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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121628
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20230824BHJP
   H01M 50/375 20210101ALI20230824BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20230824BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20230824BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230824BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/375
H01M50/103
H01G11/80
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025075
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 浩二
(72)【発明者】
【氏名】服部 麻未
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB01
5E078AB13
5E078AB14
5E078AB16
5E078EA16
5E078HA02
5E078HA05
5H011AA13
5H011CC06
5H012AA07
5H012BB01
5H012BB08
5H012EE04
5H012FF02
5H012FF08
5H012GG03
(57)【要約】
【課題】蓄電素子を備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、ガス排出弁105を有する蓄電素子100と、ガス排出弁を開放させるための開弁機構50であって、蓄電素子100の外部に位置する他の部材18に配置された開弁機構50と、を備える。開弁機構50は、ガス排出弁105に向けて突出する突起51aを有する突起部材51であって、ガス排出弁105に向けて移動可能な状態で他の部材18に支持された突起部材51を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出弁を有する蓄電素子と、
前記ガス排出弁を開放させるための開弁機構であって、前記蓄電素子の外部に位置する他の部材に配置された開弁機構と、を備え、
前記開弁機構は、
前記ガス排出弁に向けて突出する突起を有する突起部材であって、前記ガス排出弁に向けて移動可能な状態で前記他の部材に支持された突起部材を有する、
蓄電装置。
【請求項2】
前記開弁機構はさらに、前記突起部材の前記ガス排出弁に向けた移動を制限する制限部材であって、熱によって変形する制限部材を有する、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記開弁機構はさらに、前記突起部材を、前記突起の突出方向に移動させる付勢部材を備える、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記突起部材は、板状部と軸部とを有し、
前記板状部に前記突起が配置されており、
前記軸部を中心に前記板状部が回転することで前記突起を前記ガス排出弁に向けて移動させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記他の部材は、前記蓄電素子を保持するホルダである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記他の部材は、前記蓄電素子を収容する外装体である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リチウムイオン二次電池が開示されている。このリチウムイオン二次電池は、反転用穴が形成された外装缶を備え、反転用穴が反転板で塞がれている。このリチウムイオン二次電池において、過充電により外装缶内にガスが発生して、外装缶内の圧力が反転板の反転圧力を越えると、反転板が外装缶の外部側に向かって湾曲して、反転板が、短絡板の突起に接触する。外装缶内の圧力が更に上昇すると、短絡板の突起が反転板に予め決めた圧力を越えた状態で接触・押圧され、突起が反転板に食い込み反転板が開放する(破れる)。このため、開放した(破れた)反転板を通じて、外装缶内のガスが放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-235814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のリチウムイオン二次電池において、事象によっては内圧上昇がゆるやかであり、反転板の開放が不完全となり、ガス放出が不十分となるケースが予想される。そこで、内圧上昇がゆるやか、または、内圧上昇が不十分であっても、内圧上昇以外の因子でガスを放出できる手段が求められている。