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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121709
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】錠剤鑑査システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170269
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022024993
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】天野 弘和
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛
(72)【発明者】
【氏名】千原 博一
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047KK01
4C047KK10
4C047KK13
4C047KK14
4C047KK17
4C047KK25
4C047KK30
4C047KK31
(57)【要約】
【課題】錠剤鑑査システムにおいて、錠剤の認識精度を向上させ、もって錠剤が処方通りか否かの判定の精度を向上させる。
【解決手段】錠剤鑑査システム10は、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得部1と、対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識部2と、錠剤認識部2で認識された錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定部3と、処方判定部3の判定結果を出力する出力部4とを、備える。錠剤認識部2は、対象画像のマスタデータと合致する領域を錠剤と認識し、対象画像のマスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得部と、
前記対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識部と、
前記錠剤認識部で認識された前記錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定部と、
前記処方判定部の判定結果を出力する出力部とを、備え、
前記錠剤認識部は、前記対象画像の前記マスタデータと合致する領域を錠剤と認識し、前記対象画像の前記マスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断を行う、錠剤鑑査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータによって示される1つの錠剤を異なる角度から見た特徴を合成した合成マスタデータに、前記不明領域が合致するか否かを判断する、錠剤鑑査システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータに合致する領域と連続する前記不明領域の面積に基づいて、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断する、錠剤鑑査システム。
【請求項4】
請求項3に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータに合致する領域と連続する前記不明領域の面積が、前記マスタデータに基づく条件を満たすか否かにより、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断する、錠剤鑑査システム。
【請求項5】
請求項3に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータが示す錠剤を分割して得られる分割錠剤に対する前記不明領域の過不足部分の面積に基づいて、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断する、錠剤鑑査システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記出力部は、前記処方判定部の前記判定結果とともに、前記錠剤認識部の認識結果を出力し、
前記錠剤認識部の認識結果は、前記マスタデータに合致する領域として認識された錠剤と、前記不明領域において前記追加判断により認識された錠剤とを区別可能な形態で出力される、錠剤鑑査システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の錠剤鑑査システムであって、
前記処方判定部は、前記錠剤認識部で認識された錠剤の数が、処方通りか否かを判定する、錠剤鑑査システム。
【請求項8】
処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得処理と、
前記対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識処理と、
前記錠剤認識処理で認識された前記錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定処理と、
前記処方判定処理の判定結果を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させ、
前記錠剤認識処理は、
前記対象画像の前記マスタデータと合致する領域を錠剤と認識する処理と、
前記対象画像の前記マスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断処理とを含む、プログラム。
【請求項9】
薬剤を内包する分包袋群を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像における分包袋の境界の位置を検出する境界検出部と、を備え、
前記境界検出部は、前記分包袋群の画像における薬剤領域及び分包袋の印字領域を決定し、前記薬剤領域及び印字領域を除く領域に対して前記分包袋の境界の位置を検出する、鑑査装置。
【請求項10】
薬剤を内包する分包袋群を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、
前記搬送装置で搬送される前記分包袋群を、搬送方向に交差する線に沿って切断する切断部と、を備える鑑査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の鑑査システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6849798号公報には、分包袋に分包された薬剤が処方箋通りの薬剤であるか否かの検査を支援する薬剤検査支援装置が記載されている。この装置は、処方箋に記載された薬剤についての基準画像と、分包袋に分包された薬剤の撮影画像に基づく照合対象画像とを照合して、照合対象画像が示す薬剤と基準画像が示す薬剤とが同一の薬剤であるか否か判断する。基準画像と、照合対象画像のうち基準画像が示す薬剤と同一の薬剤を示すと判断された全ての画像とを含む一覧表を薬種ごとに作成され、表示画面に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6849798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錠剤の鑑査システムにおいて、錠剤が、他の錠剤と重なった状態又は、斜めに傾いた状態で撮影されることが生じ得る。このような錠剤の画像は、マスタ画像と合致せず、錠剤と認識されない可能性がある。この場合、実際には錠剤が存在するにも拘わらず、錠剤が認識されないため、錠剤が処方通りか否かの判定結果に誤りが生じることになる。すなわち、判定精度が低下する。
【0005】
そこで、本願は、錠剤の認識精度を向上させ、もって錠剤が処方通りか否かの判定の精度を向上させることができる鑑査システム及びプログラムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における錠剤鑑査システムは、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得部と、前記対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識部と、前記錠剤認識部で認識された前記錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定部と、前記処方判定部の判定結果を出力する出力部とを、備える。前記錠剤認識部は、前記対象画像の前記マスタデータと合致する領域を錠剤と認識し、前記対象画像の前記マスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、錠剤鑑査システムにおいて、錠剤の認識精度を向上させ、もって錠剤が処方通りか否かの判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における鑑査システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す錠剤鑑査システム10の動作例を示すフローチャートである。
図3図2におけるS7の追加処理の例を示すフローチャートである。
図4】対象画像の一例を示す図である。
図5図4に示す対象画像において、抽出された錠剤候補領域の例を示す図である
図6図5に示す錠剤候補領域において、マスタデータに合致すると判断される領域、及び、不明領域の例を示す図である。
図7】合成マスタデータと不明領域とを照合する例を説明するための図である。
図8】S7-5、S7-6の判断の例を説明するための図である。
図9】S7-7の判断の例を説明するための図である。
図10図2のS8で出力される処方判定部の判定結果の画面の例を示す図である。
図11】本実施形態における錠剤鑑査システム10a及び、類似錠剤データ提供システム30の構成例を示す機能ブロック図である。
図12】全類似錠剤データの例を示す図である。
図13】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図14】受け板が第1位置にある状態を示す図である。
図15】受け板が第2位置にある状態を示す図である。
図16】本実施形態における受け板の変形例を示す図である。
図17】本実施形態における受け板の変形例を示す図である。
図18】本実施形態における受け板の変形例を示す図である。
図19】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図20】追加搬送機の構成例を示す斜視図である。
図21図20に示す追加搬送機の内部構成例を示す斜視図である。
図22】本実施形態における鑑査装置の変形例を示す図である。
図23】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図24】分包袋群Pの例を示す図である。
図25図23の境界検出部で処理される画像の例を示す図である。
図26】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図27図26の切断部のカッター機構の構成例を示す図である。
図28図27(a)に示す切断部の斜視図である。
図29図27(b)に示す切断部の斜視図である。
図30】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図31図30に示す鑑査装置の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成1)
本発明の実施形態における錠剤鑑査システムは、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得部と、前記対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識部と、前記錠剤認識部で認識された前記錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定部と、前記処方判定部の判定結果を出力する出力部とを、備える。前記錠剤認識部は、前記対象画像の前記マスタデータと合致する領域を錠剤と認識し、前記対象画像の前記マスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断を行う。
【0010】
上記錠剤鑑査システムでは、マスタデータに合致しない不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断が実行される。これにより、錠剤の認識精度を向上させ、もって錠剤が処方通りか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0011】
