(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121641
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】欠陥検出方法、積層造形物の製造方法、欠陥検出装置及び積層造形装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20230824BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20230824BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20230824BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20230824BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230824BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230824BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230824BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230824BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01B11/02 H
B23K31/00 L
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B29C64/106
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025093
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 碩
【テーマコード(参考)】
2F065
4F213
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA24
2F065AA49
2F065AA53
2F065CC15
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF31
2F065FF44
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ26
2F065QQ08
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
4F213AP11
4F213AP12
4F213AQ01
4F213AR12
4F213AR13
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL52
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】積層造形物の表面形状の測定結果から特定の形状特徴部を容易にかつ保存を要するデータ量を抑えて検出でき、高速で検出漏れのない欠陥検出を可能にする。
【解決手段】溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形す
る際に、積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する。この欠陥検出方法は、造形途中の積層
造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、検出した高さ分布の情報
を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、高さ分布の情報を輝度値の分布の情報
に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、高さ情報画像の輝度値の高低に応じ
て特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、検出された形状特徴
部が溶接欠陥
となる可能性を判定する判定工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
【請求項2】
高さ検出工程は、前記高さ情報画像を画像処理して前記形状特徴部を検出する、
請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記形状特徴部は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部である、
請求項1又は2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記高さ分布の検出は、前記ビードに向けて光を照射したときのビード表面からの反射光を検出する、光切断方式、位相差検出方式、三角測距方式、TOF方式のうち、いずれかの方式によるものである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記形状特徴部を含む位置に前記ビードを形成した場合に生じる前記溶接欠陥の欠陥サイズを予測する予測工程を更に備え、
前記判定工程は、予測した前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に当該形状特徴部を前記溶接欠陥と判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
前記予測工程は、前記形状特徴部の特徴量と、前記ビードを形成する溶接条件と、前記特徴量及び前記溶接条件に対応する欠陥サイズとの関係を予め学習した予測モデルに基づいて、前記欠陥サイズを予測する、
請求項5に記載の欠陥検出方法。
【請求項7】
前記形状特徴部の特徴量は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部の形状を表す形状パラメータ、及び前記狭隘部の位置と次に形成する前記ビードの狙い位置との距離の少なくともいずれかを含む、
請求項6に記載の欠陥検出方法。
【請求項8】
前記溶接条件は、溶接速度、溶接電流、溶接電圧、溶加材供給速度のうち少なくともいずれかを含む、
請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の欠陥検出方法により検出された前記溶接欠陥の情報に基づいて、前記積層造形物を造形する造形計画を、前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する、
積層造形物の製造方法。
【請求項10】
溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する欠陥判定部と、
工程と、
を備える欠陥検出装置。
【請求項11】
検出された前記形状特徴部の形状と位置との少なくともいずれかに関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記ビードを形成する溶接条件と前記特徴量と、当該溶接条件及び当該特徴量に対応する前記溶接欠陥の欠陥サイズとの関係を学習した予測モデルと、
