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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012164
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】速乾性布帛および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/16 20060101AFI20230118BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20230118BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20230118BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230118BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20230118BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20230118BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20230118BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20230118BHJP
   D03D 15/41 20210101ALI20230118BHJP
【FI】
D04B1/16
D02G3/36
D01F6/62 303F
A41D31/00 502C
A41D31/00 503G
B60N2/58
D03D15/47
D03D15/283
D03D15/37
D03D15/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115648
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 里桜子
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 園未
【テーマコード(参考)】
3B087
4L002
4L035
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
3B087DE05
4L002AA07
4L002AB00
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC00
4L002BA01
4L002BB01
4L002DA03
4L002EA00
4L002EA03
4L002EA07
4L002FA00
4L002FA01
4L035BB90
4L035BB91
4L035DD16
4L035EE04
4L035FF08
4L036MA05
4L036MA20
4L036MA26
4L036MA33
4L036PA42
4L036PA46
4L036RA24
4L036UA09
4L036UA25
4L048AA20
4L048AA37
4L048AB07
4L048AB09
4L048AB11
4L048AC00
4L048CA00
4L048CA07
4L048CA15
4L048DA01
4L048DA13
4L048DA25
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】速乾性だけでなくふくらみのあるソフト風合いおよび抗スナッギング性にも優れた速乾性布帛および繊維製品を提供する。
【解決手段】芯鞘型混繊糸を含む速乾性布帛であって、前記混繊糸の芯部および鞘部が仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメントである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型混繊糸を含む速乾性布帛であって、前記混繊糸の芯部および鞘部が仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメントであることを特徴とする速乾性布帛。
【請求項2】
前記芯部と鞘部の糸足差が40%以上である、請求項1に記載の速乾性布帛。
【請求項3】
前記芯部と鞘部がともにポリエステル繊維からなる、請求項1または請求項2に記載の速乾性布帛。
【請求項4】
前記芯部がカチオン可染性ポリエステル繊維からなる、請求項1~3のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項5】
前記鞘部が異形断面繊維からなる、請求項1~4のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項6】
前記混繊糸において、芯部および鞘部がともにフィラメント数20~200本のマルチフィラメントである、請求項1~5のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項7】
前記混繊糸に、30個/m以上のインターレース加工が施されてなる、請求項1~6のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項8】
布帛を構成する繊維がすべて、仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメントである、請求項1~7のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項9】
布帛が、30~150コース/2.54cmかつ50~80ウエール/2.54cmの範囲にある編物である、請求項1~8のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項10】
布帛の抗スナッギング性が3級以上である、請求項1~9のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項11】
布帛の拡散性残留水分率(L0)が30分以下である、請求項1~10のいずれかに記載の速乾性布帛。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の速乾性布帛を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯鞘型混繊糸を含み、速乾性だけでなくふくらみのあるソフト風合いおよび抗スナッギング性にも優れた速乾性布帛および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、混繊糸を用いた、吸水性および速乾性を有する布帛が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
