IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シルックス株式会社の特許一覧

特開2023-121677チューブステントデリバリーシステム
<>
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図1
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図2
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図3
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図4
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図5
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図6
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図7
  • 特開-チューブステントデリバリーシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121677
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】チューブステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20230824BHJP
【FI】
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025152
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】502394058
【氏名又は名称】シルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆年
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA45
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB31
4C267BB38
4C267BB40
4C267CC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】チューブステントの突破性と柔軟性を兼ね備えたハイブリッド型のチューブステントデリバリーシステムを提供する。
【解決手段】チューブステントデリバリーシステム1は、チューブステント10と、アウターカテーテル50と、インナーカテーテル60と、を備える。チューブステント10は、ステント管壁部と、ステント挿通部と、チューブステント10の側面に突出形成されるフラップ部と、第1ステント部20と、第2ステント部30と、を備える。第1ステント部20は、チューブステント10の先端側に配置され、第2ステント部30は、チューブステント10の後端側に配置されている。そして、第2ステント部30の第2肉厚が、第1ステント部20の第1肉厚に比較して薄く形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブステントと、アウターカテーテルと、インナーカテーテルと、を備えるチューブステントデリバリーシステムであって、
前記チューブステント、前記アウターカテーテルおよび前記インナーカテーテルは、それぞれ環状形状をなす管壁部と前記管壁部に取り囲まれ貫通する空洞の挿通部とを備え、
前記チューブステントは、結合する第1ステント部と第2ステント部とを有し、
前記第1ステント部は、前記チューブステントの先端側に配置され、
前記第2ステント部は、前記チューブステントの後端側に配置され、
前記第2ステント部の外径と内径の差であるステント管壁部の肉厚が前記第1ステント部の肉厚に比較して薄いことを特徴とする、
チューブステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記チューブステントは、側方に突出形成されるフラップ部をさらに備え、
前記第1ステント部には第1フラップ部が配置され、
前記第2ステント部には第2フラップ部が配置されることを特徴とする、
請求項1に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記第1フラップ部は、前記ステント管壁部を切り起こして形成され、
前記第2フラップ部は、前記ステント管壁部の先端側を斜めに切断して形成されることを特徴とする、
請求項2に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記第2フラップ部の長さは、前記第1フラップ部の長さに比較して長く形成されていることを特徴とする、
請求項2または請求項3に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記チューブステントの先端側は、先端に向かって外径が小さくなるテーパー部が形成されていることを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項6】
