されるハロゲン化金属ペロブスカイトのAサイトのカチオンとして、セシウム(Cs
+)に替えて、メチルアンモニウム[CH
3NH
3]
+、ホルムアミジニウム[NH
2CH=NH
2]
+、またはそれらの混合物を用いてもよい。Bサイトの金属として、Pbに替えて、Sn、またはPbとSnの合金を用いてもよい。Xは、(I、Br、Cl)から選択されるハロゲン元素、またはそれらの混合ものである。AサイトにCsが用いられる場合は、無機ハロゲン化金属ペロブスカイトとなる。
【0021】
フラーレン誘導体リガンド23A、23B、または23Cはn型有機半導体であり、後述するように、量子ドット21からホットキャリアを迅速に取り出すことができる。ナノ材料20A、20B、または20Cを太陽電池に適用することで、エネルギー変換効率を大きく改善することができる。
【0022】
図4は、実施形態のナノ材料の合成を、公知物質と比較して示す図である。
図4の(A)で、溶媒として、トルエン、PCMB溶液、Bis-PCBM溶液、PCBA溶液、Bis-PCBA溶液、及びSAM-C60溶液の6種類のサンプルを準備する。PCBA溶液、Bis-PCBA溶液、及びSAM-C60溶液は、
図1A~1Cのカルボキシ基(-COOH)を有するフラーレン誘導体22A、22B、22Cをトルエンに溶解した溶液であり、その濃度は2mg/ml程度である。比較として、トルエンと、トルエンにPCBMを溶解したPCBM溶液と、トルエンにBis-PCBMを溶解したBis-PCBM溶液を準備する。トルエンは、常温で無色透明な液体である。それ以外の溶液は、薄い褐色の透明な液体である。
【0023】
図4の(B)は、CsPbI
3量子ドットのトルエン溶液中に、少量のフラーレン誘導体の溶液(
図4(A)の溶液)を混合したサンプルである。CsPbI
3量子ドットのトルエン溶液と、この量子ドットトルエン溶液にPCBM溶液、またはBis-PCBM溶液を混合すると、赤褐色の溶液になる。これに対し、実施形態のフラーレン誘導体を含むPCBA溶液、Bis-PCBA溶液、及びSAM-C60溶液をCsPbI
3量子ドットのトルエン溶液(量子ドット有機溶液25)に混合すると、実施形態のナノ材料20が生成され、光を吸収して黒色の液体に変化する。
【0024】
図4の(C)で各サンプルに光を照射する。CsPbI
3量子ドット有機溶液にトルエン、PCBM溶液、及びBis-PCBM溶液にを混合したサンプルは、蛍光を発する。これに対し、PCBA溶液、Bis-PCBA溶液、及びSAM-C60溶液をCsPbI
3量子ドット有機溶液に混合した実施形態のサンプルは、蛍光しない。この事実は、実施形態のサンプルで光照射によりCsPbI
3量子ドット内で励起された電子(ホットキャリア)は、再結合するよりも早くフラーレン誘導体リガンドに取り出されていることを裏付けている。一方、トルエン、PCBM溶液、及びBis-PCBM溶液が添加されたCsPbI
3量子ドット溶液では、励起された電子は外に取り出されずに減衰または減少し、光を放出して基底状態へと戻る。
【0025】
図4の(C)から、実施形態のナノ材料20A~20Cでは、量子ドット21の表面に結合したフラーレン誘導体リガンド23A、23B、23C(以下、適宜「フラーレン誘導体リガンド23」と総称する)が、ホットキャリア取出し層として有効に機能していることがわかる。フラーレン誘導体リガンド23をホットキャリア取出し層として用いることで、ホットキャリアの緩和時間よりも早くホットキャリアを取り出すことができる。
【0026】
<量子ドットと有機半導体リガンドとの分子相互作用>
図5から
図7は、量子ドットと有機半導体リガンドとの分子相互作用を示すXPSスペクトルである。
図5は、CsPbI
3と、PCBMを添加したCsPbI
3量子ドット溶液(図中で「PCBM-CsPbI
3」と表記)と、PCBAを添加したCsPbI
3量子ドット溶液(図中で「PCBA-CsPbI
3」と表記)の鉛(Pb)の4f 7/2光電子のXPSスペクトルである。
図6は、CsPbI
3と、PCBM-CsPbI
3と、PCBA-CsPbI
3のヨウ素(I)の3d 5/2光電子のXPSスペクトルである。
