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特開2023-121573ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
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  • 特開-ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121573
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230824BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08G18/00 H
C08G18/09 020
C08G18/18
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024986
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
(72)【発明者】
【氏名】小栗 綾華
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF11
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DF24
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG23
4J034DJ02
4J034DJ08
4J034DJ12
4J034DP18
4J034DP19
4J034DQ02
4J034DQ04
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA12
4J034GA06
4J034GA23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC33
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KC17
4J034KC23
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4J034KD11
4J034KD12
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4J034MA03
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4J034NA01
4J034NA02
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4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB10
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】難燃剤の含有量が少量でも良好な難燃性を発現する難燃性ウレタン樹脂組成物の形成が可能なポリオール組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、前記難燃剤が赤燐及び1種以上のリン酸塩系難燃剤を含み、前記発泡剤がHFOを含む、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、
前記難燃剤が、赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤を含み、
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、ポリオール組成物。
【請求項2】
ポリオール組成物中の粉体の含有量が、ポリオール100質量部に対し50質量部以下である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
ポリオール組成物中の粉体の含有量が、ポリオール組成物全量基準で25質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記赤燐系難燃剤と、前記リン酸塩系難燃剤との含有量の比率が、質量比(赤燐系難燃剤/リン酸塩系難燃剤)で、1/0.5~1/3である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記リン酸塩系難燃剤がポリリン酸塩を含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記ポリリン酸塩がポリリン酸アンモニウムを含む、請求項5に記載のポリオール組成物。
【請求項7】
前記リン酸塩系難燃剤の分解温度が200℃以上である、請求項1~6のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項8】
前記触媒が三量化触媒を含む、請求項1~7のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項9】
前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、請求項8に記載のポリオール組成物。
【請求項10】
前記触媒がウレタン化触媒を含む、請求項1~9のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項11】
前記ウレタン化触媒が窒素含有複素環化合物を含む、請求項10に記載のポリオール組成物。
【請求項12】
吹き付け用途に用いられる、請求項1~11のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから形成される、難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項14】
難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下である、請求項13に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの建築部材の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。これを改善するため、難燃性の高いポリウレタン発泡体が必要とされている。ポリウレタン発泡体の難燃性を高める為の手段として、例えば、特許文献1のように、難燃性ウレタン樹脂組成物に赤燐などの難燃剤を使用することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-090816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の難燃性ウレタン樹脂組成物は、難燃性の発現のために多量の固体難燃剤を含有することを要し、その結果、該組成物の吹付に際し、広範囲に吹き付けることができなかったり、吹付対象に対する接着性が低下したり、発泡体の密度が増加したりするなどの問題がある。
そこで、本発明は、固体難燃剤などの粉体の含有量を抑制しても良好な難燃性を発現するポリウレタン発泡体の形成が可能なポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有するポリオール組成物であって、前記難燃剤が赤燐系難燃剤及び1種以上のリン酸塩系難燃剤を含み、前記発泡剤がHFOを含む、ポリオール組成物により、上記課題の解決を見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[15]を提供するものである。
【0007】
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有し、前記難燃剤が、赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤を含み、前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、ポリオール組成物。
