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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121545
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】固着具打込み機
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20230824BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230824BHJP
   B25H 5/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
E04G21/16
B25H5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024943
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
(72)【発明者】
【氏名】村井 孝司
(72)【発明者】
【氏名】野村 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
【テーマコード(参考)】
2E174
3C012
3C068
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174DA17
2E174DA34
2E174DA52
2E174DA63
3C012BL02
3C068AA01
3C068AA04
3C068BB01
3C068CC02
3C068GG20
(57)【要約】
【課題】天井等の高い位置に配置された被施工体に対して固着具を打込むときに作業負担を軽減し、固着具を安定して打込み可能な固着具打込み機を提供する。
【解決手段】固着具打込み機1は、被施工体3に固着具15を打込む打込み工具10と、打込み工具10が取り付けられ、上下方向に延びている支柱部20と、支柱部20を支持する基部30と、支柱部30に設けられ、被施工体3と当接することで被施工体3からの反力を受けて支柱部30を支持する補助部40と、を備え、補助部40は、支柱部20に設けられ、被施工体3側へ延出するアーム部材41と、アーム部材41の延出端部41b側に設けられ、被施工体3と当接する当接部材42と、当接部材42を被施工体3側へ押し付ける方向へ付勢する弾性部材43と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施工体に固着具を打込む打込み工具と、
前記打込み工具が取り付けられ、上下方向に延びている支柱部と、
前記支柱部を支持する基部と、
前記支柱部又は前記基部に設けられ、前記被施工体と当接することで前記被施工体からの反力を受けて前記支柱部を支持する補助部と、を備え、
前記補助部は、
前記支柱部又は前記基部に設けられ、前記被施工体側へ延出するアーム部材と、
前記アーム部材の延出端部側に設けられ、前記被施工体と当接する当接部材と、
前記当接部材を前記被施工体側へ押し付ける方向へ付勢する弾性部材と、を有することを特徴とする固着具打込み機。
【請求項2】
前記被施工体は、建物の天井に取り付けられるボードであって、
前記アーム部材は、前記支柱部に対して前記支柱部の延出方向とは直交する方向を軸として回動可能に取り付けられ、
前記弾性部材は、
前記支柱部と前記アーム部材を接続し、
前記支柱部に対して前記アーム部材を前記支柱部側へ近づけるように付勢することで、前記当接部材を前記被施工体側へ押し付けることを特徴とする請求項1に記載の固着具打込み機。
【請求項3】
前記アーム部材は、前記支柱部に取り付けられ、前記支柱部の延出方向に沿って延出し、
前記弾性部材は、
前記アーム部材の延出端部と、前記当接部材とを接続し、
前記アーム部材に対して前記当接部材を前記被施工体側へ押し付けることを特徴とする請求項1に記載の固着具打込み機。
【請求項4】
前記基部は、
前記支柱部を下方から支持する台車部と、
前記台車部から上方に突出する立設部と、
前記立設部の突出端部に設けられた把持部と、
前記把持部の近傍に設けられ、作業者の操作に応じて前記打込み工具を動作させる操作部と、を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固着具打込み機。
【請求項5】
前記支柱部は、前記台車部上において前記把持部が設けられた側とは反対側の端部に設けられ、
