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特開2023-121829フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121829
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230824BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20230824BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107815
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2021119200の分割
【原出願日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】63/058,953
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・カルドラシア
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エー.・デシスト
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ボン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ミンチ・リー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マランゴーニ
(72)【発明者】
【氏名】チュニー・ウー
(72)【発明者】
【氏名】コン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ピー.・プロコポヴィチ
(57)【要約】
【課題】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和二重結合と、酸に不安定な基とを含むモノマーから形成された重合単位を含む、フリーラジカル重合によって形成された第1のポリマーと、光酸発生剤と、特定構造を有する消光剤であって、架橋可能な基を含まない消光剤と、溶剤を含有することを特徴とするフォトレジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和二重結合と、酸に不安定な基とを含むモノマーから形成された重合単位を含む、フリーラジカル重合によって形成された第1のポリマーと、
光酸発生剤と、
式(1):
【化1】
(式中、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐又はC20環状アルキルであり、前記アルキルは、任意選択で、アミドC(O)に対するα-位以外での-O-基又はC~C20アリールを含み、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐若しくはC~C20環状アルキル又はC~C20アリールであり、Lは、-O-、-S-又は-N(R)-から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子含有基を含むC~C20直鎖又はC~C20分岐アルキレンであり、Rは、水素原子又はC~C20直鎖、若しくはC~C20分岐、若しくは環状アルキルから選択され、R、R及びLのそれぞれは、独立して、置換又は非置換であり得る)
の消光剤であって、架橋可能な基を含まない消光剤と、
溶媒と
を含むフォトレジスト組成物。
【請求項2】
Lは、複数のヘテロ原子含有基を含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記複数のヘテロ原子含有基は、-O-である、請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項4】
各Rは、アミドC(O)に対するα-位以外での-O-基を含むC~C20直鎖、C~C20分岐又はC~C20環状アルキルである、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
前記消光剤は、
【化2】
から選択される、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記第1のポリマーは、(メタ)アクリレートポリマーを含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
1つ以上の塩基に不安定な基を含む材料を更に含む、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
前記第1のポリマーは、以下の繰り返し単位
【化3】
の少なくとも2つを有するコポリマーである、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
(a)基材において、請求項1に記載のフォトレジスト組成物の層を塗布する工程と、
(b)前記フォトレジスト組成物層を活性化放射線にパターンごとに露光する工程と、
(c)レジストレリーフ画像を提供するために、前記露光されたフォトレジスト組成物層を現像する工程と
を含むパターン形成方法。
【請求項10】
前記レジストレリーフ画像のパターンを前記基材に転写する工程を更に含む、請求項9に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月30日に出願された米国仮特許出願第63/058,953号明細書の利益を主張するものであり、その全ての開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ジアミド消光剤を含むフォトレジスト組成物及びこのようなフォトレジスト組成物を使用するパターン形成方法に関する。より具体的には、フォトレジスト組成物は、電子産業において半導体デバイスの製造に特に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
フォトレジスト材料は、半導体基材上に配置された金属、半導体又は誘電体層などの1つ以上の下層に画像を転写するために使用される感光性組成物である。半導体デバイスの集積密度を高め、ナノメートル範囲の寸法を有する構造の形成を可能にするために、高解像度性能を有するフォトレジスト及びフォトリソグラフィー処理ツールが開発され続けてきた。
【0004】
化学増幅フォトレジストは、従来、高解像度処理に使用されている。こようなレジストは、典型的には、酸に不安定な基を有するポリマー及び光酸発生剤を使用する。フォトマスクを介した活性化照射へのパターンごとの露光により、酸発生剤が酸を形成し、これは、露光後のベーク中、ポリマーの露光された領域において、酸に不安定な基の開裂を引き起こす。これにより、現像液中のレジストの露光領域及び非露光領域の溶解特性に差が生じる。ポジ型現像(PTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域が現像液に可溶になり、基材表面から除去されるが、現像液に不溶性である非露光領域は、現像後に残り、ポジ画像を形成する。ネガ型現像(NTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域は、現像液に不溶性になり、現像後に残り、ネガ画像を形成する。得られたレリーフ画像により、基材の選択的な処理が可能になる。例えば、(非特許文献1)及び(非特許文献2)を参照されたい。
【0005】
半導体デバイスでナノメートル規模のフィーチャのサイズを実現するための1つの手法は、化学的に増幅されたフォトレジストの露光中、例えば248ナノメートル(nm)以下の短波長の光を使用することである。リソグラフィー性能を更に改善するために、液浸リソグラフィーツールが開発されており、例えばKrF(248nm)又はArF(193nm)光源を有するスキャナーなど、画像デバイスのレンズの開口数(NA)を効果的に増加させる。これは、画像デバイスの下表面と半導体ウェハーの上表面との間に比較的高い屈折率の流体、典型的には水を使用することによって達成される。しかしながら、リソグラフィーの解像度が一層高くなるにつれて、フォトレジストパターンの線幅粗さ(LWR)、限界寸法均一性(CDU)及び焦点深度(DoF)は、高忠実度のパターンを形成するうえで一層重要になっている。
【0006】
リソグラフィープロセスでは、フィルムへの光源の焦点を厳密に制御することが重要であり、なぜなら、これは、光酸発生器から生成される酸の垂直濃度を大きく左右するからである。結果として、これは、パターンの限界寸法(CD)並びにLWR及び欠陥の生成に影響を与える。リソグラフィーツールは、光の焦点を制御する際に一層正確になっているが、フォトレジストが広い焦点深度を示すことも望ましい。焦点深度は、得られたパターンのCD、典型的には+/-10%のCDにおいて許容可能な変化をもたらすフォトレジスト層内の焦点の望ましくない変化に対する許容値である。このため、フォトレジスト層内の光生成酸拡散は、正確な制御を用い、写真速度などの他のレジスト属性のバランスをとるために適合させる必要がある。酸の拡散が速すぎるか又は不均一である場合、フィルムの領域で酸濃度の差が見られることがあり、これによりCDとLWRとの差が生じ得、欠陥が発生し得る。
【0007】
焦点深度が改善され、酸の拡散が制御されたフォトレジスト組成物の文献に例がある。例えば、(特許文献1)は、保護された極性基を含むポリマーマトリックスを有するフォトレジスト組成物を開示している。その文献は、フォトレジストの改善された酸拡散制御のために、より広い焦点深度が観察されたことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,513,549号明細書
【特許文献2】米国特許第8,431,325号明細書
【特許文献3】米国特許第4,189,323号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20180059545号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Uzodinma Okoroanyanwu,Chemistry and Lithography,SPIE Press and John Wiley and Sons,Inc.,2010