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目してなされたものであり、蓄電素子を備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、ガス排出弁を有する蓄電素子と、前記ガス排出弁を開放させるための開弁機構であって、前記蓄電素子の外部に位置する他の部材に配置された開弁機構と、を備え、前記開弁機構は、前記ガス排出弁に向けて突出する突起を有する突起部材であって、前記ガス排出弁に向けて移動可能な状態で前記他の部材に支持された突起部材を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓄電素子を備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る開弁機構及び蓄電素子の構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る開弁機構の構成を示す第1の断面図である。
図5】実施の形態に係る開弁機構の構成を示す第2の断面図である。
図6】実施の形態の変形例1に係る開弁機構及びその周辺の構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態の変形例2に係る開弁機構及びその周辺の構成を示す斜視断面図である。
図8】実施の形態の変形例3に係る開弁機構の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、ガス排出弁を有する蓄電素子と、前記ガス排出弁を開放させるための開弁機構であって、前記蓄電素子の外部に位置する他の部材に配置された開弁機構と、を備え、前記開弁機構は、前記ガス排出弁に向けて突出する突起を有する突起部材であって、前記ガス排出弁に向けて移動可能な状態で前記他の部材に支持された突起部材を有する。
【0010】
この構成によれば、開弁機構は、突起部材をガス排出弁に向けて移動させることで機械的にガス排出弁に作用することができ、これにより、少なくとも、ガス排出弁の開放(開弁)を促すことができる。この開弁機構は、蓄電素子の外部の他の部材に配置される。そのため、蓄電素子の異常発生時における開弁の確実性が向上する。
【0011】
前記開弁機構はさらに、前記突起部材の前記ガス排出弁に向けた移動を制限する制限部材であって、熱によって変形する制限部材を有する、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、通常時では、突起部材は制限部材によって移動が制限されることで、突起部材の突起を、ガス排出弁に実質的に作用しない位置に維持することができる。さらに、蓄電素子の異常発生時において蓄電素子が発熱した場合、制限部材が変形することで、突起部材の突起をガス排出弁に作用させることが可能となる。つまり、蓄電素子の発熱時に作動する、熱感知式の開弁機構を構成することができる。
【0013】
前記開弁機構はさらに、前記突起部材を、前記突起の突出方向に移動させる付勢部材を備える、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、突起部材は、付勢部材を介して他の部材に支持された状態で、付勢部材による付勢力を受けることができる。これにより、制限部材が熱によって変形した場合に、当該付勢力によって突起をガス排出弁に押し当てることができる。
【0015】
前記突起部材は、板状部と軸部とを有し、前記板状部に前記突起が配置されており、前記軸部を中心に前記板状部が回転することで前記突起を前記ガス排出弁に向けて移動させる、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、例えばてこの原理を利用して、突起部材の板状部に設けられた突起を、ガス排出弁に押し当てることができる。従って、例えば、板状部を回転させるために板状部に作用する力が比較的に小さい場合であっても、ガス排出弁が開放する程度の力で突起をガス排出弁に押し当てることができる。すなわち、開弁機構の実効性を維持しつつ、開弁機構の軽量化等を図ることができる。
【0017】
前記他の部材は、前記蓄電素子を保持するホルダである、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、開弁機構を有しない蓄電素子をホルダに保持させるだけで、当該蓄電素子に対する開弁機構の配置が完了する。つまり、蓄電素子に対する開弁機構の適切な配置が容易である。この効果は、蓄電装置が複数の蓄電素子を備える場合に特に顕著となる。
【0019】
前記他の部材は、前記蓄電素子を収容する外装体である、としてもよい。
【0020】
この構成によれば、開弁機構を有しない蓄電素子を外装体に収容するだけで、当該蓄電素子に対する開弁機構の配置が完了する。つまり、蓄電素子に対する開弁機構の適切な配置が容易である。この効果は、外装体に複数の蓄電素子を収容する場合に特に顕著となる。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0022】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の外装体の短手方向、または、蓄電素子の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の長手方向、または、複数の蓄電素子の並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の本体と蓋体との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0023】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。