(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121601
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】気泡抑制装置、作動油タンクおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230824BHJP
F15B 1/26 20060101ALI20230824BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
F15B1/26
B01D19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025034
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓磨
【テーマコード(参考)】
2D015
3H086
4D011
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3H086AA10
3H086AB03
3H086AE24
3H086AE36
3H086AE50
4D011AA08
4D011AC01
4D011AC06
(57)【要約】
【課題】作動油タンクからポンプへの気泡の流出を抑制可能な気泡抑制装置を提供する。
【解決手段】気泡抑制装置33は、作動油が流入する作動油タンク12の流入部32側に配置される気泡抑制装置33であって、内側ストレーナ43と、外側ストレーナ44と、を備える。内側ストレーナ43は、流入部32から流入した作動油が通過する。外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43よりも目が粗く、内側ストレーナ43を通過した気泡を含む作動油が通過する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油が流入する作動油タンクの流入部側に配置される気泡抑制装置であって、
前記流入部から流入した作動油が通過する第1濾材と、
前記第1濾材よりも目が粗く、前記第1濾材を通過した気泡を含む作動油が通過する第2濾材と、を備えた気泡抑制装置。
【請求項2】
前記第1濾材は、前記第2濾材との隙間が2mm以下になるように配置されている、
請求項1に記載の気泡抑制装置。
【請求項3】
前記第1濾材は、前記第2濾材と隙間が生じないように配置されている、
請求項1に記載の気泡抑制装置。
【請求項4】
前記気泡抑制装置は、前記流入部の出口を覆うように前記作動油タンクに配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の気泡抑制装置。
【請求項5】
前記第1濾材は、前記第2濾材の内側に配置されている、
請求項4に記載の気泡抑制装置。
【請求項6】
作動油が貯留されるタンク本体と、
前記タンク本体の内側に配置され、前記タンク本体に戻される作動油が流入する流入部と、
前記タンク本体に配置された請求項1~5のいずれか1項に記載の気泡抑制装置と、
前記タンク本体から作動油が流出する流出部と、を備えた、
作動油タンク。
【請求項7】
前記流出部は、前記タンク本体から作動油が流出する流出口を有し、
前記流出口は、前記タンク本体の底面あるいは側面に配置されている、
請求項6に記載の作動油タンク。
【請求項8】
前記流出部は、
前記タンク本体から作動油が流出する流出口と、
前記流出口を覆うように配置された第3濾材と、を有する、
請求項6に記載の作動油タンク。
【請求項9】
油圧シリンダを有する作業機と、
前記油圧シリンダに供給される前記作動油を貯留する請求項6に記載の作動油タンクと、
前記作動油タンクに貯留されている作動油を前記油圧シリンダに供給するポンプと、を備えた、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡抑制装置、作動油タンクおよび作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるブルドーザは、ブレードを油圧シリンダによって上下動させている。ブレードを急降下させると油圧シリンダの伸長に伴って負圧が発生し、作動油中に気泡が発生する。次に、ブレードを上方に移動させるために油圧シリンダを収縮すると、気泡が作動油タンクに戻る場合がある。また、作業機械は、作業機を用いた作業を行うと作動油タンクが前後方向に揺れるため、作動油の油面が波立ち攪拌されて作動油内に空気が混入してしまう。気泡を含有する作動油がストレーナから吸引されると油圧ポンプ内でキャビテーションが生じ振動および騒音の原因となる。ポンプ等の油圧機器を保護するためにキャビテーションの抑制を図る必要がある。