前記補助部は、前記支柱部に取り付けられ、前記支柱部から前記把持部側とは反対側に突出しないように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の固着具打込み機。
【請求項6】
前記支柱部は、
前記支柱部の上端部に設けられる固定部材と、
前記固定部材に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記打込み工具を固定する移動部材と、
前記移動部材と前記操作部を連結する連結部材と、を有し、
前記連結部材は、前記作業者による前記操作部の操作に伴って、前記打込み工具を動作させるように作用することを特徴とする請求項4又は5に記載の固着具打込み機。
【請求項7】
前記連結部材に沿って配置され、前記連結部材の延出方向をガイドするガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記作業者による前記操作部の所定方向の移動操作を、前記移動部材の上下方向の移動動作に変換するように前記連結部材の延出方向をガイドすることを特徴とする請求項6に記載の固着具打込み機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施工体に対して固着具を打込む固着具打込み機に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の内装材を施工する際には、建材に対し釘、ビス、ステープル等の固着具を打込む工具が用いられている(例えば特許文献1参照)。
また、建物の天井パネルに対し石膏ボード(天井ボード)を取り付けるために、天井パネルに対し石膏ボードを押し付けた状態で固着具を打込む作業を軽減する固着具打込み機について開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-142900号公報
【特許文献2】特開2018-171681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井等の高い位置に配置された建材に対しては、作業者が脚立に乗って固着具の打込み作業を行うことが一般的であるが、脚立の上は不安定であり、作業には危険が伴うことがある。また、脚立の移動と打込み作業を繰り返すと作業工程が増えてしまい、作業負担が大きい。
上記特許文献2に開示された固着具打込み機は、長尺の棒状部材の上端部に取り付けられた打込み工具によって、固着具を石膏ボードへ打込む装置である。そのため、脚立を使用せずに、作業者から離れた位置にある石膏ボードに対し固着具を打込むことができる。しかし、固着具打込み機の装置全長が高く、棒状部材の上端部に設けられた打込み工具は重量がある。そうすると、打込み工具が揺れてしまい、固着具の打込み作業が不安定になる虞があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、天井等の高い位置に配置された被施工体に対して固着具を打込むときに作業負担を軽減でき、固着具を安定して打込むことができる固着具打込み機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明に係る固着具打込み機によれば、被施工体に固着具を打込む打込み工具と、前記打込み工具が取り付けられ、上下方向に延びている支柱部と、前記支柱部を支持する基部と、前記支柱部又は前記基部に設けられ、前記被施工体と当接することで前記被施工体からの反力を受けて前記支柱部を支持する補助部と、を備え、前記補助部は、前記支柱部又は前記基部に設けられ、前記被施工体側へ延出するアーム部材と、前記アーム部材の延出端部側に設けられ、前記被施工体と当接する当接部材と、前記当接部材を前記被施工体側へ押し付ける方向へ付勢する弾性部材と、を有することにより解決される。
【0007】
上記の固着具打込み機によれば、天井等の高い位置に配置された被施工体に対して固着具を打込むことができる。これにより、作業者は安定した足場から被施工体に対して固着具を打込むことができ、作業の安全性を向上できる。また、脚立を利用しなくとも高い位置に固着具を打込むことができるため、作業負担を軽減できる。また、高い位置における打込み工具の揺れを低減し、安定して打込む作業ができるため、より精度よく固着具を打込むことができる。
すなわち、上記の固着具打込み機によれば、天井等の高い位置に配置された被施工体に対して固着具を打込む作業の負担を軽減でき、安定して固着具を打込むことができる。
【0008】