【非特許文献2】Chris Mack,Fundamental Principles of Optical Lithography,John Wiley and Sons,Inc.,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術に関連する1つ以上の問題に対処する、電子デバイス製造において有用なフォトレジスト組成物及びパターン化方法が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
エチレン性不飽和二重結合と、酸に不安定な基とを含むモノマーから形成された重合単位を含む、フリーラジカル重合によって形成された第1のポリマーと、光酸発生剤と、式(1):
【化1】
(式中、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐又はC20環状アルキルであり、アルキルは、任意選択で、アミドC(O)に対するα-位以外での-O-基又はC~C20アリールを含み、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐若しくはC~C20環状アルキル又はC~C20アリールであり、Lは、O-、-S-又は-N(R)-から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子含有基を含むC~C20直鎖又はC~C20分岐アルキレンであり、Rは、水素原子又はC~C20直鎖、若しくはC~C20分岐、若しくは環状アルキルから選択され、R、R及びLのそれぞれは、独立して、置換又は非置換であり得る)
の消光剤であって、架橋可能な基を含まない消光剤と、溶媒とを含むフォトレジスト組成物が本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、量の制限を意味せず、本明細書で特に示さないか又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「又は」は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「酸に不安定な基」は、結合が酸の触媒作用により、任意選択で典型的には熱処理によって切断され、ポリマーに形成される、カルボン酸又はアルコール基などの極性基をもたらす基を指し、任意選択で典型的には切断された結合に接続された部位がポリマーから切り離されるようになる。このような酸は、典型的には、露光後のベーク中に結合が切断される光生成酸である。適切な酸に不安定な基は、例えば、3級アルキルエステル基、2級又は3級アリールエステル基、アルキル及びアリール基の組み合わせを有する2級又は3級エステル基、3級アルコキシ基、アセタール基又はケタール基を含む。酸に不安定な基は、当技術分野では、一般に「酸で切断可能な基」、「酸で切断可能な保護基」、「酸に不安定な保護基」、「酸で脱離する基」、「酸で分解可能な基」及び「酸に感受性である基」とも呼ばれる。
【0014】
「置換」とは、指定された原子の通常の原子価を超えない限り、基における少なくとも1つの水素原子が別の原子又は基に置き換えられることを意味する。置換基がオキソ(即ち=O)である場合、炭素原子における2つの水素が置き換えられている。置換基又は変数の組み合わせが許容される。「置換」位置に存在し得る例示的な基は、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、ヒドロキシ(-OH)、オキソ(=O)、アミノ(-NH)、モノ-又はジ-(C1~6)アルキルアミノ、アルカノイル(アシルなどのC2~6アルカノイル基など)、ホルミル(-C(=O)H)、カルボン酸又はこれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩、C2~6アルキルエステル(-C(=O)O-アルキル又はOC(=O)-アルキル)及びC7~13アリールエステル(-C(=O)O-アリール又はOC(=O)-アリール)などのエステル(アクリレート、メタクリレート及びラクトンを含む)、アミド(-C(=O)NR(Rは、水素又はC1~6アルキルである))、カルボキサミド(-CHC(=O)NR(Rは水素又はC1~6アルキルである))、ハロゲン、チオール(-SH)、C1~6アルキルチオ(-S-アルキル)、チオシアノ(-SCN)、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6ハロアルキル、C1~9アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、C3~12シクロアルキル、C5~18シクロアルケニル、少なくとも1つの芳香環(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど、各環は、置換又は非置換芳香族である)を有するC6~12アリール、1~3の分離又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するC7~19アリールアルキル、1~3の分離又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するアリールアルコキシ、C7~12アルキルアリール、C4~12ヘテロシクロアルキル、C3~12ヘテロアリール、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)-アリール)又はトシル(CHSO-)を含むが、これらに限定されない。基が置換されている場合、炭素原子の示されている数は、任意の置換基の炭素原子を除いた基における炭素原子の総数である。例えば、基-CHCHCNは、シアノ基で置換されたCアルキル基である。
【0015】
エチレン性不飽和二重結合と、酸に不安定な基とを含むモノマーから形成された重合単位を含む、フリーラジカル重合によって形成された第1のポリマーと、光酸発生剤と、溶媒と、2つのアミド基を結合する架橋にヘテロ原子を含むジアミド消光剤とを含むフォトレジスト組成物が本明細書で開示される。一実施形態では、ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄又はこれらの組み合わせを含み得る。消光剤内の2つのアミド基及びヘテロ原子含有結合基の存在は、そうでなければ露光されたレジスト層領域から露光されていないレジスト層領域に拡散していたであろう光生成酸を効果的に消光(中和)することができ、例えば焦点深度の増加及び粗さの低減など、所望の特性を可能にすると考えられる。
【0016】
第1のポリマーは、好ましくは、フリーラジカル重合によって形成された酸感受性ポリマーであり、エチレン性不飽和二重結合と、酸に不安定な基とを含むモノマーから形成された重合単位を含む。第1のポリマーは、典型的には、2つ以上の異なる繰り返し単位を含むコポリマーである。コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、スターブロックコポリマー、グラジエントコポリマーなどであり得るが、ランダムコポリマーが好ましい。
【0017】
酸に不安定な基を含むモノマーは、式(1a)、(1b)、(1c)又は(1d)のものであり得る。
【化2】
【0018】
式(1a)及び(1b)では、R及びRは、それぞれ独立して、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは非置換C1~10アルキル又は置換若しくは非置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは非置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。
【0019】
式(1a)では、Lは、少なくとも1つの炭素原子、少なくとも1つのヘテロ原子又はこれらの組み合わせを含む二価結合基である。例えば、Lは、1~10の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。一実施形態では、Lは、-OCH-、-OCHCHO-又は-N(R41)-であり得、R41は、水素又はC1~6アルキルである。
【0020】
式(1a)及び(1b)では、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキル、直鎖若しくは分岐C2~20アルケニル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルケニル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式若しくは多環式C6~20アリール又は単環式若しくは多環式C4~20ヘテロアリールであり、そのそれぞれが置換又は非置換であり、但し、R~Rの1つのみが水素であり得、R~Rの1つのみが水素であり得る。好ましくは、R~Rは、それぞれ独立して、直鎖若しくは分岐C1~6アルキル又は単環式若しくは多環式C3~10シクロアルキルであり、そのそれぞれが置換又は非置換である。
【0021】
式(1a)では、R~Rのいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R~Rのそれぞれは、任意選択で、構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R42)-S(O)-から選択される1つ以上の基を含むことができ、式中、R42は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。式(1b)では、R~Rのいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R~Rのそれぞれは、任意選択で、構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R43)-S(O)-から選択される1つ以上の基を含み得、式中、R43は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルである。例えば、R~Rのいずれか1つ以上は、独立して、式-CHC(=O)CH(3-n)の基であり得、式中、各Yは、独立して、置換又は非置換C3~10ヘテロシクロアルキルであり、nは、1又は2である。例えば、各Yは、独立して、式-O(Ca1)(Ca2)O-の基を含む置換又は非置換C3~10ヘテロシクロアルキルであり得、式中、Ca1及びCa2は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換アルキルであり、Ca1及びCa2は、一緒に任意選択で環を形成する。