【0003】
そのため、気泡が作動油タンクから流出しないように気泡を除去する方法として、作動油タンクの流出側に気泡を除去するためのストレーナが配置された構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1の構成では、作動油タンクに戻る配管側にフィルタ部材が配置され、作動油タンクに戻ってきた作動油内の異物を捕集している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1の構成では、作動油タンクに戻りフィルタ部材を通った細かい気泡がストレーナに流れ、ポンプの吸引力に捕まって作動油タンクから流出する場合があった。
【0006】
本開示は、作動油タンクからポンプへの気泡の流出を抑制可能な気泡抑制装置、作動油タンクおよび作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様の気泡抑制装置は、作動油が流入する作動油タンクの流入部側に配置される気泡抑制装置であって、第1濾材と、第2濾材と、を備える。第1濾材は、流入部から流入した作動油が通過する。第2濾材は、第1濾材よりも目が粗く、第1濾材を通過した気泡を含む作動油が通過する。
【0008】
本開示の他の態様の作動油タンクは、タンク本体と、流入部と、上記態様の気泡抑制装置と、流出部と、を備える。タンク本体は、作動油が貯留される。流入部は、タンク本体の内側に配置され、タンク本体に戻される作動油が流入する。気泡抑制装置は、タンク本体に配置される。流出部は、タンク本体から作動油が流出する。
【0009】
本開示の他の態様の作業機械は、作業機と、作動油タンクと、ポンプと、を備える。作業機は油圧シリンダを有する。作動油タンクは、油圧シリンダに供給される作動油を貯留する。ポンプは、作動油タンクに貯留されている作動油を油圧シリンダに供給する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様によれば、作動油タンクからポンプへの気泡の流出を抑制可能な気泡抑制装置、作動油タンクおよび作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態にかかるブルドーザを示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態にかかるブルドーザにおける油圧回路を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態にかかるブルドーザにおける油圧回路を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態にかかるブルドーザにおける作動油タンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示にかかる作業機械の一例としてのブルドーザについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0013】
(ブルドーザ1の概要)
図1は、本実施の形態のブルドーザ1の構成を示す斜視図である。
【0014】
ブルドーザ1は、車体2と、作業機3と、走行装置4と、リッパ装置5と、を有する。車体2は、運転室11と、作動油タンク12(点線で示す)を有する。運転室11には、運転席が配置されている。走行装置4は、車体2の下部に取り付けられている。走行装置4は、左右一対の履帯13を有している。なお、
図1では、右側の履帯13のみが図示されている。履帯13が回転することによって、ブルドーザ1が走行する。
【0015】
作業機3は、車体2に取り付けられている。作業機3は、左右一対のリフトフレーム14と、ブレード15と、左右一対のリフトシリンダ16(油圧シリンダの一例)と、左右一対のチルトシリンダ17と、を含む。各々のリフトフレーム14は、車幅方向に延びる軸線を中心として上下に動作可能に車体2に取り付けられている。
図1では、右側のリフトフレーム14のみが図示されている。各々のリフトフレーム14は、ブレード15を支持している。ブレード15は、車体2の前方に配置されている。一対のリフトシリンダ16は、車体2とブレード15に取り付けられている。各々のリフトシリンダ16の収縮によって、ブレード15が上方向に移動し、各々のリフトシリンダ16の伸長によって、ブレード15が下方に移動する。一対のチルトシリンダ17は、リフトフレーム14とブレード15に取り付けられている。各々のチルトシリンダ17の伸縮によって、ブレード15はリフトフレーム14による支持部を中心にして回動する。
【0016】