[2]ポリオール組成物中の粉体の含有量が、ポリオール100質量部に対し50質量部以下である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]ポリオール組成物中の粉体の含有量が、ポリオール組成物に対し25質量%以下である、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記赤燐系難燃剤と、前記リン酸塩系難燃剤との含有量の比率が、質量比(赤燐系難燃剤/リン酸塩系難燃剤)で、1/0.5~1/3である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]前記リン酸塩系難燃剤がポリリン酸塩を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6]前記ポリリン酸塩がポリリン酸アンモニウムを含む、[5]に記載のポリオール組成物。
[7]前記リン酸塩系難燃剤の分解温度が200℃以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[8]前記触媒が三量化触媒を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[9]前記三量化触媒が4級アンモニウム塩を含む、[8]に記載のポリオール組成物。
[10]前記触媒がウレタン化触媒を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[11]前記ウレタン化触媒が窒素含有複素環化合物を含む、[10]に記載のポリオール組成物。
[12]吹き付け用途に用いられる、[1]~[11]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[13][1]~[12]のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから形成される、難燃性ウレタン樹脂組成物。
[14]難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下である、[13]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[15][13]又は[14]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体難燃剤などの粉体の含有量を抑制しても良好な難燃性を発現するポリウレタン発泡体の形成が可能なポリオール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリウレタン発泡体の総発熱量の測定用サンプルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール、発泡剤、難燃剤及び触媒を含有するポリオール組成物である。以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
<難燃剤>
本発明のポリオール組成物は、難燃剤として、赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤を含有する。
赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤は、いずれも固体難燃剤、すなわち室温(25℃)、常圧(1気圧)で固体であり、ポリオール組成物中において粉体として含有されるものである。本発明では、赤燐系難燃剤とリン酸塩系難燃剤とを組み合わせて含有することにより、ポリオール組成物中の粉体の含有量を抑制しても、良好な難燃性を発現するポリウレタン発泡体を形成することができる。
以下、赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤について、それぞれ詳細に説明する。
【0012】
(赤燐系難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、赤燐系難燃剤を含有する。赤燐系難燃剤は、赤燐単体のものを使用してもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を混合したものなどを使用してもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0013】
本発明のポリオール組成物における赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、4~12質量部がさらに好ましい。赤燐系難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができる。また、赤燐系難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物中の粉体の含有量を抑制することができる。
なお、「ポリオール組成物中の粉体の含有量」とは、室温及び常圧で、ポリオール組成物中で粉体として存在する成分の合計量であり、例えば、赤燐系難燃剤、リン酸塩系難燃剤、後述するその他の固体難燃剤、及び固体難燃剤以外のフィラーの各含有量の合計により算出できる。
【0014】
(リン酸塩系難燃剤)
リン酸塩系難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。なお、ここでいうリン酸塩は、正リン酸塩のみならず、亜リン酸塩、次亜リン酸塩なども含む概念である。ポリリン酸塩も同様である。
モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩、第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩等が挙げられる。この中では、アンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中ではポリリン酸アンモニウムが好ましい。
また、ポリリン酸アンモニウムは、結晶構造によって、I型、II型などの様々な種類があるが、分解温度を高くして難燃性を高める観点から、II型のポリリン酸アンモニウムが好ましい。
なお、リン酸塩系難燃剤は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0015】
本発明で使用するリン酸塩系難燃剤は、分解温度が200℃以上であることが好ましい。分解温度が200℃以上であることによる効果は定かではないが、ポリウレタン発泡体を構成する樹脂の分解温度に近づくため難燃効果が効率的に発揮できると推定される。このような観点から、リン酸塩系難燃剤の分解温度は、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましく、260℃以上であることがよりさらに好ましい。分解温度の上限は特に限定されず、例えば400℃である。
また、赤燐系難燃剤の分解温度は300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることがさらに好ましい。
なお、分解温度は、TG-DTA測定などにより求めることができる。
【0016】
本発明のポリオール組成物におけるリン酸塩系難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、4~40質量部がより好ましく、7~25質量部がさらに好ましい。リン酸塩系難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができる。また、リン酸塩系難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、ポリオール組成物中の粉体の含有量を抑制することができる。
【0017】
本発明のポリオール組成物は、赤燐系難燃剤とリン酸塩系難燃剤との含有量の比率が、質量比(赤燐系難燃剤/リン酸塩系難燃剤)で、1/0.5~1/3であることが好ましく、1/0.6~1/2.8であることがより好ましく、1/1~1/2.7であることがさらに好ましい。上記含有量の比率が上記範囲内であると、ポリオール組成物中の粉体の含有量を抑制しつつ、難燃性を向上しやすくなる。また、ポリウレタン発泡体の密度や色調などを適切なものとしやすくなる。
【0018】
(その他の固体難燃剤)
