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特開2023-121706首装着型ウェアラブル装置及びそれを用いた生体情報計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121706
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】首装着型ウェアラブル装置及びそれを用いた生体情報計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/021 20060101AFI20230824BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20230824BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20230824BHJP
   A61B 5/282 20210101ALI20230824BHJP
【FI】
A61B5/021
A61B5/02 310F
A61B5/02 310V
A61B5/02 C
A61B5/256 200
A61B5/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143562
(22)【出願日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2022024923
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 あや
(72)【発明者】
【氏名】五閑 学
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB04
4C017AC16
4C017AC27
4C017AC28
4C017BC11
4C017FF08
4C127AA02
4C127GG05
4C127GG09
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】高精度の計測ができ、ユーザの手間を軽減しかつ身体の自由度が損なわれない生体情報計測システムを提供する。
【解決手段】生体情報計測システムは、ユーザの首の周囲に装着された際に内側面が首後方の皮膚に密着するネックバンド部201と、ネックバンド部201からユーザの体表面に沿うように鎖骨付近の位置まで垂れ下がる垂れ下がり部210とを一体に設けた首装着型のウェアラブル装置200を備える。ネックバンド部の内側面には、接触式の脈波センサ202と、脈波センサ202の周囲に配置された第2の心電電極とが設けられ、垂れ下がり部210の下部におけるユーザ側の内表面には、ユーザの皮膚に密着する第1の心電電極が設けられている。さらに、生体情報計測システムは、脈波センサ202で計測された脈波信号と第1の心電電極から受信された心電図信号とを受信し、同時刻に取得された脈波信号及び心電図信号に基づいてユーザの生体情報を取得する制御処理部308を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの首の周囲に装着された際に、内側面が首後方の皮膚に密着するネックバンド部と、前記ネックバンド部から前記ユーザの体表面に沿うように鎖骨付近の位置まで垂れ下がる垂れ下がり部とを一体に設けた首装着型のウェアラブル装置を備え、
前記ネックバンド部の前記内側面には、接触式の脈波センサと、当該脈波センサの周囲に配置された第2の心電電極とが設けられ、
前記垂れ下がり部の下部における前記ユーザ側の内表面には、前記ウェアラブル装置の装着時に当該ユーザの皮膚に密着する第1の心電電極が設けられており、
前記脈波センサで計測された脈波信号と前記第1の心電電極から受信された心電図信号とを受信し、同時刻に取得された前記脈波信号及び前記心電図信号に基づいて前記ユーザの生体情報を取得する制御処理部を備える、
ことを特徴とする生体情報計測システム。
【請求項2】
前記制御処理部は、前記第2の心電電極から受信された信号に基づいて、前記第1の心電電極の電気的な測定誤差及び前記脈波センサの光学的な測定誤差の少なくとも一方を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測システム。
【請求項3】
前記制御処理部は、前記心電図信号及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出し、前記脈波伝播時間を用いて前記生体情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測システム。
【請求項4】
前記生体情報は、前記ユーザの血圧情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測システム。
【請求項5】
前記制御処理部は、外部機器から入力された入力血圧情報に基づいて前記血圧情報を補正する、
ことを特徴とする請求項4に記載の生体情報計測システム。
【請求項6】
前記制御処理部は、前記心電図信号及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出し、前記脈波伝播時間と外部機器から入力された入力血圧情報に基づいて前記生体情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生体情報計測システム。
【請求項7】
ユーザの首の周囲に装着された際に、内側面が首後方の皮膚に接触するネックバンド部と、前記ネックバンド部から前記ユーザの体表面に沿うように鎖骨付近まで垂れ下がる垂れ下がり部とを一体に設け、