単に「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0024】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0025】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置1の概略構成について説明する。図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。外装体10の内部には、図2以降の図に示される部材に加え、バスバー及び電気機器等が収容され、さらに、蓄電素子100に沿って配置されるスペーサ、及び、複数の蓄電素子100を拘束する拘束部材等が配置され得る。しかし、これらの部材の図示及び説明は適宜省略する。
【0026】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。蓄電装置1は、例えば、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0027】
図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、外装体10と、外装体10に収容された蓄電素子ユニット101及び開弁機構50とを備えている。外装体10は、蓄電装置1の筐体を構成する箱形(略直方体形状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット101の外方に配置され、蓄電素子ユニット101を所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0028】
外装体10は、外装体10の本体を構成する外装体本体12と、蓋体11とを有している。外装体本体12は、Z軸プラス方向に開口12aが形成され、かつ、Z軸マイナス方向に底壁部13を有する有底矩形筒状のハウジングである。蓋体11は、外装体本体12の開口12aを閉塞する矩形状の部材である。蓋体11は、外装体本体12と、接着剤、ヒートシール、超音波溶着、またはボルト及びナットによる締結等によって接合される。蓋体11には、例えば排気管(図示せず)が設けられており、蓄電素子100からガスが排出された場合、外装体10の内部のガスは、排気管を介して外装体10の外部に排出される。蓋体11には、正極及び負極の一対のモジュール端子(総端子)である一対の外部端子19が配置されている。蓄電装置1は、この一対の外部端子19を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子19は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0029】
外装体10の形状は、図1及び図2に示すような直方体形状である必要はない。例えば、円柱形状などの他の形状の外装体が、蓄電素子ユニット101及び開弁機構50を収容するケースとして採用されてもよい。
【0030】
蓄電素子ユニット101は、1以上の蓄電素子100で構成された蓄電素子100群である。本実施の形態に係る蓄電素子ユニット101は5個の蓄電素子100で構成されており、5個の蓄電素子100は、それぞれが長側面110aをY軸方向に向けた状態でY軸方向に並べられている。蓄電素子ユニット101は、蓄電素子100の側面に沿って配置されたスペーサまたはホルダを有してもよい。蓄電素子ユニット101は、複数の蓄電素子100をその並び方向で拘束する拘束部材を有してもよい。蓄電素子ユニット101が有する5個の蓄電素子100は、例えば、複数の図示しないバスバーにより例えば直列に接続される。蓄電素子ユニット101が有する蓄電素子100の数及び複数の蓄電素子100の電気的な接続の態様(直列、並列)に特に限定はない。例えば、2以上の蓄電素子100を並列に接続することで得られる蓄電素子100群を複数並べ、これら複数の蓄電素子100群を直列に接続してもよい。
【0031】
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、図2に示すように、扁平な直方体形状(角形)の容器110を備える。容器110の内部には、図2に図示しない電極体130(後述する図3参照)、集電体、及び電解液等が収容されている。電極体130としては、例えば、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成された巻回型の電極体が採用される。蓄電素子100が備える電極体としては、巻回型の電極体の他、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体が例示される。容器110に収容される電解液としては、蓄電素子100の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子100は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子100は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。蓄電素子100の形状は、上記角形には限定されず、それ以外の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0032】