本発明のポリオール組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、上記した赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤以外の固体難燃剤(以下、「その他の固体難燃剤」ともいう。)を含有してもよい。その他の固体難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、ホウ素系難燃剤、アンチモン系難燃剤、塩素系難燃剤、金属水酸化物、針状フィラー等が挙げられる。その他の固体難燃剤としては、特に限定されないが、上記したものの中では、ホウ素系難燃剤が好ましい。
ホウ素系難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明においてホウ素含有難燃剤を使用する場合は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
なお、これらのその他の固体難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明のポリオール組成物にその他の固体難燃剤を含有する場合、その他の固体難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対し、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。ポリオール組成物中のその他の固体難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、固体難燃剤全体の含有量を抑制することができる。その他の固体難燃剤の含有量は、ポリオール組成物中の粉体の含有量を少なくする観点からは、少なければ少ない程よく、ポリオール100質量部に対し0質量部以上であればよいが、その他の固体難燃剤を含有させた場合にはその効果を発揮させる観点から、例えば1質量部以上、好ましくは5質量部以上である。
【0020】
(固体難燃剤以外のフィラー)
また、ポリオール組成物は、上記した固体難燃剤以外のフィラーを含有してもよい。固体難燃剤以外のフィラーは、常温、常圧で固体となるものであり、ポリオール組成物中で粉体として存在する。固体難燃剤以外のフィラーとしては、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ等を適宜使用できる。固体難燃剤以外のフィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明のポリオール組成物中の粉体の含有量は、ポリオール100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。また、ポリオール組成物全量基準では、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることがさらに好ましい。粉体の含有量が上記上限値以下であると、該ポリオール組成物から形成された難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付けた際、難燃性ウレタン樹脂組成物を広範囲に散布することができたり、ポリウレタン発泡体の密度の増加を抑制したり、吹付後のポリウレタン発泡体に良好な接着性を付与したりすることができる。
また、粉体の含有量の下限は、特に限定されないが、赤燐系難燃剤及びリン酸塩系難燃剤の含有によって、本発明の効果を発現する観点から、ポリオール100質量部に対し、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは25質量部以上である。また、ポリオール組成物全量基準では、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0022】
(液状難燃剤)
本発明のポリオール組成物に含有される難燃剤としては、上記した固体難燃剤以外にも、液状難燃剤を使用してもよい。液状難燃剤とは、室温(25℃)、常圧(1気圧)で液体となるものである。液状難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0023】
リン酸エステル系難燃剤としては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0024】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0025】
リン酸エステル系難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0026】
ポリオール組成物中のリン酸エステル系難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは15~90質量部であり、より好ましくは20~80質量部であり、さらに好ましくは25~70質量部である。リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら下限値以上であると、ポリオール組成物の粘度を高くしすぎたり、粉体の含有量を多くしすぎたりすることなくポリウレタン発泡体に難燃性を付与しやすくなる。また、リン酸エステル系難燃剤の含有量がこれら上限値以下であると、発泡が阻害されないなどにより、ポリウレタン発泡体を容易に製造しやすくなる。
【0027】
<ポリオール>
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0028】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、o-フタル酸(フタル酸)、ナフタレンジカルボン酸及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0030】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールなどの活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも一種が挙げられる。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0032】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。その場合、ポリオールの加重平均芳香族濃度が10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。ポリオールの加重平均芳香族濃度の上限は、特に限定されないが、例えば30質量%、好ましくは25質量%である。
ここで、芳香族濃度とは、ポリオール中の芳香環を構成する炭素原子及び水素原子の合計の質量%により得られたものであり、加重平均芳香族濃度は、前記芳香環の炭素原子及び水素原子の各含有量から加重平均により求めた芳香族濃度である。
芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性、特に燃え拡がらない性能を高める観点から、芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオール、及び、о-フタル酸とグリコールの縮合物である、о-フタル酸系ポリエステルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0033】
ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
ポリオールの加重平均水酸基価は、20~370mgKOH/gが好ましく、50~320mgKOH/gがより好ましく、100~260mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなり、かつ吹き付けの際の施工性が良好になる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0035】
ここで、ポリオールの加重平均水酸基価は、ポリオールを構成する個々のポリオールの水酸基価と、該個々のポリオールのポリオール中の重量分率との積の総和により求められる。例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合量をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合量をmとすると、加重平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合量m及びmは、ポリオール100質量部中の質量部数である。