前記ネックバンド部の前記内側面には、接触式の脈波センサと、当該脈波センサの周囲に配置された第2の心電電極とが設けられ、
前記垂れ下がり部の下部における前記ユーザ側の内表面には、当該ユーザの皮膚に密着する第1の心電電極が設けられている、
首装着型のウェアラブル装置。
【請求項8】
前記第2の心電電極は、前記第1の心電電極の電気的な測定誤差及び前記脈波センサの光学的な測定誤差の少なくとも一方の補正に用いられる、
ことを特徴とする請求項7に記載のウェアラブル装置。
【請求項9】
前記脈波センサで検出された脈波信号と前記心電電極で検出された心電図信号とを受信し、前記脈波信号及び前記心電図信号に基づいて前記ユーザの生体情報を取得する制御処理部を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載のウェアラブル装置。
【請求項10】
前記ネックバンド部は、弾性を有する素材で形成され、
前記垂れ下がり部は、柔軟性を有する素材で形成されており、
前記ネックバンド部と前記垂れ下がり部の端部同士が互いに連結されている、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のウェアラブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首装着型のウェアラブル装置及びその装置を用いた生体情報計測システムに関する。より詳細には、首後方より測定した心電図信号及び首前方より測定した脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出し、血圧を推定する首装着型ウェアラブル装置及びその装置を用いた生体情報計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンターテインメントやヘルスケアなど、様々な用途でウェアラブルデバイスが注目を集めている。現在商品化されているウェアラブルデバイスには、心電図信号、脈波信号、体温などを同時に取得できるものが数多く存在し、体の状態の認識や、病気の早期発見などに役立てられている。しかし一方で、日本人の3人に1人が高血圧といわれている現代において、心電図信号や脈波信号のみならず、ウェアラブルデバイスにより手軽に血圧を測定する必要性が高まっている。この課題に対し、心電図信号、脈波信号を計測し、そこから血圧を推定することのできるウェアラブルデバイスが提案されている(特許文献1)。
【0003】
図11には、特許文献1に記載された従来のウェアラブルデバイスの構成を示す。特許文献1のウェアラブルデバイスは、本体に接続され、ユーザの手首を囲むよう構成されるストラップと、本体に設けられユーザのタッチ入力を受信する表示部と、心電センサとを備える。そして、タッチ入力に基づき心電図信号、指の脈波信号及び手首の脈波信号を用いて生体情報を取得するように構成されている。
【0004】
特許文献2の図2には、従来のネックバンド型の血圧変動推定装置の構成の一例が示されている。特許文献2のネックバンド型の血圧変動推定装置は、心電信号を検出する心電電極と脈波信号を検出する光電脈波センサとセンサ部をネックバンドに装着し、頸部の周囲を囲むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-154152号公報
【特許文献2】国際公開2017/086072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、ウェアラブルデバイスを用いて血圧の推定をする場合、心臓の拍出によって生じる脈波が末梢に伝わるのに要する時間を求めるために、ある程度離れた箇所で、脈波信号と脈波信号を測定するまたは心電図信号と脈波信号を測定する必要がある。そのため、一般的には、測定装置を複数箇所に身に着ける必要性が生じる。ここで、脈波伝播時間の算出を精度よく行うためには、複数箇所での生体情報の測定を同時に行う必要がある。そうすると、互いに分離された別々の装置を用いて測定を行い、無線を介してその測定データを統合するという方法はあまり好ましくない。
【0007】
また、異なる複数のデバイスを用いて測定を行う場合、装置の着脱によってそれぞれの装置の装着位置が測定のたびにずれるおそれがある。そうすると、測定毎の測定位置のずれに起因して、正確な血圧の計測が困難になる場合がある。
【0008】
これに対し、特許文献1のように、装着しているウェアラブルデバイスに対して、測定する際に身体の別の箇所を接触させる方法がある。しかしながら、測定時に身体の自由度が下がってしまうという問題がある。また、測定が行われるのが装置に指を接触させたときのみに限定されているため、常時の測定には不向きであるという問題点がある。
【0009】
さらに、腕や指は心臓から比較的離れた位置にある上に、身体活動を行う際によく動かす部分である。そのため、心電図信号を拾いづらく、またデータにノイズが入りやすいといった問題点が生じる。
【0010】