マスタデータは、錠剤と認識するための条件を示すデータである。例えば、対象画像において、マスタデータが示す条件を満たす領域が、マスタデータに合致すると判断される。例えば、対象画像とマスタデータとのマッチング処理により、マスタデータに合致する領域が決定される。マスタデータは、錠剤の特徴、例えば、錠剤の形状、大きさ、色又は印字情報のうち少なくとも1つを示すデータであってもよい。マスタデータのデータ形式は、特に限定されない。例えば、マスタデータは、錠剤の画像データ(画素値の集合)であってもよいし、或いは、錠剤の特徴量を示す値又はその集合であってもよい。マスタデータに合致しない領域は、対象画像においてマスタデータに合致すると判断された領域以外の領域である。
【0012】
対象画像において錠剤の可能性があると判断される領域は、対象画像において、予め決められた特徴を有する領域であってもよい。例えば、色又はエッジ等の特徴が所定の条件を満たす領域が、錠剤の可能性があると判断されてもよい。一例として、錠剤認識部は、マスタデータが示す錠剤の色と合致する色の領域を、錠剤の可能性がある領域と判断してもよい。
【0013】
錠剤認識部は、例えば、対象画像における錠剤の薬種又は個数の少なくとも一方を決定することができる。
【0014】
(構成2)
上記構成1において、前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータによって示される1つの錠剤を異なる角度から見た特徴を合成した合成マスタデータに、前記不明領域が合致するか否かを判断してもよい。上記合成マスタデータに不明領域が合致する場合に、この不明領域を錠剤と認識することができる。これにより、対象画像に写る錠剤の角度が、マスタデータが示す錠剤の角度と異なる場合であっても錠剤を認識することができる。例えば、斜めに傾いた状態で対象画像に写っている錠剤を認識することができる。
【0015】
合成マスタデータは、マスタデータで示される錠剤を異なる複数の角度(方向)から見た特徴(例えば、形状又は大きさ等)を合成した条件を示すデータである。不明領域の特徴が、合成マスタデータが示す条件を満たす場合に、不明領域が合成マスタデータに合致すると判断されてもよい。合成マスタデータは、例えば、異なる角度から見た錠剤の画像を合成した画像であってもよいし、異なる角度から見た錠剤の面積に基づく面積の条件であってもよい。
【0016】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータに合致する領域と連続する前記不明領域の面積に基づいて、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断してもよい。これにより、他の錠剤と重なった状態で対象画像に写っている錠剤を認識することができる。
【0017】
例えば、錠剤認識部は、マスタデータに合致する領域と連続する不明領域の面積が、所定の範囲か否かを判断してもよい。この場合、所定の範囲は、例えば、マスタデータが示す錠剤の面積に基づいて決められてもよい。
【0018】
(構成4)
上記構成3において、前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータに合致する領域と連続する前記不明領域の面積が、前記マスタデータに基づく条件を満たすか否かにより、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断してもよい。これにより、例えば、他の錠剤と重なった状態で画像に写った錠剤を、認識しやすくなる。例えば、前記錠剤認識部は、前記マスタデータに合致する領域と連続する前記不明領域の面積を、前記マスタデータが示す錠剤の面積と比較することにより、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断してもよい。
【0019】
(構成5)
上記構成3又は4において、前記錠剤認識部は、前記追加判断において、前記マスタデータが示す錠剤を分割して得られる分割錠剤に対する前記不明領域の過不足部分の面積に基づいて、前記不明領域を錠剤と認識するか否かを判断してもよい。これにより、きれいに分割された分割錠剤の他、例えば、バリが残る分割錠剤のように、意図通りにきれいに分割できていない分割錠剤を認識しやすくなる。
【0020】
分割錠剤のデータは、例えば、分割していない錠剤のマスタデータを基に自動的に生成されてもよい。例えば、マスタデータが示す錠剤の形状の中央を通る分割線を境として分割した形状を示すデータを分割錠剤のマスタデータとして生成することができる。錠剤認識部は、例えば、不明領域と分割錠剤の外径形状の一致度合いと、過不足分の面積の両方に基づいて、不明領域を錠剤と認識するか否かを判断してもよい。
【0021】
(構成6)
上記構成1~5のいずれかにおいて、前記出力部は、前記処方判定部の前記判定結果とともに、前記錠剤認識部の認識結果を出力してもよい。前記錠剤認識部の認識結果は、前記マスタデータに合致する領域として認識された錠剤と、前記不明領域において前記追加判定により認識された錠剤とを区別可能な形態で出力されてもよい。これにより、不明領域における錠剤の認識が正しいか否かを判断するための情報が提供される。
【0022】
(構成7)
上記構成1~6のいずれかにおいて、前記処方判定部は、前記錠剤認識部で認識された錠剤の数が、処方通りか否かを判定してもよい。この場合、前記処方判定部は、対象画像に含まれる錠剤の薬種については処方通りか否かを判定しなくてもよい。例えば、錠剤認識部は、認識結果として、対象画像に含まれる錠剤の個数を出力し、錠剤の薬種は出力しない態様であってもよい。これにより、錠剤認識部及び処方判定部の処理を簡素化できる。なお、錠剤認識部は、認識結果として、錠剤の薬種及び個数を出力してもよい。この場合、処方判定部は、薬種及び個数が、処方通りか否かを判定する。
【0023】
前記錠剤認識部は、前記マスタデータに合致するとして認識された錠剤の数が処方通りではない場合に、前記追加判断を実行してもよい。これにより、処方された錠剤の数が考慮されるので、より認識精度を高めることができる。例えば、錠剤認識部は、前記マスタデータに合致するとして認識された錠剤の数が処方通りである場合は、前記追加判断を実行しないようにしてもよい。
【0024】
本発明の実施形態におけるプログラムは、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像を取得する画像取得処理と、前記対象画像に含まれる錠剤を、錠剤のマスタデータを用いて認識する錠剤認識処理と、前記錠剤認識処理で認識された前記錠剤が処方通りか否かを判定する処方判定処理と、前記処方判定処理の判定結果を出力する出力処理とを、コンピュータに実行させる。前記錠剤認識処理は、前記対象画像の前記マスタデータと合致する領域を錠剤と認識する処理と、前記対象画像の前記マスタデータと合致しない領域であって錠剤の可能性があると判断される不明領域について、錠剤と認識するか否かを追加判断する処理とを含む。
【0025】
本発明の他の実施形態における錠剤鑑査システムは、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した画像に基づき、前記錠剤が処方通りか否かを鑑査する鑑査部と、各画像の鑑査の結果を、処方ごとに区別可能な態様で画面に表示する表示制御部と、を備える。前記表示制御部は、1つの処方における各画像の鑑査の結果の表示を終了した後、処方選択を受け付けるメニュー画面を経由せずに、次の処方の各画像の鑑査結果の表示を開始してもよい。この構成によれば、1つの処方の鑑査結果の表示が終了した後、メニュー画面に戻らず、次の処方を表示できる。これにより、次の処方を選択する操作を省くことができる。
【0026】
本発明の他の実施形態における錠剤鑑査システムは、処方に基づいて払い出された錠剤を撮影した対象画像において、マスタデータを用いて錠剤を認識し、認識した錠剤が処方通りか否かを判定する鑑査部を有する。錠剤鑑査システムは、さらに、対象画像において、処方された錠剤に類似する類似錠剤があるか否かを判定する類似判定部を備えてもよい。類似判定部は、錠剤間の類似関係を示す類似錠剤データを用いて、類似錠剤の有無を判定する。
【0027】
このような錠剤鑑査システムに、類似錠剤の判定に用いる類似錠剤データを提供する類似錠剤データ提供システムも、本発明の実施形態に含まれる。類似錠剤データ提供システムは、予め準備された、全ての錠剤の間の類似関係を示す全類似錠剤データにアクセス可能である。全類似錠剤データは、例えば、全ての錠剤について、各錠剤のマスタデータを用いて予め類似判定処理を実行することで、生成される。ここで、全ての錠剤とは、錠剤鑑査システムにおいて鑑査の対象となり得る、すなわち、錠剤鑑査システムに提供する可能性のある全ての錠剤である。前記類似錠剤データ提供システムは、全類似錠剤データから、前記錠剤鑑査システムに提供しようとするマスタデータの錠剤に類似する類似錠剤を示す類似錠剤データを抽出し、前記錠剤鑑査システムに提供する。
【0028】
上記類似錠剤データ提供システムは、錠剤鑑査システムに新たな錠剤のマスタデータを追加する場合に、予め生成された類似錠剤データから、追加する錠剤に類似する類似錠剤のデータを抽出する。そのため、マスタデータを追加する際に、追加する錠剤にどの錠剤が類似するかを判定する処理を実行しなくて済む。そのため、類似判定の時間を短縮できる。
【0029】
前記類似錠剤データにおいて、錠剤を識別する錠剤識別データは、錠剤のマスタデータから生成されるハッシュ値を含んでもよい。例えば、錠剤は、YJコード及びハッシュ値により識別されてもよい。錠剤の識別データに、マスタ画像から生成されるハッシュ値を用いることで、例えば、錠剤の識別コード(例えば、YJコード)が変更された場合であっても、錠剤を正確に識別することができる。
【0030】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記搬送装置の下流から送出される前記分包袋群を受ける受け板とを備える。前記受け板は、前記搬送装置から送出された前記分包袋群を下方で受ける第1位置と、前記分包袋群を受けずにさらに下方へ流れるのを許容する第2位置との間で、移動可能に構成される。
【0031】
上記鑑査装置では、鑑査装置から送出される分包袋を、受け板で受けるか、受け板よりも下方に流すかを、受け板の移動によって切り替えることが可能になる。受け板が第1位置の状態では、受け板が分包袋群を受けて、その場で溜めることができる。受け板が第2位置の状態では、分包袋群が受け板よりも下方へ流れる。例えば、分包袋群が短い場合は、受け板を第1位置にして分包袋群を受け板で受けて上方で溜めることで、回収しやすくすることができる。一例として、前記受け板は、水平方向の軸を中心に回転可能に前記鑑査装置に取り付けられてもよい。
【0032】
前記受け板は、前記第2位置において、前記搬送装置から送出された前記分包袋群を下方へ導くガイドとなるよう構成されてもよい。これにより、分包袋が下方へ流れる経路を限定することができる。例えば、第2位置の受け板は、搬送装置の搬送方向に下流に向かって延びる仮想線と交わる位置に配置されてもよい。
【0033】
前記鑑査装置は、さらに、前記搬送装置から送出された前記分包袋群を下方へ導くガイドを備えてもよい。この場合、前記受け板は、前記ガイドの経路を塞いで前記分包袋群を受ける位置と、ガイドの経路を開放して前記分包袋群の流れを許容する位置との間で移動可能に構成されてもよい。
【0034】
前記受け板は、底部と底部の両端からそれぞれ延びる側壁とを有する溝型に形成されてもよい。この場合、例えば、側壁の一部が水平方向を軸に回転可能に支持されてもよい。第1位置において、底部が前記搬送装置から送出された分包袋群を受ける位置に配置され、第2位置において、底部と側壁で囲まれる空間の下方が開口するように、前記受け板が形成されてもよい。
【0035】
前記鑑査装置は、前記受け板の位置を検出するセンサ(受け板位置検出センサ)をさらに備えてもよい。前記鑑査装置は、前記センサで検出された前記受け板の位置を、ディスプレイ、スピーカ又はランプ等の出力装置を介して出力してもよい。
【0036】
前記鑑査装置は、鑑査対象の処方情報(例えば、鑑査対象の分包袋群の量等)に応じて、前記受け板の位置の移動を指示する情報を、前記出力装置を介して出力してもよい。ユーザは、出力された情報を基に、受け板を分包袋の量に応じた適切な位置に移動させることができる。また、鑑査装置は、鑑査対象の処方情報とセンサで検出される受け板の位置の両方に基づいて、受け板の位置の移動を指示する情報を出力してもよい。
【0037】
前記鑑査装置は、前記搬送装置から送出され、前記受け板で受けられた分包袋群を検出するセンサ(受け分包袋検出センサ)をさらに備えてもよい。前記鑑査装置は、受け分包袋検出センサの検出結果、又は検出結果に基づく操作指示を、前記出力装置を介して出力してもよい。
【0038】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記搬送装置から送出される前記分包袋群を、前記搬送装置から離れた位置において、前記搬送装置の搬送に応じて、搬送する追加搬送機と、を備える。