加重平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
【0036】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒としては、三量化触媒及びウレタン化触媒からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、三量化触媒を含有することがより好ましく、三量化触媒に加え、ウレタン化触媒を含有することがさらに好ましい。
【0037】
(三量化触媒)
三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を含有することでイソシアヌレート環が生成されて難燃性を高めることができる。また、イソシアネート基の反応を完了させて発泡性の良好なポリウレタン発泡体が得られやすくなる。三量化触媒としては、金属触媒、アンモニウム塩等が挙げられる。
三量化触媒として使用される金属触媒(三量化金属触媒)としては、有機酸カリウムが挙げられ、好ましくは2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウム等の炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。
アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができるが、これらのなかでは、4級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、例えばカルボン酸のアンモニウム塩である。アンモニウム塩におけるカルボン酸としては、例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数2~8の飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸は、炭化水素基が直鎖であってもよいし、分岐を有してもよいが、分岐を有することが好ましい。カルボン酸の具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸などが挙げられるが、これらの中では2,2-ジメチルプロパン酸が好ましい。三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
三量化触媒は、4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。三量化触媒として4級アンモニウム塩を含むことで、ハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となり、それにより、ハイドロフルオロオレフィンの分解が防止され、発泡性が良好なものとなる。また、反応速度を一定以上とし、難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付ける際の施工性を良好なものとすることができる。
三量化触媒は、4級アンモニウム塩及び三量化金属触媒を含むことがより好ましい。
【0038】
ポリオール組成物中の4級アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、0.4~8質量部がさらに好ましい。4級アンモニウム塩の上記含有量を、上記下限値以上とすることで、HFOに対する安定性や、吹き付ける際の施工性などを良好にすることができる。また、4級アンモニウム塩の含有量を、上記上限値以下とすることで、反応速度を適切に制御することができる。
三量化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.2~13質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、0.6~8質量部がさらに好ましい。
また、ポリオール組成物中の三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.3~28質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1~16質量部が更に好ましい。
【0039】
(ウレタン化触媒)
本発明のポリオール組成物に使用される触媒は、ウレタン化触媒として、窒素含有複素環化合物を含有することが好ましい。ウレタン化触媒として窒素含有複素環化合物を含有することで、ハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となり、それにより、ハイドロフルオロオレフィンの分解が防止され、発泡性が良好なものとなる。また、反応速度を一定以上とし、難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付ける際の施工性を良好なものとすることができる。窒素含有複素環化合物の中でも、イミダゾール誘導体を含有することがより好ましい。
上記の通り、イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール組成物の安定性を高めつつポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくする。したがって、ポリオール組成物は、イミダゾール誘導体を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応性が高められ、発泡性がさらに良好となる。
イミダゾール誘導体は、好ましくは1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(1)で表される。
【0040】
【化1】

(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
【0041】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
1及びR2のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィン等の発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R及びRのアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になり、発泡性も良好となる。
これらの観点から、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0042】
一般式(1)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0043】
ポリオール組成物中の窒素含有複素環化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部が更に好ましい。窒素含有複素環化合物の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行し、かつ発泡性が良好となる。一方、窒素含有複素環化合物の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0044】
ウレタン化触媒としては、窒素含有複素環化合物に加え、金属触媒を含有することが好ましい。この金属触媒は、一般的にウレタン化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記ウレタン化金属触媒を含有することで、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が促進され、特に初期反応速度を高めることができる。また、上記する難燃剤を一定量以上含有させるとポリオール組成物の反応性が阻害され発泡性が低下しやすいが、ウレタン化金属触媒を含有させることで、ポリオール組成物の発泡性を良好に維持しやすくなる。上記金属触媒は、発泡性などの観点から、ビスマス又は錫を含むことが好ましく、ビスマスを含むことがより好ましい。ビスマスを含む金属触媒は、HFOに対する反応性が低く、保存安定性が高くなる。また、ポリウレタン発泡体の難燃性を低下させることなく、初期活性を良好にさせやすい。