また、特許文献2のように、首後方に配置した脈波センサとほぼ同じ位置のセンサ部に加速度センサを配置して、加速度センサにより姿勢変化を検出して姿勢の変化による測定位置のずれに起因する計測への影響を補正する方法もある。しかしながら、光学的に脈波を計測する場合は、外乱ノイズとして姿勢の変化以外に脈波センサと測定面との密着性が変化した場合の光学的な外乱光によるノイズの発生も測定精度に大きな影響を及ぼす。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、心電図信号と脈波信号の測定データを同時にかつ高精度に取得でき、かつ、その測定及び血圧の推定を身体の自由度を損なうことなく実行できる一体型のウェアラブル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1態様では、生体情報計測システムを対象として、ユーザの首の周囲に装着された際に内側面が首後方の皮膚に密着するネックバンド部と、前記ネックバンド部から前記ユーザの体表面に沿うように鎖骨付近の位置まで垂れ下がる垂れ下がり部とを一体に設けた首装着型のウェアラブル装置を備え、前記ネックバンド部の前記内側面には、接触式の脈波センサと、当該脈波センサの周囲に配置された第2の心電電極とが設けられ、前記垂れ下がり部の下部における前記ユーザ側の内表面には、前記ウェアラブル装置の装着時に当該ユーザの皮膚に密着する第1の心電電極が設けられており、前記脈波センサで計測された脈波信号と前記第1の心電電極から受信された心電図信号とを受信し、同時刻に取得された前記脈波信号及び前記心電図信号に基づいて前記ユーザの生体情報を取得する制御処理部を備える、構成とした。
【0013】
本開示の第2態様では、首装着型のウェアラブル装置を対象として、ユーザの首の周囲に装着された際に、内側面が首後方の皮膚に接触するネックバンド部と、前記ネックバンド部から前記ユーザの体表面に沿うように鎖骨付近まで垂れ下がる垂れ下がり部とを一体に設け、前記ネックバンド部の前記内側面には、接触式の脈波センサと、当該脈波センサの周囲に配置された第2の心電電極とが設けられ、前記垂れ下がり部の下部におけるユーザ側の内表面には、当該ユーザの皮膚に密着する第1の心電電極が設けられている、構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本開示のウェアラブル装置およびそれを備えた生体情報計測システムでは、1つのデバイスで互いに異なる位置での測定ができるため、ユーザの手間を軽減し、さらに身体の自由度が損なわれることなく生体情報の取得を行うことができる。さらに、首回りは、手足に比べて比較的安定して脈波信号及び心電図信号の測定が行えるため、血圧の推定精度の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)はウェアラブル装置の外観図であり、(b)はウェアラブル装置の装着イメージを示す図
図2】パッチ型デバイスを用いた首の各位置における心電図の一例を示す図
図3】パッチ型デバイスを用いた首の各位置における脈波の一例を示す図
図4A】ウェアラブル装置の内部構成例を示すブロック図
図4B】ウェアラブル装置の他の内部構成例を示すブロック図
図5A】ウェアラブル装置の他の内部構成例を示すブロック図
図5B】ウェアラブル装置の他の内部構成例を示すブロック図
図6】(a)は脈波伝播時間の定義を示し、(b)及び(c)は血圧推定の原理を説明するための図
図7】血圧推定部分の構成の一例を示す図
図8】血圧推定動作の一例を示すフローチャート
図9】通信システムの構成例を示すブロック図
図10】カフ型血圧計の装着状態を示す図
図11】従来の腕時計型ウェアラブル装置の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また、以下の説明では、ユーザを基準として前後上下左右を定義する。
【0018】
<概要>
前述のとおり、ウェアラブル装置を用いて血圧を推定する場合、脈波伝搬時間を求めるために、ある程度離れた箇所で、脈波信号と脈波信号を測定するまたは心電図信号と脈波信号を測定する必要がある。
【0019】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、一体型の装置を用いて、首後方において脈波センサにより脈波信号を計測し、首前方の鎖骨付近において心電センサにより心電図信号を計測する装置を用いることで、高精度の同時計測ができることを見出した。言い換えると、本開示のウェアラブル装置では、1つの装置で首周辺の互いに異なる2か所で心電と脈波を同時にかつ高精度に計測することができる点に特徴がある。そして、その計測結果から脈波伝搬時間を算出し、その脈波伝搬時間に基づいて血圧の推定を行う点に特徴がある。このような構成にすることで、心電と脈波を首に装着した1つの装置のみで測定することができ、その心電と脈波のデータを用いて脈波伝搬時間を算出することができる。すなわち、1つのデバイスで血圧の推定をすることができる。さらに、脈波信号と心電図信号の常時取得が可能となる。
【0020】
図2は、パッチ型のデバイスを用いて、複数の測定箇所で心電図信号を取得した際の結果である。具体的に、図2には、通常測定位置(心臓付近)、首右側位置、首左側位置、首後側位置及び首正面根元側位置(鎖骨付近)での測定結果を示す。測定デバイスには、TDK株式会社製のSilmee Bar type Liteを用いた。本開示における「鎖骨付近」とは、胸部上側の領域を指し、より具体的には、鎖骨部の首元寄りの部位及び胸筋部を含む領域を指す。
【0021】
図2の結果より、首正面根元側位置(鎖骨付近)では、通常測定位置で測定を行った結果に近い波形となった。この理由として、首正面根元側位置は心臓により近い位置であり、他の測定位置と比較して心電図信号を取得しやすいためと考えられる。
【0022】
また、図3は、パッチ型のデバイスを用いて、図2と同様の位置で脈波信号を取得した際の波形の結果である。測定デバイスは、心電図信号を取得した際のものと同様のものを用いている。
【0023】