【0022】
式(1c)では、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、単環式又は多環式C3~20ヘテロシクロアルキル、単環式又は多環式C6~20アリール又は単環式若しくは多環式C4~20ヘテロアリールであり得、そのそれぞれは、置換又は非置換であり、Rは、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、置換又は非置換である。任意選択で、R又はRの1つは、Rと一緒に複素環を形成する。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。
【0023】
式(1d)では、R10~R12は、それぞれ独立して、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキル、単環式若しくは多環式C6~20アリール又は単環式若しくは多環式C4~20ヘテロアリールであり得、そのそれぞれは、置換又は非置換であり、R10~R12のいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R10~R12のそれぞれは、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を含み得、式中、R44は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得、Xは、ビニル及びノルボルニルから選択される重合性基であり、Xがビニルである場合、Lが単結合ではないことを条件として、Lは、単結合又は二価結合基である。好ましくは、Lは、単環式若しくは多環式C6~30アリーレン又は単環式若しくは多環式C6~30シクロアルキレンであり、そのそれぞれは、置換又は非置換であり得る。式(1d)では、nは、0又は1である。nが0である場合、L基は、酸素原子に直接接続されていることを理解されたい。
【0024】
モノマー(1a)の非限定的な例は、
【化3】
を含む。
【0025】
式(1b)のモノマーの非限定的な例は、
【化4】
【化5】
を含み、式中、Rは、上記で定義されたとおりであり、R及びR’’は、それぞれ独立して、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキル、直鎖若しくは分岐C2~20アルケニル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルケニル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式若しくは多環式C6~20アリール又は単環式若しくは多環式C4~20ヘテロアリールであり、そのそれぞれは、置換又は非置換である。
【0026】
式(1c)のモノマーの非限定的な例は、
【化6】
を含み、式中、Rは、上記で定義されたとおりである。
【0027】
式(1d)のモノマーの非限定的な例は、
【化7】
を含む。
【0028】
更に別の例では、酸に不安定な基を含むモノマーは、例えば、式:
【化8】
の環状アセタール又は環状ケタール基を有し得、式中、Rは、上記で定義されたとおりである。
【0029】
更に別の例では、酸に不安定な基を含むモノマーは、例えば、式:
【化9】
の3級アルコキシ基を有し得る。
【0030】
酸に不安定な基を含む繰り返し単位は、典型的には、第1のポリマーにおける総繰り返し単位に基づいて25~70モルパーセント(モル%)、典型的には30~50モル%、より典型的には30~45モル%の量で第1のポリマーに存在する。
【0031】
例示的な実施形態では、第1のポリマーは、(メタ)アクリレートポリマーである。
【0032】
第1のポリマーは、典型的には、第1の繰り返し単位と異なる1つ以上の更なる繰り返し単位を含む。適切な更なる繰り返し単位は、例えば、エッチング速度及び溶解性など、フォトレジスト組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の更なる単位を含み得る。例示的な更なる単位は、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン及びビニルエステルの1つ以上を含み得る。第1のポリマーに存在する場合、1つ以上の更なる繰り返し単位は、第1のポリマーの総繰り返し単位に基づいて70モル%まで、典型的には3~50モル%の量で使用され得る。適切な更なる繰り返し単位は、例えば、ラクトン基を含む繰り返し単位、塩基可溶性基を含む繰り返し単位、極性基を含む繰り返し単位、本発明のジアミド消光剤を含む以下に記載の繰り返し単位及びこれらの組み合わせの1つ以上を含む。
【0033】
ラクトン基を含む適切な繰り返し単位は、式(2):
【化10】
のモノマーから誘導され得る。
【0034】
式(2)では、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは非置換C1~10アルキル又は置換若しくは非置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは非置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。Lは、単結合又は置換若しくは非置換C1~30アルキレン、置換若しくは非置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは非置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~30アリーレン、置換若しくは非置換C7~30アリールアルキレン又は置換若しくは非置換C1~30ヘテロアリーレン又は置換若しくは非置換C3~30ヘテロアリールアルキレンの1つ以上を含む二価結合基であり得、式中、Lは、任意選択で、例えば-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)及びN(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を更に含み得、R44は、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。R14は、単環式、多環式又は縮合多環式C4~20ラクトン含有基であり得る。
【0035】
式(2)のラクトン基を含むモノマーの非限定的な例は、
【化11】
(式中、Rは、本明細書に開示されているとおりである)
を含む。
【0036】
塩基可溶性基を含む重合単位の場合、塩基可溶性基は、12以下、好ましくは2~12、より好ましくは3~9、最も好ましくは4~8のpKaを有する。pKaは、典型的には、25℃で水溶液において測定され、例えばSirius Analytical Instruments Ltd.から入手可能な電位差測定pHメーターを使用することによってなど、電位差滴定によって実験的に決定され得るか、又は例えばAdvanced Chemistry Development(ACD)Labsソフトウェアバージョン11.02を使用して計算され得る。比較的高いpKaを有する官能基(例えば、-C(CFOH基)の酸価を測定する場合、有機溶媒又は有機溶媒混合物などの非水性滴定剤を使用することができる。
【0037】
塩基可溶性基を含む適切な繰り返し単位は、式(3):
【化12】
(式中、繰り返し単位は、12以下のpKaを有する)
のモノマーから誘導され得る。Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは非置換C1~10アルキル又は置換若しくは非置換C1~10フルオロアルキルであり得る。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは非置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。Qは、置換若しくは非置換C1~30アルキレン、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは非置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~30アリーレン、置換若しくは非置換二価C7~30アリールアルキル、置換若しくは非置換C1~30ヘテロアリーレン又は置換若しくは非置換二価C3~30ヘテロアリールアルキル或いは-C(O)-O-の1つ以上であり得る。Wは、塩基可溶性基であり、例えば-C(O)-OH、-C(CFOHなどのフッ素化アルコール、アミド、イミド又は-NH-S(O)-Yから選択することができ、式中、Yは、F又はC1~4パーフルオロアルキルである。式(3)では、aは、1~3の整数である。
【0038】
式(3)のモノマーの非限定的な例は、
【化13】
(式中、R及びYは、上記のとおりである)
を含む。
【0039】
極性基を含む適切な繰り返し単位は、式(4):
【化14】
のモノマーから誘導され得る。
【0040】
式(4)では、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは非置換C1~10アルキル又は置換若しくは非置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは非置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。Lは、単結合又は置換若しくは非置換C1~30アルキレン、置換若しくは非置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは非置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~30アリーレン、置換若しくは非置換C7~30アリールアルキレン、又は置換若しくは非置換C1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは非置換C3~30ヘテロアリールアルキレンの1つ以上を含む二価結合基であり得、式中、Lは、任意選択で、例えば-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を更に含み得、R44は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。R15は、極性基であり得、例えば、ヒドロキシアルキルは、1つ以上のヒドロキシ基又はシアノ基で置換されているC~C15アルキル基を有する。