しかしながら、速乾性およびふくらみのあるソフト風合いおよび抗スナッギング性を兼備する点でまだ満足とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-208932号公報
【特許文献2】特開2010-144288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、芯鞘型混繊糸を含み、速乾性だけでなくふくらみのあるソフト風合いおよび抗スナッギング性にも優れた速乾性布帛および繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして本発明によれば、「芯鞘型混繊糸を含む速乾性布帛であって、前記混繊糸の芯部および鞘部が仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメントであることを特徴とする速乾性布帛。」が提供される。
【0007】
その際、前記芯部と鞘部の糸足差が40%以上であることが好ましい。また、前記芯部と鞘部がともにポリエステル繊維からなることが好ましい。また、前記芯部がカチオン可染性ポリエステル繊維からなることが好ましい。また、前記鞘部が異形断面繊維からなることが好ましい。また、前記混繊糸において、芯部および鞘部がともにフィラメント数20~200本のマルチフィラメントであることが好ましい。また、前記混繊糸に、30個/m以上のインターレース加工が施されてなることが好ましい。
【0008】
本発明の速乾性布帛において、布帛を構成する繊維がすべて、仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメントであることが好ましい。また、布帛が、30~150コース/2.54cmかつ50~80ウエール/2.54cmの範囲にある編物であることが好ましい。また、布帛の抗スナッギング性が3級以上であることが好ましい。また、布帛の拡散性残留水分率(L0)が30分以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記の速乾性布帛を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芯鞘型混繊糸を含み、速乾性だけでなくふくらみのあるソフト風合い
および抗スナッギング性にも優れた速乾性布帛および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の速乾性布帛は芯鞘型混繊糸を含み、かかる前記混繊糸の芯部および鞘部が仮撚捲縮加工を施されてないマルチフィラメント(「非仮撚加工糸」ということもある。)で構成される。混繊糸の芯部または鞘部に仮撚捲縮加工糸が配されていると、速乾性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0012】
前記混繊糸において、総繊度が50~150dtex(より好ましくは70~130dtex)の範囲内であることが好ましい。混繊糸の総繊度が上記範囲より小さいと、速乾性布帛の密度が小さくなることによりスナッギングが起きやすくなるおそれがある。逆に上記範囲を越えると、速乾性布帛の風合いが硬くなり、目付けも大きくなりすぎるおそれがある。
【0013】
また、前記混繊糸の芯部および/または鞘部のフィラメント数としては、20~200本の範囲内であることが好ましい。特に、芯部と鞘部がともに20~200本の範囲内であることが好ましい。
【0014】
混繊糸中の鞘部の作用としては、まず肌側の鞘部が発汗した汗を瞬時に吸水・拡散し、芯部に移行させ、同時に、外側の鞘部にも移行・拡散させ、布帛に適度なふくらみとソフト風合いを付加することである。吸水・拡散効果を上げ、ソフト風合いにするためには、鞘部の単繊維繊度は、3.0dtex以下(より好ましくは0.001~1.3dtex)であることが好ましい。鞘部を構成する繊維の断面形状は特に限定されないが、異形断面であることが好ましい。異形断面に関しては、三角、偏平、Y型、W型、十字などのいずれでも良い。特に、吸水性、速乾性、ふくらみのあるソフト風合いの点で、偏平断面が好ましく、フラットな偏平断面より、くびれ部を有する偏平断面がより好ましい。
【0015】
一方、芯部の作用としては、肌側の鞘部が吸水・拡散した水分を、毛細管現象を利用して瞬時に吸水・拡散し、外側の鞘部に移行させることである。芯部の単繊維繊度は、吸水性と拡散性の点から、0.5dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.9~2.2dtexの範囲である。単繊維繊度が上記範囲より小さい場合、吸水性、風合は良好となるが、速乾性が不十分となるおそれがある。一方、上記範囲より大きい場合、風合が硬くなり、目的とする速乾性布帛が得られにくくなるおそれがある。芯部を構成する繊維の断面形状は特に限定されず、前記のような異形断面でもよいし丸断面でもよい。
【0016】
前記芯部および/または鞘部に配される繊維を形成するポリマーの種類としては、ポリエステルや脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)が好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどがより好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。特に艶消し剤がポリマー重量対比0.1重量%以上(より好ましくは0.3~2.0重量%)含まれていると、防透性が向上し好ましい。具体的には、セミダルポリエステル、フルダルポリエステル、カチオン可染性ポリエステルが好ましい。カチオン染料可染剤(エステル形成性スルホン酸金属塩化合物など)がポリエステル中に含まれていると、国際公開第2011/048888号パンフレットに記載されているように酸性処理することで抗菌防臭性が付加され好ましい。
【0017】
本発明の速乾性布帛を製造する方法としては、まず、芯部用非仮撚加工糸と鞘部用非仮撚加工糸を用意する。その際、混繊糸を芯鞘構造とする上で、芯部の沸水収縮率は、鞘部の沸水収縮率より大きいことが必要である。例えば、芯部用非仮撚加工糸としては、ポリエステル未延伸糸(UDY)やポリエステル部分配向糸(POY)を冷延伸した糸が、沸水収縮率が大きく好ましい。
【0018】
次いで、芯部用非仮撚加工糸と鞘部用非仮撚加工糸とを引き揃えて、インターレース加工などの空気混繊法や合撚法により混繊糸を得る。特に、30個/m以上(より好ましくは60~200個/m)のインターレース加工が施されていることが好ましい。
【0019】
かかる混繊糸の熱水収縮率としては、速乾性布帛の抗スナッギング性の点から40%以上(より好ましくは40~60%)であることが好ましい。熱水収縮率が40%より小さいと、染色加工工程で混繊糸が十分に収縮せず、結果として速乾性布帛の密度が低くなる。そのため、速乾性布帛が鋭利なものにひっかかった場合、糸が引き出されてしまい、抗スナッギング性が低下するおそれがある。一方、熱水収縮率が40%より大きいと、染色加工工程で混繊糸の収縮が大きくなるため速乾性布帛の密度が高くなる。その結果、抗スナッギング性は良くなるが風合が硬くなり、速乾性が低下するおそれがある。