容器110は、図2に示すように、一対の長側面110aと、一対の短側面110bと、底面110dと、端子配置面110cとを有する直方体形状のケースである。端子配置面110cには、一対の電極端子120が設けられている。本実施の形態では、底面110dに、ガス排出弁105(後述する図3参照)が設けられている。このような構成を有する容器110は、端子配置面110c以外を形成する容器本体の内部に電極体130等を収容後、容器本体と、端子配置面110cを形成する蓋板とが溶接等されることにより、内部を密封できる構造となっている。なお、容器110の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0033】
電極端子120は、容器110に収容された電極体に電気的に接続される端子部材であり、端子配置面110cから突出して設けられている。一対の電極端子120のうちの一方は、電極体130の正極と電気的に接続され、他方は電極体130の負極と電気的に接続される。電極端子120は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の導電部材で形成されている。
【0034】
本実施の形態に蓄電装置1はさらに、開弁機構50を有している。開弁機構50は、蓄電素子100のガス排出弁105を開放(開弁)させる機構であり、本実施の形態では、外装体10の底壁部13に配置(支持)されている。つまり、外装体10は、蓄電素子100の外部に位置し、かつ、開弁機構50が配置される他の部材18としても機能する。開弁機構50は、図2に示すように、蓄電素子ユニット101が有する複数の蓄電素子100に対向する位置のそれぞれに配置されている。以下、開弁機構50及びその周辺の構成について、図3図5を用いて説明する。
【0035】
[2.開弁機構及びその周辺の構成]
図3は、実施の形態に係る開弁機構50及び蓄電素子100の構成を示す斜視図である。図3では、開弁機構50は分解された状態で図示されており、蓄電素子100の容器110に収容されている電極体130、及び、容器110の底面110dに設けられたガス排出弁105のおおよその外形が点線で図示されている。図4は、実施の形態に係る開弁機構50の構成を示す第1の断面図であり、図5は、実施の形態に係る開弁機構50の構成を示す第2の断面図である。図4では、開弁機構50が動作する前の状態における開弁機構50の断面(図2のIV-IV線断面)が図示されている。図5では、開弁機構50が動作した後の状態における開弁機構50の断面が図示されている。図5の断面の位置は図4の断面の位置と同じである。
【0036】
図3図5に示すように、蓄電素子100は、容器110の底面110dに配置されたガス排出弁105を有している。具体的には、ガス排出弁105は、容器110の底板部113(図4参照)に設けられた開口部を塞ぐ状態で底板部113に固定されている。本実施の形態では、例えば、容器110と同じ素材(ステンレス鋼等の金属)で形成された板状のガス排出弁105が、溶接によって容器110の底板部113に固定されている。ガス排出弁105の構成はこれに限定されず、例えば、容器110の底板部113の一部にプレス加工等を施すことで、ガス排出弁105が底板部113に一体に設けられてもよい。
【0037】
ガス排出弁105は、容器110の内圧が所定の値以上になった場合、その内圧を受けて破断等することで開弁する部位である。容器110の内圧の上昇は、例えば過大な衝撃によって電極体130が損傷したこと、または過充電状態になったこと等に起因して蓄電素子100が発熱し、これにより、電解液が急激に気化した場合に生じる。電解液の気化により容器110の内圧が上昇した場合、ガス排出弁105が開弁することで、ガスが排出されて容器110の内圧の上昇が停止される。
【0038】
本実施の形態に係る蓄電装置1では、蓄電素子100が発熱した場合に、開弁機構50によって、蓄電素子100の外部からガス排出弁105を開弁させることができる。つまり、蓄電装置1は、容器110の内圧の上昇に依存せずに動作する開弁機構50によって、ガス排出弁105を開弁させる構造が採用されている。これにより、蓄電素子100が発熱することで容器110の内圧が急激に上昇するような異常の発生時において、より確実に、容器110の内圧の上昇を停止させることができる。
【0039】
具体的には、開弁機構50は、図4及び図5に示すように、他の部材18である外装体10の底壁部13における、蓄電素子100と対向する位置に配置されている。本実施の形態では、外装体10は、底壁部13に台座15を有しており、開弁機構50は台座15によって位置決めされ、かつ、開弁機構50のZ軸マイナス方向の端部が台座15に固定されている。台座15は、底壁部13と一体の部材(底壁部13の一部)であってもよく、底壁部13に固定された、底壁部13とは別体の部材であってもよい。
【0040】