【0041】
式(4)のモノマーの非限定的な例は、
【化15】
を含む。
【0042】
第1のポリマーとして使用することができる例示的なコポリマーは、例えば、以下を含む。
【化16】
【化17】
【化18】
【0043】
第1のポリマーは、典型的には、1,000~50,000ダルトン(Da)、具体的には2,000~30,000Da、より具体的には3,000~20,000Da、更により具体的には3,000~10,000Daの重量平均分子量Mを有する。分子量は、ポリスチレン標準を使用したGPCによって決定される。第1のポリマーは、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて50~97重量パーセント(重量%)、好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~90重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0044】
第1のポリマーは、好ましくは、当業者に周知の技術を使用してフリーラジカル重合によって調製される。
【0045】
例えば、本明細書で記載される繰り返し単位に対応する1つ以上のモノマーは、適切な溶媒及び開始剤を使用して組み合わされるか又は別々に供給され、反応器中で重合され得る。例えば、第1及び第2のポリマーは、有効温度での加熱、有効波長での化学線の照射又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。典型的には、混合時、所望の分子量に達したら、反応混合物を冷却させ、次いで非溶媒に注ぐ。ポリマーは、非溶媒から沈殿し、濾過によって収集され、分離され、乾燥され得る。反応混合物は、反応溶媒を除去することによって簡単に濃縮することもできる。
【0046】
フォトレジスト組成物は、上記の第1のポリマーに加えて且つそれと異なる1つ以上のポリマーを更に含み得る。例えば、フォトレジスト組成物は、上記のように組成が異なる更なるポリマー又は上記のものと同様であるが、必要な繰り返し単位のそれぞれを含まないポリマーを含み得る。更に又は代わりに、1つ以上の更なるポリマーは、フォトレジスト技術で周知のもの、例えばポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリノルボルネン、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェノール、ノボラック、スチレン系ポリマー、ポリビニルアルコール又はこれらの組み合わせから選択されるものを含み得る。
【0047】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の光酸発生剤(PAG)を更に含む。適切な光酸発生化合物は、式Gを有し得、この場合、Gは、有機カチオンであり、Aは、典型的には、スルホネート、スルホンアミドのアニオン、スルホンイミドのアニオン又はメチドアニオンを含む有機アニオンである。適切な有機アニオンは、例えば、フルオロアルキル及びアルキルスルホネート、フルオロ-シクロアルキル及びシクロアルキルスルホネートを含む。
【化19】
【0048】
適切な有機カチオンは、例えば、2つのアルキル基、アリール基又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン及び3つのアルキル基、アリール基又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンを含む。いくつかの実施形態では、Gは、2つのアルキル基、アリール基又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン又は3つのアルキル基、アリール基若しくはアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンである。いくつかの実施形態では、Gは、式(5A)を有する置換スルホニウムカチオン又は式(5B)を有するヨードニウムカチオン:
【化20】
(式中、各Raaは、独立して、C1~20アルキル基、C1~20フルオロアルキル基、C3~20シクロアルキル基、C3~20フルオロシクロアルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20フルオロアルケニル基、C6~30アリール基、C6~30フルオロアリール基、C6~30ヨードアリール基、C1~30ヘテロアリール基、C7~20アリールアルキル基、C7~20フルオロアリールアルキル基、C2~20ヘテロアリールアルキル基又はC2~20フルオロヘテロアリールアルキル基であり、そのそれぞれは、置換又は非置換であり、各Raaは、別個であるか、又は単結合若しくは二価結合基を介して別の基Raaに接続されて、環を形成する)
である。各Raaは、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C1~12ヒドロカルビレン-、-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-、-C(O)-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-及び-C(O)-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-O-から選択される1つ以上の基を含み得る。各Raaは、独立して、任意選択で、例えば3級アルキルエステル基、2級又は3級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する2級又は3級エステル基、3級アルコキシ基、アセタール基又はケタール基から選択される、酸に不安定な基を含み得る。Raa基の接続に適した二価結合基は、例えば、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(S)-、-C(Te)-又は-C(Se)-、置換又は非置換C1~5アルキレン及びこれらの組み合わせを含む。
【0049】
式(5A)の例示的なスルホニウムカチオンは、以下を含む。
【化21】
【0050】
式(5B)の例示的なヨードニウムカチオンは、以下を含む。
【化22】
【0051】
PAGは、例えば、第1のポリマー又は異なるポリマーの一部として、非ポリマー系形態又は重合された形態でフォトレジスト組成物中に存在し得る。適切なPAGは、化学的に増幅されたフォトレジストの分野で知られており、例えば、以下を含む:オニウム塩、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム(アダマンタン-1-イルメトキシカルボニル)-ジフルオロメタンスルホネート及びトリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、ジ-t-ブチルフェニルヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート及びジ-t-ブチルフェニルヨードニウムカンファースルホネート。非イオン性スルホネート及びスルホニル化合物は、光酸発生剤、例えばニトロベンジル誘導体、例えば2-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、2,6-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート及び2,4-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、スルホン酸エステル、例えば1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン及び1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、ジアゾメタン誘導体、例えばビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、グリオキシム誘導体、例えばビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム及びビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル及びハロゲン含有トリアジン化合物、例えば2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリフェニルスルホニウム(アダマンタン-1-イルメトキシカルボニル)-ジフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及び2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンとしても機能することが知られている。適切な光酸発生剤は、Hashimotoらの(特許文献2)、37列、11~47行及び41~91列に更に記載されている。他の適切なスルホネートPAGSは、(特許文献3)及び(特許文献2)に記載されるとおり、スルホン化エステル及びスルホニルオキシケトン、ニトロベンジルエステル、s-トリアジン誘導体、ベンゾイントシレート、t-ブチルフェニルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテート及びt-ブチルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテートを含む。典型的には、光酸発生剤は、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて2~65重量%、より典型的には5~55重量%、より好ましくは8~25重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0052】