図3の結果より、首後側位置で測定を行ったものは通常位置で測定したものと比較して、よりはっきりとした波形が得られている。この理由として、首の後側には表皮近くに外頸静脈が流れており、血流を拾いやすいためと考えられる。
【0024】
以上図2図3の結果より、本開示のウェアラブル装置では、心電図信号を首正面根元側位置(鎖骨付近)から取得し、脈波信号を首後側位置から取得することとした。
【0025】
以下では、本実施形態に係るウェアラブル装置及びそれを用いた生体情報計測システムの具体的な構成例について説明する。
【0026】
本実施形態の生体情報計測システムは、ユーザの首に装着される首装着型のウェアラブル装置200と、ウェアラブル装置での測定結果に基づいてユーザの生体情報を取得する制御処理部308とを備える。「生体情報」には、心電図データ、脈波データ、血圧推定データなどが含まれる。
【0027】
<ウェアラブル装置の構成>
図1は、ウェアラブル装置200の外観と装着イメージを示した図である。図1(a)はウェアラブル装置200の外観図であり、(b)はウェアラブル装置200を装着した際のイメージ図である。
【0028】
図1に示すように、ウェアラブル装置200は、ユーザの首の周囲に装着されるネックバンド部201と、ネックバンド部201からユーザの体表面に沿うように鎖骨付近の位置まで垂れ下がる垂れ下がり部210とが一体に設けられた構成となっている。ネックバンド部201は、例えば、弾性を有する素材を用いてユーザの正面側(前側)が開放されたC字状に形成されている。垂れ下がり部210は、例えば、柔軟性を有する素材を用いて正面視でU字状に形成されている。そして、ネックバンド部201と垂れ下がり部210の端部同士が互いに連結されることで、全体として一連に繋がるように構成されている。このような構成にすることで、装着性が向上する。具体的には、ユーザは、頭部上方において、ネックバンド部201を左右方向の両側に広げてその中に頭を通し、首元で手を離す。そうすると、ネックバンド部201がユーザの首の周囲に装着されるとともに、垂れ下がり部210が自動的にユーザの鎖骨付近に向かって垂れ下がるようになっている。
【0029】
-ネックバンド部-
ネックバンド部は、首の周囲に装着された際に、ユーザの首後側の皮膚に対向する内側面(前側の面)が首後方の皮膚に密着するように構成されている。ネックバンド部201の首後方との密着位置には、脈波センサ202が搭載されている。脈波センサ202は、脈波を検知するセンサ回路を有している。脈波センサ202が実装される脈波測定用基板302としては、リジッド基板を用いるのが好ましい。なお、ネックバンド部の首後方との密着位置に、後述する心電センサにおける測定誤差を減らすことと、密着性の変化を検出するための心電電極RL203を設けている。
【0030】
(脈波センサ)
脈波センサ202は酸化ヘモグロビンが特定の波長の光の吸収する性質を利用して、心臓の拍動に伴って変化する血流量を経時的にセンシングすることで脈波を計測するセンサである。
【0031】
脈波センサ202には、反射型脈波センサと透過型脈波センサが存在する。反射型脈波センサは、赤外線や赤色光、500-570[nm]の緑色波長の光を生体に向けて照射し、フォトダイオードまたはフォトトランジスタを用いて生体内を反射した光をセンシングすることで脈波信号を計測する。一方、透過型脈波センサは、赤色光と赤外光を同時に生体に向けて照射し、それぞれの光の血管の透過率を用いて脈波を算出する。脈波センサ202は、反射型と透過型のどちらを使用してもよい。
【0032】
脈波センサ202は、上述の通り発光素子、受光素子といった光学素子を用いて脈波信号を計測するため、装着面である皮膚との密着性により外乱光の影響を受けると脈波に光学的なノイズが重畳する。そのため、密着性が計測可能となるよう心電電極RL203を周囲に設けている。
【0033】
(心電電極RL)
心電電極RL203は、測定誤差を減らすこと及び電気的、光学的なノイズの影響を減らすことを目的として設けられる。言い換えると、心電電極RL203は、測定誤差を補正する電極であり、第2の心電電極の一例である。
【0034】
ウェアラブル装置200では、心臓位置から少し離れた位置で装着することや、後述する心電電極RAと心電電極LAと間の距離が長くなってしまうといった理由から、電気的なノイズの影響を減らすためにも心電電極RL203を設けるのが好ましい。
【0035】
心電電極RL203は、体表面から心臓の電位を取得するために用いる。体表面に密着させることで、心臓のわずかな電気を感知することができる。電極の種類には、シール型、吸盤型、ハサミ型と様々なものがある、どの形態のものを用いてもよい。
【0036】
心電電極RL203は、ネックバンド部201の内側面において、脈波センサ202の周囲に配置される。この例において、心電電極RL203は、脈波センサ202の左右両側の領域において左右に幅広に設けられている。なお、心電電極RL203は、図1の構成に限定されず、脈波センサ202の周囲の他の位置に配置されてもよい。例えば、心電電極RL203を脈波センサ202の上下に設けてもよいし、脈波センサ202の周囲を囲むように設けてもよい。
【0037】
このように、心電電極RL203の電極を極力大きく確保することで、体表面への密着性を良くして電気特性を向上させることができる。また、姿勢の変化等で脈波センサ202と体表面との密着性が悪化した場合に、外乱光が入射し光学的なノイズの影響を受けてしまうが、心電電極RL203と心電電極LA204および心電電極RA205との間のインピーダンスを計測すれば、心電電極と皮膚との密着性の変化を測定することが可能で、例えば、後述する心電センサ回路部306において、外乱光による光学的なノイズの影響を低減させることができる。