開弁機構50は、図3図5に示すように、突起部材51を備え、突起部材51は、蓄電素子100のガス排出弁105に向けて突出する突起51aを有している。突起部材51は、ガス排出弁105に向けて移動可能であり、通常時は、図4に示すように、突起51aがガス排出弁105に接触しない位置に配置される。具体的には、本実施の形態では、突起部材51は、付勢部材54を介して外装体10の底壁部13に支持されており、かつ、蓄電素子100との間には制限部材52が配置されている。より詳細には、突起部材51は、突起本体部51bと突起本体部51bから突出する突起51aとを有し、突起本体部51bと、蓄電素子100の底板部113との間に制限部材52が配置される。さらに、突起本体部51bと、外装体10が有する台座15との間に付勢部材54が配置される。付勢部材54は、突起部材51を、突起51aの突出方向(Z軸プラス方向)に移動させる部材であり、本実施の形態ではつるまきばねが付勢部材54として採用されている。制限部材52は、突起部材51の、ガス排出弁105に向けた移動を制限する部材であり、本実施の形態では、熱可塑性の樹脂で形成された環状(図3参照)の部材である。
【0041】
このように構成された開弁機構50において、上述のように過大な衝撃等に起因して蓄電素子100が発熱した場合、その熱によって制限部材52は変形(溶融または軟化)する。制限部材52が溶融または軟化した場合、付勢部材54から、制限部材52を圧縮する方向の付勢力を受けている突起部材51は、蓄電素子100に近づく向きに移動する。これにより、突起部材51の突起51aがガス排出弁105に押し当てられた状態となる。その結果、例えば、図4に示すように突起51aが、ガス排出弁105を突き破る(貫通する)。このとき、蓄電素子100において、発熱による電解液の気化に伴う内圧の上昇が始まっており、従って、ガス排出弁105の、突起51aによって形成された孔からガス及び/または電解液が排出される。その結果、蓄電素子100の内圧の上昇が停止する。
【0042】
突起部材51の突起51aがガス排出弁105に押し当てられたときに、突起51aがガス排出弁105を貫通しない場合であっても、少なくとも、突起51aは、ガス排出弁105に傷をつけることができる。これにより、容器110の内圧の上昇に伴って外側に膨らみ出したガス排出弁105の破断が促される。その結果、開弁機構50が配置されていない場合よりも速やかに容器110の内圧の上昇が停止される。
【0043】
このように、本実施の形態に係る開弁機構50によれば、例えば、蓄電素子100のガス排出弁105が容器110の内圧の上昇によって開弁するよりも前に、ガス排出弁105を開弁させることができる。これにより、蓄電装置1における不安全事象のより速やかな収束が図られる。
【0044】
複数の蓄電素子100のそれぞれは、例えば、図2において図示しないバスバーホルダ等によって、Z軸プラス方向の移動が制限されている。さらに、Z軸プラス方向が鉛直上方である場合、蓄電素子100は、自重によっても、Z軸プラス方向に移動し難くなっている。これにより、複数の蓄電素子100のそれぞれは、Z軸マイナス方向に位置する開弁機構50の突起51aからZ軸プラス方向の力を受けた場合、その力によってはZ軸プラス方向に移動し難い。その結果、開弁機構50の突起51aは、より確実またはより効率よく、蓄電素子100のガス排出弁105を貫通すること、または、傷つけることができる。
【0045】
図5では、図示及び説明の簡単のために、制限部材52は完全に消失しているが、溶融または軟化した制限部材52の一部または全部が、例えば開弁機構50の周囲に残存してもよい。また、図5では、ガス排出弁105は、単純に突起51aによって突き上げられた状態で図示されているが、ガス排出弁105は、突起51aによって形成された貫通孔から裂ける等、図5とは異なる状態になってもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、ガス排出弁105を有する蓄電素子100と、ガス排出弁105を開放させるための開弁機構50であって、蓄電素子100の外部に位置する他の部材18に配置された開弁機構50と、を備える。開弁機構50は、ガス排出弁105に向けて突出する突起51aを有する突起部材51であって、ガス排出弁105に向けて移動可能な状態で他の部材18に支持された突起部材51を有する。
【0047】
この構成によれば、開弁機構50は、突起部材51をガス排出弁105に向けて移動させることで機械的にガス排出弁105に作用することができ、これにより、突起51aは、ガス排出弁105を貫通する、または、傷つけることができる。その結果、蓄電素子100の内圧上昇がゆるやか、または、内圧上昇が不十分であっても、少なくとも、ガス排出弁105の開弁を促すことができる。この開弁機構50は、蓄電素子100の外部の他の部材18に配置される。そのため、蓄電素子100そのものに、開弁のための機構を設けることなく、蓄電素子100の異常発生時における開弁の確実性が向上する。
【0048】
開弁機構50が配置される他の部材18は、蓄電素子100の外部の部材であれば特に限定はないが、本実施の形態において、他の部材18は、蓄電素子100を収容する外装体10である。
【0049】
この構成によれば、開弁機構50を有しない蓄電素子100を外装体10に収容するだけで、その蓄電素子100に対する開弁機構50の配置が完了する。つまり、蓄電素子100に対する開弁機構50の適切な配置が容易である。この効果は、外装体10に複数の蓄電素子100を収容する場合に特に顕著となる。つまり、複数の開弁機構50のそれぞれを、外装体10の所定の位置に取り付けておけば、複数の蓄電素子100を外装体10に収容することで、複数の蓄電素子100のそれぞれに適した位置に開弁機構50が配置された状態となる。すなわち、複数の蓄電素子100のそれぞれに対して、開弁機構50の位置決めをする必要はない。
【0050】