フォトレジスト組成物は、式(6):
【化23】
(式中、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐又はC~C20環状アルキルであり、アルキルは、任意選択で、アミドC(O)に対するα-位以外での-O-基又はC~C20アリールを含み、Rは、独立して、水素原子、C~C20直鎖、C~C20分岐若しくはC~C20環状アルキル又はC~C20アリールであり、Lは、-O-、-S-又は-N(R)-から独立して選択される1つ以上のヘテロ原子含有基を含むC~C20直鎖又はC~C20分岐アルキレンであり、Rは、水素原子又はC~C20直鎖、若しくはC~C20分岐、若しくは環状アルキルから選択され、R、R及びLのそれぞれは、独立して、置換又は非置換であり得る)
の構造を有する消光剤を更に含む。R、R及びLの適切な置換基は、例えば、シアノ、C1~6シアノアルキル、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6ハロアルキル、C1~9アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、C3~12シクロアルキル、C5~18シクロアルケニル、少なくとも1つの芳香環(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど、各環は、置換又は非置換芳香族である)を有するC6~12アリール、1~3の別個の環又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するC7~19アリールアルキル、1~3の別個の環又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するアリールアルコキシ、C7~12アルキルアリール、C4~12ヘテロシクロアルキル、C3~12ヘテロアリール、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)-アリール)、トシル(CHSO-)又はそれらの組み合わせを含む。基が置換されている場合、炭素原子の示されている数は、任意の置換基の炭素原子を除いた基における炭素原子の総数である。例えば、基-CHCHCNは、シアノ基で置換されたCアルキル基である。
【0053】
消光剤は、架橋可能な基、例えばヒドロキシ、エポキシ、カルバメート及びビニル基を含まない。そのため、R、R又はLのいずれも、置換又は非置換にかかわらず、架橋可能な基を含まない。消光剤におけるこのような基の存在は、ポリマーにおける酸に不安定な基の開裂後の暴露中及び暴露後のベーク中に形成され得る第1のポリマーにおける-COOH又は-OH基との反応をもたらすと考えられる。これにより、フォトレジスト層の露光領域におけるポリマーの極性切り替えが減少し、フォトレジスト層の露光領域と非露光領域との間のコントラストが低下する。
【0054】
消光剤は、レジストパターン化プロセス中に組成物から形成されたフォトレジスト層における光生成酸拡散を制御するためにフォトレジスト組成物中に存在する。本発明の消光剤における2つのアミド基及びヘテロ原子含有結合基の存在は、そうでなければ露光されたレジスト層領域から露光されていないレジスト層領域に拡散していた光生成酸を効果的に消光(中和)することができ、所望の特性、例えば焦点深度の増加及び粗さの減少を可能にすると考えられる。
【0055】
上記のように、消光剤は、非ポリマー系形態であり得る。本発明の適切な消光剤は、市販されており、且つ/又は当業者によって作製することができる。非ポリマー系消光剤は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて0.01~5重量%、好ましくは0.02~3重量%の量でフォトレジスト組成物に存在する。式(6)の例示的な適切な非ポリマー系消光剤を以下に示す。
【化24】
【0056】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の塩基に不安定な基を含む材料(「塩基に不安定な材料」)を更に含み得る。本明細書で言及するように、塩基に不安定な基は、開裂反応を受けて、暴露後及び暴露後のベーク工程後、水性アルカリ現像剤の存在下でヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸などの極性基を提供することができる官能基である。塩基に不安定な基は、塩基に不安定な基を含むフォトレジスト組成物の現像工程前に著しく反応しない(例えば、結合切断反応を起こさない)。従って、例えば、塩基に不安定な基は、露光前のソフトベーク、露光及び露光後のベーク工程中、実質的に不活性である。「実質的に不活性」とは、塩基に不安定な基(又は部位)の5%以下、好ましくは1%以下が露光前のソフトベーク、露光及び露光後のベーク工程中に分解、切断又は反応することを意味する。塩基に不安定な基は、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の0.26規定(N)水溶液などの水性アルカリフォトレジスト現像剤を使用した典型的なフォトレジスト現像条件下で反応性である。例えば、TMAHの0.26N水溶液は、単一パドル現像又は動的現像に使用することができ、例えば、0.26NのTMAH現像剤は、画像化されたフォトレジスト層に10~120秒(s)などの適切な時間で分配される。例示的な塩基に不安定な基は、エステル基、典型的にはフッ素化エステル基である。好ましくは、塩基に不安定な材料は、実質的に混和性ではなく、第1及び第2のポリマー並びにフォトレジスト組成物の他の固体成分よりも低い表面エネルギーを有する。基材上にコーティングされると、塩基に不安定な材料は、これにより、フォトレジスト組成物の他の固体成分から、形成されたフォトレジスト層の上表面に分離することができる。塩基に不安定なポリマーは、使用される場合、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて0.01~10重量%の量で存在する。
【0057】
いくつかの態様では、塩基に不安定な材料は、本明細書では塩基に不安定なポリマーとも呼ばれるポリマー材料であり、1つ以上の塩基に不安定な基を含む1つ以上の繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基に不安定なポリマーは、同じ又は異なる2つ以上の塩基に不安定な基を含む繰り返し単位を含み得る。好ましい塩基に不安定なポリマーは、2つ以上の塩基に不安定な基を含む少なくとも1つの繰り返し単位、例えば2つ又は3つの塩基に不安定な基を含む繰り返し単位を含む。
【0058】
塩基に不安定なポリマーは、式(7)
【化25】
(式中、Xは、ビニルとアクリルから選択される重合性基であり、Lは、置換又は非置換の直鎖又は分岐C1~20アルキレン、置換又は非置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-又は-C(O)O-の1つ以上を含む二価結合基であり、Rfは、置換又は非置換C1~20フルオロアルキル基であり、但し、式(7)のカルボニル(C=O)に結合された炭素原子が少なくとも1つのフッ素原子で置換されていることを条件とする)
のモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーであり得る。
【0059】
式(7)の例示的なモノマーは、以下を含む。
【化26】
【0060】
塩基に不安定なポリマーは、2つ以上の塩基に不安定な基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基に不安定なポリマーは、式(8)
【化27】
(式中、X及びRfは、式(7)で定義されているとおりであり、Lは、置換又は非置換の直鎖又は分岐C1~20アルキレン、置換又は非置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-又は-C(O)O-の1つ以上を含む多価結合基であり、nは、2以上の整数、例えば2又は3である)
のモノマーから誘導される繰り返し単位を含み得る。
【0061】
式(8)の例示的なモノマーは、以下を含む。
【化28】
【0062】
塩基に不安定なポリマーは、1つ以上の塩基に不安定な基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基に不安定なポリマーは、式(9)
【化29】
(式中、Xは、式(7)で定義されているとおりであり、Lは、置換又は非置換の直鎖又は分岐C1~20アルキレン、置換又は非置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-又は-C(O)O-の1つ以上を含む二価結合基であり、Lは、置換又は非置換C1~20フルオロアルキレン基であり、式(9)のカルボニル(C=O)に結合された炭素原子は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されており、Rは、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキル又は置換若しくは非置換C3~20シクロアルキルである)
のモノマーから誘導される繰り返し単位を含み得る。
【0063】
式(9)の例示的なモノマーは、以下を含む。
【化30】
【0064】
本発明の更に好ましい態様では、塩基に不安定なポリマーは、1つ以上の塩基に不安定な基と、1つ以上の酸に不安定なエステル部位(例えば、t-ブチルエステル)又は酸に不安定なアセタール基などの1つ以上の酸に不安定な基とを含み得る。例えば、塩基に不安定なポリマーは、塩基に不安定な基及び酸に不安定な基を含む繰り返し単位を含み得、即ち、塩基に不安定な基及び酸に不安定な基の両方は、同じ繰り返し単位に存在する。別の例では、塩基に不安定なポリマーは、塩基に不安定な基を含む第1の繰り返し単位と、酸に不安定な基を含む第2の繰り返し単位とを含み得る。本発明の好ましいフォトレジストは、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ画像に関連する欠陥の減少を示すことができる。
【0065】