前記検出された前記形状特徴部の前記特徴量及び前記形状特徴部を形成する前記ビードの溶接条件の情報から、前記予測モデルに基づいて前記欠陥サイズを予測する欠陥サイズ予測部と、
を備え、
前記欠陥判定部は、予測された前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に前記形状特徴部を溶接欠陥と判定する、
請求項10に記載の欠陥検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の欠陥検出装置と、
前記積層造形物を造形する造形計画を、前記欠陥検出装置により検出された前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更する造形制御装置と、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する造形装置と、
を備える積層造形システム。
【請求項13】
溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検出方法、積層造形物の製造方法、欠陥検出装置及び積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して、複数層のビードから形成される積層造形物を造形する技術が知られている。例えば、積層造形物の製造途中で、形成したビードの表面形状を測定し、測定された表面形状と基準形状とを比較することでビードの検査を行う検査装置が特許文献1に開示されている。特許文献1の検査装置では、ライン状のレーザー光をビードに照射したときの輝線を撮像し、得られた撮像画像の輝線の位置からビード表面の高さを検出している。このような3次元形状の測定には、上記した光切断法に限らず、種々の方式による測定装置が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、種々の方式により測定して得られる3次元形状の測定データは、例えば、特許文献1の光切断法による場合、測定データは輝線の座標情報であり、測定対象の形状を間接的に表した情報である。そのため、測定データから所望の形状特徴量を求める等の後処理においては、そのための演算が煩雑になり、処理を高速化しにくい。また、測定データが間接的な情報であるため、データ量が膨大になりやすく、データを保存するための十分な記憶容量を常に確保する必要があった。
【0005】
ところで、積層造形を行う場合、ビードを形成する下地に狭隘部が存在すると、この狭隘部では溶加材の溶け込みが不十分になり、未溶着部等の溶接欠陥が発生する可能性が高まる。そこで、造形途中の下地形状を測定して特定の形状特徴部(狭隘部)を自動検出し、その狭隘部の溶接条件等を変更したり、狭隘部でのビード形成パスを変更したりして溶接欠陥の発生を未然に抑制することが考えられる。しかし、上記したように膨大な測定データを高速に演算処理する必要があり、しかも、形状測定の結果に応じて溶接条件、ビード形成パスをリアルタイムで変更することは現実的に困難な場合が多い。また、測定対象の形状を間接的に表した測定データからは、元の形状を正確に再現できないこともあり、特に微小な形状を漏れなく安定して検出することは難しい。
【0006】
そこで本発明は、積層造形物の表面形状の測定結果から特定の形状特徴部を容易にかつ保存を要するデータ量を抑えて検出でき、高速で検出漏れのない欠陥検出を可能にする欠陥検出方法、これを用いた積層造形物の製造方法、並びに欠陥検出装置、積層造形装置、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
(2) (1)に記載の欠陥検出方法により検出された前記溶接欠陥の情報に基づいて、前記積層造形物を造形する造形計画を、前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する、
積層造形物の製造方法。
(3) 溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する欠陥判定部と、
工程と、
を備える欠陥検出装置。
(4) (3)に記載の欠陥検出装置と、
前記積層造形物を造形する造形計画を、前記欠陥検出装置により検出された前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更する造形制御装置と、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する造形装置と、
を備える積層造形システム。
(5) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層造形物の表面形状の測定結果から特定の形状特徴部を容易にかつ保存を要するデータ量を抑えて検出でき、高速で検出漏れのない欠陥検出を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、積層造形システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、造形制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、積層造形物の造形手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、溶接欠陥の検出方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ビードのビード形成方向に直交する断面における狭隘部の特徴量の例を示す説明図である。
【
図6A】
図6Aは、
図5に示す一対のビードの間隔を変化させた様子を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、
図5に示す一対のビードの間隔を変化させた様子を示す説明図である。
【
図7】
図7は、形状検出器によりビードの形状を測定する様子を示した概略図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す各ビードの高さ情報を輝度情報に変換した高さ情報画像データの画像である。
【
図9A】
図9Aは、
図8に示す高さ情報画像を、輝度変化等に応じてビード形状の輪郭を抽出するとともに、狭隘部を抽出した画像処理結果を示す説明図である。
【
図9B】
図9Bは、
図8に示す高さ情報画像を、輝度変化等に応じてビード形状の輪郭を抽出するとともに、狭隘部を抽出した画像処理結果を示す説明図である。
【
図11】
図11は、トーチと形状検出器とが一体となって移動した際の形状検出器による形状検出結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る欠陥検出方法を、積層造形物を製造する積層造形システムに適用した場合を例に説明する。
図1は、積層造形システムの全体構成を示す概略図である。
【0011】
本実施形態に係る積層造形システム100は、造形制御装置11と、マニピュレータ13と、溶加材供給装置15と、マニピュレータ制御装置17と、熱源制御装置19と、形状検出器21を含んで構成される。