リッパ装置5は、車体2の後方に配置されている。リッパ装置5は、岩盤などの硬質材料を貫通し破砕するための作業機である。リッパ装置5は、岩盤等を破砕する爪部18を有している。
【0017】
図2は、本実施形態のブルドーザ1における油圧回路21を示す図である。
図2は、リフトシリンダ16を伸長する際の作動油の流れを示す図である。
図3は、リフトシリンダ16を収縮する際の作動油の流れを示す図である。
図2および
図3では、一対のリフトシリンダ16のうち一方のみ図示し、他方は省略する。
【0018】
本実施形態のブルドーザ1は、リフトシリンダ16と作動油タンク12を繋ぐ油圧回路21を含む。油圧回路21は、メインバルブ22と、ポンプ23と、第1流路24と、第2流路25と、第3流路26と、第4流路27と、を含む。
【0019】
メインバルブ22は、作動油タンク12からリフトシリンダ16に供給する作動油を制御する流路切替バルブである。メインバルブ22は、4つのポートP1~P4を有する。メインバルブ22は、弁体を有し、弁体は、リフトシリンダ16を伸長する第1位置T1、リフトシリンダ16を収縮する第2位置T2および作動油の供給を停止する第3位置T3のいずれかの位置をとることができる。
【0020】
ポンプ23は、例えば斜板を有する可変容量型の油圧ポンプである。斜板の角度を変更することによって、ポンプ23から吐出する作動油の量を変更することができる。ポンプ23は、メインバルブ22を介して作動油タンク12に貯留されている作動油をリフトシリンダ16に供給する。
【0021】
リフトシリンダ16は、シリンダ16aと、ロッド16bと、ピストン16cと、を含む。ピストン16cは、シリンダ16aの内側を移動可能である。ピストン16cは、ロッド16bの一端に配置される。ロッド16bの他端はブレード15に回転可能に接続されている。シリンダ16aは、ピストン16cによって分けられるボトム側シリンダ室16dとロッド側シリンダ室16eを含む。
【0022】
第1流路24は、リフトシリンダ16のボトム側シリンダ室16dと、メインバルブ22のポートP1を接続する。第2流路25は、リフトシリンダ16のロッド側シリンダ室16eとメインバルブ22のポートP2を接続する。第3流路26は、作動油タンク12とメインバルブ22のポートP3を接続する。第4流路27は、作動油タンク12とメインバルブのポートP4を接続する。第4流路27には、ポンプ23が配置されている。
【0023】
リフトシリンダ16を伸長させる際の作動油の流れについて
図2を用いて説明する。ポンプ23が駆動された状態でメインバルブ22の弁体が第1位置T1に移動する。第1位置T1では、第4流路27と第1流路24が接続され、第2流路25と第3流路26が接続される。ポンプ23の駆動によって作動油タンク12から作動油が第4流路27に吸引される。作動油タンク12から第4流路27に吸引された作動油は、メインバルブ22を経て第1流路24に供給され、ボトム側シリンダ室16dに供給される。供給された作動油の圧力によってピストン16cが下方に移動し、ロッド側シリンダ室16e内の作動油は第2流路25に排出される。
【0024】
リフトシリンダ16を収縮させる際の作動油の流れについて
図3を用いて説明する。ポンプ23が駆動された状態でメインバルブ22の弁体が第2位置T2に移動する。第2位置T2では、第1流路24と第3流路26が接続され、第2流路25と第4流路27が接続される。ポンプ23の駆動によって作動油タンク12から作動油が第4流路27に吸引される。作動油タンク12から第4流路27に吸引された作動油は、メインバルブ22を経て第2流路25に供給される。第2流路25の作動油は、ロッド側シリンダ室16eに供給される。供給された作動油の圧力によってピストン16cが上方に移動し、ボトム側シリンダ室16d内の作動油は第1流路24に排出される。第1流路24に排出された作動油は、メインバルブ22を経て第3流路26に流入する。第3流路26に流入した作動油は、作動油タンク12に戻される。
【0025】
図2において、ブレード15を急に降下させるとリフトシリンダ16が急に伸長することになり、リフトシリンダ16のボトム側シリンダ室16dに負圧が発生し、
図2に示すように気泡Aが発生する場合がある。気泡Aが発生した状態で、ブレード15の上げ操作を行うと、
図3に示すようにリフトシリンダ16が収縮することになり、気泡Aを含んだ作動油が作動油タンク12に流入する。本実施形態における作動油タンク12は、気泡Aがポンプ23の吸引によって第4流路27に流入することを抑制する。
なお、
図2ではリフトシリンダ16における気泡の発生について説明したが、チルトシリンダ17およびリッパ装置5に用いられている油圧シリンダにおいても気泡が発生し、作動油タンク12に流入する場合がある。
