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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121719
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】電極ユニット及び医療処置器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195514
(22)【出願日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2022025091
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
(72)【発明者】
【氏名】菊島 光一
(72)【発明者】
【氏名】上澤 駿
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK20
4C160KK37
4C160KK64
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】高周波電流用の電線及び熱電対を備える場合において、構造を簡略化でき、製造コストを削減することができる電極ユニットを提供する。
【解決手段】電極ユニット1は、電極2、コネクタ5、高周波用導線13及び熱電対10を備えている。熱電対10及び高周波用導線13の一端部は、コネクタ5に接続され、高周波用導線13の他端部は、電極2と導通するように、電極2の内側において熱電対10を構成するクロメル線11及びアルメル線12と一体にはんだ付けされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置対象に配置される電極と、
高周波電力を生成する高周波電力生成装置に対して前記電極を電気的に接続するための高周波用導線と、
前記電極に配置された温度センサと、
前記高周波用導線及び前記電極を電気的に接続するとともに、前記温度センサ又は前記温度センサと電気的に接続されたセンサ用導線を前記電極における単一の指定部位で保持する接続部と、
を備えることを特徴とする電極ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電極ユニットにおいて、
前記接続部は、前記電極に溶着されたはんだ又は導電性のろう材で構成されていることを特徴とする電極ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の電極ユニットにおいて、
前記接続部は、前記電極に溶着されたはんだ又は導電性のろう材で構成された第1接続部と、接着剤で構成された第2接続部とを有しており、
前記高周波用導線は、前記第1接続部によって前記電極に接続され、
前記温度センサ又は前記センサ用導線は、前記第2接続部によって保持されていることを特徴とする電極ユニット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電極ユニットにおいて、
前記電極は、前記温度センサの少なくとも一部を収容する内部空間を有し、
前記指定部位は、前記内部空間に繋がる基端側開口部であることを特徴とする電極ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極ユニットにおいて、
前記温度センサは、絶縁被覆を備えた熱電対で構成されていることを特徴とする電極ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極ユニットが使用時に取り付けられる医療処置器具であって、
前記電極ユニットは、前記電極が固定された針基部をさらに備えており、
前記医療処置器具は、
前記電極を案内するためのガイドと、
前記針基部を固定するための固定具と、
前記ガイド及び前記固定具が取り付けられたフレームと、
を備えることを特徴とする医療処置器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用導線及び温度センサを備えた電極ユニットなどに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電極ユニットとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この電極ユニットは、心臓の焼灼治療を行うためのものであり、操作コンソールにケーブルを介して接続された電極を先端部に備えている。この電極ユニットでは、操作コンソールからの電力供給により、高周波電流が先端の電極と患者の体に装着された接地用パットとの間で流れ、それにより、心臓の焼灼治療が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-182843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定位脳手術などに用いる電極ユニットの場合、治療部位の熱凝固治療中の温度を制御するために、高周波用導線に加えて温度センサを電極ユニット内に設ける必要があり、その場合には、温度センサ及び高周波用導線を電極ユニット内に適切に配置する必要がある。