【0038】
具体的には、脈波センサ202の周囲に配置された心電電極RL203と心電電極LA204および心電電極RA205の間に微小な電流を流すと、それぞれの心電電極と皮膚との密着性が良好な場合は、インピーダンスが低い値となる。一方で、一部または全部の心電電極が部分的に浮いている、もしくは浮きかけている等、密着性が悪化した場合はインピーダンスが高い値となり、インピーダンスが無限大だと電極が完全に浮いている状態となる。心電電極RL203が部分的にでも浮いてしまうと外乱光が脈波センサ202の受光部にも入射してくるので光学的なノイズとして脈波の波形に重畳するが、インピーダンスの値により光学的なノイズの影響を除去することが可能となる。
【0039】
心電電極RL203は、フレキシブル基板に形成されるのが好ましい。したがって、脈波センサ202に加えて心電電極RL203を設ける場合、脈波測定用基板302には、フレキシブルリジット基板を用いるのが好ましい。
【0040】
-垂れ下がり部-
図1(b)に示すように、垂れ下がり部210は、首前方側の鎖骨付近において、ユーザ側の表面(後面)がユーザの鎖骨付近の皮膚に密着するような構造となっている。図1(a)に示すように、垂れ下がり部の下部前側には、メイン基板304と、スイッチ207が実装されている。さらに、垂れ下がり部210には、心電電極用基板基板301上に形成された心電電極LA204および心電電極RA205が設けられる。電源用基板303については、後ほど説明する。
【0041】
(心電電極LA、心電電極RA)
心電電極LA204と心電電極RA205とは、心電電極用基板301上に、相互間に所定の間隔(例えば、電極のサイズをΦ20mmとした場合に5cm~15cm程度)をあけて、左右方向に並べて形成されている。心電電極LA204及び心電電極RA205は、第1の心電電極の一例である。なお、所定の間隔は、上記に限定されず、例えば、事前の測定データ等に基づいてあらかじめ設定されてもよいし、ユーザに実際に装着してみた場合の測定感度等に応じて任意に設定できるようにしてもよい。
【0042】
心電電極用基板301は、例えば、フレキシブル基板である。フレキシブル基板を用いることで、心電電極LA204、RA205を直接皮膚に密着させることができ、より精度よくデータを取得できる。心電電極LA204及び心電電極RA205に用いられる電極の種類には、例えば、シール型、吸盤型、ハサミ型と様々なものがあるが、どの形態のものを用いてもよい。電極を左右方向に並べることで、心電電極LA204と心電電極RA205との間隔を確保しやすくなる。なお、心電電極LA204、RA205の並び方向は、左右に限定されず、上下方向に並べて配置されてもよい。
【0043】
図4図4A図4B)は、ウェアラブル装置の内部構成例を示すブロック図である。
【0044】
図4に示すように、ウェアラブル装置200は、主に、前述の心電電極用基板301、脈波測定用基板302及びメイン基板304の3つの基板に、電源用基板303を加えた4つの基板で構成されている。図4Aは、心電センサと脈波センサ202のデータを別々に制御処理部308に送信する場合におけるブロック図である。また、図4Bは、図4Aとブロック構成は同じであるが、脈波センサ202として、心電データ同期型のものを用いた例を示している。なお、図4A図4Bで共通の構成には同じ符号を付しており、重複する説明を省略する場合がある。
【0045】
-電源用基板-
電源用基板303には、電源部305と、ウェアラブル装置200のオン/オフの切り替えを行うスイッチ207が実装される。言い換えると、スイッチ207は、後述する電源部305から各部への電源供給をオンオフするためのものである。
【0046】
(電源部)
電源部305は、ウェアラブル装置200を動作させるための電源を供給する機能を持ち、主に電源とスイッチで構成される。電源は、ボタン電池などやフィルム電池の電池を用いるのが好ましい。例えば、消費電力が小さくなるような場合には、無線給電による給電を行ってもよい。無線給電を行う場合、アンテナ(図示省略)と整流部(図示省略)とを追加で設けることになる。なお、図4及び後述する図5において、電源部305の給電経路を太線で示している。
【0047】
-メイン基板-
メイン基板304には、心電センサ回路部306と、記憶部307と、制御処理部308と、通信部309とが実装されている。
【0048】
(心電センサ回路部)
心電センサ回路部306は、心臓のペースメーカーである洞房結節で微弱な電気信号が作られ、刺激伝導系を通り、心臓が収縮するという性質を利用している。具体的には、体に接触させた前述の2つの心電電極LA204及び心電電極RA205から心電図信号を受信し、その電位差をモニタリングして心電を計測する。生体中では心電だけでなく筋電など他の電気信号も発生しているため、心電センサ回路部306には、心電電位を増幅させる増幅器(図示省略)や、ノイズを除去するフィルタ(図示省略)、心電電極RL203と、心電電極LA204および心電電極RA205と間のインピーダンスを計測するインピーダンス測定回路310なども内蔵されている。
【0049】
心電センサ回路部306では、インピーダンス測定回路310で計測されたインピーダンスに基づいて、心電電極LA204,RA205の電気的な測定誤差及び脈波センサ202の光学的な測定誤差の少なくとも一方を補正する。
【0050】
なお、インピーダンス測定回路310において、心電電極RL203と心電電極LA204との間のインピーダンス、または、心電電極RL203と心電電極RA205との間のインピーダンスのいずれか一方を計測してもよい。この場合においても、計測されたインピーダンスの値により、心電センサ回路図306において脈波センサ202の光学的なノイズの影響が除去される。