本実施の形態では、開弁機構50はさらに、突起部材51のガス排出弁105に向けた移動を制限する制限部材52であって、熱によって変形する制限部材52を有する。
【0051】
この構成によれば、通常時では、突起部材51は制限部材52によって移動が制限されることで、突起部材51の突起51aを、ガス排出弁105に実質的に作用しない位置に維持することができる(例えば図4参照)。さらに、蓄電素子100の異常発生時において蓄電素子100が発熱した場合、制限部材52が変形することで、突起部材51の突起51aをガス排出弁105に作用させることが可能となる(例えば図5参照)。つまり、蓄電素子100の発熱時に作動する、熱感知式の開弁機構50を構成することができる。
【0052】
本実施の形態では、開弁機構50は、突起部材51を、突起51aの突出方向に移動させる付勢部材54を備えている。
【0053】
この構成によれば、突起部材51は、付勢部材54を介して他の部材18に支持された状態で、付勢部材54による付勢力を受けることができる。これにより、制限部材52が熱によって変形した場合に、当該付勢力によって、突起51aをガス排出弁105に押し当てることができる。
【0054】
制限部材52の素材としては融点が80~180℃の樹脂が好ましい。具体的には、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)などの樹脂が好ましいが、これらに限らない。蓄電素子100に接触している制限部材52は、蓄電素子100からの熱によって軟化することで、突起部材51は、蓄電素子100に近づく方向の移動が許容され、これにより、突起51aが、蓄電素子100のガス排出弁105を貫通すること、または、傷つけることも可能である。
【0055】
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について、開弁機構50及びその周辺の構成を中心に説明した。しかし、開弁機構50及びその周辺の構成は、図2図5とは異なる構成であってもよい。そこで、以下に、開弁機構50及びその周辺の構成についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0056】
[3-1.変形例1]
図6は、実施の形態の変形例1に係る開弁機構50及びその周辺の構成を示す斜視図である。図6では、本変形例に係る開弁機構50の配置態様を示すために、蓄電素子100を、セルホルダ14から分離した状態で、蓄電素子100及びセルホルダ14を図示している。
【0057】
本変形例に係る開弁機構50は、蓄電素子100の外部に位置する他の部材18に配置されており、ガス排出弁105に向けて突出する突起51aを有する突起部材51を備えている。この構成については、本変形例に係る開弁機構50と、実施の形態に係る開弁機構50とは共通する。
【0058】
本変形例に係る開弁機構50は、蓄電素子100の外部に位置するセルホルダ14に配置されている点で上記実施の形態とは異なる。つまり、本変形例において、蓄電素子100の外部に位置する他の部材18は、蓄電素子100を保持するセルホルダ14である。
【0059】
具体的には、本変形例に係るセルホルダ14は、開弁機構50を支持する機構支持部14aと、機構支持部14aよりもZ軸プラス方向に位置し、蓄電素子100を支持するセル支持部14bとを有している。セル支持部14bは、X軸方向の両側に配置されており、X軸方向における2つのセル支持部14bの間の位置であって、かつ、Z軸マイナス方向の位置に機構支持部14aが配置されている。このような構成を有するセルホルダ14において、蓄電素子100の底面110dが2つのセル支持部14bに支持された状態では、開弁機構50の突起51aは、底面110dに配置されたガス排出弁105に対向する位置に配置される。
【0060】
この構成によれば、開弁機構50を有しない蓄電素子100をセルホルダ14に保持させるだけで、その蓄電素子100に対する開弁機構50の配置が完了する。つまり、蓄電素子100に対する開弁機構50の適切な配置が容易である。この効果は、蓄電装置1が複数の蓄電素子100を備える場合に特に顕著となる。つまり、複数の開弁機構50のそれぞれを、セルホルダ14の所定の位置(機構支持部14a)に取り付けておけば、複数の蓄電素子100のそれぞれをセルホルダ14に保持させることで、複数の蓄電素子100のそれぞれに適した位置に開弁機構50が配置された状態となる。すなわち、複数の蓄電素子100のそれぞれに対して、開弁機構50の位置決めをする必要はない。
【0061】
セルホルダ14は、セルホルダ14が保持している蓄電素子100の端子配置面110cに接触するリブまたは壁部等を有してもよい。これにより、開弁機構50が動作した場合における蓄電素子100のZ軸プラス方向の移動が制限される。その結果、開弁機構50が有する突起51aが、より確実またはより効率よく、蓄電素子100のガス排出弁105を貫通すること、または、傷つけることができる。
【0062】
[3-2.変形例2]
図7は、実施の形態の変形例2に係る開弁機構150及びその周辺の構成を示す斜視断面図である。図7では、本変形例に係る開弁機構150の構成を明確に示すために、外装体10をXZ平面に平行な面で切断し、かつ、外装体10内部の、蓄電素子100及び開弁機構150の組については、1つの組のみを図示している。
【0063】