【0005】
これに対して、上記特許文献1の電極ユニットの場合、焼灼治療用のものであることに起因して、高周波用導線以外に、温度センサを配置するという観点が存在していない。そのため、温度センサを配置した電極ユニットに上記特許文献1の技術を適用した場合、温度センサの配置及びその支持構造などに起因して、電極ユニットの構造の複雑化を招き、結果的に、製造コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、高周波用導線及び温度センサを備える場合において、構造を簡略化でき、製造コストを削減することができる電極ユニットなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、処置対象に配置される電極と、高周波電力を生成する高周波電力生成装置に対して電極を電気的に接続するための高周波用導線と、電極に配置された温度センサと、高周波用導線及び電極を電気的に接続するとともに、温度センサ又は温度センサと電気的に接続されたセンサ用導線を電極における単一の指定部位で保持する接続部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この電極ユニットによれば、高周波用導線及び電極を電気的に接続する構成と、温度センサ又はセンサ用導線を保持する構成とを、電極における単一の指定部位で保持する接続部という構成要素によって実現することができる。それにより、電極ユニットの構造を簡略化することができ、その分、製造コストを削減することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電極ユニットにおいて、接続部は、電極に溶着されたはんだ又は導電性のろう材で構成されていることを特徴とする。
【0010】
この電極ユニットによれば、電極ユニットの組立作業の際、高周波用導線と電極を電気的に接続する構成と、温度センサ又はセンサ用導線を保持する構成とを、はんだ付け作業又はろう付け作業によって同時に実施することができる。それにより、電極ユニットの組立作業を容易化でき、その分、製造コストを削減することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の電極ユニットにおいて、接続部は、電極に溶着されたはんだ又は導電性のろう材で構成された第1接続部と、接着剤で構成された第2接続部とを有しており、高周波用導線は、第1接続部によって電極に接続され、温度センサ又はセンサ用導線は、第2接続部によって保持されていることを特徴とする。
【0012】
この電極ユニットによれば、電極ユニットの組立作業の際、高周波用導線と電極を電気的に接続する構成をはんだ付け作業又はろう付け作業によって実施することができ、温度センサ又はセンサ用導線を保持する構成を接着作業によって実施することができる。それにより、温度センサ又はセンサ用導線がはんだ付け作業又はろう付け作業のような高熱の影響を受けやすい場合でも、その影響を受けることなく、接着剤によってこれらを保持することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の電極ユニットにおいて、電極は、温度センサの少なくとも一部を収容する内部空間を有し、指定部位は、内部空間に繋がる基端側開口部であることを特徴とする。
【0014】
この電極ユニットによれば、電極の内部空間に繋がる基端側開口部を閉塞するように、はんだ付け作業又はろう付け作業を実行したり、はんだ付け作業又はろう付け作業と接着作業とを実行したりすることにより、接続部が構成される。それにより、接続部を、電極の内部空間の奥側に配置する場合と比べて、接続部を構成する作業を容易に実行することができる。それにより、電極ユニットの組立作業をさらに容易化することができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極ユニットにおいて、温度センサは、絶縁被覆を備えた熱電対で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この電極ユニットによれば、温度センサが熱電対という比較的、簡便かつ汎用性の高いもので構成されているので、その分、電極ユニットの製造コストを削減することができる。また、熱電対が絶縁被覆を備えているので、熱電対と高周波用導線を同じ配線経路に設定した場合でも、高周波用導線を絶縁被覆する必要がないとともに、両者の配線の自由度を向上させることができる。それにより、電極ユニットの製造コストをさらに削減することができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極ユニットが使用時に取り付けられる医療処置器具であって、電極ユニットは、電極が固定された針基部をさらに備えており、医療処置器具は、電極を案内するためのガイドと、針基部を固定するための固定具と、ガイド及び固定具が取り付けられたフレームと、を備えることを特徴とする。
【0018】