【0051】
なお、心電センサは、心電センサ回路部306、心電電極LA204、心電電極RA205及び心電電極RL203によって構成される。
【0052】
(記憶部)
記憶部307は、生体データを一時的に保存するために実装することが望ましい。例えば、通信部の通信環境が悪く、データが送信できない等の問題が生じたときに、生体データを一時的に保存するために実装することが望ましい。
【0053】
(制御処理部)
制御処理部308は、例えば、マイクロコンピュータで実現され、ウェアラブル装置200の各部の機能を動作させる機能を有する。例えば、制御処理部308は、脈波センサ202から出力された脈波信号と、心電センサ回路部306から出力された心電図信号とを同時に取得する機能を持つ。また、制御処理部308は、(1)心電電極から脈波センサまでの距離を自動で認識する処理と、(2)上記で認識した距離と、ノイズ除去後の心電図信号及び脈波信号とから脈波伝播時間を算出する処理と、(3)上記で算出された脈波伝播時間と外部機器(例えば、後述するカフ型血圧計701)から入力された血圧情報(入力血圧情報に相当)を用いて血圧の推定する処理とを順に実行する。また、制御処理部308は、ユーザから取得した生体データなどのユーザデータを解析処理する機能を有していてもよい。制御処理部308は、ウェアラブル装置200に内蔵されてもよいし、ウェアラブル装置200とは別の外部機器602(例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコン等)やクラウドサーバー603に内蔵されてもよい。外部機器602やクラウドサーバー603については、後ほど説明する。
【0054】
〔血圧推定法の原理〕
ウェアラブル装置200の血圧推定法の原理について、図6を参照しつつ説明する。図6(a)は脈波伝播時間の定義を示し、図6(b),(c)に血圧推定の原理を示す。
【0055】
図6(a)に示すように、脈波伝播時間503は、心電図のR波501から末梢の脈波出現502までの時間である。脈波が伝播していく速度は脈波伝播時間503と呼ばれ、血管壁の硬さに依存している。血管壁が固いほど脈波は速く伝わり、末梢の動脈に脈波が到達する時間が早くなり、血圧が上昇する(図6(b)参照)。逆に血管壁が柔らかくなると末梢の動脈に脈波が到達するのが遅くなるため、血圧が低下する(図6(c)参照)。この規則性を利用して血圧の推定を行う。
【0056】
また、心電図信号と脈波信号から血圧を推定するためには、推定に用いるパラメーターを初期段階で計測する必要がある。そのため以下のカフ型血圧計701によってパラメーターを計測する。
【0057】
〔カフ型の血圧推定装置〕
図8には、カフ型血圧計701の装着状態を示している。カフ型血圧計701は、非侵襲的方法により血圧を測定する。具体的に、カフ型血圧計701では、カフ702に空気を加圧し、徐々に空気を排気するときの動脈血管上のカフに生じる圧振動の大きさを圧センサで感知・記録することで血圧を測定する。
【0058】
一般的に推定血圧は、以下の式(1)により算出できる。
【0059】
P = a1lnTPPT+a2 ・・・(1)
ここで、Pは収縮期血圧、TPPTは脈波伝播時間、a、aは係数である。上式の係数a、aを求めるためにカフ型血圧計701を用いて血圧を測定し、例えば、後述する外部機器602にカフ型血圧計701での血圧測定データを入力する。外部機器602は、上記の血圧測定データを制御処理部308に送信する。制御処理部308では、受信した血圧測定データを用いて係数a、aを求め、血圧推定のための最適式を算出する。なお、カフ型血圧計701を用いた血圧測定データは、あらかじめ測定されて、記憶部307に格納されていてもよい。
【0060】
〔血圧推定処理〕
図9は、血圧推定処理に用いられる制御処理部308の構成を抽出して図示している。図9において、制御処理部308は、ノイズ除去部803と、脈波伝播時間算出部804と、補正部805とを備える。
【0061】
心電センサ回路部306より取得された心電図信号及び脈波センサ202より取得された脈波信号は、ノイズ除去部803に送られる。
【0062】
ノイズ除去部803では、主に機械学習を用いて、正常な波形とノイズとを認識して正常な波形のみを抽出し、脈波伝播時間算出部804へと送る。
【0063】
脈波伝播時間算出部804では、ノイズ除去部803で抽出されたデータと、脈波センサ202と心電電極とのセンサ間距離806から脈波伝播時間を算出し、補正部805へと送る。センサ間距離806は、例えば、あらかじめ測定されて、制御処理部308で保持されている。
【0064】
補正部805では、脈波伝播時間算出部804で算出された脈波伝播時間と、カフ型血圧計701を使用した血圧測定情報を用いて血圧の推定を行い、前述の式(1)の係数の算出を行う。前述のとおり、カフ型血圧計701による血圧測定情報807は、外部機器602を介してウェアラブル装置200に送信される。
【0065】
(通信部)
通信部は309は、ユーザから取得した血圧情報を含む生体情報や、上記のユーザデータの解析処理後のデータを外部のデバイスに送信する機能を有する。通信部309は、例えば、Bluetooth(登録商標)モジュールを用いるのが好ましい。特に、通信部309には、Bluetoothモジュールの中でも電力消費量が相対的に少ないという特徴を持つBluetооth Lоw Energyを用いるのが好ましい。Bluetооth Lоw Energyは、ウェアラブル端末などで用いられるバイタルデータの送信に適している。