塩基に不安定なポリマーは、第1及び第2のポリマーについて本明細書に記載されている方法を含む、当技術分野における任意の適切な方法を使用して調製することができる。例えば、塩基に不安定なポリマーは、有効温度での加熱、有効波長での化学線の照射又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。更に又は代わりに、1つ以上の塩基に不安定な基を、適切な方法を使用してポリマーの主鎖にグラフトすることができる。塩基に不安定なポリマーは、典型的には、1,000~50,000Da、具体的には2,000~30,000Da、より具体的には3,000~20,000Da、更により具体的には3,000~10,000Daの重量平均分子量Mを有する。分子量は、ポリスチレン標準を使用したGPCによって決定される。いくつかの態様では、塩基に不安定な材料は、1つ以上の塩基に不安定なエステル基、好ましくは1つ以上のフッ素化エステル基を含む単一分子である。単一分子である塩基に不安定な材料は、50~1,500Daの範囲のMを有する場合がある。例示的な単一分子の塩基に不安定な材料は、以下を含む。
【化31】
【0066】
フォトレジスト組成物は、組成物の成分を溶解し、基材へのそのコーティングを容易にするための溶媒を更に含む。好ましくは、溶媒は、電子デバイスの製造に従来から使用されている有機溶媒である。適切な溶媒は、例えば、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及び1-クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール及び4-メチル-2-ペンタノールなどのアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びアニソールなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ-ブチルケトン、2-ヘプタノン及びシクロヘキサノン(CHO)などのケトン、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HBM)及びアセト酢酸エチルなどのエステル、γ-ブチロラクトン(GBL)及びε-カプロラクトンなどのラクトン、N-メチルピロリドンなどのラクタム、アセトニトリル及びプロピオニトリルなどのニトリル、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート及びプロピレンカーボネートなどの環状又は非環状カーボネートエステル、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒、水及びこれらの組み合わせを含む。これらのうち、好ましい溶媒は、PGME、PGMEA、EL、GBL、HBM、CHO及びこれらの組み合わせである。フォトレジスト組成物中の総溶媒含有量(即ち全ての溶媒の累積溶媒含有量)は、典型的には、フォトレジスト組成物の総重量に基づいて40~99重量%、例えば、70~99重量%又は85~99重量%である。所望の溶媒含有量は、例えば、コーティングされたフォトレジスト層の所望の厚さ及びコーティング条件に依存することになる。
【0067】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の更なる任意の添加剤を更に含み得る。例えば、任意の添加剤は、1つ以上の光分解性消光剤(光分解性塩基としても知られる)、上記のジアミド消光剤化合物に加えて塩基性消光剤、界面活性剤、レジスト安定剤、化学染料及び造影剤、ストライエーション防止剤、可塑剤、速度向上剤(、増感剤など、又はこれらの組み合わせを含み得る。以下に別段の記載がない限り、任意の添加剤は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて0.01~10重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0068】
光分解性消光剤は、照射時に弱酸を生成する。光分解性消光剤から生成された酸は、レジストマトリックスに存在する酸に不安定な基と迅速に反応するほど強力ではない。例示的な光分解性消光剤は、例えば、光分解性カチオン、好ましくは強酸発生化合物を調製するためにも有用であるが、例えばC1~20カルボン酸又はC1~20スルホン酸などの弱酸(pKa>1)のアニオンと対になっているものを含む。例示的なカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などを含む。例示的なカルボン酸は、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などを含む。好ましい実施形態では、光分解性消光剤は、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレートなどの光分解性有機双性イオン化合物である。
【0069】
例示的な塩基性消光剤は、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン:n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシ-エチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザネトリイル))テトラエタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール及び2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの直鎖脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート及びN-(2-アセトキシ-エチル)モルホリンなどの環状脂肪族アミン、ピリジン、ジ-tert-ブチルピリジン及びピリジニウムなどの芳香族アミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N,N,N-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメートなどの直鎖及び環状アミド並びにその誘導体、スルホン酸塩、スルファミン酸塩、カルボン酸塩及びホスホン酸塩の4級アンモニウム塩などのアンモニウム塩、一次及び二次アルジミン及びケチミンなどのイミン、任意選択で置換されたピラジン、ピペラジン及びフェナジンなどのジアジン、任意選択で置換されたピラゾール、チアジアゾール及びイミダゾールなどのジアゾール並びに2-ピロリドン及びシクロヘキシルピロリジンなどの任意選択で置換されたピロリドンを含む。
【0070】
例示的な界面活性剤は、フッ素化及び非フッ素化界面活性剤を含み、イオン性又は非イオン性であり得、非イオン性界面活性剤が好ましい。例示的なフッ素化非イオン性界面活性剤は、3M Corporationから入手可能なFC-4430及びFC-4432界面活性剤などのペルフルオロC界面活性剤並びにOmnovaのPOLYFOX PF-636、PF-6320、PF-656及びPF-6520フルオロ界面活性剤などのフルオロジオールを含む。一態様では、フォトレジスト組成物は、フッ素含有繰り返し単位を含む界面活性剤ポリマーを更に含む。
【0071】
フォトレジスト組成物は、以下の公知の手順に従って調製することができる。例えば、組成物は、組成物の固体(非溶媒)成分を溶媒成分に溶解することによって調製することができる。
【0072】
次に、本発明のフォトレジスト組成物を使用するパターン化方法について説明する。フォトレジスト組成物をコーティングすることができる適切な基材は、電子デバイス基材を含む。本発明では、半導体ウェハー、多結晶シリコン基材、マルチチップモジュールなどのパッケージ基材、フラットパネルディスプレイ基材、有機発光ダイオード(OLED)を含む発光ダイオード(LED)のための基材などの多様な電子デバイス基材を本発明で使用することができ、半導体ウェハーが典型的である。このような基材は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅及び金の1つ以上から構成される。適切な基材は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレイ、光集積回路及びLEDの製造において使用されるものなどのウェハーの形態であり得る。このような基材は、任意の適切なサイズであり得る。典型的なウェハー基材の直径は、200~300ミリメートル(mm)であるが、本発明によれば、より小さい直径及びより大きい直径を有するウェハーを適切に使用することができる。基材は、形成されているデバイスの動作中の又は動作可能な部分を任意選択で含み得る1つ以上の層又は構造を含み得る。
【0073】
典型的には、ハードマスク層、例えば、スピンオンカーボン(SOC)、非晶質炭素若しくは金属ハードマスク層などの1つ以上のリソグラフィー層、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)若しくは酸窒化ケイ素(SiON)層などのCVD層、有機若しくは無機の下層又はこれらの組み合わせは、本発明のフォトレジスト組成物をコーティングする前に基材の上表面に提供される。このような層は、上塗りされたフォトレジスト層と共にリソグラフィー材料スタックを形成する。
【0074】
任意選択で、フォトレジスト組成物をコーティングする前に接着促進剤の層を基材表面に塗布することができる。接着促進剤が望ましい場合、例えばシラン、典型的にはトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラン又はγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤など、ポリマーフィルムのための任意の適切な接着促進剤が使用され得る。特に適切な接着促進剤は、DuPont Electronics&Imaging(Marlborough,Massachusetts)から入手可能なAP3000、AP8000及びAP9000Sの名称で販売されているものを含む。
【0075】