図7は、CsPbI
3と、PCBM-CsPbI
3と、PCBA-CsPbI
3のセシウム(Cs)の1s光電子のXPSスペクトルである。
【0027】
PCBAと結合したCsPbI3の量子ドットでは、I3dとCs1sのピークが低い結合エネルギー側にシフトし、Pb4fのピークは高い結合エネルギー側にシフトしている。これは、量子ドットの表面で、-COO-と配位対象のPb2+イオンとの間に配位結合が形成されていることを示唆している。
【0028】
<量子ドットと有機半導体リガンドとの配位相互作用>
図8、
図9、及び
図10は、量子ドットと有機半導体リガンドの配位相互作用を示すFTIRスペクトルである。
図8は、CsPbI
3、PCBM、PCBA、CsPbI
3量子ドット溶液にPCBMを添加した溶液(図中「CsPbI
3+PCBM」と表記)、及び、CsPbI
3量子ドット溶液にPCBAを添加した溶液(図中「CsPbI
3+PCBA」と表記)のFTIRスペクトルを示す。
【0029】
CsPbI3とPCBAの混合溶液(CsPbI3+PCBA)は、波数1200cm-1の近傍にC-O伸縮振動を有する。このC-O伸縮振動は、オレイン酸リガンドのC-O伸縮振動と同じである。また波数1350cm-1の近傍にO-H曲げ振動を有し、3450cm-1の近傍に、O-H伸縮振動を有する。一方、CsPbI3量子ドットと結合する前のPCBAは、化学アンカー基として-COOHを有し、1700cm-1の近傍にカルボン酸のC=O伸縮振動を有する。
【0030】
無機材料であるCsPbI
3を除いて、有機化合物を含む4つのサンプルは、1730cm
-1の近傍に、カルボン酸エステルのC=O伸縮振動を有する。このうち、CsPbI
3量子ドットと結合した後のPCBAは、カルボン酸エステルのC=O伸縮振動が、より高い波数にシフトしている。これは、CsPbI
3量子ドットと、電気陰性のPCBAフラーレン誘導体との効果的な結合を表している。また、O-H伸縮振動、及びO-H曲げ振動の新たなピークの出現と、オレイン酸リガンドからのC-O伸縮振動は、
図3を参照して述べたリガンド置換のメカニズムが働いていることを証明している。
【0031】
図9は、CsPbI
3とBis-PCBAの混合溶液(スペクトルD)、CsPbI
3とBis-PCBMの混合溶液(スペクトルE)、CsPbI
3(スペクトルF)、Bis-PCBA(スペクトルG)、及びBis-PCBM(スペクトルH)のFTIRスペクトルである。CsPbI
3とBis-PCBAの混合溶液のスペクトルDは、波数1200cm
-1の近傍に、オレイン酸リガンドからのC-O伸縮振動を有し、波数1350cm
-1の近傍にO-H曲げ振動を有し、3450cm
-1の近傍にO-H伸縮振動を有する。
【0032】
CsPbI
3量子ドットと結合する前のBis-PCBAは、化学アンカー基として-COOHを有し、そのスペクトルGは1700cm
-1の近傍に、カルボン酸のC=O伸縮振動を有する。無機材料であるCsPbI
3を除いて、有機化合物を含む4つのサンプルのスペクトルD、E、G、Hは、1730cm
-1の近傍に、カルボン酸エステルのC=O伸縮振動を示す谷を有する。これらのスペクトルのうち、CsPbI
3量子ドットと結合した後のBis-PCBAのスペクトルDで、カルボン酸エステルのC=O伸縮振動がより高い波数にシフトしている。ここから、CsPbI
3量子ドットと電気陰性のBis-PCBAフラーレン誘導体との効果的な結合が確認される。3450cm
-1近傍のO-H伸縮振動、及び1350cm
-1の近傍のO-H曲げ振動のピークと、1200cm
-1近傍のC-O伸縮振動は、
図3を参照して説明したリガンド置換のメカニズムが働いていることを証明している。
【0033】
図10は、CsPbI
3とC60-SAMの混合溶液(スペクトルI)、CsPbI
3(スペクトルJ)、及びC60-SAM(スペクトルK)のFTIRスペクトルである。CsPbI
3とC60-SAMの混合溶液のスペクトルIは、波数1200cm
-1の近傍に、オレイン酸リガンドからのC-O伸縮振動を有し、波数1350cm