【0066】
ここで、図4A図4Bの動作を相違点に着目してまとめると、図4Aの構成の場合、心電センサ回路部306で取得されたアナログ信号は制御処理部308に送られ、制御処理部内308のADコンバータでデジタル変換される。脈波センサ202で取得された脈波信号は、脈波センサ202内のADコンバータでデジタル変換され、制御処理部308に送信される。制御処理部308に送信されたデータは、所定の処理を実行された後、通信部309を介して外部デバイスに送信される。また、制御処理部308から送信されたデータは、記憶部307に保存される。
【0067】
一方で、図4Bの構成の場合、心電センサ回路部306で取得されたアナログ信号は制御処理部308に送られる。図4Bの脈波センサ202は、脈波信号と心電図信号との同期をとる機能を有している。そこで、制御処理部308に送られた心電アナログ信号は、脈波センサ202の方に送られる。脈波センサ202では、受信された心電アナログ信号と、脈波センサ202で取得された脈波信号との同期をとられる。その後、ともに内蔵されたADコンバータでデジタル変換され、制御処理部308に送信される。なお、脈波センサ202の補正やサンプリング数などの細かい設定は制御処理部308で行われ、脈波センサ202に送られる。制御処理部308に送信されたデータは、所定の処理を実行された後、通信部309を介して外部デバイスに送信される。また、制御処理部308から送信されたデータは、記憶部307に保存される。
【0068】
<通信システム>
生体情報計測システムは、以下に示す通信システムを備えていてもよい。図7には、通信システムの構成例を示している。
【0069】
ウェアラブル装置200で取得された生体情報は、通信部309を介してBluetooth通信によりスマートフォンやタブレットなどの外部機器602に送信される。送信されたデータは、外部機器602に設けられた表示部604の表示画面上に表示することができる。
【0070】
また、外部機器602は、ウェアラブル装置200から受信した生体情報を無線LAN等でクラウドサーバー603等に送信してもよい。これにより、クラウド上で生体情報を管理することができる。
【0071】
クラウドサーバー603には、例えば、生体情報処理機能が備わっており、受信した心電図信号、脈波信号、血圧などの生体情報の解析処理を行い、睡眠の質やストレスの度合いなどを算出してもよい。また、クラウドサーバー603において、取得したデータを学習して個々人に合わせた食事や運動メニューなどの提案を行うようにしてもよい。
【0072】
図10は、上記の通信システムを備える生体情報計測システムにおける生体情報取得方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、これまでに説明した内容と重複する内容については重複する記載を簡素化または省略する場合がある。
【0073】
まず、ウェアラブル装置200がユーザに装着されて、ウェアラブル装置200に電源が投入されると、心電センサを用いて心電図信号が測定されるとともに、脈波センサ202を用いて脈波信号が測定される(工程901)。
【0074】
ウェアラブル装置200において、心電図信号及び脈波信号が測定されると、その測定信号は通信部309を介して外部機器602に送信される。外部機器602では、受信された測定データが表示部604の表示画面に表示される(工程902)。
【0075】
また、心電図信号及び脈波信号は、前述のノイズ除去部803に送信され、測定の際に入るノイズが除去され、正常な波形のみが抽出される(工程903)。
【0076】
次の工程904では、脈波伝播時間算出部804において、工程903においてノイズが除去された正常な波形を用いて脈波伝播時間の算出が行われる。
【0077】
次の工程905では、工程904で算出された脈波伝播時間を用いて血圧が推定される。そして、工程906において、工程905における血圧推定結果が通信部309を介して外部機器602に送信され、表示部604にその推定結果が表示される。
【0078】
以上のように、本開示の首装着型のウェアラブル装置200は、ユーザの首の周囲に装着された際に内側面が首後方の皮膚に密着するネックバンド部201と、ネックバンド部201からユーザの体表面に沿うように鎖骨付近の位置まで垂れ下がる垂れ下がり部210とを一体に設けた構成となっている。そして、ネックバンド部201の前記内側面には、心電基準電位の心電電極RL203を周囲に配置した位置に接触式の脈波センサ202が設けられ、垂れ下がり部210の下部におけるユーザ側の内表面には、心電測定用の心電電極が設けられている。
【0079】
このような構成にすることで、1つの装置で首周辺の互いに異なる2か所で心電と脈波を同時に計測することができる。これにより、ユーザの手間を軽減し、さらに身体の自由度が損なわれることなく生体情報の取得を行うことができる。また、脈波信号と心電図信号の常時取得が可能となる。さらに、首回りは、手足に比べて比較的安定して脈波信号及び心電図信号の測定が行えるので、精度の高い計測が実現できる。
【0080】
本開示の生体情報計測システムでは、上記のウェアラブル装置200に加えて、脈波センサ202で計測された脈波信号と心電電極から受信された心電図信号とを受信し、同時刻に取得された脈波信号及び心電図信号に基づいてユーザの生体情報を取得する制御処理部308をさらに備える。
【0081】