この医療処置器具によれば、電極ユニットの使用時、電極がガイドに案内された状態で、針基部が固定具を介してフレームに固定されることにより、電極ユニットが医療処置器具に取り付けられる。このように、ガイド及び固定具という比較的、簡易な構成により、電極ユニットを使用可能な状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る電極ユニットの外観を示す図である。
図2】電極の先端部周辺の構成を示す断面図である。
図3】針基部及びその周辺の構成を示す断面図である。
図4】高周波用導線及び熱電対が電極にはんだ付けされた部位の構造を示す斜視図である。
図5】コネクタの構成を示す断面図である。
図6】定位脳手術器具の構成を示す斜視図である。
図7】ストッパの構成を示す斜視図である。
図8】ガイドの構成を示す斜視図である。
図9】第2実施形態に係る電極ユニットの針基部及びその周辺の構成を示す断面図である。
図10】第2実施形態の高周波用導線及び熱電対が電極にはんだ付けされた部位の構造を示す斜視図である。
図11】第3実施形態に係る電極ユニットの針基部及びその周辺の構成を示す断面図である。
図12】高周波用導線及び熱電対が電極にはんだ付け及び接着された部位の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電極ユニットについて説明する。第1実施形態の図1に示す電極ユニット1は、パーキンソン病治療時などの定位脳手術に用いられるものであり、先端部から高周波電力を放出することによって脳の治療部位の熱凝固治療を行うためのものである。
【0021】
図1に示すように、電極ユニット1は、電極2、針基部3、カバーチューブ4及びコネクタ5を備えている。電極2は、細長い円筒状のものであり、電極ユニット1の未使用時には、図1に2点鎖線で示すプロテクタ6によって、電極2の全体がカバーされる。このプロテクタ6は、その開口部が針基部3の先端部に嵌合することによって、電極ユニット1に装着される。
【0022】
一方、定位脳手術の際には、電極2は、プロテクタ6が外された状態でその先端側から脳内に挿入されるとともに、その状態で、電極ユニット1が図示しない手術用機器に固定される。
【0023】
電極2は、導電性を有する金属(例えばステンレス)で構成され、後述するアクティブチップ部2c以外の外周面には、絶縁被覆(フッ素樹脂コーティング)が施されている。
【0024】
電極2は、細針管部2a及び針管部2bを備えている。この細針管部2aは、先端部が閉塞された中空の円筒状の部材であり、電極2の先端部側に配置されている。図2に示すように、細針管部2aの先端部は、その縁部が丸みを帯びた曲面状に構成され、絶縁被覆が施されていないアクティブチップ部2cになっている。
【0025】
このアクティブチップ部2cでは、後述するように、高周波電力が電極2に供給された際、高周波電力がアクティブチップ部2cから脳の治療部位に放出される。それにより、脳の治療部位における熱凝固治療が実施される。
【0026】
また、細針管部2aの内孔2d内には、熱電対10(温度センサ)が設けられている。この熱電対10は、電極2の延設方向に沿って延びており、より具体的には、電極2内を通ってアクティブチップ部2cの先端部と後述するコネクタ5との間に延びている。熱電対10は、Kタイプのものであり、一対のクロメル線11及びアルメル線12で構成されている。
【0027】
これらのクロメル線11及びアルメル線12は、いずれもその表面に絶縁被覆が施されており、両者の先端の接合部分がアクティブチップ部2cの先端部内に配置されている。この接合部分は、アクティブチップ部2cに対して絶縁するために、接着剤14によってカバーされている。
【0028】
針管部2bは、細針管部2aよりも若干、大径の円筒状の部材であり、細針管部2aと一体に形成されている。針管部2bは、細針管部2aと針基部3の間に延びており、その細針管部2aと反対側の基端部が針基部3に固定されている。
【0029】
次に、針基部3について説明する。この針基部3は、定位脳手術の際に、手術用機器に対して固定される部分である。図3に示すように、針基部3には、内孔3aが形成されており、この内孔3aは、横断面円形で針基部3を貫通しながら図中の左右方向に延びている。
【0030】
この内孔3aの電極2側の部分は、一定径に構成されている。電極2の基端部は、この内孔3aの電極2側の部分に差し込まれ、これに嵌合した状態で、図示しない接着剤を介して、針基部3に固定されている。
【0031】
また、電極2の基端部には、はんだ20(接続部)が電極2の基端側開口部を閉塞するように設けられている。クロメル線11、アルメル線12及び高周波用導線13は、このはんだ20を介して一体に電極2に固定されている。また、クロメル線11及びアルメル線12は、はんだ20を貫通して、アクティブチップ部2cとコネクタ5の間に延びている。
【0032】
高周波用導線13は、高周波電力を供給するためのものであり、その表面には絶縁被覆が施されているとともに、一端部がはんだ20内に埋設された状態で固定されている。それにより、高周波用導線13は、電極2と導通した状態になっている。また、高周波用導線13の他端部は、コネクタ5の後述する端子5bに接続されている。