前記第1ステント部と前記第2ステント部は、色が異なることを特徴とする、
請求項1~5の何れか1項に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項7】
前記チューブステントおよび前記アウターカテーテルの接続部分には、それぞれ嵌合部が設けられ、
前記嵌合部同士は嵌合可能であり、
前記チューブステントおよび前記アウターカテーテルのそれぞれの前記挿通部に前記インナーカテーテルを挿通することにより当該嵌合が維持され、
前記挿通部から前記インナーカテーテルを引き抜くことで前記嵌合が分離することを特徴とする、
請求項1~6の何れか1項に記載のチューブステントデリバリーシステム。
【請求項8】
前記チューブステントおよび前記アウターカテーテルのそれぞれの前記挿通部に前記インナーカテーテルを挿通した際に、前記インナーカテーテルの先端部が、前記第2ステント部の先端側端部の挿通部内にあることを特徴する、
請求項7に記載のチューブステントデリバリーシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆管や膵管ドレナージ等に用いるチューブステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブステントとアウターカテーテルとインナーカテーテルとを備えるチューブステントデリバリーシステムが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、こぶ状体が設けられた糸状体が、プッシャーカテーテル(アウターカテーテル)又はチューブステントの径方向に設けられた孔を通して結ばれることによって端部に取り付けられ、インナーカテーテルがこぶ状体と係止用孔との遊嵌状体を維持するステントデリバリーシステムであり、単純な構造で、チューブステントとプッシャーカテーテルとの連結状態が不用意に解除されにくく、連結状態を解除したいときに解除し易いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-239803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているチューブステントデリバリーシステムは、ガイドワイヤにインナーカテーテルを被せてチューブステントを体内の目的部位(狭窄部)に留置させることができるものである。そして、使用されるチューブステントは、外径と内径が一定で屈曲性がどの位置においても同になっている。そこで、ドレナージ性能を良好にするために、外径と内径の差である肉厚を薄くすれば良いと考えられる。
【0006】
しかしながら、チューブステントの肉厚を薄くすると、チューブステントの強度が低下するため、狭窄部を突破する性能が低下し、さらにキンクに対する性能も低下するという問題点があった。一方、外径の大きさを変えずにチューブステントの肉厚を厚くすると、チューブステントの内径を小さくせざるを得ないため、チューブステント内にインナーカテーテルを挿入することができなくなってしまうという問題点や、チューブステントの内径に合わせてインナーカテーテルの外径を小さくすると、インナーカテーテルの強度が低下し、実用に耐えないという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑み、チューブステントの突破性と柔軟性を兼ね備えたハイブリッド型のチューブステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究開発を続けた結果、以下のような画期的なチューブステントデリバリーシステムを見出した。
【0009】
本発明の第1の態様は、チューブステントと、アウターカテーテルと、インナーカテーテルと、を備えるチューブステントデリバリーシステムであって、チューブステント、アウターカテーテルおよびインナーカテーテルは、それぞれ環状形状をなす管壁部と管壁部に取り囲まれ貫通する空洞の挿通部とを備え、チューブステントは、結合する第1ステント部と第2ステント部とを有し、第1ステント部は、チューブステントの先端側に配置され、第2ステント部は、チューブステントの後端側に配置され、第2ステント部の外径と内径の差であるステント管壁部の肉厚が第1ステント部の肉厚に比較して薄いことを特徴とする、チューブステントデリバリーシステムにある。
【0010】
かかる第1の態様によれば、厚みの異なるステント部を設け、肉厚のある第1ステント部を先端側に、肉厚の薄い第2ステント部を後端側に配置することで、目的部位(例えば狭窄部等)の突破性能が良好となり、インナーカテーテルをアウターカテーテルからチューブステントに挿入し易くし、且つ、チューブステントの体内移動中の先端側における安定性と後端側における柔軟性と屈曲性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、チューブステントは、側方に突出形成されるフラップ部をさらに備え、第1ステント部には第1フラップ部が配置され、第2ステント部には第2フラップ部が配置されることを特徴とする、第1の態様に記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0012】