また、上記の固着具打込み機において、前記被施工体は、建物の天井に取り付けられるボードであって、前記アーム部材は、前記支柱部に対して前記支柱部の延出方向とは直交する方向を軸として回動可能に取り付けられ、前記弾性部材は、前記支柱部と前記アーム部材を接続し、前記支柱部に対して前記アーム部材を前記支柱部側へ近づけるように付勢することで、前記当接部材を前記被施工体側へ押し付けると良い。
こうすることで、当接部材から被施工体までの距離が一定ではない場所であっても、アーム部材が回動するため、支柱部に対するアーム部材の支持力を調整する手間を軽減することができる。また、支柱部を移動させながら打込み作業をする場合でも、簡易な構成により支柱部を支持することができる。
【0009】
また、上記の固着具打込み機において、前記アーム部材は、前記支柱部に取り付けられ、前記支柱部の延出方向に沿って延出し、前記弾性部材は、前記アーム部材の延出端部と、前記当接部材とを接続し、前記アーム部材に対して前記当接部材を前記被施工体側へ押し付けると良い。
こうすることで、当接部材から被施工体までの距離が一定ではない場所でも、当接部材が可動するため、支持力を調整する手間を軽減することができる。また、支柱部の先端に取り付けられる打込み工具が重くても、補助部が打込み工具の近傍で支柱部を支持することができる。そのため、高い位置における打込み工具の揺れを低減し、安定して打込み作業を行うことができる。
【0010】
また、上記の固着具打込み機において、前記基部は、前記支柱部を下方から支持する台車部と、前記台車部から上方に突出する立設部と、前記立設部の突出端部に設けられた把持部と、前記把持部の近傍に設けられ、作業者の操作に応じて前記打込み工具を動作させる操作部と、を有していると良い。
こうすることで、台車部により、支柱部を安定した状態でスムーズに移動させることができる。また、作業者の手元で操作ができ、移動させながら打込み作業を行うことができるため、作業性が向上する。
【0011】
また、上記の固着具打込み機において、前記支柱部は、前記台車部上において前記把持部が設けられた側とは反対側の端部に設けられ、前記補助部は、前記支柱部に取り付けられ、前記支柱部から前記把持部側とは反対側に突出しないように配置されていると良い。
こうすることで、打込み工具が取り付けられた支柱部が作業者から見て奥側の離れた位置にあり、支柱部に取り付けられた補助部が作業者側に寄せた位置に配置される。そのため、作業者は壁際まで台車を近づけて作業することができる。また、打込み工具と作業者の水平位置が離れているため、作業者は上向き作業とならず、作業負担を軽減できる。
【0012】
また、上記の固着具打込み機において、前記支柱部は、前記支柱部の上端部に設けられる固定部材と、前記固定部材に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記打込み工具を固定する移動部材と、前記移動部材と前記操作部を連結する連結部材と、を有し、前記連結部材は、前記作業者による前記操作部の操作に伴って、前記打込み工具を動作させるように作用すると良い。
こうすることで、連結部材に接続された操作部の操作により、固着具を被施工体に打込む機構を簡易な構成により実現できる。これにより、固着具打込み機の上部の重量増加を抑制し、固着具打込み機を倒れにくくする。また、固着具打込み機の重量増加を抑制することで、固着具打込み機を移動させ易くすることができる。
【0013】
また、上記の固着具打込み機において、前記連結部材に沿って配置され、前記連結部材の延出方向をガイドするガイド部材を備え、前記ガイド部材は、前記作業者による前記操作部の所定方向の移動操作を、前記移動部材の上下方向の移動動作に変換するように前記連結部材の延出方向をガイドすると良い。
こうすることで、作業者は、操作部と被施工体とが離れた位置で打込み作業を行うができるため、作業者の上向き作業を軽減することができる。また、簡易な構成で遠隔操作を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る固着具打込み機によれば、天井等の高い位置に配置された被施工体に対して固着具を打込む作業を行うときに作業負担を軽減でき、固着具を安定して打込むことができる固着具打込み機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の固着具打込み機の全体構成を示す図である。
図2】固着具打込み機の打込み動作(操作前)を説明する図である。
図3】固着具打込み機の打込み動作(操作後)を説明する図である。
図4】異なる高さ位置にある被施工体に対する当接部材の当接状態を示す図である。