【0033】
また、針基部3の内孔3aのカバーチューブ4側の部分は、カバーチューブ4側から電極2側に向かって縮径する円錐台状に形成されている。この針基部3の内孔3aには、中空の接続チューブ4aが差し込まれて嵌合している。この接続チューブ4aは、図示しない接着剤を介して、針基部3に固定されている。
【0034】
また、カバーチューブ4は、その先端部が接続チューブ4aの内孔に差し込まれた状態で、溶剤接着により接続チューブ4aに固定されている。それにより、カバーチューブ4は、接続チューブ4aを介して針基部3に固定されている。この接続チューブ4aは、カバーチューブ4の針基部3との接続部位を補強するためのものである。
【0035】
このカバーチューブ4は、クロメル線11、アルメル線12及び高周波用導線13をカバーするためのものであり、針基部3とコネクタ5の間に延びている。
【0036】
コネクタ5は、図5に示すように、ベース5a、一対の端子5b,5c及びケース5dなどを備えている。ケース5dは、図5に2点鎖線で示すように、コネクタ5の端子5b,5cの根元部分以外をカバーした状態で、ベース5aに嵌合することにより、ベース5aに取り付けられている。また、電極ユニット1の未使用時には、コネクタ5から突出する端子5b,5cの先端部が、図1に示す端子カバー7によって、図1に2点鎖線で示すようにカバーされる。
【0037】
ベース5aには、内孔が形成されており、このベース5aの内孔には、中空の接続チューブ4bが差し込まれて嵌合している。この接続チューブ4bは、図示しない接着剤を介して、ベース5aに固定されている。
【0038】
また、カバーチューブ4は、その先端部が接続チューブ4bの内孔に差し込まれた状態で、溶剤接着により接続チューブ4bに固定されている。それにより、カバーチューブ4は、接続チューブ4bを介してコネクタ5に固定されている。この接続チューブ4bは、前述した接続チューブ4aと同様に、カバーチューブ4のコネクタ5との接続部位の補強を目的とするものである。
【0039】
端子5bの中央部には、端子5bの長手方向に沿って溝が形成されている。高周波用導線13及びクロメル線11は、カバーチューブ4から延び、その先端部が端子5bの溝に一体に巻き付けられた状態で、端子5bに固定されている。高周波用導線13及びクロメル線11の端子5bに巻き付けられた部分は、絶縁被覆が施されておらず、それにより、高周波用導線13及びクロメル線11は、端子5bに導通状態で接続されている。
【0040】
また、端子5cの中央部には、端子5cの長手方向に沿って溝が形成されている。アルメル線12は、カバーチューブ4から延び、その先端部が端子5cの溝に一体に巻き付けられた状態で、端子5cに固定されている。アルメル線12の端子5cに巻き付けられた部分は、絶縁被覆が施されておらず、それにより、アルメル線12は、端子5cに導通状態で接続されている。
【0041】
この電極ユニット1は、定位脳手術で使用される場合には、例えば、図6に示す定位脳手術器具30(医療処置器具)に取り付けて使用される。この定位脳手術器具30は、固定リング31、アーム32、ストッパ33及びガイド34などを備えている。固定リング31は、手術対象の患者の頭部Hに固定され、アーム32(フレーム)は、固定リング31の軸31aの軸線周りに回動自在の状態で固定リング31に取り付けられている。
【0042】
ストッパ33(固定具)は、アーム32の先端部に取り付けられており、ガイド34は、ストッパ33よりも固定リング31に近いアーム32の部位に取り付けられている。
【0043】
ストッパ33は、図7に示すように、円柱状に形成され、凹部33b及び3つの貫通孔33aを有している。凹部33bは、ストッパ33の上面の中央部に配置された所定深さの座ぐり穴であり、平面視したときに3つの穴が重なり合った状態の形状を有している。3つの貫通孔33aは、凹部33bの底部に横並びに並ぶように形成されており、ストッパ33を図7の上下方向に貫通している。なお、ストッパ33の貫通孔33aの数は、3個に限定されず、1~2個又は4個以上であってもよい。
【0044】
また、ガイド34は、図8に示すように、先端に向かって縮径する円柱から肉抜きした形状を有しており、その中心部には、3つの貫通孔34aが形成されている。3つの貫通孔34aは、横並びに並ぶように配置されており、ガイド34を図8の上下方向に貫通している。なお、ガイド34の貫通孔34aの数は、3個に限定されず、1~2個又は4個以上であってもよい。
【0045】
定位脳手術の際、電極ユニット1がモノポーラ出力で使用される場合には、図6に示すように、電極2がストッパ33の中央の孔33aに差し込まれた後、ガイド34の中央の孔34aに差し込まれる。そして、針基部3がストッパ33の凹部33bに差し込まれ、凹部33bの縁部に係止されることにより、電極ユニット1が定位脳手術器具30に固定される。
【0046】
そして、以上のように電極ユニット1が定位脳手術器具30に固定された状態で、コネクタ5の端子5b,5cが図示しない高周波電力生成装置のプラグに差し込まれる。それにより、高周波電力が高周波電力生成装置から高周波用導線13に供給され、高周波電力が電極2の先端部から脳の治療部位(処置対象)に放出されることにより、熱凝固治療が実行される。その際、高周波電力生成装置は、クロメル線11とアルメル線12との間の電位差に基づいて、治療部位の温度を測定する。