-1の近傍にO-H曲げ振動を、3450cm
-1の近傍に、O-H伸縮振動を有する。
【0034】
CsPbI
3量子ドットと結合する前のC60-SAMは、化学アンカー基として-COOHを有し、そのスペクトルKは1700cm
-1の近傍に、カルボン酸のC=O伸縮振動を有する。無機材料であるCsPbI
3を除くスペクトルIとKを比較すると、CsPbI
3量子ドットと結合した後のC60-SAMのスペクトルIで、カルボン酸エステルのC=O伸縮振動が、より高い波数にシフトしている。ここから、CsPbI
3量子ドットと電気陰性のC60-SAMフラーレン誘導体との効果的な結合が確認される。3450cm
-1近傍のO-H伸縮振動、及び1350cm
-1の近傍のO-H曲げ振動のピークと、1200cm
-1近傍のC-O伸縮振動は、
図3を参照して説明したリガンド置換のメカニズムが働いていることを証明している。
【0035】
<量子ドットとフラーレン誘導体のバンド構造>
図11は、量子ドットとフラーレン誘導体材料の光電子収量分光(PYS:)スペクトルを示す。横軸は光エネルギー(eV)、縦軸は収量強度の1/3乗である。PYSスペクトルから分子の最高占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbit)に相当する価電子帯上端(VBM:Valence Band Maximum)のエネルギーレベルを求めることができる。
【0036】
図11の(A)は、PCBMとPCBAのPYSスペクトルである。それぞれのPYSスペクトルの直線フィッティングとベースライン(収量
1/3=0)との交点が、分子のイオン化ポテンシャルに相当するVBMレベルである。PCBMのVBMレベルは6.10eV、PCBAのVBMレベルは6.20eVである。
【0037】
図11の(B)は、Bis-PCBMとBis-PCBAのPYSスペクトルである。それぞれのPYSスペクトルの直線フィッティングとベースラインとの交点から、Bis-PCBMのVBMレベルは6.10eV、Bis-PCBAのVBMレベルは6.28eVと求められる。
図11の(C)は、C60-SAMのPYSスペクトル、
図11の(D)は、CsPbI
3量子ドットのPYSスペクトルである。それぞれのPYSスペクトルの直線フィッティングとベースラインとの交点から、C60-SAMのVBMレベルは6.21eV、CsPbI
3量子ドットのVBMレベルは5.47eVである。
【0038】
各フラーレン誘導体材料のVBMレベルが分かったので、バンドギャップが分かれば、それぞれの伝導帯下端(CBM:Conduction Band Minimum)が求まる。物質のバンドギャップは、その吸収スペクトルから求めることができる。CsPbI3量子ドットのCBMでも、フラーレン誘導体材料と同じ方法で求める。
【0039】
図12は、フラーレン誘導体材料の(αhν)
2-hνプロットである。直接遷移半導体を前提として、エネルギー(hν)に対して、(αhν)
2をプロットする。
図12の(A)で、PCBMとPCBAの立ち上がりの直線フィッティングとベースラインの交点がバンドギャップを表す。PCBMとPCBAのバンドギャップはほぼ同じであり、1.74eVである。
図12の(B)で、Bis-PCBMとBis-PCBAのバンドギャップはほぼ同じであり、1.72eVである。
図12の(C)で、C60-SAMのバンドギャップは1.73eVである。
【0040】
図13は、量子ドットと各フラーレン誘導体のバンド構造を示す。
図13は、
図11と
図12の測定結果に基づいて作成されている。ここでは、伝導帯のエネルギーレベルの値は、イオン化エネルギーが小さいほど価電子帯レベルが高いという意味で、小さい値で示されている。
【0041】
<各種サンプルの光学特性>
図14は、各種サンプルの光吸収スペクトルを示す。横軸はエネルギー(eV)、縦軸は吸光度である。サンプルLはCsPbI
3量子ドット溶液、サンプルMは、PCBMとCsPbI
3量子ドット溶液の混合溶液、サンプルNは、Bis-PCBMとCsPbI