【0012】
マニピュレータ制御装置17は、マニピュレータ13と、熱源制御装置19とを制御する。マニピュレータ制御装置17には不図示のコントローラが接続されて、マニピュレータ制御装置17の任意の操作がコントローラを介して操作者から指示可能となっている。
【0013】
マニピュレータ13は、例えば多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ23には、溶加材(溶接ワイヤ)Mが連続供給可能に支持される。トーチ23は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。トーチ23の位置及び姿勢は、マニピュレータ13を構成するロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。マニピュレータ13は、6軸以上の自由度を有するものが好ましく、先端の熱源の軸方向を任意に変化させられるものが好ましい。マニピュレータ13は、
図1に示す4軸以上の多関節ロボットの他、2軸以上の直交軸に角度調整機構を備えたロボット等、種々の形態であってもよい。
【0014】
トーチ23は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。シールドガスは、大気を遮断し、溶接中の溶融金属の酸化、窒化などを防いで溶接不良を抑制する。本構成で用いるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接又はプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、造形する積層造形物Wkに応じて適宜選定される。ここでは、ガスメタルアーク溶接を例に挙げて説明する。消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ23は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。
【0015】
溶加材供給装置15は、マニピュレータ13のトーチ23に向けて溶加材Mを供給する。溶加材供給装置15は、溶加材Mが巻回されたリール15aと、リール15aから溶加材Mを繰り出す繰り出し機構15bとを備える。溶加材Mは、繰り出し機構15bによって必要に応じて正方向又は逆方向に送られながら、トーチ23へ送給される。繰り出し機構15bは、溶加材供給装置15側に配置されて溶加材Mを押し出すプッシュ式に限らず、ロボットアーム等に配置されるプル式、又はプッシュ-プル式であってもよい。
【0016】
熱源制御装置19は、マニピュレータ13による溶接に要する電力を供給する溶接電源である。熱源制御装置19は、溶加材を溶融、凝固させるビード形成時に供給する溶接電流及び溶接電圧を調整する。また、熱源制御装置19が設定する溶接電流及び溶接電圧等の溶接条件に連動して、溶加材供給装置15の溶加材供給速度が調整される。
【0017】
溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザーとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビーム又はレーザーを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビーム又はレーザーにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、形成するビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。また、溶加材Mの材質についても特に限定するものではなく、例えば、軟鋼、高張力鋼、アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル基合金など、積層造形物Wkの特性に応じて、用いる溶加材Mの種類が異なっていてよい。
【0018】
形状検出器21は、マニピュレータ13の先端軸又は先端軸の近傍に設けられ、トーチ23の先端付近を計測領域とする。形状検出器21は、マニピュレータ13の駆動によってトーチ23とともに移動され、ビードB、及び新たにビードBを形成する際の下地となる部分(ベース25又は既設のビードBの表面)の形状を検出する。形状検出器21は、トーチ23とは別位置に設けた他の検出手段であってもよい。形状検出器21としては、例えば、レーザー光をビードBに照射し、ビード表面からの反射光を検出するレーザセンサを使用できる。高さの検出方式としては、光切断方式、位相差検出方式、三角測距方式、TOF(Time of Flight)方式等の各種の方式が挙げられ、いずれか1つの方式であってもよく、これらを組み合わせた方式であってもよい。なお、各方式については公知であるため、ここではその説明を省略する。形状検出器21により、所定の領域内における高さ分布の情報を得るには、レーザー光をガルバノミラーなどの反射鏡を用いて所定範囲で走査させたり、マニピュレータ13を動作させてレーザー光の照射範囲を広げたりすればよい。このような光学式の形状検出方式を用いることで、非接触で高速な形状検出が可能となる。
【0019】
上記した構成の積層造形システム100は、積層造形物Wkの造形計画に基づいて作成された造形プログラムに従って動作する。造形プログラムは、多数の命令コードにより構成され、造形物の形状、材質、入熱量等の諸条件に応じて、適宜なアルゴリズムに基づいて作成される。この造形プログラムに従って、トーチ23を移動させつつ、送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である線状のビードがベース25上に形成される。つまり、マニピュレータ制御装置17は、造形制御装置11から提供される所定のプログラム群に基づいてマニピュレータ13、熱源制御装置19を駆動させる。マニピュレータ13は、マニピュレータ制御装置17からの指令により、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ23を移動させてビードBを形成する。このようにしてビードBを順次に形成、積層することで、目的とする形状の積層造形物Wkが得られる。
【0020】
なお、ここでは平面状のベース25を用いているが、ベース25の形状はこれに限らない。例えば、ベース25を円柱状にして、円柱の側面外周にビードを形成する形態にしてもよい。
【0021】
また、積層造形システム100で扱う造形形状データの座標系と、積層造形物Wkが造形されるベース25上での座標系は対応付けられている。例えば、任意の位置を原点として、3次元空間における位置が特定されるように座標系の3軸が設定されていてもよい。ベース25が円柱状に構成される場合は、円筒座標系が設定されていてもよく、場合によっては球面座標系が設定されていてもよい。ここでは、ベース25の上面をXY平面とし、ベース25の上面の法線方向がZ方向となる、X軸、Y軸、Z軸を有する直交座標系を定義して説明する。
【0022】