【0026】
(作動油タンク12)
次に、本実施形態の作動油タンク12の構成について説明する。
図4は、作動油タンク12の内部構成を示す断面模式図である。作動油タンク12は、タンク本体31と、流入部32と、気泡抑制装置33と、流出部34と、を含む。
【0027】
タンク本体31は、金属板によって形成される箱状の部材である。タンク本体31は、内部に作動油を貯留する。タンク本体31内には、少なくともポンプ側ストレーナ46が完全に浸るだけの量の作動油が貯留され。油面の上方には空気層が存在する。
【0028】
流入部32は、タンク本体31に配置される。流入部32は、第3流路26を通ってタンク本体31に戻ってきた作動油が流入する。流入部32は、流入口41と、リターンケース42と、濾過フィルタ47と、を含む。流入口41は、タンク本体31の側面31aの上部に形成されている。流入口41には、
図2に示す第3流路26が接続されている。
【0029】
リターンケース42は、流入口41に繋がっている。リターンケース42は、金属板によって形成される。第3流路26を通ってタンク本体31に戻ってきた作動油は、流入口41を介してリターンケース42に流入する。リターンケース42は、下方に向かって開いた開口42a(開口の一例)を含む。
図4の矢印に示すように、流入口41からリターンケース42に流入した作動油は、水平方向から下方に流れの向きを変えて開口42aから下方に向かって排出される。濾過フィルタ47は、リターンケース42内に配置されている。濾過フィルタ47は、リターンケース42に流入した作動油に混じっている異物を除去する。濾過フィルタ47によって異物を除去された作動油が、開口42aから排出される。
【0030】
気泡抑制装置33は、流入部32の下方に配置される。気泡抑制装置33はリターンケース42の下方に配置される。気泡抑制装置33は、リターンケース42の開口42aを覆うように配置されている。気泡抑制装置33は、内部に空間Sを有している。内部空間Sは、リターンケース42の内部空間と連通している。気泡抑制装置33は、リターンケース42から内部空間Sに流入した気泡を大型化して排出する。気泡抑制装置33は、ストレーナの二重構造を含む。気泡抑制装置33は、内側ストレーナ43(第1濾材の一例)と、外側ストレーナ44(第2濾材の一例)と、を含む。
【0031】
内側ストレーナ43は、開口42aを覆うように配置されている、内側ストレーナ43は、金属製のメッシュ状部材で形成されている。金属としては例えばステンレスを用いることができる。内側ストレーナ43の形状は特に限定されるものではない。例えば、内側ストレーナ43は、外観が四角形状や円柱形状であってもよい。内側ストレーナ43のメッシュの目の大きさは、細かい気泡を補足できる大きさが好ましい。内側ストレーナ43は、例えば150メッシュの目開きの金網を用いることができる。内側ストレーナ43は、内部にリターンケース42と連通する内部空間Sを含む。リターンケース42から内部空間Sに流入した作動油は、内側ストレーナ43のメッシュを通過する。作動油がメッシュを通過する時に、作動油に含まれる気泡Aが内側ストレーナ43に捕捉される。
【0032】
外側ストレーナ44は、開口42aを覆うように配置されている。外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43の外側を覆うように配置されている。外側ストレーナ44は、金属製のメッシュ状部材で形成されている。金属としては例えばステンレスを用いることができる。外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43よりも目が粗く形成されている。外側ストレーナ44の目の大きさは、内側ストレーナ43で捕捉された気泡が大型気泡A´となって吐き出される大きさが好ましい。大型気泡とは、少なくとも内側ストレーナ43で補足された気泡Aよりも大きい気泡のことである。
【0033】
本実施形態では、外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43の近傍に配置されている。例えば、外側ストレーナ44と内側ストレーナ43は、それらの隙間が2mm以下となるように配置される。外側ストレーナ44と内側ストレーナ43との隙間が生じないように、外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43に密着して配置されてもよい。内側ストレーナ43で補足された気泡を外側ストレーナ44で大型化するために、作動油の流れる方向において内側ストレーナ43と外側ストレーナ44は対向して配置される方が好ましい。