かかる第2の態様によれば、第1フラップ部は従来と同様にチューブステントを支持し、かつ第2フラップ部は従来のフラップよりもしっかりと支持することができるので、従来のチューブステントと比較して、目的部位にチューブステントをしっかりと固定することができる。その結果、例えば、次に挿入される2本目のチューブステント(第2チューブステント)を挿入する際に、最初に挿入したチューブステント(第1チューブステント)がしっかり固定されているので、第2チューブステントを目的部位に容易に留置させることができる。よって、患者への負担を軽減することができることになる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1フラップ部は、ステント管壁部を切り起こして形成され、第2フラップ部は、ステント管壁部の先端側を斜めに切断して形成されることを特徴とする、第2の態様に記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0014】
かかる第3の態様によれば、切り起こして形成される部分が一箇所になり、フラップ部における変形が少なくて済み、チューブステントの体内移動中の操作性および目的部位の静置安定性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第2フラップ部の長さは、第1フラップ部の長さに比較して長く形成されていることを特徴とする、第2または第3の態様に記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0016】
かかる第4の態様によれば、第2フラップ部の体内管表面などの支持幅が広くなりチューブステントの留置安定性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、チューブステントの先端側は、先端に向かって外径が小さくなるテーパー部が形成されていることを特徴とする、第1~第4の態様の何れか1つに記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0018】
かかる第5の態様によれば、インナーカテーテルがチューブステント10の先端から突出することがなくなるので、チューブステントデリバリーシステムの先端部の段差が1つになる。その結果、目的部位のチューブステントの突破が、よりスムーズになる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第1ステント部と第2ステント部は、色が異なることを特徴とする、第1~第5の態様の何れか1つに記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0020】
かかる第6の態様によれば、第1ステント部20と第2ステント部30とを容易に識別することができるので、組立の管理性の向上やチューブステントの的確な配置を行うことができると共に、例えばチューブステントを体内から取り出す際に、鉗子等で把持すべきチューブステントの位置を容易に把握することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、チューブステントおよびアウターカテーテルの接続部分には、それぞれ嵌合部が設けられ、嵌合部同士は嵌合可能であり、チューブステントおよびアウターカテーテルのそれぞれの挿通部にインナーカテーテルを挿通することにより当該嵌合が維持され、挿通部からインナーカテーテルを引き抜くことで嵌合が分離することを特徴とする、第1~第6の態様の何れか1つに記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0022】
かかる第7の態様によれば、体内移動中におけるチューブステントとアウターカテーテルとの接続が確実に保たれ、目的部位において、チューブステントをアウターカテーテルから容易に分離させることができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、チューブステントおよびアウターカテーテルのそれぞれの挿通部にインナーカテーテルを挿通した際に、インナーカテーテルの先端部が、第2ステント部の先端側端部の挿通部内にあることを特徴する、第7の態様に記載のチューブステントデリバリーシステムにある。
【0024】
かかる第8の態様によれば、チューブステントの先端部側の強度が低下する可能性があるが、厚みの異なるステント部を設け、肉厚のある第1ステント部を先端側に、肉厚の薄い第2ステント部を後端側に配置することで、目的部位(例えば狭窄部等)の突破性能が良好となり、インナーカテーテルをアウターカテーテルからチューブステントに挿入し易くし、且つ、チューブステントの体内移動中の先端側における安定性と後端側における柔軟性と屈曲性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は実施形態1に係るチューブステントデリバリーシステムを示す概略側面図である。
図2図2図1のチューブステントを示し、(a)概略側面図、(b)(a)のA-A概略断面図、(c)(a)のB-B概略断面図である。