図5】変形例の固着具打込み機であって、補助部による支柱部の支持状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図4に基づき、本実施形態の固着具打込み機1について説明する。
固着具打込み機1は、釘、ビス、ステープル等の固着具を、木材、石膏ボード等の建材(被施工体)に打込む作業に用いられる。
【0017】
<固着具打込み機1の構成>
固着具打込み機1は、図1図2に示すように、打込み工具10と、支柱部20と、基部30と、補助部40と、連結部50と、作用部60と、から主に構成されている。
なお、固着具打込み機1の基部30が床面に載置された際に、基部30に対して打込み工具10及び補助部40が設けられる側が上方側となる。
【0018】
打込み工具10は、建材等の被施工体に釘、ステープル、ねじ等の固着具15を打込む工具である。例えば、打込み工具10は、その内部に固着具15を保持している。
打込み工具10は、その先端部12が被施工体に押し付けられた状態(当接した状態)でトリガー11が引かれることで、エアコンプレッサからの空気圧によって固着具15を先端部12から打ち出し、被施工体に固着具15を打込む。
先端部12は安全装置として機能する。つまり、先端部12が被施工体に押し付けられていない状態では、トリガー11が引かれた場合であっても、打込み工具10は固着具15を打ち込むことができない。
なお、打込み工具10は、その先端部12が被施工体に押し付けられていない状態で、固着具15を打込み可能としても良い。
【0019】
支柱部20は、図1図4に示すように、長尺の棒状部材21と、棒状部材21に設けられる固定部材22と、固定部材22に対して上下移動可能に設けられる移動部材23と、を備えている。
棒状部材21は、例えば金属製のパイプであって、具体的には、上部パイプ21Aと、上部パイプ21Aに係合される下部パイプ21Bと、を有している。上部パイプ21Aの少なくとも一部は、下部パイプ21Bの内側に挿通されている。
【0020】
上部パイプ21Aのうち、下部パイプ21Bに挿通される挿通部分は、長さ調整部25によって長さ調整可能となっている。
例えば、長さ調整部25の調整部品(図示せず)を反時計回りに回転させて係合状態を緩めることで、上部パイプ21Aのうち下部パイプ21Bに挿通される部分の長さ、すなわち棒状部材21の長さを調整することができる。これに対し、調整部品を時計回りに回転させて係合状態を強めることで、棒状部材21の長さを規定することができる。
固着具打込み機1は、棒状部材21は、長さ調整部25により長さを調整可能とすることで、異なる高さの位置に対して固着具15を打込むことが容易となる。
【0021】
固定部材22は、棒状部材21の上端部21aに固定されている。例えば、固定部材22は、棒状部材21の上端部21aに対し、ビスやボルト等の締結具を用いて固定される。
移動部材23は、図2及び図3に示すように、固定部材22に対し上下方向にスライド可能に取り付けられる。具体的には、移動部材23が固定部材22と係合し、作業者が後述する操作部33を操作することで、移動部材23が固定部材22に対してスライドするようになっている。
ここで、打込み工具10は、例えばビス、ボルト等の締結具によって移動部材23に固定されている。そのため、打込み工具10は、固定部材22に対して移動部材23と一体になって移動することとなる。
【0022】
基部30は、図1図3に示すように、支柱部20を支持する台車部31と、台車部31に設けられた台車把持部32と、打込み工具10を動作させる操作部33と、台車部31を移動させる車輪34と、支柱部20を支持する第一支持体35及び第二支持体36と、を備えている。
台車部31は、棒状部材21の下端部21fに取り付けられ、棒状部材21を下方から支持する支持部材である。台車部31は、上面視で略方形の形状を有しており、作業者側(操作部33側)に位置し、作業時に後側に位置する後方部31aと、右側に位置する右側方部31bと、作業者側とは反対側であって前側に位置する前方部31cと、左側に位置する左側方部31dと、を有している。台車部31の下方側に位置する四隅には、それぞれ4つの車輪34が取り付けられている。
【0023】
棒状部材21は、図1に示すように、台車部31の前方部31cに固定される。つまり、支柱部20が、作業時に前端に位置する前方部31cに固定される。
そうすることで、壁際での作業において被施工体における壁際近傍の場所にも、打込み工具10を近づけて打込み作業を行うことが可能となる。
【0024】
台車把持部32は、下側が開口する略コ字形状に形成されており、台車部31から上方に突出する左右の立設部32aと、左右の立設部32aを連結し、作業者によって把持される把持部32bと、第一支持体35及び第二支持体36を固定するための支持体留具32cと、を有している。