3量子ドット溶液の混合溶液である。サンプルO、P、Qは実施形態のナノ材料20A、20B、20Cに対応する。すなわち、サンプルOは、PCBAとCsPbI
3量子ドット溶液の混合溶液、サンプルPは、Bis-PCBAとCsPbI
3量子ドット溶液の混合溶液、サンプルQは、C6-SAMとCsPbI
3量子ドット溶液の混合溶液である。
【0042】
図14の状態では、各種サンプルの光吸収スペクトルの違いが分かりにくい。そこで、
図15に、
図14の光吸収スペクトルの二次微分を示す。二次微分は、変化率の変化率であり、極大、極小を含む吸収の強弱が顕著になる。サンプルL、M、Nは、吸収の強弱の差が大きく、量子ドットとフラーレン誘導体との相互作用が小さいことを示す。これに対し、実施形態のサンプルO、P、Qは吸収の強弱の差が小さく、極大のピーク幅が非常に広いことから、量子ドットとフラーレン誘導体との相互作用が大きいことがわかる。
【0043】
図16は、各種サンプルのPLスペクトルを示す。サンプルL、M、Nは、いずれも1.846eVに発光のピークを有する。これは、サンプルL、M、Nでフラーレン誘導体の相互作用がほとんどなく、CsPbI
3量子ドットの発光が支配的になっていることを示す。これに対し、実施形態のサンプルO、P、Qの発光は、ノイズに埋もれる程に小さく、肉眼での観察では蛍光は認識されない。ノイズを除去すると、サンプルOとサンプルPの小さな発光のピークは、1.872eVにシフトし、サンプルQのピークは、1.852eVにシフトしている。ここから、実施形態のナノ材料20では、CsPbI
3量子ドットとフラーレン誘導体の配位相互作用により、励起された電子(ホットキャリア)が速やかに取り出されて発光しないことがわかる。この結果は、
図4の(C)の外観観察と一致する。
【0044】
図17は、各種サンプルの光励起キャリアの寿命を示す。横軸は時間(ns)、縦軸はCsPbI
3量子ドットのフォトルミネッセンス(PL)の強度(時間0でのPL強度で規格したもの)である。各サンプルにパルスの励起光を照射し、励起光を照射した部分からのPLの強度変化を測定する。光励起キャリアの寿命は、PL強度がピークの1/eになるまでにかかる時間で求められる。
図17の枠内に、0.5nsから0.25nsの時間領域を拡大したスペクトルを示す。
【0045】
図17の測定結果から、サンプルL、M、Nの光励起キャリアの寿命は、10~20nsと見積もられる。サンプルL、M、Nの光励起キャリアのエネルギーは、10~20nsの間に減衰し、再結合により発光して基底レベルに戻る。これに対し、実施形態のサンプルO、P、Qのキャリア寿命は、数十ピコ秒である。これは、光励起されたホットキャリアがその緩和時間よりも早く、量子ドットからPCBA、Bis-PCBA、またはC60-SAMのフラーレン誘導体に取り出されていることを示す。
【0046】
図18は、各種サンプルのX線回折スペクトルを示す。サンプルLからサンプルQのすべてが、同じ角度(2θ)位置に回折ピークを有する。すなわち、化学アンカー基(-COOH)をもつフラーレン誘導体を導入することで、CsPbI
3量子ドットから迅速にホットキャリアを取り出してその電子状態を変化させるが、量子ドットの材料構造自体は変化しないことがわかる。
【0047】
図19は、各種サンプルのPL強度の励起光強度依存性を示す。横軸は励起強度(μW)、縦軸はPL強度(任意単位)である。結晶に印加される局所電場が高くなると、励起子の安定性が弱められ、CsPbI
3量子ドット固有の電荷再結合メカニズムが変化し得る。PL強度を励起強度I
excの関数として測定すると、PL発光強度I
PLは、励起強度I
excのべき乗に比例する(I
PL∝(I
exc)
C)。実施形態のサンプルO、P、Qでは、PCBA、Bis-PCBA、C60-SAMを導入することで、サンプルL、M、Nと比較して、関係式のべき乗の値が、0.9から1.4に増大している。これは、実施形態の有機無機ハイブリッドのシステムにおいて励起子の結合が弱いことを示している。
【0048】