造形制御装置11は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置により構成される。後述する造形制御装置11の各機能は、不図示の制御部が、不図示の記憶装置に記憶された特定の機能を有するプログラムを読み出し、これを実行することで実現される。記憶装置としては、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)などのメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などのストレージを例示できる。また、制御部としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)などのプロセッサ、又は専用回路などを例示できる。
【0023】
<造形制御装置の機能構成>
図2は、造形制御装置11の機能構成を示すブロック図である。造形制御装置11は、入力部31、記憶部33、造形プログラム作成部35、造形計画変更部37、出力部39、及び欠陥検出装置41を含んで構成される。詳細を後述する欠陥検出装置41は、造形制御装置11に含まれてもよいが、造形制御装置11とは別体に構成されてもよく、通信等により造形制御装置11と接続された構成でもよい。
【0024】
入力部31は、例えば、適宜なネットワークを介して、又は適宜な入力デバイスにより、外部から各種の情報を取得する。ここで取得される情報としては、例えば、CAD/CAMデータなどの積層造形を行う対象物の形状情報を含む形状データ、溶接条件の設定データ、形状検出器21からの出力データ、作業者からの指示情報などが挙げられる。各種情報の詳細については後述する。
【0025】
記憶部33は、入力部31にて取得された各種情報、前述した造形プログラムを記憶する。また、記憶部33は、各種形状を造形する際のマニピュレータ13の動作速度、動作可能範囲などの駆動条件、熱源制御装置19により設定可能な種々の溶接条件などの情報が記憶されたデータベース33aを保持する。
【0026】
造形プログラム作成部35は、ビード形成するためにトーチ23を移動させる経路を表すビード形成軌道、及びビード形成時の溶接条件などの造形計画を、記憶部33の各データベースを参照しつつ決定する。また、作成した造形計画に基づいて、マニピュレータ13、熱源制御装置19の種類及び仕様に応じた造形プログラムを作成する。
【0027】
出力部39は、造形プログラム作成部35により作成された造形プログラムをマニピュレータ制御装置17、熱源制御装置19などに出力する。なお、出力部39は更に、造形制御装置11が備えるディスプレイなどの不図示の出力装置を用いて、形状データに対する処理結果を表示する構成であってもよい。
【0028】
また、欠陥検出装置41は、形状検出器21の出力データの情報からビード形成する際の下地形状を把握し、これから形成するビードに溶接欠陥が生じる可能性が高いかを判定する。溶接欠陥の発生が危惧される場合には、造形計画変更部37が前述した溶接計画を変更した修正後の造形計画を造形プログラム作成部35に送る。造形プログラム作成部35は、入力された修正後の造形計画に基づいた造形プログラムを作成し、出力部39に出力する。
【0029】
欠陥検出装置41は、上記したように形状検出器21からの出力データの情報から溶接欠陥の発生を予測する機能を有する。具体的には、欠陥検出装置41は、形状特定部43、高さ情報画像生成部45、特徴部検出部47、特徴量抽出部49、欠陥サイズ予測部51、予測モデル53、欠陥判定部55を備える。各部の機能の詳細は後述する。
【0030】
図3は、積層造形物の造形手順を示すフローチャートである。各手順は、造形制御装置11の指令に基づいて実施される。積層造形物Wkを造形する際には、まず、造形制御装置11が積層造形物Wkの形状データを取得する(ステップ11、以下、S11と略記する。)。
【0031】
造形制御装置11の記憶部33には、マニピュレータ13及び熱源制御装置19の種類及び仕様に応じた駆動条件、溶接条件が、予めデータベース33aに入力されており、造形プログラム作成部35は、データベース33aを参照しつつ、入力された形状データに応じて、積層造形物Wkの造形計画を作成する(S2)。この造形計画の作成には、特定のアルゴリズムに従って、積層造形物Wkの形状を所定の厚さにスライスし、スライスされた各層の形状を、所定の幅を有するビードで埋めるようにビード形成軌道を求める工程、各ビードの溶接条件を設定する工程などが含まれる。このような造形計画を作成するアルゴリズムは、特に限定されず、従来公知のものでもよい。
【0032】
造形プログラム作成部35は、作詞した造形計画に基づいてマニピュレータ13、熱源制御装置19などの各部を駆動する造形プログラムを作成する(S13)。作成した造形プログラムは、出力部39からマニピュレータ制御装置17に出力される(S14)。すると、マニピュレータ制御装置17は、入力された造形プログラムに従って、マニピュレータ13、溶加材供給装置15、熱源制御装置19などの各部を駆動して、トーチ23の先端からアークを発生させつつ移動させ、造形計画どおりのビード形成軌道に沿ってビードBを形成する(S15)。
【0033】
ビードBの形成とともに、形状検出器21は高さ情報を検出して、その検出結果の出力データを造形制御装置11の入力部31へ出力する。欠陥検出装置41は、入力部31に入力された形状検出器21からの出力データを読み取る。欠陥検出装置41は、読み取った出力データに基づいて、溶接欠陥が生じやすい特定の形状を有する特徴部、具体的には、形成したビード同士の間に形成される狭隘部を検出する。そして、検出された狭隘部の位置を溶接欠陥の候補に設定する。欠陥候補が所定の条件を満足する場合には、その狭隘部の位置で次にビード形成すると溶接欠陥が生じてしまうと判定する(S16)。なお、ここではビード形成と並行して溶接欠陥の検出を行っているが、一層のビードBを全て形成した後に、この層のビード表面の形状を纏めて検出して狭隘部を抽出する、層毎の処理であってもよい。
【0034】
欠陥を生じさせる狭隘部が存在する場合には、欠陥検出装置41は、その狭隘部の位置情報(座標値)を造形計画変更部37に出力する。造形計画変更部37は、上記の狭隘部に起因する溶接欠陥が問題ないレベルとなるように、前述した造形計画を変更する(S18)。造形計画変更部37は、変更後の造形計画を造形プログラム作成部35に出力する。そして、造形プログラム作成部35は、変更後の造形計画に基づいて造形プログラムを作成する(S13)。
【0035】
狭隘部が検出されない場合、又は検出されても所定の条件を満足しない場合には、そのままビードBの形成を続ける。以上の手順を積層造形物Wkの造形が終了するまで繰り返す(S19)。
【0036】
次に、上記したS16のステップに対応する、溶接欠陥の検出方法における手順を、
図1,
図2及び
図4を参照して詳細に説明する。
図4は、溶接欠陥の検出方法の手順を示すフローチャートである。
【0037】