このような構成にすることで、前述のウェアラブル装置200としての効果に加えて、1つのデバイスで脈波信号及び心電図信号を同時にかつ高精度に取得することができる。そしてその心電と脈波のデータを用いて脈波伝搬時間を算出することができるため、血圧の推定精度の向上が期待できる。また、脈波信号と心電図信号に加えて、血圧の常時測定が可能となる。
【0082】
<その他の実施形態>
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0083】
例えば、ウェアラブル装置200の構成に加えて、温度センサ401と加速度センサ402を設けるようにしてもよい。図5A及び図5Bには、温度センサ401と加速度センサ402を追加した構成例を示している。図5Aは、図4Aの構成に温度センサ401及び加速度センサ402を追加した例を示す。図5Bは、図4Bの構成に温度センサ401及び加速度センサ402を追加した例を示す。
【0084】
(温度センサ)
温度センサ401は、人体の外皮温度を測定するために用いる。温度センサ401として、大きく接触型と非接触型の2つに分類されるが、本ウェアラブル装置200では、接触型を用いるのが望ましい。例えば、接触型温度センサとして、電気式のセンサを用いてもよいし、機械式のセンサを用いてもよい。電気式の温度センサには、電気抵抗率と温度の関係を利用したものや、金属同士の温度の違いを利用したものなどが含まれる。機械式の温度センサには、金属の熱膨張率を利用したものや、温度による磁性材料の性質の変化を利用したものが含まれる。温度センサ401で測定された人体の外皮温度は、生体情報の一例である。
【0085】
(加速度センサ)
加速度センサ402は、単位時間当たりの速度の変化率を検知することのできるセンサであり、重力、動き、振動、衝撃を測定することができる。加速度センサ402には、周波数変化式、圧電式、ピエゾ抵抗式、静電容量式などが主に挙げられるが、本装置ではQ値の高い単結晶水晶をばねとして共振周波数で共振させ、周波数変化を検出する周波数変化式の加速度センサを用いるのが望ましい。
【0086】
図5Aにおいて、心電センサ回路部306で取得されたアナログ信号は制御処理部308に送られ、制御処理内308内のADコンバータでデジタル変換される。脈波センサ202、温度センサ401及び加速度センサ402から取得されたデータは、それぞれのセンサ内のADコンバータでデジタル変換され、制御処理部308に送られる。制御処理部308に送信されたデータは、通信部309に送られるとともに、記憶部307に保存される。
【0087】
図5Bにおいて、心電センサ回路部306で取得されたデータは制御処理部308に送られる。脈波センサ202は心電と同期をとる機能を有しており、制御処理部308に送られた心電アナログ信号は、脈波センサの方に送られる。心電のアナログ信号は、脈波センサ202で取得された脈波信号とともに脈波センサ202内のADコンバータでデジタル変換され、制御処理部308に送信される。温度センサ401、加速度センサ402で取得されたデータは、それぞれセンサ内のADコンバータでデジタル変換され、制御処理部308に送信される。脈波センサ202、温度センサ401、加速度センサ402の補正やサンプリング数などの細かい設定は制御処理部308で行われ各センサに送られる。制御処理部308に送信された生体データは、通信部309または記憶部307に送信される。
【0088】
上記の実施形態では、取得対象の生体情報として、心電図データ、脈波データ及び血圧推定データを取得する例を示したが、これに限定されない。例えば、本開示のウェアラブル装置を用いて、前述の心電情報や脈波の情報、その他センサ(加速度センサ、温度センサなど)から得られたデータなどを用いて推定されるストレス指標などを生体情報として取得してもよい。言い換えると、例えば、制御処理部308は、心電電極RL203及び心電電極LA204から受信された心電図信号及び脈波センサ202から受信された脈波信号を使用して脈波伝播時間を決定し、脈波伝播時間と血圧情報に基づいて、心電情報や脈波の情報に加えてストレス指標などの生体情報を取得してもよい。
【0089】
上記の実施形態では、補正部805において、脈波伝播時間算出部804で算出された脈波伝播時間と、カフ型血圧計701を使用した血圧測定情報を用いて血圧の推定を行い、前述の式(1)の係数の算出を行うものとしたが、補正部805による補正を行わなくてもよい。すなわち、制御処理部308は、脈波伝播時間算出部804で算出された脈波伝播時間に基づいて血圧の推定を行い、前述の式(1)の係数の算出を行うようにしてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、脈波センサ202と皮膚との密着性を検出するために心電電極RL203と心電電極LA204、心電電極RA205との間のインピーダンスを測定する方式を用いたが、メカニカルなマイクロスイッチや静電容量式の圧力センサを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本開示のウェアラブル装置及び生体情報計測システムによると、日常的な生体情報を常に取得できるようになるため、不整脈や高血圧などの異常を早期発見することができるようになるので、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0092】
200 ウェアラブル装置
201 ネックバンド部
202 脈波センサ
203 心電電極RL(第2の心電電極)
204 心電電極LA(第1の心電電極)
205 心電電極RA(第1の心電電極)
308 制御処理部
310 インピーダンス測定回路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11