【0045】
上記のウレタン化金属触媒は、ビスマス及び錫から選択される金属塩が好ましく、ビスマス塩であることがより好ましい。金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸の錫塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0046】
ポリオール組成物中の上記ウレタン化金属触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.05~8質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部が更に好ましい。
【0047】
<発泡剤>
発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」ともいう。)を含む。HFOを使用すると環境負荷を低減できる。
HFOとしては、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、HFOは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
HFOとしては、例えば、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z)、)、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz)、シス-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1224yd(Z))等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zd(E)が好ましい。
【0048】
本発明で使用する発泡剤としては、HFOと共に、HFO以外の発泡剤を併用して使用してもよい。HFO以外の発泡剤としては、水、低沸点の炭化水素、エーテル化合物などの有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられ、好ましくは水を使用する。これらの発泡剤は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記した中でも、発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン及び水を併用することがより好ましい。
発泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましく、25~45質量部が更に好ましい。
【0049】
発泡剤として使用するハイドロフルオロオレフィンの含有量は、発泡性を良好として、例えばポリウレタン発泡体の密度を所望の範囲とする観点から、ポリオール100質量部に対して、9~55質量部が好ましく、19~47質量部がより好ましく、24~43質量部が更に好ましい。
【0050】
発泡剤として使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。この中では、イオン交換水を用いることが好ましい。水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~8質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部が更に好ましい。水の含有量を上記範囲内とすることで、難燃性と発泡性のバランスが良好となる。
【0051】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤としては、分子内に極性部分と非極性部分を有し界面活性効果を備える化合物を好適に使用することができる。
整泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。また、シリコーン整泡剤としては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの重合体であるポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体でもよい。また、市販品も使用でき、具体的にはSH-193(東レダウコーニング社製)、S-824-02(日本ユニカー社)、SZ-1704(日本ユニカー社)、F501(信越化学工業社)、SF-2937F(ダウ東レ社製)等の整泡剤を使用することができる。
整泡剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0052】
<その他成分>
本発明のポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料等から選択される1種以上を含むことができる。
本発明のポリオール組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を混合することにより製造することができる。
【0053】
[難燃性ウレタン樹脂組成物]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含み、これらを混合することにより得られる。
【0054】
<ポリイソシアネート>
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、ポリイソシアネート化合物内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネートを併用してもよく、併用するポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネートは限定なく使用可能である。
【0055】
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体を適切に形成させたり、良好な難燃性を付与したりする観点から、200以上であることが好ましく、230以上であることがより好ましく、250以上がさらに好ましく、260以上がよりさら好ましい。
また、難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは450以下、より好ましくは420以下であり、さらに好ましくは400以下であり、よりさらに好ましくは350以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0056】
INDEX=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0057】
<総発熱量>
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。総発熱量が8MJ/m以下であることにより、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物からなるポリウレタン発泡体は、所定の難燃性を有する。
該発泡体の難燃性をより向上させる観点から、上記総発熱量は、7MJ/m以下であることがより好ましく、6.5MJ/m以下であることがさらに好ましい。
【0058】
上記総発熱量は、コーンカロリーメーター試験により測定され、詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。また、コーンカロリーメーター試験を行うポリウレタン発泡体は、難燃性ウレタン樹脂組成物から実施例に記載する方法により形成される。
【0059】
[ポリウレタン発泡体]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、上記した難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなるものであり、具体的には、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡及び硬化させて得られるものである。
本発明のポリウレタン発泡体は、赤燐系難燃剤とリン酸塩系難燃剤とを組み合わせて含有したポリオール組成物から形成される。そのため、ポリオール組成物中の粉体の含有量が抑えられながらも、該発泡体は良好な難燃性を発現することができる。