左右の立設部32aは、長尺棒状のパイプ部材であって、台車部31の後方部31aから上方に突出するように固定される。
把持部32bは、水平方向に延在する棒状のパイプ部材であって、立設部32aの突出端部に固定される。作業者は、台車部31に対し後方部31a側に立ち、把持部32bを掴んで、台車部31を前方に押し出すようにして移動させる。
【0025】
操作部33は、図2図3に示すように、作業者の操作に応じて打込み工具10を動作させるものである。
操作部33は、作業者によって操作される操作片33aと、操作片33aを立設部32aに枢着する操作片回動部33bと、を有している。
操作片33aは、下側が開口する略コ字形状に形成されており、後述するワイヤ51と連結されている。操作片回動部33bは、立設部32aに外嵌して固定され、操作片33aの下端を枢着する。
なお、本実施形態では、操作部33は、作業者の手動操作に応じて打込み工具10を動作させるものであるが、ボタンの押し動作による自動操作であっても良い。
【0026】
車輪34は、4つのキャスタ(自在キャスタ)で構成されている。
車輪34は、台車部31が床面と平行な状態となるようにして、基部30を移動可能に支持する。台車部31は、4つの車輪34で移動可能であるため、固着具打込み機1を移動させる労力を軽減できる。
本実施形態では、台車部31を安定して移動可能とするため、比較的大径の車輪34を4つ設ける構成としているが、安定して移動可能であれば良く、車輪34の個数や位置、形状は限定されるものではない。
【0027】
第一支持体35は、立設部32aの支持体留具32cと、支柱部20の下部パイプ21Bに取り付けられた第一支持体取付部21dとに懸架固定される。
第二支持体36は、立設部32aの支持体留具32cと、支柱部20の下部パイプ21Bに取り付けられた第二支持体取付部21eとに懸架固定される。
第一支持体35及び第二支持体36が、支柱部20の下部パイプ21Bに固定されることで、支柱部20は安定して基部30に支持される。
【0028】
補助部40は、図1図4に示すように、長尺のアーム部材41と、アーム部材41の延出端部に設けられる補助輪42と、補助輪42を被施工体側に押し付ける方向へ付勢する中間バネ43と、を備える。
アーム部材41は、例えば金属製のパイプであって、アーム下端部41aが棒状部材21の回動部材24に嵌装されることで、棒状部材21に対して回動可能に支持される。なお、アーム部材41は作業者から見て、打込み工具10と極力重ならない位置に配置されると好適である。
【0029】
アーム部材41は、支柱部20に取り付けられ、支柱部20から把持部32b側とは反対側(すなわち作業時における前端側)に突出しないように配置される。支柱部20は、作業時に前端となる前方部31cに固定され、支柱部20に取り付けられるアーム部材41が前端側に突出しないように配置される。
こうすることで、壁際での作業時でも、被施工体における壁際近傍の場所にも、打込み工具10を近づけて打込み作業が可能となる。
【0030】
補助輪42は、例えば、前後左右方向に回転する自在キャスタであって、アーム部材41のアーム上端部41bに設けられる。補助輪42は、被施工体に当接しながら、支柱部20の移動に追従して回動する。
なお、補助輪42は、自在キャスタではなく、固定キャスタであっても良い。
中間バネ43は、弾性力を有する部材であって、例えばコイルバネで構成される。
中間バネ43の一端部は、アーム下端部41a及びアーム上端部41bの中間部分であるアーム中間部41cに固定され、中間バネ43の他端部は、棒状部材21の弾性部材係止部21bに固定される。これにより、中間バネ43は、アーム部材41を支柱部20側に回動させるように付勢する。
【0031】
補助輪42が被施工体に当接している状態では、補助輪42が、中間バネ43の付勢力によって被施工体に押し付けられて被施工体から反力を受けることで、支柱部20を突っ張り力により支持する。
ここで、突っ張り力とは、補助部40が被施工体(天井面)及び基部30(床面)を押す力である。すなわち、天井面と床面との間で突っ張り支持することができる。
したがって、補助部40によって長尺の棒状部材21が安定して支持され、支柱部20の上端に設けられた打込み工具10の揺れを低減することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、補助部40の当接部材として補助輪42を用いているが、これに限らず、天井面に当接した状態で滑らかに移動可能であれば、キャスタ等の車輪でなくても良い。