【0039】
この構成によれば、鑑査装置から送出される分包袋群を、鑑査装置から離れた位置で、搬送装置の搬送に合わせて搬送できる。そのため、例えば、鑑査装置から離れた位置で、分包袋群の各々についてユーザが二次鑑査をし易くなる。
【0040】
前記追加搬送機は、ユーザの操作を受け付ける操作子を有してもよい。ユーザの操作子に対する操作に応じて、前記追加搬送機及び前記搬送装置の双方の搬送が制御されてもよい。例えば、ユーザが、操作子で搬送の停止操作をした場合、前記搬送装置及び前記追加搬送機の両方の搬送を停止してもよい。これにより、鑑査装置から離れた位置、例えば、二次鑑査がなされる位置において、ユーザが操作により搬送装置の搬送を停止させることができる。例えば、送出された分包袋群の1つに対して、内包される錠剤を修正する場合に、ユーザが追加搬送機に対する操作で、搬送装置の搬送も停止させることができる。
【0041】
前記鑑査装置は、前記搬送装置から送出される分包袋群を検出するセンサ(送出分包袋検出センサ)をさらに備えてもよい。この場合、前記追加搬送機は、前記センサで前記分包袋群の送出が検出された場合に、前記分包袋群を搬送するように制御されてもよい。
【0042】
前記鑑査装置は、前記追加搬送機から送出される分包袋群を検出するセンサ(追加送出分包袋検出センサ)をさらに備えてもよい。前記センサの検出結果に基づいて前記追加搬送機による分包袋群の搬送が制御されてもよい。これにより、前記追加搬送機から送出された分包袋に対するユーザの二次鑑査のペースに応じて追加搬送機からの分包袋群の送出を制御することができる。例えば、追加送出分包袋検出センサは、追加搬送機の分包袋群の送出口と、送出口から離間した台との間に滞留する分包袋群を検出するセンサであってもよい。このセンサで所定の量の分包袋が検出された場合に、追加搬送機が分包袋群を搬送するように制御されてもよい。また、このセンサの検出結果に応じて、追加搬送機及び鑑査機の搬送装置の両方が制御されてもよい。
【0043】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記鑑査部の鑑査結果を分包袋ごとに区別可能な態様で出力する出力部と、ユーザから再撮影すべき分包袋の指定を受け付ける分包袋指定受付部と、前記分包袋指定受付部が、前記再撮影すべき分包袋の指定を受け付けた場合、前記搬送装置に前記指定された分包袋を前記撮影装置の撮影位置に搬送させ、前記撮影装置に、前記指定された分包袋を撮影させる再撮影制御部と、を備える。
【0044】
この構成によれば、送出された分包袋群の一部の分包袋の再撮影が効率よく実行できる。例えば、ユーザが、送出された分包袋群のうち1つの分包袋の錠剤を修正した場合に、この修正した分包袋の錠剤を記録するための再撮影が、ユーザの指定動作により効率よく実行される。
【0045】
前記再撮影制御部は、前記指定された分包袋の撮影の後、前記搬送装置に前記分包袋群を元の位置へ搬送させてもよい。搬送装置は、例えば、指定された分包袋を撮影位置に搬送するのに要した移動量と同じ移動量だけ逆方向に搬送させることで、前記分包袋群を元の位置へ搬送することができる。
【0046】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像における分包袋の境界の位置を検出する境界検出部と、を備える。前記境界検出部は、前記分包袋群の画像における薬剤領域及び分包袋の印字領域を決定し、前記薬剤領域及び印字領域を除く領域に対して前記分包袋の境界の位置を検出する。これにより、分包袋の境界を精度よく検出することができる。
【0047】
前記鑑査装置は、撮影装置から見て前記分包袋群の背面から光を照射する背面照明を備えてもよい。前記境界検出部は、前記背面照明の背面からの光が照射された前記分包袋群の画像に基づき、前記薬剤領域及び前記印字領域を決定してもよい。これにより、薬剤領域及び印字領域を精度よく決定できる。また、鑑査装置は、撮影装置から見て前記分包袋群の正面から光を照射する正面照明を備えてもよい。前記境界検出部は、前記正面照明の正面からの光が照射された前記分包袋群の画像において、前記薬剤領域及び前記印字領域を除く領域に対して、分包袋の境界の位置を検出してもよい。
【0048】
前記鑑査装置は、前記境界検出部で検出された分包袋の境界の位置に基づき、前記搬送装置を制御してもよい。例えば、境界検出部で検出された1つの分包袋の上流側及び下流側の境界の両方が撮影装置の撮影範囲に入る位置に分包袋を搬送するように搬送装置が制御されてもよい。
【0049】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記搬送装置で搬送される前記分包袋群を、搬送方向に交差する線に沿って切断する切断部と、を備える。鑑査装置に切断部を設けることで、分包袋の薬剤の鑑査とともに、鑑査の対象となる薬剤の分包袋群を切断することができる。
【0050】
前記鑑査装置は、前記分包袋群の前記薬剤の処方データを取得し、処方データに基づいて、分包袋群の切断箇所を決定する切断箇所決定部を有してもよい。この場合、鑑査装置は、決定された分包袋群の切断箇所を切断部に搬送するよう前記搬送装置を制御し、前記切断部に前記切断箇所を切断させてもよい。これにより、処方に基づいて分包袋を切断できる。例えば、分包袋群が複数の処方による薬剤を内包する場合、1つの処方の分包袋と他の処方の分包袋の間を切断部で切断することができる。
【0051】
切断箇所決定部は、例えば、鑑査装置の撮影装置又は他の読み取り装置により分包袋群から読み取られたデータにより処方データを取得してもよい。又は、切断箇所決定部は、鑑査部の鑑査処理に用いられる処方データ或いはユーザから入力された処方データを取得してもよい。処方データは、処方に関するデータであり、特に限定されないが、例えば、処方の内容を示すデータでもよいし、又は、処方と処方の分かれ目の分包袋、又は切断すべき分包袋を示すデータであってもよい。
【0052】
切断部は、一対の切断刃を有してもよい。例えば、切断部は、固定刃と移動刃を有してもよい。一対の切断刃は、刃が搬送装置による分包袋群の搬送方向に対して交差する状態で、互いに接近及び離間できるよう支持される。一対の切断刃が離間した状態では、一対の切断刃の間に分包袋群の搬送経路が通る。例えば、固定刃は、分包袋群の搬送経路に固定される。移動刃は、固定刃に対して移動可能に支持される。移動刃は、固定刃と重なった状態と、固定刃から離間した状態の間で移動可能に構成される。移動刃が固定刃から離間した状態では、移動刃と固定刃の間に分包袋群の搬送経路が位置する。
【0053】
切断部は、移動刃を固定刃に対して移動させる駆動装置を有してもよい。駆動装置は、例えば、モータ等の駆動源と、駆動源の駆動力を移動刃に伝達する伝達機構を含んでもよい。伝達機構は、遮断機構を含んでもよい。遮断機構は、駆動源の動きによる移動刃の移動に対して抵抗が加わった場合に、駆動源から移動刃への駆動力の伝達経路を遮断するよう構成される。これにより、分包袋に内包される薬剤に移動刃が当たった場合に、移動刃の移動を止めることができる。そのため、例えば、誤って薬剤を内包する分包袋を切断することを防ぐことができる。遮断機構は、例えば、抵抗検知時に伝達経路を遮断するクラッチ又はブレーキであってもよい。又は、遮断機構は、抵抗を検知した場合に駆動源の動作を停止する制御機構であってもよい。抵抗の検知は、例えば、駆動源を制御する電流又は電圧に基づき行われてもよい。
【0054】
本発明の他の実施形態における鑑査装置は、薬剤を内包する分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記分包袋群の搬送経路の前記撮影装置の撮影範囲より下流において、前記搬送経路上の分包袋群を押圧して前記分包袋群に内包される薬剤を粉砕する粉砕装置と、を備える。これにより、鑑査の対象となった薬剤を撮影した後に、分包袋に内包された状態で粉砕することができる。例えば、粉砕前の分包袋群の薬剤を撮影装置で撮影して鑑査部により鑑査処理を実行するとともに、撮影が終わった薬剤を分包袋の上から粉砕装置で粉砕することができる。
【0055】
前記鑑査装置は、前記分包袋群の前記薬剤の処方データを取得し、処方データに基づいて、分包袋群のうち粉砕対象の分包袋を決定する粉砕対象決定部を有してもよい。この場合、鑑査装置は、粉砕対象に決定された分包袋を前記粉砕装置の粉砕位置に搬送するよう前記搬送装置を制御し、前記粉砕装置に前記粉砕対象の分包袋が内包する薬剤を分包袋の上から押圧させ、薬剤を粉砕させてもよい。これにより、処方に基づいて分包袋の薬剤を分包袋内で粉砕できる。
【0056】
粉砕対象決定部は、例えば、鑑査装置の撮影装置又は他の読み取り装置により分包袋群から読み取られたデータにより処方データを取得してもよい。又は、粉砕対象決定部は、鑑査部の鑑査処理に用いられる処方データを取得してもよい。処方データは、処方に関するデータであり、特に限定されないが、例えば、処方の内容を示すデータでもよいし、又は、粉砕対象の薬剤が内包された分包袋を示すデータであってもよい。また、粉砕対象決定部は、鑑査部による鑑査結果に基づいて粉砕対象の分包袋を決定してもよい。例えば、粉砕対象決定部は、処方データに基づく判断に加えて、鑑査部でNG(処方通りでない)と判断された分包袋は粉砕対象とせず、鑑査部でOK(処方通り)と判断された分包袋は粉砕対象とするよう決定してもよい。
【0057】
鑑査装置は、粉砕装置により粉砕された薬剤を内包する分包袋を撮影装置の撮影範囲へ搬送するよう搬送装置を制御し、粉砕された薬剤を内包する分包袋を撮影装置に撮影させる粉砕後薬剤撮影部をさらに有してもよい。
【0058】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0059】
(実施形態1)
図1は、本実施形態における錠剤鑑査システムの構成例を示す機能ブロック図である。図1に示す錠剤鑑査システム10は、処方に基づいて払い出された錠剤が、処方通りか否かを鑑査するシステムである。錠剤鑑査システム10は、錠剤を撮影する撮影装置21から対象画像を取得し、対象画像において認識される錠剤が処方通りか否かを判定する。錠剤鑑査システム10は、撮影装置21を備える鑑査装置に内蔵又は接続されたコンピュータにより実装される。錠剤鑑査システム10は、マスタ画像を記録した記録部11にアクセス可能である。
【0060】
図1に示す例では、鑑査装置は、撮影装置21及び搬送装置22を備える。搬送装置22は、錠剤を内包した分包袋群Pを搬送する。撮影装置21は、搬送装置22により搬送される分包袋群Pを撮影する。また、図1に示すように、鑑査装置は、ディスプレイ23及び入力装置24を備えてもよい。錠剤鑑査システム10は、ディスプレイ23に判定結果を表示させることができる。錠剤鑑査システム10は、入力装置24を介して、ユーザから入力を受け付けることができる。入力装置24は、例えば、ディスプレイ23のタッチパネル、キーボード、マウス、ボタン又はその他の操作子の少なくとも1つで構成されてもよい。
【0061】
錠剤鑑査システム10は、画像取得部1、錠剤認識部2、処方判定部3、及び出力部4を備える。錠剤認識部2及び処方判定部3は、処方に基づいて払い出された錠剤の撮影に得られる画像を用いて、錠剤が処方通りか否かを鑑査する鑑査部(鑑査処理部)を構成する。画像取得部1は、撮影装置21が錠剤を撮影して得た対象画像を取得する。画像取得部1は、対象画像のデータを、錠剤鑑査システム10のコンピュータで利用可能な状態にする。画像取得部1は、例えば、撮影装置21から対象画像のデータを受け取り、コンピュータのメモリに格納する。図1の例では、搬送装置22で搬送される分包袋群の各々を、撮影装置21が撮影する。画像取得部1は、分包袋毎に対象画像を取得する。
【0062】
錠剤認識部2は、マスタデータを用いて、対象画像に含まれる錠剤を認識する。マスタデータは、予め記録部11に記録される。錠剤認識部2は、鑑査対象の錠剤(すなわち処方される錠剤)のマスタデータを用いて、対象画像に含まれる錠剤を認識してもよい。マスタデータは、鑑査対象となる錠剤の各々について、認識するための条件を示す情報を含む。錠剤認識部2は、鑑査対象の処方に含まれる錠剤のマスタデータを取得する。マスタデータは、例えば、錠剤のマスタ画像であってもよい。マスタ画像には、例えば、錠剤の形状、大きさ、色、刻印、識別コード及び印字の少なくとも1つの情報が含まれる。また、1つの錠剤を異なる方向からみた複数のマスタ画像がマスタデータに含まれてもよい。
【0063】
錠剤認識部2は、対象画像において、マスタデータを示す条件に合致する領域を、そのマスタデータが示す錠剤と認識する。例えば、錠剤認識部2は、対象画像に対して、マスタ画像を用いてマッチング処理を実行し、マスタ画像に合致する領域を検出した場合、そのマスタ画像の錠剤が存在することを決定する。
【0064】