図3図3図2のチューブステントの第1ステント部と第2ステント部との一体化結合の一例を示す説明図である。
図4図4実施形態1に係るチューブステントデリバリーシステムとガイドワイヤとの関係の一例を示す概略側面図である。
図5図5図1のアウターカテーテルを示し、(a)概略側面図、(b)(a)のA-A概略断面図である。
図6図6は実施形態1に係るチューブステントとアウターカテーテルの接続の一例を説明する説明図である。
図7図7図1のインナーカテーテルを示し、(a)側面図、(b)(a)のA-A概略断面図である。
図8】実施形態1のチューブステントデリバリーシステムを体内の目的部位に送り込んだ一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るチューブステントデリバリーシステムの実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0027】
図1は、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステムを示す概略側面図である。図1に基づいて、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステムの概要について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステム1は、チューブステント10と、チューブステント10の接続されるアウターカテーテル50と、チューブステント10およびアウターカテーテル50の内部に挿入されるインナーカテーテル60と、アウターカテーテル50の後端部に接続されてアウターカテーテル50を支持してインナーカテーテル60の操作等を行える操作部70とを有している。また、操作部70を利用してガイドワイヤや内視鏡等(図示しない)も操作することができる。なお、インナーカテーテル60は、破線で示している。
【0029】
以下、構成を分かり易くするために、操作部70側を後端側、その反対側を先端側と定義して説明する。チューブステント10、アウターカテーテル50、インナーカテーテル60の各構成においても同様である。
【0030】
図2は、図1のチューブステントを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図、(c)は(a)のB-B概略断面図である。図3は、図2のチューブステントの第1ステント部と第2ステント部との一体化結合の一例を示す説明図である。図2および図3に基づいてチューブステント10を詳述する。
【0031】
図2に示すように、チューブステント10は、体内の目的部位(例えば狭窄部、等)に留置させるもので、環状形状をなすステント管壁部11と、ステント管壁部11に取り囲まれチューブステント10を貫通する空洞のステント挿通部12と、チューブステント10の側面に突出形成されるフラップ部13とを有している。ステント挿通部12には、後述するガイドワイヤ80が挿通され、さらにインナーカテーテル60が挿入される。
【0032】
本実施形態のチューブステント10は、第1ステント部20と第2ステント部30とを有している。第1ステント部20は、チューブステント10の先端側に配置され、第2ステント部30は、チューブステント10の後端側に配置されている。本実施形態では、第1ステント部20と第2ステント部30とが別体で構成されているものとして説明するが、第1ステント部20と第2ステント部30とが一体成形されていてもよいのは言うまでもない。なお、チューブステント10の一体成型は、一般的な方法により行うことができる。
【0033】
以下、「第1」、「第2」等を用いて説明するが位置関係を限定する用語ではなく、説明を分かり易くするための表現であり、例えば第1ステント部を第2ステント部、第2ステント部を第1ステント部として説明しても良い。
【0034】
チューブステント10は、外径D、内径dおよび肉厚t(D-d=t)を有する。第1ステント部20においては、図2(b)に示すように、第1外径D1、第1内径d1、第1肉厚t1とする。また、第2ステント部30においては、図2(c)に示すように、第2外径D2、第2内径d2、第2肉厚t2とする。
【0035】
本実施形態のチューブステント10では、第2肉厚t2が第1肉厚t1に比較して薄く形成されている(t2<t1)。したがって、第1外径D1と第2外径D2とがほぼ同じであれば、第2内径d2は、第1内径d1に比較して大きく形成されることになる(d2>d1)。
【0036】
したがって、第1ステント部20が肉厚であることから、第1ステント部20の先端における狭窄部等の突破性能を良好にすることができる。また、第2ステント部30の内径d2が大きく形成されているので、第2ステント部30のステント挿通部12を挿通するインナーカテーテル60を容易に挿通させることができると共に、第2ステント部30の肉厚t2が第1ステント部20の肉厚t1よりも薄いので、第2ステント部30は第1ステント部20よりも屈曲し易くなり、体内部位の移動中の屈曲性も良好となる。
【0037】