例えば、ボールベアリングや、表面をフッ素樹脂加工したローラ等を使用することもできる。また、本実施形態では、補助部40を1つとしているが、補助部40の数はこれに限定されず、複数の補助部40を設けても良い。
【0033】
ここで、図4により、被施工体である石膏ボード3の床面からの高さが、作業場所に応じて異なる場合を説明する。
図4の(A)は、石膏ボード3の床面からの高さが通常の高さである場合を示す。
図4の(B)は、例えば石膏ボード3のたわみ等によって、石膏ボード3の床面からの高さが通常の高さよりもH1だけ低い場合を示す。
図4の(C)は、石膏ボード3の床面からの高さが通常の高さよりもH2だけ高い場合を示す。
【0034】
補助輪42が通常高さの石膏ボード3に当接している状態では、補助輪42が、石膏ボード3に押し付けられて石膏ボード3から反力を受けることで、棒状部材21を突っ張り力により支持する。
固着具打込み機1が移動することに伴って、石膏ボード3の高さ位置が低くなる場合、図4の(B)に示すように、補助輪42は、回動部材24によって棒状部材21から離れる方向へ回動する。
このとき、補助輪42は、中間バネ43によって石膏ボード3側に押し付ける方向へ付勢されるため、石膏ボード3に押し付けられて反力を受けることで、棒状部材21を突っ張り力により支持する。
【0035】
固着具打込み機1が移動することに伴って、石膏ボード3の高さ位置が高くなる場合、図4の(C)に示すように、補助輪42は、回動部材24によって棒状部材21へ近づく方向へ回動する。
このとき、補助輪42は、中間バネ43によって石膏ボード3側に押し付ける方向へ付勢されるため、石膏ボード3に押し付けられて反力を受けることで、棒状部材21を突っ張り力により支持する。
なお、補助輪42が石膏ボード3に当接しない位置では、補助部40が回動部材24によって略鉛直方向に支持される状態となるが、傾斜した状態で支持されることが好ましい。
こうすることで、補助輪42を石膏ボード3に当接させて移動開始する際に、アーム部材41をスムーズに回動させることができる。
【0036】
上記のように、石膏ボード3は、建物の天井パネル2に取り付けた際、1枚のボード内において、床面からの高さが数ミリ異なることがある。そのため、可動式の補助部40とすることで、床面からの高さが異なる場合であっても、適切な突っ張り力により支持することができる。
【0037】
連結部50は、図2図3に示すように、打込み工具10を遠隔操作する機能を有するものであって、ワイヤ51と、ワイヤ51をガイドする第一滑車52及び第二滑車53と、を備えている。
ワイヤ51は、例えば、可撓性を有する金属製の線材であって、操作部33(操作片33a)に固定されるワイヤ操作端部51aと、移動部材23に固定されるワイヤ固定端部51bと、を有している。
本実施形態では、ワイヤ51は可撓性を有する金属製の線材であるが、ナイロン製等であっても良い。また、環状の金属部材を繋げて構成される鎖(チェーン)であっても良い。あるいは、ワイヤ51を用いた遠隔操作ではなく、無線信号等による電気的な遠隔操作であっても良い。
【0038】
第一滑車52は、棒状部材21の上下方向の中間部に設けられた滑車取付部21cに取り付けられ、第一軸部52A周りに回転する。第二滑車53は、棒状部材21の上端部21aに取り付けられ、第二軸部53A周りに回転する。
ワイヤ51は、第一滑車52及び第二滑車53に掛け渡される。
具体的には、ワイヤ操作端部51aが操作片33aに固定され、ワイヤ51は水平方向に延びて、棒状部材21の第一滑車52に沿って配置されると共に、棒状部材21に沿って上方へ向かって延びる。そして、ワイヤ51は棒状部材21の第二滑車53に沿って配置されて、ワイヤ固定端部51bが、第二滑車53より下方に設けられた取付部材23aに固定される。つまり、第一滑車52及び第二滑車53は、ワイヤ51の延出方向をガイドすることとなる。
【0039】
第一滑車52及び第二滑車53は、操作部33の水平方向への移動動作を、移動部材23の上方への移動動作に変換する。
すなわち、図3に示すように、作業者による操作片33aを引く操作に伴って、打込み工具10と移動部材23が、固定部材22に対して上方にスライドすることとなる。
また、操作部33を操作しない状態においては、打込み工具10と移動部材23の自重により、打込み工具10と移動部材23が元の位置(すなわちスライド可能な範囲の最下端位置)に戻る。
【0040】
こうすることで、作業者は、把持部32bに手を置いたまま操作片33aに指をかけて、操作部33を手前に引く操作により、固着具15を被施工体に打込むことができる。