【0020】
次いで、前記混繊糸を用いて製編織することにより布帛を得た後、適宜、染色加工や吸水加工を施して速乾性布帛を得る。染色加工などの熱履歴により混繊糸に含まれる芯部用繊維が大きく収縮し混繊糸が芯鞘型となる。その際。混繊糸に含まれる芯部と鞘部との糸足差が40%以上(より好ましく50~80%)であることが好ましい。かかる糸足差が40%未満の場合、混繊糸にふくらみが無く、例えば、編物にした際に編みループ間の隙間が大きくなり、引掛りやすくなってスナッギング性が低下するおそれがある。また、混繊糸に含まれる芯部と鞘部との糸足差を40%以上とするには、例えば、芯部用非仮撚加工糸として、ポリエステル未延伸糸(UDY)やポリエステル部分配向糸(POY)を冷延伸した糸を用い、一方、鞘部用非仮撚加工糸としてポリエステルを常法により紡糸・延伸(熱延伸)した延伸糸を用いるとよい。
【0021】
なお、芯部と鞘部との糸足差の測定方法としては、例えば、以下の方法が例示される。(糸足差の測定方法1)
まず、混繊糸を用いて混繊糸を用いて筒編地を編成し、染色加工を施した後、水酸化ナトリウム水溶液に前記筒編地を浸漬し、加熱後、乾燥させることで芯糸を減量する。その後、減量前の筒編地から抜き取った混繊糸の所定ウエールの長さ(L1)と減量後の筒編地から抜き取った混繊糸の同じウエールの長さ(L2)に、それぞれ所定の荷重をかけて測定を行い、下記式により糸足差を算出する。
糸足差(%)=(L2-L1)/L1×100
【0022】
(糸足差の測定方法2)
布帛から混繊糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×混繊糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした混繊糸から、芯部用繊維A(単繊維)と鞘部用繊維B(単繊維)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単繊維繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB-LA)/LA×100
ただし、LAは芯部用繊維Aの糸長(cm)であり、LBは鞘部用繊維Bの糸長(cm)である。
【0023】
また、前記混繊糸だけで布帛を構成してもよいが、前記混繊糸と他の糸条とで布帛を構成してもよい。その際、他の糸条は特に限定されず、非仮撚加工糸、仮撚捲縮加工糸、潜在捲縮糸、紡績糸などのいずれであってもよい。特に、吸水性、速乾性の点で、非仮撚加工糸がより好ましい。
【0024】
速乾性布帛の目付けは、特に限定されるものではないが、ソフト性、乾燥性の観点から、また用途を考えた場合、80~300g/mが好ましい。速乾性布帛の目付が80g/m未満であると、シャツ用途として破裂強力などの観点からも好ましくない。また、速乾性の目付が300g/mを越えると、ウエアー(衣料)として重くなりすぎるおそれがある。
【0025】
速乾性布帛の組織は特に限定されず、編物、織物いずれでもよい。例えば、平織、綾織、サテンなどの織組織を有する織物や、天竺、ニットミス、スムース、フライス、鹿の子、添え糸編、デンビー、ハーフなどの編組織を有する編物などが例示されるが、これらに限定されるものではない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。特に、吸水性、速乾性、ふくらみのあるソフト風合い、抗スナッギング性の点で30~150コース/2.54cmかつ50~80ウエール/2.54cmの範囲にある編物が好ましい。編物の密度が上記範囲未満であると、風合いはソフトになるが抗スナッギング性は低下するおそれがある。また、編物の密度が上記範囲以上であると抗スナッギング性は良くなるが、風合いが硬くなり、速乾性も低下するおそれがある。
【0026】
次に、本発明の繊維製品は、前記の速乾性布帛を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。
かかる繊維製品は前記の速乾性布帛を用いているので、吸水性、速乾性、ふくらみのある風合い、および抗スナッギング性に優れる。
【実施例0027】
次に、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0028】
(1)目付け
JISL1018-1998 6.4により測定する。
【0029】
(2)拡散性残留水分率
20℃×65%RH下の雰囲気中で試料に約0.6gの水を滴下させ、各時間の質量を測定し、拡散性残留水分率を算出する。
残留水分率(%)=各時間の水分量(g)/滴下(裏面)直後の水分量(g)×100
残留水分率が10%以下になった時の時間を測定する。時間が短い方が良い(早い時間で乾く)。
【0030】
(3)抗スナッギング性
JIS L 1058-1995 D3法のカナノコにより5時間テストする。
【0031】
(4)糸足差
混繊糸を用いて筒編地を編成した後、染色加工を施す。次いで、水酸化ナトリウム水溶液50g/L×250mlに3.75gの前記筒編地を浸漬し、2℃/分で昇温し、80℃で270分キープした後、乾燥させることで芯糸を減量する。その後、減量前の筒編地から抜き取った混繊糸の50ウエールの長さ(L1)と減量後の筒編地から抜き取った混繊糸の50ウエールの長さ(L2)に、それぞれ3.6gの荷重をかけて測定を行い、下記式により糸足差を算出する。
糸足差(%)=(L2-L1)/L1×100
【0032】
(5)通気度
JIS L1096-2010 8.26.1 A法(フラジール法)により通気度(cc/cm・s)を測定する。なお、n数は5でその平均を求める。
【0033】
(6)インターレース度
交絡糸を8.82mN×表示テックス(0.1g/de)の荷重下で1mの長さをとり、除重後、室温で24時放縮後の結節点の数を読み取り、個/mで表示する。
【0034】
(7)沸水収縮率(BWS)
JIS L1013 B法によりBWS(%)を測定する。
【0035】
(8)風合い
ソフト性の点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階に評価する。
【0036】
(9)総合評価
速乾性、ふくらみのあるソフト風合い、および抗スナッギング性の点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階に評価する。
【0037】