フォトレジスト組成物は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードなどを含む任意の適切な方法によって基材にコーティングすることができる。例えば、フォトレジストの層の塗布は、コーティングトラックを使用して溶媒中でフォトレジストをスピンコーティングすることによって達成され得、この場合、フォトレジストは、回転するウェハー上に分配される。分配中、ウェハーは、典型的には、最大4,000回転/分(rpm)の速度で例えば200~3,000rpm、例えば1,000~2,500rpmで、15~120秒の期間回転して、基材上にフォトレジスト組成物の層を得る。コーティングされた層の厚さは、回転速度及び/又は組成物の固形分を変更することによって調整できることが当業者に理解されるであろう。本発明の組成物から形成されたフォトレジスト層の厚さは、用途に応じて大きく変動し得る。特定の用途では、フォトレジストは、10~400ナノメートル(nm)、好ましくは15~200nm、より好ましくは50~100nmの乾燥された層の厚さを有することができる。
【0076】
フォトレジスト組成物は、典型的には、次にソフトベークされて層内の溶媒含有量を最小限に抑え、これにより粘着性のないコーティングを形成し、層の基材への接着を改善する。ソフトベークは、例えば、ホットプレート上又はオーブン内で実行され、ホットプレートが典型的である。ソフトベークの温度と時間は、例えば、特定のフォトレジストの組成と厚さに依存する。ソフトベーク温度は、典型的には、70~170℃、例えば70~150℃である。ソフトベーク時間は、典型的には、10秒~20分、例えば1分~10分又は1分~5分である。加熱時間は、組成物の成分に基づいて当業者により容易に決定され得る。
【0077】
次に、フォトレジスト層を活性化照射にパターンごとに露光して、露光領域と非露光領域との間に溶解度の差を生じさせる。フォトレジスト組成物のために活性化する放射線にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射線がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。露光は、典型的には、露光されるレジスト層及び露光されないレジスト層の領域にそれぞれ対応する光学的に透明な領域及び光学的に不透明な領域を有するパターン化されたフォトマスクを通して行われる。代わりに、このような露光は、典型的には、電子ビームリソグラフィーに使用される直接書き込み方法において、フォトマスクなしで実施され得る。活性化照射は、典型的には、248nm(KrF)、193nm(ArF)及び13.5nm(EUV)の波長でサブ-400nm、サブ-300nm若しくはサブ-200nmの波長を有するか、又は電子ビームリソグラフィーが好ましい。この方法は、液浸又は乾式(非液浸)リソグラフィー技術で使用される。露光エネルギーは、典型的には、1平方センチメートル当たり1~200ミリジュール(mJ/cm)、好ましくは10~100mJ/cm、より好ましくは20~50mJ/cmであり、露光手段及びフォトレジスト組成物の成分に依存する。
【0078】
フォトレジスト層の露光に続いて、露光されたフォトレジスト層の露光後ベーク(PEB)が実行される。PEBは、例えば、ホットプレート上又はオーブン内で実施することができ、ホットプレートが典型的である。PEBの条件は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び層の厚さに依存するであろう。PEBは、典型的には、80~150℃の温度及び30~120秒の時間で実施される。極性が切り替わった領域(露光領域)と切り替わっていない領域(非露光領域)とによって規定される潜像がフォトレジストに形成される。
【0079】
次いで、露光されたフォトレジスト層が適切な現像液で現像されて、現像液に可溶な層の領域を選択的に除去し、残りの不溶性領域は、結果として生じるフォトレジストパターンレリーフ画像を形成する。ポジ型現像(PTD)プロセスの場合、フォトレジスト層の露光領域は、現像中に除去され、未露光領域が残る。逆に、ネガ型現像(NTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域が残り、未露光領域が現像中に除去される。現像剤の塗布は、フォトレジスト組成物の塗布に関して上述したような任意の適切な方法によって行われ得、スピンコーティングが典型的である。現像時間は、フォトレジストの可溶性領域を除去するのに有効な期間であり、5~60秒の時間が典型的である。現像は、典型的には室温で行われる。
【0080】
PTDプロセスに適した現像液は、水性塩基現像液、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、好ましくは0.26規定(N)TMAH、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを含む。NTDプロセスに適した現像液は、有機溶媒系であり、現像液中の有機溶媒の累積含有量は、現像液の総重量に基づいて50重量%以上、典型的には、95重量%以上、95重量%以上、98重量%以上又は100重量%である。NTD現像液に適した有機溶媒は、例えば、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素及びこれらの混合物から選択されるものを含む。現像液は、典型的には、2-ヘプタノン又は酢酸n-ブチルである。
【0081】
コーティングされた基材は、本発明のフォトレジスト組成物から形成することができる。このようなコーティングされた基材は、(a)その表面にパターン化される1つ以上の層を有する基材、及び(b)パターン化される1つ以上の層にわたるフォトレジスト組成物の層を含む。
【0082】
フォトレジストパターンは、例えば、エッチングマスクとして使用することができ、これにより、公知のエッチング技術により、典型的には反応性イオンエッチングなどの乾式エッチングにより、パターンを1つ以上の連続して下にある層に転写することができる。フォトレジストパターンは、例えば、下にあるハードマスク層へのパターン転写に使用することができ、これは、次に、ハードマスク層の下の1つ以上の層へのパターン転写のためのエッチングマスクとして使用される。別の態様では、フォトレジストパターンは、イオン注入プロセスのマスクとして、例えば基材表面にドーパントを選択的に導入するために使用することができる。フォトレジストパターンがパターン転写又は注入プロセス中に消失されない場合、それは、公知の技術、例えば酸素プラズマ灰化などによって基材から除去され得る。フォトレジスト組成物は、1つ以上のこのようなパターン化プロセスで使用される場合、メモリデバイス、プロセッサーチップ(CPU)、グラフィックスチップ、光電子チップ、LED、OLED及び他の電子デバイスなどの半導体デバイスを製造するために使用され得る。
【0083】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、以下の非限定的な例によって例示される。
【実施例0084】
実施例1
これらの例で使用される様々な反応物を以下に示す。
【0085】
ポリマーP1
ポリマーP-1は、以下に示す繰り返し単位のコポリマーである。
【化32】
【0086】
それぞれ0.4、0.4及び0.2の値は、コポリマーのそれぞれの繰り返し単位のモル分率を示している。
【0087】
光酸発生剤PAG-1A
2つの光酸発生剤(トリフェニルスルホニウム(アダマンタン-1-イルメトキシカルボニル)-ジフルオロメタンスルホネート)PAG-1A及び(トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート)PAG-2Aを実施例で使用した。
【化33】
【0088】
フッ素化ポリマーP-2は、(特許文献4)に記載される手順に従って一般的に調製した。
【化34】
【0089】
ポリマーP-2は、上に示した繰り返し単位のコポリマーである。0.06及び0.94の値は、コポリマーの繰り返し単位のモル分率を示している。
【0090】
消光剤Q-6
【化35】
(Waco Chemicalsから市販)。
【0091】
全ての反応は、通常の大気条件下で実施した。全ての化学物質は、供給業者から直接使用した。全ての化合物の核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、600MHzの分光計で得た。化学シフトは、内部重アセトン残留シグナルに対するδ(ppm)値で報告される。多重度は、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、m(マルチプレット)、dd(ダブレットのダブレット)、dt(トリプレットのダブレット)、tt(トリプレットのトリプレット)、br(ブロードシングレット)で示される。2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタンアミンは、Sigma-Aldrichから購入し、酢酸は、Fischer Scientificから購入した。
【0092】
消光剤(N,N-(エタン-1,2-ジルビス(オキシ)ビス(エタン-2,1-ジル)ジアセトアミド)(Q-1と表記)の合成
攪拌棒、還流冷却器及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコにおいて、2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタンアミン(10.0g、0.067モル)(Sigma-Aldrich)を100gの酢酸エチルに溶解した。濃酢酸(0.4g、0.0067モル)を反応混合物に滴下し、全てを室温で10分間撹拌した。次いで、温度を77℃に上げ、透明な溶液を得た。反応変換を1H-NMRでモニターし、20時間後に反応が完了したと見なした。ドライアイス浴で反応混合物を冷却すると、白色沈殿物が得られ、ブフナー漏斗で濾過し、冷たい酢酸エチル(-4℃、50mL)及び室温のメチルtert-ブチルエーテル(100mL)で洗浄した。沈殿物を高真空下で一晩乾燥させると、10.7gの生成物が白色粉末(68%)として得られた。
H-NMR(500MHz-アセトン-d6)7.17(br,2H),3.55(s,4H),3.49(t,4H),3.31(q,4H),1.88(s,6H)ppm.13C-NMR(125MHz-アセトン-d6)170.3,70.94,70.48,39.9,22.9ppm.