図7に示す開弁機構150は、蓄電素子100の外部に位置する他の部材18に配置されている。開弁機構150は、ガス排出弁105に向けて突出する突起151aを有する突起部材151であって、ガス排出弁105に向けて移動可能な状態で他の部材18に支持された突起部材151を有する。他の部材18は、本変形例では外装体10である。これらの構成については、本変形例に係る開弁機構150と、実施の形態に係る開弁機構50とは共通する。
【0064】
本変形例に係る開弁機構150では、突起部材151は、板状部155と軸部156とを有する。板状部155には突起151aが配置されている。軸部156を中心に板状部155が回転することで突起151aは、ガス排出弁105に向けて移動される。
【0065】
この構成によれば、てこの原理を利用して、突起部材151の板状部155に設けられた突起151aを、ガス排出弁105に押し当てることができる。従って、例えば、板状部155を回転させるために板状部155に作用する力が比較的に小さい場合であっても、ガス排出弁105が開放する程度の力で突起151aをガス排出弁105に押し当てることができる。すなわち、開弁機構150の実効性を維持しつつ、開弁機構150の軽量化等を図ることができる。
【0066】
より具体的には、本変形例に係る開弁機構150において、突起部材151は、長尺状の板状部155であって、長手方向の両端部の間に突起151aが配置された板状部155を有する。板状部155は、突起151aがガス排出弁105に近づく方向に板状部155が回転するように、両端部のうちの一方の端部が他の部材18(本変形例では外装体10)に支持されている。付勢部材154は、板状部155の両端部のうちの他方の端部を付勢する位置に配置されている。
【0067】
このように構成された開弁機構150は、図7に示す状態では、板状部155と蓄電素子100の底面110dとの間に制限部材152が配置されていることで、突起151aは、ガス排出弁105から離間した位置に配置されている。
【0068】
この状態において、蓄電素子100が発熱した場合、その熱によって制限部材152が溶融または軟化する。制限部材152が溶融または軟化した場合、付勢部材154から、制限部材152を圧縮する方向の付勢力を受けている板状部155は、軸部156を中心に、蓄電素子100に近づく向きに回転する。これにより、突起部材151の突起151aがガス排出弁105に押し当てられた状態となる。その結果、突起151aは、ガス排出弁105を貫通する、または傷つけ、これにより、ガス排出弁105の開弁を促すことができる。
【0069】
[3-3.変形例3]
図8は、実施の形態の変形例3に係る開弁機構250の構成を示す斜視図である。図8では、本変形例に係る開弁機構250の構成を明確に示すために、開弁機構250のZ軸プラス方向に位置する蓄電素子100の図示は省略し、外装体10の底壁部13のおおよその配置範囲を点線で表している。さらに、図8では、開弁機構250が有する制限部材252は、板状部255からZ軸プラス方向に分離した状態で図示されている。
【0070】
図8に示す開弁機構250では、突起部材251は、板状部255と軸部256とを有する。板状部255には突起251aが配置されている。軸部256を中心に板状部255が回転することで突起251aは、ガス排出弁105(図8に図示せず、以下同じ)に向けて移動される。さらに、突起部材251と蓄電素子100(図8に図示せず、以下同じ)との間には、制限部材252が配置されている。これらの構成については、本変形例に係る開弁機構250と、上記変形例2に係る開弁機構150とは共通する。
【0071】
本変形例では、複数の板状部255が、第一開弁部材258に一体に設けられており、かつ、複数の制限部材252が、第二開弁部材259に一体に設けられている点で、上記変形例2に係る開弁機構150とは異なる。つまり、図8では、5つの蓄電素子100に対応する5つの開弁機構250が、2つの部材(第一開弁部材258及び第二開弁部材259)にまとめられている。さらに、突起部材251が有する軸部256は、板状部255の一部であって、板状部255の回転中心となる仮想軸が位置する部分である。これらの点について、本変形例に係る開弁機構250は、上記変形例2に係る開弁機構150とは異なる。
【0072】
この構成によれば、例えば3以上の開弁機構250が、2つの部材(第一開弁部材258及び第二開弁部材259)にまとめられるため、蓄電装置1の部品点数の削減が図られる。さらに、複数の突起部材251が、第一開弁部材258に一体に設けられていることで、複数の突起部材251それぞれの、外装体10に対する位置決めは不要である。これらのことは、蓄電装置1の製造効率の向上に寄与する。
【0073】
より具体的には、本変形例に係る開弁機構250は、板状部255が有する弾性によって、制限部材252を、蓄電素子100に押し当てた状態に維持することができる。この状態では、制限部材252によって、突起251aは、ガス排出弁105から離間した位置に配置されている。この状態において、蓄電素子100が発熱した場合、その熱によって制限部材252が溶融または軟化する。制限部材252が溶融または軟化した場合、板状部255は、自身の弾性力によって、軸部256を中心に蓄電素子100に近づく向きに回転する。これにより、突起251aがガス排出弁105に押し当てられる。その結果、突起251aは、ガス排出弁105を貫通する、または傷つけることができ、これにより、少なくとも、ガス排出弁105の開弁を促すことができる。このように、本変形例に係る板状部255は、突起部材251の一部を構成する部材であり、かつ、突起251aをその突出方向に移動させる付勢部材(板ばね)として機能する部材である。