【0047】
一方、2つの電極ユニット1,1がバイポーラ出力で使用される場合には、図示しないが、2つの電極2がそれぞれストッパ33の左右の孔33aに差し込まれた後、ガイド34の左右の孔34aに差し込まれるとともに、2つの針基部3がそれぞれストッパ33の凹部33bの縁部に係止され、固定される。そして、治療の際、2つの電極ユニット1,1間で高周波電流が流される。
【0048】
以上のように、第1実施形態の電極ユニット1によれば、高周波用導線13の一端部が、クロメル線11及びアルメル線12と一体の状態で電極2の基端部にはんだ付けされている。したがって、電極ユニット1の組立作業の際、はんだ付け作業によって、高周波用導線13を電極2に導通状態で固定する作業と、3つの線11~13を電極2に固定する作業とを同時に実行することができる。
【0049】
また、3つの線11~13が電極2の基端部にはんだ付けされるので、これらを電極2の先端側にはんだ付けする場合と比べて、はんだ付け作業を容易に実行することができる。以上により、電極ユニット1の組立作業を容易化でき、その分、製造コストを削減することができる。
【0050】
これに加えて、熱電対10という比較的、簡便かつ汎用性の高いもので電極2の温度を測定することができ、それにより、電極ユニット1の製造コストをさらに削減することができる。
【0051】
さらに、クロメル線11及びアルメル線12には、絶縁被覆が施されているので、クロメル線11及びアルメル線12をはんだ20を介して電極2に固定した場合でも、クロメル線11及びアルメル線12と電極2との間を絶縁状態に保持することができる。
【0052】
同じ理由により、3つの線11~13を同じ配線経路に設定した場合でも、高周波用導線13を絶縁被覆する必要がないとともに、両者の配線の自由度を向上させることができる。
【0053】
次に、図9~10を参照しながら、第2実施形態の電極ユニット1Aについて説明する。本実施形態の電極ユニット1Aは、第1実施形態の電極ユニット1と比較した場合、図9~10に示すように、電極2への高周波用導線13の固定方法のみが異なっているので、以下、異なる点を中心に説明するとともに、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この電極ユニット1Aでは、両図に示すように、高周波用導線13の先端部が電極2の基端部の外周面に対してらせん状に巻き付けられているとともに、その状態で、はんだ21(接続部)を介して電極2に固定されている。このはんだ21は、電極2の表面を覆うように帯状に設けられており、高周波用導線13の先端部は、はんだ21に埋設されている。それにより、高周波用導線13は、電極2と導通した状態になっている。
【0055】
また、電極2の基端部には、はんだ21(接続部)が電極2の基端側開口部を閉塞するように設けられており、このはんだ21を介して、クロメル線11及びアルメル線12が電極2に固定されている。
【0056】
以上のように、第2実施形態の電極ユニット1Aによれば、第1実施形態の電極ユニット1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、高周波用導線13の一端部が電極2の外周面にらせん状に巻かれた状態ではんだ付けされているので、高周波用導線13を導通状態で堅固に電極2に固定することができる。
【0057】
なお、各実施形態は、Kタイプの熱電対10を用いた例であるが、本発明の熱電対はこれに限らず、Nタイプ及びEタイプなどの他の形式のものでもよく、絶縁被覆を備えたものであればよい。
【0058】
また、各実施形態は、熱電対10のクロメル線11及びアルメル線12がコネクタ5にダイレクトに接続された例であるが、これに代えて、クロメル線11及びアルメル線12がコネクタ5に間接的に接続されるように構成してもよい。例えば、針基部3内に基板を設け、この基板とコネクタの間を2本の補償導線で接続し、クロメル線11及びアルメル線12の一端を基板に接続するように構成してもよい。
【0059】
さらに、各実施形態は、温度センサとして、熱電対10を用いた例であるが、本発明の温度センサは、これに限らず、電極に配置されたものであればよい。例えば、温度センサとして、サーミスタ又は白金測温抵抗体などを用いてもよい。その場合には、高周波用導線13と及び温度センサ自体を電極2にはんだ付けしてもよく、高周波用導線13と温度センサの導線を電極2にはんだ付けしてもよい。
【0060】
一方、各実施形態は、円筒状の電極2を用いた例であるが、本発明の電極は、これに限らず、温度センサの少なくとも一部を収容する内部空間を有するものであればよい。例えば、電極として、横断面多角形の中空の棒状のものを用いてもよい。また、各実施形態は、電極2として、段部を有する形状のものを用いた例であるが、段部のない形状のものを用いてもよい。
【0061】