[実施例1]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.5mol%共重合されているポリエチレンテレフタレートからなる、繊度90dtex/36本、破断強度2.0cN/dtex、破断伸度148%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(56dtex/36本)と、繊維断面の長軸方向に3個所のくびれ部を有する断面扁平度3.2の扁平断面のポリエチレンテレフタレート延伸糸(酸化チタン含有量2.4%)(44dtex/36本)を引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差55%の混繊糸(107dtex/72本、インターレース度106個/m)を得た。
【0038】
次いで、28ゲージの丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:75.2%)と断面形状の長軸方向に3個所のくびれ部を有する断面扁平度3.2の扁平断面のポリエチレンテレフタレート延伸糸(84dtex/30本)(混率:24.8%)を交編して天竺組織の丸編物を編成した。
【0039】
次いで、該編物を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編物に親水化剤を付与した。次いで、該丸編物に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編物は、吸水性、速乾性に優れ、ふくらみのあるソフト風合いで、抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.5mol%共重合されており、エチレングリコール成分とテレフタル酸成分がケミカルリサイクルにより得られた成分であるポリエチレンテレフタレートからなる、繊度90dtex
/36本、破断強度2.0cN/dtex、破断伸度150%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(56dtex/36本)と、エチレングリコール成分とテレフタル酸成分がケミカルリサイクルにより得られた成分であるポリエチレンテレフタレートからなる繊維断面の長軸方向に3個所のくびれ部を有する断面扁平度3.2の扁平断面のポリエチレンテレフタレート延伸糸(44dtex/36本)を引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差67%の混繊糸(107dtex/72本、インターレース度106個/m)を得た。28ゲージの丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:56%)とポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型複合断面を有する延伸糸(84dtex/36本、破断強度3.5cN/dtex、破断伸度31%)(混率:44%)を交編して天竺組織の丸編物を編成した。
【0041】
次いで、該編物を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編物に親水化剤を付与した。次いで、該丸編物に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編物は、吸水性、速乾性に優れ、ふくらみのあるソフト風合いで、抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.6mol%共重合されているポリエチレンテレフタレートからなる、繊度56dtex/36本、破断強度2.4cN/dtex、破断伸度128%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(33dtex/36本)と、エチレングリコール成分とテレフタル酸成分がケミカルリサイクルにより得られた成分であるポリエチレンテレフタレートからなる繊維断面の長軸方向に3個所のくびれ部を有する断面扁平度3.2の扁平断面のポリエチレンテレフタレート延伸糸(44dtex/36本)を引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差51%の混繊糸(82dtex/72本)を得た。
【0043】
次いで、24ゲージの丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:100%)のスムース組織の丸編物を編成した。
そして、該編物を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編物に親水化剤を付与した。次いで、該丸編物に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編物は、吸水性、速乾性に優れ、ふくらみのあるソフト風合いで、抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
常法のPOY・DTY方式からなるポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(繊度84dtex/72本)を、28ゲージの丸編機を使用し、得られた仮撚捲縮加工糸100%でスムース組織の丸編物を編成した。
【0045】
次いで、該編物を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編物に親水化剤を付与した。次いで、該丸編物に、温度160℃
、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編物は、ソフト風合いで、吸水性、抗スナッギング性には優れていたが、速乾性は不良なものであった。評価結果を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる沸水収縮率13%の延伸糸(33dtex/12本)とポリエチレンテレフタレート繊維からなる沸水収縮率8%の延伸糸(35dtex/72本)を引き揃え、1.6%のオーバーフィードを加えてインターレース加工し、糸足差15%の混繊糸(69dtex/84本)を得た。
次いで、28ゲージの丸編機を使用し、得られたインターレース加工糸100%の2本引き揃えで天竺組織の丸編物を編成した。
【0047】
次いで、該編物を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編物に親水化剤を付与した。次いで、該丸編物に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編物は、ソフト風合いで、吸水性、速乾性には優れていたが、抗スナッギング性は不良なものであった。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1a】
【0049】
【表1b】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、吸水性、速乾性に優れ、ふくらみのあるソフト風合いを有し、抗スナッギング性を兼ね備えた速乾性布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。