まず、形状特定部43は、形状検出器21からの出力データを読み取る。この出力データは、形状検出器21の高さの検出方式に応じたデータであって、直接的に高さ情報が記録されたものとは限らない。そこで、形状特定部43は、出力データの情報を解析して、これを高さ分布の情報に変換することで形状を特定する(S21)。高さ分布の情報への変換は、形状検出器21の高さの検出方法に応じて行われる。例えば、光切断法では、検出された光の輝線のプロファイルにおける凹凸の突出長(又は凹み長)に応じて、幾何学的な演算により高さ分布が求められる。
【0038】
形状特定部43は、変換した高さ分布の情報を高さ情報画像生成部45に出力する。高さ情報画像生成部45は、入力された高さ分布の情報を2次元の画像に変換する。つまり、高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、高さ分布の情報を輝度値の分布の情報に変換した画像を生成する。この画像は、N行×N列の多数の画素から構成され、各画素の輝度値は、その画素位置における形状検出器21により検出されたビード表面、又は下地の高さを表す。即ち、形状検出器21により検出した積層造形物の3次元形状の情報を、形状特定部43が高さ分布の情報に変換して、更に高さ情報画像生成部45が2次元の画像を生成する(S22)。この画像を「高さ情報画像」又は「高さ情報画像データ」ともいう。
【0039】
高さ情報画像生成部45は、生成した高さ情報画像を特徴部検出部47に出力する。特徴部検出部47は、入力された高さ情報画像を画像処理することで、特定の形状特徴を有する特徴部を検出する。この特徴部として、ビードB同士の間に谷部として形成される狭隘部を用いているが、これに限らず、溶接欠陥が生じ得る形状あれば、他の形状の部位でもよい。ここでは、狭隘部を高さ情報画像の輝度値の高低に応じて検出する。狭隘部を検出する画像処理としては、一般的な輪郭線抽出、二値化、マスク処理等の種々の処理が利用可能であり、短時間で正確な検出が可能である。このように、高さを輝度の情報として扱い、高さ分布の情報を輝度分布で表した高さ情報画像に変換することで、狭隘部等を、一般的な画像処理技術を用いて容易に検出できる。また、検出アルゴリズムの変更も容易に行えるため、検出対象に応じた最適な検出を実現しやすい。
【0040】
特徴部検出部47は、検出した狭隘部の情報を、高さ情報画像とともに特徴量抽出部49に出力する。特徴量抽出部49は、入力された狭隘部の情報と、高さ情報画像とを用いて、各狭隘部の特徴量を抽出する(S24)。
【0041】
図5は、ビードのビード形成方向に直交する断面における狭隘部の特徴量の例を示す説明図である。ベース25(又は下層のビード)の表面を表す下地面FL上に、互いに隣り合う一対のビードB1,B2が形成されている場合、
図5に示す断面において、一対のビードB1,B2の間の谷底におけるビード縁部同士の間隔を底部間隔U、ビードB1のビード頂部Pt1とビードB2のビード頂部Pt2との間隔をビード間隔W、下地面FLからビード頂部Pt1までの高さと、下地面FLからビード頂部Pt2までの高さとの平均高さ、即ち、一対のビードB1,B2により形成される谷底までの谷深さをHとする。これら底部間隔U、ビード間隔W、谷深さHは、狭隘部の特徴量として採用できる。
【0042】
図6A,
図6Bは、
図5に示す一対のビードの間隔を変化させた様子を示す説明図である。
図6Aに示すように、ビードB1,B2が互いに接する位置まで接近した場合、底部間隔Uは0となり、谷深さHは、点線で示すPt1-Pt2-P1(P2)の三角形で表されるビード間の谷深さとなる。
図6Bに示すように、ビードB1,B2同士が互いに重なる場合には、底部間隔Uは0であり、谷深さHは
図5、
図6Aに示す場合よりも浅くなる。このように、特徴量として底部間隔U、ビード間隔W、谷深さHの組合せを含むことで、狭隘部の谷部の形状を特定できる。なお、上記した特徴量は一例であって、凹部形状の断面積、ビード端部の傾斜角度等、その他のパラメータとしてもよい。
【0043】
特徴量抽出部49は、狭隘部の特徴量の情報を欠陥サイズ予測部51に出力する。欠陥サイズ予測部51は、入力された狭隘部の近傍で次に形成するビードの狙い位置を、造形プログラム作成部35が決定した造形計画を参照して求め、狭隘部の位置と、次に形成するビードの狙い位置との距離を計算する(S25)。また、欠陥サイズ予測部51は、上記の造形計画を参照して、ビードを形成する溶接条件を求める。この溶接条件には、溶接速度、溶接電流、溶接電圧、溶加材供給速度の少なくともいずれかが含まれる。こうして求められた狭隘部の特徴量、狭隘部とビードの狙い位置との距離、溶接条件、の各情報から、狭隘部の近傍でビードを形成した際に、狭隘部の位置に発生する溶接欠陥の欠陥サイズを予測する(S26)。上記した各条件に応じて欠陥サイズを予測することで、予測精度及び信頼性の向上が期待できる。
【0044】
欠陥サイズ予測部51による欠陥サイズの予測は、上記した狭隘部の特徴量と、ビードを形成する溶接条件と、特徴量及び溶接条件に対応する欠陥サイズを、実験的に又はシミュレーションにより求めた結果とを、機械学習により生成した予測モデル53を用いて行える。予測モデル53を生成するための機械学習の方法としては、例えば、決定木、線形回帰、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ガウス過程回帰、ニューラルネットワーク等の方法が挙げられる。なお、予測モデル53は、溶加材の種類ごとに複数生成してもよい。一つの予測モデルに集約する場合は、学習データに溶加材の成分の一部又は全部の情報を加えて学習させてもよい。
【0045】
欠陥サイズ予測部51は、検出された狭隘部による生じ得る溶接欠陥の欠陥サイズを予測し、その予測結果を欠陥判定部55に出力する。欠陥判定部55は、入力された欠陥サイズの予測結果を、予め設定された許容値と比較する(S27)。欠陥サイズの予測値が許容値を超えると判定した場合には、その狭隘部の情報を造形計画変更部37に出力する(S28)欠陥サイズの予測結果が許容値以下である場合は、その狭隘部については溶接欠陥の候補から外し、検出された全ての狭隘部について、上記の欠陥サイズの予測及び判定を繰り返す(S29,S30)。この判定によって、特に問題とならない狭隘部が溶接欠陥の候補から除外され、欠陥検出の正確性が高められる。
【0046】
上記した溶接欠陥の検出方法では、形状検出器21からの出力データから高さ分布の情報を求め、これを2次元画像の各画素の輝度値の変数として表すことで、高さ分布の情報を輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する。この高さ情報画像を用いて画像処理することで、高さ情報画像から狭隘部の検出と、狭隘部の特徴量の抽出とが簡単に行える。また、画像処理内容のカスタマイズ、一般的な画像処理ツールの使用等によって、より簡単かつ高精度な処理が行える。さらに、形状検出器21が出力する大量の出力データが高さ情報画像データとして集約されるため、保存するデータの容量が少なくて済む。そして、特徴量等の演算負担が軽減され、特別に高性能な演算能力を要することもなく、装置コストを低減できる。
【0047】