一般的に、チューブステント内にインナーカテーテルを容易に挿通させるためにチューブステントは肉薄の方が良い。しかしながら、目的部位(例えば狭窄部等)を通過させるためには、ある程度の強度を必要とする。本実施形態のチューブステント10は、先端側は所定の肉厚を有することで目的部位の突破性能を良好とし、後端側を先端側よりも肉薄とすることでアウターカテーテル50から挿入してくるインナーカテーテル60を容易にチューブステント10内へ挿入可能としているハイブリッド型である。
【0038】
第1ステント部20の先端側には、先端に向かって外径が小さくなるテーパー部14が形成されている。第1ステント部20の先端側の第3外径D3は、第1外径D1に比較して小さい(D3<D1)。なお、第3外径D3の大きさは、ガイドワイヤ80が貫通する内径を維持しインナーカテーテル60が通過できない内径の寸法となっている。ここで、テーパー部14の先端側の外径は、ガイドワイヤの外径と、ほぼ同様になるのが好ましい。このようなテーパー部14を形成することにより、ガイドワイヤ(図示しない)とチューブステント10の先端部との段差が小さくなるので、狭窄部等の挿通に抵抗が少なくなる。その結果、チューブステントデリバリーシステム1の狭窄部等の突破性を向上させることができる。
【0039】
また、従来のチューブステントデリバリーシステムは、特許文献1の図4(b)および図4(c)に開示されているように、先端側でガイドワイヤ、インナーカテーテル、チューブステントとの順で段差が2つ(ガイドワイヤとインナーカテーテルとの段差およびインナーカテーテルとチューブステントとの段差)があるが、本実施形態においては、チューブステント10の先端からインナーカテーテル60が突出しないので段差が1つ(ガイドワイヤ80とチューブステント10との段差)になり、狭窄部等の挿通に抵抗が少なくなり突破性がより良好となる(図4参照)。
【0040】
また、第1ステント部20と第2ステント部30とは、それぞれフラップ部13を有している。第1ステント部20の第1フラップ部13aは、第1ステント部20のステント管壁部11の一部を切り起こして形成されている。一方、第2ステント部30の第2フラップ部13bは、筒状部材の先端側を斜めに切断して形成されている。
【0041】
これにより、チューブステント10を目的部位に、安定して静置せることができる。すなわち、第2フラップ部13bを第1フラップ部13aのように切り起こして形成すると、ステント管壁部11の一部(2箇所)が欠如し、2箇所の欠如部分によってチューブステント10の強度が低下して支障を来す可能性がある。一方、本実施形態のように第2フラップ部を形成することによって、当該欠如部分が1箇所で済むので、チューブステント10の体内移動中の操作性および目的部位の静置安定性が向上することになる。
【0042】
また、第1フラップ部13aと第2フラップ部13bとを第1ステント部20および第2ステント部30に形成することにより、各フラップ部13a、13bの長さを容易に変えることができる。本実施形態では、第2フラップ部13bは、第1フラップ部13aに比較して長く形成されている。第2フラップ部13bを長くすることにより、迷入(例えば乳頭内への迷入等)を防ぐことができるので、チューブステント10の体内留置がより安定化する。
【0043】
ここで、第1ステント部20と第2ステント部30との一体化結合は、図3に示すように、例えば、第1ステント部20の後端側を第2ステント部30の先端側に圧入することで実現できるが、結合方法は特に限定されず、接着、溶着等の一般的な結合方法を用いてもよい。なお、チューブステント10とアウターカテーテル50との接続については後述する。
【0044】
第1ステント部20と第2ステント部30の少なくとも表面の色は異なっていてもよい。例えば、第1ステント部20の表面が黄色であり、第2ステント部30の表面が青色等である。少なくとも第1ステント部20と第2ステント部30との表面を異なる色で形成することにより、第1ステント部20および第2ステント部30を容易に識別することができるので、組立の管理性の向上やチューブステント10の的確な配置を行うことができると共に、例えばチューブステント10を体内から取り出す際に、鉗子等で把持すべきチューブステント10の位置を容易に把握することができる。
【0045】
次に、アウターカテーテル50を説明する。図5は、図1のアウターカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
【0046】
アウターカテーテル50は、環状形状をなすアウターカテーテル管壁部51と、アウターカテーテル管壁部51に取り囲まれ、アウターカテーテル50を貫通する空洞のアウターカテーテル挿通部52とを有している。アウターカテーテル50の後端側は、操作部70に結合されている。アウターカテーテル挿通部52には、インナーカテーテル60およびガイドワイヤ80が挿通される。
【0047】
さらに、図6に基づいて、チューブステント10とアウターカテーテル50との接続について説明する。チューブステント10の後端側にはステント嵌合部15が形成され、アウターカテーテル50の先端側にはカテーテル嵌合部54が形成されている。ステント嵌合部15は、先端から少し離間した位置に半円形状を呈するステント切欠部15aが設けられ、カテーテル嵌合部54も同様に、先端から少し離間した位置に半円形状を呈するカテーテル切欠部54aが設けられている。