【化36】
【0093】
消光剤(N,N’-((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(3-メトキシプロパンアミド)(Q-2と表記)の合成
攪拌棒、還流冷却器及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコにおいて、2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタンアミン(6.0g、0.04モル)(Sigma-Aldrich)を95.7gのメチル-3メトキシプロパノエートに溶解した。濃酢酸(0.122g、0.002モル)を反応混合物に滴下し、全てを室温で10分間撹拌した。次いで、温度を90℃に上げ、全てを18時間撹拌した。ドライアイス浴で反応混合物を冷却すると、白色沈殿物が得られ、ブフナー漏斗で濾過し、冷たいメチルtert-ブチルエーテル(100mL)で洗浄した。沈殿物を高真空下で一晩乾燥させると、10.1gの生成物を白色粉末(77%)として得た。
H-NMR(500MHz-アセトン-d6)7.14(br,2H),3.59,(t,4H),3.56(s,4H),3.50(t,4H),3.33(q,4H),3.27(s,6H),2.38(t,4H)ppm.13C-NMR(125MHz-アセトン-d6),171.1,71.0,70.5,69.5,58.6,39.8,37.3ppm.
【化37】
【0094】
消光剤N,N’-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ジアセトアミド(Q-3と表記)の合成
攪拌棒、還流冷却器、温度計及び窒素注入口を備えた100mLの丸底フラスコにおいて、2-(2-アミノエトキシ)エタンアミン(3.0g、28ミリモル)を43gの酢酸エチルに溶解した。濃酢酸(0.17g、0.0028モル)を反応混合物に加え、全てを室温で10分間撹拌した。次いで、温度を77℃に上げ、反応変換をH-NMRでモニターし、29時間後に反応を停止した。粗混合物を塩基性アルミニウムカラムに通した。次いで、得られた有機相をドライアイス浴で濃縮及び冷却して、白色沈殿物を得、ブフナー漏斗で濾過した。高真空下で一晩沈殿物を乾燥させると、2.0g(37%)の生成物を白色粉末として得た。H-NMR(500MHz,CDCl)δ 6.47(s,2H),3.53(t,4H),3.41(q,4H),2.00(s,6H).13C-NMR(125MHz,CDCl)δ 23.2,39.2,69.6,170.6.
【化38】
【0095】
消光剤N,N’-(チオビス(エタン-2,1-ジイル))ジアセトアミド(Q-4と表記)の合成
撹拌棒、還流冷却器、温度計及び窒素注入口を備えた100mLの丸底フラスコにおいて、2,2’-チオビス(エタン-1-アミン)(3.0g、25.0ミリモル)を43gの酢酸エチルに溶解した。反応混合物に濃酢酸(0.2g、0.003モル)を加え、全てを室温で10分間撹拌した。次いで、温度を77℃に上げ、反応変換を1H-NMRでモニターし、29時間後に反応を停止した。粗混合物に、透明な溶液が得られるまでメタノールを加え、全てを塩基性アルミニウムカラムに通した。次いで、得られた有機相をドライアイス浴で濃縮及び冷却し、白色沈殿物を得、ブフナー漏斗で濾過した。溶媒をゆっくりと蒸発させることにより、生成物を酢酸エチル/メタノール中で再結晶した。沈殿物を高真空下で一晩乾燥させ、1.2gの生成物を白色粉末(18%)として得た。
H-NMR(400MHz,DO)δ 3.32(t,4H),2.65(t,4H),1.93(s,6H).13C NMR(125MHz,DO)δ 21.8,30.4,38.7,174.2ppm.
【化39】
【0096】
Q-1、Q-2、Q-3及びQ-4は、本発明の組成物で使用される本発明の消光剤である一方、消光剤Q-5及びQ-6は、比較の消光剤である。
【0097】
比較の消光剤N-(3-アセトアミドプロピル)-N-メチルアセトアミド(Q-5と表記)の合成
攪拌棒を備えた100mLの丸底フラスコにおいて、N-メチルエタン-1,2-ジアミン(2.96g、0.04モル)及び無水酢酸(9.53g、0.09モル)を室温でニートにおいて72時間攪拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、水とtert-ブチルアルコールとの1:1の混合物を加え、続いて固体水酸化ナトリウムを加えた。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、収集し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去した。塩化アンモニウム(2mL)及びtert-ブチルアルコールを残留物に加えた。白色沈殿物が形成されなくなるまでアセトンを加えた。沈殿した生成物を単離し、真空ポンプで更に乾燥させて、3.47gの所望の生成物を得た。H-NMR(500MHz-クロロホルム-d3)6.82(br,1H),3.45(t,2H),3.18(t,2H),2.97(s,3H),2.05(s,3H),1.98(s,3H),1.62(m,2H)ppm.
【化40】
【0098】
フォトレジスト組成物の一般的な調製
フォトレジスト組成物(以下の表1に示されている)は、表1に記載されている成分を混合することによって調製した。各混合物を、0.2μmPTFEディスクを通して濾過した。括弧内の数値は、百分率の重量である。溶媒-1は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり、溶媒-2は、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HBM)である。
【0099】
【表1】
【0100】
リソグラフィー処理
表1のフォトレジスト組成物から製造したフォトレジストは、リソグラフィーによって評価した。300ミリメートル(mm)のシリコンウェハーを最初に下部反射防止コーティングAR(商標)40(DuPont Electronics&Imaging)でスピンコーティングし、205℃で60秒間ベークして、80ナノメートル(nm)のフィルムを形成した。次いで、シリコン含有n型反射コーティングを上部にスピンコーティングし、240℃で60秒間ベークして22nmのフィルムを形成した。最後に、フォトレジスト組成物を上部にスピンコーティングして100nmのフィルムを形成し、85℃で60秒間ソフトベークした。次いで、コーティングされたウェハーを、1.35NA(開口数)、環状照明及び0.8o/0.4iシグマ(式中「o」及び「i」は、環状照明の外側及び内側のシグマである)で、ArF露光装置ASML/1900iを使用して、密な空間を有するマスクパターンを介してArFエキシマレーザー(193nm)で露光した。その後、ウェハーを95℃で60秒間ベークし、続いて0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液で現像し、その後、水で洗浄した。限界寸法(CD)は、Hitachi CG-4000CD-SEMを使用してトップダウン走査型電子顕微鏡(SEM)で捕らえられた画像を処理することによって決定した。80nmのトレンチは、80nm/160nmのピッチマスクで目標にされた。焦点緯度は、80nmの目標CDの周囲に+/-10%のCD許容値を可能にすることによって評価した。焦点緯度が270nmより大きい場合、Aとして示され、焦点緯度が200nm~270nmである場合、Bとして示され、焦点緯度が200nm未満である場合、Cとして示さる。焦点緯度は、80nmのトレンチにおいて評価され、結果を以下の表2に要約する。
【0101】
【表2】