また、各実施形態は、電極ユニット1を定位脳手術に用いた例であるが、本発明の電極ユニットの用途はこれに限らず、高周波電力を利用した各種治療に使用可能である。例えば、本発明の電極ユニットを定位脳手術以外の焼灼治療に用いてもよい。
【0062】
さらに、各実施形態は、接続部として、はんだ20,21を用いた例であるが、本発明の接続部は、これに代えて、電極に溶着された導電性のろう材を用いてもよい。その場合、例えば、ろう材として、銀ろう、銅ろう又は黄銅ろうなどを用いてもよい。
【0063】
さらに、第2実施形態は、高周波用導線13の先端部を電極2の基端部の外周面に対してらせん状に巻き付けた状態ではんだ付けした例であるが、高周波用導線13の先端部ははんだ付け又はろう付けにより、電極2の基端部に対して固定されていればよい。
【0064】
次に、第3実施形態に係る電極ユニット1Bについて説明する。図11に示すように、第3実施形態の電極ユニット1Bは、針基部3Bを有している。図3図11を比較すると明らかなように、この針基部3Bは、第1実施形態の電極ユニット1の針基部3よりも小径に構成されている。
【0065】
また、第1実施形態の針基部3の場合、電極2の基端部が針基部3の内孔の段部に当接しているのに対して、この針基部3B場合、その内孔には針基部3のような段部が存在していない。さらに、電極2の基端部はその外周面が針基部3Bの内孔の表面に嵌合した状態で、図示しない接着剤を介して、針基部3に固定されている。
【0066】
以上のように構成された電極ユニット1Bの場合、2つの電極ユニット1B,1Bをバイポーラ出力で使用する際、第1実施形態の電極ユニット1に対して、以下に述べるような利点を有している。
【0067】
すなわち、第1実施形態の電極ユニット1の場合、一方の電極ユニット1が定位脳手術器具30に既に取り付けられている状態で、作業者が残りの電極ユニット1の針基部3を掴んだ状態でストッパ33の孔33aに差し込もうとした際、作業者の指や針基部3が隣の針基部3に干渉してしまうことがある。
【0068】
これに対して、第3実施形態の電極ユニット1Bの場合、針基部3Bが、第1実施形態の電極ユニット1の針基部3よりも小径であることにより、上記のような干渉状態が発生しにくい。その結果、2つの電極ユニット1B,1Bをバイポーラ出力で使用する際、これらの定位脳手術器具30への取付作業を容易に行うことができる。
【0069】
また、前述したように、第3実施形態の電極ユニット1Bの場合、針基部3Bの内孔には第1実施形態の電極ユニット1の針基部3のような段部が存在しておらず、それにより、電極ユニット1Bの組立時、電極2の基端部が針基部3Bに固定される位置を調整することができる。それにより、電極2の長さが製造誤差などに起因してばらついている場合でも、その影響を受けることなく、電極ユニット1B全体の長さを一定に保持した状態で組み立てることができる。
【0070】
次に、図12を参照しながら、第4実施形態の電極ユニット1Cについて説明する。本実施形態の電極ユニット1Cは、第1実施形態の電極ユニット1と比較した場合、図12に示すように、クロメル線11及びアルメル線12の保持方法が異なっているので、以下、異なる点を中心に説明するとともに、第1実施形態の電極ユニット1と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0071】
この電極ユニット1Cの場合、図12に示すように、電極2の基端部には、はんだ22及び接着剤23が電極2の基端部開口部を閉塞するように設けられている。はんだ22は、軸線方向から見て弓形に構成されており、接着剤23は、円から弓形の部分を除いた形状に構成されている。なお、本実施形態では、はんだ22が接続部及び第1接続部に相当し、接着剤23が接続部及び第2接続部に相当する。
【0072】
高周波用導線13は、はんだ22を介して電極2に固定されておりクロメル線11及びアルメル線12は、接着剤23を介して電極2に固定されている。これは、以下の理由による。
【0073】
すなわち、第1実施形態の電極ユニット1のように、クロメル線11及びアルメル線12を、高周波用導線13と一緒にはんだ付けしようとした場合、クロメル線11及びアルメル線12の絶縁被覆がはんだ付け作業の熱によって剥がれないように注意しながら、はんだ付け作業を実施する必要がある。これに対して、本実施形態の電極ユニット1Cの場合、クロメル線11及びアルメル線12が接着剤23を介して電極2に固定される関係上、そのような注意を要する作業が不要となることで、クロメル線11及びアルメル線12の電極2への固定をより容易に固定することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 電極ユニット
1A 電極ユニット
1B 電極ユニット
2 電極
10 熱電対(温度センサ)
11 クロメル線
12 アルメル線
13 高周波用導線
20 はんだ(接続部)
21 はんだ(接続部)
22 はんだ(接続部、第1接続部)
23 接着剤(接続部、第2接続部)
30 定位脳手術器具(医療処置器具)
32 アーム(フレーム)
33 ストッパ(固定具)
34 ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12