【0048】
チューブステント10とアウターカテーテル50との接続は、嵌合部15、54同士を嵌合し、チューブステント10およびアウターカテーテル50のそれぞれの挿通部12、54にインナーカテーテル60を挿入することで嵌合が維持され、インナーカテーテル60を引き抜くことで、体内で嵌合部15、54同士の嵌合が容易に分離して、チューブステント10を目的部位に留置させることができる。なお、本構成の詳細は、特許第6514814号公報に記載されている。
【0049】
さらに、インナーカテーテル60について説明する。図7は、図1のインナーカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
【0050】
インナーカテーテル60は、環状形状をなすインナーカテーテル管壁部61と、インナーカテーテル管壁部61に取り囲まれ、インナーカテーテル60を貫通する空洞のインナーカテーテル挿通部62と、後端側端部に操作部70と連結する把手71とを有している。例えば、操作部70を片方の手で保持し、他の手で把手71を押すことでインナーカテーテル60をアウターカテーテル50およびチューブステント10の挿通部12、52内に挿通させることができ、把手71を引くことで当該挿通部12、52からインナーカテーテル60を引き抜くことができる。また、インナーカテーテル60の先端部は、先端に向かって外径が小さくなるテーパー部が形成されている。なお、インナーカテーテル挿通部62には、ガイドワイヤ80が挿通される。
【0051】
チューブステント10、アウターカテーテル50およびインナーカテーテル60は、可撓性の樹脂材料(例えばポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド等)から成形されるが、材料は特に限定されない。チューブステント10としては、例えば、ストレートタイプ、インサイドタイプ、ダブルピッグテイルタイプ等を用いることができる。また、インナーカテーテル60としては、例えば、αタイプ、Jタイプ、ピッグテイルタイプ等を用いることができる。
【0052】
本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステム1は、アウターカテーテル50の先端側にチューブステント10を接合させた後、アウターカテーテル50およびチューブステント10にインナーカテーテル60を挿通させる。そして、チューブステントデリバリーシステム1は、その状態で、例えば胆管や膵管ドレナージを行うために、例えば人体の鼻から先端を差し込み、予め目的部位に到達しているガイドワイヤ80に沿って体内を移動させた後、目的部位(例えば狭窄部等)でインナーカテーテル60を引き抜くことで、チューブステント10を留置させるシステムである。具体的には、チューブステントデリバリーシステム1は、体内で所定期間静置し、例えば胆汁などの体液が安定して排出できると判断した状態において、チューブステント10を目的部位で留保させるものである。
【0053】
チューブステント10は、図2に示すように、第1ステント部20の第1肉厚t1よりも肉薄の第2肉厚t2を有する第2ステント部30を備えているので、狭窄部の突破性が良好である。また、チューブステント10は、第2ステント部30の内径d2が第1ステント部20の内径d1より大きいので、後端側でのインナーカテーテル60の挿入および引き抜きを容易に行うことができる。
【0054】
また、狭窄部の先端側で第1フラップ部13aが確実にチューブステント10を支持し、狭窄部の後端側で第2フラップ部13bが従来のフラップ部よりもしっかりとチューブステント10を支持することができるので、従来のチューブステントと比較して、目的部位にチューブステントをしっかりと固定させることができる。その結果、例えば、次に挿入される2本目のチューブステント(第2チューブステント)を挿入する際に、最初に挿入したチューブステント(第1チューブステント)がしっかり固定されているので、第2チューブステントを目的部位に容易に留置させることができる。よって、複数のチューブステントの留置に関し、患者への負担を軽減させることができることになる。
【0055】
さらに、本実施形態のチューブステントデリバリーシステム1の体内における使用状態を説明する。図8は、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステムを体内の目的部位に送り込んだ一例を示す説明図である。
【0056】
チューブステントデリバリーシステム1は、チューブステント10を、内視鏡と併用して体内の目的部位に搬送することができる。まず、予めガイドワイヤ80を内視鏡のチャンネルを通じて例えば胆管内に導入し、ガイドワイヤ80の先端を狭窄部を越える位置まで挿入する。次に、ガイドワイヤ80に、その手元側からインナーカテーテル60を被せ、ガイドワイヤ80をガイドとして、インナーカテーテル60、チューブステント10およびアウターカテーテル50を押し進め、チューブステント10の先端が胆管の狭窄部を越える位置までチューブステント10を挿入する。
【0057】