錠剤認識部2は、対象画像において、マスタデータに合致すると判断された領域以外の不明領域において、錠剤と認識するか否かの追加判断を実行する。不明領域は、錠剤である可能性があると判断される領域であるが、マスタデータには合致しない領域である。錠剤である可能性があると判断される領域は、例えば、対象画像において錠剤候補領域として抽出された領域である。錠剤認識部2は、この錠剤候補領域を抽出する処理と、抽出した錠剤候補領域がマスタデータに合致するか否かを判断する処理を実行することができる。この場合、錠剤候補領域において、マスタデータに合致しないと判断された領域が不明領域となる。なお、錠剤候補領域が全てマスタデータに合致し、不明領域がない場合は、錠剤認識部2は、追加判断を実行しなくてもよい。
【0065】
錠剤候補領域の抽出処理は、例えば、対象画像におけるエッジを検出する処理、及び、エッジに囲まれる領域(エッジ包囲領域)を基に、画像処理を実行して錠剤候補領域を決定する処理を含んでもよい。例えば、エッジ包囲領域を錠剤候補領域と決定されてもよい。或いは、エッジ包囲領域から、錠剤条件を満たす特徴を有する部分を抽出する、又は、錠剤でない条件を満たす特徴を有する部分を除外した領域が、錠剤候補領域と決定されてもよい。
【0066】
追加判断において、錠剤認識部2は、不明領域が、予め決められた条件を満たすか否かによってその不明領域を錠剤と認識するか否かを判断することができる。例えば、錠剤認識部2は、不明領域の色、形状及び面積(大きさ)の少なくとも1つに基づいて、追加判断を行うことができる。一例として、不明領域の色がマスタデータで示される錠剤の色と合致し、且つ、不明領域の面積又は形状等の特徴が錠剤の条件を満たす場合に、その不明領域が錠剤であると認識されてもよい。この場合、不明領域を錠剤と認識するための条件は、マスタデータに基づいて決定されてもよい。
【0067】
このように、錠剤認識部2は、マスタデータを用いて対象画像における錠剤を認識する。これにより、錠剤認識部2は、対象画像における錠剤の数量又は薬種の少なくとも1つを決定することができる。
【0068】
処方判定部3は、錠剤認識部2で認識された錠剤が、処方通りが否かを判定する。処方判定部3は、認識された錠剤を、処方データが示す錠剤と照合することにより、この判定を実行する。処方データは、予め記録部11に記録される。処方データは、処方された錠剤の数量及び薬種を少なくとも1つを示すデータである。処方データは、各対象画像(一例として各服用回(各分包袋))における処方された錠剤の数量及び薬種の少なくとも1つを示す情報を含んでもよい。処方判定部3は、認識された錠剤の数量又は薬種のいずれか、若しくはこれら両方を、処方データと照合する。処方判定部3は、錠剤の数量が処方通りか否かを判定してもよいし、錠剤の数量及び薬種の両方が処方通りか否かを判定してもよい。または、処方判定部3が、錠剤の数量のみを判定するか、又は、数量及び薬種を判定するかを、ユーザが選択可能であってもよい。
【0069】
出力部4は、処方判定部3の判定結果を出力する。図1の例では、出力部4は、ディスプレイ23の表示を制御する表示制御部を含む。この場合、出力部4は、処方判定部3の判定結果として、対象画像の錠剤が処方通りか否かを示す情報を、ディスプレイ23に表示させる。出力部4は、各分包袋すなわち各対象画像の判定結果を、対象画像とともに、ディスプレイ23に表示させてもよい。出力部4は、各対象画像における錠剤認識部2の認識結果を表示してもよい。この場合、各対象画像において、マスタデータに合致すると判断された錠剤と、追加判断で認識された錠剤とが、互いに区別可能な態様で、表示されてもよい。なお、出力部4は、ディスプレイ23への画像を表示させる形態に限られない。例えば、出力部4は、スピーカ等に音声を出力させてもよいし、記録媒体へデータを記録又は、他のシステムへデータ送信することで、判定結果を出力してもよい。
【0070】
錠剤鑑査システム10は、1又は複数のコンピュータで構成することができる。画像取得部1、錠剤認識部2、処方判定部3、及び出力部4の各処理は、コンピュータのプロセッサがメモリに記録された所定のプログラムを実行することで実現することができる。これらの各処理を、プロセッサに実行させるためのプログラム及びそれを記録した非一時的(non-transitory)な記録媒体も、本発明の実施形態に含まれる。記録部11は、コンピュータがアクセス可能なメモリ又はストレージで構成されてもよい。なお、錠剤鑑査システム10は、さらに機能部を有してもよい。例えば、錠剤鑑査システム10を構成するコンピュータは、撮影装置21及び搬送装置22を制御するコントローラとして機能してもよい。
【0071】
図2は、図1に示す錠剤鑑査システム10の動作例を示すフローチャートである。図3は、図2におけるS7の追加処理の例を示すフローチャートである。図2において、錠剤鑑査システム10は、鑑査対象の錠剤の処方を示す処方データを取得する(S1)。処方データは。例えば、分包袋に付された情報を、鑑査装置が備える撮影装置21又はその他の読み取り機(例えば、バーコードリーダ、ICタグリーダ等)が読み取ることで取得されてもよいし、錠剤鑑査システムが、他のシステム(例えば、分包機、処方システム等)から取得してもよい。取得された処方データは、例えば、記録部11に記録されてもよい。
【0072】
錠剤鑑査システム10は、鑑査対象の錠剤のマスタデータを取得する(S2)。処方データで示される錠剤のマスタデータが取得される。マスタデータは、例えば、記録部11に記録される。一例として、マスタデータは、処方される錠剤のマスタ画像であってもよい。
【0073】
画像取得部1は、撮影装置21で撮影された対象画像を取得する(S3)。対象画像は、例えば、1つの分包袋の撮影で得られた画像であってもよい。また、画像取得部1は、撮影装置21で撮影された画像を加工したものを対象画像として取得してもよい。図4は、対象画像の一例を示す図である。図4の例では、2錠の長型薬剤(カプセル剤)、5錠の円板型薬剤、及び、半錠の円板型薬剤が写っている。
【0074】
錠剤認識部2は、対象画像中の錠剤候補領域を抽出する(S4)。これにより、対象画像において、錠剤の可能性があると判断される領域が抽出される。錠剤認識部2は、例えば、対象画像に対して、エッジ抽出処理を実行する。錠剤認識部2は、エッジで囲まれる領域において、形状、色、大きさ等の特徴が所定の条件を満たす領域を、錠剤候補領域に決定することができる。図5は、図4に示す対象画像において、抽出された錠剤候補領域の例を示す図である。図5において、黒の部分が、抽出された錠剤候補領域である。
【0075】
錠剤認識部2は、錠剤候補領域において、マスタデータと合致する領域を決定する。マスタデータと合致する領域は、そのマスタデータが示す錠剤であると認識される。錠剤認識部2は、例えば、錠剤候補領域において、マスタデータをモデル(テンプレート)として用いてマッチング処理を実行することで、マスタデータに合致する領域を検出することができる。
【0076】
図6は、図5に示す錠剤候補領域において、マスタデータに合致すると判断される領域E1、E2、及び、不明領域F1~F3の例を示す図である。図6において、領域E1は、長型薬剤(カプセル剤)の「BBB錠」のマスタデータに合致する領域であり、領域E2は、円板型薬剤の「AAA錠」のマスタデータに合致する領域である。
【0077】
錠剤認識部2は、錠剤候補領域において、マスタデータと合致しない不明領域があるか否かを判断する(S6)。不明領域は、錠剤の可能性があると判断される領域であって錠剤の可能性があると判断される領域である。不明領域がある場合(S6でYES)、錠剤認識部2は、不明領域について、錠剤と認識するか否かの追加判断を実行する(S7)。S7では、例えば、不明領域の色、形状、面積(大きさ)等の特徴が、錠剤と判断するための条件を満たすか否かが判断される。不明領域の特徴が上記条件を満たす場合、不明領域は錠剤と認識される。追加判断の例については、後述する。不明領域がない場合(S6でNO)、例えば、錠剤候補領域の全てがマスタデータに合致する場合は、追加判断処理は実行されない。
【0078】
S6において、錠剤認識部2は、マスタデータを用いて認識された錠剤の数が、処方データが示す錠剤の数と一致しているか否かを判断してもよい。一例として、錠剤認識部2は、認識された錠剤の数が処方と一致しない場合であって、且つ、不明領域がある場合に、S7の追加判断を実行してもよい。
【0079】
処方判定部3は、錠剤認識部2が認識した錠剤が、処方通りか否かを判定し、判定結果を出力する(S8)。S8において、処方判定部3は、S1で取得した処方データと、S5及びS7で認識した錠剤のデータとを照合する。錠剤認識部2で認識された錠剤の数量又は薬種の少なくとも1つが、処方データが示す錠剤の情報と一致するか否かが判定される。これらが一致する場合に、対象画像で認識された錠剤が処方通りであると判定される。出力部4は、処方判定部3の判定結果をディスプレイ23に表示させる。
【0080】
S3~S8の処理は、鑑査対象の処方に含まれる分包袋、すなわち対象画像について実行される。処方される錠剤は、服用回ごと分包袋に分包される。処方される錠剤は、複数の分包袋群に分包される。この場合、1回の処方における分包袋群のそれぞれについて、S3~S8の処理が実行される。S3~S8の処理は、1回の処方に含まれる分包袋群の数だけ繰り返される。図2の例では、次の対象画像がない(S9でNO)と判断されるまで、S3~S8が繰り返される。具体例として、搬送装置22が、1つの分包袋を撮影位置に搬送し、撮影装置21がその分包袋を撮影する動作が、順次、行われる。順次撮影される画像を、対象画像として、画像取得部1が取得し、それぞれの対象画像について、S3~S8の処理が実行される。なお、複数の処方の分包袋群が連続して撮影される場合は、複数の処方について、図2のS1~S8の処理が繰り返される。
【0081】
図3を参照し、図2のS7における追加判断処理の例を説明する。図3の例では、錠剤認識部2は、対象画像において、追加判断の対象とする不明領域を選択する(S7-1)。例えば、図6に示すように、対象画像に複数の不明領域F1~F3がある場合、これらが順次選択され、それぞれについて追加判断処理が実行される。
【0082】
錠剤認識部2は、追加判断の対象とする錠剤のマスタデータを選択する(S7-2)。処方データが示す処方薬剤に複数の錠剤が含まれる場合、複数の錠剤が順次選択され、それぞれについて追加判断処理が実行される。
【0083】
錠剤認識部2は、S7-1で選択した不明領域の色と、S7-2で選択したマスタデータが示す錠剤の色とを照合し、一致するか否かを判断する(S7-3)。例えば、不明領域の画素の色(画素値)と、マスタデータが示す錠剤の色(画素値)との相違度合が所定範囲内である場合に、これらの色が一致すると判断される。
【0084】
不明領域の色がマスタデータと一致し(S7-3でYES)、且つ、不明領域が合成マスタデータに合致する場合(S7-4でYES)、錠剤認識部2は、不明領域を錠剤と認識する(S7-9)。一例として、合成マスタデータは、マスタデータが示す錠剤の平面視形状を示す横マスタと、側面視形状を示す縦マスタ画像とを合成した合成マスタ画像とすることができる。
【0085】
図7は、合成マスタデータと不明領域とを照合する例を説明するための図である。図7の例では、円板型薬剤の錠剤の縦マスタM11と横マスタM12を合成した合成マスタG1が、不明領域F1に合致するか否か判断される。合成マスタG1は、一例として、縦マスタM11の一部に横マスタM12の一部を重ねて、圧縮した形状である。錠剤認識部2は、合成マスタG1をモデルとして、不明領域F1に対してマッチング処理を実行するにより、合致するか否かを判断することができる。
【0086】
なお、合成マスタデータの態様は、図7の例に限られない。例えば、合成マスタデータは、縦マスタより大きく、横マスタより小さい面積の範囲を示すデータとしてもよい。この場合、錠剤認識部2は、不明領域F1の面積S1が、合成マスタデータが示す面積範囲(縦マスタ面積<S1<横マスタ面積)である場合に、合成マスタデータに合致すると判断することができる。
【0087】
図3のS7-4において、不明領域が合成マスタに合致しない(NO)と判断された場合、錠剤認識部2は、不明領域が錠剤領域を連続しているか判断する(S7-5)。錠剤領域は、S5において、マスタデータに合致すると判断された領域である。不明領域が錠剤領域と連続しており、且つ、不明領域の面積が、錠剤と判断するための条件を満たす場合(S7-6でYES)、不明領域は錠剤と認識される(S7-9)。S7-6の条件は、例えば、マスタデータが示す錠剤の面積に基づく条件であってもよい。
【0088】
図8は、S7-5、S7-6の判断の例を説明するための図である。図8の例では、不明領域F2は、マスタデータに合致する錠剤領域E2と連続している。このように、2つの領域が連続する状態は、2つの領域が接している状態である。例えば、錠剤認識部2は、錠剤領域と不明領域の間の距離が0又は閾値以下の場合に、これら2つの領域が連続していると判断することができる。錠剤認識部2は、例えば、錠剤領域E2と連続する不明領域F2の面積が、錠剤領域E2で認識された錠剤のマスタデータを基準とする条件を満たす場合に、不明領域F2が、そのマスタデータの錠剤であると認識することができる。この場合、条件は、例えば、マスタデータの示す錠剤の面積、輪郭形状、又は直径を基準とする条件とすることができる。一例として、錠剤認識部2は、不明領域F2の面積Sが、錠剤の縦マスタの面積より大きく、横マスタの面積より小さい(縦マスタ面積<S1<横マスタ面積)場合に、不明領域F2をその錠剤と判断してもよい。