気泡を安定化して大型化させるためには、内側ストレーナ43および外側ストレーナ44の表面における流速を遅くする必要がある。流速を遅くするためには、内側ストレーナ43および外側ストレーナ44を大型化して表面積を増加させる方が好ましい。内側ストレーナ43および外側ストレーナ44の表面積は、少なくともポンプ側ストレーナ46よりも大きい方が好ましい。
【0034】
流出部34は、タンク本体31の底面31bに配置されている。タンク本体31内に貯留されている作動油が、流出部34から第4流路27へ流出する。流出部34は、流出口45と、ポンプ側ストレーナ46(第3濾材の一例)と、を含む。流出口45は、タンク本体31の底面31bに形成されている。流出口45は、第4流路27に接続されている。ポンプ側ストレーナ46は、流出口45を覆うようにタンク本体31の内側に配置されている。ポンプ側ストレーナ46は、金属製のメッシュ状部材で形成されている。金属としては例えばステンレスを用いることができる。ポンプ側ストレーナ46は、例えば150メッシュの目開きの金網を用いることができる。
【0035】
なお、気泡抑制装置33で大型化した気泡A´が浮力によって油面まで移動することによって気泡の除去が行われるため、流出部34の位置は、流入部32の位置から離れている方が好ましい。例えば、流出部34は、流入口41が形成されている側面31aと対向するタンク本体31の側面31c近傍に配置される方が好ましい。
【0036】
以上の構成によって、リターンケース42に戻ってきた作動油に気泡が含まれている場合、内側ストレーナ43で気泡が捕捉され、捕捉された気泡が外側ストレーナ44で大型化されて排出される。大型化した気泡は自らの浮力によって油面へと移動し、作動油から取り除かれる。
【0037】
(特徴等)
(1)
本実施形態の気泡抑制装置33は、作動油タンク12に戻される作動油が流入する作動油タンク12の流入部32側に配置される気泡抑制装置33であって、内側ストレーナ43と、外側ストレーナ44と、を備える。内側ストレーナ43は、流入部32から流入した作動油が通過する。外側ストレーナ44は、内側ストレーナ43よりも目が粗く、内側ストレーナ43を通過した気泡を含む作動油が通過する。
【0038】
これにより、内側ストレーナ43によって作動油中の微細な気泡が濾し取られ、濾し取られた気泡が集まって外側ストレーナ44で大型化する。大型化した気泡は、外側ストレーナ44を抜けた後、外側ストレーナ44の下流側で浮力によって油面に向かうため、作動油タンク12からポンプ23への流出口45に達しない。このため、作動油タンク12からポンプ23への気泡の流出を抑制することができる。
【0039】
(2)
本実施形態の気泡抑制装置33では、内側ストレーナ43は外側ストレーナ44との隙間が2mm以下になるように配置されている。
【0040】
これにより、内側ストレーナ43で濾し取られた気泡が外側ストレーナ44で集まって大型化しやすくなる。
【0041】
(3)
本実施形態の気泡抑制装置33では、内側ストレーナ43は、外側ストレーナ44と隙間が生じないように配置されている。
【0042】
これにより、内側ストレーナ43で濾し取られた気泡が外側ストレーナ44で集まって大型化しやすくなる。
【0043】
(4)
本実施形態の気泡抑制装置33は、流入部32の開口42aを覆うように作動油タンク12に配置される。
【0044】
これにより、作動油タンク12に戻ってきた作動油が内側ストレーナ43および外側ストレーナ44を通過することができる。
【0045】
(5)
本実施形態の気泡抑制装置33では、内側ストレーナ43は、外側ストレーナ44の内側に配置されている。
【0046】
これにより、作動油タンク12に戻ってきた作動油が内側の内側ストレーナ43を通過した後、外側の外側ストレーナ44を通過することができる。
【0047】
(6)
本実施形態の作動油タンク12は、タンク本体31と、流入部32と、気泡抑制装置33と、流出部34と、を備える。タンク本体31は、作動油が貯留される。流入部32は、タンク本体31の内側に配置され、タンク本体31に戻される作動油が流入する。気泡抑制装置33は、タンク本体31に配置される。流出部34は、タンク本体31から作動油が流出する。
【0048】
これにより、内側ストレーナ43によって作動油中の微細な気泡が濾し取られ、濾し取られた気泡が集まって外側ストレーナ44で大型化する。大型化した気泡は浮力によって油面に向かうため、流出部34まで達しない。このため、作動油タンク12からポンプ23への気泡の流出を抑制することができる。
【0049】
(7)
本実施形態の作動油タンク12では、流出部34は、タンク本体31から作動油が流出する流出口45を有する。流出口45は、タンク本体31の底面31bあるいは側面に配置されている。