【0060】
[用途]
本発明のポリオール組成物、難燃性ウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、壁、天井、屋根、床等などの吹付対象に対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましい。本発明のポリオール組成物は、粉体の含有量が抑制されたものであるため、該組成物を吹き付け用途に用いた場合、該組成物から形成された難燃性ウレタン樹脂組成物を広範囲に散布することができる。また、上記散布の後、吹付対象上に形成されたポリウレタン発泡体の吹付対象に対する接着性が良好となり、ポリウレタン発泡体が吹付対象から剥離することを防止できる。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なウレタンフォームの吹き付け条件が適応できる。
【実施例0061】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
[使用材料]
各実施例及び比較例で使用した各成分は、以下のとおりである。
【0063】
<ポリオール>
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、芳香族濃度8%、水酸基価=200mgKOH/g)
・芳香族ポリエステルポリオール p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRFK-505、芳香族濃度22%、水酸基価=250mgKOH/g)
・芳香族ポリエステルポリオール o-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRDK-133、芳香族濃度23%、水酸基価=315mgKOH/g)
【0064】
<整泡剤>
・シリコーン系整泡剤(ダウ・東レ社製、製品名:SH-193)
【0065】
<触媒>
(1)三量化触媒
・アルカリ金属塩:2-エチルヘキサン酸カリウム(エボニック社製、製品名:DABCO K-15、濃度70~80質量%)
・4級アンモニウム塩:2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エボニック社製、製品名:DABCO TMR7)、濃度45~55質量%
(2)ウレタン化触媒
・1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70、濃度65~75質量%)
・2-エチルヘキサン酸ビスマス(ウレタン化金属触媒:日東化成社製、製品名:Bi28、濃度81~90質量%)
【0066】
<液状難燃剤>
・リン酸エステル系難燃剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
【0067】
<固体難燃剤>
・ポリリン酸アンモニウム1(クラリアントケミカルズ社製、製品名:EXOLIT AP422、分解温度:275℃以上)
・ポリリン酸アンモニウム2(太平化学産業社製、製品名:タイエンK、分解温度:240℃以上)
・リン酸二水素アンモニウム(太平化学産業社製、製品名:リン酸アンモニウムC、分解温度:200℃以上)
・金属水酸化物(水酸化アルミニウム)(アルモリクス社製、製品名:B-303)
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140、分解温度:490℃)
・ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:FirebrakeZB)
【0068】
<発泡剤>
・イオン交換水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル社製、製品名:ソルスティスLBA)
【0069】
<ポリイソシアネート>
・MDI(住化コベストロウレタン社製、製品名:44V-20)
【0070】
ポリウレタン発泡体の各物性の測定、及びポリオール組成物の各性状の評価の方法は、以下のとおりである。なお、特に記載のない限り、ポリウレタン発泡体の作製は環境温度20℃で実施した。
[総発熱量]
図1に示すように、300×300mm、厚さ12.5mmの石膏ボード11に対し、難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、ポリウレタン発泡体10を得た。その後、ポリウレタン発泡体10の表面部分10Aを残しつつ、ポリウレタン発泡体10と石膏ボート11の合計厚みが約50mmとなるように、破線で囲った部分を切り出し、切り出し部分12を得た。
以上のようにして得られた切り出し部分12を、コーンカロリーメーター試験用サンプルとした。該サンプルを、ISO-5660の試験方法に準拠したコーンカロリーメーター試験により、放射熱強度50kW/mにて10分間加熱したときの総発熱量を測定した。該測定値に基づき、ポリウレタン発泡体10の難燃性を評価した。難燃性の評価基準は以下の通りである。
◎:7MJ/m以下
〇:7MJ/m超8MJ/m以下
×:8MJ/m
【0071】
[散布性]
300×300mm石膏ボードに対し、垂直上方1mの高さより石膏ボードの中央に向けて難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付け、該組成物の硬化後に、石膏ボード上に散布された該組成物の面積の割合(以下、「散布面積の割合」という。)を求めた。散布面積の割合に基づき、難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付けた際の散布性を、以下の評価基準により評価した。
〇:散布面積の割合が60%以上であった。
×:散布面積の割合が60%未満であった。
【0072】
[接着性]
難燃性ウレタン樹脂組成物を石膏ボードに吹き付けた後のポリウレタン発泡体を手で剥離した際の接着性を、以下の評価基準により評価した。
〇:発泡体の剥離に非常に強い力を要し、容易に剥離できなかった。
×:発泡体の剥離に力を要さず、容易に剥離できた。
【0073】
[吹付密度]
難燃性ウレタン樹脂組成物を、300cm×300cmスレート板に対し、ポリウレタン発泡体の厚みが約25mmになるように、難燃性ウレタン樹脂組成物を厚み方向に2回吹き付けてポリウレタン発泡体を得たのち、該発泡体の厚みと重量から算出した。
【0074】
[実施例1~15、比較例1~3]
吹き付け装置に、表1に記載の配合で作製したポリオール組成物及びポリイソシアネートをそれぞれ充填した。その後、スプレーガンを利用して、20℃雰囲気下においてポリオール組成物及びポリイソシアネートを衝突混合させて得られた難燃性ウレタン樹脂組成物を、上記の評価方法に示すとおり、石膏ボード又はスレート板に対しミスト状に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタン発泡体を得た。
なお、吹き付け機及びスプレーガンはいずれも市販品を利用した。
【0075】
【表1】
【0076】
各触媒の質量部は製品としての質量部である。
【0077】
以上の通り、各実施例で作製したポリオール組成物は、粉体量を抑制した場合であっても、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができた。また、該ポリオール組成物から形成した難燃性ウレタン樹脂組成物を吹き付けた際に、広範囲に散布させたり、散布後に形成されたポリウレタン発泡体に良好な接着性を付与したり、ポリウレタン発泡体の密度の増加を抑制したりすることができたため、良質なポリウレタン発泡体を作製することができた。
これに対し、比較例1で作製したポリオール組成物に関しては、粉体の含有量が多かったため、該組成物を十分散布させたり、ポリウレタン発泡体に良好な接着性を付与したり、ポリウレタン発泡体の密度の増加を抑制したりすることができず、良質なポリウレタン発泡体を作製することができなかった。また、比較例2及び3で作製したポリオール組成物は、粉体の含有量を、各実施例と同等に抑制していたが、リン酸塩系難燃剤を含有しなかったため、ポリウレタン発泡体に良好な難燃性を付与することができなかった。
【符号の説明】
【0078】
10 ポリウレタン発泡体
10A 表面部分
11 石膏ボード
12 切り出し部分
図1