【0089】
図3のS7-5において、不明領域が錠剤領域と連続していない(NO)と判断された場合、錠剤認識部2は、マスタデータが示す錠剤の半錠に対する不明領域の過不足が条件を満たすか否かを判断する(S7-7)。S7-7では、錠剤認識部2は、不明領域とマスタデータが示す錠剤の半錠とを照合し、不明領域の半錠に対する過不足を検出する。過不足が条件を満たす場合に、錠剤認識部2は、その不明領域を半錠の錠剤であると認識する。例えば、不明領域の形状と半錠の形状の一致度合いが所定レベル以上であり、過不足の面積が半錠の面積より所定程度小さい場合に、その不明領域は半錠と認識される。
【0090】
図9は、S7-7の判断の例を説明するための図である。図9の例では、不明領域F3の形状と、マスタデータの錠剤の半錠M2hの形状との一致度合いが所定レベル以上であり、且つ、半錠M2hに対する不明領域F3の過不足部分F3nの面積の半錠の面積に対する割合が、閾値(例えば、50%)以下である。この閾値は、予め設定されてもよいし、ユーザによって設定可能であってもよい。半錠M2hは、分割錠剤の一例である。半錠M2hは、マスタデータで示される円板型の錠剤「CCC錠」を半分に分割した形状である。半錠M2hの形状を示すデータは、マスタデータを基に自動生成することができる。或いは、予め、分割した錠剤、例えば、半錠の錠剤のマスタデータが準備され、記録部11に記録されてもよい。
【0091】
なお、追加判断の処理は、図3に示す例に限られない。図3では、合成マスタを用いた判断(S7-4)、錠剤領域に連続する不明領域の判断(S7-5、S7-6)、及び、分割錠剤に対する不明領域の過不足の判断(S7-7)の3つの判断が、順に実行される。これらの3つの判断の順番は変わってもよい。また、3つの判断のうち少なくとも1つが省略されもよいし、さらに、他の判断が実行されてもよい。
【0092】
図10は、図2のS8で出力される処方判定部の判定結果の画面の例を示す図である。図10の例では、1つの分包袋(対象画像)に対する判定結果、すなわち、鑑査対象の処方の1回の服用における錠剤の判定結果が表示される。画面には、処方情報H1、処方における何番目の分包袋かを示す情報H2、処方判定結果H3、対象画像J1、操作ボタンB1~B3が含まれる。対象画像J1において、不明領域に対する追加判断で錠剤と判断された領域が、点線で囲まれ、これらの領域が確認できる態様で表示される。これにより、マスタデータに合致すると判断されて認識された錠剤と、追加判断で認識された錠剤とが区別可能に表示される。なお、出力部4が、マスタデータに合致する錠剤と、追加判断で認識された錠剤とを、区別可能な形態に出力する態様は、この例に限られない。例えば、処方判定結果H3に、追加判断で認識された錠剤であるか否かを示す情報が表示されてもよい。
【0093】
図10の対象画像J1では、斜めに傾いた錠剤、他の錠剤に重なった錠剤、及び、半錠に過不足がある錠剤の領域が錠剤として認識され、処方判定がなされている。これは、錠剤鑑査システム10では、対象画像において、マスタデータに合致しないが、錠剤である可能性がある不明領域について追加判断が実行されるためである。このように、本実施形態では、マスタデータのみでは認識が難しい領域に対して錠剤の認識が可能になる。そのため、従来は不明領域であるために処方判定結果としてはNGと出力される状態の錠剤であっても、本実施形態では、錠剤を認識、正しい処方判定結果を出力することが可能になる。これにより、正しい錠剤がNGと判定する偽NG判定が発生しにくくなる。すなわち、判定の精度が向上する。また、本実施形態によれば、処方判定部3が、錠剤の数量が処方通りか否かを判定する場合において、特に、判定精度を高めることができる。
【0094】
本実施形態は、服用時期(一回の服用分)ごとに分包袋に分包された錠剤を撮影して得られる対象画像に対して、錠剤認識及び処方判定の処理が実行される。本実施形態の錠剤認識及び処方判定は、分包袋に分包された錠剤の対象画像に限られない。例えば、分包前の錠剤の対象画像に対して、本実施形態の錠剤認識及び処方判定が行われてもよい。例えば、処方に基づいて錠剤を払い出す分包機における鑑査システムに、本実施形態の鑑査システムを適用することができる。
【0095】
(鑑査結果表示の例)
図10の例のように、出力部4(表示制御部)は、各対象画像の鑑査結果(処方判定結果)を、処方ごとに区別可能な態様で画面に表示することができる。この場合、表示制御部は、1つの処方に含まれる複数の対象画像(分包袋)の各々の鑑査結果を、ユーザ操作に応じて画面を切り替えながら表示してもよい。一例として、図10の画面では、ボタンセットB1に、処方の先頭の対象画像(分包袋)を表示、1つ前の分包袋を表示、次の分包袋を表示、及び、処方の最後の分包袋を表示、をそれぞれ指示するためのユーザインタフェース(UI、一例としてボタン)が含まれる。また、図10に示すように、各対象画像の表示画面に、ユーザが目視確認の結果を入力するためのUI(ボタンB3)が含まれてもよい。なお、図10の例では、1つの処方における複数の対象画像を一覧表示させる、又は、鑑査対象の複数の処方を一覧表示させるUIであるメニューボタンB2が画面に含まれる。
【0096】
表示制御部は、1つの処方における各対象画像の鑑査結果の表示が終了した後、処方選択を受け付けるメニュー画面を経由せずに、次の処方の各画像の鑑査結果の表示を開始してもよい。例えば、図10の例では、処方の最後の対象画像(処方における全9枚の対象画像中の9番目の対象画像)が表示される。この状態で、ユーザが、対象画像の表示を終了させる操作(例えば、次の対象画像を表示させる操作、又は、目視確認結果を入力する操作等)を行った場合、表示制御部は、メニュー画面に戻らず、次の処方の対象画像をディスプレイ23に表示させてもよい。これにより、ユーザは、次の処方を選択する操作を省くことができる。なお、表示制御部は、メニュー画面を表示せずに、次の処方の鑑査結果を表示する場合、その旨のメッセージをディスプレイ23に表示させ、ユーザからの確認入力を受け付けてから、次の処方の鑑査結果を表示させてもよい。
【0097】
(実施形態2)
図11は、本実施形態における錠剤鑑査システム10a及び、類似錠剤データ提供システム30の構成例を示す機能ブロック図である。図11に示す錠剤鑑査システム10aは、処方判定部3が、類似判定部を含む点で、図1に示す錠剤鑑査システム10と異なっている。
【0098】
類似判定部は、処方された錠剤に類似する類似錠剤があるか否かを判定する。類似判定部は、錠剤間の類似関係を示す類似錠剤データを用いて、類似錠剤の有無を判定する。例えば、類似判定部は、処方に含まれる錠剤に類似する類似錠剤を、類似錠剤データにより特定してもよい。出力部4は、処方判定結果とともに、類似判定部により特定された類似錠剤の情報を出力してもよい。
【0099】
或いは、錠剤認識部2は、処方に含まれる錠剤と、これに類似する類似錠剤のマスタデータを用いて、対象画像における錠剤を認識することができる。これにより、錠剤認識部2は、対象画像において、マスタデータが示す類似錠剤に類似する錠剤及びその類似度を検出することができる。類似判定部は、検出された類似錠剤又はその類似度に基づいて、類似錠剤の有無を判断する。出力部4は、処方判定結果とともに、類似判定部により判断結果を出力してもよい。
【0100】
類似錠剤データ提供システム30は、錠剤鑑査システム10aに、類似錠剤データを提供する。類似錠剤データ提供システム30は、記録部12にアクセス可能である。記録部12には、全ての錠剤のマスタデータ、及び、全ての錠剤の間の類似関係を示す全類似錠剤データが記録される。ここで、全ての錠剤は、サポート対象の錠剤鑑査システムにおいて鑑査の対象となり得る錠剤である。すなわち、全ての錠剤は、サポート対象の錠剤鑑査システムに提供する可能性のある全ての錠剤である。
【0101】
類似錠剤データ提供システム30は、類似錠剤データ生成部31と、抽出部32を備える。類似錠剤データ生成部31は、全ての錠剤のマスタデータを用いて、全ての錠剤間の類似関係を判定し、その判定結果に応じた全類似錠剤データを生成する。全類似錠剤データ生成部31は、例えば、第1の錠剤のマスタデータと第2の錠剤のマスタデータとを照合し、類似度を算出することで、これらの錠剤間の類似判定をすることができる。
【0102】
図12は、全類似錠剤データの例を示す図である。図12の全類似錠剤データには、全ての錠剤(薬剤1~N)の各々の錠剤と、他の錠剤との類似関係を示すデータが含まれる。図12の例では、類似関係は、類似(1)か非類似(0)を示す値で記録される。類似関係を示すデータは、この例に限られない。例えば、類似度を示す値が、全類似錠剤データに含まれてもよい。
【0103】
図12に示す例では、各錠剤を識別する識別データとして、錠剤のYJコードと、錠剤のマスタデータから生成されるハッシュ値の組み合わせが用いられる。ハッシュ値は、例えば、錠剤のマスタ画像から生成されるハッシュ値であってもよい。ハッシュ値の生成に用いるハッシュ関数は特に限定されないが、例えば、md5等を用いることができる。YJコードとハッシュ値の組み合わせにより、錠剤を識別することで、YJコードの改正に対応できる。
【0104】
抽出部32は、全類似錠剤データから、錠剤鑑査システム30aに提供しようとするマスタデータの錠剤に類似する類似錠剤を示す類似錠剤データを抽出し、錠剤鑑査システム30aに提供する。抽出部32は、類似錠剤データに加えて、類似錠剤データで示される類似錠剤のマスタデータを抽出し、錠剤鑑査システム30aに提供してもよい。例えば、錠剤鑑査システム30aの鑑査対象の錠剤に、新たな錠剤が追加される場合、新たな錠剤のマスタデータが、錠剤鑑査システム30aからアクセス可能な記録部11に追加される。この際に、抽出部は、新たな錠剤に類似する類似錠剤の類似錠剤データ、及びその類似錠剤のマスタデータを記録部12から抽出し、錠剤鑑査システム30aの記録部11へ追加することができる。
【0105】
本実施形態では、類似錠剤データ提供システム30において、予め実行された類似判定の結果として全類似錠剤データが記録部12に保存される。錠剤鑑査システム10に、新たな錠剤のマスタデータを提供する際に、抽出部32は、全類似錠剤データから抽出した新たな錠剤に類似する類似錠剤を示す類似錠剤データを、錠剤鑑査システム10に提供することができる。これにより、新たな錠剤のマスタデータの提供時に、類似判定処理を実行しなくて済む。そのため、マスタデータ提供時に類似判定処理に費やす時間を節約することができる。
【0106】
(実施形態3)
図13は、本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。鑑査装置20は、撮影装置21、搬送装置22、鑑査部(鑑査処理部)25、及び、受け板26を備える。搬送装置22は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する。撮影装置21は、搬送装置22により搬送される分包袋群Pを撮影する。鑑査部25は、撮影装置21により撮影された分包袋群の画像を用いて、分包袋群Pのそれぞれに内包される薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する。
【0107】
鑑査部25は、コンピュータにより構成される。鑑査部25のコンピュータにより、撮影装置21及び搬送装置22が制御されてもよい。鑑査装置20は、ディスプレイ23及び入力装置を備えてもよい。鑑査部25は、これらに限定されないが、例えば、図1又は図11に示す錠剤鑑査システム10、10aと同様に構成することができる。
【0108】
受け板26は、搬送装置22の下流から送出される分包袋群を受ける。受け板26は、搬送装置22から送出された分包袋群Pを下方で受ける第1位置と、分包袋群Pを受けずにさらに下方へ流れるのを許容する第2位置との間で、移動可能に構成される。
【0109】
図14は、受け板26が第1位置にある状態を示し、図15は、受け板26が第2位置にある状態を示す。本例では、搬送装置22は筐体28に収容される。筐体28の搬送装置22の下流に相当する部分には、分包袋群Pが送出される送出口28aが設けられる。送出口28aよりも下方に受け板26が配置される。受け板26は、筐体28から下方に延びる壁に対して、水平方向の軸を中心として回転可能に取り付けられる。受け板26は、この軸を中心に回転することで、第1位置と第2位置の間を移動する。受け板26は、第1位置において、上方から見て、送出口28aの全体と重なる。第1位置の受け板26の上面が、送出口28aから送出される分包袋群Pを受ける面となる。受け板26は、第2位置において、上から見て送出口28aの全体と重ならない。そのため、送出口28aから送出された分包袋群Pは、第2位置の受け板26には接触せずに受け板26より下方へ流れる。