また、欠陥サイズの予測に機械学習された予測モデル53を用いることで、高い精度で高速に欠陥サイズを予測できる。なお、造形制御装置11の出力部39のモニタに、求めた高さ情報画像、検出した狭隘部、予測した溶接欠陥の各種情報を表示させることで、作業者に造形の状況を可視化して通知でき、利便性を高められる。これらのことから、溶接欠陥の検出の自動化がしやすくなる。
【0048】
そして、この溶接欠陥の検出方法により検出された溶接欠陥の情報に基づいて、積層造形物を造形する造形計画を、溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、変更後の造形計画に基づいて積層造形物を造形することにより、溶接欠陥の発生を抑制した高品位な積層造形物が安定して得られる。
【0049】
<画像処理の例>
ここで、実際に高さ情報を輝度情報に変換した高さ情報画像を生成し、溶接欠陥位置を特定するまでの工程を説明する。
図7は、形状検出器21によりビードBの形状を測定する様子を示した概略図である。ここでの測定対象は、ベース25上で一方向(X方向)に沿って形成され、一方向に直交する方向(Y方向)に互いに隣接して形成した一対のビードBを、一方向に沿った2箇所に互いに隣接させて形成した、合計4本のビードBである。各ビードBに対するベース25の表面から盛り上がる高さ情報を形状検出器21により検出する。
【0050】
図8は、
図7に示す各ビードBの高さ情報を輝度情報に変換した高さ情報画像データの画像である。
図8に示す画像の輝度の高低は、各ビードBのベース25からの高さの高低に対応しており、輝度が高いほどベース25からの高さがあることを示している。
図9A、
図9Bは、
図8に示す高さ情報画像から、輝度変化等に応じてビード形状の輪郭を抽出するとともに、狭隘部を抽出した画像処理結果を示す説明図である。
図9A、
図9Bの各説明図では、抽出結果の位置を確認できるように、ビードの輪郭を破線で示している。この画像処理結果においては、
図9Aに示すように、ビードの輪郭に沿って多数の狭隘部(破線以外の黒点部)が検出されている。これら多数の狭隘部を、前述した
図4のS24~S27のステップにおける狭隘部の特徴量から欠陥サイズを予測して、予測した欠陥サイズが許容値以下の狭隘部を削除する。
図9Bは、このような選別処理を実施した後の狭隘部を示す概略図である。
図9Bに示すように、最終的に抽出された狭隘部は、4本のビードが交差して形成される谷部の位置であり、各ビードBの表面のうち最も急峻な斜面を有する谷部が検出されている。
【0051】
狭隘部の検出は、検出された高さ情報を軌道情報に変換した高さ情報画像を用い、この高さ情報画像を画像処理することで正確に行える。狭隘部の検出アルゴリズムは、画像処理の内容を状況に応じて適宜に入れ替え、又は修正することで簡単に変更でき、検出アルゴリズムの最適化が図りやすい。また、狭隘部の特徴量の抽出処理についても同様に、抽出アルゴリズムの最適化が図りやすくなる。
【0052】
さらに、積層造形を行う場合には、
図1に示すように形状検出器21は、トーチ23の先端からずれた位置でトーチ23と一体に移動しながらビード高さ等を検出するため、トーチ23を移動させる軌道が湾曲している場合、トーチ23を傾斜させる場合等では、形状検出器21による高さの検出方向も変化する。その結果、ビード間の狭隘部の形状が、実際よりも谷部の傾斜が緩やかに検出されて、狭隘部の特徴量が不正確になることがある。
【0053】
図10は、トーチ23と形状検出器21の構成図である。
図11は、トーチ23と形状検出器21とが一体となって移動した際の形状検出器21による形状検出結果を示す説明図である。
図10に示すように、トーチ23によるビード形成位置と、形状検出器21による形状検出位置とは一致しておらず、所定の距離Lのずれがある。そのため、
図11に示すように、例えば湾曲して並列する2つのパスPS1,PS2に沿ってビードを形成する場合に、不都合を生じることがある。つまり、パスPS1のビードを形成した後、そのビードに沿わせてパスPS2のビードを形成する際、形状検出器21は、トーチ位置P1ではトーチ位置P1から距離Lだけ後方のラインL
p1上のビード形状を検出し、トーチ位置P2ではラインL
p2上のビード形状を検出し、トーチ位置P3では、ラインL
p3上のビード形状を検出する。ラインL
p1はパスPS1,PS2の移動方向と略直交しており、ラインL
p1で検出されるビード形状は実際のビード断面に近い形状となる。しかし、ラインL
p2,L
p3では、パスPS1,PS2の移動方向の直交方向からずれることで、実際のビード形状よりも谷部の傾斜が緩やかになる。このようなトーチ位置P2,P3においては、ラインL
p2,L
p3の方向に応じて補正すればよいが、その補正のための制御が複雑となり、リアルタイムでの形状検出は難しい。
【0054】
しかし、本実施形態による溶接欠陥の検出方法では、形状検出器21からの出力データを高さ情報画像に変換することで、パスを移動しながらビード形成するとともに形状検出する場合でも、形状検出器21により検出された情報が逐次に高さ情報に変換される。このため、複数のパスで検出された高さ情報を簡単に合成でき、その結果、2次元の高さ情報のマップである高さ情報画像を容易に形成できる。高さ情報画像が生成されることで、検出された高さ情報をジオメトリ変換することも可能となり、形状を容易に把握できるようになる。したがって、前述したラインLp1,Lp2,Lp3等のライン上の形状プロファイルに限らず、任意の方向の形状プロファイルを簡単に生成でき、これにより、正確な形状の把握が可能となる。
【0055】
以上の本実施形態による溶接欠陥の検出方法を、トーチ23を保持したマニピュレータ13を用いてベース25上にビードBを形成する積層造形に適用した例に説明したが、適用対象は積層造形に限らない。例えば、隅肉溶接、突き合わせ溶接、開先内多層盛り等の一般的な溶接にも適用でき、さらに、形状検出又は高さ検出を行った後に、所定の処理を実施するような場合にも同様に適用が可能である。
【0056】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0057】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。
【0058】
(2) 高さ検出工程は、前記高さ情報画像を画像処理して前記形状特徴部を検出する、(1)に記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、形状特徴部を画像処理により検出するため、画像処理内容のカスタマイズ、一般的な画像処理ツールの使用等によって、簡単かつ高い精度で検出が可能となり、これにより、溶接欠陥の検出を正確、かつ高速に行える。
【0059】
(3) 前記形状特徴部は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部である、(1)又は(2)に記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、溶接欠陥の生じやすい狭隘部を検出することで、溶接欠陥の発生位置を正確に特定できる。
【0060】