具体的には、例えばチューブステント10を十二指腸100から胆管101の乳頭部102に挿入し、胆管がんの発生している狭窄部103まで送り込む。チューブステント10の第1ステント部20によって狭窄部103の突破性が良好となり、狭窄部103の挿入および通過を容易に行うことができる。そして、第2ステント部30の第2肉厚t2が肉薄であることによって操作性が向上する。
【0058】
なお、十二指腸100と胆管101は、ほぼ直交しているが、チューブステント10とアウターカテーテル50とが確実に接続しているので、操作中にチューブステント10とアウターカテーテル50とが分離することがなく、スムーズに目的部位までチューブステント10を搬送することができる。
【0059】
そして、目的部位にチューブステント10を配置させ、胆道ドレナージを行うことができることを確認した時点で、チューブステント10およびアウターカテーテル50の嵌合部15、54からインナーカテーテル60を引き抜く。すると、チューブステント10とアウターカテーテル50との分離がスムーズに行われ、チューブステント10は目的部位に留置される。そして、例えば、第1フラップ部13aは目的部位の先端側に配置され、第2フラップ部13bは十二指腸100の管壁にソフトに配置される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステム1を構成することにより、肉厚のある第1ステント部20を先端側に、肉厚の薄い第2ステント部30を後端側に配置することで、目的部位(例えば狭窄部等)の突破性能が良好となり、インナーカテーテル60をアウターカテーテル50からチューブステント10に挿入・引き抜きし易くし、且つ、チューブステント10の体内移動中の先端側における安定性と後端側における柔軟性と屈曲性の向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステム1では、アウターカテーテル50の先端側にチューブステント10を接合させた後、アウターカテーテル50およびチューブステント10にインナーカテーテル60を挿通させた際に、インナーカテーテル60がチューブステント10の先端から突出しないように構成されている。その結果、チューブステントデリバリーシステム1では、先端部の段差は、ガイドワイヤ80からチューブステント10の先端部への段差の1つしか存在しない。一方、従来のチューブステントデリバリーシステムでは、チューブステントの先端部からインナーカテーテルの先端部が突出している。その結果、従来のチューブステントデリバリーシステムでは、先端部の段差は、ガイドワイヤからインナーカテーテルの先端部への段差と、インナーカテーテルからチューブステントの先端部への段差の2つ存在することになる。したがって、本実施形態に係るチューブステントデリバリーシステム1は、従来のチューブステントデリバリーシステムと比較して、スムーズに目的部位までチューブステント10を搬送することができる。
(実施形態2)
【0062】
実施形態1では、インナーカテーテルの先端部が、第1ステント部の挿通部内に配置されるようにチューブステントデリバリーシステムを構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
例えば、インナーカテーテルの先端部が第2ステント部の先端側端部の挿通部内に配置されるようにチューブステントデリバリーシステムを構成してもよい。このようにチューブステントデリバリーシステムを構成することによって、実施形態1に係るチューブステントデリバリーシステムと比較して、チューブステントの先端部側の強度が低下する可能性はあるが、実施形態1に係るチューブステントデリバリーシステムと同様の効果が得られる。
(その他の態様)
【0064】
実施形態1では、第2ステント部の第2フラップ部は、筒状部材の先端側を斜めに切断して形成したが、本発明はこれに限定されない。
【0065】
例えば、第2フラップ部を、第1フラップ部と同様に、第2ステント部30の第1管壁部の一部を切り起こして形成してもよい。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のチューブステントデリバリーシステムは、操作が良好なチューブステントを望む分野に最適である。
【符号の説明】
【0068】
1 チューブステントデリバリーシステム
10 チューブステント
11 ステント管壁部
12 ステント挿通部
13 フラップ部
13a 第1フラップ部
13b 第2フラップ部
14 テーパー部
15 ステント嵌合部
15a ステント切欠部
20 第1ステント部
30 第2ステント部
50 アウターカテーテル
51 アウターカテーテル管壁部
52 アウターカテーテル挿通部
54 カテーテル嵌合部
54a カテーテル切欠部
60 インナーカテーテル
61 インナーカテーテル管壁部
62 インナーカテーテル挿通部
70 操作部
71 把手
80 ガイドワイヤ
100 十二指腸
101 胆管
102 乳頭部
103 狭窄部
D1 第1外径
D2 第2外径
D3 第3外径
d1 第1内径
d2 第2内径
t1 第1肉厚
t2 第2肉厚

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8