【0110】
受け板26が第1位置にある場合、搬送装置22から送出された分包袋群Pは、受け板26で溜まる。この場合、ユーザは、比較的高い位置で分包袋群Pを回収できる。そのため、分包袋群Pを回収するためにかがまなくてもよくなる。受け板26が第2位置にある場合、分包袋群Pは、受け板26より下方へ流れ、例えば、下方に置かれたカゴKに入る。ユーザは、カゴに入った分包袋群Pを回収するためには、かがむ必要がある。ユーザは、受け板26の位置を切り替えることにより、分包袋群Pの溜まる高さを切り替えることができる。
【0111】
受け板26の位置(第1位置又は第2位置の少なくとも一方の位置)を検出するセンサ(受け板位置センサの一例、図示略)が設けられてもよい。このセンサは、例えば、光又は誘導電力により、受け板26に取り付けられたドグの位置を検出するドグセンサで構成されてもよい。鑑査装置20は、このセンサで検出された受け板26の位置を示す情報、又は受け板26の位置に基づくユーザへの操作指示を、ディスプレイ23に表示してもよい。
【0112】
鑑査装置20は、鑑査対象の処方情報に基づいて、受け板26の位置の移動を指示する情報を出力することができる。例えば、鑑査対象の処方が、単独で少量の処方(例えば、分包袋数が63包以下)の場合は、鑑査装置20は、受け板26を第1位置に移動する指示を出力してもよい。また、鑑査対象の処方の量が閾値以上(例えば、単独の処方又は、連続する複数の処方で、分包袋数が64包以上)の場合は、受け板26を、第2位置に移動する指示を出力してもよい。また、鑑査装置20は、鑑査対象の処方情報に加えて、センサで検出される受け板26の位置に基づいて、出力する情報を制御してもよい。
【0113】
図13図15に示す例では、鑑査装置20には、搬送装置22から送出された分包袋群Pを下方へ導くガイド27が設けられる。ガイド27は、送出口28aに対向する位置から下方に延びる壁である。ガイド27は、送出口28aから下方へ延びるダクトを形成する。
【0114】
図16図18は、本実施形態における受け板の変形例を示す図である。図16は、受け板26aが第1位置にある状態を示し、図17は、受け板26aが第2位置にある状態を示す。図18は、受け板26aの構成を示す斜視図である。図18に示すように、受け板26aは、溝型に形成される。受け板26aは、底部26a1と、底部26a1の両端からそれぞれ延びる2つの側壁26a2とを有する。2つの側壁26a2は、互いに対向する位置に設けられる。受け板26aは、これらの2つの側壁26a2を貫く方向の軸を中心に回転可能に支持される。第1位置の受け板26aの底部26a1は、搬送装置22から送出された分包袋群Pを受ける位置に配置される。第2位置の受け板26aの底部26a1と側壁26a2で囲まれる空間の下方が開口するように、受け板が形成される。すなわち、受け板26aが形成する溝の延びる方向の両端のうち、第2位置で下になる方の端は、溝が下方に開口する形状になっている。これにより、第1位置の受け板26aは、送出される分包袋群Pを受ける上方に開口した容器となる。第2位置の受け板26aは、分包袋群Pを下方へ導くダクトとなる。
【0115】
図16に示す例では、受け板26aで受けられた分包袋群Pを検出するセンサ209(受け分包袋群検出センサの例)が設けられる。センサ209は、第1位置の受け板26aの上にある分包袋群Pを検出する。一例として、センサ209は、第1位置の受け板26aの底部26a1の上面へ向けて照射した光の反射を検出することで、受け板26a上の分包袋群Pの有無を検知するよう構成される。底部26a1の上面には、センサ209からの光を反射する反射板(ミラー)が設けられてもよい。
【0116】
鑑査装置20は、センサ209による検出結果、例えば、分包袋群Pが受け板26a上にあることを示す情報を、ディスプレイ23に出力することができる。例えば、新たな処方の鑑査を開始する前に、センサ209により、受け板26a上に分包袋群Pが残っていることが検出された場合、鑑査装置20は、ディスプレイ23の画面に、受け板26aの分包袋群Pを取り除くことを指示する案内を表示してもよい。
【0117】
(実施形態4)
図19は、本実施形態における鑑査装置20の構成例を示す図である。図19に示す鑑査装置20aは、搬送装置22、撮影装置21、鑑査部25、及び追加搬送機29を備える。搬送装置22、撮影装置21及び鑑査部25は、図13に示す鑑査装置20と同様に構成することができる。追加搬送機29は、搬送装置22から送出される分包袋群Pを、搬送装置22から離れた位置において、搬送装置22の搬送に応じて搬送する。追加搬送機29は、搬送装置22の搬送動作と連動して、分包袋群Pを搬送する。搬送装置22が分包袋群Pを送出している時に、追加搬送機29は、搬送装置22から送出された分包袋群Pを送り出す動作を行う。また、追加搬送機29が、搬送を停止した場合、搬送装置22も搬送を停止する。搬送装置22の搬送が停止すると、撮影装置21の撮影動作、及び、鑑査部25の鑑査処理も停止する。
【0118】
図19で示すように、鑑査装置20による一次鑑査において搬送及び撮影される分包袋と、ユーザが二次鑑査しようとする分包袋が繋がっている場合がある。このような場合、ユーザが二次鑑査しようとして、分包袋群を引っ張ると、鑑査装置20で撮影しようとする分包袋がずれることが起こり得る。また、鑑査装置20が、エラー時に再撮影をするために分包袋群を引き込むとユーザの二次鑑査の妨げとなる。そこで、本実施形態の鑑査装置20では、搬送装置22から離れた位置に、搬送装置22の搬送と連動する追加搬送機29が設けられる。これにより、鑑査装置20による一次鑑査のための搬送と、ユーザによる二次鑑査のための搬送とが、互いに独立して行われる。そのため、鑑査装置20による一次鑑査と平行して、ユーザが二次鑑査をし易くなる。
【0119】
追加搬送機29は、ユーザの操作を受け付ける操作子として、スイッチ29a、29bを有する。ユーザの操作子に対する操作に応じて、追加搬送機29及び搬送装置22の双方の搬送が制御される。一例として、追加搬送機29は、スタートスイッチ29aとストップスイッチ29bを備えてもよい。追加搬送機29及び搬送装置22の双方が搬送を停止している状態で、ユーザがスタートスイッチ29aを押すと、双方の搬送が開始される。双方が、搬送動作をしている状態で、ユーザがストップスイッチ29bを押すと、双方の搬送が停止する。
【0120】
図19に示す例では、鑑査装置20は、搬送装置22から送出される分包袋群を検出するセンサ210をさらに備える。追加搬送機29は、センサ210で分包袋群Pの送出が検出されている期間に、分包袋群Pを搬送するように制御されてもよい。センサ210は、例えば、筐体28の送出口28aの下方に設けられる。センサ210の検出位置は、例えば、送出口28aの地面(床面)からの高さの半分の高さと同じかより高い位置にあることが好ましい。この場合、センサ210は、送出口28aから出て下に垂れた分包袋群Pを検出する。センサ210の検出方式は特に限定されないが、センサ210は、例えば、光、磁気、物理的接触、等により分包袋群Pを検出することができる。このように、送出口28aから垂れた分包袋群Pを検出可能な位置にセンサ210を配置することで、分包袋群Pが、過度に引っ張られた状態ではなく、垂れて余裕がある状態を検出できる。
【0121】
鑑査装置20は、例えば、次のように動作することができる。初めに、ユーザは、巻き取り装置150に巻き取られた分包袋群Pの端を、鑑査装置20の入口28bにセットする。分包袋群Pが、入口28bにセットされると、鑑査装置20は、一次鑑査の動作を開始する。すなわち、搬送装置22が分包袋群Pの搬送を開始し、撮影装置21による撮影、鑑査部25による鑑査処理が実行される。鑑査装置20による一次鑑査が、所定袋分進み、分包袋群Pの先端が送出口28aから出た時点で、搬送装置22は、搬送を一次停止する。この一次停止中に、二次鑑査をするユーザ(例えば、薬剤師)が、分包袋Pを追加搬送機29にセットしてスタートスイッチ29aを押すことができる。これにより、搬送装置22の搬送が再開し、鑑査装置20の一次鑑査の動作を再開される。また、追加搬送機29の搬送を開始される。なお、一時停止中に、鑑査装置20は、画像又は音声により、ユーザに、追加搬送機29へのセット操作を案内するメッセージを出力してもよい。追加搬送機29の搬送により、分包袋群Pが順次送り出される。ユーザは、追加搬送機29で送り出された分包袋群Pのそれぞれに対して目視により二次鑑査できる。ユーザは、二次鑑査作業を一時停止したい場合、追加搬送機29のストップスイッチ29bを押す。これにより、追加搬送機29及び搬送装置22の搬送が停止し、鑑査装置20の一次鑑査動作も停止する。
【0122】
追加搬送機29は、センサ210の検出結果に応じて搬送が制御されてもよい。例えば、図19のように、送出口28aから出た分包袋群Pが垂れてセンサ210で検出されている時は、追加搬送機29は搬送を継続し、図19の点線P1のように、分包袋群Pがセンサ210の検出位置に達していない、すなわちセンサ210で検出されていない時は、搬送を停止してもよい。これにより、追加搬送機29と、送出口28aの間で、分包袋群Pが、引っ張られておらず適度に弛緩した状態で、追加搬送機29による搬送が可能になる。
【0123】
図20は、追加搬送機29の構成例を示す斜視図である。図21は、図20に示す追加搬送機29の内部構成例を示す斜視図である。追加搬送機29は、ローラ29c1、29c2、及びローラ29c1、29c2の動力源であるモータ29eを備える。ローラ29c1、29c2が回転することで、分包袋群Pが搬送される。図21の例では、2つのローラ29c1、29c2が設けられる。2つのローラ29c1、29c2の軸の間に、分包袋群Pを載せる台29dが設けられる。台9dの上の分包袋群Pの上面と下面にローラ29cが接して回転する。2つのローラ29c1、29c2の軸はフレーム29fに支持される。2つのローラ29cのうち一方のローラ29c1の軸は、他方のローラ29c2に対して相対的に移動可動に支持される。ローラ29c1の軸を、ローラ29c2へ向かって付勢する弾性体29hが設けられる。また、ローラ29c1の軸の位置を移動させるための操作手段29gが設けられる。操作手段29gは、外側に突出したつまみを有する。つまみを引くと、ローラ29c1が、他方のローラ29c2から離れる方向へ引き上げられる。これにより、ローラ29c1による分包袋群Pの抑えが解除される。この場合、ユーザは、分包袋群Pを引き抜くことができる。なお、追加搬送機29の構成は、これに限られない。例えば、ローラが1つ又は3つ以上設けられてもよい。又は、例えば、ベルトコンベア等で、追加搬送機29が構成されてもよい。操作子は、図20に示すような押下型のスイッチの他、例えば、トグル、レバー、又は、タッチパネル等であってもよい。
【0124】
(分包袋の再撮影動作例)
鑑査装置20の一次鑑査又はユーザの二次鑑査でNGと判断された分包袋は、ユーザによって、処方通りの薬剤を内包するよう修正される場合がある。修正された分包袋は再撮影して記録することが好ましい。そこで、鑑査装置20は、再撮影を円滑に実行するためのユーザインタフェース及び再撮影制御部を備えてもよい。具体例として、鑑査装置20において、鑑査部25は、鑑査結果を分包袋ごとに区別可能な態様で出力してもよい。また、鑑査部25は、ユーザから再撮影すべき分包袋の指定を受け付ける分包袋指定受付部と、ユーザに指定された分包袋を再撮影する動作を搬送装置22及び撮影装置21に実行させる再撮影制御部を有してもよい。これにより、鑑査装置20は、分包袋の再撮影を効率よく実行できる。
【0125】
従来、再撮影するためには、修正した分包袋を含む1処方分の分包袋群を再度、鑑査装置に挿入し、1処方に含まれる全ての分包袋群を再撮影する必要があった。これに対して、鑑査装置20は、上記構成により、ユーザから再撮影すべき分包袋の指定を受け付け、指定された分包袋を搬送し撮影することができる。そのため、迅速な再撮影処理が可能になる。
【0126】
分包袋指定受付部は、例えば、一次鑑査が終わった分包袋群を、再撮影が指定可能な態様でディスプレイ23に表示してもよい。これにより、ユーザは、ディスプレイ23の画面に表示された分包袋を選択することで、再撮影する分包袋を指定できる。再撮影制御部は、搬送装置22に、通常鑑査時とは逆方向に分包袋群を搬送させて、指定された分包袋を撮影位置に搬送する。再撮影制御部は、撮影装置21に指定された分包袋を撮影させる。再撮影制御部は、再撮影した分包袋を、搬送装置22に元の位置へ搬送させてもよい。これにより、再撮影の後、速やかに鑑査を再開できる。
【0127】