作業者は、固着具打込み機1を移動させる操作と固着具15を打込む操作を、手の位置や姿勢を変えずに行えるため、作業性を向上できる。また、天井等の高い位置に打込む際、作業者が上方を向いたまま、視線を動かさずに手元で操作片33aを操作できるため、作業性が向上する。また、操作片33aを手前に傾斜させる操作は、力を入れやすいため、固着具15を打込む作業性を向上できる。
【0041】
作用部60は、図2図3に示すように、帯状の掛止部61と、掛止部61及び固定部材22に取り付けられたバネ部材62と、を有している。
掛止部61は、ガイド23bに沿って打込み工具10のトリガー11に掛け止めされた状態で、掛止部61の固定端部63が係止部22aに係止されている。
バネ部材62は、例えば弾性力を有するコイルバネであって、その一端部が端部61aに取り付けられ、その他端部が固定部材22(係止部22a)に取り付けられる。
【0042】
ここで、移動部材23が固定部材22に対し通常位置にいるとき、すなわち、移動部材23が固定部材22に対し最下端位置にいるとき、バネ部材62からの引張力が弱いために、トリガー11が掛止部61によって引き下げられていない。
一方で、移動部材23が固定部材22に対し上方にスライドすると、バネ部材62が伸びて、バネ部材62からの引張力が大きくなり、トリガー11が掛止部61により引き下げられることとなる。
【0043】
固着具打込み機1では、作用部60を、固定部材22に取り付けられる固定端部63と、トリガー11に掛止される掛止部61とにより、簡単な機構として構成することができる。これにより、固着具打込み機1の上部の重量増加を抑制し、固着具打込み機1を倒れにくくする。また、固着具打込み機1の重量増加を抑制することで、固着具打込み機1を移動させやすくする。
【0044】
<固着具打込み機1の動作>
次に、図2図3を参照しながら、固着具打込み機1による固着具15の打込み動作について説明する。以下においては、固着具打込み機1を用いた、天井パネル2への石膏ボード3の取り付け作業の操作について説明する。
なお、図2には固着具15を石膏ボード3に打込む前の状態を示し、図3には固着具15を石膏ボード3に打ち込んだ後の状態を示す。
【0045】
まず、作業者は、把持部32bを把持して固着具打込み機1を移動させ、打込み工具10の先端部12を、石膏ボード3における固着具15を打込む位置の近傍に配置する。
このとき、補助部40は、石膏ボード3に当接し、石膏ボード3からの反力を受ける。したがって、補助部40は、石膏ボード3と、床面に載置された基部30に支持された支柱部20との間を突っ張り固定する。
【0046】
次に、作業者は、操作片33aに指をかけて、操作部33を手前に引く。これにより、図3に示すように、打込み工具10と移動部材23がワイヤ51により引き上げられて、打込み工具10の先端部12が石膏ボード3に押し付けられる。
一方、固定部材22の位置は棒状部材21の上端部21aに固定されているため、作用部60のバネ部材62が引き伸ばされ、その引張力により掛止部61が打込み工具10のトリガー11を引くように作用する。
これにより、打込み工具10の先端部12から、固着具15が石膏ボード3に打ち込まれる。
作業者は、把持部32bを把持して固着具打込み機1を移動させながら、上記作業を繰り返し行うことで、石膏ボード3の天井パネル2への取り付けを行うことができる。
【0047】
<変形例>
次に、変形例の固着具打込み機100について、図5に基づいて説明する。
なお、上述の固着具打込み機1と重複する内容については説明を省略する。
固着具打込み機100では、固着具打込み機1と比較して、補助部140の構成が主に異なっている。
【0048】
補助部140は、図5に示すように、長尺のアーム部材141と、アーム部材141のアーム延出端部144に設けられる補助輪142と、補助輪142を被施工体側に押し付ける方向へ付勢する中間バネ143と、を備える。
アーム部材141は、例えばL字形状をした金属製のパイプであって、そのアーム支持端部145が、支柱部120の固定部材122に溶接やボルト等により固定されている。
なお、アーム支持端部145を固定する部位は、固定部材122ではなく、棒状部材121であっても良い。
【0049】
補助輪142は、例えば、前後左右方向に回転する自在キャスタであって、アーム部材141のアーム延出端部144に中間バネ143を介して取り付けられる。
補助輪142は、石膏ボード103に当接しながら、支柱部120の移動に追従して回動する。なお、補助輪142は、固定キャスタであっても良い。