(4) 前記高さ分布の検出は、前記ビードに向けて光を照射したときのビード表面からの反射光を検出する、光切断方式、位相差検出方式、三角測距方式、TOF方式のうち、いずれかの方式によるものである、(1)~(3)のいずれか1つに記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、高さ分布を光学式の形状検出方式を用いることで、非接触で高速な形状検出が行える。
【0061】
(5) 前記形状特徴部を含む位置に前記ビードを形成した場合に生じる前記溶接欠陥の欠陥サイズを予測する予測工程を更に備え、
前記判定工程は、予測した前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に当該形状特徴部を前記溶接欠陥と判定する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、予測した欠陥サイズに応じて溶接欠陥を判定するため、特に問題とならない形状特徴部が溶接欠陥の候補から除外され、欠陥検出の正確性が高められる。
【0062】
(6) 前記予測工程は、前記形状特徴部の特徴量と、前記ビードを形成する溶接条件と、前記特徴量及び前記溶接条件に対応する欠陥サイズとの関係を予め学習した予測モデルに基づいて、前記欠陥サイズを予測する、(5)に記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、予測モデルに基づいて欠陥サイズを予測するため、高精度で高速な予測が可能となる。
【0063】
(7) 前記形状特徴部の特徴量は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部の形状を表す形状パラメータ、及び前記狭隘部の位置と次に形成する前記ビードの狙い位置との距離の少なくともいずれかを含む、(6)に記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、狭隘部の形状パラメータ、溶接欠陥が生じやすい狭隘部とビードの狙い位置との距離という、各条件に応じた欠陥サイズが予測されるため、予測精度及び信頼性の向上が期待できる。
【0064】
(8) 前記溶接条件は、溶接速度、溶接電流、溶接電圧、溶加材供給速度のうち少なくともいずれかを含む、(6)又は(7)に記載の欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、各溶接条件に対応した欠陥サイズが予測できる。
【0065】
(9) (1)~(8)のいずれか1項に記載の欠陥検出方法により検出された前記溶接欠陥の情報に基づいて、前記積層造形物を造形する造形計画を、前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する、
積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、予測された溶接欠陥が生じないように積層造形物を造形するため、溶接欠陥の発生を抑制した高品位な積層造形物が安定して得られる。
【0066】
(10) 溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する欠陥判定部と、
工程と、
を備える欠陥検出装置。
この欠陥検出装置によれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。
【0067】
(11) 検出された前記形状特徴部の形状と位置との少なくともいずれかに関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記ビードを形成する溶接条件と前記特徴量と、当該溶接条件及び当該特徴量に対応する前記溶接欠陥の欠陥サイズとの関係を学習した予測モデルと、
前記検出された前記形状特徴部の前記特徴量及び前記形状特徴部を形成する前記ビードの溶接条件の情報から、前記予測モデルに基づいて前記欠陥サイズを予測する欠陥サイズ予測部と、
を備え、
前記欠陥判定部は、予測された前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に前記形状特徴部を溶接欠陥と判定する、(10)に記載の欠陥検出装置。
この欠陥検出装置によれば、
【0068】
(12) (11)に記載の欠陥検出装置と、
前記積層造形物を造形する造形計画を、前記欠陥検出装置により検出された前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更する造形制御装置と、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する造形装置と、
を備える積層造形システム。
この積層造形システムによれば、予測された溶接欠陥が生じないように積層造形物を造形するため、溶接欠陥の発生を抑制した高品位な積層造形物が安定して得られる。
【0069】
(13) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥であるかを判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
このプログラムによれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。
【符号の説明】
【0070】
11 造形制御装置
13 マニピュレータ
15 溶加材供給装置
15a リール
17 マニピュレータ制御装置
19 熱源制御装置
21 形状検出器
23 トーチ
25 ベース
31 入力部
33 記憶部
33a データベース
35 造形プログラム作成部
37 造形計画変更部
39 出力部
41 欠陥検出装置
43 形状特定部
45 高さ情報画像生成部
47 特徴部検出部
49 特徴量抽出部
51 欠陥サイズ予測部
53 予測モデル
100 積層造形システム
M 溶加材
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
【請求項2】
高さ検出工程は、前記高さ情報画像を画像処理して前記形状特徴部を検出する、
請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記形状特徴部は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部である、
請求項1又は2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記高さ分布の検出は、前記ビードに向けて光を照射したときのビード表面からの反射光を検出する、光切断方式、位相差検出方式、三角測距方式、TOF方式のうち、いずれかの方式によるものである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記形状特徴部を含む位置に前記ビードを形成した場合に生じる前記溶接欠陥の欠陥サイズを予測する予測工程を更に備え、
前記判定工程は、予測した前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に当該形状特徴部を前記溶接欠陥と判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