なお、再撮影制御部は、搬送装置22及び追加搬送機29を制御して、再撮影する分包袋を搬送してもよい。これにより、ユーザの二次鑑査と修正作業の効率を向上させることができる。例えば、図19の例において、ユーザが、二次鑑査位置R2において、分包袋を修正する。ユーザは、ディスプレイ23の画面において修正した分包袋を指定し、再撮影の指示を入力する。再撮影制御部の制御に従って、搬送装置22及び追加搬送機29が、修正された分包袋を、二次鑑査位置R2から撮影位置R1へ搬送する。撮影位置R1で撮影された修正された分包袋は、搬送装置22及び追加搬送機29によって再び、二次鑑査位置R2に戻される。この鑑査装置20の動作により、ユーザは、NG分包袋を修正の後、速やかに分包袋を再撮影して画像を記録し、その後の二次鑑査を再開できる。なお、追加搬送機29は、再撮影された分包袋を元の二次鑑査位置R2に戻した後、さらに、1袋分、分包袋群を送ってもよい。これにより、ユーザは、修正した分包袋の次の分包袋から二次鑑査を再開できる。
【0128】
図22は、本実施形態における鑑査装置20の変形例を示す図である。図22に示す例では、鑑査装置20は、センサ211と、台212をさらに備える。台212は、追加搬送機29から、分包袋群Pの送出方向に離間した位置に配置される。台212は、追加搬送機29から送出された分包袋群Pを載せ、追加搬送機29の搬送方向にスライド可能な状態で保持する。センサ211は、追加搬送機29から送出される分包袋群を検出する。
【0129】
センサ211は、例えば、追加搬送機29の分包袋の送出口の下方に設けられる。センサ211の検出位置は、例えば、追加搬送機29の送出口の地面(床面)からの高さの半分の高さと同じかより高い位置にあることが好ましい。この場合、センサ211は、追加搬送機29から出て下に垂れた分包袋群Pを検出する。センサ211により、追加搬送機29と台212との間に送出された分包袋群Pの弛みが検出される。これにより、センサ211は、追加搬送機29から送出され、台212と追加搬送機29との間に滞留している分包袋群Pを検出することができる。
【0130】
センサ211の検出結果に応じて、追加搬送機29及び搬送装置22の少なくとも1つの搬送が制御される。これにより、鑑査者がスイッチ29a、29bを操作しなくても、鑑査者の目視鑑査により分包袋群Pを送り出すペースに応じて自動的に追加搬送機29及び搬送装置22の少なくとも1つの搬送が制御される。
【0131】
例えば、追加搬送機29は、センサ211で分包袋群Pの滞留が検出されている期間は、分包袋群Pの搬送を停止するように制御されてもよい。また、この制御に加えて、鑑査装置20の搬送装置22が、センサ211で分包袋群Pの滞留が検出されている期間には搬送を停止するよう制御されてもよい。この場合、例えば、鑑査者が、目視鑑査を進めて分包袋群Pを引き上げている間は、搬送を継続する。鑑査者による目視鑑査が停止又は遅くなった場合、分包袋群Pが滞留して弛みが生じる。センサ211が弛みを検出すると、追加搬送機29及び搬送装置22の搬送が自動的に停止する。鑑査者の目視鑑査が進んで、分包袋群Pの弛みがセンサ211で検出されなくなると、搬送が自動的に再開される。鑑査者は、目視鑑査に集中しやすくなる。
【0132】
また、センサ211の検出結果及びセンサ210の検出結果の両方に基づいて、追加搬送機29及び搬送装置22の少なくとも1つの搬送が制御されてもよい。例えば、センサ210による分包袋群Pの弛みの検出のオン/オフとセンサ211による弛みの検出のオン/オフの組み合わせに応じて、追加搬送機29と鑑査装置20の搬送装置22の搬送のオン/オフが自動的に制御されてもよい。一例として、センサ211がオフの場合、又は、センサ210がオンの場合に、追加搬送機29と搬送装置22の搬送を停止するよう制御されてもよい。
【0133】
(実施形態5)
図23は、本実施形態における鑑査装置20の構成例を示す図である。図23に示す鑑査装置20は、搬送装置22、撮影装置21、照明41A、41B、及び鑑査システム10を備える。鑑査システム10は、鑑査部25、境界検出部42、制御部43及び出力部4を含む。搬送装置22、撮影装置21、鑑査部25、及び、出力部4は、例えば、図1又は図13に示す鑑査装置20と同様に構成することができる。鑑査システム10は、コンピュータで構成される。境界システム10の各機能部は、コンピュータが、所定のプログラムに従って処理を実行することで実現することができる。
【0134】
境界検出部42は、撮影装置21で撮影された分包袋群Pの画像において、少なくとも1つの分包袋の上流側の境界及び下流側の境界を検出する。図24は、分包袋群Pの例を示す図である。図24(a)に示すように、分包袋群Pにおける分包袋の境界dは、例えば、ミシン目等の外観上の特徴となって表れる。境界検出部42は、撮影された分包袋群Pの画像に対して、画像処理を実行することで、画像中の分包袋の境界の位置を決定する。決定される境界の位置は、例えば、図24(b)に示す上流側の境界領域dDm及び下流側の境界領域dUmのように、幅を持った領域であってもよい。
【0135】
制御部43は、境界検出部42が検出した境界の位置に基づいて、搬送装置22を制御する。これにより、搬送装置22は、分包袋群Pの各分包袋を、1包ずつ、順に、撮影装置21の撮影範囲に配置することができる。また、制御部43は、検出された境界の位置を基準として、搬送装置22により搬送される分包袋群Pの位置を微調整できる。これにより、撮影範囲に対する各分包袋の位置決め精度を向上させることができる。
【0136】
境界検出部42は、撮影装置21で撮影された分包袋群Pの画像において、薬剤領域及び分包袋の印字領域をマスク領域に決定する。境界検出部42は、マスク領域を除く領域に対して、境界の特徴を探索する処理を実行することで、境界の位置を検出する。画像中の薬剤領域及び分包袋の印字領域を決定する処理は、例えば、背面から光を照射された分包袋群Pを撮影した画像(背面照明画像)において、所定の閾値以上に影(色)が濃くなっている領域を、薬剤領域及び分包袋の印字領域と決定することができる。例えば、背面照明画像をグレイスケール化し、グレイスケール化された画像を、閾値を基準に二値化し、さらに、ノイズ除去する処理により、薬剤領域及び印字領域を含む領域を決定してもよい。ここで、薬剤領域より分包袋の印字領域の方が、影が薄いことが多い。例えば、印字領域の影の濃さの程度の閾値を設定することで、薬剤領域及び印字領域をマスク領域として決定できる。
【0137】
図25(a)は、背面照明画像の例を示す図である。図25(b)は、図25(a)の画像に対して、薬剤領域及び印字領域が黒になるように閾値で二値化し、ノイズ除去した画像の例を示す図である。これに対して、図25(d)は、図25(a)の画像に対して、薬剤領域のみが黒になるように閾値で二値化し、ノイズ除去した画像の例を示す図である。図25(b)の二値化の閾値は、図25(d)の二値化の閾値より低く設定されている。
【0138】
境界検出部42は、例えば、背面照明画像の分包袋と同じ分包袋の正面照明画像に対して、薬剤領域及び印字領域をマスキングした画像に対して、エッジ検出処理を実行し、境界の位置を検出する。図25(c)は、図25(b)の黒の領域をマスク領域として、正面照明画像をマスキングした画像に対して、境界検出した結果の例を示す図である。図25(e)は。図25(d)の黒の領域をマスク領域として、正面照明画像をマスクイングした画像に対して境界検出した結果の例を示す図である。図25(e)(d)において、境界として検出された領域が四角形で示される。これらの結果から、薬剤領域に加えて印字領域をマスキングした画像に対する境界検出の精度が、薬剤領域のみマスキングした画像に対する境界検出より精度が高くなっている。このように、印字領域を探索の範囲から除外することで、印字の部分を分包袋の境界(例えばミシン目)として誤検出することが避けられる。
【0139】
なお、薬剤領域及び印字領域の決定処理は、上記例に限られない。例えば、パターンマッチング又は学習済みモデルを用いた画像認識により、薬剤領域及び印字領域が決定されてもよい。
【0140】
(実施形態6)
図26は、本実施形態における鑑査装置20の構成例を示す図である。図26の例では、鑑査装置20は、搬送装置22、撮影装置21、切断部50及び鑑査システム10を備える。切断部50は、搬送装置22で搬送される分包袋群P2を搬送方向に交差する方向に沿って切断する。切断部50は、切断機(カッター)である。切断部50は、切断刃である、固定刃52及び移動刃53と、分包袋群P2の搬送経路を規制し、分包袋群P2を切断刃の位置へ導くガイド51a~51cとを含む。鑑査システム10は、鑑査部25、切断箇所決定部59、制御部43及び出力部4を含む。制御部43は、撮影装置21、搬送装置22及び切断部50を制御する。搬送装置22、撮影装置21、鑑査部25、及び、出力部4は、例えば、図1又は図13に示す鑑査装置20と同様に構成することができる。鑑査システム10は、コンピュータで構成される。鑑査システム10の各機能部は、コンピュータが、所定のプログラムに従って処理を実行することで実現することができる。
【0141】
切断箇所決定部59は、処方データを取得し、取得した処方データを基に分包袋群Pの切断箇所を決定する。決定される切断箇所は、例えば、複数の処方の薬剤を内包する分包袋群Pのうち、1つの処方の分包袋と、これとは異なる他の処方の分包袋との境(処方の変わり目)となる箇所である。切断箇所決定部59は、例えば、分包袋群Pにおける処方の変わり目を示す情報を処方データとして取得してもよい。
【0142】
例えば、分包袋に付されたコード、印字その他の情報を、撮影装置21又は鑑査装置20が備える読み取り装置で読み取ることで、処方データが取得されてもよい。この場合、例えば、処方の変わり目に空包の分包袋が設けられ、この分包袋に処方の変わることを示すバーコード、記号又はその他の情報が付されてもよい。或いは、分包機又は上位システムから入力された分包袋群Pの処方データと、鑑査部25による鑑査結果を基に、分包袋群Pにおける処方の変わり目となる箇所が決定されてもよい。鑑査部25は、鑑査処理のために、撮影装置21の撮影範囲にある分包袋の処方を認識している。また、鑑査を実行した分包袋の搬送量(送り量)も鑑査部25により記録される。そのため、鑑査結果と分包袋群Pの搬送装置22による搬送量とに基づいて、処方の変わり目となる分包袋を特定することができる。この場合、切断箇所決定部59は、切断箇所の決定処理として、処方の変わり目となり分包袋が切断部50による切断位置にいるか否かを決定してもよい。なお、切断箇所と決定される処方の変わり目は、例えば、処方対象の患者の変わり目であってもよい。
【0143】
従来、鑑査処理が実行され、鑑査装置から送出された分包袋群Pに付された印字等に基づいて、作業者が、処方の変わり目を判断し手作業で切断していた。本実施形態では、切断部
50により、自動的に、分包袋群Pは、処方の変わり目で切断され、鑑査装置から払い出される。これにより、作業者が、分包袋群Pの切断箇所を探し、手で切断する手間を省くことができる。
【0144】
鑑査装置20は、分包袋の境界の位置を検出する境界検出部をさらに有してもよい。切断部50が、検出された分包袋の境界で分包袋群Pを切断するように、搬送装置22及び切断部50が制御されてもよい。例えば、境界検出部は、撮影装置21で撮影された分包袋の画像において境界を検出してもよい。この場合、撮影装置21で撮影された分包袋の境界であって、切断箇所決定部59によって切断箇所と決定された分包袋の境界が、撮影された場所から切断部50による切断位置まで搬送されるよう搬送装置22が制御される。また、切断箇所決定部59は、処方の分かれ目となる分包袋の境界を切断箇所に決定してもよい。このように、鑑査装置は、境界検出部で検出された分包袋の境目(ミシン目)を、切断部50が切断する箇所として適切に指定して切断するよう制御されてもよい。なお、本実施形態の境界検出部は、一例として、上記実施形態5の境界検出部42と同様に構成されてもよい。
【0145】
切断部50では、移動刃53が、固定刃52から離間した位置と、固定刃52に重なる位置との間で移動可能に支持される。移動刃53は、モータ54の動力により移動する。移動刃53と固定刃52の間が、分包袋群Pの搬送経路となる。移動刃53と固定刃52が離間している状態において、移動刃53と固定刃52の分包袋群Pの搬送方向を覆うようにガイド51c、51bが配置される。これにより、待機状態の移動刃53と固定刃52の間を通る分包袋群Pが、刃と接触するのを防ぐことができる。
【0146】
図26の例では、切断部50による切断位置は、撮影装置21の撮影範囲より下流の搬送経路に設けられる。これにより、撮影装置21で撮影済みの分包袋を切断することができる。なお、切断位置は、撮影装置21の上流であってもよい。切断位置は、撮影範囲から所定の分包袋数の分だけ離れた位置に設けることができる。例えば、撮影範囲から所定の送り量の分だけ離れた位置を切断部50による切断位置とすることで、決定された分包袋群Pの切断箇所が、切断位置に来ているか否かの認識がし易くなる。
【0147】