中間バネ143は、長さ方向の圧縮力に対して反力を発生する弾性力を有する部材であって、例えばコイルバネで構成される。
中間バネ143の一端部は、アーム延出端部144に固定され、中間バネ143の他端部は、補助輪142に固定される。したがって、アーム部材141に固定された中間バネ143は、補助輪142を石膏ボード103側へ付勢する。
【0050】
補助輪142が石膏ボード103に当接している状態では、補助輪142が、中間バネ143の付勢力によって石膏ボード103に押し付けられて反力を受けることで、支柱部120を突っ張り力により支持する。
ここで、突っ張り力とは、補助部140が石膏ボード103(天井面)及び不図示の基部(床面)を押す力である。すなわち、天井面と床面との間で突っ張り支持することができる。
したがって、補助部140が、石膏ボード103及び基部を押し付けることにより、長尺の棒状部材121が安定して支持され、支柱部120の上端に設けられた打込み工具110の揺れを低減することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、打込み工具10には、釘打機、タッカー、ねじ打ち機等を用いることができる。
【0052】
また、固着具打込み機1において、バネ部材62の位置は限定されない。例えば、係止部22aにベルトを取り付け、ベルトと掛止部61の間にバネ部材62を設けても良い。
【0053】
また、固着具打込み機1において、補助部40が設けられる位置は限定されない。例えば、補助部40は、支柱部20ではなく、基部30に設けられても良い。
【0054】
また、固着具打込み機1において、1つの操作部33だけではなく、複数の操作部を設けても良い。例えば、操作部を台車部31の近傍に、作業者の足により操作される操作部を設けても良い。足で操作される操作部を設けると、作業者は両手で把持部32bを把持したまま、打込みが可能となるため、固着具打込み機1をより一層安定させることができる。こうすることで、手元で操作する操作部33と足元で操作する操作部のいずれかの操作により固着具15の打込みが可能となるため、作業性が向上する。
【0055】
また、固着具打込み機1において、棒状部材21を台車部31で支持する構成ではなく、作業者の腹部に当接する当接部によって支持する構成としても良い。
この場合は、作業者と補助部40の間に生じる突っ張り力によって、支柱部20を支持することで、打込み工具10の揺れを低減する。
こうすることで、台車部31が搬入できないような狭い場所で打込み作業をする場合であっても、安定して打込み作業が可能となる。
【0056】
また、固着具打込み機1において、管理や支援のための情報を表示する表示部を設ける構成としても良い。例えば、表示部は、液晶モニタやタブレット等であり、作業者が視認可能な位置で把持部32bに取り付けられる。表示部に打込み位置の情報を表示することで、作業者は打込み位置の確認しながら、打込み作業が可能となる。
【0057】
上記実施形態では、主として本発明に係る固着具打込み機に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1、100 固着具打込み機
2 天井パネル
3、103 石膏ボード(被施工体)
10、110 打込み工具
11 トリガー
12 先端部
15 固着具
20、120 支柱部
21、121 棒状部材
21A 上部パイプ
21B 下部パイプ
21a 上端部
21b 弾性部材係止部
21c 滑車取付部
21d 第一支持体取付部
21e 第二支持体取付部
21f 下端部
22、122 固定部材
22a 係止部
23 移動部材
23a 取付部材
23b ガイド
24 回動部材
25 長さ調整部
30 基部
31 台車部
31a 後方部
31b 右側方部
31c 前方部
31d 左側方部
32 台車把持部
32a 立設部
32b 把持部
32c 支持体留具
33 操作部
33a 操作片
33b 操作片回動部
34 車輪
35 第一支持体
36 第二支持体
40、140 補助部
41、141 アーム部材
41a アーム下端部
41b アーム上端部
41c アーム中間部
42、142 補助輪(当接部材)
43、143 中間バネ(弾性部材)
50 連結部
51 ワイヤ(連結部材)
51a ワイヤ操作端部
51b ワイヤ固定端部
52 第一滑車(ガイド部材)
52A 第一軸部
53 第二滑車(ガイド部材)
53A 第二軸部
60 作用部
61 掛止部
61a 端部
62 バネ部材
63 固定端部
144 アーム延出端部
145 アーム支持端部
図1
図2
図3
図4
図5