前記予測工程は、前記形状特徴部の特徴量と、前記ビードを形成する溶接条件と、前記特徴量及び前記溶接条件に対応する欠陥サイズとの関係を予め学習した予測モデルに基づいて、前記欠陥サイズを予測する、
請求項5に記載の欠陥検出方法。
【請求項7】
前記形状特徴部の特徴量は、周囲のビード高さよりも低い谷部が形成された狭隘部の形状を表す形状パラメータ、及び前記狭隘部の位置と次に形成する前記ビードの狙い位置との距離の少なくともいずれかを含む、
請求項6に記載の欠陥検出方法。
【請求項8】
前記溶接条件は、溶接速度、溶接電流、溶接電圧、溶加材供給速度のうち少なくともいずれかを含む、
請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の欠陥検出方法により検出された前記溶接欠陥の情報に基づいて、前記積層造形物を造形する造形計画を、前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する、
積層造形物の製造方法。
【請求項10】
溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する欠陥判定部と、
工程と、
を備える欠陥検出装置。
【請求項11】
検出された前記形状特徴部の形状と位置との少なくともいずれかに関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記ビードを形成する溶接条件と前記特徴量と、当該溶接条件及び当該特徴量に対応する前記溶接欠陥の欠陥サイズとの関係を学習した予測モデルと、
前記検出された前記形状特徴部の前記特徴量及び前記形状特徴部を形成する前記ビードの溶接条件の情報から、前記予測モデルに基づいて前記欠陥サイズを予測する欠陥サイズ予測部と、
を備え、
前記欠陥判定部は、予測された前記欠陥サイズと予め定めた許容値とを比較して、前記欠陥サイズが前記許容値を超える場合に前記形状特徴部を溶接欠陥と判定する、
請求項10に記載の欠陥検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の欠陥検出装置と、
前記積層造形物を造形する造形計画を、前記欠陥検出装置により検出された前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更する造形制御装置と、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する造形装置と、
を備える積層造形システム。
【請求項13】
溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
(2) (1)に記載の欠陥検出方法により検出された前記溶接欠陥の情報に基づいて、前記積層造形物を造形する造形計画を、前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更し、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する、
積層造形物の製造方法。
(3) 溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する欠陥判定部と、
を備える欠陥検出装置。
(4) (3)に記載の欠陥検出装置と、
前記積層造形物を造形する造形計画を、前記欠陥検出装置により検出された前記溶接欠陥の発生を抑制させるように変更する造形制御装置と、
変更後の前記造形計画に基づいて前記積層造形物を造形する造形装置と、
を備える積層造形システム。
(5) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
高さ情報画像生成部45は、生成した高さ情報画像を特徴部検出部47に出力する。特徴部検出部47は、入力された高さ情報画像を画像処理することで、特定の形状特徴を有する特徴部を検出する(S23)。この特徴部として、ビードB同士の間に谷部として形成される狭隘部を用いているが、これに限らず、溶接欠陥が生じ得る形状であれば、他の形状の部位でもよい。ここでは、狭隘部を高さ情報画像の輝度値の高低に応じて検出する。狭隘部を検出する画像処理としては、一般的な輪郭線抽出、二値化、マスク処理等の種々の処理が利用可能であり、短時間で正確な検出が可能である。このように、高さを輝度の情報として扱い、高さ分布の情報を輝度分布で表した高さ情報画像に変換することで、狭隘部等を、一般的な画像処理技術を用いて容易に検出できる。また、検出アルゴリズムの変更も容易に行えるため、検出対象に応じた最適な検出を実現しやすい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出工程と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成工程と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出工程と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定工程と、
を備える欠陥検出方法。
この欠陥検出方法によれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
(10) 溶加材を溶融及び凝固させたビードを積層して造形する積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記積層造形物の表面形状の高さ分布を検出する形状測定部と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成部と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出部と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する欠陥判定部と、
工程と、
を備える欠陥検出装置。
この欠陥検出装置によれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
(13) 溶加材を溶融及び凝固させて形成するビードを積層して積層造形物を造形する際に、前記積層造形物に生じる溶接欠陥を検出する欠陥検出方法の手順をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
造形途中の前記積層造形物における表面形状の高さ分布を検出する高さ検出手順と、
検出した前記高さ分布の情報を2次元画像の各画素の輝度値の変数として表し、前記高さ分布の情報を前記輝度値の分布の情報に変換した高さ情報画像を生成する画像生成手順と、
前記高さ情報画像の前記輝度値の高低に応じて特定の形状特徴を有する形状特徴部を検出する特徴部検出手順と、
検出された前記形状特徴部が前記溶接欠陥となる可能性を判定する判定手順と、
を実行させるプログラム。
このプログラムによれば、積層造形物の表面形状の高さ分布を輝度値の分布に変換した高さ情報画像を用いることで、形状特徴部の検出を容易に、かつ保存を要するデータ量を軽減しつつ行える。これにより、溶接欠陥の検出を速いタクトタイムで実現できる。