【0050】
流出口45からポンプ23への気泡の流出を抑制することができる。
【0051】
(8)
本実施形態の作動油タンク12では、流出部34は、流出口45と、ポンプ側ストレーナ46と、を有する。流出口45は、タンク本体31から作動油が流出する。ポンプ側ストレーナ46は、流出口45を覆うように配置されている。
【0052】
これにより、ポンプ側ストレーナ46によっても気泡を除去することができ、より気泡の流出を抑制することができる。
【0053】
(9)
本実施形態のブルドーザ1は、作業機3と、作動油タンク12と、ポンプ23と、を備える。作業機3は、リフトシリンダ16を有する。作動油タンク12は、リフトシリンダ16に供給される作動油を貯留する。ポンプ23は、作動油タンク12に貯留されている作動油をリフトシリンダ16に供給する。
【0054】
これにより、作業機3に配置されているリフトシリンダ16で発生する気泡の作動油タンク12からの流出を抑制することができる。
【0055】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
(A)
上記実施形態では、内側ストレーナ43および外側ストレーナ44は全てをメッシュ部材によって形成しているが、メッシュ部材に限らず、パンチング等、他の開口形状でもよい。また、全てをメッシュ部材によって形成しなくてもよい。例えば側面など、必要な面にのみ開口部を形成し、他の面は開口を有しない板状で形成してもよい。
なお、上記実施形態では、外側ストレーナ44は内側ストレーナ43の全体を覆うように配置されているが、内側ストレーナ43にメッシュ状ではない部分が設けられている場合、少なくとも内側ストレーナ43のメッシュ状の部分だけが外側ストレーナ44で覆われていればよい。
【0057】
(B)
上記実施形態では、内側ストレーナ43と外側ストレーナ44の2つのストレーナが設けられているが、3つ以上のストレーナが設けられていてもよい。3つ以上のストレーナが設けられている場合、例えば外側に向かうに従って目の粗さを段階的に大きくしてもよい。
【0058】
(C)
上記実施形態では、第1濾材の一例である内側ストレーナ43と第2濾材の一例である外側ストレーナ44は、リターンケース42の開口42aを覆うように配置されているが、このような構成に限らなくてもよい。流入部32から流出部34に向かう作動油の流路を覆うように第1濾材と第2濾材が配置されていてもよい。作動油の流通方向において第1濾材が第2濾材の上流側に配置されていてもよい。
【0059】
(D)
上記実施形態では、開口42aはリターンケース42の下方に形成されているが、このような構成に限らなくてもよく、例えば側方に形成されていてもよい。
【0060】
(E)
上記実施形態では、流出部34は底面31bに形成されているが、このような構成に限らなくてもよく、例えばタンク本体31の側面に形成されていてもよい。
【0061】
(F)
上記実施形態では、気泡抑制装置33は、リターンケース42の下方に配置されているが、このような構成に限らなくてもよく、開口42aを覆っていれば下方への配置に限られるものではない。
【0062】
(G)
上記実施形態では、作業機械の一例としてブルドーザを用いて説明したが、ブルドーザに限らなくてもよく、ホイールローダ、油圧ショベル等、油圧シリンダを用いる作業機械であれば本態様を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示によれば、作動油タンクからポンプへの気泡の流出を抑制可能な気泡抑制装置、および作動油タンクを提供することができ、ブルドーザ等の作業機械等として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1:ブルドーザ、2:車体、3:作業機、4:走行装置、5:リッパ装置、11:運転室、12:作動油タンク、13:履帯、14:リフトフレーム、15:ブレード、16:リフトシリンダ、16a:シリンダ、16b:ロッド、16c:ピストン、16d:ボトム側シリンダ室、16e:ロッド側シリンダ室、17:チルトシリンダ、18:爪部、21:油圧回路、22:メインバルブ、23:ポンプ、24:第1流路、25:第2流路、26:第3流路、27:第4流路、31:タンク本体、31a:側面、31b:底面、31c:側面、32:流入部、33:気泡抑制装置、34:流出部、41:流入口、42:リターンケース、42a:開口、43:内側ストレーナ、44:外側ストレーナ、45:流出口、46:ポンプ側ストレーナ、47:濾過フィルタ、A:気泡、P1:ポート、P2:ポート、P3:ポート、P4:ポート、T1:第1位置、T2:第2位置、T3:第3位置