図20は、各種サンプルの量子ドット中のホットキャリアの存在時間、すなわちホットキャリア取出し時間を示す。横軸は時間(ps)、縦軸は正規化された吸光度(ΔA/A)である。サンプルL、M、Nと比較して、実施形態のサンプルO、P、Qは、量子ドット中のホットキャリアの存在時間が非常に短い。正規化吸光度が1/eに減少する時間は、サンプルL、M、Nでは約22.5psであるのに対し、実施形態のサンプルO、P、Qのホットキャリア取出し時間はそれぞれ7.7ps、3.7ps、13.5psである。これは、励起されたホットキャリアは量子ドットからフラーレン誘導体リガンドへと素早く取り出されるからである。
【0049】
図20から、実施形態のサンプルO、P、Qのホットキャリアの取出し効率ηを見積もる。ホットキャリアの取出し効率ηは、それぞれのホットキャリアの寿命とサンプルLの寿命22.5psから、以下の式で求められる。
【0050】
η=(1/τSEL - 1/τ0)/(1/τSEL)、
ここで、τ0はCsPbI3量子ドットのみを含むサンプルLのホットキャリア寿命、τSELはCsPbI3量子ドット溶液に選択された材料が添加されたサンプルのホットキャリア寿命である。見積の結果、ホットキャリアの取出し効率ηは、は、PCBAで66.1%(ηPCBA=66.1%)、Bis-PCBAで83.8%(ηBis-PCBA=83.8%、C60-SAMで40.2%(ηC60-SAM=40.2%)である。化学アンカー基(-COOH)を有するフラーレン誘導体を用いることで、高いホットキャリア取出し効率が達成される。
【0051】
図21は、種々の材料のホットキャリアの温度変化を示す。サンプルL、M、Nでホットキャリアの冷却にかかる時間が長く、25psかけてゆっくりと冷却される。これに対し、実施形態のサンプルO、P、Qの冷却時間は短い。量子ドット中のホットキャリアの温度変化の違いは、ホットキャリアのフラーレン誘導体リガンドへの移動の有無を表している。
図21からも、化学アンカー基(-COOH)を有するフラーレン誘導体を量子ドットに結合することで、優れたホットキャリア取出し特性が得られることがわかる。
【0052】
<太陽電池への適用>
図22は、実施形態の太陽電池10の模式図である。太陽電池10は、第1電極11、電子輸送層12、光活性層13、正孔輸送層14、及び第2電極15を有し、これらの層がこの順で積層されている。実施形態のナノ材料20A、20B、または20Cは、光活性層13の形成に用いられる。量子ドットに電気陰性のフラーレン誘導体リガンドが結合したナノ材料20は、有機溶媒中に分散されている。この溶液を塗布、アニールすることで、表面にホットキャリア取出し層を有するハロゲン化金属ペロブスカイト量子ドットの層が形成される。この量子ドットの層を光活性層13として用いる。
【0053】
第1電極11は光入射側に設けられ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電膜で形成される。電子輸送層12は、ZnO、TiO2等の酸化物半導体で厚さ50nm程度に形成される。光活性層13は、実施形態のナノ材料20で形成された、厚さ450nm程度のハロゲン化金属ペロブスカイト量子ドットの層である。
【0054】
正孔輸送層14は、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の分散体)などのポリマーを用いてもよいし、エチレンジオキシチオフェン(EDT)で処理(置換)された量子ドットの層を用いてもよい。第2電極15は、金(Au)等の良導体で形成される。
【0055】
太陽電池10の光活性層13は、太陽光の入射によりハロゲン化金属ペロブスカイト量子ドットの内部で励起されたホットキャリアが、迅速にフラーレン誘導体リガンドに取り出され、電子輸送層12から第1電極11に収集される。このホットキャリアの取出し機能によって、太陽電池10のエネルギー変換効率が向上する。
【符号の説明】
【0056】
10 太陽電池
11 第1電極
12 電子輸送層
13 光活性層
14 正孔輸送層
15 第2電極
20、20A、20B、20C ナノ材料
21 量子ドット
22A、22B、22C フラーレン誘導体
23、23A、23B、23C フラーレン誘導体リガンド