【0074】
開弁機構250は、付勢部材154(図7参照)のような付勢部材を有してもよい。この場合、板状部255の、突起251aとは反対側に付勢部材を配置することで、制限部材252が溶融または軟化した場合において、より強い力で突起251aをガス排出弁105に押し当てることができる。その結果、より確実にガス排出弁105の開弁を促すことができる。この場合、板状部255は、突起251aを移動させる付勢部材としての機能を有しなくてもよいため、板状部255として、厚みが比較的に薄い部材(剛性が低い)を採用することができる。
【0075】
[4.他の変形例]
以上、実施の形態に係る蓄電装置1及びその変形例について説明したが、本発明は、実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0076】
例えば、実施の形態に係る開弁機構50において、突起部材51を蓄電素子100に近づける向きに付勢するように付勢部材54を配置しなくてもよい。この場合、蓄電素子100を、突起部材51に近づける方向に付勢するように、つるまきばねなどの付勢部材が配置されてもよい。つまり、蓄電素子100のZ軸プラス方向に付勢部材を配置することで、蓄電素子100を、突起部材51に向けて付勢してもよい。この場合であっても、制限部材52が溶融または軟化した場合、蓄電素子100のガス排出弁105は、突起部材51の突起51aに押し当てられた状態となる。その結果、突起51aは、ガス排出弁105を貫通する、または傷つけることができ、これにより、ガス排出弁105の開弁を促すことができる。
【0077】
開弁機構50は、付勢部材54を有しなくてもよい。例えば、蓄電素子100の重量が比較的に大きい場合において、制限部材52が溶融または軟化した場合、蓄電素子100のガス排出弁105は、突起部材51の突起51aに押し当てられた状態となる。その結果、突起51aは、ガス排出弁105を貫通する、または傷つけることができ、これにより、ガス排出弁105の開弁を促すことができる。
【0078】
開弁機構50は、付勢部材54としてつるまきばねとは異なる種類のばね(板ばね等)、または、ばね以外の弾性体(ゴム製のブロック等)が採用されてもよい。開弁機構50は、付勢部材54ではなく、電力、油圧、または空気圧を利用して突起部材51を蓄電素子100に近づく向きに移動させるアクチュエータを備えてもよい。この場合、開弁機構50は、制限部材52を備える必要はない。例えば、温度センサによって検知された蓄電素子100の温度が所定の閾値を越えた場合に、アクチュエータを動作させることで突起部材51を移動させ、これにより、突起51aを蓄電素子100のガス排出弁105に押し当ててもよい。つまり、熱感知式の開弁機構50の動作が電気的な制御によって実現されてもよい。さらに、蓄電素子100の温度ではなく、蓄電装置1または蓄電素子100に与えられた衝撃の大きさを加速度センサ等で検知し、その検知結果に応じて、開弁機構50を動作させてもよい。
【0079】
開弁機構50が制限部材52の素材は樹脂材料には限定されない。例えば、形状記憶合金によって形成された制限部材であって、熱によってZ軸方向の幅を縮ませる制限部材が、開弁機構50に備えられてもよい。この場合であっても、制限部材は、通常時は、突起部材51のガス排出弁105に向けた移動を制限することができる。さらに、当該制限部材は、蓄電素子100の発熱時には、変形(Z軸方向の幅の縮小)することで、突起部材51の突起51aを、蓄電素子100のガス排出弁105に押し当てた状態にすることができる。
【0080】
樹脂で形成された制限部材52の変形は、溶融または軟化による変形には限定されない。例えば、制限部材52は、加熱されたことに起因して破断または分解し、その結果、突起部材51のガス排出弁105に向けた移動を許容する状態となってもよい。
【0081】
開弁機構50の位置は、蓄電素子100と、外装体10の底壁部13との間には限定されない。例えば、蓄電素子100のガス排出弁105が、蓄電素子100の端子配置面110cに配置されている場合、開弁機構50は、蓄電素子100と、外装体10の蓋体11との間に配置されてもよい。この場合、開弁機構50は、蓄電素子100の外部の他の部材18である、外装体10の蓋体11に配置されてもよい。開弁機構50は、蓄電素子100と蓋体11との間に位置する他の部材18(バスバーフレームまたは中蓋等)に、配置されてもよい。
【0082】
以上の、実施の形態に係る開弁機構50についての補足事項は、変形例1~3に係る開弁機構50、150、及び250のそれぞれに適宜適用されてもよい。また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 蓄電装置
10 外装体
13 底壁部
14 セルホルダ
18 他の部材
19 外部端子
50、150、250 開弁機構
51、151、251 突起部材
51a、151a、251a 突起
51b 突起本体部
52、152、252 制限部材
54、154 付勢部材
100 蓄電素子
105 ガス排出弁
110 容器
155、255 板状部
156、256 軸部
258 第一開弁部材
259 第二開弁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8