図27は、切断部50のカッター機構の構成例を示す図である。図28及び図29は、図27に示す切断部の斜視図である。図27(a)及び図28は、待機状態の切断部を示す。図27(b)及び図29は、切断動作時の切断部を示す。図27に示す例では、切断部50は、鑑査装置20に固定して取り付けられる固定フレーム55と、固定フレーム55に対して1軸方向FXに移動可能に支持される移動フレーム56を備える。固定フレーム55に固定刃52が取り付けられる。移動フレーム56に移動刃53が取り付けられる。移動フレーム56の1軸方向FXの移動により、移動刃53が、固定刃52から離間した位置と、固定刃52と重なる位置との間で移動する。1軸方向FXは、分包袋群Pの搬送方向に交差する方向である。また、固定刃52と移動刃53の刃の延びる方向も、分包袋群Pの搬送方向に交差する。移動刃53と、固定刃52が互いに離間した状態で、移動刃53と固定刃52の間に、分包袋群Pが通る空間が確保されるよう固定フレーム55及び移動フレーム56が構成される。
【0148】
固定フレーム55には、駆動装置であるモータ54が取り付けられる。モータ54の出力軸と移動フレーム56の間に、伝達機構57が設けられる。伝達機構57は、モータ54の出力軸の回転を、移動フレーム56の1軸方向FXの移動に変換する。図28の例では、伝達機構57は、回転軸と共に回転するアームを含む。アームの一方端は、モータ54の出力軸に接続され、他方端部は、移動フレーム56の長穴の長手方向にスライド可能に接続される。
【0149】
図27の例では、モータ54から移動フレーム56までの伝達経路上にクラッチ58が設けられる。クラッチ58は、移動フレーム56の移動に対して抵抗が加わった場合に、モータ54の回転の伝達を遮断するよう構成される。例えば、モータ54の電流又は電圧が所定範囲を超えた場合に、抵抗を検知し、クラッチ58を駆動して動力伝達を遮断する制御がなされてもよい。これにより、例えば、移動刃53の移動中に、移動刃53と固定刃52の間に薬剤等の厚みを有する物が介入した場合に、クラッチ58によって移動刃53の進行を停止することができる。この場合、誤って錠剤が内包された分包袋を切断することを防止できる。
【0150】
図28に示すように、待機状態では、移動刃53と固定刃52は離間し、移動刃53と固定刃52の間を分包袋群Pが通る空間が形成される。この空間は、移動フレーム56の穴56aと固定フレーム55の穴55aが重なることで形成される。図29に示すように、切断時には、1軸方向FXに移動フレーム56が移動することで、移動刃53と固定刃52が互いに近づく。図29の例では、移動刃53の刃先の稜線は、固定刃52の刃先の稜線と平行ではなく、傾いた状態で固定刃52と重なる。これにより、移動刃の刃先が固定刃に線で接触するのではなく、点で接触する。そのため、分包袋を軽くシャープに切ることができる。
【0151】
図26に示す例では、切断部50の切断位置は、搬送装置22の下流端よりもさらに下流において、ガイド51a~51cによって導かれる分包袋群Pの搬送径路に配置される。これにより、既存の鑑査装置に切断部を付加する場合に有利な構成である。切断部50の位置はこの例に限られない。例えば、搬送装置22の搬送経路に切断部が配置されてもよい。また、図26に示す例では、切断部50の一対の切断刃の間を通る分包袋群Pの搬送経路の方向は、垂直方向の成分を有する。これにより重力で分包袋群Pを搬送方向に引っ張った状態で切断することができる。
【0152】
(実施形態7)
図30は、本実施形態における鑑査装置20の構成例を示す図である。図30の例では、鑑査装置20は、搬送装置22、撮影装置21、粉砕装置60及び鑑査システム10を備える。粉砕装置60は、搬送装置22で搬送される分包袋群P2の薬剤を、撮影装置21より下流において押圧して粉砕する。粉砕装置60は、分包袋群P2のうち粉砕対象の分包袋を、押圧し、分包袋内の薬剤を粉砕する。鑑査システム10は、鑑査部25、粉砕対象決定部65、粉砕後薬剤撮影部66、制御部43及び出力部4を含む。制御部43は、撮影装置21、搬送装置22及び粉砕装置60を制御する。搬送装置22、撮影装置21、鑑査部25、及び、出力部4は、例えば、図1又は図13に示す鑑査装置20と同様に構成することができる。鑑査システム10は、コンピュータで構成される。鑑査システム10の各機能部は、コンピュータが、所定のプログラムに従って処理を実行することで実現することができる。
【0153】
本実施形態の粉砕装置60は、撮影装置21で撮影された分包袋であって、粉砕対象として決定された分包袋が、搬送装置22によって粉砕位置に搬送された場合に、分包袋の上から薬剤を押圧して粉砕するよう制御されてもよい。これにより、撮影済みの粉砕対象の薬剤を粉砕することができる。また、粉砕装置60は、撮影装置21で撮影され、且つ鑑査部25で処方通りである(鑑査結果OK)と判断された分包袋であって、粉砕対象として決定された分包袋の薬剤を粉砕するよう制御されてもよい。これにより、鑑査が完了し、間違いなく処方通り分包されていることが確認されてから、粉砕指示のある薬剤に対して粉砕処理を実行することができる。粉砕後は薬剤が画像により鑑査できなくなる。この動作により、鑑査と粉砕の両方をより確実に実行することができる。
【0154】
粉砕対象決定部65は、処方データを取得し、取得した処方データを基に分包袋群Pのうち粉砕対象とする分包袋を決定する。例えば、処方データにより粉砕することが示されている薬剤を内包する分包袋が、粉砕対象として決定される。処方データは、例えば、鑑査部25が、鑑査処理のために取得した処方データが用いられてもよい。或いは、粉砕対象決定部65は、分包袋に付されたコード、印字その他の情報から、処方データを取得してもよい。例えば、分包袋に、粉砕対象であることを示す情報がバーコード等により付されてもよい。
【0155】
粉砕対象決定部65は、さらに、鑑査部25による鑑査結果を用いて、粉砕対象の分包袋を決定してもよい。例えば、鑑査部25による鑑査結果がNGである分包袋は、粉砕対象としないよう決定されてもよい。これにより。鑑査でNGと判断された分包袋の薬剤を粉砕することが避けられる。
【0156】
粉砕装置60による粉砕位置は、撮影装置21の撮影範囲より下流の搬送経路に設けられる。これにより、撮影装置21で撮影済みの分包袋の薬剤を粉砕し、撮影していない薬剤を粉砕しないようにできる。粉砕位置は、撮影範囲から所定の分包袋数の分だけ離れた位置に設けることができる。例えば、撮影範囲から所定の送り量の分だけ離れた位置を粉砕装置60による粉砕位置とすることで、粉砕対象の分包袋群Pが粉砕位置にあるか否かの認識がし易くなる。例えば、粉砕位置は、撮影範囲における搬送装置22の搬送量(送り量)と粉砕位置における搬送量にずれが生じない範囲に設けられることが好ましい。
【0157】
薬剤の処方においては、錠剤を粉砕して患者に投与する場合がある。例えば、患者が疾病により嚥下障害を来した場合、経管等の処置のため患者が固形物を嚥下不可能な場合、患者が小児又は高齢者であり嚥下能力が低い場合、又は、薬用量が規格単位(1錠又は1カプセル)に合わない場合等である。このような場合は、錠剤を粉砕したものを処方量測って分包し、患者に提供している。しかし、粉砕して分包された薬剤は、鑑査できない。本実施形態によれば、鑑査装置において、撮影の下流に粉砕機構が設けられる。これにより、鑑査処理を実行した分包袋の薬剤を、分包袋に入れたまま粉砕することができる。また、粉砕対象決定部65により、処方に基づいて粉砕対象の分包袋を決定することができる。
【0158】
本実施形態の鑑査装置20は、分包袋の上流及び下流の境界の位置を検出する境界検出部をさらに有してもよい。粉砕装置60が、検出された分包袋の上流及び下流の境界の間で分包袋の上から薬剤を粉砕するように、搬送装置22及び粉砕装置60が制御されてもよい。例えば、境界検出部は、撮影装置21で撮影された分包袋の画像において境界を検出してもよい。この場合、撮影装置21で撮影された分包袋であって、粉砕対象決定部65によって粉砕対象と決定された分包袋の上流及び下流の境界の間が、撮影された場所から粉砕装置60による粉砕位置まで搬送されるよう搬送装置22が制御される。なお、本実施形態の境界検出部は、一例として、上記実施形態5の境界検出部42と同様に構成されてもよい。
【0159】
粉砕後薬剤撮影部66は、搬送装置22を制御して、粉砕装置60で粉砕された薬剤を内包する分包袋を撮影装置21の撮影範囲に搬送する。粉砕後薬剤撮影部66は、撮影装置21に、粉砕された薬剤を内包する分包袋を撮影させる。これにより、粉砕したことのエビデンスとなる分包袋の画像を得ることができる。粉砕後の分包袋の画像は、粉砕前の同じ分包袋の画像に対応付けられて記録されてもよい。これにより、エビデンスの精度が高くなる。
【0160】
粉砕装置60は、分包袋を押圧する押圧面を有する一対の押圧部62a、62bと、押圧部62a、62bを駆動する駆動部61を有する。一対の押圧部62a、62bの間を分包袋Pの搬送経路が通る。一対の押圧部62a、62bは、分包袋の両面に接する位置と、分包袋から離間した位置の間で移動可能である。駆動部61が、一対の押圧部62a、62bの少なくとも一方を移動させ、一対の押圧部62a、62bで分包袋を両側から押圧することで、分包袋の中の薬剤が粉砕される。図30の例では、分包袋群Pは、移動可能な押圧部62aと固定された押圧部62bの間を搬送される。押圧部62bは、例えば、台である。粉砕動作において、駆動部61は、押圧部62aを押圧部62bへ向かって移動させる。これにより、分包袋群Pの分包袋は、一対の押圧部62と台63に間に挟まれて、両者から押される。その結果、分包袋に内包される薬剤が粉砕される。一対の押圧部62a、62bの少なくとも1つの押圧面は、凹凸を有してもよい。図30の例では、台である押圧部62bの上に置かれた分包袋を、上から押圧部62aが押圧する。この変形例として、一対の押圧部62a、62bの双方が可動であってもよい。また、一対の押圧部の少なくとも1つは回転可能であってもよい。例えば、分包袋の上面を押圧するローラ及び下面を押圧するローラを一対の押圧部としてもよい。駆動部61は、特に限定されないが、例えば、駆動源としてモータを含んでもよい。又は、駆動部61は、シリンダを含んでもよい。
【0161】
図31は、図30に示す鑑査装置20の動作例を示す図である。図31(a)では、撮影装置21により、鑑査対象の分包袋が撮影される。鑑査部25は、撮影された分包袋の画像を用いて、分包袋の薬剤が処方通りか否かを判断する鑑査処理を実行する。鑑査処理には、分包袋群Pの薬剤の処方データが用いられる。搬送装置22は、1包分ずつ分包袋Pを搬送する。撮影装置21が、順次、撮影範囲21Aに搬送される複数の分包袋のそれぞれを撮影し、鑑査部25が、各分包袋の鑑査処理を実行する。粉砕対象決定部65は、各分包袋の薬剤の処方を示す情報データを取得し、各分包袋の薬剤が粉砕対象か否かを判断する。
【0162】
粉砕対象決定部65は、搬送装置22による分包袋の送り量(例えば、送り包数)に基づいて、粉砕対象の分包袋が粉砕装置60の粉砕位置に来たか否かを判断する。図31(b)では、粉砕対象の分包袋が、粉砕位置に来たと判断される。粉砕対象決定部65は、粉砕装置60に粉砕動作を指示する。粉砕装置60では、駆動部61が一対の押圧部62a、62bを互いに近づけて、押圧部62a、62bで分包袋を押圧する。この動作を繰り返すことで、分包袋の中の薬剤が粉砕される。
【0163】
粉砕装置60による粉砕が完了すると、図31(c)に示すように、粉砕後薬剤撮影部66は、搬送装置22を制御して、粉砕位置にあった分包袋を撮影装置21の撮影位置に搬送する。例えば、粉砕後薬剤撮影部66は、例えば、撮影装置21の撮影範囲21Aから、粉砕装置60の粉砕位置までの送り量と同じ量だけ、その逆方向に分包袋群Pを搬送装置22に搬送させる。粉砕された薬剤が内包された分包袋が撮影範囲21Aに搬送されると、撮影装置21が、その分包袋を撮影する。これにより、粉砕後の薬剤が内包された分包袋が撮影される。
【0164】
その後、図31(d)に示すように、粉砕された薬剤の分包袋は、再び粉砕位置まで搬送され、さらに、同じ方向に1包分、分包袋群Pが搬送される。その後、図31(a)~図31(c)と同様の動作が繰り返される。図31の動作により、粉砕対象の薬剤の分包袋の粉砕前と粉砕後の画像が撮影により得られる。これにより、エビデンス精度が高くなる。1つの分包袋の粉砕前と粉砕後の画像は、互いに関連付けられて、鑑査装置20がアクセス可能な記録部に記録される。また、粉砕前の画像に基づく鑑査結果が、粉砕後の画像に関連付けられて記録されてもよい。
【0165】
上記の実施形態は、本発明の例であって、本発明は、この例に限られない。また、上記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0166】
1:画像取得部、2:錠剤認識部、3:処方判定部、4:出力部、10:錠剤鑑査システム、21:撮影装置、22:搬送装置、25:鑑査部、P:分包袋群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図22
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図26
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図28
図29
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図31